説明

土壌改質組成物および土壌改質組成物を用いた土壌改質方法

【課題】栄養剤や改質薬剤を汚染土壌中に均一に安定して保持することができれば、微生物を用いた汚染土壌の改質の長所を生かしつつ、改質効果のばらつきという不確実性の欠点も補うことができる土壌改質組成物が望まれていた。
【解決手段】本発明に係る土壌改質組成物は、溶媒と構造粘性付与剤と土壌改質剤または/および肥料とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、鉱物油や化学物質などの有害物質に汚染された汚染土壌を改質する土壌改質組成物に係り、詳しくは、微生物を用いる汚染土壌の改質に利用される土壌改質組成物に関するものである。また、雨水などの通り道である水みちが形成されている汚染土壌の改質に対しても有効であり、さらに、農業に用いられる肥料を散布したりする際にも利用される土壌改質組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工場やガソリンスタンドなどの跡地を再利用する際に、跡地の土壌が鉱物油やその他の化学物質に汚染されている場合があり、これら汚染土壌への対策が必要になっている。
従来から、これら汚染土壌に対する最も一般的な対策としては、汚染土壌の掘削除去による土壌の入れ替えがあるが、迅速な対応はできるものの、汚染土壌の搬出、汚染土壌の埋立処理、非汚染土壌の搬入が必要であることからコストが高くなるという問題があり、さらに汚染土壌自体を改質するものではないという欠点がある。
【0003】
そこで、土壌を入れ替えることなく、汚染土壌自体を改質することによって跡地を再利用することが考えられており、その方法として、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のいわゆる「フェントン法」や特許文献3や特許文献4に記載のいわゆる「ホットソイル法」などが知られている。また、最近では特許文献5に記載されているように、土壌中に存在する微生物の汚染物質に対する分解能に着目し、これら微生物を利用した汚染土壌の改質も提案されている。
【0004】
ここで、「フェントン法」とは、汚染土壌に鉄系物質や過酸化水素などを混合し、これらが反応する際の反応熱を用いて汚染物質を分解する方法であり、「ホットソイル法」とは、汚染土壌に生石灰など水と発熱反応を起こす物質と水を混合し、これらが反応する際の反応熱を用いて汚染物質を揮発する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−210683号公報
【特許文献2】特開2006−75469号公報
【特許文献3】特開平5−168727号公報
【特許文献4】特開2004−42011号公報
【特許文献5】特開平11−90411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の「フェントン法」および「ホットソイル法」は、汚染土壌自体を改質するという長所はあるものの、激しい発熱反応を伴うことから作業時の安全対策を厳重にする必要があり、また、土壌の入れ替え程ではないにせよ相応のコストがかかるという欠点がある。
さらに、「ホットソイル法」は、反応熱を用いて汚染土壌中の汚染物質を揮発する方法であることから、揮発した物質の臭気による周辺地域などの環境への配慮が必要になるという欠点がある。
【0007】
一方、特許文献5に記載の微生物を用いた方法は、微生物が有する分解能を利用することから激しい反応を生じることなく汚染土壌自体を改質することができ、環境にもやさしいという長所がある。
【0008】
しかしながら、微生物を用いた汚染土壌の改質は、「フェントン法」や「ホットソイル法」に比べて改質に長期間を要するという欠点がある。また、汚染土壌の土質などによって改質効果にばらつきが生じるという不確実性の欠点もある。
【0009】
ここで、上記したこれら微生物を用いた汚染土壌の改質における欠点の原因としては以下の2点が挙げられる。
まず、微生物を活性化させるための栄養剤や改質薬剤を汚染土壌に投入する際に、これらの栄養剤などが汚染土壌中に保持されずに雨水や地下水などによって汚染土壌の系外に流出してしまうことが挙げられる。また、仮に保持された場合でも土質によって不均一に保持されることが挙げられる。
【0010】
従って、栄養剤や改質薬剤を汚染土壌中に均一に安定して保持することができれば、微生物を用いた汚染土壌の改質の長所を生かしつつ、改質効果のばらつきという不確実性の欠点も補うことができることになる。
【0011】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであって、微生物を用いる汚染土壌の改質に利用される土壌改質組成物および土壌改質組成物を用いた土壌改質方法の提供を目的とする。
また、雨水などの通り道である水みちが形成されている汚染土壌の改質に対しても有効であり、農業に用いられる肥料を散布したりする際にも利用される土壌改質組成物および土壌改質組成物を用いた土壌改質方法を提供することも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る土壌改質組成物は、溶媒と構造粘性付与剤と土壌改質剤または/および肥料とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項2に係る土壌改質組成物は、構造粘性付与剤が天然物由来の物質であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項3に係る土壌改質組成物は、下式1により求められるTI値(チクソトロピックインデックス)が5.5〜10であることを特徴とする。
式1:TI値=η1/η2
(η1:回転数ArpmにおけるB型粘度計での粘度、η2:回転数A/10rpmにおけるB型粘度計での粘度)
【0015】
本発明の請求項4に係る土壌改質方法は、請求項1から3に記載の土壌改質組成物を用いた土壌改質方法であって、土壌改質組成物にせん断力を加えてゾル化した状態で土壌に散布して土壌改質組成物を土壌の深さ方向に浸透させ、土壌改質組成物の浸透する深さが深くなるにつれて散布時に加えたせん断力を低下させて構造粘性を発現させることによって、改質を必要とする土壌層に土壌改質組成物を保持させることを特徴とする。
【0016】
本発明に用いられる溶媒としては、他の構成要素である構造粘性付与剤、土壌改質剤、肥料などを溶解または分散させることができるものであれば特に限定されないが、土壌中の微生物の活性に悪影響を与えない点から水を用いるのが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる構造粘性付与剤とは、溶媒に溶解または分散させて組成物とした状態において後記するような構造粘性を発現するものであり、例えば、スメクタイト、ハロサイト、カオリナイト、パーミキュライト、クロライト、タルク、ゼオライト、カルサイト、ベントナイト、ハロサイト、などの層状ケイ酸塩鉱物やポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、カルボキシルセルロースなどの水溶性高分子増粘剤などが挙げられる。
そして、この中でも土壌中の微生物の活性に悪影響を与えない点から、スメクタイトなどの天然物由来のものを用いるのが好ましい。
【0018】
ここで、構造粘性には一般に、外部からせん断力を加えている間は粘度が低下しせん断力から解放されると粘度が向上する「チクソトロヒー」と、外部からせん断力を加えると粘度が向上する「レオペクシー」とがあるが、本発明における構造粘性としてはチクソトロピーを指すものである。
【0019】
そして、本発明の土壌改質組成物としては、構造粘性が下式1におけるTI値(チクソトロピックインデックス)で表した際に5.5〜10であることが好ましい。
式1:TI値=η1/η2
(η1:回転数ArpmにおけるB型粘度計での粘度、η2:回転数A/10rpmにおけるB型粘度計での粘度)
ここで、TI値が5.5に満たない場合には、せん断力から解放された状態であっても、粘度の上昇が十分でないことから、汚染土壌に散布した際に土壌改質組成物が汚染土壌内に保持されず汚染土壌の系外に流出してしまったり、あるいは汚染土壌中に不均一に保持されてしまったりする恐れがある。
また、TI値が10を超える場合には、せん断力が加えられた状態であっても、粘度が高くなりすぎることから、汚染土壌に散布した際に土壌改質組成物が深さ方向に浸透していかない恐れがある。
【0020】
また、本発明の土壌改質組成物は、せん断力からほとんど解放された際の粘度が土壌改質組成物を土壌中に保持できる程度の粘度を有するものであればよい。従って、本発明の土壌改質組成物の構造粘性は、上記TI値以外の数値によっても表わすことができる。
具体的には、TI値としては0となるような場合、すなわち、せん断力をかけた状態では水のように粘度が0になるような場合であっても、静置したような、せん断力からほとんど解放された際の粘度が0.3Pas以上を有するものであれば、土壌改質組成物を土壌中に保持できることから本発明の土壌改質組成物となり得る。
【0021】
なお、本発明に用いられる構造粘性付与剤の配合量としては、上記の構造粘性を発現するものであれば特に限定されないが、構造粘性付与剤にスメクタイトを用い、溶媒に水を用いた場合には、水に対して重量比で0.2〜4.0%添加することが好ましい。
【0022】
本発明に用いられる土壌改質剤や肥料とは、菌液や化学薬剤などの改質薬剤、汚染土壌中に存在する微生物を活性化させるためのLB培地などの栄養剤、窒素や燐などの一般的な肥料などが挙げられる。
【0023】
なお、本発明に用いられる土壌改質剤や肥料の配合量としては、土壌改質に必要な量を配合することになるが、土壌改質剤に栄養剤としてのLB培地を用いる際には、一般に使用される濃度の30倍〜1/20倍の濃度になるように配合することが好ましく、より好ましくは5倍〜1/20倍の濃度になるように配合することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1に係る土壌改質組成物は、溶媒と構造粘性付与剤と土壌改質剤または/および肥料とを備えるように構成されているので、構造粘性を利用することによって、栄養剤や改質薬剤を汚染土壌中に均一に安定して保持することができる。
従って、汚染土壌中の微生物に長期間に渡って均一に安定して栄養剤などを供給できることから、環境にもやさしいという微生物を用いた汚染土壌の改質の長所を生かしつつ、改質効果のばらつきを解消することができる。
また、本発明の土壌改質組成物が構造粘性を発現させることによって、栄養剤などが汚染土壌の系外に流出する際の経路となる水みちを塞ぐことから、より改質効果を向上させることができる。
【0025】
本発明の請求項2に係る土壌改質組成物は、構造粘性付与剤が天然物由来の物質であるように構成されているので、汚染土壌中の微生物の活性に悪影響を与えることなく土壌改質を行うことができる。
【0026】
本発明の請求項3に係る土壌改質組成物は、下式1により求められるTI値(チクソトロピックインデックス)が5.5〜10であるように構成されているので、構造粘性の程度を調節することにより、汚染の深さや範囲が異なる各種の汚染土壌の改質を行うことができる。
式1:TI値=η1/η2
(η1:回転数ArpmにおけるB型粘度計での粘度、η2:回転数A/10rpmにおけるB型粘度計での粘度)
【0027】
本発明の請求項4に係る土壌改質方法は、請求項1から3に記載の土壌改質組成物を用い、土壌改質組成物にせん断力を加えてゾル化した状態で土壌に散布して土壌改質組成物を土壌の深さ方向に浸透させ、土壌改質組成物の浸透する深さが深くなるにつれて散布時に加えたせん断力を低下させて構造粘性を発現させるように構成されているので、請求項1から3に記載の土壌改質組成物の作用効果を利用した土壌改質を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る土壌改質組成物の第1の実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係る土壌改質組成物の第2の実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明に係る土壌改質組成物の第3の実施形態を示す模式図である。
【図4】従来の土壌改質組成物の一例を示す模式図である。
【図5】従来の土壌改質組成物の別の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る土壌改質組成物の第1の実施形態を示す模式図である。
図1において、1は土壌改質組成物であり、具体的には、溶媒に水、構造粘性付与剤に天然物のスメクタイト、土壌改質剤にLB培地を使用し、これら原料を容器2に投入し混合することによって構成されている。また、3は汚染土壌、4は土壌中において地下水が多く存在している帯水層である。
【0031】
次に、第1の実施形態の動作および作用を説明する。
【0032】
まず、事前に汚染土壌3の土質、改質したい土壌の深度および範囲を把握しておく。
【0033】
次に、汚染土壌3の土質、改質したい土壌の深度および範囲に応じて、水、構造粘性付与剤、土壌改質剤の配合量を調整して土壌改質組成物1を作製する。
【0034】
次に、作製した土壌改質組成物1にミキサ(図示せず)などでせん断力を加え、土壌改質組成物1の粘度を低下させる。
【0035】
次に、土壌改質組成物1の粘度が低下している間に、土壌改質組成物1を改質したい汚染土壌3に散布する。
【0036】
そうすると、粘度が低い間は土壌改質組成物1が汚染土壌3の深さ方向に浸透していく。そして、浸透が進むにつれて土壌改質組成物1に加えられていたせん断力が減少し、それに伴い粘度が上昇していくことから、次第に土壌改質組成物1が汚染土壌3の改質したい深度および範囲において保持されることになる。
ここで、上記の通り、土壌改質組成物1には土壌中の栄養となるLB培地が混合されていることから、土壌改質組成物1が汚染土壌3の一定の深度および範囲に保持されることは、係る深度および範囲に存在する微生物に絶えず栄養を供給できるということになる。
従って、微生物を常に活性化することができ、環境にもやさしいという微生物を用いた汚染土壌の改質の長所を生かしつつ、改質効果のばらつきという不確実性の欠点も補うことができることになる。
【0037】
一方、図4は従来の土壌改質組成物の一例を模式図として示している。図4に示すように、構造粘性付与剤を用いずに、土壌改質剤を単純に水などの溶媒に溶解させただけの従来の土壌改質溶液9を用いた場合には、土壌改質溶液9が汚染土壌3の主に深さ方向に浸透していき、場合によっては帯水層4にまで達することになり、平面的には浸透が不十分な状態になる。
従って、汚染土壌3に存在する微生物に十分な栄養を供給できないことになり、改質効果のばらつきという不確実性の問題が生じることになる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明係る土壌改質組成物の第2の実施形態を説明する。図2は本発明に係る土壌改質組成物の第2の実施形態を示す模式図である。
図2は、汚染土壌3にいわゆる水みち5が形成されており、雨水などが水みち5を通って帯水層4に浸透しやすくなっている状態を模式したものである。なお、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0039】
次に、第2の実施形態の動作および作用を説明する。
【0040】
まず、第1の実施形態と同様に事前に汚染土壌3の土質、改質したい土壌の深度および範囲を把握しておく。
【0041】
次に、このような状態の汚染土壌3に、せん断力を加えて粘度を低下させた土壌改質組成物1を散布する。ここで、粘度が低い間は第1の実施形態と同様に、土壌改質組成物1が汚染土壌3の深さ方向に浸透していく。
【0042】
次に、浸透が進むにつれて、土壌改質組成物1は汚染土壌3の中でも浸透しやすい水みち5に集まるようになる。
【0043】
次に、水みち5に集まった土壌改質組成物1は加えられていたせん断力が減少し、それに伴い粘度が上昇していくことから、次第に水みち5において保持されることになり、最終的に土壌改質組成物1によって水みち5に栓6がされた状態となる。
【0044】
そうすると、土壌改質組成物1は栓6がされた水みち5から帯水層4に流出していかなくなることから、土壌改質組成物1は汚染土壌3の平面方向に広がることになり、汚染土壌3の改質したい深度および範囲において保持されることになる。
従って、水みちが形成されているような水はけの良い汚染土壌においても、微生物を活性化することができ、環境にもやさしいという微生物を用いた汚染土壌の改質の長所を生かしつつ、改質効果のばらつきという不確実性の欠点も補うことができることになる。
【0045】
一方、図5は従来の土壌改質組成物の別の例を模式図として示している。図5に示すように、構造粘性付与剤を用いずに、土壌改質剤を単純に水などの溶媒に溶解させただけの従来の土壌改質溶液9を用いた場合には、土壌改質溶液9が汚染土壌3の水みち5に浸透していき、場合によっては帯水層4にまで達することになり、水みち5以外の汚染土壌3には浸透が不十分な状態になる。
従って、汚染土壌3に存在する微生物に十分な栄養を供給できないことになり、改質効果のばらつきという不確実性の問題が生じることになる。
【0046】
なお、本発明の土壌改質組成物1の効果は上記したものに限定されるものではなく、構造粘性付与剤にスメクタイトなどの層状ケイ酸塩鉱物を用いた場合には、これらの層状ケイ酸塩鉱物はイオン交換能や吸着能を有していることから、汚染土壌中の鉱物油や化学物質などをイオン交換作用や吸着作用によって土壌改質組成物中に取り込んで保持することができ、汚染物質の帯水層への流出を防止することもできる。
【0047】
さらに、上記の実施形態では、土壌改質組成物1に土壌中の微生物を活性化させるための栄養剤を混合したが、栄養剤のかわりに肥料などを混合すれば、後記する第3の実施形態のように耕作土壌においても適用することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る土壌改質組成物の第3の実施形態を説明する。図3は、本発明に係る土壌改質組成物の第3の実施形態を示す模式図である。
図3において、7は土壌改質組成物であり、具体的には、溶媒に水、構造粘性付与剤に天然物のスメクタイト、土壌改質剤の代わりに肥料を使用し、これら原料を容器2に投入し混合することによって構成されている。また、8は耕作土壌である。
【0049】
次に、第3の実施形態の動作および作用を説明する。
【0050】
まず、第1の実施形態と同様に事前に耕作土壌8の土質、改質したい土壌の深度および範囲を把握しておく。
【0051】
次に、耕作土壌8の土質、改質したい土壌の深度および範囲に応じて、水、構造粘性付与剤、肥料の配合量を調整して土壌改質組成物を作製する。
【0052】
次に、作製した土壌改質組成物1にミキサ(図示せず)などでせん断力を加え、土壌改質組成物1の粘度を低下させる。
【0053】
次に、土壌改質組成物1の粘度が低下している間に、土壌改質組成物1を改質したい耕作土壌8に散布する。
【0054】
そうすると、粘度が低い間は土壌改質組成物1が耕作土壌8の深さ方向に浸透していく。そして、浸透が進むにつれて土壌改質組成物1に加えられていたせん断力が減少し、それに伴い粘度が上昇していくことから、次第に土壌改質組成物1が耕作土壌8の改質したい深度および範囲において保持されることになる。
ここで、上記の通り、土壌改質組成物1には耕作土壌に対する肥料が混合されていることから、土壌改質組成物1が耕作土壌8の一定の深度および範囲に保持されることは、係る深度および範囲に肥料を供給し保持できるということになる。
【0055】
なお、図示はしなかったが、第2の実施形態のような水みちが形成されている水はけの良い耕作土壌においても同様の作用効果を奏するものである。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の実施例を説明する。具体的には、本発明の効果を実証するために以下に示す原料、方法にて模擬的に土壌改質組成物を作製し、粘度の測定を行った。
【0057】
まず、構造粘性付与剤にスメクトン(クニミネ工業社製)を用い、スメクトンの配合量を変化させて水に溶解し、模擬的な土壌改質組成物となる試験液を作製した。次に、B型粘度計によって、各種の回転数によってせん断力を変化させ、その際の粘度を測定した。また、測定した粘度からTI値を計算した。
粘度の測定結果を表1に、TI値の計算結果を表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
その結果、表1の粘度測定結果から、スメクトンの配合量が最も少ない0.2重量%の試験液におけるB型粘度計の回転数が0.3rpmの際の粘度、すなわち試験液がせん断力からほとんど解放された際の粘度が0.33Pasであることがわかる。また、スメクトンの配合量が0.2重量%の試験液は土が締まった、いわゆる密度が高い汚染土壌において効果を発揮する。
従って、本発明の土壌改質組成物は、せん断力からほとんど解放された際の粘度が、少なくとも0.3Pas以上必要であることがわかる。
【0061】
次に、表2のTI値計算結果から、TI値が5.5〜10の範囲に収束していることがわかる。
従って、本発明の土壌改質組成物は、TI値が5.5〜10の範囲である必要があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の土壌改質組成物は、微生物を用いる汚染土壌の改質に用いることができる。また、水みちが形成されているような水はけの良い汚染土壌の改質にも用いることができる。さらに、有害物質の地下水への流出を防止することもでき、農業に用いられる肥料を散布したりする際にも用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 土壌改質組成物
2 容器
3 汚染土壌
4 帯水層
5 水みち
6 栓
7 肥料
8 耕作土壌
9 土壌改質溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、
構造粘性付与剤と、
土壌改質剤または/および肥料とを備えることを特徴とする土壌改質組成物。
【請求項2】
前記構造粘性付与剤が、
天然物由来の物質であることを特徴とする請求項1に記載の土壌改質組成物。
【請求項3】
下式1により求められるTI値(チクソトロピックインデックス)が、
5.5〜10であること特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の土壌改質組成物。
式1
TI値=η1/η2
(η1:回転数ArpmにおけるB型粘度計での粘度、
η2:回転数A/10rpmにおけるB型粘度計での粘度)
【請求項4】
請求項1から3に記載の土壌改質組成物を用いた土壌改質方法であって、
前記土壌改質組成物にせん断力を加えてゾル化した状態で土壌に散布して前記土壌改質組成物を前記土壌の深さ方向に浸透させ、前記土壌改質組成物の浸透する深さが深くなるにつれて散布時に加えたせん断力を低下させて構造粘性を発現させることによって、改質を必要とする土壌層に前記土壌改質組成物を保持させること特徴とする土壌改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−178947(P2011−178947A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46420(P2010−46420)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】