説明

土壌表層部改質用シリコーン組成物とその製造方法、表面改質土砂及びシリコーン被覆土砂集合体並びに土壌改質方法並びに土壌改質材の施工方法

【課題】 植物の発芽抑制効果を供え、しかも、散布した土壌を通して地下に浸透、流出しない安全性が高く、作業性に優れた土壌表層部改質用シリコーン組成物とその製造方法、応用物および土壌改質方法を提供する。
【解決方法】 縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)、シリコーンオイル(B)およびフィラー(C)を含有するシリコーン組成物であって、それらの含有割合は、室温硬化型シリコーンゴム(A)100重量部に対して、シリコーンオイル(B)が20〜80重量部、およびフィラー(C)が1〜5重量部であり、且つ、25℃における粘度が50〜2000mPa・sであることを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物とその製造方法、表面改質土砂及びシリコーン被覆土砂集合体並びに土壌改質方法を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌表層部改質用シリコーン組成物とその製造方法並びに表面改質土砂及び土壌改質方法並びに土壌改質方法に関し、詳しくは、土壌に散布もしくは土砂と混合して使用し、土壌にシリコーン硬化被膜を形成することにより、土壌強化や植物の発芽抑制作用を発揮する土壌表層部改質用シリコーン組成物とその製造方法、それを用いた表面改質土砂及びシリコーン被覆土砂集合体並びに土壌改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、公園やゴルフ場のような公共の場所或いは一般家庭の庭、道路の分離帯や側帯などにおいて発生する雑草によりもたらされる害は、美観の悪化や不快感を募らせるだけでなく、それを除去するために費やされる労力も膨大である。特に道路では高速道路における路肩や側壁の土手に発生する雑草の除去作業は、その広大な作業面積から多大な労力と費用が費やされる最たる例である。そのため、それを解消するために薬剤が使用されることが一般的となっているが、薬剤の使用は場合によって環境汚染を引き起こすおそれがある。
この環境汚染として例えば、根枯し系の除草剤等による除草方法の場合、土壌中に根付いた根を枯渇若しくは減退させるのでその除草効果は高いが、その一方で土壌中に張巡らされていた根の消失により土壌の固着性が低下して、降雨による土砂流出や土砂災害を誘発する問題を発生させてしまう。
更にもう一つの重要な課題として、近年、雑草除去の目的のため様々な農薬製剤が開発されているが、降雨により散布した薬剤が流失し長期に亘って持続的な効果を期待できないため、定期的な使用の継続が必要でありトータル的なコストの増加だけでなく、これが過剰な使用となって生体系の破壊や地下水汚染を引き起こすおそれがあるという問題をも発生させてしまう。
【0003】
このような問題を改善する対策として、シリコーンの疎水性を利用した土壌改質技術に基づき、除草作用を有した反応型シリコーン系除草用材料が提案されている。例えば、雑草防除効果が長期間持続するとともに土壌の雨水や散水による流出防止される芝生植生地の雑草防除方法として、ポリアルキレングリコール付加シリコーン化合物(PGS)またはこれとシリコーン系硬化性組成物とを併用することで芝生植生地の表面に散布する技術が提案されている(特許文献1)。これは、雑草防除効果を有するPGSが雨水や散水により流出するのを防止するためにシリコーン系硬化性組成物を添加した方法である。このシリコーン系硬化性組成物は、シラン材料または縮合反応型シリコーン材料または付加反応型シリコーン材料から選択することができ、硬化被膜を形成して土砂流出を防止する作用を兼ね備えている。
また、雑草選択性を有したシリコーン系除草作用を有する材料として特定のSi−H結合含有オルガノポリシロキサン 100重量部と(B)硬化触媒 0.1〜50重量部を主成分として含有する組成物を、芝生表面に、10〜500g/m散布することを特徴とする芝生面の雑草成育抑制方法が提案されている(特許文献2)。
さらにトリアルコキシシラン1〜30重量部とアルコキシ基含有シロキサン70〜90重量部とアミノ基含有アルコキシシラン1〜20重量部とを有機酸又は無機酸の存在下で加水分解させることにより得られる水溶性有機ケイ素化合物からなる発芽防止剤が開示されている(特許文献3)。
いずれも土の表面に散布されると容易に土中に浸透し、その後、土を疎水性に改質することにより植物種子が発芽するに必要な水分供給が絶って発芽防止作用を発揮するものである。
また、シリコーン系撥水処理された改質土砂として、水系アルキド樹脂や水系シラン樹脂を含む撥水処理剤で土砂を被覆したものが提案されている(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、上記いずれの対策においても、水系またはエマルジョン系ベース構造のため、散布後に雨水で流失しやすいという課題については十分な配慮が成されていない思想である。このため、もう一つの重要な課題である、定期的な使用の継続をなくすものでなく、生体系の破壊・地下水汚染を引き起こすおそれ、という問題について解決するに至ったものではない。
またこれらの組成のものは、その散布作業性と環境保全性の関係から見ても、土壌に浸透し過ぎて地下水の汚染といった環境汚染の課題解決を優先すれば粘度を高めるしかなく、これは散布作業性を著しく低下させ、他方、散布作業性を優先すれば低粘度で浸透性を高めることとなりこれは前述の如く環境汚染への配慮を損なってしまう、といった相反する要求を両立させて実用性を高めるという課題に対しては、技術思想として問題解決に至るものではないのである。
こうした問題を反映して、前述の全ての課題、つまり非水溶性でかつ適度な浸透性と速乾性による散布作業性や散布後の長期間に亘る効果の維持による環境汚染の配慮をも全て兼ね備えた対策が望まれていた。
さらに従来技術の土壌散布用の液状除草組成物は、粘土質の土壌への浸透性が殆ど無いため、傾斜面では散布してもすぐに流れてしまうという共通の問題があり、粘土質の土壌に発芽する植物の発芽抑制にも有効な対策が望まれていた。
さらに前記課題の解決においては、使用用途が除草剤では薬剤の申請という申請コストや上市までの極めて長期な取得期間の弊害があること、また、除草剤の限られた市場での競争力を得ることの困難性も考慮した上で、除草剤とは異なる新たな土壌改質材料(組成物)を開発することも求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平05−025010(特公平07−039326)号公報
【特許文献2】特開平09−157117号公報
【特許文献3】特開平10−045503(特許第3173383)号公報
【特許文献4】特開平2000−023559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、非水系でシンプルな構成からなり、散布後は速やかに土壌に硬化被膜を形成でき、優れた土壌固定性と植物の発育抑制作用を発揮でき、環境負荷成分が極めて少なく、また地下に浸透、流出しない安全で環境にも配慮した土壌表層部改質用シリコーン組成物とその製造方法、表面改質土砂及びシリコーン被覆土砂集合体並びに土壌改質方法と、粘土質土壌でも前記土壌表層部改質用シリコーン組成物や土壌改質方法の作用と有効に発揮させるための土壌改質材の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサンと、シリコーンオイルと、フィラーとを特定割合で含有し、25℃における粘度を特定範囲にしたシリコーン組成物を、土壌表面処理用固着剤として用いると、土壌表面に撥水皮膜を形成して、土壌表面に独特なシリコーン被覆土砂集合構造を形成して土砂を固定化しつつ地中への水分の浸透を防止して雨水等による土砂の流出を防止でき、さらに雑草の発育防止やに有効であるのみならず、衝撃緩衝性や歩行感触性を付加できることを見出した。そして、本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)とシリコーンオイル(B)およびフィラー(C)を構成成分として含有するシリコーン組成物であって、前記構成成分の含有割合は、前記室温硬化型ポリシロキサン(A)100重量部に対して、前記シリコーンオイル(B)が20〜80重量部、および前記フィラー(C)が1〜20重量部であり、且つ、25℃における粘度が50〜2000mPa・sであることを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物が提供される。
【0009】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記室温硬化型ポリシロキサン(A)の縮合官能基がオキシム基であることを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、前記シリコーンオイル(B)は、25℃における動粘度が50mm/s以下であることを特徴とする第1〜2の発明のいずれかの土壌表層部改質用シリコーン組成物が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、前記フィラー(C)は、BET法による比表面積が30〜500m/gのシリカであることを特徴とする第1〜3の発明のいずれかの土壌表層部改質用シリコーン組成物が提供される。
【0010】
一方、本発明の第5の発明によれば、前記シリコーンオイル(B)と前記フィラー(C)を混合した後、前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)を混合することを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)に前記フィラー(C)を混合した後、前記シリコーンオイル(B)を加えて混合することを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)は、25℃における粘度が0.5Pa・s以上であることを特徴とする第5〜6の発明のいずれかの土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第8の発明によれば、土砂粒子と前記土砂粒子の表面に密着被覆された請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌表層部改質用シリコーン組成物の硬化物とで構成してなることを特徴とする表面改質土砂が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、複数の土砂粒子が請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌表層部改質用シリコーン組成物の硬化物で被覆され、かつ前記土砂粒子が前記硬化物を介して連結されてなることを特徴とするシリコーン被覆土砂集合体が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、土壌表面に第1〜4の発明のいずれかの土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して土壌表層内部に浸透させて縮合硬化せしめ、前記土壌表層の構成を前記シリコーン組成物の硬化物で連結して表面改質土壌層を形成することを特徴とする土壌改質方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第11の発明によれば、土壌改質を施工する地面を第8の発明の表面改質土砂で覆土し、次いで覆土した場所に請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌表面処理用シリコーン組成物を散布して前記地面まで浸透させて縮合硬化せしめ、表面改質土砂と前記地面を前記シリコーン組成物の硬化物で連結することを特徴とする土壌改質材の施工方法が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、土壌改質を施工する地面に角張った突起を複数有した形状の小石(a)の敷き詰め、次いで前記小石(a)の一部を前記地面に食込むように押圧し、次いで前記小石(a)よりも径の小さい砂利(b)を前記小石(a)の空隙を埋めるように敷き詰めて前期粘土質の地面上に覆土層を形成し、次いで前記覆土層に土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して硬化させることを特徴とする土壌改質材の施工方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物は、縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)、シリコーンオイル(B)およびフィラー(C)とを構成成分として、各成分が特定の含有割合し、且つ組成物が特定粘度の性状を有していることを特徴とするので、簡単に散布できて短時間で硬化して土壌表面と表層に硬化被膜を形成でき、土壌表面から地中への水分の浸透を防止して、特に斜面の土砂の崩落や流失を防ぐのみならず、雑草の発育防止にも有効であり、長期にわたり優れた作用が維持され、作業性や作業頻度が軽減されて従来の労力や作業費用の低減に大きく貢献できる。
また、環境負荷成分が極めて少なく、また地下に浸透、流出せず安全で環境にも配慮した構成なので、幅広い用途に利用できる。
また、本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法は、適度な粘度に調整しているので高圧ホモジナイザー等の機器を使用せずに作製することができるので、簡便であり、効率的で生産性の高い土壌表面処理用シリコーン組成物の製造方法を提供できる。
また、本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物を用いた表面改質土砂は、除草した土壌を被覆するように敷き土として利用すれば除草効果が得られ住宅の外構や公園の敷き砂用途部材として提供できる。
さらに、本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物とそれを用いた表面改質土砂の施工方法によって、粘土質の土壌でも土壌表層部改質用シリコーン組成物の効果が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物の構成成分、その製造方法、及び用途などについて詳細に説明する。
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物は、縮合反応性を有する液状の室温硬化型シリコーンゴム(A)、シリコーンオイル(B)およびフィラー(C)を含有するシリコーン組成物であって、それらの含有割合は、室温硬化型シリコーンゴム(A)100重量部に対して、シリコーンオイル(B)が20〜80重量部、およびフィラー(C)が1〜5重量部であり、且つ、25℃における粘度が50〜2000mPa・sであることを特徴とするものである。
なお、粘度および動粘度は、JIS Z−8803−1991に定める共軸二重円筒形回転粘度計およびウベローデ粘度計による粘度測定法に準拠して得たものである。
【0015】
1.土壌表層部改質用シリコーン組成物の構成成分
(i)室温硬化型ポリシロキサン(A)
本発明に用いられる室温硬化型ポリシロキサン(A)は、縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサンであり、大気中の水分と反応することで加水分解性官能基が加水分解縮合反応を起こして架橋し、ゴム状の弾性を有する硬化物(以下、ゴム弾性体と称する)を形成する。その加水分解官能基としては、例えば、メチルエチルケトオキシム基(脱オキシム型)、アセトキシ基(脱酢酸型)、アルコキシ基(脱アルコール型)、イソプロペノキシ基(脱アセトン型)などがあるが、放出される物質の腐食性、臭気の少ない脱アルコール型あるいは脱オキシム型が好ましく、特に、土壌との接着性が高く雨水による土壌流失を防止する作用を向上できる観点から脱オキシム型、すなわち、オキシム系の室温硬化型ポリシロキサンであることが好ましい。
【0016】
縮合型の反応性ポリシロキサンは、その組成としては、例えば、
(a)次の一般式で表されるα,ω−ジヒドロキシオルガノポリシロキサンと、
【0017】
【化1】

(式中、Rは、置換または非置換の1価の有機基、nは、300〜3000を示す。)
【0018】
(b)次の一般式で表されるオキシムシランと、
【0019】
【化2】

(式中、R、R、Rは、置換または非置換の1価の有機基を示す。)
【0020】
(c)シリカ等の補強性充填材、(d)有機金属等の硬化触媒、(e)接着向上剤、
からなる混合物であり、場合によっては有機溶剤に希釈して基材表面に施し、乾燥硬化した後に弾性のある皮膜を形成するものである。
前記の式の置換または非置換の1価の有機基は、炭素数10以下のものが好ましく、とくに、メチル、エチル、ビニルなどの化合物が好ましい。
【0021】
上記オキシムシランは、架橋剤又は硬化剤であり、(a)と加水分解縮合反応をすることにより、ゴム弾性体を形成する。オキシムシランを使用することにより、ゴム弾性体は、土壌と優れた接着性を示す。
オキシムシランとしては、例えば、メチル−トリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニル−トリス(メチルエチルケトオキシム)シランなどが好ましい。
【0022】
縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)としては、例えば、市販の一液RTVゴム系材料が挙げられ、具体的には、硬化機構が縮合型のオキシム型では、東レ・ダウコーニング(株)製の商品名「SE5070」、GE東芝シリコーン(株)製の商品名「TSE382」、信越化学工業(株)製の商品名「KE45」、「KE44」、「KE441」、「KE445」、「KE4525」、「KE402」等を用いることができる。
【0023】
(ii)シリコーンオイル(B)
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物には、必須の構成成分として、シリコーンオイル(B)が含有される。
シリコーンオイル(B)としては、その構造は特に限定されず、シリコーンオイルとして公知の、例えば、次の一般式で表されるポリシロキサンの側鎖、末端がすべてメチル基であるポリジメチルシロキサン(ジメチルシリコーンオイル)や、ポリシロキサンの側鎖の一部がフェニル基であるメチルフェニルシリコーン、ポリシロキサンの側鎖の一部が水素であるメチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物の特徴である速い反応性はシリコーンオイル(B)の揮発性の大きさに依存しており、シリコーンオイル(B)は揮発性を高める(沸点を低く)観点から低粘度のものが良く、具体的には25℃における動粘度が50mm/s以下であることが好ましく、市販のものとして、25℃における動粘度が0.65mm/s〜50mm/sのものを用いることができる。動粘度が50mm/sを超えると揮発性が低く過ぎて前記室温硬化型ポリシロキサン(A)の硬化速度が遅くなり、シリコーンオイル(B)が残って硬化物が膨潤し接着力が弱くなったり硬化被膜の強度や撥水力が弱くなるという不具合が生じる。
シリコーンオイル(B)の具体的なものとして、例えば、GE東芝シリコーン(株)製の商品名「TSF451」シリーズがあり、「TSF451−0.65」、「TSF451−10」、「TSF451−20」、「TSF451−30」、「TSF451−50」、信越化学工業(株)製「KF−96L−0.65cs」等を用いることができる。
【0028】
(iii)フィラー(C)
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物には、土壌との接着性や前記土壌表層部改質用シリコーン組成物の硬化被膜の強度を向上させるために、フィラー(C)が含有される。また、フィラーを添加することで土壌表層部改質用シリコーン組成物にチキソ性を付与することができるので前記土壌表層部改質用シリコーン組成物の粘度調整剤としても機能する。
フィラー(充填材又は充填剤)としては、公知の充填剤、例えば、煙霧質シリカ、表面処理煙霧質シリカ、沈殿シリカ、けいそう土、石英粉、炭酸カルシウム、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、鉄またはアルミニウム等のケイ酸塩(またはこれらの複合酸化物)などの他、接着向上剤としてシランカップリング剤が挙げられる。中でもポリシロキサンへの分散性に優れたシリカ系が好ましく、特に疎水性の煙霧質シリカ(疎水性フュームドシリカ)は分散性、ポリシロキサン硬化物の機械強度の向上の観点からより好ましい。
また、フィラーの比表面積としては、30〜500m/gであることが好ましい。フィラーの比表面積が30m/g未満の場合には粒度が粗くなりシリコーン組成物の硬化物の機械強度が弱くなる。また、フィラーの比表面積が500m/gを超えると凝集して分散性が悪くなる。
【0029】
フィラー(C)として、具体的には、疎水性のフュームドシリカでは、日本アエロジル(又はデグッサ)社製の商品名「AEROSIL R972」や「AEROSIL R202」が挙げられ、例えば、この「AEROSIL R972」は、親水性フュームドシリカをジメチルジクロロシランで表面処理したものであって、BET法による比表面積は、およそ110m/gである。
【0030】
(iv)土壌表層部改質用シリコーン組成物
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物には、上記の縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)、シリコーンオイル(B)及びフィラー(C)が含有され、それらの含有割合は、前記室温硬化型ポリシロキサン(A)100重量部に対して、シリコーンオイル(B)が20〜80重量部、好ましくは40〜60重量部であり、フィラー(C)が1〜20重量部、好ましくは5〜15重量部である。シリコーンオイル(B)の割合が20重量部より小さくなると土壌表層部改質用シリコーン組成物が高粘度化して散布作業性が悪くなり、80重量部を超えるとシリコーンオイル(B)の揮発時間が長くなるため縮合硬化後に機械強度が低くなるなどして良好な硬化被膜が得られない。またフィラー(C)が1重量部より少ないと前記土壌表層部改質用シリコーン組成物の土壌への接着性や硬化後の硬化強度が低下し、20重量部より多いと土壌表層部改質用シリコーン組成物が増粘化して散布作業性が悪くなる。
また、本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物は、25℃における粘度が50〜2000mPa・sであり、好ましくは、300〜700mPa・sである。25℃における粘度が50mPa・s未満になると土壌へ浸透が速すぎて土壌を構成する土砂粒子表面に付着する土壌表層部改質用シリコーン組成物の量が少ないため接着性が乏しく、また、低粘度すぎて地下流出が発生する不具合が生じ、一方、2000mPa・s超では、高粘度のため均一な散布が困難になり、また土壌へ浸透し難たく土壌表面に厚い液溜り状に滞留するため硬化時間も著しく長くなるなどの不具合が生じる恐れがある。
所定粘度に調整する方法は、前記の室温硬化型ポリシロキサン(A)や前記シリコーンオイル(B)の粘度やフィラー(C)の比表面積など上記の配合条件の範囲内で適宜調整すればよい。
【0031】
また、本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物には、本発明の効果やを妨げず、かつ25℃における粘度が10〜2000mPa・sを外れない範囲で、更に、必要に応じて、助剤および/または添加剤を加えることができ、例えば、耐候安定剤、染料、顔料、防汚剤、防かび剤および殺細菌剤、難燃剤等がある。
【0032】
また、本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物の散布量としては、適宜、設定されるが、0.1〜6.0kg/mの範囲が好ましく、2〜5kg/mがより好ましい。散布量が0.1kg/mより少ないと、土壌に対して充分な固着効果を与えられないし、6kg/mより多くすると、経済的に不利となる。
【0033】
2.土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法としては、具体的には、二つの態様をとることができ、縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)の外観、粘度性状によって、適宜どちらかの態様をとることができる。
第一の態様としては、先ず、シリコーンオイル(B)とフィラー(C)を混合した後、前記室温硬化型ポリシロキサン(A)を混合することを特徴とするものである。第一の態様の製造方法によれば、各混合成分の性状や配合割合に係らず容易に均一分散でき、品質にばらつきの少ない土壌表層部改質用シリコーン組成物が得られる。
【0034】
また、第二の態様としては、前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)に前記フィラー(C)を混合した後、前記シリコーンオイル(B)を加えて混合するものである。第二の態様の製造方法は、フィラー(C)の比重が大きくシリコーンオイル(B)に混合した際にフィラー(C)が沈降分離してしてしまう場合に有効である。すなわち、前記シリコーンオイル(B)よりも粘度が高い前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)にフィラー(C)を分散させることでフィラー(C)の沈降分離が抑止される。その結果、均一分散された土壌表層部改質用シリコーン組成物が得られる。
【0035】
第一の態様、第二の態様の前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)はいずれも25℃における粘度が0.5Pa・s以上であることが好ましい。0.5Pa・s未満の場合には本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物の好適な粘度範囲から外れて(低くなって)本発明の作用効果が得られない。第一の態様、第二の態様は、いずれも、高圧ホモジナイザー等の機器を使用せずに作製することができるので、簡便であり、効率的で生産性の高い土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法となる。
【0036】
3.土壌表層部改質用シリコーン組成物で被覆した表面改質土砂
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物は、土砂粒子の表面処理剤としても使用でき、土砂粒子の表面に土壌表層部改質用シリコーン組成物の硬化被膜を形成することにより撥水性を有した表面改質土砂となる。なお、前記土砂粒子とは、土砂を構成する砂や砂利や小石などの硬質の石粒や、微細な粉状物とその凝集体、またはそれらの複合凝集物などからなり、自然な状態で凝集固着した粒状体(または不定形)を意味するものである。
土砂粒子に硬化被膜を形成する方法は特に限定されないが、ヘンシェルミキサー等の混合装置で土砂を攪拌しながら土壌表面処理用シリコーン組成物を滴下または噴霧し、必要に応じて加水分解のための水を添加する乾式処理法や、土砂を土壌表層部改質用シリコーン組成物に浸漬したのち、余剰の土壌表層部改質用シリコーン組成物を除去してから湿潤雰囲気で縮合反応させながら振動造粒や攪拌造粒する湿式処理法が適用できる。さらに粒度調整や解し工程を設けてもよい。何れの工程も最終工程で縮合反応を完了させる加熱キュアをすることが望ましい。
【0037】
表面改質土砂の形態としては、土砂粒子の表面に土壌表層部改質用シリコーン組成物の硬化被膜が形成された形態αと、土砂粒子の内部空隙の一部または全体に土壌表層部改質用シリコーン組成物が浸透して硬化被膜が形成された形態βがある。形態αは、石粒の場合を除いて外力により硬化被膜内部で土砂粒子が解れやすいので衝撃緩衝性を有し、さらに土砂粒子内部に空隙を有しているため形態βに比べて軽量である。形態βは土砂粒子内部まで硬化被膜が形成されているため表面改質された表面積が大きいため、高い撥水性を有する。また形態βも外力で多少解れるが、硬化被膜と強固に接着されているため固めの感触を有する。このように本発明の表面改質土砂はその形態の違いにより機能性や感触が異なるため、用途に応じて単独または複合して利用できる。
表面改質土砂の形態は、土砂粒子の表面を処理する土壌表層部改質用シリコーン組成物の粘度で調整でき、粘度が高いと形態αとなり易く、粘度が低いと形態βとなる。
【0038】
4.シリコーン被覆土砂集合体
シリコーン被覆土砂集合体は、複数の土砂粒子の表面と空隙に満遍なく土壌表層部改質用シリコーン組成物が浸透して縮合硬化することにより、ゴム弾性を有する硬化被膜を介して複数の土砂粒子が連結された複合物である。そして土砂粒子の表面と空隙に浸透して硬化した上述のシリコーン組成物の硬化被膜によって被覆された土砂粒子は近接する土砂粒子と硬化被膜を介して連続的に連結されているため、土砂粒子を内包したセル構造が三次元的に連結した集合体構造であり、また、土砂粒子間の隙間部分に浸透して硬化した硬化物は土砂粒子表面の膜厚よりも厚くなるため、その結果として個々の土砂粒子表面は硬化被膜と粒子間空間部を充満して硬化形成された厚肉硬化物で包まれて、面状のゴム状被膜と、点または線状のゴム状肉厚硬化物によって支持されており衝撃緩衝や歩行時の感触性機能を発揮できる。
【0039】
一般に土砂粒子は砂利のような一固体形態のもの以外は微細な粒子の集合体であるので、踏まれたりすると凝集が壊れて形状が変形することは広く知られる現象である。また、この凝集崩壊を密閉系で行うと凝集体の体積が減少する傾向があり、さらに湿った土砂粒子の場合は、固液分離を伴った若干の体積減少と形状変形を起こす。本発明の表面改質土砂構造体は略密閉系で土砂粒子を内包しているので、土砂粒子に物理的な力が作用すれば同様に略密閉系の三次元セル構造体内でも粒子凝集破壊が起こる。この土砂粒子破壊は印加された応力(機械エネルギー)を凝集破壊という状態で消費したことになるので、一種の衝撃吸収効果を有するといえる。さらに上述のシリコーン硬化物のセル構造が三次元的に連結した集合体も有する略独立発泡体と同様の弾力特性に起因した衝撃緩衝効果を有するので、前記シリコーン硬化物のセル構造とセルに内包された土砂粒子の相乗作用により、独特の衝撃緩衝性と歩行感触が得られる。本シリコーン被覆土砂集合体は、農薬取締法で規程された除草剤用途として使用できない場所(農耕地)のように土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布できない場合に、除草シートのように敷設して使用することにより、土壌に土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布した場合に近い効果が得られる。使用形態の例としては、農耕地の畦道や土手の除草マットとして使用でき、除草効果と合わせて農耕作業中の歩行転倒時の衝撃緩衝や足場の感触性を良くして転倒防止できるなどの効果が得られる。
【0040】
5.土壌改質方法
本発明の土壌改質方法は、土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して土壌表層内部に浸透させて縮合硬化せしめ、前記土壌表層の構成物を前記シリコーン組成物の硬化物で連結して表面改質土壌層を形成するものである。土壌改質の効果は、土壌表層部改質用シリコーン組成物の土壌への浸透の程度に依存するので、土壌の性状や種類に応じて本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物の構成要件の範囲内において適宜粘度調整したものを散布する。比較的空隙の多い土壌用には粘度を高目に調整し、密な土壌用には粘度を低目に調整して散布する。また、硬化速度の調整にはシリコーンオイル(B)の粘度や含有割合を調整すればよい。
【0041】
6.土壌改質材の施工方法
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物を使用した土壌改質の施工方法として次のいずれかの施工方法を適用できる。
第一の施工方法は、土壌に本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物を土壌に直接散布する施工方法であり、最も簡便な施工方法である。
第二の施工方法は、土壌改質を施工する地面に本発明の表面改質土砂を敷き詰めて覆土し、次いで覆土した場所に本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して前記地面まで浸透させて縮合硬化せしめ、表面改質土砂と前記地面を前記シリコーン組成物の硬化物で連結する施工方法である。第二の施工方法は、表面改質土砂が既に土壌表層部改質用シリコーン組成物で表面改質されているため、敷き詰めた表面改質土砂の空隙を好みによって適宜土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して固定すればよく、散布量が少なくて済む。また、敷き詰めた表面改質土砂の空隙を十分に充満させて硬化させれば、本発明のシリコーン被覆土砂集合体と同様に衝撃緩衝効果や独特の歩行感触が得られる。本施工方法によれば硬化済みの表面改質土砂の被膜表面と後から散布される未硬化である土壌表層部改質用シリコーン組成物との接触界面は、土壌表層部改質用シリコーン組成物が硬化しても前記表面処理土砂表面と土壌表層部改質用シリコーン組成物の硬化面の接着性は小さいので、歩行時の荷重で簡単に界面剥離が起こる。この現象に起因して前記シリコーン被覆土砂集合体とは異なる独特の歩行感触性や衝撃緩衝性が発現する。
【0042】
第三の施工方法は、粘土質の土壌であっても土壌表層部改質用シリコーン組成物の土壌改質作用を発揮させるための施工方法である。まず、粘土質の地面に角張った突起を複数有した形状の小石(a)を敷き詰めたのち公知の押圧手段(例えば、土木工事用の圧搾機等)で前記小石(a)の突起部分を前記地面に食込ませて、次いで前記小石(a)よりも径の小さい砂利(b)を前記小石(a)の空隙を埋めるように敷き詰めて前期粘土質の地面上に覆土層を形成し、次いで前記覆土層に土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して硬化させる施工方法である。土壌表層部改質用シリコーン組成物は覆土層の空隙に浸透しつつ保持されるため、傾斜地であっても散布した土壌表層部改質用シリコーン組成物が流れてしまうことがない。また、粘度質の地面に食込んだ前記小石(a)の部分が前記粘土質地面へのスパイク作用を有して土壌表層部改質用シリコーン組成物で被覆硬化された覆土層のズレや滑落を防止する。また、前記覆土層の構成として、小石(a)より表層側に本発明の表面改質土砂を敷き詰めた層を形成してなるものとしてもよく、前記表面改質土砂層が内設されることにより粘土質の土壌に独特の歩行感触性を付与することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
[実施例]
表1に示す組成にて、各種粘度のシリコーン組成物を調整した。調整方法を以下に示す。比表面積が110m/gの疎水性シリカ(デグッサ社製「AEROSIL R972」)と、25℃における動粘度が0.65mm/sであるシリコーンオイル[信越化学工業(株)製「KF−96L−0.65cs」]を混合攪拌して、均一溶解させた。その混合物に、25℃における粘度が5Pa・sである縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン[信越化学工業(株)製「KE−445−T」]を加えて、30分間攪拌し、乳白色の均一分散液700gそれぞれ実施例1、2、3を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
(評価結果)
実施例1〜3で得られた未硬化の液状シリコーン組成物について、次の評価方法で性能評価を実施した。
(i)発芽抑制効果:
市販の腐葉土をプランター(30cm×13cm×13cm)に8分目入れ、草として水菜の種を表面から深さ約1cmの土中に15g蒔いた。その上から水をジョーロで200mL散布した。これを4個用意し、うち3個には実施例1〜3のシリコーン組成物を各200g散布し(No.1〜3)、1個は比較例としてシリコーン組成物を散布しなかった(No.4)。10、14、20日後の草発生の様子を写真撮影した後、都度水を200mL散布した。結果を表2に示す。
本発明のシリコーン組成物を散布したNo.1〜3は、散布後シリコーンオイルの蒸発がただちに始まり、ついで空気中の湿気により硬化皮膜の形成が開始された。散布後24時間経過したときにはシリコーンの硬化皮膜が完全に形成された。これらは、散布後20日間経過しても全く草の発生は認められなかったが、シリコーン組成物を散布しなかったNo.4は10日後から草が発生し、20日後まで順調に発育した。以上の結果から、本発明のシリコーン組成物が植物の発芽抑制に有効であることがわかった。
【0046】
【表2】

【0047】
(ii)撥水性:
上記シリコーン組成物を散布したNo.1〜3について、20日後に土を掘り返し土中の様子を調べた。その結果、シリコーン硬化物は土表面に土の凝集粒子を内包した厚さ3〜5mmの皮膜を形成しており、シリコーンの土中への浸透やプランター下部からの流出は認められなかった。また、シリコーン硬化皮膜の表面には散布した水や雨水のものと思われる水分がたまっており、土中には湿り気がほとんどなかった。以上の結果から、土表面にシリコーン組成物の撥水皮膜が形成されたことにより土中への水の浸透が妨げられていることがわかる。これにより、草の発芽に必要な量の水が土中に供給されなかったために草が発生しなかったと考えられる。また、プランターの短尺側の一方を持ち上げて約45°に傾斜させて上からじょうろで2リットル/minの割合で五分間水を散布して土の表層の土の流出状態を確認したところ、土壌表層の土が捕捉して流失することは無かった。
【0048】
(iii)衝撃緩衝性
腐葉土を層厚5cmで100cm×200cmの範囲に敷き詰めて実施例1〜3シリコーン組成物を上述の発芽抑制効果の検証試験の3倍の量を散布してシリコーン被覆土砂集合体を形成した。比較はシリコーン組成物散布無しの同様の腐葉土層とした。衝撃緩衝試験は高さ50cmの台から被験者が自然に各シリコーン被覆土砂集合体表面に飛んで着地したときの体感衝撃で評価した。被験者は女性1名(45kg、55kg)、男性(55kg、65kg)の計4名で、各自別の場所に一回ずつ着地させた。その結果、シリコーン被覆土砂集合体を形成した方がシリコーン組成物散布無しの場合よりも体感着地衝撃が少なかった。また、試験後に着地部分と非着地部分のシリコーン被覆土砂集合体を厚み方向に切断して断面を観察したところ、着地面の方だけが土粒が細かく砕けていた。
【0049】
(iV)歩行感触性
上記の衝撃緩衝性の試験と同様にシリコーン被覆土砂集合体を形成し、前記試験と同じ被験者4名に市販の平底の運動靴で長尺方向(200cm方向)に自由な歩行速度で歩いてもらい、歩行したときの感触を申告する官能試験で評価した。その結果、腐葉土のみの場合と異なりスポンジや毛長の絨毯の上を歩いているような感触を被験者から得られた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の土壌表層部改質用シリコーン組成物は、環境負荷が小さく安全で、簡単に散布できて短時間で硬化して土壌表面と表層に撥水性に優れる硬化被膜を形成でき、雨水による土砂の流出を防止でき、また植物の発芽促成作用にも優れているので、高速道路や鉄道線路の路肩や土手の補強、発芽防止に好適に用いることがきる。また、本発明の土壌表面処理用シリコーン組成物を散布した土壌表層部にはシリコーン被覆土砂集合体が形成され、土砂の流出防止や植物の発芽抑制作用に加えて衝撃緩衝性や歩行感触性と有するので、公園の歩行路や路肩の土木分野の機能性資材として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)、シリコーンオイル(B)およびフィラー(C)を構成成分として含有するシリコーン組成物であって、
前記構成成分の含有割合は、前記室温硬化型ポリシロキサン(A)100重量部に対して、前記シリコーンオイル(B)が20〜100重量部、および前記フィラー(C)が1〜20重量部であり、且つ、25℃における粘度が10〜2000mPa・sであることを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物。
【請求項2】
前記室温硬化型ポリシロキサン(A)の縮合官能基がオキシム基であることを特徴とする請求項1に記載の土壌表層部改質用シリコーン組成物
【請求項3】
前記シリコーンオイル(B)は、25℃における動粘度が50mm/s以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の土壌表面処理用シリコーン組成物。
【請求項4】
前記フィラー(C)は、BET法による比表面積が30〜500m/gのシリカであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の土壌表面処理用シリコーン組成物。
【請求項5】
縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)、シリコーンオイル(B)およびフィラー(C)を含有する土壌表面処理用シリコーン組成物の製造方法であって、前記シリコーンオイル(B)と前記フィラー(C)を混合した後、前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)を加えて混合することを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法。
【請求項6】
縮合反応性を有する液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)、シリコーンオイル(B)およびフィラー(C)を含有する土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法であって、前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)に前記フィラー(C)を混合した後、前記シリコーンオイル(B)を加えて混合することを特徴とする土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法。
【請求項7】
前記液状の室温硬化型ポリシロキサン(A)は、縮合反応開始前の状態において25℃における粘度が0.5Pa・s以上であることを特徴とする請求項5〜6のいずれか1項に記載の土壌表層部改質用シリコーン組成物の製造方法。
【請求項8】
土砂粒子と前記土砂粒子の表面に密着被覆された請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌表層部改質用シリコーン組成物の硬化物とで構成してなることを特徴とする表面改質土砂。
【請求項9】
複数の土砂粒子が請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物の硬化物で被覆され、かつ前記土砂粒子が前記硬化物を介して連結されてなることを特徴とするシリコーン被覆土砂集合体。
【請求項10】
土壌表面に請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して土壌表層内部に浸透させて縮合硬化せしめ、前記土壌表層の構成物を前記シリコーン組成物の硬化物で連結して表面改質土壌層を形成することを特徴とする土壌改質方法。
【請求項11】
土壌改質材の施工方法であって、土壌改質を施工する地面を請求項8に記載の表面改質土砂で覆土し、次いで覆土した場所に請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して前記地面まで浸透させて縮合硬化せしめ、表面改質土砂と前記地面を前記シリコーン組成物の硬化物で連結することを特徴とする土壌改質材の施工方法。
【請求項12】
土壌改質材の施工方法であって、土壌改質を施工する地面に角張った突起を複数有した形状の小石(a)の敷き詰め、次いで前記小石(a)の一部を前記地面に食込むように押圧し、次いで前記小石(a)よりも径の小さい砂利(b)を前記小石(a)の空隙を埋めるように敷き詰めて前期粘土質の地面上に覆土層を形成し、次いで前記覆土層に土壌表層部改質用シリコーン組成物を散布して硬化させることを特徴とする土壌改質材の施工方法。