説明

土木・建築仕上げ用組成物及びアミンブラッシング抑制方法

【課題】土木、建築分野、塗り床材等では、硬化剤として脂肪族ポリアミンやポリアミンアダクト等が多く用いられるが、低温でエポキシ樹脂との相溶性が優れず、湿度の高い雰囲気下及び露点環境下では、アミンブラッシングを起こす、この塗膜の外観不良となるアミンブラッシングを軽度の力で、払拭回数も少なく、容易に除去することまた再発生を抑制することである。
【解決手段】アミド基を有する溶剤を20%〜70%含有し、混合物の溶解度パラメータSP値が9〜12である土木・建築仕上げ用組成物であり、処理後、仕上げ剤を塗布するアミンブラッシング抑制方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築仕上げ用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、防食性、耐薬品性に優れ、また塗膜が強靭な物性を有することから塗料用途に広く使用されている。このエポキシ樹脂において 特許文献にアミンブラッシングを生じ難い組成物は開示されている一方、モル比、重量比率で限界が示されており、目的とする条件、環境下でアミンブラッシングを生ぜずに施工することの難しいことが、表れている。土木、建築分野、塗り床材等では、硬化剤として脂肪族ポリアミンやポリアミンアダクト等が多く用いられるが、低温でエポキシ樹脂との相溶性が優れず、湿度の高い雰囲気下及び露点環境下では、アミンブラッシング(表面が白化する現象)を起こすため、塗膜の外観が不良になるという問題がある。アミンブラッシングは、エポキシ樹脂塗膜中の相溶性を欠き、表面に遊離したアミンが水分子を補足し、空気中の炭酸ガスと反応して、アミン炭酸塩を形成する。これが、塗膜表面にアミンブラッシング現象として現れる。これを除去するには、一般的に酸(例えば酢酸)やアミン硬化剤に対して溶解性が高い溶剤(例えばトルエン、キシレン)が用いられるが、まだ 不十分で容易に除去することができない。
【0003】
【特許文献1】特開2005−255852号公報
【特許文献2】特開2004−196945号公報
【特許文献3】特開2004−92381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、アミンブラッシングを軽度の力で、払拭回数も少なく、容易に除去することまた再発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、アミド基を有する溶剤を20%〜70%含有し、混合物の溶解度パラメータSP値が9〜12である土木・建築仕上げ用組成物であり、アミンブラッシング除去できる。
請求項2の発明は 請求項1記載の土木・建築仕上げ用組成物において、トルエン・キシレンを含まないことを特徴とする土木・建築仕上げ用組成物であり、室内空気汚染に係わるトルエン、キシレンを含まず、健康被害の一因を無くすことができる。
請求項3の発明は 請求項1乃至2記載の土木・建築仕上げ用組成物で処理後、仕上げ剤を塗布するアミンブラッシング抑制方法であり、処理後アミンブラッシングを抑制する。
【発明の効果】
【0006】
本発明はアミド基を有する溶剤を20%〜70%含有し、混合物の溶解度パラメータSP値が9〜12である土木・建築仕上げ用組成物であることにより、アミンブラッシングを軽度の力で、払拭回数も少なく容易に除去することができ、除去物の再付着が少ない土木・建築仕上げ用組成物ができる。また、トルエン・キシレンを含まない組成物により、健康被害の一因を無くすことができる。また、除去後、ワックス、樹脂ワックスの仕上げ剤を塗布することにより、再発生を抑制でき、長時間の良好な面を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
20%〜70%含有するアミド基を有する溶剤としてはN,N‐ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあげることができ、沸点は 130〜250℃が好ましく、さらに好ましくは150〜210℃である。中でも N−メチル−2−ピロリドンが毒性もなく、好ましい。20%未満であるとアミンブラッシングを構成する物質の膨潤・遊離が不十分で、除去に時間を要し、実用的ではない。80%を超えるとアミンブラッシングを構成する物質の遊離はするものの乾燥が容易ではなく、再付着する。
その他の溶剤としては非アミド系溶剤で、混合時の溶解度パラメータSP値が9〜12の範囲が好ましい。これは推定ではあるが、アミンブラッシングを構成する物質を遊離する溶解度パラメータSP値に近く、非アミド系溶剤で、この範囲に選定すると乾燥性も満足できることである。アミド系溶剤(アミド基を有する溶剤を言う)が水と混合可能であるが、その他溶剤としては非水溶或いは限度のある水溶性のもので、乾燥性及び除去対象物質の表面からの離れ、再付着の抑制に寄与している可能性がある。n−ブチルアルコール、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサン等があげられる。
非アミド系溶剤が単一溶剤で構成し、全体に対する比率が40〜60%である時はSP値が、8.5以上の溶剤を使用することが望ましい。8.5未満であるとアミド系溶剤との相溶に欠け分離し易い。また非アミド系溶剤が2以上の混合溶剤の場合はこの混合溶剤がSP値が9〜12であることが好ましい。
【0008】
土木・建築仕上げ用組成物はエポキシ樹脂等の熱硬化性組成物に適応でき、塗布厚さ0.8mm以上であり、一般的には約6mmまでで、対象の塗材を組成物が剥離、膨潤等膜の機能を損傷させることはない。
【0009】
健康被害への影響が大きい、屋内での使用ではキシレン、トルエンを排除するのが好ましい。。組成物の加重平均沸点は乾燥性の点で94〜184℃が好ましい。仕上げ剤とは、ワックス、樹脂ワックス等の配合物で、JE−9003(商品名 アイカ工業(株))、ワックスオール(商品名 (株)リンレイ)、シールド(商品名 ジョンソン・プロフェッショナル(株))など、床用仕上げ剤として 市販のものでよく、本発明の組成物で 除去後、乾燥(表面のべとつきないこと)を確認後 塗布することにより、アミンブラッシングの外的要因を排除でき、再発生を防ぐことができる。なお、本発明は揮発成分からのみなるが、樹脂系の仕上げ剤においては、仕上げ材のプライマー成分となる成分を含んでも良い。例えば、仕上げ材の成分と相溶性の高い樹脂とエポキシ樹脂との配合物などが挙げることができる。
【0010】
溶解度パラメータについてはJ. Appl. Polym. Sci., 5(15), 339 (1961) 、SP値基礎・応用と計算方法(著者 山本秀樹 (株)情報機構発行)等を参照し、混合物の溶解度パラメータSP値は容積平均である。なお 単位はcal系(cal/cm1/2で SI系(Mpa)1/2から変換するには0.48888を掛ける。
【0011】
以下 実施例、比較例をあげて、詳細な説明をする。なお 説明がないものは重量部で表す。
【実施例】
【0012】
表1に実施例、表2に比較例の配合と評価結果、溶解度パラメータSP値を示す。なお パラメータ算出の基となる溶解度パラメータSP値、スペックを表3に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
試験方法
アミンブラッシング除去能力試験
無溶剤形エポキシ厚膜塗床材(アイカ工業 製品JE−2520)をエポキシプライマーで処理したスレート板に1.0kg/m塗布した後、5℃相対湿度80%下24時間静置した後、23℃相対湿度50%下で静置し、塗膜表面を強制的に結露させアミンブラッシング(白化)させたものを試験体とした。各種配合したものを、乾いた布等に十分含ませ、アミンブラッシングした箇所を拭き取った(1回)後、23℃相対湿度50% 1時間乾燥後、塗膜外観を目視にて確認し、また 指触乾燥評価を実施した。
アミンブラッシング除去能力
基準は下記のように
◎:白化部分完全に除去できる。
○:完全に除去されず白化部分が僅かに残る。
△:表層のみ除去されるが、白化部分残る。
×:白化部分完全に残っている。
指触乾燥評価
基準は下記のようにした。
◎:べとつきなし。
○:問題ないレベルであるが、僅かにあり。
△:若干べとつきあり。
×:かなりべとつきあり。
【0015】
【表2】

【0016】
試験方法・評価方法は表1と同じ。
【0017】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、エポキシ樹脂のアミンブラッシングという可視現象に着目したものであるが、非可視の状態でも当然効果が得られ、土木・建築仕上げ用組成物は接着の促進に有用なものである。塗り床の他、エポキシ樹脂は用途は広範で、土木、建築分野全体で、効果が期待できる。特に、外観が重要な位置を占める仕上げ材においては有用性が高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド基を有する溶剤を20%〜70%含有し、混合物の溶解度パラメータSP値が9〜12である土木・建築仕上げ用組成物
【請求項2】
請求項1記載の土木・建築仕上げ用組成物において、トルエン・キシレンを含まないことを特徴とする土木・建築仕上げ用組成物
【請求項3】
請求項1乃至2記載の土木・建築仕上げ用組成物で処理後、仕上げ剤を塗布するアミンブラッシング抑制方法

【公開番号】特開2007−177206(P2007−177206A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195370(P2006−195370)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】