説明

圧力検出回路

【目的】パワーウインド装置などで使用される圧力検出回路において、安定かつ正確な圧力検出を保証し、異物挟み込み検出の信頼性を向上させる。
【構成】第1増幅器1は、反転入力端と出力端との間に、加圧力Pに応じて抵抗値Rsが変化する感圧センサ2が接続され、反転入力端1aが接地抵抗3を介して接地され、出力端が出力端子5と、第2増幅器6の反転入力端とに接続される。この第2増幅器6は、非反転入力端に、一定の基準電圧Erefを発生する基準電圧源7が接続され、出力端6cが時定数回路8を介して第1増幅器1の非反転入力端に接続される。この時定数回路8は、第2増幅器6の出力端と第1増幅器1の非反転入力端との間に接続された抵抗9と、第1増幅器1の非反転入力端に接続された接地コンデンサ10とからなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車のパワーウインド装置などの自動開閉装置に用いて好適な圧力検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】モータ駆動により移動体を移動させるようにした自動開閉装置(例えば、自動車のパワーウインド装置)では、窓ガラスなどの移動体の閉動の際に異物が挟み込まれた時にモータの駆動を停止させるために、異物の挟み込み検出を行っている。このような異物の挟み込み検出のために、感圧型導電ゴムや感圧型導電塗料を用いた感圧センサによって、異物に加えられる圧力が検出される。
【0003】このような圧力検出用として使用される感圧型導電ゴムや感圧型導電塗料を用いた感圧センサの電気的特性は、加圧力Pに対応した抵抗値をRsとした時、一般には圧力Pが大きくなるに従って抵抗値Rsが減少し、通常、K、Nを各々正の定数とすると、Rs∝KP-N …………………………(1)
で表される。この加圧力Pと感圧センサの抵抗値Rsとの間に上記(1)式で表される一定の関係があることに基づいて、この種の感圧センサを用いる従来の圧力検出回路では、感圧センサの抵抗値Rsの値に応じた電圧を圧力検出信号として出力するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、感圧センサの抵抗値は、製品間で製造上の誤差によるバラツキがあるだけでなく、1つの感圧センサにおいても周囲温度によって変化し、更には経時的にも変化する。従って、上記(1)式についてみれば、K、Pの値がばらついたり変化したりする。
【0005】また、普通の抵抗においては、一定電圧を印加した状態下で抵抗値と電流値とが直線的な反比例関係になるが、感圧センサにおいては、たとえば図3に示すように非線形的・非定型的な電流−抵抗値特性になるので、電流が変動するとその影響で抵抗値も変動し(乱れ)、実際の抵抗値変化を電気的に正確に検出するのが難しいという問題がある。
【0006】本発明は、上述した問題点を解消して、安定かつ正確な圧力検出を保証し、異物挟み込み検出の信頼性を向上させることのできる圧力検出回路を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の圧力検出回路は、加圧力に応じて抵抗値が変化する感圧センサを反転入力端と出力端との間に接続し、抵抗を上記反転入力端に接続した第1の増幅器と、この第1の増幅器の出力端を反転入力端に接続し、基準電圧源を非反転入力端に接続した第2の増幅器と、この第2の増幅器の出力端と上記第1の増幅器の非反転入力端との間に接続した時定数回路とを備えて、上記感圧センサに加えられる圧力に応じた検出信号を上記第1の増幅器の出力端より得る構成とした。
【0008】
【作用】かかる構成によれば、感圧センサに圧力が加えられない間、第1の増幅器の出力電圧は感圧センサの抵抗値の大きさに関係なく基準電圧に等しい。感圧センサに圧力が加えられた場合には、感圧センサの抵抗値が急激に変化即ち減少し、第1の増幅器の増幅率が急激に減少する。この時点では、第1の増幅器は、非反転入力端の電圧がコンデンサによって一定に保持されると見なされるので、出力電圧が感圧センサの抵抗変化に対応して下降する。このように、感圧センサに圧力が加えられと、第1の増幅器の出力電圧が基準値から変化するので、その電圧変化を圧力検出信号とすることができる。
【0009】また、感圧センサの加圧時に、その抵抗値が短時間のうちに変化しても、時定数回路の遅延作用により、第1の増幅器は、非反転入力端の電圧がまだそれまでの定常値に維持され、従って反転入力端の電圧も同一の定常値に維持されるように出力電圧が変化するので、反転入力端に接続された接地抵抗には定電流が流れ、出力端と反転入力端との間に接続された感圧センサにも定電流が流れる。これにより、圧力検出時に感圧センサの抵抗値は定電流の下で安定に変化して、出力電圧の振れを大きくさせる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の圧力検出回路の一実施例を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の圧力検出回路の一実施例の構成を示す回路図である。図2は、この実施例による圧力検出動作を説明するための電圧波形図である。
【0011】図1において、第1の増幅器1は、反転入力端と出力端との間に、加圧力Pに応じて抵抗値Rsが変化する感圧センサ2が接続され、この反転入力端が接地抵抗3を介して接地される。この第1の増幅器1の出力端は、本発明による圧力検出回路の出力端子5と、第2の増幅器6の反転入力端に接続されている。この第2の増幅器6の非反転入力端には、一定の基準電圧Erefを発生する基準電圧源7が接続されている。
【0012】第2の増幅器6の出力端は、時定数回路8を介して第1の増幅器1の非反転入力端に接続されている。この時定数回路8は、第2の増幅器6の出力端と第1の増幅器1の非反転入力端との間に接続された抵抗9と、第1の増幅器1の非反転入力端に接続された接地コンデンサ10とからなる。
【0013】第1の増幅器1において、感圧センサ2の抵抗値をRs、接地抵抗3の抵抗値をRi、非反転入力端に入力される電圧をEiとすると、出力端の出力電圧Eoは、次の式で表される。
Eo=Ei×〔(Rs+Ri)/Ri〕 ………………………(2)
【0014】一方、第2の増幅器6は、感圧センサ2の抵抗値を減少させて、反転入力端に印加される電圧を基準電圧Erefより強制的に上昇させた場合に、出力端の電圧が定常値から下降して、抵抗9を経由してコンデンサ10を放電させる。第1の増幅器1は、非反転入力端の平衡電圧が下降することにより、出力端の出力電圧Eoを下降させ、最終的に出力電圧をErefに収束させる。このことは、定常状態では、感圧センサ2の加圧或は未加圧時の抵抗値がどのような値であっても、第1の増幅器1の出力電圧Eoが基準電圧Erefに等しくなるように、第2の増幅器6の出力電圧が自動的に調整され、従って所定時間遅れて第1の増幅器1の入力電圧も自動的に調整されることを意味している。
【0015】また、第2の増幅器6は、非反転入力端に基準電圧源7から一定の基準電圧Erefが供給されているので、定常状態で、反転入力端に印加される第1の増幅器1の出力電圧Eoが基準電圧Erefに等しい値になる。そうすると、定常状態では、第1の増幅器1の非反転入力端に得られる電圧Eiは、 Ei=Eref×Ri/(Rs+Ri) ………………………(3)
となる。
【0016】次に、図2につき本実施例における圧力検出動作を説明する。図2において、時刻t1 に感圧センサ2に圧力が加え始められ、それによって感圧センサ2の抵抗値Rsが減少する方向に急激に変化した場合には、第1の増幅器1においては、非反転入力端の入力電圧Eiが時定数回路8の作用によりそれまでの定常値に保持されているので、時刻t1 以前まで定常値Erefに保たれていた出力電圧Eoが、感圧センサ2に加えられる圧力の増大即ち感圧センサ2の抵抗値Rsの減少につれて低下し始める。
【0017】第1の増幅器1の出力電圧Eoが低下すると、第2の増幅器6においては、反転入力端の電圧Eoが非反転入力端の基準電圧Erefより低くなるので、出力端からの電圧が高くなる。これにより、第1の増幅器1の非反転入力端の入力電圧Eiは、時定数回路8の時定数τに応じた速度で緩やかに上昇する。ここで、コンデンサ10の容量値をC、抵抗9の抵抗値をRとすると、時定数τの値はC・Rである。
【0018】こうして、時定数回路8におけるコンデンサ10の電圧上昇、つまり第1の増幅器1の入力電圧Eiの上昇が感圧センサ2の抵抗値Rsの飽和状態(加圧力の飽和状態)に追い付くと(図2において時刻t3)、第1の増幅器1は、出力電圧Eoが一転して上昇し始め、やがて基準電圧Erefと等しい定常値まで戻る。
【0019】もっとも、本圧力検出回路を自動車のパワーウインドのような自動開閉装置に適用した場合は、出力電圧Eoが設定値Esまで下がった時点(図2において時刻t2)で、所定の制御回路により、モータ駆動がいったん停止され、次いで移動体を開動させるモータ駆動が行われることにより、異物の挟み込み、つまり感圧センサ2に対する加圧は比較的早めに解除されるので、出力電圧Eoは図2の点線Aで示すような時間特性となる。
【0020】このように、本実施例の圧力検出回路においては、感圧センサ2の抵抗値Rsの大きさに関係なく、即ち抵抗値Rsにバラツキがあっても、或は周囲温度によりまたは経時的に抵抗値Rsの大きさが変化しても、感圧センサ2に圧力が加わらない定常状態では、第1の増幅器1の出力電圧Eoが基準電圧Erefに等しい値に保持される。これに対して、異物の挟み込みなどによって感圧センサ2に圧力が加えられると、出力電圧Eoが基準電圧Erefから変化し、この電圧変化から圧力を検出することができる。従って、感圧センサ2の抵抗値Rsに製造上のバラツキや温度変化または経時変化が生じても、その影響を受けることのない一定な圧力検出信号が得られ、ひいては、信頼性の高い異物挟み込み検出が行われる。
【0021】更に、本実施例の圧力検出回路においては、感圧センサ2を第1の増幅器1の反転入力端及び出力端間に接続しているので、感圧センサ2を定電流で動作させることができる。即ち、加圧によって感圧センサ2の抵抗値Rsが短期間に減少しても、時定数回路8の遅延作用により第1の増幅器1の入力電圧Eiは、まだそれまでの値[Ei]に保たれているので、イマジナリショートの関係から反転入力端の電圧もその値[Ei]に保たれている。従って、接地抵抗3には、Ii=[Ei]/Ri ………………………(4)
で表される定電流Iiが流れる。そうすると、増幅器1の入力インピーダンスが十分大きいため感圧センサ2を流れる電流Isは接地抵抗3を流れる電流Iiとほぼ等しいから、電流Isも上記(4)式の電流値と等しい定電流値で流れ続ける。
【0022】このように、本実施例の圧力検出回路では、圧力検出時に、感圧センサ2が定電流Isの下で動作するので、実際の抵抗値変化に応じた精度の高い圧力検出信号が得られる。なお、本実施例の圧力検出回路は、不平衡型を示したが、図1に示す回路を2個組み合わせて平衡型を構成してもよい。この場合、接地抵抗3、基準電圧源7及びコンデンサ10は、不平衡型の場合の接地端がもう1つの組の第1の増幅器の反転入力端、第2の増幅器の非反転入力端及び第1の増幅器の非反転入力端に各々接続される。また、2組の第1の増幅器の出力端からは、外来ノイズに強い平衡型の出力電圧が得られる。
【0023】
【発明の効果】本発明の圧力検出回路は、以上説明したように構成されているので、感圧センサの抵抗値に製造上のバラツキや温度変化または経時変化が生じても、その影響を受けることのない安定な圧力検出信号を得ることができる。また、感圧センサの抵抗値が変化してもそこに流れる電流を変動させないようにしたので、正確な圧力検出信号が得られる。従って、異物挟み込みの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧力検出回路の一実施例の構成を示す回路図である。
【図2】図1に示す回路の圧力検出動作を示す信号波形図である。
【図3】定電圧の下で感圧センサに流れる電流と感圧センサの抵抗値との電流−抵抗値特性を示す図である。
【符号の説明】
1 第1の増幅器
2 感圧センサ
3 接地抵抗
6 第2の増幅器
7 基準電圧源
8 時定数回路
9 抵抗
10 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】加圧力に応じて抵抗値が変化する感圧センサを反転入力端と出力端との間に接続し、抵抗を上記反転入力端に接続した第1の増幅器と、この第1の増幅器の出力端を反転入力端に接続し、基準電圧源を非反転入力端に接続した第2の増幅器と、この第2の増幅器の出力端と上記第1の増幅器の非反転入力端との間に接続した時定数回路とを備えて、上記感圧センサに加えられる圧力に応じた検出信号を上記第1の増幅器の出力端より得るようにしたことを特徴とする圧力検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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