説明

土壌改良剤

【課題】
鶏糞の加工による悪臭の発生や、品質を安定にすることができつつも、土壌改良剤としての効果、例えば、使用する土壌中の一般生菌数を増加させる効果が高い土壌改良剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物、及び、硫酸を混合された鶏糞と、
粉粒化した玄米と、大豆酵素分解残渣と、アミノ酸と、を含有する土壌改良剤、さらには、前記鶏糞、前記玄米、及び、前記大豆酵素分解残渣を含有する剤100重量部に対して、前記アミノ酸が0.005〜10重量部配合されている上記の土壌改良剤により解決することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏場等で大量に発生するため、廃棄処理が社会的問題となっている鶏糞を利用した土壌改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、養鶏場等においては、鶏糞が大量に発生するため、その廃棄処理を巡って社会的な問題となっているが、鶏糞には農作物に有用な有機化合物が含有されており、土壌改良剤や肥料として有効活用されている。鶏糞を土壌改良剤や肥料として利用するためには、天日によって自然乾燥させたり、燃料を使用することによって強制的に乾燥させたり、さらには発酵処理を施されたりしている。
【0003】
そして、鶏糞を土壌改良や肥料として使用するために、鶏糞をそのまま天日によって自然乾燥させたり、燃料を使用することによって強制的に乾燥させたりする方法では、腐敗等による悪臭が発生したり、処理を終えるまでに多くの時間を要したり、処理の費用が高額になるという問題や、さらには発酵処理を施されたりしても、発酵によって有害なガスが発生する可能性があり、その発酵の制御するために長年蓄積された経験や技術が必要であるため安定な品質の土壌改良剤や肥料を製造することが困難であるという問題があったが、種々の解決が図られた。
【0004】
例えば、特許文献1には、カルシウム塩、硫酸を添加、混合された鶏糞を主成分とし、それに粉粒化した玄米と大豆酵素の分解後の残渣を混合させた土壌改良剤が開示されている。また、その土壌改良剤に腐葉土を混合させた土壌改良剤も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4392542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の土壌改良剤では、腐敗等により悪臭の発生や、安定な品質の土壌改良剤を製造することが困難であるという従来の課題は解決できたものの、使用する土壌中の一般生菌数を増加させる効果としては十分とはいえなかった。すなわち、養鶏場等で大量に発生する鶏糞である産業廃棄物を土壌改良剤という経営資源として有効活用できるという観点から、養鶏場等の運営業者にとってはメリットがあるものの、それを利用する農業関係者からすると、特許文献1に記載の土壌改良剤では、土壌改良剤としての効果、例えば、使用する土壌中の一般生菌数を増加させる効果に対する魅力が低く、さらなる改良が求められていた。
【0007】
また、特許文献1に記載の土壌改良剤では、一般に養分として知られる腐葉土を混合した土壌改良剤についても、一般生菌数の増加について実験されているが、やはり農業関係者からは、さらに効果が高い土壌改良剤が求められていた。
【0008】
そこで、本発明では、鶏糞の加工による悪臭の発生や、品質を安定にすることができつつも、土壌改良剤としての効果、例えば、使用する土壌中の一般生菌数を増加させる効果が高い土壌改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る土壌改良剤は、少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物、及び、硫酸を混合された鶏糞と、粉粒化した玄米と、大豆酵素分解残渣と、アミノ酸と、を含有することを特徴とする土壌改良剤である。
【0010】
そして、前記鶏糞、前記玄米、及び、前記大豆酵素分解残渣を含有する剤100重量部に対して、前記アミノ酸が0.005〜10重量部配合されている上記の土壌改良剤である。
【0011】
そして、前記アミノ酸が、少なくともグルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、又は、シスチンのいずれかを含有する上記の土壌改良剤である。
【0012】
このように構成すれば鶏糞の加工による悪臭の発生や、品質を安定にすることができつつも、土壌改良剤としての効果、例えば、使用する土壌中の一般生菌数を増加させる効果を高くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように本発明によれば、鶏糞の加工による悪臭の発生や、品質を安定にすることができつつも、土壌改良剤としての効果、例えば、使用する土壌中の一般生菌数を増加させる効果を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る土壌改良剤に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記は、上限と下限を含有するものである。
【0015】
本発明に係る土壌改良剤は、少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物、及び、硫酸を混合された鶏糞と、粉粒化した玄米と、大豆酵素分解残渣と、アミノ酸と、を含有することを特徴とするが、例えば、以下のように製造される。
【0016】
本発明において使用される鶏糞は、養鶏場等で大量に発生したものを何も加工せずに回収して用いることができる。ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウムは、鶏糞を粒状化するために使用され、これらのうち少なくともいずれかの化合物を混合されれば良いが、両方とも混合されても良い。この化合物、又は、これらの化合物は、鶏糞100重量部に対して10〜20重量部混合される。
【0017】
さらに、硫酸は、鶏糞中の塩基性化合物と反応させて中和させるために混合されるものであり、市販されている濃硫酸を使用することができるし、その濃硫酸を水で希釈した希硫酸を使用することもできる。この硫酸は、鶏糞100重量部に対して3〜15重量部混合される。
【0018】
このように、鶏糞に、少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物と、硫酸とが混合されるが、少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物と硫酸とは、何れを先に鶏糞に混合しても、同時に混合してもよいが、悪臭を効果的に除去するためには、硫酸を先に添加する方が好ましい。鶏糞に硫酸を添加し充分に混合した後、少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物を混合すると、鶏糞の粘稠な形態が団子状の塊へと変化する。さらに、団子状の塊となった鶏糞を粉砕機や粉粒機にかけるなどして、粒状化させる。
【0019】
本発明において使用される粉粒化した玄米は、粉状又は粒状まで玄米を粉砕されたものあればよく、下記の実施例にて使用した玄米を高熱焙煎して粉粒化したものに限定されるものではない。この粉粒化した玄米は、上記の少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物、及び、硫酸を混合された鶏糞100重量部に対して1〜3重量部混合される。また、大豆酵素分解残渣は、大豆を麹菌で発酵させた後、直ちに酵素分解させてエキス抽出した後の残渣等が混合され、上記の少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物、及び、硫酸を混合された鶏糞100重量部に対して1〜3重量部混合される。
【0020】
そして、本発明において使用されるアミノ酸は、分子中にアミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を備える有機化合物であり、土壌中の一般生菌の増加に大きく寄与する素材である。このようなアミノ酸として、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどのアミノ酸、そして、これらのアミノ酸がアミノ基とカルボキシル基が脱水縮合して得られる二量体であるシスチンなどが好ましい。そして、上記のうち、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、シスチンなどが、より好ましい。なお、これらのアミノ酸は、1種類のみ、又は、2種類以上組み合わせて使用することができる。また、アミノ酸は、前記鶏糞、前記玄米、及び、前記大豆酵素分解残渣を含有する剤100重量部に対して0.005〜10重量部配合されることが好ましく、0.01〜5重量部配合されることがさらに好ましい。この範囲の配合量であると、土壌中の一般生菌数を従来に比べ大幅に増加させることができ、さらに、必要以上のアミノ酸を添加しても効果が逆に下がる傾向にあるのでアミノ酸添加によるコストの増加も抑制することができる。これらの液状、又は、固体状のアミノ酸をそのまま混合してもよいが、一度水に溶解させてから、少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物、及び、硫酸を混合された鶏糞と、粉粒化した玄米と、大豆酵素分解残渣とを含有する剤に含浸させて混合してもよい。
【0021】
なお、土壌中の一般生菌数の増加に影響の及ばない範囲内において、必要に応じて本発明に種々の添加剤を加えることができる。
【0022】
以上のようにして各種成分を含有する土壌改良剤が粒粉化されて製造される。また、この粒粉化された土壌改良剤を打錠機などによって、ペレット化してもよい。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の土壌改良剤についての好ましい実施例を挙げ、その土壌改良剤を使用した際の一般生菌数の増加について測定した結果を示す。
【0024】
<実施例1>
鶏糞100gに対して、ケイ酸カルシウム5g、炭酸カルシウム5g、及び、濃硫酸10gを添加し、混合してから、粉粒機にかけて粒状化した。そして、この粒状化した混合鶏糞100gに対して、粉粒化した玄米1g、及び、大豆酵素分解後残渣1gを添加し、混合した。そして、上記のケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、濃硫酸を混合された鶏糞と、粉粒化した玄米と、大豆酵素分解残渣とを包含する剤100gに、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、シスチンを含有する濃度0.01g/mlの混合アミノ酸水溶液を1ml噴霧した。以上の方法によって、土壌改良剤を得た。
【0025】
<実施例2>
上記の実施例1のうち、混合アミノ酸水溶液を5ml噴霧した以外は、実施例1と同様に土壌改良剤を製造した。
【0026】
<実施例3>
上記の実施例1のうち、混合アミノ酸水溶液を10ml噴霧した以外は、実施例1と同様に土壌改良剤を製造した。
【0027】
<実施例4>
上記の実施例1のうち、混合アミノ酸水溶液を50ml噴霧した以外は、実施例1と同様に土壌改良剤を製造した。
【0028】
<比較例1>
上記の実施例1のうち、混合アミノ酸水溶液を全く噴霧しなかった以外は、実施例1と同様に製剤を製造した。
【0029】
これら実施例1〜4、比較例1で製造したものを用いて、それぞれ0.01gずつシャーレに分配して、分配前(初期値)及び24時間37℃で培養した後の一般生菌数について測定した。その測定結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
上記の測定結果から、本発明の土壌改良剤は、何れの実施例においても、比較例よりも一般生菌数を増加させる効果が高いことがわかり、特に、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、濃硫酸を混合された鶏糞と、粉粒化した玄米と、大豆酵素分解残渣とを包含する剤100gに、濃度0.01g/mlの混合アミノ酸水溶液を10ml、50ml噴霧して製造した土壌改良剤では、混合アミノ酸水溶液を噴霧しない場合に比べて10倍以上の効果を示すことがわかり、単に鶏糞の再利用という観点だけではなく、土壌改良剤そのものとして非常に有用であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともケイ酸カルシウム又は炭酸カルシウムのいずれかの化合物、及び、硫酸を混合された鶏糞と、
粉粒化した玄米と、
大豆酵素分解残渣と、
アミノ酸と、
を含有することを特徴とする土壌改良剤。
【請求項2】
前記鶏糞、前記玄米、及び、前記大豆酵素分解残渣を含有する剤100重量部に対して、前記アミノ酸が0.005〜10重量部配合されていることを特徴とする請求項1に記載の土壌改良剤。
【請求項3】
前記アミノ酸が、少なくともグルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、又は、シスチンのいずれかを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌改良剤。

【公開番号】特開2013−87265(P2013−87265A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231945(P2011−231945)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(398031422)東洋商事株式会社 (1)
【出願人】(511256118)
【Fターム(参考)】