説明

圧力センサー、センサーアレイ、センサーアレイの製造方法、及び把持装置

【課題】メンブレンの破損を防止できる圧力センサー、センサーアレイ、センサーアレイの製造方法を提供すること。
【解決手段】圧力センサー6は、開口部61Aを有する支持体61と、支持体61上に設けられて、開口部61Aを閉塞するダイアフラム部7を有する支持膜62、及びダイアフラム部7上に設けられて、撓むことで電気信号を出力する圧電体63を備えた圧力検出部9と、圧力検出部9上に、支持膜62の膜厚み方向に沿う筒状の空洞部64Aを有するとともに、支持膜62を膜厚み方向から見た平面視において、空洞部64Aの筒状内周壁641が開口部61Aと重なる位置、または開口部61Aよりも外側に形成される枠体64と、枠体64を閉塞する封止膜65と、空洞部64Aの筒状内周壁641、封止膜65、圧力検出部9により形成される内部空間66に充填されるシリコーンオイル20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサー、センサーアレイ、センサーアレイの製造方法、及び把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイアフラム型の超音波センサー素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この超音波センサー素子は、開口部を有する半導体基板と、開口部を閉塞して半導体基板の表面に形成された絶縁膜層上に2層の電極と、これらの2層の電極の間で挟んだPZTセラミックス薄膜層(圧電膜)と備える。そして、開口部に対して平面的に積層される多層膜構造のダイアフラムと、圧電膜及び2層の電極で構成される圧電体とを有するメンブレンが形成される。この超音波センサー素子では、上下の電極からPZTセラミックス薄膜層に所定の電圧を印加すると、PZTセラミックス薄膜層が面内方向に対して伸縮し、これに伴ってダイアフラムが面方向に直交する方向に撓んで振動して、超音波が出力される。
特許文献1において、PZTセラミックス薄膜層の一部は、外部に露出する構成となっている。
ところで、このような超音波センサー素子は、一般的に、圧力センサーにも適用できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−319945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、物体を把持する把持装置に前記圧力センサーを適用した場合、当該圧力センサーは、前記把持装置のアーム等により物体を把持した際の圧力をメンブレンの圧電体の撓み状態から検出する。
この場合、物体と外部に露出する圧電膜とが直接接触することから、メンブレンの圧電体やダイアフラムに局所的に力が加わり、メンブレンの圧電体やダイアフラムが破損し易くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる圧力センサーは、開口部を有する支持体と、前記支持体上に設けられて、前記開口部を閉塞するダイアフラム部を有する支持膜、及び前記ダイアフラム部上に設けられて、撓むことで電気信号を出力する圧電体を備えた圧力検出部と、前記圧力検出部上に、前記支持膜の膜厚み方向に沿う筒状の空洞部を有するとともに、前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視において、前記空洞部の筒状内周壁が前記開口部の内周縁と重なる位置、または前記開口部の内周縁よりも外側に形成される枠体と、前記枠体を閉塞する封止膜と、前記空洞部の筒状内周壁、前記封止膜、前記圧力検出部により形成される内部空間に充填される圧力媒体と、を備えることを特徴とする。
【0007】
これによれば、支持膜により開口部を閉塞する部分が、圧力を検知するダイアフラム部となっており、このダイアフラム部、及びダイアフラム部に積層される圧電体でメンブレンが形成されている。すなわち、圧力検出部上に形成される枠体の空洞部には、圧力検出部の一部(メンブレン)が収納されている。
そして、圧力検出部の圧電体が枠体に収納されて、枠体の内部空間に力を分散させる圧力媒体が充填されている。また、枠体は封止膜で封止されている。
そのため、この圧力センサーを、物体を把持する把持装置に適用した場合、封止膜と物体との間に生じる圧力は、圧力媒体を介して圧電体に伝達される。すなわち、物体は直接、圧電体に接触することがなく、物体が封止膜に接触する際の力が圧力媒体を介して圧力検出部に伝達される。これにより、圧力を検知する圧力検出部のダイアフラム部に分散された力が加わることとなる。従って、ダイアフラム部に局所的に力が加えられることを防止し、圧力検出部の破損を防止でき、ひいては、メンブレンの破損を防止できる。なお「上」とは、特定の部材が支持体から支持膜へ向かう方向に位置することを示すものとし、互いに接触していない場合も含むものとする。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる圧力センサーであって、前記枠体は、可撓性を有することを特徴とする。
【0009】
上記した適用例によれば、枠体が可撓性を有するので、枠体に力が加わると、枠体が収縮する。そのため、この力が枠体の内部空間に充填される圧力媒体を介して、ダイアフラム部に伝達されるため、圧力を良好に検知できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる圧力センサーが複数配列されてなるセンサーアレイであって、隣り合う前記圧力センサーの枠体間には、間隙が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記した適用例によれば、圧力センサーの枠体間には、間隙が形成されている。間隙として、例えば圧力センサーの変形限界未満の値で互いに接触する幅に設定する。すると、圧力センサーが圧力で変形し、変形限界以上に変形する前に、隣り合う圧力センサーの枠体と接触する。すると圧力センサーの枠体が互いに補強材として機能するため、センサーアレイの信頼性(圧力耐性)を高めることが可能となる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかるセンサーアレイは、上述した圧力センサーと、第2開口部を有する第2支持体、前記第2支持体上に設けられて、前記第2開口部を閉塞する第2ダイアフラム部を有する第2支持膜、及び前記第2ダイアフラム部上に設けられて、電圧の印加により撓む第2圧電体を備えた超音波トランスデューサー部を有する超音波センサーと、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記した適用例によれば、センサーアレイは、圧力センサー及び超音波センサーの2種類のセンサーを備えるので、例えば、本発明のセンサーアレイを、物体を把持する把持装置のアーム等に適用することで、超音波センサーで物体を認識し、アーム等で物体を把持した状態の圧力を圧力センサーで検知することができる。
また、超音波センサーは、枠体を、圧力センサーを構成する枠体と同じ工程で形成できる。そして、圧力媒体、及び封止膜を除いた構成部材で構成すればよいので、超音波センサーを容易に製造できる。すなわち、圧力センサーを製造する過程で、超音波センサーを製造することができる。従って、センサーアレイの製造工程を簡素化でき、製造コストを低減できる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかるセンサーアレイであって、前記超音波センサーは、前記超音波トランスデューサー部上に、前記第2支持膜の膜厚み方向に沿う筒状の第2空洞部を有するとともに、前記第2支持膜を膜厚み方向から見た平面視において、前記第2空洞部の筒状内周壁が前記第2開口部の内周縁と重なる位置、または前記第2開口部の内周縁よりも外側に形成される第2枠体を更に備えることを特徴とする。
【0015】
上記した適用例によれば、センサーアレイは、超音波センサーも第2枠体を含むので、例えば、物体を把持する把持装置のアーム等に適用する場合に超音波センサーが物体と接触して劣化あるいは破損することを防止できる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかるセンサーアレイであって、複数の前記圧力センサー及び複数の前記超音波センサーを備え、隣り合う前記圧力センサーの枠体の間、隣り合う前記超音波センサーの第2枠体の間、または隣り合う前記圧力センサーの枠体と前記超音波センサーの第2枠体との間には、間隙が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記した適用例によれば、超音波センサー及び圧力センサーは、間隙を介して隣り合う。そのため、超音波センサーの第2ダイアフラム部の振動は間隙部により伝達が抑えられる。そのため、超音波センサーからの振動は減衰された状態で圧力センサーに達するため、圧力を精度良く検知できるセンサーアレイを提供することが可能となる。
【0018】
[適用例7]上記適用例にかかるセンサーアレイであって、前記支持体と前記第2支持体は共通の共通支持体であり、前記共通支持体から前記圧力センサーの頂部までの高さは、前記共通支持体から前記超音波センサーの頂部までの高さより高く形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記した適用例によれば、圧力センサーの頂部が当接面となる。即ち、超音波センサーの頂部に先んじて当接するため、この状態では超音波センサーの頂部は物体とは接触しない。そのため、超音波センサーは圧力による劣化から逃れることができ、高い信頼性(圧力耐性)を保つことが可能となる。
【0020】
[適用例8]上記適用例にかかるセンサーアレイであって、前記圧力センサー及び前記超音波センサーは、交互に配置される2次元アレイ構造を備えていることを特徴とする。
【0021】
上記した適用例によれば、圧力センサー及び超音波センサーが交互に配置される2次元アレイ構造を有するので、超音波センサーにより物体を認識する位置と、圧力センサーにより物体を把持する力を検知する位置とが物体の略同じ位置を検出する。そのため、超音波センサーによる位置制御と、圧力センサーによる圧力制御とを滑らかに切り替えることが可能となる。
【0022】
[適用例9]上記適用例にかかるセンサーアレイであって、前記間隙は、前記圧力センサーに対して第1の圧力が印加された際に、前記枠体が撓んで、隣の前記圧力センサーの前記枠体、または前記超音波センサーの前記第2枠体と接触する寸法に設定されており、前記第1の圧力は、前記圧力センサーの許容圧力よりも小さいことを特徴とする。
【0023】
上記した適用例によれば、隣り合う前記圧力センサー間、または超音波センサー間、あるいは圧力センサーと超音波センサーとの間には、間隙が形成されている。ここで間隙を、第1の圧力を受けて、圧力センサーの枠体が変形した場合に、圧力センサーの許容圧力よりも小さい状態で隣の圧力センサーの枠体、または超音波センサーの第2枠体と接触する寸法に設定する。すると、圧力センサーの許容圧力範囲内にある第1の圧力で圧力センサーの枠体または超音波センサーの第2枠体と接触することで互いに補強材として機能する。そのため、センサーアレイの信頼性(圧力耐性)を高めることが可能となる。なお、ここでいう許容圧力とは、圧力センサーや超音波センサーのダイアフラム部または第2ダイアフラム部が破損しない最大の圧力をいう。
【0024】
[適用例10]本適用例にかかるセンサーアレイの製造方法は、複数の圧力センサーを含むセンサーアレイの製造方法であって、支持体上に支持膜を形成し、前記支持膜上に圧電体を形成して、複数の圧力検出部を形成する圧力検出部形成工程と、前記複数の圧力検出部上に前記圧電体を覆う枠体層を形成する枠体層形成工程と、前記枠体層形成工程により形成される前記枠体層の一部を除去して、筒状内周壁を有する空洞部を備え、隣り合う枠体間に間隙を有するように枠体を形成する枠体形成工程と、前記空洞部内に圧力媒体を充填する充填工程と、ロールコート法により前記空洞部を閉塞し、前記圧力媒体を封止する封止膜を形成する膜形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0025】
これによれば、間隙を持って区画された複数の圧力センサーを含むセンサーアレイを製造することができる。間隙を圧力センサーの枠体が変形した場合に、圧力センサーの許容圧力よりも小さい状態で隣の圧力センサーの枠体と接触する寸法に設定することで、圧力センサーの許容圧力範囲内で圧力センサーの枠体を互いに補強材とする枠体を形成することが可能となる。また、間隙を設けることで、隣り合う圧力センサーからの干渉を抑制しうるセンサーアレイの製造方法を提供することが可能となる。
【0026】
[適用例11]上記適用例にかかるセンサーアレイの製造方法であって、前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視で前記間隙と重なる位置において前記支持膜を分割する溝を形成する工程、をさらに備えることを特徴とする。
【0027】
上記した適用例によれば、圧力センサー間の干渉を避けることが可能となる。圧力センサーは、互いに溝を介して接続されているため互いに干渉が抑えられ、高い精度で圧力を検知しうるセンサーアレイの製造方法を提供することが可能となる。
【0028】
[適用例12]上記適用例にかかるセンサーアレイの製造方法であって、前記支持体の下側にセンサー基板を貼る工程と、前記センサー基板の少なくとも一部を残して、前記間隙に前記支持体を分割する溝を形成する工程とをさらに備えることを特徴とする。
【0029】
上記した適用例によれば、圧力センサー間の干渉を避けるセンサーアレイの製造方法を提供することが可能となる。圧力センサー間は、支持体を取り除く溝が形成されているため、互いに干渉することはなく、高い精度で圧力を検知しうるセンサーアレイの製造方法を提供することが可能となる。なお、「下側」とは、上記した「上」と反対側の方向を指すものとする。
【0030】
[適用例13]上記適用例にかかるセンサーアレイの製造方法であって、前記膜形成工程を行った後、前記圧力センサーを一つ以上含むブロックに分割する行程と、前記ブロックを、前記圧力センサーの下側がセンサー基板側にくるよう前記センサー基板に貼り付ける行程とを、さらに備えることを特徴とする。
【0031】
上記した適用例によれば、圧力センサーを一旦分割してからセンサー基板に貼り付けるため、支持体よりも大きなセンサー基板に対しても対応することができる。
【0032】
[適用例14]本適用例にかかるセンサーアレイの製造方法は、複数の圧力センサーと複数の超音波センサーとを含むセンサーアレイの製造方法であって、支持体上に前記支持膜を形成し、前記支持膜上に圧電体を形成して、複数の圧力検出部及び複数の超音波トランスデューサー部を形成する圧電体センサー部形成工程と、前記複数の圧力検出部及び複数の超音波トランスデューサー部上に前記圧電体を覆う枠体層を形成する枠体層形成工程と、前記枠体層形成工程により形成される前記枠体層の一部を除去して、筒状内周壁を有する空洞部を備え、かつ間隙により区分される複数の枠体を形成する枠体形成工程と、一部の前記空洞部内に圧力媒体を充填する充填工程と、ロールコート法により前記空洞部を閉塞し、前記圧力媒体を封止する封止膜を形成する膜形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0033】
これによれば、間隙を持って区画された複数の圧力センサーと複数の超音波センサーを含むセンサーアレイを製造することができる。間隙を圧力センサーの枠体が変形した場合に、圧力センサーの許容圧力よりも小さい状態で隣の圧力センサーまたは超音波センサーの第2枠体と接触する寸法に設定することで、圧力センサーの許容圧力範囲内で圧力センサーの枠体または超音波センサーの第2枠体を互いに補強材とする枠体を形成する製造方法を提供することが可能となる。また、間隙を設けることで、隣り合う圧力センサーや超音波センサーからの干渉を抑制しうるセンサーアレイの製造方法を提供することが可能となる。
【0034】
[適用例15]上記適用例にかかるセンサーアレイの製造方法であって、前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視において、前記間隙と重なる位置において前記支持膜を分割する溝を形成する工程をさらに備えることを特徴とする。
【0035】
上記した適用例によれば、超音波センサー及び圧力センサーは、支持膜を取り除くことで形成された溝を介して、隣り合うように形成される。そのため、超音波センサーの第2ダイアフラム部の振動がこの溝部により吸収される。つまり、超音波センサーからの振動は減衰された状態で圧力センサーに達するため、圧力を精度良く検知できる圧力センサーを備えたセンサーアレイの製造方法を提供することが可能となる。
【0036】
[適用例16]上記適用例にかかるセンサーアレイの製造方法であって、前記支持体の下側にセンサー基板を貼る工程と、前記センサー基板の少なくとも一部を残して、前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視で前記間隙と重なる位置において前記支持体を分割する溝を形成する工程をさらに備えることを特徴とする。
【0037】
上記した適用例によれば、圧力センサーや超音波センサー間の干渉を避けることを可能とする製造方法が提供できる。圧力センサーや超音波センサーの間は、支持体も含めて機械的に分断して形成されるため、互いに干渉することはなく、高い精度で圧力を検知しうるセンサーアレイの製造方法を提供することが可能となる。
【0038】
[適用例17]上記適用例にかかるセンサーアレイの製造方法であって、前記膜形成工程を行った後、前記圧力センサーまたは超音波センサーを少なくとも一つ以上含むブロックに分割する行程と、前記ブロックを、前記圧力センサーの下側がセンサー基板側にくるよう前記センサー基板に貼り付ける行程とを、さらに備えることを特徴とする。
【0039】
上記した適用例によれば、超音波センサーや圧力センサーを一旦分割してからセンサー基板に貼り付けるため、支持体よりも大きなセンサー基板に対しても対応することができる。
【0040】
[適用例18]本実施形態にかかる把持装置は、上述のセンサーアレイを備え、物体を把持する把持装置であって、前記物体を把持するとともに、前記物体に接触する接触面に少なくとも1つの前記センサーアレイが設けられる一対の把持アームと、前記センサーアレイから出力される電気信号に基づいて、前記物体の把持状態を検出する把持検出手段と、前記把持状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0041】
これによれば、物体が把持アームから離れている場合、把持アームの駆動速度を上げて動作させることで、把持アームが物体に近づくまでの時間を短縮することが可能となる。また、物体が把持アームに近づいた場合、把持アームの駆動速度を下げることで、把持アームと物体との衝突を避けることができる。そして、物体が把持アームと接触した後は、圧力センサーからの信号を用いることで、把持圧力を調整することが可能となる。即ち、物体を短時間で精密な把持圧力で把持できる把持装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】把持装置の概略図。
【図2】センサーアレイを示す斜視図。
【図3】超音波センサー及び圧力センサーを示す断面図。
【図4】センサーアレイの製造工程を示す図。
【図5】センサーアレイの製造工程を示す図。
【図6】センサーアレイの製造工程を示す図。
【図7】センサーアレイの製造工程を示す図。
【図8】実施形態1に係る変形例を示す図。
【図9】センサーアレイを示す斜視図。
【図10】センサーアレイを示す平面図及び断面図。
【図11】センサーアレイの製造工程を説明するための工程断面図。
【図12】センサーアレイの製造工程を説明するための工程断面図。
【図13】センサーアレイを示す斜視図。
【図14】センサーアレイを示す平面図及び断面図。
【図15】センサーアレイに圧力をかけた場合の断面図。
【図16】センサーアレイの製造工程を説明するための工程断面図。
【図17】センサーアレイの製造工程を説明するための工程断面図。
【図18】センサーアレイを示す斜視図。
【図19】センサーアレイを示す平面図及び断面図。
【図20】センサーアレイを示す斜視図。
【図21】センサーアレイを示す平面図及び断面図。
【図22】把持装置の把持動作を説明するための構成図。
【図23】把持装置の把持動作を説明するためのフローチャート。
【図24】把持装置の把持動作を説明するためのタイミングチャート。
【図25】センサーアレイを示す断面図。
【図26】センサーアレイの製造工程を示す図。
【図27】センサーアレイの製造工程を示す図。
【図28】センサーアレイを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る本実施形態を図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0044】
[把持装置の概略構成]
図1は、把持装置1の概略図である。
把持装置1は、例えば、物体10を把持する装置であり、物体10の位置を認識して物体を把持するものである。この把持装置1は、支持部材2と、支持部材2から延出する一対の、把持アームとしてのアーム3とを備えている。
支持部材2は、長手棒状に形成され、一対のアーム3を互いに近接離間させる駆動機構を備えるものである。
各アーム3は、物体10を把持する部分であり、互いに近接離間する方向に動作する。このアーム3と物体10とが接触する部分には、例えば、略矩形状の把持面31が形成される。この把持面31には、センサーアレイ4(図2参照)が取り付けられている。
【0045】
[センサーアレイの構成]
図2は、超音波センサーと、圧力センサーと、を備えるセンサーアレイを示す斜視図である。そして、図7(B)は、センサーアレイの製造工程を示す工程断面図と、超音波センサー5、及び圧力センサー6を支持する共通支持体51,61を備えた図2に示すセンサーアレイの構造を示す断面図とを兼ねている。
図7(B)に示すセンサーアレイ4は、圧力センサーが設けられる支持体61と、超音波センサーが設けられる第2支持体51とが共通である共通支持体51,61を有しており、当該共通支持体51,61上に実装される複数の超音波センサー5と、複数の圧力センサー6と、を備えている。また、センサーアレイ4では、超音波センサー5、圧力センサー6が例えば、所定の第1方向(X方向)、及びこの第1方向(X方向)に直交する第2方向(Y方向)に沿ってそれぞれ交互に配置される2次元アレイ構造を備えている。
超音波センサー5、圧力センサー6は、超音波センサー5、圧力センサー6に対して共通に設けられた共通支持体51,61上に設けられ共通支持体51,61上に形成される電極パターンを介して図示しない制御部に導通される。そして、第2枠体54同士、枠体64同士、第2枠体54と枠体64間には間隙が備えられている。
以下の説明では共通支持体51,61を適宜、支持体61と第2支持体51とに分けて説明する。
なお、「上」とは、特定の部材が共通支持体51、61から枠体64,第2枠体54に向かう方向に位置することを示すものとし、互いに接触していない場合も含むものとする。
【0046】
[超音波センサーの構成]
図3(A)は、超音波センサー5の構成を示す断面図である。
超音波センサー5は、物体10に対して超音波を発信して、反射波を受信することで物体10の有無や物体10までの距離を検知するものである。この超音波センサー5は、第2支持体51上に順に積層される第2支持膜52、第2圧電体53、第2枠体54、及び保護膜55を備えている。
また、第2支持膜52及び第2圧電体53により、超音波トランスデューサー部11が構成される。
【0047】
第2支持体51は、単結晶シリコン基板により形成され、約200μm程度の厚さに形成されている。また、第2支持体51には、第2支持膜52を膜厚み方向から見た平面視において、円形状の第2開口部51Aがドライエッチングにより形成されている。
【0048】
第2支持膜52は、第2支持体51の第2開口部51Aを閉塞し、第2支持体51の表面に積層される第1酸化膜52Aと第2酸化膜52Bとで構成され、2層で形成されている。そして、第2支持膜52により第2開口部51Aを閉塞される部分が、第2ダイアフラム部57となっている。この第2ダイアフラム部57と、第2ダイアフラム部57上に設けられて、電圧の印加により撓む第2圧電体53とでメンブレン8が構成される。
【0049】
第1酸化膜52Aは、例えば、SiO2により形成されて、第2支持体51の単結晶シリコン基板の表面を熱酸化させることで約1μm程度の厚さに形成されている。なお、第1酸化膜52Aは、表面を熱酸化させる以外に、TEOS(Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法、スパッタリング、蒸着、塗布等によって形成してもよい。
【0050】
第2酸化膜52Bは、例えば、ZrO2により形成されて、Zrをスパッタリングで成膜し、熱酸化させることにより最終的に約3μm程度の厚さとなるように、第1酸化膜52A上に形成されている。この第2酸化膜52Bは、第2圧電体53の後述する第2圧電膜531の焼成形成時の第2圧電膜531の剥離を防止するための層である。すなわち、第2圧電膜531(例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate))の焼成時、第2酸化膜52Bが形成されていない場合、Pbが第1酸化膜52Aに拡散することで、第2酸化膜52Bの融点が下がり、第1酸化膜52Aの表面に気泡が生じて、この気泡により第2圧電膜531が剥離してしまう。また、第2酸化膜52Bがない場合、第2圧電膜531の歪みに対する撓み効率が低下するなどの課題もある。これに対して、第2酸化膜52Bを第1酸化膜52A上に形成することで、第2圧電膜531の剥離や、撓み効率の低下などの不都合を回避できる。なお、第2酸化膜52Bは、スパッタリング法以外に、CVD法、蒸着、塗布等によって形成してもよい。
【0051】
ここで、第2開口部51Aの径寸法D’は、第2ダイアフラム部57の固有振動数に応じて、例えば約100μm〜数100μm程度の範囲で適宜設定されている。この第2ダイアフラム部57が振動することで、超音波が物体10(図1参照)側に向けて発信される。
【0052】
第2圧電体53は、センサー平面視において、第2開口部51Aと同心円に形成される膜状部材であり、第2圧電体53の径寸法は、第2開口部51Aの径寸法D’よりも小さく形成されている。この第2圧電体53は、第2圧電膜531と、第2圧電膜531に電圧を印加する電極(下部電極532及び上部電極533)とを備えている。なお圧電体の径寸法とは、下部電極、圧電膜、及び上部電極の3層が積層されている領域の径を言う。
【0053】
圧電膜531は、例えばPZTを膜状にして形成されている。なお、本実施形態では、圧電膜531としてPZTを用いるが、電圧を印加することで、面内方向に収縮・伸長することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよく、例えばチタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO3)などを用いてもよい。
【0054】
下部電極532及び上部電極533は、圧電膜531を挟んで形成される電極である。
下部電極532は、第2圧電膜531の下に形成されている。上部電極533は、第2圧電膜531の上に形成されている。
これらの上部電極533及び下部電極532は、それぞれ第2ダイアフラム部57の裏面側(第2開口部51A側)に形成される図示しない引出部により引き出されて、センサーアレイ4の図示せぬ制御部に接続されており、制御部から入力される電圧信号により圧電膜531に所定の電圧を印加する。
【0055】
第2枠体54は、可撓性を有する合成樹脂材の永久レジストで円筒状に形成され、約100μm〜600μmの厚さに形成されている。また、第2枠体54に設けられる筒状内周壁541によって、第2支持膜52の膜厚方向に沿う空洞部54Aが形成される。そして、第2支持膜52の膜厚み方向から見た平面視で筒状の空洞部54Aの筒状内周縁が、第2開口部51Aの内周縁と重なる位置、または内周縁よりも外側の位置となるよう第2枠体54が形成されている。ここでは、第2枠体54の内径寸法を、第2開口部51Aの寸法と略同一寸法(重なる場合)となるよう形成している。そして、第2枠体54の空洞部54Aには、メンブレン8が収納されるようになっている。例えば、第2枠体54は東京応化工業株式会社のTMMR(登録商標)TMS2000の永久レジストを用いることで形成可能である。
なお、第2枠体54を形成する材料としては、永久レジストの他、ドライフィルムレジスト等の感光性樹脂膜を用いてもよい。
【0056】
保護膜55は、物体10と接触する部分であり、第2枠体54と同様に可撓性を有する合成樹脂材のドライフィルムレジストで形成され、約100μmの厚さに形成されている。また、この保護膜55は、リング状に形成されて、第2枠体54の上端面を覆っている。例えば、保護膜55は東京応化工業株式会社のTMMFTMS2000のドライフィルムレジストを用いることで形成可能である。
【0057】
[超音波センサーの動作]
上述の超音波センサー5では、制御部から第2圧電体53の下部電極532及び上部電極533間に所定の周期を持つ駆動電圧が印加されると、圧電膜531が面方向に伸長したり、収縮したりする。
圧電膜531が面方向に収縮すると、第2ダイアフラム部57の第2圧電体53側が面方向に収縮されて、第2ダイアフラム部57が第2支持体51側に向かって凸状に撓む。また、圧電膜531が面方向に伸長すると、第2ダイアフラム部57の第2圧電体53側が面方向に伸長されて、第2ダイアフラム部57が第2圧電体53側に向かって凸状に撓む。
これにより、第2ダイアフラム部57が第2支持膜52の面方向に直交する方向に振動し、第2ダイアフラム部57から所定の駆動電圧の周期に応じた振動数の超音波が発信される。すなわち、第2ダイアフラム部57は、物体10(図1参照)へ向けて超音波を発信する発信部として機能する。さらに、この第2ダイアフラム部57は、物体10で反射された超音波を受信する受信部としても機能する。すなわち、センサーアレイ4の制御部では、超音波を発信してから物体10で反射された超音波を受信するまでの時間及び振動の強さにより、物体10の位置を検出できる。
【0058】
[圧力センサーの構成]
図3(B)は、圧力センサー6を示す断面図である。
圧力センサー6は、例えば把持装置1(図1参照)のアーム3の把持面31が物体10を把持した際の圧力を検知するものである。把持面31に備え付けられた圧力センサー6は、支持体61上に順に積層される支持膜62、圧電体63(圧電膜631、下部電極632、及び上部電極633)、枠体64、及び封止膜65を備えている。
ここで、支持体61は音波センサー5の第2支持体51と共通の共通支持体であり、支持膜62、圧電体63、及び枠体64の構成は、超音波センサー5の第2支持膜52、第2圧電体53、及び第2枠体54とそれぞれ同様の構成であるため、説明を省略する。
また、支持膜62及び圧電体63により、圧力検出部9が構成される。
【0059】
枠体64は、超音波センサー5の第2枠体54と同様に円筒状に形成され、空洞部64Aを有する。そして、空洞部64Aには、支持膜62により開口部61Aを閉塞する部分であるダイアフラム部67と、ダイアフラム部67上に設けられる圧電体63とを備えたメンブレン8が収納されている。
空洞部64Aの筒状内周壁641と、封止膜65と、圧力検出部9とで形成される内部空間66には、圧力媒体としてのシリコーンオイル20が充填されている。
封止膜65は、内部空間66を閉塞して、シリコーンオイル20を封止するものである。なお、内部空間66に充填される材料としては、圧力を分散する材料であればよく、シリコーンオイル20の他、例えば、シリコーンゴム、ポリマーゲル、合成ゲル、天然ゲル、ポリマー樹脂等を用いてもよい。そして、支持膜62の膜厚み方向から見た平面視で、筒状の空洞部64Aの筒状内周縁が、開口部61Aの内周縁と重なる位置、または内周縁よりも外側の位置となるよう枠体64が形成されている。ここでは、枠体64の内径寸法を、開口部61Aの径寸法Dと略同一寸法(重なる場合)となるよう形成している。
【0060】
封止膜65は、保護膜55と同様に、物体10(図1参照)と接触する部分であり、内部空間66を閉塞してシリコーンオイル20を封止するように、円形状に形成されている。また、封止膜65は、シリコーンオイル20を封止するとともに、物体10に接触する部分である。なお、この封止膜65は、保護膜55と同様の材質で形成されている。例えば、封止膜65は東京応化工業株式会社のTMMFTMS2000のドライフィルムレジストを用いることで形成可能である。
なお、封止膜65を形成する材料としては、ドライフィルムレジストの他、永久レジスト等の感光性樹脂膜を用いてもよい。
シリコーンオイル20が内部空間66に充填されていることで、物体10が封止膜65に接触する際の衝撃をメンブレン8全体に分散している。
なお、内部空間66に充填される圧力媒体がポリマーゲルなどのような漏れ出ない材質である場合は、封止膜65は無くても良い。
【0061】
[圧力センサーの動作]
上述した圧力センサー6では、図1に示すように物体10がアーム3により把持されると、図3(B)に示す封止膜65に当接して、枠体64が厚さ方向において収縮する。この際、枠体64の内部空間66に充填されるシリコーンオイル20によって、物体10が封止膜65に当接した際の力をメンブレン8全体に分散し、力がダイアフラム部67へ伝達される。そして、ダイアフラム部67が伝達された力で撓み、圧電膜631に撓み量に応じた電圧が発生する。これにより、上部電極633及び下部電極632から発生した電圧に応じた電気信号が出力されて、圧力を検出する。
【0062】
[センサーアレイの製造方法]
次に、センサーアレイの製造方法について説明する。
図4〜図7は、当該構造を備えるセンサーアレイの製造工程を示す工程断面図である。図4〜図7では、左側に超音波センサー5の製造工程、右側に圧力センサー6の製造工程を示している。
以下の説明では、一対の超音波センサー5と圧力センサー6について記載しているが、これは、共に複数個の場合(図2参照)の場合についても対応可能である。
【0063】
まず、開口部61A,第2開口部51Aが形成されていない共通支持体51,61(厚さが約650μm)となる単結晶シリコン基板を用意し、表面を熱酸化させることで、SiO2で形成された第1酸化膜52A,62Aを約1μm程度の厚さとなるよう成膜する。そして、第1酸化膜52A,62A上に、Zrをスパッタリングで成膜し、熱酸化させることにより形成されたZrO2を用いて、厚さが約3μm程度の厚さとなるよう第2酸化膜52B,62Bを成膜する。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図4(A)に示す。
【0064】
次に、所定の圧力下のアルゴンガスの雰囲気内において、下部電極用の物質を第2酸化膜52B,62B上にスパッタリング成膜する。そして、共通支持体51,61に重ねて共通支持膜52,62が形成された面に図示せぬフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により露光・現像して、さらにエッチング処理により、下部電極532,632をパターニングする。ここで、下部電極532,632の間隔は、接触しない状態であれば任意の値をとることができる。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図4(B)に示す。
【0065】
次に、圧電膜531,631用の物質を下部電極532,632上にスパッタリング成膜する。そして、フォトリソグラフィ法、及びエッチング処理によりパターニングし、圧電膜531,631を形成する。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図4(C)に示す。
【0066】
次に、上部電極533,633用の物質を、下部電極532,632、及び第2酸化膜52B,62Bを覆うように、スパッタリング成膜する。そして、フォトリソグラフィ法、及びエッチング処理によりパターニングし、上部電極533,633を形成する。これにより、超音波センサー5側には、超音波トランスデューサー部11が、圧力センサー6側には、圧力検出部9が形成される(圧電体センサー部形成工程)。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図5(A)に示す。
【0067】
次に、共通支持体51,61を厚さが約200μmとなるように研削する。これは、最初の工程で、共通支持体51,61を所望の厚さ寸法に研削したものを用意すると、製造工程中に共通支持体51,61が反ってしまうおそれがあるためである。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図5(B)に示す。
【0068】
次に、上部電極533,633上に枠体層70として永久レジストをスピンコート装置、またはスキージを用いて塗布する。これにより、圧電体63,第2圧電体53を覆うように枠体層70を形成する(枠体層形成工程)。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図5(C)に示す。
【0069】
次に、上部電極533,633上に塗布された枠体層70をフォトリソグラフィ法により露光・現像することで、枠体層70を所望の形状にパターニングする。この工程で空洞部54A,64Aを有し、互いに独立する枠体64,第2枠体54が形成される(枠体形成工程)。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図6(A)に示す。
【0070】
次に、圧力センサー6の枠体64の空洞部64Aに、シリコーンオイル20を充填する(充填工程)。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図6(B)に示す。
【0071】
次に、枠体64,第2枠体54の上面に、保護膜55及び封止膜65に対応するドライフィルムレジストを、ロールコート装置を用いて塗布する(膜形成工程)。この工程により、内部空間66が形成される。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図6(C)に示す。
【0072】
次に、保護膜55及び封止膜65に対応するドライフィルムレジストをフォトリソグラフィ法により露光・現像して、保護膜55及び封止膜65を所望の形状にパターニングする。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図7(A)に示す。
次に、共通支持体51,61の下面側をドライエッチングし、枠体64,第2枠体54の内径寸法と略同一の径を有する開口部61A,第2開口部51Aを形成する。
以上により、図7(B)に示す、共通支持体51,61上に複数の超音波センサー5、及び複数の圧力センサー6を備えるセンサーアレイ4が形成される。
【0073】
上述した本実施形態の圧力センサー6、センサーアレイ4,及びセンサーアレイ4の製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0074】
図3(B)に示すように、メンブレン8の圧電体63が枠体64に収納されて、枠体64の内部空間66に力を分散させるシリコーンオイル20が充填されている。そして、枠体64は封止膜65で封止されている。これによれば、把持装置1のアーム3が物体10を把持すると、物体10は封止膜65に当接して、この状態での力がシリコーンオイル20を介してメンブレン8に伝達される。すなわち、物体10は直接、圧電膜631に接触することがなく、物体10が封止膜65に接触する際の力がシリコーンオイル20を介してメンブレン8に伝達されるため、圧力を検知するメンブレン8のダイアフラム部67に分散された力が加わることとなる。従って、ダイアフラム部67に局所的に力が加えられることを防止でき、メンブレン8の破損を防止できる。
【0075】
図3(B)に示すように、枠体64が可撓性を有する合成樹脂の永久レジストで形成されるので、枠体64に力が加わると、枠体64が収縮する。そして、力が枠体64の内部空間66に充填されているシリコーンオイル20を介して、メンブレン8のダイアフラム部67に伝達されて、圧力を良好に検知できる。
【0076】
図2に示すように、センサーアレイ4は、圧力センサー6と、超音波センサー5の2種類のセンサーを備えるので、センサーアレイ4を備える把持装置1は、超音波センサー5で物体10を認識し、アーム3で物体10を把持した状態の圧力を圧力センサー6で検知することができる。
【0077】
センサーアレイの製造方法に示すように、超音波センサー5は、圧力センサー6を構成するシリコーンオイル20、及び封止膜65を除いた構成部材で構成すればよいので、超音波センサー5を容易に製造できる。すなわち、圧力センサー6を製造する過程で、超音波センサー5を製造することができる。従って、センサーアレイ4の製造工程を簡素化でき、製造コストを低減できる。
【0078】
ところで、圧力センサー6のみが形成される箇所、または超音波センサー5のみが形成される箇所を有するセンサーアレイを構成する場合では、超音波センサー5により物体10を認識する位置と、圧力センサー6により物体10を把持する力を検出する位置とが異なる場合があり、各センサー5,6の検出位置にばらつきが生じるおそれがある。
これに対して、本実施形態では、図2に示すように、圧力センサー6及び超音波センサー5が互いに等間隔に配置されているので、超音波センサー5により物体10を認識する位置と、圧力センサー6により物体10を把持する力を検知する位置とにばらつきが生じることがない。
【0079】
超音波センサー5及び圧力センサー6は、互いに独立して配置されるので、超音波センサー5のメンブレン8の振動の圧力センサー6への伝達を抑制できる。すなわち、圧力センサー6のメンブレン8の圧電体63やダイアフラム部67に超音波センサー5からの振動により受ける影響が減少するので、圧力センサー6は圧力を精度良く検知できる。
【0080】
以下、本発明に係る別の実施形態(実施形態2)を図面に基づいて説明する。
[実施形態2]
【0081】
[センサーアレイの構成]
図9は、実施形態2に係るセンサーアレイ180を示す斜視図である。図10(A)は、図9に示すセンサーアレイ180の平面図、図10(B)は、図10(A)に示す、物体10が接触した場合のA−A’線断面図、図10(C)は、物体10を把持した状態で通常よりも大きな圧力が加えられた場合のA−A’線断面図である。
センサーアレイ180は、例えば、耐圧力性に優れた触覚センサーであり、図10に示すように物体10とセンサーアレイ180との間の圧力を電気信号として出力する。このセンサーアレイ180は、支持体161上に実装される複数の圧力センサー106を備えている。実施形態1のセンサーアレイとは、圧力センサー106の許容圧力近傍で、許容圧力よりも小さい圧力が掛った場合において、隣り合う圧力センサー106の枠体同士が押し合わされる(接触する)ことで互いに補強材として機能するよう間隙(ギャップ)である溝Gが配置されている点が異なっている。これらの点以外は上述した実施形態で説明したものと同様であり、例えば圧力センサー106の間の一部のみに溝Gを形成しても良い。
【0082】
圧力センサー106は、上述した「圧力センサーの構成」で示された構造を備える。すなわち、図10(B)において、圧力センサー106の頂部を感圧面(当接面)として、シリコーンオイル120を介してメンブレン108に圧力を受けることから、物体10からの衝撃をメンブレン108全体に分散できる。メンブレン108が圧力の集中から保護されることから、圧力センサー106の信頼性を向上させることができる。
また、圧力センサー106は、上述した「圧力センサーの動作」で示された動作を行う。すなわち、物体10から圧力を受けることで、圧電膜731が撓み、この撓み量に応じた電圧が発生する。これにより、メンブレン108から発生した電圧を基に圧力が検出できる。
図9、図10(B)に示すように、センサーアレイ180は、開口部121を備えた、複数の圧力センサーに対して共通に設けられた支持体161に、枠体164の外形が矩形(ここでは一例として正方形)形状を備えた圧力センサー106が所定の第1方向(X方向)、及びこの第1方向(X方向)に直交する第2方向(Y方向)に沿って同じ幅の溝Gを挟んで並んでいる。換言すれば、枠体164間には、互いを分離するための間隙が形成されている。
溝Gの幅については、後述する「センサーアレイの動作」で説明する。
そして、圧力センサー106同士の隙間には、支持体161が露出するよう分離されて配置されている。
【0083】
なお、図9に示す好適例においては、支持体161の面の位置まで溝Gが形成されているが、支持体161の一部を窪ませた構造を用いても良い。特に、支持体161にシリコンを用い、支持膜162に酸化シリコンやZrO2を用いた場合、エッチングを行う場合に高い選択比が得られるため、形状再現性を高く取ることが可能となる。
【0084】
また、支持膜162が露出する程度の深さまで溝Gを備える構成を用いても良い。この場合、特に枠体164に永久レジストを用いた場合、支持膜162でエッチングが停止するため、形状再現性を高く取ることが可能となる。また、現像液を用いて、枠体164を作ることと同時にエッチングを行うことができるため、製造工程を短縮化することが可能となる。
【0085】
また、溝Gはその支持体側底部に枠体164の形成に用いられる永久レジストの枠体層170を薄く残した構造を用いても差し支えない。なお、ここでは、上述した構成を得るための加工方法について説明しているが、これは、加工方法について限定するものではなく、構造を得るための一例として紹介したもので、加工方法に関わらず、上述した形状を備えていれば良い。また、圧力センサー106を個別に分割し(縁切り)、別途用意したセンサー基板(図示せず)に再度配列しても良い。また、センサー基板を支持体161に貼り付け、支持体161まで切り込んで(縁切り)も良い。この場合、圧力センサー106間の干渉が防げるため、より高精度で圧力を計測することが可能となる。
ここで、[縁切り」とは、完全に分離する場合に加え、完全に分離せずとも機能的に干渉を起こさない程度に繋がっている場合を含むものとする。
【0086】
[センサーアレイの動作]
次に、センサーアレイ180の動作について図1、図10を引用して説明する。なお、センサーアレイ180(図1では図示せず)は、ここでは把持面31に貼り付けられているものとする。
【0087】
まず、図10(B)に示すように物体10と把持面31とが接触した場合、圧力センサー6は物体10に与える圧力を検出する。そして、把持面31から物体10に圧力をかけることで、物体10を把持する。
【0088】
ここで、圧力センサー106に、過大な応力が掛かった場合には、圧力センサー106が過度に潰れて劣化するおそれがある。圧力センサー106に過度の圧力がかかった場合、枠体164はその高さ方向に対して、中央部が両端よりも膨らむよう変形し、溝Gで分離した領域が埋まり、隣り合う圧力センサー106の枠体と押し合わされる。そのため、図10(C)に示すように、隣り合う圧力センサー106が互いに補強材として機能し、過度に潰れることで生じる圧力センサー106の劣化を防止することができる。換言すれば、溝Gの幅は、破壊強度未満の圧力が掛かった場合に枠体164同士が接する幅であることが好ましい。
【0089】
[センサーアレイの製造方法]
次に、圧力センサー106を含むセンサーアレイ180の製造方法について説明する。
図11、図12は、複数の圧力センサー106を製造する製造工程を説明するための工程断面図である。
【0090】
まず、支持体161(厚さが約650μm)となる単結晶シリコン基板を用意し、表面を熱酸化させ、SiO2で形成された第1酸化膜162Aを約1μm程度の厚さとなるよう成膜する。そして、第1酸化膜162A上に、Zrをスパッタリングで成膜し、熱酸化させることにより、ZrO2を形成する。そして、ZrO2からなる第2酸化膜162Bが最終的には約3μm程度の厚さとなるよう成膜し、支持膜162を形成する。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(A)に示す。
【0091】
ここで、圧力センサー106間に支持体161の一部まで溝Gを形成する場合には、支持膜162が形成されたこの状態で溝Gを形成する工程を行うことが製造工程上好ましい。本実施形態では、この工程よりも後の工程で、支持体161が露出し、支持膜162を分割する溝Gを形成した工程を用いた場合について説明する。なお、溝Gは、各々の圧力センサー106の間隙と重なる位置に形成する。
【0092】
次に、所定の圧力下のアルゴンガスの雰囲気内において、スパッタリング成膜を用いて下部電極732を構成するための導体膜が、第2酸化膜162Bを覆うように成膜される。そして、支持体161の、支持膜162が形成された面側に図示せぬフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により露光・現像して、さらにエッチング処理により、下部電極732をパターニングする。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(B)に示す。
【0093】
次に、圧電膜731を形成するための膜が、下部電極732を覆うようにスパッタリング成膜される。そして、フォトリソグラフィ法(フォトリソ法)、及びエッチング処理により、圧電膜731をパターニングする。この圧電膜731は圧力検出部として機能する。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(C)に示す。
【0094】
次に、支持体161の下部電極732が配置された面側に、上部電極733を構成する導体膜を、スパッタリング法により成膜する。そして、フォトリソグラフィ法、及びエッチング処理により、上部電極733をパターニングし、複数の、島状の圧電体163を形成する。これにより、島状の圧力検出部175(支持膜162、圧電体163を含む)を形成する。ここで島状の圧力検出部とは、支持膜、下部電極、圧電膜、上部電極の4層が積層されている領域の形状が島状に独立している形状であることをいう(圧力検出部形成工程)。そして次に、支持膜162を分割する溝Gを形成する(溝を形成する工程)。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(D)に示す。
【0095】
次に、支持体161を、厚さが約200μmとなるように例えばBG(バックグラインド)により研削する。これは、ここまでの工程で、支持体161を所望の厚さ寸法に研削したものを用意すると、製造工程中に支持体161が反ってしまうおそれがあるためである。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(E)に示す。
【0096】
次に、上部電極733に、枠体層170として永久レジストをスピンコート装置、またはスキージを用いて塗布する。これにより、枠体層170が圧電体163を覆うように形成される(枠体層形成工程)。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(F)に示す。
枠体層170を形成した後の工程で溝Gを形成すると、枠体層170に損傷が生じるおそれがある。そこで、ここまでの工程で溝Gを形成することが好適である。溝Gは、具体的には、隣り合う枠体164との間で、枠体164と同じ物質を用いて厚さが薄い領域を備える、または、隣り合う枠体164とのとの間で、圧電体163が露出している領域を備える、または、隣り合う枠体164との間で、支持体161が露出する領域を備える(本実施形態の場合)、または、隣り合う枠体164との間で、支持体161が露出し、さらに支持体161が窪んだ領域を備えるように加工しても良い。もちろん、溝Gを形成しても枠体層170の損傷が防げる場合には、この後の工程で溝Gを形成する工程を行っても良い。
【0097】
そして、上部電極733上に塗布された枠体層170(永久レジスト)をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、図10に示すように、枠体層170の枠体164となるべき領域の外形が矩形(ここでは一例として正方形)形状となるようパターニングし、枠体164となるべき領域の内側に検出部175を露出する空洞部164Aを形成すべくパターニングすることで複数の枠体164が形成される(枠体形成工程)。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(G)に示す。
【0098】
そして、枠体164の空洞部164Aに、圧力媒体としてのシリコーンオイル120を充填する(充填工程)。これは、圧力を分散する材料であればよく、シリコーンオイル120の他、例えば、シリコーンゴム、ポリマーゲル、合成ゲル、天然ゲル、ポリマー樹脂等を用いてもよい。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図11(H)に示す。
【0099】
次に、枠体164の上面に封止膜としてドライフィルムレジスト165Aをロールコート装置により塗布する(膜形成工程)。これにより空洞部164Aは封止されて内部空間166となる。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図12(A)に示す。
この場合、気泡を含まぬようコートするためには、減圧雰囲気で行われることが好ましい。また、レジスト165Aを密着させるためには、加熱しながらコートするのも好適である。
【0100】
次に、枠体164と重なる領域及び枠体164の内側にあるレジスト165Aを残してパターニングし、感圧面となる感圧膜としての封止膜165を形成する。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図12(B)に示す。
【0101】
次に、支持体161の、支持膜162が無い側の面(背面)を、支持体161の平面視で、枠体164の内側の開口部と略重なるようドライエッチングする。すると枠体164の内側の開口部と略重なるように開口部161Aが形成される。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図12(C)に示す。
ここまでの工程を終えることで、圧力センサー106を含むセンサーアレイ180が形成される。
【0102】
また、上述した製造方法の工程に加え、支持体161にセンサー基板45Dを貼り付け、支持体161を切り離し、圧力センサー106を分離する工程を加えても良い。この場合、図12(D)に示す構造を得ることができる。即ち、圧力センサー106は、センサー基板45Dにより支持される。
また、支持体161を先に切り離して後、センサー基板45Dに貼り付けても良い。
【0103】
上述した本実施形態の圧力センサー106の構成、センサーアレイ180の構成、及びセンサーアレイ180の製造方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0104】
圧力センサー106に過度の圧力がかかった場合、枠体164はその高さ方向に対して、中央部が両端よりも膨らむよう変形し、溝Gが埋まり、隣り合う圧力センサー106の枠体と押し合わされる。そのため、図10(C)に示すように、隣り合う圧力センサー106が互いに補強材として機能し、過度に潰れることで生じる圧力センサー106の劣化を防止することができる。
【0105】
枠体164の外形が矩形(ここでは一例として正方形)形状を備えた圧力センサー106が所定の第1方向(X方向)、及びこの第1方向(X方向)に直交する第2方向(Y方向)に沿って同じ値の溝Gをもって並んでいる。そのため、圧力センサー106に過度の圧力がかかった場合、隣り合う枠体164と面で押し合わされることとなるため、例えば枠体164の外形が円形等で隣り合う枠体164と線で押し合わされる場合と比べ、高い圧力に対してより耐性を向上させることができ、信頼性が高いセンサーアレイ180を提供することが可能となる。
【0106】
ある程度製造プロセスを行った後、支持体161の厚さを約200μmとなるように例えばBG(バックグラインド)により研削する工程を用いている。そのため、製造工程中に支持体61が反ってしまう不良の発生を抑制することが可能となる。
【0107】
以下、本発明に係る別の実施形態(実施形態3)を図面に基づいて説明する。
[実施形態3]
【0108】
[センサーアレイの構成]
図13は、センサーアレイ281を示す斜視図である。図14(A)は、図13に示すセンサーアレイ281の平面図、図14(B)は、図14(A)に示す平面図のA−A’線断面図である。センサーアレイ281は、圧力センサー206に加え、超音波センサー205を合わせて備えている。
センサーアレイ281は、例えば距離情報と圧力情報とを検知可能な触覚センサーであり、物体10とセンサーアレイ281が離れている場合に、距離情報を電気信号として出力する複数の超音波センサー205と、物体10とセンサーアレイ281とが接触した場合に、物体10とセンサーアレイ281との間の圧力を電気信号として出力する複数の圧力センサー206とを備えている。このセンサーアレイ281は、共通支持体251,261上に実装される複数の圧力センサー206に加えて、複数の超音波センサー205を備えていることが実施形態2(例えば、図10(A),(B)参照)でのセンサーアレイ180と異なっている。
そして、共通支持体251,261を基準とした圧力センサー206の頂部が、超音波センサー205の頂部と比べ、高い位置にあるように形成されていることと、圧力センサー206と超音波センサー205とが、センサーアレイ281の許容圧力近傍で、許容圧力よりも小さい圧力が掛った場合、隣り合う圧力センサー206または超音波センサー205と押し合わされる(接触する)ことで互いに補強材として機能するよう所定の間隙(ギャップ)である溝Kを介して配置されている点を特長としている。これらの点以外は、上述した実施形態1、実施形態2での説明と同様である。例えば圧力センサー206、超音波センサー205との間の一部のみに溝Kを形成しても良い。
【0109】
超音波センサー205を備えることで、把持装置1(図1参照)のアーム3が物体10と離れている状態でも物体10との距離を測定することができる。そのため、より高速かつ精密に物体10を把持することを可能としている。例えば、物体10との距離が測定できることから、物体10と接触するまでは高速でアーム3を動かし、接触後は圧力センサー206で把持状態を維持することで、把持圧力の精度を保った状態で物体10を把持することができる。
【0110】
超音波センサー205は、上述した「超音波センサーの構成」で示された構造を備える。すなわち、図3(A)に示されるように、自由振動しうる第2ダイアフラム部57を備えており、この第2ダイアフラム部57にはPZT等を用いた圧電膜731が接続されている。そして、圧電膜731に電圧を印加する下部電極732及び上部電極733を備えている。
【0111】
超音波センサー205は、上述した「超音波センサーの動作」で示された動作を行う。すなわち、電圧の印加により第2ダイアフラム部207Bを第2支持膜252の面方向に直交する方向に振動させ、第2ダイアフラム部207Bから所定の駆動電圧の周期に応じた振動数の超音波を発信する。そして、物体10(図1参照)からの反射波を受信することで物体10の位置を検出する。
センサーアレイ281は、一体化した支持体251,261に、枠体264,第2枠体254の外形が矩形(ここでは一例として正方形)形状を備えた超音波センサー205と圧力センサー206とが所定の第1方向(X方向)、及びこの第1方向(X方向)に直交する第2方向(Y方向)に沿って所定の間隔(溝Kの幅)をもって交互に並んでいる。溝Kの幅については、後述する[センサーアレイを備える把持装置]で説明する。
【0112】
超音波センサー205は、共通支持体251,261を基準とした超音波センサー205の頂部が、圧力センサー206の頂部と比べ、封止膜265分低い位置にあるように形成されている。ここで、頂部位置の差は封止膜265分に限定されることは必須ではなく、圧力センサー206の頂部よりも低い頂部を持つ超音波センサー205を備えていても良い。
そして、超音波センサー205と圧力センサー206との隙間には、共通支持体251,261が露出するよう分離されて配置されている。
【0113】
ここで、共通支持体251,261の一部が露出した形状を備えることに代えて、溝Kの構造として、共通支持体251,261を窪ませた構造を用いても良い。特に、共通支持体251,261にシリコンを用い、共通支持膜252,262に酸化シリコンやZrO2を用いた場合、形状再現性を高く取ることが可能となる。
【0114】
また、共通支持膜252,262が露出する程度の深さまで溝Kを形成する工程を用いても良い。この場合、特に枠体264,第2枠体254に永久レジストを用いた場合、共通支持膜252,262でエッチングが停止するため、形状再現性を高く取ることが可能となる。また、現像液を用いて、枠体264,第2枠体254を作ることと同時にエッチングを行うことができるため、製造工程を短縮化することが可能となる。
【0115】
また、溝Kはその支持体側底部に枠体264,第2枠体254の形成に用いられる永久レジストの枠体層270を薄く残した構造を用いても差し支えない。なお、ここでは、上述した構成を得るための加工方法について説明しているが、これは、加工方法について限定するものではなく、構造を得るための一例として紹介したもので、加工方法に関わらず、上述した形状を備えていれば良い。
【0116】
[センサーアレイの製造方法]
次に、センサーアレイの製造方法について説明する。ここでは、超音波センサー205と、圧力センサー206と、が同一の基板(共通支持体251,261)に形成される。図16,17は、センサーアレイの製造工程を説明するための工程断面図である。
【0117】
まず、共通支持体251,261(厚さが約650μm)となる単結晶シリコン基板を用意し、表面を熱酸化させ、SiO2で形成された第1酸化膜252A,262Aを約1μm程度の厚さとなるよう成膜する。そして、第1酸化膜252A,262A上に、Zrをスパッタリングで成膜し、熱酸化させることにより、ZrO2で形成された第2酸化膜252B,262Bを約3μm程度の厚さとなるよう成膜し、共通支持膜252,262を形成する。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図16(A)に示す。
【0118】
ここで、超音波センサー205と圧力センサー206との間に共通支持体251,261の一部まで溝Kを形成する場合には、共通支持膜252,262が形成されたこの状態で溝Kを形成する工程を行うことが製造工程上好ましい。本実施形態では、この工程よりも後の工程で、共通支持体251,261を露出させるべく溝Kを形成した工程を用いた場合について説明する。
【0119】
次に、所定の圧力下のアルゴンガスの雰囲気内において、スパッタリング成膜を用いて下部電極932,832を構成するための導体膜が、第2酸化膜252B,262Bを覆うように成膜される。そして、共通支持体251,261の、共通支持膜252,262が形成された面側にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により露光・現像して、さらにエッチング処理によりパターニングし、下部電極932,832を形成する。このパターニングは、完成体としての圧力センサー206同士の間隔または超音波センサー205と圧力センサー206との間隔が、圧力センサー206に許容圧力以下の所定圧力が印加されたときに、隣り合う圧力センサー206または隣り合う超音波センサー205と接触する溝Kが得られるよう行う。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図16(B)に示す。
【0120】
次に、圧電膜931,第2圧電膜831を形成するための膜を、下部電極932,832を覆うようにスパッタリング成膜する。そして、フォトリソグラフィ法(フォトリソ法)、及びエッチング処理によりパターニングして圧電膜931,第2圧電膜831を形成する。この圧電膜931,第2圧電膜831は圧力検出部及び超音波トランスデューサー部として機能する。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図16(C)に示す。
【0121】
次に、共通支持体251,261の下部電極932,832が配置された面側に、上部電極933,833を構成する導体膜が、スパッタリング成膜される。そして、フォトリソグラフィ法、及びエッチング処理によりパターニングすることで上部電極933,833が得られると共に島状の圧電体263,第2圧電体253が形成される。これにより、複数の島状の超音波トランスデューサー部275(第2支持膜252、第2圧電体253を含む)、及び複数の島状の圧力検出部285(支持膜262、圧電体263を含む)が形成される。ここで島状の超音波トランスデューサーブ及び島状の圧力検出部とは、支持膜、下部電極、圧電膜、上部電極の4層が積層されている領域の形状が島状に独立している形状であることをいう(圧電体センサー部形成工程)。
次に、共通支持膜252,262を分割する溝Kを形成する(溝を形成する工程)。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図16(D)に示す。
【0122】
次に、共通支持体251,261を、厚さが約200μmとなるように例えばBG(バックグラインド)により研削する。これは、ここまでの工程で、共通支持体251,261を所望の厚さ寸法に研削したものを用意すると、製造工程中に共通支持体251,261が反ってしまうおそれがあるためである。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図16(E)に示す。
【0123】
次に、上部電極933,833に、枠体層270として永久レジストをスピンコート装置、またはスキージを用いて塗布し、乾燥させる。これにより、枠体層270が圧電体263,第2圧電体253を覆うように形成される(枠体層形成工程)。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図16(F)に示す。
枠体層270を形成した後の工程で溝Kを形成すると枠体層270に損傷が生じるおそれがある。そこで、ここまでの工程で溝Kを形成することが好適である。溝Kは、具体的には、隣り合う枠体264,第2枠体254との間で、枠体層270と同じ物質を用いて厚さが薄い領域を備えている。または、溝Kが、隣り合う枠体264,第2枠体254とのとの間で、圧電体263,第2圧電体253が露出している領域を備えていても良い。または、溝Kが、隣り合う枠体264,第2枠体254との間で、共通支持体251,261が露出する領域を備えていても良い(本実施形態の場合)。または、溝Kが、隣り合う枠体264,第2枠体254との間で、共通支持体251,261が露出し、さらに共通支持体251,261が窪んだ領域を備えるように加工しても良い。もちろん、溝Kを形成しても枠体層270の損傷が防げる場合には、この後の工程で溝Kを形成する工程を行っても良い。
【0124】
そして、上部電極833,933上に形成された枠体層270をフォトリソグラフィ法により露光・現像して、枠体層270の枠体264,第2枠体254となるべき領域の外形が矩形(ここでは一例として正方形)形状にパターニングし、枠体264,第2枠体254となるべき領域の内側に超音波トランスデューサー部275及び圧力検出部285を露出する空洞部254A及び空洞部264Aを形成すべくパターニングすることで複数の枠体264,第2枠体254が形成される(枠体形成工程)。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図16(G)に示す。
【0125】
次に、最終的に圧力センサー206となる枠体264の空洞部264Aに、シリコーンオイル220を充填する(充填工程)。この場合、最終的に超音波センサー205となる第2枠体254の空洞部254Aにはシリコーンオイル220の充填は行わない。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図17(A)に示す。
【0126】
次に、枠体264,第2枠体254の上面に封止膜265Aとしてドライフィルムレジストをロールコート装置により塗布する(膜形成工程)。これにより空洞部264Aは封止されて内部空間266となる。この場合、気泡を含まぬようコートするためには、減圧雰囲気で行われることが好ましい。また、レジスト265Aを密着させるためには、加熱しながらコートするのも好適である。なお、第2枠体254に封止膜265Aを形成する必要はないが、ロールコート装置を用いて封止膜265Aであるドライフィルムレジストを選択的に形成するのは技術的に困難であることから、後述するように、一旦封止膜265Aを形成してから取り除く処理を行っている。
ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図17(B)に示す。
【0127】
次に、枠体264と重なる領域及び枠体264の内側にある封止膜265を残してパターニングし、封止膜265Aを選択的に除去する。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図17(C)に示す。
【0128】
次に、共通支持体251,261の、第2支持膜252,支持膜262が無い側の面(背面)を、共通支持体251,261の平面視で、枠体264,第2枠体254の内側の開口部と略重なるようドライエッチングする。すると枠体264,第2枠体254の内側の開口部と重なるように、内径寸法と略同一の寸法を有する第2開口部251A,開口部261Aが形成されることで超音波センサー205と、圧力センサー206とが形成される。ここまでの工程を終えた状態での工程断面図を図17(D)に示す。
ここまでの工程を終えることで、センサーアレイ281が形成される。
【0129】
ここで、上記した製造工程を終了した後、共通支持体251,261側にセンサー基板(図示せず)を貼り付け、圧力センサー206同士の間隙、超音波センサー205同士の間隙、及び圧力センサー206と超音波センサー205の間隙に位置する共通支持体251,261をエッチング等の手段により切り離しても良い。この場合、センサー基板により圧力センサー206と超音波センサー205との間では、振動の伝達が抑制される。そのため、精密に圧力を測定できるセンサーアレイ281が得られる。
【0130】
[センサーアレイを備える把持装置]
次に、図22、図23、図24を用いてセンサーアレイ281を備える把持装置1の動作について説明する。図22は、把持装置1の把持動作を説明するためのブロック図、図23は、把持装置1の把持動作を説明するためのフローチャート、図24は、把持装置1の把持動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0131】
図22は、図1では省略していた把持装置1の制御装置、及び駆動機構ブロックを追記したに記載したブロック図である。把持装置1は、図1での記載と同様に、支持部材2と、支持部材2から延出する一対の、把持アームとしてのアーム3とを備えている。アーム3は、物体10を挟持するものであり、アーム3と物体10とが接触する把持面31には、センサーアレイ4(図2参照)、281(図13参照)、481(図20参照)のいずれが取り付けられていてもよいが、本実施形態ではセンサーアレイ281が取り付けられた場合で説明する。
図22に示すように、把持装置1は、アーム3を駆動制御するための制御装置104と、駆動機構105とを備えている。
制御装置104は、信号検出手段101、把持検出手段102、駆動制御手段103等を備えている。
【0132】
信号検出手段101は、物体10とセンサーアレイ281とが離れている場合に、例えば超音波センサー205(図14(A),(B)参照)からの距離信号を検出するものである。
把持検出手段102は、物体10と把持面31に備えられたセンサーアレイ281の圧力センサー206(図14(A),(B)参照)からの圧力信号を検出するものである。
本実施形態では、信号検出手段101から検出された信号と、把持検出手段102から検出された信号とを、駆動制御手段103に伝達している。物体10とセンサーアレイ281とが離れている場合には、信号検出手段101(超音波センサー205)から検出された信号を後述する駆動機構105に伝達する。物体10とセンサーアレイ281とが接触している場合には、把持検出手段102(例えば圧力センサー206)から検出された圧力信号を駆動制御手段103から駆動機構105に伝達する。ここでは、距離信号と圧力信号がデジタル信号として出力されている例を示したが、アナログ信号出力の場合も同様に処理できる。例えば、OPアンプ等を用いて制御しても良く、また、信号をAD変換して処理しても良い。
【0133】
駆動機構105は、動力源116と、動力伝達部117とを備えている。
動力源116は、例えばモーターである。このモーターには、駆動制御手段103から回転速度を制御する信号(制御信号)が伝達される。物体10とセンサーアレイ281とが粗略な位置精度を満たせば良い(十分に離れている)場合、駆動制御手段103からは、モーターの回転速度を一定に保つ信号が伝達される。
物体10とセンサーアレイ281とが精密な位置精度を必要とする、すなわち、近づいている場合、駆動制御手段103からは、モーターの回転速度を減速する信号が伝達される。モーターの回転速度を切り替える設定距離(PC)109は、制御装置104が備えるメモリー118に予めデータテーブルとして書き込まれている。つまり、設定距離(PC)109は、駆動速度を切り替える閾値であり、把持装置1の大きさや、物体10の態様に応じて適宜設定される。
そして、圧力信号が物体10の把持を行える値(設定圧力(SP)110)に過不足なく一致した場合、モーターを停止し、アーム3の位置を保持させる。モーターを停止させる設定圧力についても、制御装置104が備えるメモリー118に予め書き込まれている。
動力伝達部117は、動力源116から伝達された機械的出力を、図示しないギア等によりアーム3の挟持運動に変換する。
【0134】
続いて、図24のグラフ(タイミングチャート)について説明する。
図24に示すグラフでは、横軸(X軸)は、グラフA,B,Cに対して同じ時系列を示す時間軸を取っている。以下、各々のグラフについて説明する。
図24(A)は、アーム3の移動速度(把持動作の速度)と時間との関係を示すグラフである。図24(A)に示すグラフの縦軸(Y軸)は、アーム3の移動速度(把持動作の速度:SA)と方向を示しており、正の値(Y軸のプラス方向)の場合、物体10に近づく方向にアーム3が移動することを示す。
把持動作の速度は、本実施形態では3段階に分かれており、遠隔(R)111の場合一定速度(CS)、近接検知(PP)112の場合速度低(LS)、把持動作(MS)113の場合微動作(SS)の速度を取る。
図24(B)は、超音波センサー205と物体10との間の距離と、時間との関係を示すグラフである。図24(B)に示すグラフの縦軸(Y軸)は、超音波センサー205と物体10との距離を示す距離信号(DS)である。超音波センサー205と物体10とが接触した場合、原理的には0を出力する。
図24(C)は、圧力センサー206の圧力信号と、時間との関係を示すグラフである。図24(C)に示すグラフの縦軸(Y軸)は、圧力センサー206と物体10との間の圧力を示す圧力信号(PS)である。圧力センサー206と物体10とが離れている場合、原理的には0を出力する。
【0135】
図23は、把持方法の流れを示したフローチャートである。次に、把持装置1による把持動作を、図23に示すフローチャートに従い説明する。なお、各ステップにおける動作は、前述した制御装置104からの制御信号に基づき実行される。
【0136】
ステップS1では、図22における把持アームとしてのアーム3の把持面31が物体10と遠隔している(上述した設定距離(PC)109よりも把持面31と物体10との距離が大きい)場合、図24(A)に示すようにアーム3を等速度(一定速度(CS))で物体10に近づける動作を行う。
この動作は、図24(B)に示す距離信号が上述した設定距離(PC)109以上の場合に適用され、図24におけるタイミングチャートでのT0以前の状態を示す。
【0137】
ステップS2では、超音波センサー205が検知した距離信号により、把持面31と物体10との距離が設定距離(PC)109を切っているかを判断する。アーム3とセンサーアレイ281の距離信号が上述した設定距離(PC)109を切った場合にはステップS3に進む。切っていない場合には、ステップS1に戻る。この動作は、図24におけるタイミングチャートでのT0−T1に相当する。
【0138】
ステップS3では、アーム3の駆動速度を速度低(LS)に減速させる。減速させることで、アーム3と物体10との距離をより精密に調整できる。この動作は、図24におけるタイミングチャートでのT1−T3に相当する。
【0139】
ステップS4では、把持検出手段102が検知した圧力信号により、把持面31と物体10との接触について判断する。
把持面31と物体10とが接触していない場合、ステップS3で減速した駆動速度を維持する。
把持面31と物体10との接触検知(CD)が為された場合、ステップS5に進む。この動作は、図24におけるタイミングチャートでのT3―T4に相当する。
【0140】
ステップS5では、把持検出手段102が検知した圧力信号に基づき、図22に示すアーム3を微動作(SS)させ物体10に与える圧力を微調整する。この動作は、図24におけるタイミングチャートでのT4―T5に相当する。
【0141】
ステップS6では、圧力センサー206が受ける圧力と、下限圧力と上限圧力の範囲を持って設定される設定圧力(SP)110との上下関係に基づき判断する。圧力センサー206が受ける圧力が設定圧力(SP)110の下限圧力よりも低い場合、ステップS5に戻る。圧力センサー206の圧力が設定圧力110の上限圧力よりも高い場合、ステップS8を実行する。そして、圧力センサー206が受ける圧力が、下限圧力と上限圧力との間に入った場合にステップS7に進む。この動作は、図24におけるタイミングチャートでのT5―T9に相当する。
【0142】
ステップS7では、押圧制御を停止し、保持動作を行う。この動作は、図24におけるタイミングチャートでのT9以降に相当する。
【0143】
以上の動作を行うことで、把持装置1により物体10を高速、かつ高精度の圧力で把持することが可能となる。
【0144】
保持動作中では、圧力センサー206と超音波センサー205とは、封止膜265分高さが異なっていることから、圧力センサー206が圧力により若干圧縮されても超音波センサー205と物体10とは接触しない。そのため、普通に挟んだ状態では、超音波センサー205は圧力による劣化から逃れることができ、高い信頼性を保つこととなる。
ここで、なんらかの要因により、圧力が異常に大きくなり、圧力センサー206の枠体264の撓みが大きくなる(強く挟んだ状態)と、図14(B)、図15(A)に示すように、溝Kが埋まり、圧力センサー206の枠体264と、超音波センサー205の第2枠体254とが接触する。枠体264が第2枠体254と接触することで、超音波センサー205の特性が変わる。
即ち、溝Kの幅を、圧力センサー206の許容圧力に近い、許容圧力よりも小さい値が掛けられた場合に、超音波センサー205の第2枠体254と接触させるよう設定することが好ましい。このような幅を備えさせておくことで、圧力センサー206の信頼性を向上させることが可能となる。
【0145】
また、圧力センサー206に、短時間で過大な、許容圧力以上の圧力が掛かった場合に超音波センサー205からの制御信号が遅れてしまい、圧力センサー206が過度に潰れて劣化するおそれがある。圧力センサー206に過度の圧力がかかり、封止膜265の厚み(頂点の差分)以上に厚さ方向に変形すると、超音波センサー205が第2枠体254の高さ方向に対して、中央部が両端よりも膨らむよう変形を開始する。そのため、図15(B)に示すように、隣り合う圧力センサー206と、超音波センサー205と、が互いに補強材として機能し、過度に潰れることで生じる圧力センサー206や超音波センサー205の劣化を防止することができる。
【0146】
上述した本実施形態の圧力センサーの構成、センサーアレイの製造方法、センサーアレイを備える把持装置によれば、以下の効果を奏する。
【0147】
圧力センサー206と超音波センサー205とは、封止膜265分高さが異なっているため、圧力センサー206が若干圧縮されても超音波センサー5と物体10とは接触しない。そのため、普通に挟んだ状態では、超音波センサー205は圧力による劣化から逃れることができ、高い信頼性を保つことが可能となる。
【0148】
圧力センサー206の枠体264の撓みが大きくなると、溝Kが埋まり、圧力センサー206の枠体264と、超音波センサー205の第2枠体254とが接触する。枠体264が第2枠体254と接触することで、超音波センサー205の特性が変わる。ここで、溝Kを、圧力センサー206の弾性限界以内に変形した場合に超音波センサー205の第2枠体254と接触させるよう設定しておくことで、圧力センサー206の信頼性を向上させることが可能となる。
【0149】
圧力センサー206に過度の圧力がかかり、封止膜265の厚み以上に厚さ方向に変形すると、超音波センサー205が第2枠体254の高さ方向に対して、中央部が両端よりも膨らむよう変形を開始する。そのため、隣り合う圧力センサー206と、超音波センサー205と、が互いに補強材として機能し、過度に潰れることで生じる圧力センサー206や超音波センサー205の劣化を防止することができる。
【0150】
枠体264と重なる領域及び枠体264の内側にある封止膜265を残してパターニングし、封止膜265Aを選択的に除去することで、第2枠体254と枠体264との高さを変えることができ、製造工程数を増やすことなく段差を備えた圧力センサー206と超音波センサー205とを形成することが可能となる。
【0151】
図22に示すフローチャートに従って把持動作を行うことで、把持装置1により物体10を高速、かつ高精度の圧力で把持することが可能となる。
【0152】
以下、本発明に係る別の実施形態(実施形態4)を図面に基づいて説明する。
[実施形態4]
【0153】
[センサーアレイの構成]
図25は、実施形態4に係るセンサーアレイ4Cを示す断面図である。このセンサーアレイ4Cは、超音波センサー5C、及び圧力センサー6Cを支持するセンサー基板45Cを備えている。
また、超音波センサー5C、圧力センサー6Cは、それぞれの第2支持体51C,支持体61Cに貫通電極41Cを備えるとともに、センサー基板45Cに設けられている配線43Cが前記貫通電極41Cと接続され、前記配線を介して図示しない制御部に導通される。そして、第2枠体54C同士、枠体64C同士、第2枠体54C,枠体64C間には間隙が備えられていると共に、第2支持体51C,支持体61C間にも間隙である溝LBが備えられている。この溝LBにより隣り合う超音波センサー間、圧力センサー間、及び超音波センサーと圧力センサー間は、縁切りされて分割(独立化)されている。これらのセンサー基板45Cを備えていることと、第2支持体51C,支持体61C間に溝LBを備えていること以外は、以下に説明するように上述した実施形態1での説明と同様である。また、第2支持体51C,支持体61Cは共通の支持体を用いても良い。
【0154】
ここで、「縁切り」とは、隣り合う超音波センサーまたは圧力センサーを独立化している状態を意味し、支持体を完全に分離せず、部分的に分離溝が形成されている状態も、「縁切り」と呼称する。
そして、圧力センサーや超音波センサーは、それぞれセンサー基板により支持されて、支持体も含めて機械的に分断されているため、互いに干渉することはなく、高い精度で圧力を検知することが可能となる。
また、センサーアレイ4Cでは、上記センサー5C,6Cが例えば、所定の第1方向(X方向)、及びこの第1方向(X方向)に直交する第2方向(Y方向)に沿ってそれぞれ交互に等間隔に設けられてもよい。
またここで、保護膜55Cを除去した構造を用いてもよい。そうすると、センサー基板45Cから圧力センサー6Cの頂部までの高さは、センサー基板45Cから超音波センサー5Cの頂部までの高さよりも高く形成されるため、超音波センサー5Cの頂部は物体とは接触しない。そのため、超音波センサー5Cは圧力による劣化から逃れることができ、高い信頼性(圧力耐性)を保つことが可能となる。
【0155】
[超音波センサーの構成]
図25は、超音波センサー5Cを含むセンサーアレイ4Cの構成を示す断面図である。
超音波センサー5は、第2支持体51C上に順に積層される第2支持膜、第2圧電体53C、第2枠体54C、及び保護膜55Cを備えている。
また、第2支持膜及び第2圧電体53Cにより、超音波トランスデューサー部が構成される。
【0156】
第2支持体51Cは、単結晶シリコン基板により形成され、約200μm程度の厚さに形成されている。また、第2支持体51Cには、第2支持膜を膜厚み方向から見た平面視において、円形状の第2開口部51Dがドライエッチングにより形成されている。
【0157】
第2支持膜は、第2支持体51Cの第2開口部51Dを閉塞し、第2支持体51Cの表面に積層される第1酸化膜52Cと第2酸化膜52Dとで構成されている。第1酸化膜52Cは、例えば、SiO2により形成されて、第2支持体51Cの単結晶シリコン基板の表面を熱酸化させることで約1μm程度の厚さに形成されている。第2酸化膜52Dは、例えば、ZrO2により形成されて、Zrをスパッタリングで成膜し、熱酸化させることにより約3μm程度の厚さとなるように、第1酸化膜52C上に形成されている。
【0158】
ここで、第2開口部51Dの径寸法は、第2ダイアフラム部の固有振動数に応じて、例えば約100μm〜数100μm程度の範囲で適宜設定されている。この第2ダイアフラム部が振動することで、超音波が物体10(図1参照)側に向けて発信される。
【0159】
第2圧電体53Cは、センサー平面視において、第2開口部51Dと同心円に形成される膜状部材であり、第2圧電体53Cの径寸法は、第2開口部51Dの径寸法D’よりも小さく形成されている。この第2圧電体53Cは、第2圧電膜531Cと、第2圧電膜531Cに電圧を印加する電極(下部電極532C及び上部電極533C)とを備えている。なお圧電体の径寸法とは、下部電極、圧電膜、及び上部電極の3層が積層されている領域の径を言う。
【0160】
第2圧電膜531Cは、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)を膜状にして形成されている。下部電極532Cは、第2圧電膜531Cの下に形成されている。上部電極533Cは、第2圧電膜531Cの上に形成されている。
これらの上部電極533C及び下部電極532Cは、それぞれ超音波センサー5Cの裏面側(第2開口部51D側)に形成される図示しない引出部により引き出されて、センサーアレイ4Cの図示せぬ制御部に接続されており、制御部から入力される電圧信号により圧電膜531Cに所定の電圧を印加する。
【0161】
第2枠体54Cは、可撓性を有する合成樹脂材の永久レジストで円筒状に形成され、約100μm〜600μmの厚さに形成されている。また、第2枠体54Cに設けられる筒状内周壁によって、第2支持膜の膜厚方向に沿う空洞部が形成される。そして、第2支持膜の膜厚み方向から見た平面視で筒状の空洞部の筒状内周縁が、第2開口部51Dの内周縁と重なる位置、または内周縁よりも外側の位置となるよう第2枠体54Cが形成されている。ここでは、第2枠体54Cの内径寸法を、第2開口部51Dの寸法と略同一寸法(重なる場合)となるよう形成している。そして、第2枠体54Cの空洞部には、メンブレンが収納されるようになっている。例えば、第2枠体54Cは東京応化工業株式会社のTMMRTMS2000の永久レジストを用いることで形成可能である。
【0162】
保護膜55Cは、物体10と接触する部分であり、第2枠体54Cと同様に可撓性を有する合成樹脂材のドライフィルムレジストで形成され、約100μmの厚さに形成されている。また、この保護膜55は、リング状に形成されて、第2枠体54Cの上端面を覆っている。例えば、保護膜55Cは東京応化工業株式会社のTMMFTMS2000のドライフィルムレジストを用いることで形成可能である。
【0163】
[圧力センサーの構成]
図25は、圧力センサー6Cを含むセンサーアレイ4Cの構成を示す断面図である。
圧力センサー6Cは、例えば把持装置1(図1参照)のアーム3の把持面31が物体10を把持した際の圧力を検知するものである。圧力センサー6Cは、支持体61C上に順に積層される支持膜、圧電体63C(圧電膜631C、下部電極632C、及び上部電極633C)、枠体64C、及び封止膜65Cを備えている。
また、支持膜は、支持体61Cの開口部61Dを閉塞し、支持体61Cの表面に積層される第1酸化膜62Cと第2酸化膜62Dとで構成されている。支持膜及び圧電体63Cにより、圧力検出部9Cが構成される。
【0164】
枠体64Cは、超音波センサー5Cの第2枠体54Cと同様に円筒状に形成され、空洞部を有する。そして、空洞部には、支持膜により開口部61Aを閉塞する部分であるダイアフラム部と、ダイアフラム部上に設けられる圧電体63Cとを備えたメンブレンが収納されている。
これにより、空洞部の筒状内周壁と、封止膜65Cと、圧力検出部とで形成される内部空間66Cには、圧力媒体としてのシリコーンオイル20Cが充填されている。
封止膜65Cは、内部空間66Cを閉塞して、シリコーンオイル20Cを封止するものである。なお、内部空間66Cに充填される材料としては、圧力を分散する材料であればよく、シリコーンオイル20Cの他、例えば、シリコーンゴム、ポリマーゲル、合成ゲル、天然ゲル、ポリマー樹脂等を用いてもよい。そして、支持膜の膜厚み方向から見た平面視で、筒状の空洞部の筒状内周縁が、開口部61Dの内周縁と重なる位置、または内周縁よりも外側の位置となるよう枠体64Cが形成されている。ここでは、枠体64Cの内径寸法を、開口部61Dの径寸法Dと略同一寸法(重なる場合)となるよう形成している。
【0165】
封止膜65Cは、保護膜55Cと同様に、物体10(図1参照)と接触する部分であり、内部空間66Cを閉塞してシリコーンオイル20Cを封止するように、円形状に形成されている。また、封止膜65Cは、シリコーンオイル20Cを封止するとともに、物体10に接触する部分である。なお、この封止膜65Cは、保護膜55Cと同様の材質で形成されている。例えば、封止膜65Cは東京応化工業株式会社のTMMFTMS2000のドライフィルムレジストを用いることで形成可能である。
シリコーンオイル20Cが内部空間66Cに充填されていることで、物体10が封止膜65Cに接触する際の衝撃をメンブレン8全体に分散している。
なお、内部空間66Cに充填される圧力媒体がポリマーゲルなどのような漏れ出ない材質である場合は、封止膜65Cは無くても良い。
【0166】
[センサーアレイの製造方法]
次に、センサー基板45Cを共通支持体51C,61Cの下面側に貼り付けた後、センサー基板45Cの少なくとも一部を残し、かつ共通支持体51C,61Cを縁切りする溝LBを形成する工程を用いるセンサーアレイの製造方法について説明する。図26〜図27は、センサーアレイの製造工程を示す工程断面図である。図26〜図27では、左側に超音波センサー5Cの製造工程、右側に圧力センサー6Cの製造工程を示している。
以下の説明では、一対の超音波センサー5Cと圧力センサー6Cについて記載しているが、これは、共に複数個の場合(図2参照)の場合についても対応可能である。
また、分割の仕方は、一旦圧力センサー6Cや超音波センサー5Cを個別に分割した後、改めてセンサー基板45Cに貼り付けても良い。また、いくつかの圧力センサー6Cや超音波センサー5Cをひとくくりにして分割しても良い。
【0167】
まず、共通支持体51C,61Cとなる単結晶シリコン基板を用意し、その一面に共通支持膜(第1酸化膜52C、62Cと第2酸化膜52D、62Dからなる)、圧電体63C、第2圧電体53C、枠体64C、第2枠体54Cを形成してから圧力センサー6Cとなる枠体64Cの空洞部に、シリコーンオイルを充填し保護膜55C及び封止膜65Cに対応するドライフィルムレジストを、ロールコート装置を用いて塗布する工程までの説明は、上述した実施形態1のセンサーアレイの製造方法と同様なので省略し、上記保護膜55C及び封止膜65Cとを、塗布する工程を終えた状態での断面図を図26に示す。ここで支持膜及び圧電体63Cにより、圧力検出部9Cが構成されている。
そして、この工程以降のセンサー基板45Cを共通支持体51C,61Cの下面側に貼り付けた後、センサー基板45Cの少なくとも一部を残し、かつ第2支持体51C,支持体61Cを縁切りする溝LBを形成する例を以下に説明する。
【0168】
まず共通支持体51C,61Cにドライエッチングを用いて貫通孔40Cを形成した後、CVDなどにより貫通孔40Cの側壁に絶縁層を形成する。次に貫通孔40CにめっきによりAuを埋め込むことによって貫通電極41Cが形成される。次には、塗布された保護膜55C及び封止膜65Cに対応するドライフィルムレジストをフォトリソグラフィ法により露光・現像して、さらにエッチング処理により、保護膜55C及び封止膜65Cを所望の形状にパターニングした後、共通支持体51C,61Cの下面側をドライエッチングし、第2枠体54C,枠体64Cの内径寸法と略同一の径を有する第2開口部51D,開口部61Dを形成する。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図27(A)に示す。
【0169】
次に、縁切りを行い、超音波センサー5C、及び圧力センサー6Cを分割する。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図27(B)に示す。
【0170】
次に、センサー基板45C上に超音波センサー5C、及び圧力センサー6Cを溝LBの幅を持って配列し固定することで、センサー基板45C上に複数の超音波センサー5C、及び圧力センサー6Cを備えるセンサーアレイ4Cが形成される。ここまでの工程を終えた状態での断面図を図27(C)に示す。
【0171】
なお、本実施形態では、超音波センサー5C、及び圧力センサー6Cを備える例について説明したが、圧力センサー6Cのみのセンサーアレイを形成することも同様に可能である。
【0172】
本実施形態のセンサーアレイでは実施形態1〜3における効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0173】
超音波センサー5C及び圧力センサー6Cは、互いに溝を介して(独立して)配置されるので、超音波センサーのメンブレンの振動の圧力センサーへの伝達を抑制できる。すなわち、圧力センサーのメンブレンの圧電体やダイアフラム部に超音波センサーからの振動により受ける影響が減少するので、圧力センサーは圧力を精度良く検知できる。
【0174】
超音波センサー5C及び圧力センサー6Cを一旦分割してからセンサー基板45Cに貼り付けるため、第2支持体51C,支持体61Cよりも大きなセンサー基板45Cに対しても対応することができる。また、第2支持体51C,支持体61Cは通例センサー基板45Cよりも高額であるため、一旦分割してからセンサー基板45Cに貼り付けることで製造コストを低減することが可能となる。
【0175】
[実施形態の変形]
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0176】
[変形例1]
図8を引用して説明する。図8は、本発明に係る変形例を示す図である。
前記実施形態では、枠体64の内径寸法は、開口部61Aの径寸法Dと略同一寸法であったが、本変形例では、枠体64の内径寸法は、開口部61Aの径寸法Dよりも大きく形成されている点で相違する構成となっている。
【0177】
[変形例2]
図2を引用して説明する。図2では、前記実施形態では、圧力センサー6と超音波センサー5とが、共通支持体51,61上に互いに等間隔となるように配置されていたが、これに限定されず任意の配置であってもよい。具体的には、圧力センサー6と超音波センサー5とが共通支持体51,61の面内に均一に分散配置されていれば、超音波センサー5により物体を認識する位置と、圧力センサー6により物体を把持する力を検知する位置とにばらつきが生じることがない。
【0178】
[変形例3]
図3を引用して説明する。図3(A)では、超音波センサー5は、メンブレン8側に向けて超音波を発信する構成であったが、第2開口部51A側にも超音波を発信する構成であってもよい。
【0179】
[変形例4]
図7(B)を引用して説明する。図7(B)では、超音波センサー5及び圧力センサー6の枠体64,第2枠体54は、それぞれ独立して形成されていたが、隣り合う第2枠体54と枠体64とを一体にして、圧力センサー6及び超音波センサー5が一対となるように構成してもよい。
【0180】
[変形例5]
図9、図10(A)を引用して説明する。図9、図10(A)に示すように、センサーアレイ180が備える支持体161に、枠体164の外形が正方形形状を備えた圧力センサー106が溝Gを介して配列された例について説明したが、外形は矩形に限定されることなく、例えば二等辺三角形、直角三角形、台形、正六角形等、平面を埋め尽くす形状を溝G分空けて配列しても良い。上述した外形を用いると、圧力センサー106に過度の圧力がかかった場合、隣り合う枠体164と面で押し合わされることとなるため、例えば枠体164の外形が円形等で隣り合う枠体164と線で押し合わされる場合と比べ、高い圧力に対してより耐性を向上させることができる。
また、図13に示すように、超音波センサー205を合わせ持つセンサーアレイ281に対応させる場合、圧力センサー206の一部を超音波センサー205と入れ替えても良く、この場合でも同様な効果が得られる。
【0181】
[変形例6]
図10(A)、図14(A)を引用して説明する。図10(A)、図14(A)に示すように、センサーアレイ180、281の説明として、ダイアフラム部107、207、および第2ダイアフラム部207Bの平面形状として、円形形状を備えるものについて説明したが、これは、楕円、矩形、正六角形、その他の形状を備えていても良い。また、例えば、楕円、矩形にすることで、枠体64,第2枠体54内におけるダイアフラム部107、207、および第2ダイアフラム部207Bの有効面積を向上させることが可能である。また、正六角形にし、枠体64,第2枠体54の外形もそれに合わせて正六角形にすることで、ダイアフラム部107、207、および第2ダイアフラム部207Bの有効面積を高く確保することができる。
【0182】
[変形例7]
図14(A)を引用して説明する。図14(A)に示す、圧力センサー206に加えて超音波センサー205を備えるセンサーアレイ281の場合、平面を埋め尽くす形状に限らず、枠体264(254)の外形が円形や、その他の形状を備えていても良い。圧力センサー206、超音波センサー205を溝Kだけ離して配置していれば、圧力センサー206の弾性限界以内に変形した場合に超音波センサー205の第2枠体254と接触し、この接触により超音波センサー205からの信号が変調されるため、この変調分を検出し、圧力を加減することで、圧力センサー206の信頼性を向上させることが可能となる。
【0183】
[変形例8]
図10、図13、図14、図18〜図21を引用して説明する。
図18は、センサーアレイの斜視図、図19(A)は、センサーアレイの平面図、図19(B)は、図19(A)に示す平面図のA−A’線断面図、図19(C)は物体10から圧力を受けた場合の模式断面図である。図20は、センサーアレイの斜視図、図21(A)は図20に示すセンサーアレイの平面図、図21(B)は、図21(A)に示す平面図のA−A’線断面図である。
図18に示すセンサーアレイ300は、支持体361上に実装される複数の圧力センサー306を備えている。図10に示すセンサーアレイ180では、圧力センサー106のみに封止膜165が備えられているが、これは図18に示すように、各枠体364に共通となるようにセンサーアレイ全面にわたる封止膜365を備える構成を持っていても良い。この場合、圧力センサー306にかかる圧力は、図18、及び図19(A)に示される構造を有することから図19(B),(C)に示されるように封止膜365により分散される。そのため、より壊れにくいセンサーアレイ300を提供することが可能となる。
また、圧力センサー406に加えて超音波センサー405を含むセンサーアレイ481での場合、図13、図14に示す封止膜265に代えて図20に示すように、超音波センサー405の領域を除いて封止膜465を備える構成を持っていても良い。図20に示すセンサーアレイ481は、共通支持体451,461上に実装される複数の圧力センサー406に加えて、複数の超音波センサー405を備え、図21(A)、(B)に示すように枠体464上には封止膜465が備えられ第2枠体454上には封止膜465が備えられていない。この場合、圧力センサー406にかかる圧力は、図20、及び図21(A),(B)に示される構造を持つことで封止膜465により分散される。そのため、より壊れにくいセンサーアレイ481を提供することが可能となる。
【0184】
[変形例9]
図2を引用して説明する。
実施形態1では一つの基板に圧力センサー6と超音波センサー5を集積する例について説明したが、これは、例えばダイシングにより分離した後、他の基板に貼り付けて使用しても良い。この場合、特に圧力センサー6や超音波センサー5を広い範囲に形成する場合に、大きい基板を必要としないことから、コストを低減することが可能となる。
【0185】
[変形例10]
図14、図28を引用して説明する。
実施形態3では、図14(B)に示すように、超音波センサー205、圧力センサー206と、超音波センサー205、圧力センサー206とを制御する図示せぬ制御部とは、第2支持膜252,支持膜262上(共通支持体251,261から枠体264,第2枠体254に向かう方向)に形成される電極パターン(配線)を介して導通が取られている。即ち、センサーアレイ281の上側に配線が形成され、この配線を介して超音波センサー205、圧力センサー206は制御部と導通される。この場合、縁切り用の溝Kと重なる領域の配線は除去されるため、溝Kの部分を避けて配線を形成することとなる。一方、本変形例では、図28に示すように貫通電極,41Cと導通するための配線44A,44Bを、Auをスパッタして後パターニングすることで形成している。配線44A,44Bを備えている。そのため、共通支持体251,261の平面視で、縁切り用の溝Kの部分を含めて配線44A,44Bを形成することができる。即ち、配線領域を、縁切り用の溝Kの領域を含めて形成することが可能となり、配線パターンの自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0186】
1…把持装置、2…支持部材、3…把持アームとしてのアーム、4…センサーアレイ、4C…センサーアレイ、5…超音波センサー、5C…超音波センサー、6…圧力センサー、6C…圧力センサー、7…ダイアフラム部、8…メンブレン、9…圧力検出部、10…物体、11…超音波トランスデューサー部、20…シリコーンオイル、20C…シリコーンオイル、31…把持面、40C…貫通孔、41C…貫通電極、43C…配線、44A…配線、44B…配線、45C…センサー基板、45D…センサー基板、51…第2支持体、51A…第2開口部、51C…第2支持体、51D…第2開口部、52…第2支持膜、52A…第1酸化膜、52B…第2酸化膜、52C…第1酸化膜、52D…第2酸化膜、53…第2圧電体、53C…第2圧電体、54…第2枠体、54A…空洞部、54C…空洞部、54D…枠体、55…保護膜、55C…保護膜、57…第2ダイアフラム部、61…支持体、61A…開口部、61C…支持体、61D…開口部、62…支持膜、62A…第1酸化膜、62B…第2酸化膜、62C…第1酸化膜、62D…第2酸化膜、63…圧電体、63C…圧電体、64…枠体、64A…空洞部、64C…枠体、65…封止膜、65C…封止膜、66…内部空間、66C…内部空間、67…ダイアフラム部、70…枠体層、101…信号検出手段、102…把持検出手段、103…駆動制御手段、104…制御装置、105…駆動機構、106…圧力センサー、107…ダイアフラム部、108…メンブレン、109…設定距離、110…設定圧力、111…遠隔(R)、112…近接感知(PP)、113…把持動作(MS)、116…動力源、117…動力伝達部、118…メモリー、120…シリコーンオイル、121…開口部、161…支持体、161A…開口部、162…支持膜、162A…第1酸化膜、162B…第2酸化膜、163…圧電体、164…枠体、165…封止膜、165A…レジスト、166…内部空間、170…枠体層、175…検出部、180…センサーアレイ、205…超音波センサー、206…圧力センサー、207…ダイアフラム部、207B…第2ダイアフラム部、220…シリコーンオイル、251…第2支持体、251A…第2開口部、252…第2支持膜、252A…第1酸化膜、252B…第2酸化膜、253…第2圧電体、254…第2枠体、261…支持体、261A…開口部、262…支持膜、262A…第1酸化膜、262B…第2酸化膜、263…圧電体、264…枠体、265…封止膜、265A…封止膜、266…内部空間、270…枠体層、275…超音波トランスデューサー部、281…センサーアレイ、285…圧力検出部、300…センサーアレイ、306…圧力センサー、361…支持体、364…枠体、365…封止膜、405…超音波センサー、406…圧力センサー、451…支持体、454…第2枠体、461…支持体、464…枠体、465…封止膜、481…センサーアレイ、531…圧電膜、531C…圧電膜、532…下部電極、532C…下部電極、533…上部電極、533C…上部電極、541…筒状内周壁、631…圧電膜、631C…圧電膜、632…下部電極、632C…下部電極、633…上部電極、633C…上部電極、641…筒状内周壁、731…圧電膜、732…下部電極、733…上部電極、831…圧電膜、832…下部電極、833…上部電極、931…圧電膜、932…下部電極、933…上部電極、G…溝、K…溝、LB…溝、M…溝、N…溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する支持体と、
前記支持体上に設けられて、前記開口部を閉塞するダイアフラム部を有する支持膜、及び前記ダイアフラム部上に設けられて、撓むことで電気信号を出力する圧電体を備えた圧力検出部と、
前記圧力検出部上に、前記支持膜の膜厚み方向に沿う筒状の空洞部を有するとともに、前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視において、前記空洞部の筒状内周壁が前記開口部の内周縁と重なる位置、または前記開口部の内周縁よりも外側に形成される枠体と、
前記枠体を閉塞する封止膜と、
前記空洞部の筒状内周壁、前記封止膜、前記圧力検出部により形成される内部空間に充填される圧力媒体と、を備えることを特徴とする圧力センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力センサーであって、
前記枠体は、可撓性を有することを特徴とする圧力センサー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧力センサーが複数配置されてなるセンサーアレイであって、
隣り合う前記圧力センサーの枠体間には、間隙が形成されていることを特徴とするセンサーアレイ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の圧力センサーと、
第2開口部を有する第2支持体、前記第2支持体上に設けられて、前記第2開口部を閉塞する第2ダイアフラム部を有する第2支持膜、及び前記第2ダイアフラム部上に設けられて、電圧の印加により撓む第2圧電体を備えた超音波トランスデューサー部を有する超音波センサーと、を備えることを特徴とするセンサーアレイ。
【請求項5】
請求項4に記載のセンサーアレイであって、
前記超音波センサーは、前記超音波トランスデューサー部上に、前記第2支持膜の膜厚み方向に沿う筒状の第2空洞部を有するとともに、前記第2支持膜を膜厚み方向から見た平面視において、前記第2空洞部の筒状内周壁が前記第2開口部の内周縁と重なる位置、または前記第2開口部の内周縁よりも外側に形成される第2枠体を更に備えることを特徴とするセンサーアレイ。
【請求項6】
請求項5に記載のセンサーアレイであって、
複数の前記圧力センサー及び複数の前記超音波センサーを備え、
隣り合う前記圧力センサーの枠体の間、隣り合う前記超音波センサーの第2枠体の間、または隣り合う前記圧力センサーの枠体と前記超音波センサーの第2枠体との間には、間隙が形成されていることを特徴とするセンサーアレイ。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサーアレイであって、前記支持体と前記第2支持体は共通の共通支持体であり、前記共通支持体から前記圧力センサーの頂部までの高さは、前記共通支持体から前記超音波センサーの頂部までの高さより高く形成されていることを特徴とするセンサーアレイ。
【請求項8】
請求項6または7に記載のセンサーアレイであって、
前記圧力センサー及び前記超音波センサーは、交互に配置される2次元アレイ構造を備えていることを特徴とするセンサーアレイ。
【請求項9】
請求項3または6に記載のセンサーアレイであって、
前記間隙は、前記圧力センサーに対して第1の圧力が印加された際に、前記枠体が撓んで、隣の前記圧力センサーの前記枠体、または隣の前記超音波センサーの前記第2枠体と接触する寸法に設定されており、
前記第1の圧力は、前記圧力センサーの許容圧力よりも小さいことを特徴とする、センサーアレイ。
【請求項10】
複数の圧力センサーを含むセンサーアレイの製造方法であって、
支持体上に支持膜を形成し、前記支持膜上に圧電体を形成して、複数の圧力検出部を形成する圧力検出部形成工程と、
前記複数の圧力検出部上に前記圧電体を覆う枠体層を形成する枠体層形成工程と、
前記枠体層形成工程により形成される前記枠体層の一部を除去して、筒状内周壁を有する空洞部を備え、隣り合う枠体間に間隙を有するように枠体を形成する枠体形成工程と、
前記空洞部内に圧力媒体を充填する充填工程と、
ロールコート法により前記空洞部を閉塞し、前記圧力媒体を封止する封止膜を形成する膜形成工程と、を備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のセンサーアレイの製造方法であって、
前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視で前記間隙と重なる位置において前記支持膜を分割する溝を形成する工程、をさらに備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載のセンサーアレイの製造方法であって、
前記支持体の下側にセンサー基板を貼る工程と、
前記センサー基板の少なくとも一部を残して、前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視で前記間隙と重なる位置において前記支持体を分割する溝を形成する工程と、
をさらに備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載のセンサーアレイの製造方法であって、前記膜形成工程を行った後、前記圧力センサーを一つ以上含むブロックに分割する行程と、前記ブロックを、前記圧力センサーの下側がセンサー基板側にくるよう前記センサー基板に貼り付ける行程とを、さらに備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項14】
複数の圧力センサーと複数の超音波センサーとを含むセンサーアレイの製造方法であって、
支持体上に支持膜を形成し、前記支持膜上に圧電体を形成して、複数の圧力検出部及び複数の超音波トランスデューサー部を形成する圧電体センサー部形成工程と、
前記複数の圧力検出部及び複数の超音波トランスデューサー部上に前記圧電体を覆う枠体層を形成する枠体層形成工程と、
前記枠体層形成工程により形成される前記枠体層の一部を除去して、筒状内周壁を有する空洞部を備え、かつ間隙により区分される複数の枠体を形成する枠体形成工程と、
一部の前記空洞部内に圧力媒体を充填する充填工程と、
ロールコート法により前記空洞部を閉塞し、前記圧力媒体を封止する封止膜を形成する膜形成工程と、を備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載のセンサーアレイの製造方法であって、
前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視において、前記間隙と重なる位置において前記支持膜を分割する溝を形成する工程をさらに備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載のセンサーアレイの製造方法であって、
前記支持体の下側にセンサー基板を貼る工程と、
前記センサー基板の少なくとも一部を残して、前記支持膜を膜厚み方向から見た平面視で前記間隙と重なる位置において前記支持体を分割する溝を形成する工程をさらに備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載のセンサーアレイの製造方法であって、
前記膜形成工程を行った後、前記圧力センサーまたは超音波センサーを少なくとも一つ以上含むブロックに分割する行程と、
前記ブロックを、前記圧力センサーの下側がセンサー基板側にくるよう前記センサー基板に貼り付ける行程とを、さらに備えることを特徴とするセンサーアレイの製造方法。
【請求項18】
請求項3〜9のいずれか一項に記載のセンサーアレイを備え、物体を把持する把持装置であって、
前記物体を把持するとともに、前記物体に接触する接触面に少なくとも1つの前記センサーアレイが設けられる一対の把持アームと、
前記センサーアレイから出力される電気信号に基づいて、前記物体の把持状態を検出する把持検出手段と、
前記把持状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えることを特徴とする把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−215533(P2012−215533A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104095(P2011−104095)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】