説明

圧力提示機構、圧力提示装置及び圧力提示方法

【課題】複雑で大きな装置を用いることなく、簡素な構成で人体に様々な圧力感覚を提示することができるようにする。
【解決手段】人体に圧力感覚を提示するために椅子に組み込まれて使用される圧力提示機構であり、一面60aが人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴61が配列形成されているベース60と、各貫通穴61にそれぞれ挿入位置されて接触面から出入り自在とされたピン51と、ピンを接触面から出入りする方向に振動させる振動機構40とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は人体に圧力感覚を提示するために、椅子に組み込まれて使用される圧力提示機構に関し、さらにその圧力提示機構を用いる圧力提示装置及び圧力提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像提示技術の発達と映像提示装置の普及により、大画面高精細映像や立体映像などの映像コンテンツをアミューズメント施設だけでなく、一般家庭などでも体験することができるようになってきた。このような映像コンテンツを視聴する場合の臨場感を高める一つの手段として、モーションチェアと呼ばれる可動型の椅子が多く採用されている。
【0003】
大画面のスクリーンの前に座って体感するような乗り物型の装置では、視覚的手がかりから主に速度を、機械的手がかり(前庭感覚、皮膚感覚)から主に加速度や角加速度を検出して、移動感覚を生成している。加速度や角加速度は三半規管や耳石器で受容されるが、刺激を機械的に与える方法(例えば、非特許文献1参照)と電気的に与える方法(例えば、特許文献1参照)が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】広瀬通孝、大塚隆治、広田光一,「モーションベースを利用した前庭感覚表現に関する基礎研究」,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,Vol.1,No.1,p.16-22,1996
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−144057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献1に記載されているようなモーションチェアを用いる技術は、物理的な挙動の再現を考えているため、構成が複雑になることが問題であった。物理情報を忠実に再現するためには、回転と並進の6自由度が必要となるが、一般的に装置が高価で大掛かりになりやすく、設置場所が限られる一般家庭では導入が難しい。
【0007】
一方、特許文献1に記載されているような前庭電気刺激を用いる技術は、安価な構成で実現できるが、前後方向と左右方向で効果が異なること、重力方向への提示に関する報告がないこと、皮膚の電気インピーダンスによって効果が異なること、座った状態では効果が小さいこと等の扱いにくさが問題として挙げられる。
【0008】
また、アミューズメント施設では椅子を傾けることで重力の変化によって人体が椅子に押さえつけられることで、圧力感覚を表現しているが、このように椅子を傾けるといった方法は大型で複雑な構成になりやすい。
【0009】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、圧力変化をシンプルな振動刺激と接触面積の変化によって生成することで、簡素な構成で知覚的に等価な現象を作り出すことができるようにした圧力提示機構、圧力提示装置及び圧力提示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明によれば、人体に圧力感覚を提示するために椅子に組み込まれて使用される圧力提示機構は、一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて接触面から出入り自在とされたピンと、ピンを接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる。
【0011】
請求項2の発明によれば、圧力提示装置は、請求項1記載の圧力提示機構と、人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、電流指令値から振動機構を駆動する駆動電流を生成して振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、ピンが接触面から突出する方向を+x方向、接触面の位置をx=0、時刻tにおけるピンの先端の位置をx(t)とした時、制御部は、
x(t)=Asin2πft+x
但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心
となるように電流指令値を算出する。
【0012】
請求項3の発明によれば、圧力提示装置は、請求項1記載の圧力提示機構と、人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、電流指令値から振動機構を駆動する駆動電流を生成して振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、ピンが接触面から突出する方向を+x方向、接触面の位置をx=0、時刻tにおけるピンの先端の位置をx(t)とした時、制御部は、
【0013】
【数1】

【0014】
但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心(x≦0)、nは整数、aはパーセント(0<a<100)
となるように電流指令値を算出する。
【0015】
請求項4の発明によれば、圧力提示装置は、請求項1記載の圧力提示機構と、人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、電流指令値から振動機構を駆動する駆動電流を生成して振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、ピンが接触面から突出する方向を+x方向、接触面の位置をx=0、時刻tにおけるピンの先端の位置をx(t)とした時、凹凸形状上の移動感覚を圧力感覚によって提示すべく、制御部は凹凸形状上の移動に伴い生じる加速度を2階積分してx(t)を求め、そのx(t)となるように電流指令値を算出する。
【0016】
請求項5の発明によれば、圧力提示装置は、請求項1記載の圧力提示機構と、人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、電流指令値から振動機構を駆動する駆動電流を生成して振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、制御部は椅子の傾きによって生じる圧力変化を相殺するように電流指令値を算出する。
【0017】
請求項6の発明によれば、一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて接触面から出入り自在とされたピンと、ピンを接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法は、前記圧力提示機構を椅子に組み込み、ピンが接触面から突出する方向を+x方向、接触面の位置をx=0、時刻tにおけるピンの先端の位置をx(t)とした時、
x(t)=Asin2πft+x
但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心
となるように振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示する。
【0018】
請求項7の発明によれば、一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて接触面から出入り自在とされたピンと、ピンを接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法は、前記圧力提示機構を椅子に組み込み、ピンが接触面から突出する方向を+x方向、接触面の位置をx=0、時刻tにおけるピンの先端の位置をx(t)とした時、
【0019】
【数2】

【0020】
但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心(x≦0)、nは整数、aはパーセント(0<a<100)
となるように振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示する。
【0021】
請求項8の発明によれば、一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて接触面から出入り自在とされたピンと、ピンを接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法は、前記圧力提示機構を椅子に組み込み、ピンが接触面から突出する方向を+x方向、接触面の位置をx=0、時刻tにおけるピンの先端の位置をx(t)とした時、凹凸形状上の移動感覚を圧力感覚によって提示すべく、凹凸形状上の移動に伴い生じる加速度を2階積分してx(t)を求め、そのx(t)となるように振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示する。
【0022】
請求項9の発明によれば、一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて接触面から出入り自在とされたピンと、ピンを接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法は、前記圧力提示機構を椅子に組み込み、椅子の傾きによって生じる圧力変化を相殺するように振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示する。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、複雑で大きな装置を用いることなく、簡素な構成で人体に圧力感覚を提示することができ、これにより例えば加速度感や凹凸形状上の移動感覚等を提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明による圧力提示装置の一実施例の機能構成を示すブロック図。
【図2】図1における圧力提示機構の基本単位の具体的構成例を示す図、Aは平面図、Bは正面図。
【図3】図2に示した圧力提示機構の一部省略した斜視図。
【図4】人間の受容器の振動に対する特性を示すグラフ(指腹部分)。
【図5】圧力提示機構の実際の使用形態の構成を示す平面図。
【図6】圧力提示機構の椅子への設置例を示す図。
【図7】圧力提示機構が設置された椅子に人がベルトで固定された状態を示す図。
【図8】椅子の傾きによって生じる加速度及び圧力の方向を示す図。
【図9】椅子の座面において圧力提示機構の振動位置を変位させる例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0026】
図1はこの発明による圧力提示装置の構成の一例をブロック図で示したものであり、圧力提示装置はこの例では制御部10と電流増幅器20と圧力提示機構30と圧力センサ70とによって構成されている。圧力提示機構30は振動機構40とピン51とベース60とを備えている。
【0027】
図2及び図3は圧力提示機構30の基本単位の具体的構成例を示したものであり、振動機構40として、この例ではボイスコイルモータを用いるものとなっている。ボイスコイルモータよりなる振動機構40の可動部(振動部)41にはピン51が取り付けられており、この例では基体52上に複数のピン51がアレイ状に配列されてなるピンアレイ50が可動部41に取り付けられている。
【0028】
ベース60には各ピン51の位置と対応して複数の貫通穴61が配列形成されており、ピン51は各貫通穴61に挿入位置されてベース60の表面60aから出入り自在とされている。ピン51は振動機構40を駆動し、振動させることにより、ベース60の表面60aから出入りする方向に振動する。
【0029】
ベース60は図2に示したように、振動機構40のハウジング42の外周に突設されているフランジ43に固定されている。固定はねじ31及び間隔管32を用いて行われ、間隔管32はベース60とフランジ43との間に介在されてベース60の所定の高さ位置を規定する。ねじ31はベース60の4隅に形成されている取り付け穴62、間隔管32及びフランジ43の取り付け穴44を順次挿通し、ナット33により締結されている。なお、図3ではねじ31及び間隔管32の図示を省略している。
【0030】
ピン51の先端はこの例ではベース60の表面60aよりわずかに突出した状態となっているが、振動機構40の非駆動時(電源OFF時)におけるピン51の先端の位置は間隔管32の長さを変えることによって調整することができる。
【0031】
圧力提示機構30は例えば椅子の座面に組み込まれて設置され、椅子に座ったユーザ(人体)に圧力感覚を提示する。
【0032】
制御部10は人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な振動機構40の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して電流増幅器20に出力する。制御部10は例えばパーソナルコンピュータ(PC)を用いて構成される。
【0033】
電流増幅器20は入力された電流指令値から振動機構40を駆動する駆動電流を生成して振動機構40に入力する。
【0034】
圧力センサ70は振動機構40内に取り付けられており、例えばユーザが座ることによって、ピン51にかかる圧力を検出することができるものとなっている。
【0035】
圧力提示機構30は圧力感覚を振動刺激と接触面積の変化を利用して提示する。与えられる力F(t)は圧力P(t)と接触面積S(t)の積によって決定される。tは時間を表す。
【0036】
F(t)=∫d(SP) (1)
よって、
【0037】
【数3】

【0038】
圧力提示機構30はピン51がベース60から飛び出る時と出ない時で接触面積を変化させる。制御部10は電流指令値を出力し、これにより振動機構40を振動させることにより、圧力提示機構30と人体の接触面積S(t)を変化させる。接触面積S(t)はピン51の変位によって、人体との接触面をなすベース60の表面60aのみの表面積SBase、ベース60の表面積とピン51先端の面積の和SBase+SPins、ピン51先端の面積のみSPinsの3つの状態を遷移する。ピン51がベース60の表面60aから突出する方向を+x方向、時刻tにおけるピン51の先端の位置をx(t)、ベース60の表面60aの位置をx=0とすれば、
【0039】
【数4】

【0040】
となる。x(t)の2階微分は加速度であり、F(t)は加速度に比例する。
【0041】
例えば、ピン51が振幅Aの正弦波状に変位するように制御した時、周波数をf、振動中心をxとすると、x(t)は以下のように表される。但し、A/2≧|x|とする。
x(t)=Asin2πft+x (4)
【0042】
周波数fが十分速い時、具体的には図4に示すような50Hz以上(望ましくは100Hz以上)では、ピン51の振動刺激は振動感覚として人体に知覚される。その時は接触面積S(t)の変化、つまりピン51の先端の位置が正になる時間の割合に応じて圧力が変化して知覚される。
【0043】
周波数fが十分遅い時、具体的には図4に示すような50Hz以下(望ましくは5Hz以下)ではピン51の振動刺激は人体に圧力感覚として知覚される。その時は力F(t)の変化、つまりピン51の先端の位置が正になる量の割合に応じて圧力が変化して知覚される。つまり、振幅A+xの大きさが大きく影響する。
【0044】
振動機構40を制御し、振動刺激を変化させ、人体との接触面積S(t)を変化させることで、人体に圧力感覚(圧迫されたような感覚)を提示することができる。
【0045】
圧力提示機構30は図2及び図3では基本単位の構成を示している。椅子に設置される圧力提示機構は、実際には図5に示したような構成とされる。この図5に示した圧力提示機構30’は図2及び図3に示した基本単位の圧力提示機構30が多数配置されて構成されたもので、この例では20個の圧力提示機構30が配置されて圧力提示機構30’が構成されている。なお、ベース60’は共通の一枚の板として構成されている。振動機構40は図5では隠れて見えないが、ベース60’の裏面側に各ピンアレイ50に対応して20個配置されている。図2及び図3に示した圧力提示機構30のベース60の大きさは例えば6cm×6cmとされ、よってこの図5に示した圧力提示機構30’ではベース60’の大きさは24cm×30cm程度となる。
【0046】
図6は圧力提示機構30’の椅子80への設置例を示したものであり、図6では椅子80の座面と背もたれと左右両側のひじ掛け部分の計4箇所に圧力提示機構30’が設置されている。圧力提示機構30’の設置位置・数は用途に応じて適宜決定される。
【0047】
図6では人体は特に固定されていないが、図7に示したように人体と圧力提示機構30’が密着するように、ベルト81によって人体を椅子80に固定するのが望ましい。
【0048】
人体への圧力感覚の提示によって加速度感を提示したい時には、x(t)が以下のようになるように振動機構40を駆動する。但し、nは整数、aはパーセント(0<a<100)を表し、A/2≧|x|、x≦0とする。
【0049】
【数5】

【0050】
このように駆動することで、ステップ状に圧力変化を作り出すことができる。そのため、例えば自動車の急発進や急停止のような時に生じる過渡的な圧力変化を再現することができる。この場合、過渡的な刺激であるため、他の感覚情報(急発進や急停止の映像(視覚刺激)や音(聴覚刺激))とタイミングを合わせて圧力感覚を提示するのが望ましい。
【0051】
また、人体への圧力感覚の提示によって凹凸形状上の移動感覚を提示することもできる。
【0052】
例えば、地形の形状を表す曲線をz=φ(y)とする。ここでは、鉛直方向がz、水平方向がyとする。例えば、φ(y)で表される曲線がガウシアンの時、
【0053】
【数6】

【0054】
凹凸形状はzを再現するように、力つまり加速度dx/dtを変化させればよい。そのため、凹凸形状上の移動に伴い生じる加速度を2階積分してx(t)を求め、そのx(t)となるように振動機構40を制御すればよい。この場合、移動感覚を知覚させる視覚等の感覚情報と同時に用いられることが望ましい。
【0055】
一方、椅子が傾いた時に生じる圧力変化を知覚させたくない場合には、相殺するように圧力感覚を提示することができる。例えば、図8に示したように重力鉛直方向から椅子80がθ傾いた時、体重mの人は背中の部分に、
F=mg×sinθ (7)
の力を感じる。gは重力加速度を表す。
【0056】
制御部10は(2)式から傾ける前後で圧力P(t)が一定となるように接触面積S(t)を算出し、算出したS(t)が得られるように(3)式により振動機構40の振動x(t)を制御すればよい。
【0057】
例えば、傾ける前がθ=0度、傾けた後がθ=30度の時、F_before=0、F_after=0.5mgとなる。よって、ΔF=F_after−F_before=0.5mgである。P(t)を一定に保つためには、
ΔF/ΔS=一定 (8)
となるようにΔSを決定すればよい。
【0058】
以上説明した例では、振動機構としてボイスコイルモータを用いるものとなっているが、振動機構としてはこれに限らず、他の装置・機構を用いることもでき、例えばリニアアクチュエータなどを用いることもできる。また、油圧シリンダや空気圧シリンダなども用いることができる。
【0059】
一方、上述した例では、ピンアレイが振動機構によって駆動されるものとなっているが、理想的にはピン毎に振動機構がついていて駆動されることが望ましい。但し、ピンの大きさや振動機構の大きさを考慮し、実用的には上述したように複数のピンをまとめて一つの振動機構で駆動する形態を採用する。なお、ピンの形状やピンの高さを変えることで、接触面積を細かく設定することもできる。
【0060】
それぞれのピンが独立に動くようにすれば、広範囲な領域で細かい圧力変化を作り出すことができる。例えば、図9に示したように、太ももの裏部分に接触するピンを後ろから前にスイープするように切り替えることで、その下の形状を擬似的に表現することができる。
【0061】
空間的に離散的な振動刺激であっても、仮現運動や跳躍現象(cutaneous saltation)と呼ばれる現象が報告されている。また、ある空間的に離れた2点(複数点)での知覚する刺激の大きさが異なる時、それらの平均となる位置の1点のみに刺激が知覚されるファントムセンセーションが報告されている。この発明では知覚する振動の大きさは、それぞれのピンの振幅や周波数を変えることで変化する。知覚する振動の大きさをA1,A2、両者の座標をx1,x2とすると、ファントムセンセーションが知覚される大きさと場所は以下のように表される。
【0062】
A_PHANTOM=(A1・x1+A2・x2)/(x1+x2) (9)
X_PHANTOM=(A1・x1+A2・x2)/(A1+A2) (10)
これらは2点以上であっても同様の計算で求められる。仮現運動、跳躍現象、ファントムセンセーションは椅子の同一平面内(例えば、背中と太もも裏ではなく、背中のみのような場合)で有効に機能する。
【符号の説明】
【0063】
10 制御部 20 電流増幅器
30,30’ 圧力提示機構 40 振動機構
50 ピンアレイ 51 ピン
60,60’ ベース 70 圧力センサ
80 椅子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に圧力感覚を提示するために椅子に組み込まれて使用される圧力提示機構であって、
一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、
前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて前記接触面から出入り自在とされたピンと、
前記ピンを前記接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなることを特徴とする圧力提示機構。
【請求項2】
請求項1記載の圧力提示機構と、
人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な前記振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、
前記電流指令値から前記振動機構を駆動する駆動電流を生成して前記振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、
前記ピンが前記接触面から突出する方向を+x方向、前記接触面の位置をx=0、時刻tにおける前記ピンの先端の位置をx(t)とした時、前記制御部は、
x(t)=Asin2πft+x
但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心
となるように前記電流指令値を算出することを特徴とする圧力提示装置。
【請求項3】
請求項1記載の圧力提示機構と、
人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な前記振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、
前記電流指令値から前記振動機構を駆動する駆動電流を生成して前記振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、
前記ピンが前記接触面から突出する方向を+x方向、前記接触面の位置をx=0、時刻tにおける前記ピンの先端の位置をx(t)とした時、前記制御部は、
【数7】

但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心(x≦0)、nは整数、aはパーセント(0<a<100)
となるように前記電流指令値を算出することを特徴とする圧力提示装置。
【請求項4】
請求項1記載の圧力提示機構と、
人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な前記振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、
前記電流指令値から前記振動機構を駆動する駆動電流を生成して前記振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、
前記ピンが前記接触面から突出する方向を+x方向、前記接触面の位置をx=0、時刻tにおける前記ピンの先端の位置をx(t)とした時、凹凸形状上の移動感覚を圧力感覚によって提示すべく、前記制御部は凹凸形状上の移動に伴い生じる加速度を2階積分してx(t)を求め、そのx(t)となるように前記電流指令値を算出することを特徴とする圧力提示装置。
【請求項5】
請求項1記載の圧力提示機構と、
人体に所望の圧力感覚を提示するために必要な前記振動機構の振動を求め、その求めた振動を与えるのに必要な電流指令値を算出して出力する制御部と、
前記電流指令値から前記振動機構を駆動する駆動電流を生成して前記振動機構に入力する電流増幅器とよりなり、
前記制御部は椅子の傾きによって生じる圧力変化を相殺するように前記電流指令値を算出することを特徴とする圧力提示装置。
【請求項6】
一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて前記接触面から出入り自在とされたピンと、前記ピンを前記接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法であって、
前記圧力提示機構を椅子に組み込み、
前記ピンが前記接触面から突出する方向を+x方向、前記接触面の位置をx=0、時刻tにおける前記ピンの先端の位置をx(t)とした時、
x(t)=Asin2πft+x
但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心
となるように前記振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示することを特徴とする圧力提示方法。
【請求項7】
一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて前記接触面から出入り自在とされたピンと、前記ピンを前記接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法であって、
前記圧力提示機構を椅子に組み込み、
前記ピンが前記接触面から突出する方向を+x方向、前記接触面の位置をx=0、時刻tにおける前記ピンの先端の位置をx(t)とした時、
【数8】

但し、Aは振幅であり、A/2≧|x|、fは周波数、
は振動中心(x≦0)、nは整数、aはパーセント(0<a<100)
となるように前記振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示することを特徴とする圧力提示方法。
【請求項8】
一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて前記接触面から出入り自在とされたピンと、前記ピンを前記接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法であって、
前記圧力提示機構を椅子に組み込み、
前記ピンが前記接触面から突出する方向を+x方向、前記接触面の位置をx=0、時刻tにおける前記ピンの先端の位置をx(t)とした時、凹凸形状上の移動感覚を圧力感覚によって提示すべく、凹凸形状上の移動に伴い生じる加速度を2階積分してx(t)を求め、そのx(t)となるように前記振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示することを特徴とする圧力提示方法。
【請求項9】
一面が人体との接触面をなし、その接触面に複数の貫通穴が配列形成されているベースと、前記各貫通穴にそれぞれ挿入位置されて前記接触面から出入り自在とされたピンと、前記ピンを前記接触面から出入りする方向に振動させる振動機構とよりなる圧力提示機構を用いる圧力提示方法であって、
前記圧力提示機構を椅子に組み込み、
椅子の傾きによって生じる圧力変化を相殺するように前記振動機構の振動を制御して人体に圧力感覚を提示することを特徴とする圧力提示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−9730(P2013−9730A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143037(P2011−143037)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/(革新的な三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発 課題ウ五感コミュニケーションの中核的要素技術)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】