圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法
【課題】処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供する。
【解決手段】圧力交換装置10は、一端側から第1流体が流入または流出する第1流路31と一端側から第2流体が流入または流出する第2流路32とが連通するように形成された圧力伝達部33を回転軸心周りに配設した回転体30と、第1流体を第1流路31に案内する第1流体流入路14と第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路32から案内する第2流体流出路15、及び、第2流体を第2流路32に案内する第2流体流入路16と第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路31から案内する第1流体流出路17とが厚み方向に形成された第1側方部材20aと、回転体30を第1側方部材20aとの間でブッシュ13を介して回転可能に挟持する第2側方部材20bと、を備えている。
【解決手段】圧力交換装置10は、一端側から第1流体が流入または流出する第1流路31と一端側から第2流体が流入または流出する第2流路32とが連通するように形成された圧力伝達部33を回転軸心周りに配設した回転体30と、第1流体を第1流路31に案内する第1流体流入路14と第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路32から案内する第2流体流出路15、及び、第2流体を第2流路32に案内する第2流体流入路16と第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路31から案内する第1流体流出路17とが厚み方向に形成された第1側方部材20aと、回転体30を第1側方部材20aとの間でブッシュ13を介して回転可能に挟持する第2側方部材20bと、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置を用いる海水淡水化施設では、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体である高圧濃縮海水がもつ余剰圧力を、逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である低圧海水の昇圧に利用する圧力交換装置が設けられている。
【0003】
図12に示すように、特許文献1には、管状の圧力伝達部が回転軸心周りに複数本配設されたロータ80を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0004】
該圧力交換装置は、ロータ80の回転に伴って、高圧入口側ポート82へ供給される高圧濃縮海水と低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水とを圧力伝達部で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を、高圧出口側ポート83から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート84から排水するように構成されている。
【0005】
図13に示すように、特許文献2には、一対の回転板91、92と当該回転板91、92を連接する軸93とで構成される回転体90を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0006】
一方の回転板91には、低圧入口側ポート95に供給された低圧海水を圧力伝達部96に案内する流路91aと、圧力伝達部96から排水される高圧海水を高圧出口側ポート97に案内する流路91bが形成されている。
【0007】
他方の回転板92には、高圧入口側ポート94に供給された高圧濃縮海水を圧力伝達部96に案内する流路92bと、圧力伝達部96から排水される低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98に案内する流路92aが形成されている。
【0008】
該圧力交換装置は、回転体90の回転に伴って、高圧入口側ポート94へ供給される高圧濃縮海水と、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水を、管状の圧力伝達部96内で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を高圧出口側ポート97から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98から排水するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009180903号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第200710056401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された圧力交換装置では、ロータ80に配設された管状の圧力伝達部の断面積に依存して圧力伝達される処理流量が定まるので、処理流量を増やすためには、圧力伝達部の配設本数を増加させるか、圧力伝達部の一本あたりの断面積を大きくする必要があり、何れの場合であってもロータ80が大きくなり、それに伴って圧力交換装置が大型になり重量も増大する。
【0011】
一般的にロータ80は、軽量化、高剛性、耐摩耗性、低摩擦係数等の条件を満足させるために、セラミックス等の高価な材料で形成されているため、圧力交換装置を大型化するとそれに伴って材料費、製造費が嵩むという問題があった。
【0012】
さらに、大型のロータ80を回転させるために要するトルクも増大し、小型のロータ80を回転させる場合よりも大きなエネルギーが必要になり、効率が低下するという問題もあった。このような理由によって、圧力交換装置1台あたりの処理流量を増加させるのは極めて困難であった。
【0013】
そのため、大量の海水を淡水化処理する大型の海水淡水化施設には、多数の圧力交換装置が設置されていた。しかし、圧力交換装置の設置台数が増加すると、各圧力交換装置を接続する配管の施工及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0014】
特許文献2に記載された圧力交換装置では、一方の回転板91に形成された流路91bと他方の回転板92に形成された流路92bの夫々が、回転体内部で軸心方向に沿った流路に円周方向に形成された流路が連通するように構成されているため、回転板91、92に流路を形成するための厚みが必要となる。そのため、回転板91、92が大型になり材料費や加工費が嵩むという問題があった。
【0015】
さらに、回転板91、92の大型化によって重量が増すと、回転体90の回転時に軸部93に作用するねじりや曲げ応力が大きくなり、その変形や破損を防止するために軸部93を太くする必要があるばかりでなく、回転のために要するエネルギーが増加し、効率が低下するという問題もあった。
【0016】
本発明の目的は、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明による圧力交換装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、一端側から第1流体が流入または流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入または流出する第2流路とが連通するように形成された圧力伝達部を、回転軸心周りに配設した回転体と、第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路、及び、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、前記回転体を第1側方部材との間で保持部材を介して回転可能に挟持する第2側方部材と、を備えている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、第1側方部材に形成された第1流体流入路を介して装置の外部から第1流路へと案内された第1流体の圧力が、第1流路と連通された第2流路内の第2流体に伝達され、昇圧された第2流体が、第1側方部材に形成された第2流体流出路を介して装置の外部へ排水される。
【0019】
また、第1側方部材に形成された第2流体流入路を介して装置の外部から第2流路へと案内された第2流体の圧力が、第2流路と連通された第1流路内の第1流体に伝達され、第1流体が、第1側方部材に形成された第1流体流出路を介して装置の外部へ排水される。
【0020】
このように、第1流路と第2流路と両流路の連通部とで圧力伝達部を構成することにより、回転体の一端側から当該圧力伝達部へ第1流体または第2流体を流入させて、第1流体と第2流体との間で圧力を交換し、当該一端側から第2流体または第1流体を流出させることができるので、特許文献1に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の軸心方向の長さが短くなることで、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0021】
さらに、第1流体流入路及び流出路、第2流体流入路及び流出路が第1側方部材にのみ形成されているため、各流体の流入路または流出路と接続する配管を第1側方部材側に纏めて設置すればよく、従来の装置のように回転体の両端側に夫々流体の流入路または流出路と接続する配管を設置する場合と比較して、配管設置作業やメンテナンス作業等の作業性が良好になる。つまり、配管が第1側方部材側にまとまることで、配管を含めた設置スペースが小さくなる。さらに、配管を外すことなく、配管のない第2側方部材20b側からメンテナンス可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0022】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記回転体は、第1及び第2側方部材と各側方部材で挟持された保持部材とで区画される空間に収容されるとともに、第1流路及び第2流路が前記回転体を貫通するように形成され、前記回転体と第1及び第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている点にある。
【0023】
第1側方部材及び第2側方部材と保持部材とで区画される空間内で回転体が回転することにより、第1流路に流入した第1流体から圧力伝達された第2流体が第2流路から流出し、第2流路に流入した第2流体から圧力伝達された第1流体が第1流路から流出する動作が繰り返される。
【0024】
このとき、第1流路及び第2流路が回転体を貫通するように形成されているので、回転体の端面と第2側方部材との間に形成された隙間に第1または第2流体が進入して、当該流体によって回転体を第1側方部材に向けて押圧する力が働く。また、第1側方部材に形成された第1流体流入路から流入する第1流体、または、第2流体流入路から流入する第2流体が、回転体の端面と第1側方部材との間に形成された隙間に侵入して、当該流体によって回転体を第2側方部材に向けて押圧する力が働く。
【0025】
両側からほぼ等しい力で押圧される回転体は、第1側方部材及び第2側方部材の間で一方向に片寄ることなくバランスするため、第1側方部材または第2側方部材の何れか一方と常時摺動しながら回転するようなことがなく、円滑に回転できるようになる。その結果、第1側方部材及び第2側方部材の磨耗が低減できるので、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができる。
【0026】
さらに、回転体は、両側からほぼ等しい力で押圧されるため、第1及び第2側方部材と回転体との回転抵抗が低減する。そのため、処理流量を稼ぐために回転体を大径に形成し、圧力伝達部を構成する第1及び第2流路の断面積を大きくした場合でも、回転体を回転駆動するために要するエネルギーの損失が低く抑えられるようになる。
【0027】
尚、回転体と第1及び第2側方部材との間に形成される隙間は、狭すぎると大きな摺動抵抗が発生し、広すぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0028】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、少なくとも一方の側方部材を押圧して、第1及び第2側方部材の間隔を調整する押圧機構を備えている点にある。
【0029】
上述の構成によれば、仮に各側方部材と回転体の端面が磨耗して隙間が大きくなり、流体が漏れて圧力の交換効率の低下を招くような場合であっても、押圧機構により第1及び第2側方部材の間隔が調整できるようになるので、部品交換等の規模の大きな分解を伴なうメンテナンスを行なわずに長期間安定して稼動させることができるようになる。
【0030】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二または第三特徴構成に加えて、第1及び第2側方部材の外側に各側方部材を前記回転体に向けて押圧する押圧空間を形成し、前記押圧空間に第1流路または第2流路に供給される流体を導く連通孔を第1及び第2側方部材に形成している点にある。
【0031】
第1及び第2側方部材に形成された連通孔を介して各押圧空間に導かれた流体によって、第1及び第2側方部材には外側から内側に向けて押圧力が作用する。各押圧空間に導かれた流体の圧力は、回転体と第1及び第2側方部材との間に形成された隙間に進入する流体の圧力とほぼ等しく、第1及び第2側方部材の夫々の両面に付与される押圧力がバランスするため、回転体に貫通形成された第1または第2流路に流れる流体の圧力によって第1及び第2側方部材が回転軸芯方向に歪むような事態が回避される。そのため、運転中に回転体と側方部材との間の隙間は広がることなく所定の隙間を保持し、さらに回転体が、第1側方部材及び第2側方部材と摺動することなく円滑に回転できるようになる。
【0032】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記第1側方部材は、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている点にある。
【0033】
上述の構成によれば、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のエネルギーが、トルク付与機構によって、回転体を回転させるためのトルクに変換されるので、外部動力がなくても回転体を回転させることができるようになる。そして、回転体の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0034】
尚、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体と第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のうち、回転軸心から径方向に大きく離隔した流路に流入、または、回転軸心から径方向に大きく離隔した流路から流出する流体のエネルギーを利用するほうが、同じエネルギーで大きなトルクを発生させることができるのでエネルギー効率がよい。
【0035】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五特徴構成に加えて、前記トルク付与機構は、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成された第1傾斜部と、第2流体流出路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成された第2傾斜部と、を備え、第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が逆になるように設定されている点にある。
【0036】
第1傾斜部は、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成されているので、第1流体は第1流体流入路から第1傾斜部を経て複数の第1流路に分散して流入することになる。
【0037】
このとき、第1傾斜部に沿って流れる第1流体は前記回転体の周方向に沿って流れ、第1流路の壁面へ圧力を付与する、つまり、前記回転体を回転させるトルクを付与することになる。
【0038】
第2傾斜部は、第2流体流出路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成されているので、複数の第2流路を流れる第2流体が合流して第2傾斜部を経て第2流体流出路に流出することになる。
【0039】
このときに、第2傾斜部に沿って第2流体流出路に流れる第2流体は、第2流路から第2流体流出路に流れる水の通水断面積を広くする向きに第2流路の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体に周方向のトルクを付与することになる。
【0040】
第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が逆になるように設定されているので、第1流体が第1流体流入路から第1流路に流入するときのエネルギーにより回転体に付与されるトルクと、第2流体が第2流路から第2流体出路へと流出するときのエネルギーにより回転体に付与されるトルクが同じ向きになる。
【0041】
つまり、回転体に流入する第1流体と回転体から流出する第2流体のエネルギーにより回転体を回転させるトルクを発生させるので、何れか一方のエネルギーのみにより回転体を回転させる場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0042】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記回転体に、複数の圧力伝達部が回転軸心周りに放射状に配設されている点にある。
【0043】
上述の構成によれば、圧力伝達部は回転軸心周りに放射状に複数配設されているので、流路の総断面積が多くなり、圧力交換装置の処理流量を増加させることができる。
【0044】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第七特徴構成に加えて、隣接する複数の圧力伝達部が、前記回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通する点にある。
【0045】
上述の構成によれば、隣接する複数の圧力伝達部が、回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通することで、回転体の回転に伴う第1流体または第2流体の流量変動を低減し、流体の脈動、装置の脈動等の悪影響を防止することができる。
【0046】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第七または第八の特徴構成に加えて、前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部が存在する点にある。
【0047】
上述の構成によれば、前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部では、第1流体及び第2流体の流入、流出を一旦停止させることができるので、第1流路及び第2流路内の流体の流れの方向の切り替えを円滑にすることができる。また、高圧の流体が通る「第1流体流入路と第2流体流出路」と低圧の流体が通る「第1流体流出路と第2流体流入路」との距離を大きくすることができるため流体の漏れ量が減るので圧力伝達の効率を高めることができる。
【0048】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第九の何れかの構成に加えて、前記第1側方部材に、複数組の第1流体流入路と第2流体流出路が回転軸心周りに対称に配置されている点にある。
【0049】
上述の構成によれば、1回転あたりの回転体への流体の流入及び流出が複数回になる。そのため1回の流入、流出での流体の移動量が小さくなり、流路長さを短くすることができるので、回転体をコンパクト化することができる。また、第1側方部材に、複数組の第1流体流入路と第2流体流出路が回転軸心周りに対称に配置されているので、トルク付与機構を回転軸心周りに対称に配置することができるので、回転体にバランスよくトルクを付与することができ、回転体が傾くことなく円滑に回転させることができる。
【0050】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第一から第十の何れかの特徴構成に加えて、第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されている点にある。
【0051】
上述の構成によれば、第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されているので、流体が第1流路と第2流路を通流するときの圧力損失が低減され、効率の良い圧力伝達が可能となる。
【0052】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第一から第十一の何れかの構成に加えて、前記回転体を外部動力で回転させる駆動軸が前記回転体に連結されている点にある。
【0053】
上述の構成によれば、流体の流れが不安定である等の何らかの要因により回転体の回転が安定しないような場合でも、駆動軸に連結された駆動機等の外部動力で回転体を回転させることにより、安定した圧力交換処理が可能となる。
【0054】
同第十三の特徴構成は、同請求項13に記載した通り、上述の第一から第十二の何れかの構成に加えて、前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である点にある。
【0055】
上述の構成によれば、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体の圧力により逆浸透膜装置に供給される被濃縮流体を昇圧することができるので、逆浸透膜装置からの高圧濃縮流体の余剰圧力を捨てることなく有効なエネルギーとして利用することができる。
【0056】
本発明による圧力交換装置の性能調整方法の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項14に記載した通り、上述の第五または第六の特徴構成を備えた圧力交換装置の性能調整方法であって、前記トルク付与機構を変更することにより処理流量を調整する点にある。
【0057】
第1傾斜部及び第2傾斜部の形状が変わると、回転体に加わるトルクが変わるので回転体の回転数が変わる。つまり、回転体の回転数は、第1傾斜部及び第2傾斜部の形状に依存する。よって、第1傾斜部及び第2傾斜部の形状を変更するだけで、処理流量にあわせて回転体の回転数を変更できるため、圧力交換装置の処理流量を容易に調整できる。
【発明の効果】
【0058】
以上説明した通り、本発明によれば、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】海水淡水化施設の概略フロー図
【図2】圧力交換装置を説明する断面図
【図3】回転体の説明図であって、(a)は正面図、(b)は正面図のA―A線断面図、(c)は背面図
【図4】第1側方部材の説明図であって(a)は正面図、(b)は正面図のB―B線断面図、(c)は背面図
【図5】第1側方部材に形成された各流入路及び流出路と回転体の各流路の説明図であって、(a)は図4(a)に示す第1流体流入路のC−C線断面図と、該第1流体流入路に連通する第1流路の説明図、(b)は図4(a)に示す第2流体流出路のD−D線断面図と、該第2流体流出路に連通する第2流路の説明図、(c)は図4(a)に示す第1流体流出路のF−F線断面図と、該第1流体流出路に連通する第1流路の説明図、(d)は図4(a)に示す第2流体流入路のE−E線断面図と、該第2流体流入路に連通する第2流路の説明図
【図6】回転体に形成された各流路と第1側方部材に形成された各流入路及び各流出路の位置を示す説明図
【図7】圧力交換装置の説明図であって(a)は正面図、(b)は背面図
【図8】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図9】(a)は別実施形態による圧力交換装置の説明図、(b)は要部説明図
【図10】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図11】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図12】従来の圧力交換装置の説明図
【図13】従来の圧力交換装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に、本発明による圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法の好ましい実施形態を説明する。
【0061】
図1に示すように、海水淡水化施設は、海水中の夾雑物を取り除く前処理部1と、前処理部1で前処理された海水を貯留するろ過海水槽2と、ろ過海水槽2に貯留された海水を保安フィルターに供給する供給ポンプ3と、逆浸透膜装置6の詰まりを防止するため海水中の微細な異物を除去する保安フィルター4と、保安フィルター4を通過した海水を昇圧する高圧ポンプ5と、昇圧された海水が供給される逆浸透膜装置6を備えている。逆浸透膜装置6によって海水中の各種塩類が除去され、飲料用水や工業用水等として利用できるように淡水化される。
【0062】
逆浸透膜装置6は、浸透膜の一方側の海水に圧力をかけることにより、逆浸透膜の他方側に海水中の各種塩類が除去された淡水を染み出させる装置であり、ろ過するためには、海水を浸透圧以上の所定の圧力にする必要がある。
【0063】
逆浸透膜装置6は、供給された海水のすべてを淡水化できるものではない。例えば、逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%は淡水化されて排水されるが、残りの60%は淡水化されずに非常に圧力の高い高圧濃縮海水として排水される。
【0064】
そこで、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水のもつ余剰圧力を有効なエネルギーとして回収して利用する圧力交換装置10を備えている。
【0065】
ろ過海水槽2から逆浸透膜装置6に供給される海水のうち、40%は高圧ポンプ5で浸透圧以上の所定の圧力、例えば、6.9MPaまで昇圧される。逆浸透膜装置6に供給される残りの60%の海水(以下、「低圧海水」と記す)は、圧力交換装置10が逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水から回収した余剰圧力(6.75MPa)と、ブースターポンプ7により6.9MPaまで昇圧される。
【0066】
つまり、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiの圧力により、圧力交換装置10に供給された低圧海水Liを昇圧して、高圧海水Hoとしてブースターポンプ7を経由して逆浸透膜装置6に供給し、圧力交換装置10に供給される低圧海水Liにより前記圧力が回収された後の低圧濃縮海水Loを排水する圧力交換処理を行なう。
【0067】
このように、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiの余剰圧力を捨てることなく逆浸透膜装置6に供給される低圧海水Liの昇圧に利用して、逆浸透膜装置6でのろ過に必要な圧力の一部を補うので、海水淡水化施設全体のエネルギー効率が向上する。
【0068】
図2に示すように、圧力交換装置10は、ケーシング11と、第1側方部材20aと、第2側方部材20bと、各側方部材20a、20bとで挟持されたスリーブ12とで区画される空間に収容され、各側方部材20a、20bの夫々に備えられたブッシュ13に回転可能に支持される回転体30と、押圧機構40を備えている。
【0069】
ケーシング11は、樹脂材料、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等の金属材料のように、海水に対する耐食性があり、ある程度強度を備えた材料で形成すればよい。ステンレス鋼等の高強度の金属管を樹脂材料やセラミックスで被覆して構成してもよい。これにより、耐食性に劣る安価な材料を利用することができコストダウンが図れる。
【0070】
回転体30、各側方部材20a、20b、スリーブ12は、アルミナ等のセラミックス、FRP、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等のように、海水に対する耐食性があり、十分に強度のある材料を用いることができる。また、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼を用いた場合には、回転体30と各側方部材20a、20bとの対向面を窒化処理し、或は、アルミナ等のセラミックを溶射し、肉盛溶接し、或はHIP処理して摩擦係数を低減する耐磨耗層を形成することが好ましい。
【0071】
回転体30の回転軸または回転摺動面は耐摩耗性、低摩擦係数を備えたセラミックス等の高価な材料が要求されるが、ブッシュ13を回転軸として備えることで高価な材料の使用量を最小限に抑えることにより低コスト化を図ることができる。
【0072】
図2及び図3(a)、(b)、(c)に示すように、回転体30には、その一端側の端面30aから高圧濃縮海水Hiが流入し、圧力が交換された後の低圧濃縮海水Loが流出する第1流路31と、同じく一端側の端面30aから低圧海水Liが流入し、圧力が交換された後の高圧海水Hoが流出する第2流路32とが、回転体30の他端側の端面30b側で連通するように形成された圧力伝達部33が設けられている。第1流路31の断面積と第2流路32の断面積は等しくなるように形成されている。
【0073】
圧力伝達部33は、回転軸心周りに放射状に18組配設され、回転体30の中心にはブッシュ13を挿通可能な開口29が形成されている。本実施形態では、高圧濃縮海水Hiと低圧濃縮海水Loが第1流体となり、低圧海水Liと高圧海水Hoが第2流体となる。
【0074】
図2及び図4(a)、(b)、(c)に示すように、第1側方部材20aには、高圧濃縮海水Hiを回転体30の第1流路31に案内する第1流体流入路14t、14bと、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoを第2流路32から案内する第2流体流出路15t、15bと、低圧海水Liを第2流路32に案内する第2流体流入路16t、16bと、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loを第1流路31から案内する第1流体流出路17t、17bとが、その厚み方向に形成されている。
【0075】
本実施形態では、図4(a)に示すように、第1流体流入路14t及び第2流体流出路15tと、第1流体流入路14b及び第2流体流出路15bとは、正面視で回転軸心に対して点対称の位置に配置されている。
【0076】
さらに、これらと90度位相が回転した位置に、第2流体流入路16t及び第1流体流出路17tと、第2流体流入路16b及び第1流体流出路17bとが、正面視で回転軸心に対して点対称の位置に配置されている。
【0077】
第1側方部材20aは、第1流路31に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーと第2流路32から流出する高圧海水Hoのエネルギー、及び、第2流路32に流入する低圧海水Liのエネルギーと第1流路31から流出する低圧濃縮海水Loのエネルギーにより回転体30にトルクを付与して回転体30を回転させるトルク付与機構を備えている。
【0078】
従って、回転体30を回転させるための外部動力が不要となり、回転体30の回転に伴って、第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0079】
図4(c)に示すように、トルク付与機構は、第1流体流入路14t、14bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第1流路31と連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての傾斜面14aと、第2流体流出路15t、15bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第2流路32と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての傾斜面15aと、第2流体流入路16t、16bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第2流路32と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての傾斜面16aと、第1流体流出路17t、17bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第1流路31と連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての傾斜面17aとで構成されている。
【0080】
傾斜面14aの傾斜方向と傾斜面15aの傾斜方向が逆になるように設定され(図5(a)、(b)参照)、傾斜面16aの傾斜方向と傾斜面17aの傾斜方向が逆になるように設定されている(図5(c)、(d)参照)。
【0081】
傾斜面14aは、第1流体流入路14t、14bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第1流路31と連通するように拡径して形成されているので、高圧濃縮海水Hiは第1流体流入路14t、14bから傾斜面14aを経て複数の第1流路31に分散して流入することになる。
【0082】
このとき、傾斜面14aに沿って流れる高圧濃縮海水Hiは回転体30の周方向に沿って流れ、第1流路31の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体30を回転させるトルクを付与することになる。この傾斜面14aが、トルク付与機構の1つの例である。
【0083】
傾斜面15aは、第2流体流出路15t、15bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第2流路32と連通するように拡径して形成されているので、複数の第2流路32を流れる高圧海水Hoが合流して傾斜面15aを経て第2流体流出路15t、15bに流出することになる。
【0084】
このときに、第2傾斜部15aに沿って第2流体流出路15t、15bに流れる高圧海水Hoは、第2流路32から第2流体流出路15t、15bに流れる水の通水断面積を広くする向きに第2流路32の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体30に周方向のトルクを付与することになる。
【0085】
傾斜面14aの傾斜方向と傾斜面15aの傾斜方向が逆になるように設定されているので、高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路14t、14bから第1流路31に流入するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクと、高圧海水Hoが第2流路32から第2流体出路15t、15bへと流出するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクが同じ向きになる。
【0086】
つまり、回転体30に流入する高圧濃縮海水Hiと回転体30から流出する高圧海水Hoのエネルギーにより回転体30を回転させるトルクを発生させるので、何れか一方のエネルギーのみにより回転体30を回転させる場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0087】
同様に、低圧海水Liが第2流体流入路16t、16bから第2流路32に流入するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクと、低圧濃縮海水Loが第1流路31から第1流体流出路17t、17bへと流出するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクも同じ向きになる。
【0088】
つまり、回転体30に流入する低圧海水Liと回転体30から流出する低圧濃縮海水Loのエネルギーによっても回転体30を回転させるトルクを発生させるので、高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoのエネルギーのみにより回転体30を回転させる場合より、さらに大きなトルクを付与することができる。
【0089】
図2に戻り、第1流路31及び第2流路32は、回転体30を貫通するように形成され、回転体30の両端面30a、30bは同じ形状となっている。第1側方部材20a及び第2側方部材bと各側方部材20a、20bで挟持されたスリーブ12とで区画される空間内で回転体30が回転しつつ、圧力伝達部で第1流体と第2流体の間で圧力伝達される際に、回転体30と第1側方部材20a及び第2側方部材20bとの間に形成された隙間には各流体が進入して、所定圧力で回転体30を両側から押圧するので、回転体30は前記空間内で軸心方向に片寄ることなくバランスよく配置されることになる。
【0090】
つまり、回転体30は各側方部材20a、20bに押し付けられないので回転に対する抵抗が低減されて、円滑に回転することができる。さらに、回転体30は、各側方部材20a、20bとの磨耗が低減できるので耐久性が向上する。
【0091】
尚、回転体30の回転に対する抵抗を低減できると、回転体の直径を大きくしても円滑に回転させやすくなる。回転体の直径を大きくすることで、回転体に形成する流路の断面積を大きくすることができるので、装置の処理性能を向上させることができる。
【0092】
当該隙間は狭すぎると回転体30と側方部材20が摺動して回転に対する抵抗となり、広すぎると各流体の漏れ量が多すぎて圧力の交換効率が低下するため、例えば、1〜100μm程度が好ましい。
【0093】
押圧機構40は、当該隙間を調整できるように構成されている。尚、スリーブ12の第1側方部材20a及び第2側方部材20bとの接触面には円周方向にシール18が配設され、シール18によりスリーブ12の外部に流体が漏れるのが防止される。
【0094】
押圧機構40は、スリーブ12の外周を囲うように配置されたケーシング11の一端側であって第1側方部材20側に備えられる受圧部材41と、ケーシング11の他端側であって第2側方部材20bに当接して配置される押圧部材42とを備えている。
【0095】
図7(a)に示すように、受圧部材41は、厚み方向に通水路44(44t、44b)、45(45t、45b)、46(46t、46b)、47(47t、47b)が形成され、夫々の通水路44(44t、44b)、45(45t、45b)、46(46t、46b)、47(47t、47b)が、第1側方部材20aに形成された第1流体流入路14(14t、14b)、第2流体流出路15(15t、15b)、第2流体流入路16(16t、16b)、第1流体流出路17(17t、17b)と夫々連通した状態で、ケーシング11及び第1側方部材20aにボルト43で螺着されている。
【0096】
図7(b)に示すように、押圧部材42は、第2側方部材20b側に突出して形成された押圧部42aを備え、押圧部42aの周囲がスペーサ48を介してケーシング11にボルト49で螺着されている。
【0097】
スペーサを薄く、または、複数枚あるスペーサの一部を抜いてボルト49を締付けると、押圧部材42の押圧部42aが第2側方部材20bを押圧して、第2側方部材20bが僅かに変形して、回転体30の両端面30a、30bと各側方部材20a、20bの間に形成される前記隙間が狭くなる。逆に、スペーサを厚くして、または、スペーサの枚数を増やしてボルト49を締め付けると、スペーサ48によって、第2側方部材20bは第1側方部材20から離隔する方向へ移動し、前記間隔が広くなる。
【0098】
このように、押圧機構40により第2側方部材20bを押圧して、第1側方部材20a及び第2側方部材20bの間隔を適当な間隔に調整することで、各側方部材20a、20bと回転体30の端面30a、30bとの各隙間を調整することができる。
【0099】
また、第2側方部材20b側のみではなく、第1側方部材20a側にも同様の押圧機構40を備え、第1側方部材20a側の押圧機構40により、または、両側の押圧機構40により各側方部材20a、20bと回転体30の端面30a、30bとの各隙間を調整するように構成してもよい。
【0100】
例えば、回転体30の端面が側方部材と摺動して摩耗し、前記隙間が広くなったとしても、押圧機構40により少なくとも一方の側方部材を押圧して第1側方部材20a及び第2側方部材20bの間隔を調整することで、前記隙間を適当な間隔にして、前記隙間に進入する流体の量を調整することができるので、圧力の交換効率の低下を防止することができる。さらに、スペーサを弾性部材で構成し、ボルトの締付けを変えることで厚みを調整したり、弾性部材の厚みや弾性力を変えることで、隙間の調整範囲を変えることもできる。
【0101】
図5(a)〜(d)、及び、図6に基づいて、以上のように構成された圧力交換装置10の具体的な圧力交換処理の動作について説明する。
【0102】
図6に示すように、回転体30には、18組の圧力伝達部33、つまり、第1流路31a〜31rと第2流路32a〜32rが回転軸心周りに放射状に配設されている。図6中の二点鎖線で示す領域は、第1側方部材20aの第1流体流入路14t、14bと、第2流体流出路15t、15bと、第2流体流入路16t、16bと、第1流体流出路17t、17bに対応する領域を表している。
【0103】
回転体30が、図5(a)〜(d)、及び、図6に示す位置にあるとき、第1流体流入路14tには、隣接する第1流路31p、31q、31rの3本が同時に連通し、第2流体流出路15tには、第1流路31p、31q、31rと回転体30内で連通した第2流路32p、32q、32rが同時に連通する。第2流体流入路16tには、隣接する第2流路32b、32c、32dの3本が同時に連通し、第1流体流出路17tには、第2流路32b、32c、32dと回転体30内で連通した第1流路31b、31c、31dが連通する。
【0104】
図5(a)に示すように、第1流体流入路14tに流入した高圧濃縮海水Hiは、第1流路31p、31q、31rの夫々に高圧濃縮海水Hi(p)、Hi(q)、Hi(r)として流入する。
【0105】
高圧濃縮海水Hi(q)、Hi(r)は、傾斜面14aに沿って流れて第1流体流入路31q、31rに流入し、このとき、回転体30には、図5(a)中の一点鎖線矢印が示すように右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0106】
図5(a)、(b)に示すように、第1流体流入路14tから第1流路31pに流入した高圧濃縮海水Hi(p)が、第1流路31pと連通した第2流路32p内の海水に圧力を伝達して、高圧海水Ho(p)として第2流体流出路15tから流出する。
【0107】
第1流体流入路14tから第1流路31qに流入した高圧濃縮海水Hi(q)が、第1流路31qと連通した第2流路32q内の海水に圧力を伝達して、高圧海水Ho(q)として第2流体流出路15tから流出する。
【0108】
第1流体流入路14tから第1流路31rに流入した高圧濃縮海水Hi(r)が、第1流路31rと連通した第2流路32r内の海水に圧力を伝達して、高圧海水Ho(r)として第2流体流出路15tから流出する。
【0109】
高圧海水Ho(p)、Ho(q)、Ho(r)が第2流体流出路15tから流出するときに、特に、高圧海水Ho(p)は、傾斜面15aに沿って流れることになるため、傾斜面により流れが阻害される。
【0110】
これにより回転体30には、図5(b)中の一点鎖線矢印が示すように、第2流路の内壁を水圧により押すことで右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0111】
図5(d)に示すように、第2流体流入路16tに流入した低圧海水Liは、第2流路32b、32c、32dの夫々に低圧海水Li(b)、Li(c)、Li(d)として流入する。
【0112】
特に低圧海水Li(d)は、傾斜面16aに沿って流れ、第2流体流入路32dに流入する。このとき、回転体30には、図5(d)中の一点鎖線矢印が示すように右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0113】
図5(c)、図5(d)に示すように、第2流体流入路16tから第2流路32bに流入した低圧海水Li(b)が、第2流路32bと連通した第1流路31b内の海水に圧力を伝達し、低圧濃縮海水Lo(b)として第1流体流出路17tから流出する。
【0114】
第2流体流入路16tから第2流路32cに流入した低圧海水Li(c)が、第2流路32cと連通した第1流路31c内の海水に圧力を伝達し、低圧濃縮海水Lo(c)として第1流体流出路17tから流出する。
【0115】
第2流体流入路16tから第2流路32dに流入した低圧海水Li(d)が、第2流路32dと連通した第1流路31d内の海水に圧力を伝達し、低圧濃縮海水Lo(d)として第1流体流出路17tから流出する。
【0116】
このように、低圧濃縮海水Lo(b)、Lo(c)、Lo(d)が第1流体流出路17tから流出するときに、低圧濃縮海水Lo(b)、Lo(c)は、傾斜面17aに沿って流れることになるため、傾斜面17aにより流れを阻害されることになる。
【0117】
これにより回転体30には、図5(c)中の一点鎖線矢印が示すように、第1流路31の内壁を水圧により押すことで右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0118】
以上のように、第1流体流入路14tから第1流路31に流入する高圧濃縮海水Hiが回転体30に与えるトルクと、第2流路32から第2流体流出路15tへ流出する低圧海水Loが回転体30に与えるトルクと、第2流体流入路16tから第2流路32に流入する低圧海水Liが回転体30に与えるトルクと、第1流路31から第1流体流出路17tへ流出する低圧濃縮海水Loが回転体30に与えるトルクが、同一方向となり、本実施形態では、回転体30は、図6で見ると時計周りに回転することになる。
【0119】
ここでは、第1流体流入路14tから第1流路31p、31q、31rに流入する高圧濃縮海水Hiの圧力によって、第2流路32p、32q、32rから第2流体流出路15tへ高圧海水Hoが排水され、第2流体流入路16tから第2流路32b、32c、32dに流入する低圧海水Liの圧力によって、第1流路31b、31c、31dから第1流体流出路17tへ低圧濃縮海水Loが排水される場合に説明したが、第1流体流入路14b、第2流体流出路15b、第2流体流入路16b、第1流体流出路17bに夫々連通する第1流路31g、31h、31i、31k、31l、31m、第2流路32g、32h、32i、32k、32l、32mでも夫々同様の圧力交換が行われている。
【0120】
このように、回転体30の回転によって、ある圧力伝達部33を構成する第1流路31と第2流路32の組と、夫々連通する第1流体流入路14と第2流体流出路15、第2流体流入路16と第1流体流出路17とが切り替わり、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達、及び、低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達が連続的に行われ、つまり、第1流体と第2流体の圧力交換処理が連続的に行われる。
【0121】
尚、第1流路31及び第2流路32内では、濃縮海水と、海水が混在することになるが、濃度差のある濃縮海水と海水の境界部分はある一定量が常に混ざった領域となり、当該領域は、ピストンのような役目をしながら第1流路31及び第2流路32の内部で揺動することになる。
【0122】
図6に示すように、第1流体流入路14、第2流体流出路15、第2流体流入路16、第1流体流出路17の何れにも連通しない第1流路31a、31e、31f、31j、31n、31o、及び、第2流路32a、32e、32f、32j、32n、32oの組では、圧力の交換は行われない。
【0123】
本実施形態では、第1流体流入路14t、第2流体流出路15t、第2流体流入路16t、第1流体流出路17tに、夫々流路が同時に3本ずつ連通する場合について説明したが、同時に連通する本数は、これに限らない。尚、同時に連通する本数が少なく、何れにも連通しない本数が多いと、装置から排水される水の脈動が大きくなる。
【0124】
回転体30は、回転体30に流入する高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Li、回転体30から流出する高圧海水Ho及び低圧濃縮海水Loのエネルギーによって回転するように構成されているため、例えば、流入する各流体のエネルギーのみで回転する場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0125】
傾斜面14a、15a、16a、17aの形状が変わると、処理流量、つまり各流路に流入する、及び、各流路から流出する流体の流量が変わり、回転体に加わるトルクが変わるので回転体の回転数が変わる。つまり、回転体30の回転数は、傾斜面14a、15a、16a、17aの形状に依存する。よって、当該形状を変更して、回転体30の回転数を調整することで圧力交換装置の処理流量を容易に調整できる。例えば、当該形状の異なる第1側方部材を用意しておき、交換することで、容易に処理流量を調整できる。
【0126】
上述のように、第1側方部材20aに、第1流体流入路14t、14b、第1流体流出路15t、15b、第2流体流入路16t、16b、第2流体流出路17t、17bが形成され、回転体30の一端側から圧力伝達部へ第1流体または第2流体を流入させて、回転体30内で第1流体と第2流体との圧力を交換し、前記一端側から第2流体または第1流体を流出させる構成であるので、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に、従来の圧力交換装置のように直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の軸心方向の長さが短くなることで装置の極端な大型化を回避することができる。
【0127】
さらに、第1流体流入路及び流出路、第2流体流入路及び流出路が第1側方部材20aにのみ形成されているため、各流体の流入路または流出路と接続する配管を第1側方部材20a側に纏めて設置すればよく、従来の装置のように回転体の両端側に夫々流体の流入路または流出路と接続する配管を設置する場合と比較して、配管設置作業やメンテナンス作業等の作業性が良好になる。つまり、配管が第1側方部材20a側にまとまることで、配管を含めた設置スペースが小さくなる。さらに、配管を外すことなく、配管のない第2側方部材20b側からメンテナンス可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0128】
尚、上述の実施形態では、回転体30の回転軸にブッシュ13を備えることで回転体30の軸心のブレを低減でき円滑な回転ができるが、ブッシュ13は必ずしも備える必要はない。なお、ブッシュ13を備えないときは、スリーブ12により回転体30を回転方向に保持する構成となる。
【0129】
上述の実施形態では、第1流路31の断面積と第2流路32の断面積は等しくなるように形成することで、流路断面積の変化による余分な圧力損失が低減できるように構成したが、第1流路31と第2流路32の断面積は完全に等しい必要はない。
【0130】
上述の実施形態では、第1流路31と第2流路32は回転体30の他端側の端面30b側で連通した構成であるが、端面30bから端面30a側に所定距離離隔した位置で連通する構成であってもよい。つまり、連通部は端面30aと端面30bの間の任意の位置であってもよい。
【0131】
また、第1流路31と第2流路32は、必ずしも回転体30内部で連通する構成に限らず、第2側方部材20bと回転体30の間に、回転体30と一体に回転する部材を設け、該回転する部材に各流入路と流出路に対向する位置に凹部を形成し、回転体の回転に伴い該凹部を介して第1流路31と第2流路32が連通するように構成してもよい。
【0132】
第1流路31及び第2流路32の形状は、図3(a)に示すものに限らず、断面形状が真円や楕円等の円形状、三角、四角等の多角形状であってもよく、第1流路31及び第2流路32の本数や断面形状を変更することで、圧力伝達部33の総容量を変更して、圧力交換装置10の処理流量を変更することができる。なお、図3(a)に示すように、回転体の断面に対し開口率を大きく取れる断面形状が最良の断面形状である。
【0133】
上述の実施形態では、スリーブ12と第2側方部材20bを別体で構成したが、スリーブ12と第2側方部材20bをカップ状に一体形成し、第1側方部材20aで閉じられる空間内に回転体30が配置されるように構成してもよい。この場合はケーシング11を無くす構成とすることもできる。
【0134】
上述の実施形態では、第1流体流入路14t、14b、第2流体流出路15t、15b、第2流体流入路16t、16b、第1流体流出路17t、17bのように、各流入路と流出路が一対ずつ、つまり2つずつ備えられる構成であるが、各流入路と流出路は1つであっても、3つ以上の複数であってもよい。複数備える場合は、回転体30に流入及び回転体30から流出する各流体の圧力バランスの観点から各流入路及び流出路は回転軸心周りに点対称に配置されることが好ましい。
【0135】
上述の実施形態では、トルク付与機構は、第1流路31に流入する、または、第1流路31から流出する濃縮海水のエネルギー、及び、第2流路32に流入する、または、第2流路32から流出する海水のエネルギーにより回転体30にトルクを付与する構成であるが、前記トルク付与機構は、少なくとも第1流路31に流入する、第1流路31から流出する濃縮海水のエネルギー、または、第2流路32に流入する、第2流路32から流出する海水のエネルギーにより回転体30にトルクを付与するように構成すればよい。
【0136】
いずれかのエネルギーのみを利用する場合、第2流路32より第1流路31のほうが、回転体30の半径方向外側に配置されているため、第1流路31に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーを利用して回転体30にトルクを付与するように構成するとエネルギー効率がよい。
【0137】
以下に、本発明による圧力交換装置の別実施形態について説明する。尚、上述の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し説明を省略する。
【0138】
図8に示すように、圧力交換装置10aは、回転体30に駆動軸34を連結し、駆動機等の外部動力で回転体30を回転できるように構成してもよい。駆動軸34は、押圧部材42、第2側方部材20bに形成した開口から挿通して、回転体30とキー35とボルト36で固定して一体回転するように構成すればよい。流体の流れが不安定である等により回転体30の回転が安定しないような場合でも、駆動軸34に連結された駆動機等の外部動力で回転体30を回転駆動できるため、安定した回転を得ることができるので装置の信頼性が向上する。
【0139】
さらに、別実施形態を説明する。図9(a)に示すように、圧力変換装置10bは、ケーシング11と、第1側方部材20aと、第2側方部材20bと、各側方部材20a、20bとで挟持されたスリーブ12とで区画される空間に収容され、ボルト23a周りに回転可能に支持される回転体30を備えて構成されている。
【0140】
ボルト23aとナット23bは、押圧機構として機能し、ボルト23a、ナット23bの締め付けを調整することで、第1側方部材20a及び第2側方部材20bの間隔を調整できるように構成されている。
【0141】
第1側方部材20aには、高圧濃縮海水Hiを第1流路31に案内する第1流体流入路14と、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoを第2流路32から案内する第2流体流出路15、及び、低圧海水Liを第2流路32に案内する第2流体流入路16と、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loを第1流路31から案内する第1流体流出路17とが、厚み方向に形成されている。
【0142】
第1側方部材20aの左側には、区画部材28aを介してエンドカバー21aが備えられ、エンドカバー21aは、リング部材22aによって、ケーシング11から左側方へ脱落しないように固定されている。
【0143】
エンドカバー21aには、第1側方部材20aに形成された第1側方部材20aに形成された第1流体流入路14、第2流体流出路15、第2流体流入路16、第1流体流出路17と、夫々連通する通水路24、25、26、27が厚み方向に形成されている。
【0144】
第2側方部材20bの右側には、区画部材28bを介してエンドカバー21bが備えられ、エンドカバー21bは、リング部材22bによって、ケーシング11から右側方へ脱落しないように固定されている。
【0145】
区画部材28aは、第1側方部材20aとエンドカバー21aの間隔を、区画部材28aの厚みで規定される距離を保持するとともに、第1流体流入路14と通水路24を、第2流体流入路15と通水路25を、第2流体流入路16と通水路26を、第1流体流出路17と通水路27を夫々区画して連通するように構成されている。
【0146】
第1側方部材20aとエンドカバー21aと区画部材28aで区画される空間であって、第1流体流入路14と通水路24の間の空間には、高圧濃縮海水Hiが流入する押圧空間37aとして機能する。第1流体流入路14と通水路24の間の押圧空間37aは連通孔としても機能する。
【0147】
押圧空間37aには、通水路24から第1流体流入路14へと向かう高圧濃縮海水Hiが流入し、該高圧濃縮海水Hiの圧力は、第1側方部材20aを回転体30に向けて押圧するように作用する。
【0148】
第1側方部材20aとエンドカバー21aと区画部材28aで区画される空間であって、第1流体流出路17と通水路27の間の空間には、低圧濃縮海水Loが流入する押圧空間38aとして機能する。第1流体流出路17と通水路27の間の押圧空間38aは連通孔としても機能する。
【0149】
押圧空間38aには、第1流体流出路17から通水路27へと向かう低圧濃縮海水Loが流入し、該低圧濃縮海水Loの圧力は、第1側方部材20aを回転体30に向けて押圧するように作用する。
【0150】
区画部材28bは、第2側方部材20bとエンドカバー21bの間隔を、区画部材28bの厚みで規定される距離を保持するように構成されている。
【0151】
第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間のうち、第1流体流入路14及び第2流体流出路15に対応する位置に形成された空間は、圧力伝達部33内の高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体が流入する押圧空間37bとして機能する。
【0152】
第2側方部材20bには連通孔39aが形成され、押圧空間37bには圧力伝達部33内の高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体が連通孔39aを介して流入し、該混合の圧力は、第2側方部材20bを回転体30に向けて押圧するように作用する。
【0153】
第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間のうち、第2流体流入路16及び第1流体流出路17に対応する位置に形成された空間は、圧力伝達部33内の低圧海水Liと低圧濃縮海水Loの混合流体が流入する押圧空間38bとして機能する。
【0154】
第2側方部材20bには連通孔39bが形成され、押圧空間38bには圧力伝達部33内の低圧海水Liと低圧濃縮海水Loの混合流体が連通孔39bを介して流入し、該混合流体の圧力は、第2側方部材20bを回転体に向けて押圧するように作用する。
【0155】
図9(b)に示すように、第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間には、区画壁28cが設けられ、押圧空間37b、38bが夫々区画されるように構成されている。なお、第2側方部材に連通孔39bを形成せずに連通孔39aのみを形成し、区画壁28cを設けないようにすることで、第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間には、高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体のみが連通孔39aを介して流入し、当該空間が押圧空間37bとして機能する構成であってもよい。
【0156】
第1側方部材21aと第2側方部材21bは、中央部をボルト23aとナット23bにより締付けられる構成であるため、第1側方部材21aと第2側方部材21bの円周部には、回転体30内の流体によって軸心方向外側への圧力がかかる。
【0157】
しかし、上述のように、第1側方部材21aの外側の押圧空間37a、37bに、第1流路31、第2流路32に供給される各流体が導かれ、第2側方部材21bの外側の押圧空間38a、38bに第2側方部材21bに形成されている連通孔39a、39bから、第1流路31、第2流路32内の流体が導かれる。
【0158】
つまり、各押圧空間37a、37b、38a、38bには各流路31、32内と同じ圧力の流体が導かれることとなる。第1側方部材21a及び第2側方部材21bの夫々の両面に作用する力が釣り合うので、第1側方部材21a及び第2側方部材21bの回転軸芯方向に歪むことを防ぐことができる。
【0159】
さらに、別実施形態を説明する。上述の別実施形態の圧力交換装置10bと同様の構成については同じ符号を付し説明を省略する。図10示すように、圧力交換装置10cは、スリーブ12の中央に固定板50が配設され、第1側方部材20aとエンドカバー21aと区画部材28aと回転体30が、固定板50の縦方向の中心線に対して左右対称に配置されて構成されている。固定板50の両面には、高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体と、低圧海水Liと低圧濃縮海水Loの混合流体の力が作用し、固定板50の一側面側の空間が、他側面側の空間の押圧空間となり、前記他側面側の空間が一側面側の押圧空間として機能する。図8に示した押圧空間38a、38bのように、連通孔39a、39bを備える必要がない。
【0160】
尚、スリーブ12内に固定板50を備えることなく、左右の回転体30aを一体形成したような回転体51(図11参照)を備える構成であってもよい。
【0161】
上述の何れの実施形態でも、トルク付与機構は、第1側方部材に傾斜面を形成する構成について説明したが、第1側方部材に形成した傾斜面に加えて、または、替えて、第1流路または第2流路を回転体内で周方向に傾斜するように形成し、第1流路に流入する第1流体または第2流路に流入する第2流体が、第1流路または第2流路の流路壁面に当たることで、回転体にトルクを付与する構成であってもよい
【0162】
回転体に形成された第1流路及び第2流路の端部や、第1側方部材に形成された各流入路、流出路の端部等の、第1流体及び第2流体が通過する箇所に、面取や角丸め等の加工を行なうことで圧力損失を低減し、キャビテーションや、脈動の発生を防止することができる。
【0163】
上述の何れの実施形態でも、第1流体流入路に高圧濃縮海水を流入させ、第2流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させる構成について説明したが、第1流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させ、第2流体流入路に高圧濃縮海水を流入させてもよい。
【0164】
以上説明した圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法の具体的構成は実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0165】
6:逆浸透膜装置
10:圧力交換装置
11:ケーシング
12:スリーブ
13:ブッシュ
14:第1流体流入路
15:第2流体流出路
16:第2流体流入路
17:第1流体流出路
14a、17a:傾斜面(第1傾斜部)
15a、16a:傾斜面(第2傾斜部)
20a:第1側方部材
20b:第2側方部材
30:回転体
31:第1流路
32:第2流路
33:圧力伝達部
34:駆動軸
37a、37b:押圧空間
38a、38b:押圧空間
39a、39b:連通孔
40:押圧機構
Hi:高圧濃縮海水
Li:低圧海水
Ho:高圧海水
Lo:低圧濃縮海水
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置を用いる海水淡水化施設では、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体である高圧濃縮海水がもつ余剰圧力を、逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である低圧海水の昇圧に利用する圧力交換装置が設けられている。
【0003】
図12に示すように、特許文献1には、管状の圧力伝達部が回転軸心周りに複数本配設されたロータ80を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0004】
該圧力交換装置は、ロータ80の回転に伴って、高圧入口側ポート82へ供給される高圧濃縮海水と低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水とを圧力伝達部で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を、高圧出口側ポート83から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート81へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート84から排水するように構成されている。
【0005】
図13に示すように、特許文献2には、一対の回転板91、92と当該回転板91、92を連接する軸93とで構成される回転体90を備えた圧力交換装置が記載されている。
【0006】
一方の回転板91には、低圧入口側ポート95に供給された低圧海水を圧力伝達部96に案内する流路91aと、圧力伝達部96から排水される高圧海水を高圧出口側ポート97に案内する流路91bが形成されている。
【0007】
他方の回転板92には、高圧入口側ポート94に供給された高圧濃縮海水を圧力伝達部96に案内する流路92bと、圧力伝達部96から排水される低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98に案内する流路92aが形成されている。
【0008】
該圧力交換装置は、回転体90の回転に伴って、高圧入口側ポート94へ供給される高圧濃縮海水と、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水を、管状の圧力伝達部96内で接触させて、高圧濃縮海水の圧力によって昇圧した低圧海水を高圧出口側ポート97から高圧海水として排水し、低圧入口側ポート95へ供給される低圧海水によって前記圧力を伝達し終えた低圧濃縮海水を低圧出口側ポート98から排水するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009180903号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第200710056401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された圧力交換装置では、ロータ80に配設された管状の圧力伝達部の断面積に依存して圧力伝達される処理流量が定まるので、処理流量を増やすためには、圧力伝達部の配設本数を増加させるか、圧力伝達部の一本あたりの断面積を大きくする必要があり、何れの場合であってもロータ80が大きくなり、それに伴って圧力交換装置が大型になり重量も増大する。
【0011】
一般的にロータ80は、軽量化、高剛性、耐摩耗性、低摩擦係数等の条件を満足させるために、セラミックス等の高価な材料で形成されているため、圧力交換装置を大型化するとそれに伴って材料費、製造費が嵩むという問題があった。
【0012】
さらに、大型のロータ80を回転させるために要するトルクも増大し、小型のロータ80を回転させる場合よりも大きなエネルギーが必要になり、効率が低下するという問題もあった。このような理由によって、圧力交換装置1台あたりの処理流量を増加させるのは極めて困難であった。
【0013】
そのため、大量の海水を淡水化処理する大型の海水淡水化施設には、多数の圧力交換装置が設置されていた。しかし、圧力交換装置の設置台数が増加すると、各圧力交換装置を接続する配管の施工及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0014】
特許文献2に記載された圧力交換装置では、一方の回転板91に形成された流路91bと他方の回転板92に形成された流路92bの夫々が、回転体内部で軸心方向に沿った流路に円周方向に形成された流路が連通するように構成されているため、回転板91、92に流路を形成するための厚みが必要となる。そのため、回転板91、92が大型になり材料費や加工費が嵩むという問題があった。
【0015】
さらに、回転板91、92の大型化によって重量が増すと、回転体90の回転時に軸部93に作用するねじりや曲げ応力が大きくなり、その変形や破損を防止するために軸部93を太くする必要があるばかりでなく、回転のために要するエネルギーが増加し、効率が低下するという問題もあった。
【0016】
本発明の目的は、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、本発明による圧力交換装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、一端側から第1流体が流入または流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入または流出する第2流路とが連通するように形成された圧力伝達部を、回転軸心周りに配設した回転体と、第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路、及び、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、前記回転体を第1側方部材との間で保持部材を介して回転可能に挟持する第2側方部材と、を備えている点にある。
【0018】
上述の構成によれば、第1側方部材に形成された第1流体流入路を介して装置の外部から第1流路へと案内された第1流体の圧力が、第1流路と連通された第2流路内の第2流体に伝達され、昇圧された第2流体が、第1側方部材に形成された第2流体流出路を介して装置の外部へ排水される。
【0019】
また、第1側方部材に形成された第2流体流入路を介して装置の外部から第2流路へと案内された第2流体の圧力が、第2流路と連通された第1流路内の第1流体に伝達され、第1流体が、第1側方部材に形成された第1流体流出路を介して装置の外部へ排水される。
【0020】
このように、第1流路と第2流路と両流路の連通部とで圧力伝達部を構成することにより、回転体の一端側から当該圧力伝達部へ第1流体または第2流体を流入させて、第1流体と第2流体との間で圧力を交換し、当該一端側から第2流体または第1流体を流出させることができるので、特許文献1に記載されたような直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の軸心方向の長さが短くなることで、装置の極端な大型化を回避することができる。
【0021】
さらに、第1流体流入路及び流出路、第2流体流入路及び流出路が第1側方部材にのみ形成されているため、各流体の流入路または流出路と接続する配管を第1側方部材側に纏めて設置すればよく、従来の装置のように回転体の両端側に夫々流体の流入路または流出路と接続する配管を設置する場合と比較して、配管設置作業やメンテナンス作業等の作業性が良好になる。つまり、配管が第1側方部材側にまとまることで、配管を含めた設置スペースが小さくなる。さらに、配管を外すことなく、配管のない第2側方部材20b側からメンテナンス可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0022】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記回転体は、第1及び第2側方部材と各側方部材で挟持された保持部材とで区画される空間に収容されるとともに、第1流路及び第2流路が前記回転体を貫通するように形成され、前記回転体と第1及び第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている点にある。
【0023】
第1側方部材及び第2側方部材と保持部材とで区画される空間内で回転体が回転することにより、第1流路に流入した第1流体から圧力伝達された第2流体が第2流路から流出し、第2流路に流入した第2流体から圧力伝達された第1流体が第1流路から流出する動作が繰り返される。
【0024】
このとき、第1流路及び第2流路が回転体を貫通するように形成されているので、回転体の端面と第2側方部材との間に形成された隙間に第1または第2流体が進入して、当該流体によって回転体を第1側方部材に向けて押圧する力が働く。また、第1側方部材に形成された第1流体流入路から流入する第1流体、または、第2流体流入路から流入する第2流体が、回転体の端面と第1側方部材との間に形成された隙間に侵入して、当該流体によって回転体を第2側方部材に向けて押圧する力が働く。
【0025】
両側からほぼ等しい力で押圧される回転体は、第1側方部材及び第2側方部材の間で一方向に片寄ることなくバランスするため、第1側方部材または第2側方部材の何れか一方と常時摺動しながら回転するようなことがなく、円滑に回転できるようになる。その結果、第1側方部材及び第2側方部材の磨耗が低減できるので、高価な耐磨耗性材料を用いなくとも耐久性を向上させることができる。
【0026】
さらに、回転体は、両側からほぼ等しい力で押圧されるため、第1及び第2側方部材と回転体との回転抵抗が低減する。そのため、処理流量を稼ぐために回転体を大径に形成し、圧力伝達部を構成する第1及び第2流路の断面積を大きくした場合でも、回転体を回転駆動するために要するエネルギーの損失が低く抑えられるようになる。
【0027】
尚、回転体と第1及び第2側方部材との間に形成される隙間は、狭すぎると大きな摺動抵抗が発生し、広すぎると流体の漏れ量が多くなり圧力の交換効率が低下するため、好ましくは1〜100μm程度に設定される。
【0028】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、少なくとも一方の側方部材を押圧して、第1及び第2側方部材の間隔を調整する押圧機構を備えている点にある。
【0029】
上述の構成によれば、仮に各側方部材と回転体の端面が磨耗して隙間が大きくなり、流体が漏れて圧力の交換効率の低下を招くような場合であっても、押圧機構により第1及び第2側方部材の間隔が調整できるようになるので、部品交換等の規模の大きな分解を伴なうメンテナンスを行なわずに長期間安定して稼動させることができるようになる。
【0030】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第二または第三特徴構成に加えて、第1及び第2側方部材の外側に各側方部材を前記回転体に向けて押圧する押圧空間を形成し、前記押圧空間に第1流路または第2流路に供給される流体を導く連通孔を第1及び第2側方部材に形成している点にある。
【0031】
第1及び第2側方部材に形成された連通孔を介して各押圧空間に導かれた流体によって、第1及び第2側方部材には外側から内側に向けて押圧力が作用する。各押圧空間に導かれた流体の圧力は、回転体と第1及び第2側方部材との間に形成された隙間に進入する流体の圧力とほぼ等しく、第1及び第2側方部材の夫々の両面に付与される押圧力がバランスするため、回転体に貫通形成された第1または第2流路に流れる流体の圧力によって第1及び第2側方部材が回転軸芯方向に歪むような事態が回避される。そのため、運転中に回転体と側方部材との間の隙間は広がることなく所定の隙間を保持し、さらに回転体が、第1側方部材及び第2側方部材と摺動することなく円滑に回転できるようになる。
【0032】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記第1側方部材は、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている点にある。
【0033】
上述の構成によれば、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のエネルギーが、トルク付与機構によって、回転体を回転させるためのトルクに変換されるので、外部動力がなくても回転体を回転させることができるようになる。そして、回転体の回転に伴って、圧力伝達部への第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0034】
尚、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体と第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のうち、回転軸心から径方向に大きく離隔した流路に流入、または、回転軸心から径方向に大きく離隔した流路から流出する流体のエネルギーを利用するほうが、同じエネルギーで大きなトルクを発生させることができるのでエネルギー効率がよい。
【0035】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第五特徴構成に加えて、前記トルク付与機構は、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成された第1傾斜部と、第2流体流出路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成された第2傾斜部と、を備え、第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が逆になるように設定されている点にある。
【0036】
第1傾斜部は、第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成されているので、第1流体は第1流体流入路から第1傾斜部を経て複数の第1流路に分散して流入することになる。
【0037】
このとき、第1傾斜部に沿って流れる第1流体は前記回転体の周方向に沿って流れ、第1流路の壁面へ圧力を付与する、つまり、前記回転体を回転させるトルクを付与することになる。
【0038】
第2傾斜部は、第2流体流出路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成されているので、複数の第2流路を流れる第2流体が合流して第2傾斜部を経て第2流体流出路に流出することになる。
【0039】
このときに、第2傾斜部に沿って第2流体流出路に流れる第2流体は、第2流路から第2流体流出路に流れる水の通水断面積を広くする向きに第2流路の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体に周方向のトルクを付与することになる。
【0040】
第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が逆になるように設定されているので、第1流体が第1流体流入路から第1流路に流入するときのエネルギーにより回転体に付与されるトルクと、第2流体が第2流路から第2流体出路へと流出するときのエネルギーにより回転体に付与されるトルクが同じ向きになる。
【0041】
つまり、回転体に流入する第1流体と回転体から流出する第2流体のエネルギーにより回転体を回転させるトルクを発生させるので、何れか一方のエネルギーのみにより回転体を回転させる場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0042】
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記回転体に、複数の圧力伝達部が回転軸心周りに放射状に配設されている点にある。
【0043】
上述の構成によれば、圧力伝達部は回転軸心周りに放射状に複数配設されているので、流路の総断面積が多くなり、圧力交換装置の処理流量を増加させることができる。
【0044】
同第八の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第七特徴構成に加えて、隣接する複数の圧力伝達部が、前記回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通する点にある。
【0045】
上述の構成によれば、隣接する複数の圧力伝達部が、回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通することで、回転体の回転に伴う第1流体または第2流体の流量変動を低減し、流体の脈動、装置の脈動等の悪影響を防止することができる。
【0046】
同第九の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第七または第八の特徴構成に加えて、前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部が存在する点にある。
【0047】
上述の構成によれば、前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部では、第1流体及び第2流体の流入、流出を一旦停止させることができるので、第1流路及び第2流路内の流体の流れの方向の切り替えを円滑にすることができる。また、高圧の流体が通る「第1流体流入路と第2流体流出路」と低圧の流体が通る「第1流体流出路と第2流体流入路」との距離を大きくすることができるため流体の漏れ量が減るので圧力伝達の効率を高めることができる。
【0048】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第九の何れかの構成に加えて、前記第1側方部材に、複数組の第1流体流入路と第2流体流出路が回転軸心周りに対称に配置されている点にある。
【0049】
上述の構成によれば、1回転あたりの回転体への流体の流入及び流出が複数回になる。そのため1回の流入、流出での流体の移動量が小さくなり、流路長さを短くすることができるので、回転体をコンパクト化することができる。また、第1側方部材に、複数組の第1流体流入路と第2流体流出路が回転軸心周りに対称に配置されているので、トルク付与機構を回転軸心周りに対称に配置することができるので、回転体にバランスよくトルクを付与することができ、回転体が傾くことなく円滑に回転させることができる。
【0050】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第一から第十の何れかの特徴構成に加えて、第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されている点にある。
【0051】
上述の構成によれば、第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されているので、流体が第1流路と第2流路を通流するときの圧力損失が低減され、効率の良い圧力伝達が可能となる。
【0052】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第一から第十一の何れかの構成に加えて、前記回転体を外部動力で回転させる駆動軸が前記回転体に連結されている点にある。
【0053】
上述の構成によれば、流体の流れが不安定である等の何らかの要因により回転体の回転が安定しないような場合でも、駆動軸に連結された駆動機等の外部動力で回転体を回転させることにより、安定した圧力交換処理が可能となる。
【0054】
同第十三の特徴構成は、同請求項13に記載した通り、上述の第一から第十二の何れかの構成に加えて、前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である点にある。
【0055】
上述の構成によれば、逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体の圧力により逆浸透膜装置に供給される被濃縮流体を昇圧することができるので、逆浸透膜装置からの高圧濃縮流体の余剰圧力を捨てることなく有効なエネルギーとして利用することができる。
【0056】
本発明による圧力交換装置の性能調整方法の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項14に記載した通り、上述の第五または第六の特徴構成を備えた圧力交換装置の性能調整方法であって、前記トルク付与機構を変更することにより処理流量を調整する点にある。
【0057】
第1傾斜部及び第2傾斜部の形状が変わると、回転体に加わるトルクが変わるので回転体の回転数が変わる。つまり、回転体の回転数は、第1傾斜部及び第2傾斜部の形状に依存する。よって、第1傾斜部及び第2傾斜部の形状を変更するだけで、処理流量にあわせて回転体の回転数を変更できるため、圧力交換装置の処理流量を容易に調整できる。
【発明の効果】
【0058】
以上説明した通り、本発明によれば、処理流量を減らすことなくコンパクト化、低コスト化が可能な圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】海水淡水化施設の概略フロー図
【図2】圧力交換装置を説明する断面図
【図3】回転体の説明図であって、(a)は正面図、(b)は正面図のA―A線断面図、(c)は背面図
【図4】第1側方部材の説明図であって(a)は正面図、(b)は正面図のB―B線断面図、(c)は背面図
【図5】第1側方部材に形成された各流入路及び流出路と回転体の各流路の説明図であって、(a)は図4(a)に示す第1流体流入路のC−C線断面図と、該第1流体流入路に連通する第1流路の説明図、(b)は図4(a)に示す第2流体流出路のD−D線断面図と、該第2流体流出路に連通する第2流路の説明図、(c)は図4(a)に示す第1流体流出路のF−F線断面図と、該第1流体流出路に連通する第1流路の説明図、(d)は図4(a)に示す第2流体流入路のE−E線断面図と、該第2流体流入路に連通する第2流路の説明図
【図6】回転体に形成された各流路と第1側方部材に形成された各流入路及び各流出路の位置を示す説明図
【図7】圧力交換装置の説明図であって(a)は正面図、(b)は背面図
【図8】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図9】(a)は別実施形態による圧力交換装置の説明図、(b)は要部説明図
【図10】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図11】別実施形態による圧力交換装置の説明図
【図12】従来の圧力交換装置の説明図
【図13】従来の圧力交換装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に、本発明による圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法の好ましい実施形態を説明する。
【0061】
図1に示すように、海水淡水化施設は、海水中の夾雑物を取り除く前処理部1と、前処理部1で前処理された海水を貯留するろ過海水槽2と、ろ過海水槽2に貯留された海水を保安フィルターに供給する供給ポンプ3と、逆浸透膜装置6の詰まりを防止するため海水中の微細な異物を除去する保安フィルター4と、保安フィルター4を通過した海水を昇圧する高圧ポンプ5と、昇圧された海水が供給される逆浸透膜装置6を備えている。逆浸透膜装置6によって海水中の各種塩類が除去され、飲料用水や工業用水等として利用できるように淡水化される。
【0062】
逆浸透膜装置6は、浸透膜の一方側の海水に圧力をかけることにより、逆浸透膜の他方側に海水中の各種塩類が除去された淡水を染み出させる装置であり、ろ過するためには、海水を浸透圧以上の所定の圧力にする必要がある。
【0063】
逆浸透膜装置6は、供給された海水のすべてを淡水化できるものではない。例えば、逆浸透膜装置6に供給される海水のうち40%は淡水化されて排水されるが、残りの60%は淡水化されずに非常に圧力の高い高圧濃縮海水として排水される。
【0064】
そこで、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水のもつ余剰圧力を有効なエネルギーとして回収して利用する圧力交換装置10を備えている。
【0065】
ろ過海水槽2から逆浸透膜装置6に供給される海水のうち、40%は高圧ポンプ5で浸透圧以上の所定の圧力、例えば、6.9MPaまで昇圧される。逆浸透膜装置6に供給される残りの60%の海水(以下、「低圧海水」と記す)は、圧力交換装置10が逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水から回収した余剰圧力(6.75MPa)と、ブースターポンプ7により6.9MPaまで昇圧される。
【0066】
つまり、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiの圧力により、圧力交換装置10に供給された低圧海水Liを昇圧して、高圧海水Hoとしてブースターポンプ7を経由して逆浸透膜装置6に供給し、圧力交換装置10に供給される低圧海水Liにより前記圧力が回収された後の低圧濃縮海水Loを排水する圧力交換処理を行なう。
【0067】
このように、圧力交換装置10は、逆浸透膜装置6から排水される高圧濃縮海水Hiの余剰圧力を捨てることなく逆浸透膜装置6に供給される低圧海水Liの昇圧に利用して、逆浸透膜装置6でのろ過に必要な圧力の一部を補うので、海水淡水化施設全体のエネルギー効率が向上する。
【0068】
図2に示すように、圧力交換装置10は、ケーシング11と、第1側方部材20aと、第2側方部材20bと、各側方部材20a、20bとで挟持されたスリーブ12とで区画される空間に収容され、各側方部材20a、20bの夫々に備えられたブッシュ13に回転可能に支持される回転体30と、押圧機構40を備えている。
【0069】
ケーシング11は、樹脂材料、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等の金属材料のように、海水に対する耐食性があり、ある程度強度を備えた材料で形成すればよい。ステンレス鋼等の高強度の金属管を樹脂材料やセラミックスで被覆して構成してもよい。これにより、耐食性に劣る安価な材料を利用することができコストダウンが図れる。
【0070】
回転体30、各側方部材20a、20b、スリーブ12は、アルミナ等のセラミックス、FRP、または、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼等のように、海水に対する耐食性があり、十分に強度のある材料を用いることができる。また、二相ステンレス鋼やスーパー二相ステンレス鋼を用いた場合には、回転体30と各側方部材20a、20bとの対向面を窒化処理し、或は、アルミナ等のセラミックを溶射し、肉盛溶接し、或はHIP処理して摩擦係数を低減する耐磨耗層を形成することが好ましい。
【0071】
回転体30の回転軸または回転摺動面は耐摩耗性、低摩擦係数を備えたセラミックス等の高価な材料が要求されるが、ブッシュ13を回転軸として備えることで高価な材料の使用量を最小限に抑えることにより低コスト化を図ることができる。
【0072】
図2及び図3(a)、(b)、(c)に示すように、回転体30には、その一端側の端面30aから高圧濃縮海水Hiが流入し、圧力が交換された後の低圧濃縮海水Loが流出する第1流路31と、同じく一端側の端面30aから低圧海水Liが流入し、圧力が交換された後の高圧海水Hoが流出する第2流路32とが、回転体30の他端側の端面30b側で連通するように形成された圧力伝達部33が設けられている。第1流路31の断面積と第2流路32の断面積は等しくなるように形成されている。
【0073】
圧力伝達部33は、回転軸心周りに放射状に18組配設され、回転体30の中心にはブッシュ13を挿通可能な開口29が形成されている。本実施形態では、高圧濃縮海水Hiと低圧濃縮海水Loが第1流体となり、低圧海水Liと高圧海水Hoが第2流体となる。
【0074】
図2及び図4(a)、(b)、(c)に示すように、第1側方部材20aには、高圧濃縮海水Hiを回転体30の第1流路31に案内する第1流体流入路14t、14bと、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoを第2流路32から案内する第2流体流出路15t、15bと、低圧海水Liを第2流路32に案内する第2流体流入路16t、16bと、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loを第1流路31から案内する第1流体流出路17t、17bとが、その厚み方向に形成されている。
【0075】
本実施形態では、図4(a)に示すように、第1流体流入路14t及び第2流体流出路15tと、第1流体流入路14b及び第2流体流出路15bとは、正面視で回転軸心に対して点対称の位置に配置されている。
【0076】
さらに、これらと90度位相が回転した位置に、第2流体流入路16t及び第1流体流出路17tと、第2流体流入路16b及び第1流体流出路17bとが、正面視で回転軸心に対して点対称の位置に配置されている。
【0077】
第1側方部材20aは、第1流路31に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーと第2流路32から流出する高圧海水Hoのエネルギー、及び、第2流路32に流入する低圧海水Liのエネルギーと第1流路31から流出する低圧濃縮海水Loのエネルギーにより回転体30にトルクを付与して回転体30を回転させるトルク付与機構を備えている。
【0078】
従って、回転体30を回転させるための外部動力が不要となり、回転体30の回転に伴って、第1流体の流入と流出、第2流体の流出と流入が切り替えられるので、別途の流路の切替機構が不要となる。
【0079】
図4(c)に示すように、トルク付与機構は、第1流体流入路14t、14bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第1流路31と連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての傾斜面14aと、第2流体流出路15t、15bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第2流路32と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての傾斜面15aと、第2流体流入路16t、16bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第2流路32と連通するように拡径して形成された第2傾斜部としての傾斜面16aと、第1流体流出路17t、17bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第1流路31と連通するように拡径して形成された第1傾斜部としての傾斜面17aとで構成されている。
【0080】
傾斜面14aの傾斜方向と傾斜面15aの傾斜方向が逆になるように設定され(図5(a)、(b)参照)、傾斜面16aの傾斜方向と傾斜面17aの傾斜方向が逆になるように設定されている(図5(c)、(d)参照)。
【0081】
傾斜面14aは、第1流体流入路14t、14bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第1流路31と連通するように拡径して形成されているので、高圧濃縮海水Hiは第1流体流入路14t、14bから傾斜面14aを経て複数の第1流路31に分散して流入することになる。
【0082】
このとき、傾斜面14aに沿って流れる高圧濃縮海水Hiは回転体30の周方向に沿って流れ、第1流路31の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体30を回転させるトルクを付与することになる。この傾斜面14aが、トルク付与機構の1つの例である。
【0083】
傾斜面15aは、第2流体流出路15t、15bのうち回転体30との対向面側に、回転体30の周方向に沿って複数の第2流路32と連通するように拡径して形成されているので、複数の第2流路32を流れる高圧海水Hoが合流して傾斜面15aを経て第2流体流出路15t、15bに流出することになる。
【0084】
このときに、第2傾斜部15aに沿って第2流体流出路15t、15bに流れる高圧海水Hoは、第2流路32から第2流体流出路15t、15bに流れる水の通水断面積を広くする向きに第2流路32の壁面へ圧力を付与する、つまり、回転体30に周方向のトルクを付与することになる。
【0085】
傾斜面14aの傾斜方向と傾斜面15aの傾斜方向が逆になるように設定されているので、高圧濃縮海水Hiが第1流体流入路14t、14bから第1流路31に流入するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクと、高圧海水Hoが第2流路32から第2流体出路15t、15bへと流出するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクが同じ向きになる。
【0086】
つまり、回転体30に流入する高圧濃縮海水Hiと回転体30から流出する高圧海水Hoのエネルギーにより回転体30を回転させるトルクを発生させるので、何れか一方のエネルギーのみにより回転体30を回転させる場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0087】
同様に、低圧海水Liが第2流体流入路16t、16bから第2流路32に流入するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクと、低圧濃縮海水Loが第1流路31から第1流体流出路17t、17bへと流出するときのエネルギーにより回転体30に付与されるトルクも同じ向きになる。
【0088】
つまり、回転体30に流入する低圧海水Liと回転体30から流出する低圧濃縮海水Loのエネルギーによっても回転体30を回転させるトルクを発生させるので、高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoのエネルギーのみにより回転体30を回転させる場合より、さらに大きなトルクを付与することができる。
【0089】
図2に戻り、第1流路31及び第2流路32は、回転体30を貫通するように形成され、回転体30の両端面30a、30bは同じ形状となっている。第1側方部材20a及び第2側方部材bと各側方部材20a、20bで挟持されたスリーブ12とで区画される空間内で回転体30が回転しつつ、圧力伝達部で第1流体と第2流体の間で圧力伝達される際に、回転体30と第1側方部材20a及び第2側方部材20bとの間に形成された隙間には各流体が進入して、所定圧力で回転体30を両側から押圧するので、回転体30は前記空間内で軸心方向に片寄ることなくバランスよく配置されることになる。
【0090】
つまり、回転体30は各側方部材20a、20bに押し付けられないので回転に対する抵抗が低減されて、円滑に回転することができる。さらに、回転体30は、各側方部材20a、20bとの磨耗が低減できるので耐久性が向上する。
【0091】
尚、回転体30の回転に対する抵抗を低減できると、回転体の直径を大きくしても円滑に回転させやすくなる。回転体の直径を大きくすることで、回転体に形成する流路の断面積を大きくすることができるので、装置の処理性能を向上させることができる。
【0092】
当該隙間は狭すぎると回転体30と側方部材20が摺動して回転に対する抵抗となり、広すぎると各流体の漏れ量が多すぎて圧力の交換効率が低下するため、例えば、1〜100μm程度が好ましい。
【0093】
押圧機構40は、当該隙間を調整できるように構成されている。尚、スリーブ12の第1側方部材20a及び第2側方部材20bとの接触面には円周方向にシール18が配設され、シール18によりスリーブ12の外部に流体が漏れるのが防止される。
【0094】
押圧機構40は、スリーブ12の外周を囲うように配置されたケーシング11の一端側であって第1側方部材20側に備えられる受圧部材41と、ケーシング11の他端側であって第2側方部材20bに当接して配置される押圧部材42とを備えている。
【0095】
図7(a)に示すように、受圧部材41は、厚み方向に通水路44(44t、44b)、45(45t、45b)、46(46t、46b)、47(47t、47b)が形成され、夫々の通水路44(44t、44b)、45(45t、45b)、46(46t、46b)、47(47t、47b)が、第1側方部材20aに形成された第1流体流入路14(14t、14b)、第2流体流出路15(15t、15b)、第2流体流入路16(16t、16b)、第1流体流出路17(17t、17b)と夫々連通した状態で、ケーシング11及び第1側方部材20aにボルト43で螺着されている。
【0096】
図7(b)に示すように、押圧部材42は、第2側方部材20b側に突出して形成された押圧部42aを備え、押圧部42aの周囲がスペーサ48を介してケーシング11にボルト49で螺着されている。
【0097】
スペーサを薄く、または、複数枚あるスペーサの一部を抜いてボルト49を締付けると、押圧部材42の押圧部42aが第2側方部材20bを押圧して、第2側方部材20bが僅かに変形して、回転体30の両端面30a、30bと各側方部材20a、20bの間に形成される前記隙間が狭くなる。逆に、スペーサを厚くして、または、スペーサの枚数を増やしてボルト49を締め付けると、スペーサ48によって、第2側方部材20bは第1側方部材20から離隔する方向へ移動し、前記間隔が広くなる。
【0098】
このように、押圧機構40により第2側方部材20bを押圧して、第1側方部材20a及び第2側方部材20bの間隔を適当な間隔に調整することで、各側方部材20a、20bと回転体30の端面30a、30bとの各隙間を調整することができる。
【0099】
また、第2側方部材20b側のみではなく、第1側方部材20a側にも同様の押圧機構40を備え、第1側方部材20a側の押圧機構40により、または、両側の押圧機構40により各側方部材20a、20bと回転体30の端面30a、30bとの各隙間を調整するように構成してもよい。
【0100】
例えば、回転体30の端面が側方部材と摺動して摩耗し、前記隙間が広くなったとしても、押圧機構40により少なくとも一方の側方部材を押圧して第1側方部材20a及び第2側方部材20bの間隔を調整することで、前記隙間を適当な間隔にして、前記隙間に進入する流体の量を調整することができるので、圧力の交換効率の低下を防止することができる。さらに、スペーサを弾性部材で構成し、ボルトの締付けを変えることで厚みを調整したり、弾性部材の厚みや弾性力を変えることで、隙間の調整範囲を変えることもできる。
【0101】
図5(a)〜(d)、及び、図6に基づいて、以上のように構成された圧力交換装置10の具体的な圧力交換処理の動作について説明する。
【0102】
図6に示すように、回転体30には、18組の圧力伝達部33、つまり、第1流路31a〜31rと第2流路32a〜32rが回転軸心周りに放射状に配設されている。図6中の二点鎖線で示す領域は、第1側方部材20aの第1流体流入路14t、14bと、第2流体流出路15t、15bと、第2流体流入路16t、16bと、第1流体流出路17t、17bに対応する領域を表している。
【0103】
回転体30が、図5(a)〜(d)、及び、図6に示す位置にあるとき、第1流体流入路14tには、隣接する第1流路31p、31q、31rの3本が同時に連通し、第2流体流出路15tには、第1流路31p、31q、31rと回転体30内で連通した第2流路32p、32q、32rが同時に連通する。第2流体流入路16tには、隣接する第2流路32b、32c、32dの3本が同時に連通し、第1流体流出路17tには、第2流路32b、32c、32dと回転体30内で連通した第1流路31b、31c、31dが連通する。
【0104】
図5(a)に示すように、第1流体流入路14tに流入した高圧濃縮海水Hiは、第1流路31p、31q、31rの夫々に高圧濃縮海水Hi(p)、Hi(q)、Hi(r)として流入する。
【0105】
高圧濃縮海水Hi(q)、Hi(r)は、傾斜面14aに沿って流れて第1流体流入路31q、31rに流入し、このとき、回転体30には、図5(a)中の一点鎖線矢印が示すように右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0106】
図5(a)、(b)に示すように、第1流体流入路14tから第1流路31pに流入した高圧濃縮海水Hi(p)が、第1流路31pと連通した第2流路32p内の海水に圧力を伝達して、高圧海水Ho(p)として第2流体流出路15tから流出する。
【0107】
第1流体流入路14tから第1流路31qに流入した高圧濃縮海水Hi(q)が、第1流路31qと連通した第2流路32q内の海水に圧力を伝達して、高圧海水Ho(q)として第2流体流出路15tから流出する。
【0108】
第1流体流入路14tから第1流路31rに流入した高圧濃縮海水Hi(r)が、第1流路31rと連通した第2流路32r内の海水に圧力を伝達して、高圧海水Ho(r)として第2流体流出路15tから流出する。
【0109】
高圧海水Ho(p)、Ho(q)、Ho(r)が第2流体流出路15tから流出するときに、特に、高圧海水Ho(p)は、傾斜面15aに沿って流れることになるため、傾斜面により流れが阻害される。
【0110】
これにより回転体30には、図5(b)中の一点鎖線矢印が示すように、第2流路の内壁を水圧により押すことで右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0111】
図5(d)に示すように、第2流体流入路16tに流入した低圧海水Liは、第2流路32b、32c、32dの夫々に低圧海水Li(b)、Li(c)、Li(d)として流入する。
【0112】
特に低圧海水Li(d)は、傾斜面16aに沿って流れ、第2流体流入路32dに流入する。このとき、回転体30には、図5(d)中の一点鎖線矢印が示すように右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0113】
図5(c)、図5(d)に示すように、第2流体流入路16tから第2流路32bに流入した低圧海水Li(b)が、第2流路32bと連通した第1流路31b内の海水に圧力を伝達し、低圧濃縮海水Lo(b)として第1流体流出路17tから流出する。
【0114】
第2流体流入路16tから第2流路32cに流入した低圧海水Li(c)が、第2流路32cと連通した第1流路31c内の海水に圧力を伝達し、低圧濃縮海水Lo(c)として第1流体流出路17tから流出する。
【0115】
第2流体流入路16tから第2流路32dに流入した低圧海水Li(d)が、第2流路32dと連通した第1流路31d内の海水に圧力を伝達し、低圧濃縮海水Lo(d)として第1流体流出路17tから流出する。
【0116】
このように、低圧濃縮海水Lo(b)、Lo(c)、Lo(d)が第1流体流出路17tから流出するときに、低圧濃縮海水Lo(b)、Lo(c)は、傾斜面17aに沿って流れることになるため、傾斜面17aにより流れを阻害されることになる。
【0117】
これにより回転体30には、図5(c)中の一点鎖線矢印が示すように、第1流路31の内壁を水圧により押すことで右方向の力が作用する。つまり、回転体30は図6中一点鎖線矢印が示すように時計回りのトルクが付与されることになる。
【0118】
以上のように、第1流体流入路14tから第1流路31に流入する高圧濃縮海水Hiが回転体30に与えるトルクと、第2流路32から第2流体流出路15tへ流出する低圧海水Loが回転体30に与えるトルクと、第2流体流入路16tから第2流路32に流入する低圧海水Liが回転体30に与えるトルクと、第1流路31から第1流体流出路17tへ流出する低圧濃縮海水Loが回転体30に与えるトルクが、同一方向となり、本実施形態では、回転体30は、図6で見ると時計周りに回転することになる。
【0119】
ここでは、第1流体流入路14tから第1流路31p、31q、31rに流入する高圧濃縮海水Hiの圧力によって、第2流路32p、32q、32rから第2流体流出路15tへ高圧海水Hoが排水され、第2流体流入路16tから第2流路32b、32c、32dに流入する低圧海水Liの圧力によって、第1流路31b、31c、31dから第1流体流出路17tへ低圧濃縮海水Loが排水される場合に説明したが、第1流体流入路14b、第2流体流出路15b、第2流体流入路16b、第1流体流出路17bに夫々連通する第1流路31g、31h、31i、31k、31l、31m、第2流路32g、32h、32i、32k、32l、32mでも夫々同様の圧力交換が行われている。
【0120】
このように、回転体30の回転によって、ある圧力伝達部33を構成する第1流路31と第2流路32の組と、夫々連通する第1流体流入路14と第2流体流出路15、第2流体流入路16と第1流体流出路17とが切り替わり、高圧濃縮海水Hiから高圧海水Hoへの圧力の伝達、及び、低圧海水Liから低圧濃縮海水Loへの圧力の伝達が連続的に行われ、つまり、第1流体と第2流体の圧力交換処理が連続的に行われる。
【0121】
尚、第1流路31及び第2流路32内では、濃縮海水と、海水が混在することになるが、濃度差のある濃縮海水と海水の境界部分はある一定量が常に混ざった領域となり、当該領域は、ピストンのような役目をしながら第1流路31及び第2流路32の内部で揺動することになる。
【0122】
図6に示すように、第1流体流入路14、第2流体流出路15、第2流体流入路16、第1流体流出路17の何れにも連通しない第1流路31a、31e、31f、31j、31n、31o、及び、第2流路32a、32e、32f、32j、32n、32oの組では、圧力の交換は行われない。
【0123】
本実施形態では、第1流体流入路14t、第2流体流出路15t、第2流体流入路16t、第1流体流出路17tに、夫々流路が同時に3本ずつ連通する場合について説明したが、同時に連通する本数は、これに限らない。尚、同時に連通する本数が少なく、何れにも連通しない本数が多いと、装置から排水される水の脈動が大きくなる。
【0124】
回転体30は、回転体30に流入する高圧濃縮海水Hi及び低圧海水Li、回転体30から流出する高圧海水Ho及び低圧濃縮海水Loのエネルギーによって回転するように構成されているため、例えば、流入する各流体のエネルギーのみで回転する場合より、大きなトルクを付与することができる。
【0125】
傾斜面14a、15a、16a、17aの形状が変わると、処理流量、つまり各流路に流入する、及び、各流路から流出する流体の流量が変わり、回転体に加わるトルクが変わるので回転体の回転数が変わる。つまり、回転体30の回転数は、傾斜面14a、15a、16a、17aの形状に依存する。よって、当該形状を変更して、回転体30の回転数を調整することで圧力交換装置の処理流量を容易に調整できる。例えば、当該形状の異なる第1側方部材を用意しておき、交換することで、容易に処理流量を調整できる。
【0126】
上述のように、第1側方部材20aに、第1流体流入路14t、14b、第1流体流出路15t、15b、第2流体流入路16t、16b、第2流体流出路17t、17bが形成され、回転体30の一端側から圧力伝達部へ第1流体または第2流体を流入させて、回転体30内で第1流体と第2流体との圧力を交換し、前記一端側から第2流体または第1流体を流出させる構成であるので、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に、従来の圧力交換装置のように直管で構成された圧力伝達部と比較して、同じ流量の圧力交換処理を行なう場合に回転体の軸心方向の長さが短くなり、装置のコンパクト化と低コスト化を図ることができ、また、圧力交換処理の流量を増加させる必要がある場合でも、回転体の軸心方向の長さが短くなることで装置の極端な大型化を回避することができる。
【0127】
さらに、第1流体流入路及び流出路、第2流体流入路及び流出路が第1側方部材20aにのみ形成されているため、各流体の流入路または流出路と接続する配管を第1側方部材20a側に纏めて設置すればよく、従来の装置のように回転体の両端側に夫々流体の流入路または流出路と接続する配管を設置する場合と比較して、配管設置作業やメンテナンス作業等の作業性が良好になる。つまり、配管が第1側方部材20a側にまとまることで、配管を含めた設置スペースが小さくなる。さらに、配管を外すことなく、配管のない第2側方部材20b側からメンテナンス可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0128】
尚、上述の実施形態では、回転体30の回転軸にブッシュ13を備えることで回転体30の軸心のブレを低減でき円滑な回転ができるが、ブッシュ13は必ずしも備える必要はない。なお、ブッシュ13を備えないときは、スリーブ12により回転体30を回転方向に保持する構成となる。
【0129】
上述の実施形態では、第1流路31の断面積と第2流路32の断面積は等しくなるように形成することで、流路断面積の変化による余分な圧力損失が低減できるように構成したが、第1流路31と第2流路32の断面積は完全に等しい必要はない。
【0130】
上述の実施形態では、第1流路31と第2流路32は回転体30の他端側の端面30b側で連通した構成であるが、端面30bから端面30a側に所定距離離隔した位置で連通する構成であってもよい。つまり、連通部は端面30aと端面30bの間の任意の位置であってもよい。
【0131】
また、第1流路31と第2流路32は、必ずしも回転体30内部で連通する構成に限らず、第2側方部材20bと回転体30の間に、回転体30と一体に回転する部材を設け、該回転する部材に各流入路と流出路に対向する位置に凹部を形成し、回転体の回転に伴い該凹部を介して第1流路31と第2流路32が連通するように構成してもよい。
【0132】
第1流路31及び第2流路32の形状は、図3(a)に示すものに限らず、断面形状が真円や楕円等の円形状、三角、四角等の多角形状であってもよく、第1流路31及び第2流路32の本数や断面形状を変更することで、圧力伝達部33の総容量を変更して、圧力交換装置10の処理流量を変更することができる。なお、図3(a)に示すように、回転体の断面に対し開口率を大きく取れる断面形状が最良の断面形状である。
【0133】
上述の実施形態では、スリーブ12と第2側方部材20bを別体で構成したが、スリーブ12と第2側方部材20bをカップ状に一体形成し、第1側方部材20aで閉じられる空間内に回転体30が配置されるように構成してもよい。この場合はケーシング11を無くす構成とすることもできる。
【0134】
上述の実施形態では、第1流体流入路14t、14b、第2流体流出路15t、15b、第2流体流入路16t、16b、第1流体流出路17t、17bのように、各流入路と流出路が一対ずつ、つまり2つずつ備えられる構成であるが、各流入路と流出路は1つであっても、3つ以上の複数であってもよい。複数備える場合は、回転体30に流入及び回転体30から流出する各流体の圧力バランスの観点から各流入路及び流出路は回転軸心周りに点対称に配置されることが好ましい。
【0135】
上述の実施形態では、トルク付与機構は、第1流路31に流入する、または、第1流路31から流出する濃縮海水のエネルギー、及び、第2流路32に流入する、または、第2流路32から流出する海水のエネルギーにより回転体30にトルクを付与する構成であるが、前記トルク付与機構は、少なくとも第1流路31に流入する、第1流路31から流出する濃縮海水のエネルギー、または、第2流路32に流入する、第2流路32から流出する海水のエネルギーにより回転体30にトルクを付与するように構成すればよい。
【0136】
いずれかのエネルギーのみを利用する場合、第2流路32より第1流路31のほうが、回転体30の半径方向外側に配置されているため、第1流路31に流入する高圧濃縮海水Hiのエネルギーを利用して回転体30にトルクを付与するように構成するとエネルギー効率がよい。
【0137】
以下に、本発明による圧力交換装置の別実施形態について説明する。尚、上述の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し説明を省略する。
【0138】
図8に示すように、圧力交換装置10aは、回転体30に駆動軸34を連結し、駆動機等の外部動力で回転体30を回転できるように構成してもよい。駆動軸34は、押圧部材42、第2側方部材20bに形成した開口から挿通して、回転体30とキー35とボルト36で固定して一体回転するように構成すればよい。流体の流れが不安定である等により回転体30の回転が安定しないような場合でも、駆動軸34に連結された駆動機等の外部動力で回転体30を回転駆動できるため、安定した回転を得ることができるので装置の信頼性が向上する。
【0139】
さらに、別実施形態を説明する。図9(a)に示すように、圧力変換装置10bは、ケーシング11と、第1側方部材20aと、第2側方部材20bと、各側方部材20a、20bとで挟持されたスリーブ12とで区画される空間に収容され、ボルト23a周りに回転可能に支持される回転体30を備えて構成されている。
【0140】
ボルト23aとナット23bは、押圧機構として機能し、ボルト23a、ナット23bの締め付けを調整することで、第1側方部材20a及び第2側方部材20bの間隔を調整できるように構成されている。
【0141】
第1側方部材20aには、高圧濃縮海水Hiを第1流路31に案内する第1流体流入路14と、高圧濃縮海水Hiとの間で圧力交換された高圧海水Hoを第2流路32から案内する第2流体流出路15、及び、低圧海水Liを第2流路32に案内する第2流体流入路16と、低圧海水Liとの間で圧力交換された低圧濃縮海水Loを第1流路31から案内する第1流体流出路17とが、厚み方向に形成されている。
【0142】
第1側方部材20aの左側には、区画部材28aを介してエンドカバー21aが備えられ、エンドカバー21aは、リング部材22aによって、ケーシング11から左側方へ脱落しないように固定されている。
【0143】
エンドカバー21aには、第1側方部材20aに形成された第1側方部材20aに形成された第1流体流入路14、第2流体流出路15、第2流体流入路16、第1流体流出路17と、夫々連通する通水路24、25、26、27が厚み方向に形成されている。
【0144】
第2側方部材20bの右側には、区画部材28bを介してエンドカバー21bが備えられ、エンドカバー21bは、リング部材22bによって、ケーシング11から右側方へ脱落しないように固定されている。
【0145】
区画部材28aは、第1側方部材20aとエンドカバー21aの間隔を、区画部材28aの厚みで規定される距離を保持するとともに、第1流体流入路14と通水路24を、第2流体流入路15と通水路25を、第2流体流入路16と通水路26を、第1流体流出路17と通水路27を夫々区画して連通するように構成されている。
【0146】
第1側方部材20aとエンドカバー21aと区画部材28aで区画される空間であって、第1流体流入路14と通水路24の間の空間には、高圧濃縮海水Hiが流入する押圧空間37aとして機能する。第1流体流入路14と通水路24の間の押圧空間37aは連通孔としても機能する。
【0147】
押圧空間37aには、通水路24から第1流体流入路14へと向かう高圧濃縮海水Hiが流入し、該高圧濃縮海水Hiの圧力は、第1側方部材20aを回転体30に向けて押圧するように作用する。
【0148】
第1側方部材20aとエンドカバー21aと区画部材28aで区画される空間であって、第1流体流出路17と通水路27の間の空間には、低圧濃縮海水Loが流入する押圧空間38aとして機能する。第1流体流出路17と通水路27の間の押圧空間38aは連通孔としても機能する。
【0149】
押圧空間38aには、第1流体流出路17から通水路27へと向かう低圧濃縮海水Loが流入し、該低圧濃縮海水Loの圧力は、第1側方部材20aを回転体30に向けて押圧するように作用する。
【0150】
区画部材28bは、第2側方部材20bとエンドカバー21bの間隔を、区画部材28bの厚みで規定される距離を保持するように構成されている。
【0151】
第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間のうち、第1流体流入路14及び第2流体流出路15に対応する位置に形成された空間は、圧力伝達部33内の高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体が流入する押圧空間37bとして機能する。
【0152】
第2側方部材20bには連通孔39aが形成され、押圧空間37bには圧力伝達部33内の高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体が連通孔39aを介して流入し、該混合の圧力は、第2側方部材20bを回転体30に向けて押圧するように作用する。
【0153】
第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間のうち、第2流体流入路16及び第1流体流出路17に対応する位置に形成された空間は、圧力伝達部33内の低圧海水Liと低圧濃縮海水Loの混合流体が流入する押圧空間38bとして機能する。
【0154】
第2側方部材20bには連通孔39bが形成され、押圧空間38bには圧力伝達部33内の低圧海水Liと低圧濃縮海水Loの混合流体が連通孔39bを介して流入し、該混合流体の圧力は、第2側方部材20bを回転体に向けて押圧するように作用する。
【0155】
図9(b)に示すように、第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間には、区画壁28cが設けられ、押圧空間37b、38bが夫々区画されるように構成されている。なお、第2側方部材に連通孔39bを形成せずに連通孔39aのみを形成し、区画壁28cを設けないようにすることで、第2側方部材20bとエンドカバー21bと区画部材28bで区画される空間には、高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体のみが連通孔39aを介して流入し、当該空間が押圧空間37bとして機能する構成であってもよい。
【0156】
第1側方部材21aと第2側方部材21bは、中央部をボルト23aとナット23bにより締付けられる構成であるため、第1側方部材21aと第2側方部材21bの円周部には、回転体30内の流体によって軸心方向外側への圧力がかかる。
【0157】
しかし、上述のように、第1側方部材21aの外側の押圧空間37a、37bに、第1流路31、第2流路32に供給される各流体が導かれ、第2側方部材21bの外側の押圧空間38a、38bに第2側方部材21bに形成されている連通孔39a、39bから、第1流路31、第2流路32内の流体が導かれる。
【0158】
つまり、各押圧空間37a、37b、38a、38bには各流路31、32内と同じ圧力の流体が導かれることとなる。第1側方部材21a及び第2側方部材21bの夫々の両面に作用する力が釣り合うので、第1側方部材21a及び第2側方部材21bの回転軸芯方向に歪むことを防ぐことができる。
【0159】
さらに、別実施形態を説明する。上述の別実施形態の圧力交換装置10bと同様の構成については同じ符号を付し説明を省略する。図10示すように、圧力交換装置10cは、スリーブ12の中央に固定板50が配設され、第1側方部材20aとエンドカバー21aと区画部材28aと回転体30が、固定板50の縦方向の中心線に対して左右対称に配置されて構成されている。固定板50の両面には、高圧濃縮海水Hiと高圧海水Hoの混合流体と、低圧海水Liと低圧濃縮海水Loの混合流体の力が作用し、固定板50の一側面側の空間が、他側面側の空間の押圧空間となり、前記他側面側の空間が一側面側の押圧空間として機能する。図8に示した押圧空間38a、38bのように、連通孔39a、39bを備える必要がない。
【0160】
尚、スリーブ12内に固定板50を備えることなく、左右の回転体30aを一体形成したような回転体51(図11参照)を備える構成であってもよい。
【0161】
上述の何れの実施形態でも、トルク付与機構は、第1側方部材に傾斜面を形成する構成について説明したが、第1側方部材に形成した傾斜面に加えて、または、替えて、第1流路または第2流路を回転体内で周方向に傾斜するように形成し、第1流路に流入する第1流体または第2流路に流入する第2流体が、第1流路または第2流路の流路壁面に当たることで、回転体にトルクを付与する構成であってもよい
【0162】
回転体に形成された第1流路及び第2流路の端部や、第1側方部材に形成された各流入路、流出路の端部等の、第1流体及び第2流体が通過する箇所に、面取や角丸め等の加工を行なうことで圧力損失を低減し、キャビテーションや、脈動の発生を防止することができる。
【0163】
上述の何れの実施形態でも、第1流体流入路に高圧濃縮海水を流入させ、第2流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させる構成について説明したが、第1流体流入路に被濃縮流体である低圧海水を流入させ、第2流体流入路に高圧濃縮海水を流入させてもよい。
【0164】
以上説明した圧力交換装置及び圧力交換装置の性能調整方法の具体的構成は実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0165】
6:逆浸透膜装置
10:圧力交換装置
11:ケーシング
12:スリーブ
13:ブッシュ
14:第1流体流入路
15:第2流体流出路
16:第2流体流入路
17:第1流体流出路
14a、17a:傾斜面(第1傾斜部)
15a、16a:傾斜面(第2傾斜部)
20a:第1側方部材
20b:第2側方部材
30:回転体
31:第1流路
32:第2流路
33:圧力伝達部
34:駆動軸
37a、37b:押圧空間
38a、38b:押圧空間
39a、39b:連通孔
40:押圧機構
Hi:高圧濃縮海水
Li:低圧海水
Ho:高圧海水
Lo:低圧濃縮海水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、
一端側から第1流体が流入または流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入または流出する第2流路とが連通するように形成された圧力伝達部を、回転軸心周りに配設した回転体と、
第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路、及び、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、
前記回転体を第1側方部材との間で保持部材を介して回転可能に挟持する第2側方部材と、
を備えている圧力交換装置。
【請求項2】
前記回転体は、第1及び第2側方部材と各側方部材で挟持された保持部材とで区画される空間に収容されるとともに、第1流路及び第2流路が前記回転体を貫通するように形成され、前記回転体と第1及び第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている請求項1記載の圧力交換装置。
【請求項3】
少なくとも一方の側方部材を押圧して、第1及び第2側方部材の間隔を調整する押圧機構を備えている請求項2記載の圧力交換装置。
【請求項4】
第1及び第2側方部材の外側に各側方部材を前記回転体に向けて押圧する押圧空間を形成し、前記押圧空間に第1流路または第2流路に供給される流体を導く連通孔を第1及び第2側方部材に形成している請求項2または3に記載の圧力交換装置。
【請求項5】
前記第1側方部材は、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている請求項1から4の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項6】
前記トルク付与機構は、
第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成された第1傾斜部と、
第2流体流出路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成された第2傾斜部と、を備え、
第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が逆になるように設定されている請求項5記載の圧力交換装置。
【請求項7】
前記回転体に、複数の圧力伝達部が回転軸心周りに放射状に配設されている請求項1から6の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項8】
隣接する複数の圧力伝達部が、前記回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通する請求項7記載の圧力交換装置。
【請求項9】
前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部が存在する請求項7または8に記載の圧力交換装置。
【請求項10】
前記第1側方部材に、複数組の第1流体流入路と第2流体流出路が回転軸心周りに対称に配置されている請求項1から9の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項11】
第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されている請求項1から10の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項12】
前記回転体を外部動力で回転させる駆動軸が前記回転体に連結されている請求項1から11の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項13】
前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である請求項1から12の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項14】
請求項5または6記載の圧力交換装置の性能調整方法であって、前記トルク付与機構を変更することにより処理流量を調整する圧力交換装置の性能調整方法。
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で圧力を交換する圧力交換装置であって、
一端側から第1流体が流入または流出する第1流路と前記一端側から第2流体が流入または流出する第2流路とが連通するように形成された圧力伝達部を、回転軸心周りに配設した回転体と、
第1流体を第1流路に案内する第1流体流入路と、第1流体との間で圧力交換された第2流体を第2流路から案内する第2流体流出路、及び、第2流体を第2流路に案内する第2流体流入路と、第2流体との間で圧力交換された第1流体を第1流路から案内する第1流体流出路とが、厚み方向に形成された第1側方部材と、
前記回転体を第1側方部材との間で保持部材を介して回転可能に挟持する第2側方部材と、
を備えている圧力交換装置。
【請求項2】
前記回転体は、第1及び第2側方部材と各側方部材で挟持された保持部材とで区画される空間に収容されるとともに、第1流路及び第2流路が前記回転体を貫通するように形成され、前記回転体と第1及び第2側方部材との間に各流体が進入する隙間が形成されている請求項1記載の圧力交換装置。
【請求項3】
少なくとも一方の側方部材を押圧して、第1及び第2側方部材の間隔を調整する押圧機構を備えている請求項2記載の圧力交換装置。
【請求項4】
第1及び第2側方部材の外側に各側方部材を前記回転体に向けて押圧する押圧空間を形成し、前記押圧空間に第1流路または第2流路に供給される流体を導く連通孔を第1及び第2側方部材に形成している請求項2または3に記載の圧力交換装置。
【請求項5】
前記第1側方部材は、第1流路に流入する、または、第1流路から流出する第1流体のエネルギーまたは第2流路に流入する、または、第2流路から流出する第2流体のエネルギーにより前記回転体にトルクを付与するトルク付与機構を備えている請求項1から4の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項6】
前記トルク付与機構は、
第1流体流入路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第1流路と連通するように拡径して形成された第1傾斜部と、
第2流体流出路のうち前記回転体との対向面側に、前記回転体の周方向に沿って複数の第2流路と連通するように拡径して形成された第2傾斜部と、を備え、
第1傾斜部の傾斜方向と第2傾斜部の傾斜方向が逆になるように設定されている請求項5記載の圧力交換装置。
【請求項7】
前記回転体に、複数の圧力伝達部が回転軸心周りに放射状に配設されている請求項1から6の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項8】
隣接する複数の圧力伝達部が、前記回転体の回転に伴って、少なくとも1つの第1流体流入路と第2流体流出路、または、1つの第2流体流入路と第1流体流出路と同時に連通する請求項7記載の圧力交換装置。
【請求項9】
前記複数の圧力伝達部のうち、前記回転体の回転に伴って、第1流体流入路と第2流体流出路、及び、第1流体流出路と第2流体流入路の何れにも連通しない圧力伝達部が存在する請求項7または8に記載の圧力交換装置。
【請求項10】
前記第1側方部材に、複数組の第1流体流入路と第2流体流出路が回転軸心周りに対称に配置されている請求項1から9の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項11】
第1流路の断面積と第2流路の断面積が等しくなるように形成されている請求項1から10の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項12】
前記回転体を外部動力で回転させる駆動軸が前記回転体に連結されている請求項1から11の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項13】
前記第1流体流入路に供給される第1流体が逆浸透膜装置から排水される高圧濃縮流体であり、前記第2流体流入路に供給される第2流体が前記逆浸透膜装置に給水される被濃縮流体である請求項1から12の何れかに記載の圧力交換装置。
【請求項14】
請求項5または6記載の圧力交換装置の性能調整方法であって、前記トルク付与機構を変更することにより処理流量を調整する圧力交換装置の性能調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−143703(P2012−143703A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3650(P2011−3650)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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