説明

圧力検出素子

【課題】従来の可撓性圧力検出素子では、特に低温で可撓性感圧体が硬化することで、外部から圧力が引加された場合の応答電圧が低下し、圧力検出の精度が低下するというという課題を有していた。
【解決手段】低温における応答電圧の低下が、可撓性感圧体の変形を主として撓みモードにより行うことで解決できることを見出した。具体的には、可撓性感圧体11、電極12の外側に形成された保護層13中に空洞を設ける構成を用いる。このことにより、外部からの圧力Poが引加された場合に、空洞の存在により保護層13が下部に歪みやすくなり、可撓性感圧体11が下部へ大きく撓むようになる。このため、外部から圧力Poが印加されると、圧縮モードと比較して、撓みモードの促進により歪む領域が広がることにより、特に低温での応答電圧の低下が抑制され、応答電圧の温度依存性が小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
可撓性を有する感圧体を用い外部からの圧力を検出する圧力検出素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圧力検出素子には図14に示すようなものがある。図14に断面図を示すように、可撓性感圧体1の上下に電極2が形成され、表面を保護層3が覆う層状の構造を有している。図14では、可撓性感圧体1内の残留分極の方向は示していないが、通常、電極2の間に高電圧を印加して分極を形成するために、電極2の面の垂直方向に残留分極が形成されている。
【0003】
上記の可撓性感圧体1として、合成ゴムや合成樹脂の中にチタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電セラミックス粉末を添加した複合体が用いられる。電極2は、可撓性感圧体1に、銅、アルミニウム、金等の金属箔が接着剤等により接着されるか、上記の金属が蒸着されて構成される。
【0004】
上記の圧力検出素子に外部から動的圧力が加えられると、可撓性感圧体1に加速度を伴う歪みが発生し、同時に圧電効果により電圧が発生する、この電圧を二つの電極2を介して応答電圧として測定することで動的圧力が検出される。
【0005】
また、従来知られている圧力検出素子として図15に示すようなケーブル状のものもあった(例えば、特許文献1参照)。図15のうち(a)はケーブルの長手方向の断面を、(b)は(a)のA−A線位置での断面を示している。具体的には、中心には内部電極4、その周りに可撓性感圧体1、さらにその外部に、順に外部電極5、保護層3が形成されている。図15では、可撓性感圧体1内の残留分極の方向は示していないが、通常、内部電極4と外部電極5の間に高電圧を印加して分極を形成するために、内部電極4から外部電極5へ放射状に残留分極が形成される。
【0006】
図15の可撓性感圧体1には、層状の可撓性感圧体と同様の複合体が用いられる。内部電極4は、金属等の導電体を線状とした線状導電材が用いられる。また、外部電極5は可撓性感圧体1の表面に銀系ゴム塗料などの導電塗料を塗着したものが用いられている。圧力の検知は、シート状の可撓性感圧体を用いた圧力検出素子と同様に、動的圧力の印加による加速度を伴う歪に起因して発生する応答電圧を測定することにより行われる。
【0007】
ここで、上記で使用した動的圧力と、さらに静的圧力に関して、その定義を説明する。動的圧力は、この動的圧力に対応する応力とは釣り合っていない圧力であり、結果的に動的圧力が印加された物体に加速度を生じさせる。
【0008】
これに対し、静的圧力は、この静的圧力に対応する応力と完全に釣り合っている圧力であり、結果的に静的圧力の印加された物体に加速度を生じさせない。このため、静的圧力は、上記の可撓性感圧体を利用して電圧変化を測定する従来の技術では検出されない。
【0009】
以下で用いる圧力は、特に断らない限り、可撓性感圧体を用いた圧力検出素子で検出可能な、上記の動的圧力を意味するものとする。
【特許文献1】特開昭62−230071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の圧力検出素子は、外部からの圧力により発生する応答電圧に温度特性があり、特に低温で前記電圧が低下し、圧力の検出を行う場合、低温での精度が悪くなるという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、外部からの圧力印加により発生する応答電圧の温度依存性を小さくし、検出精度の高い圧力検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の圧力検出素子は、可撓性感圧体と電極とを保護する保護層の内部に、空気のみで形成される部分がある構成としたものである。空気のみで形成され柔軟な部分を備えた保護層を有することで、可撓性感圧体は外部から圧力を印加された際に、前記の柔軟な保護層の変形のために、大きく撓む。
【0013】
このように、撓みモードの変形が増大することにより、低温で可撓性感圧体が硬化しても歪が生じる部分が大きくなることで、応答電圧が大きくなり、応答電圧の低下が抑制されるものである。
【0014】
また、本発明の圧力検出素子は、可撓性感圧体と電極とを保護する保護層の垂直方向の弾性率が、水平方向の弾性率よりも大きい構成を有するものである。
【0015】
垂直方向の弾性率が、水平方向の弾性率よりも大きいために、垂直方向から圧力が印加された場合に、圧縮モードの変形が起こり難くなり、反対に撓みモードの変形が起こり易くなる。低温では、可撓性感圧体が硬くなり圧縮モードの変形の歪が抑制されるが、撓みモードの変形による歪により、応答電圧の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧力検出素子により、温度変化の大きい環境でも圧力検出を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の発明の圧力検出素子は、残留分極を有する可撓性感圧体と、前記可撓性感圧体を挟んで構成される複数の電極と、前記可撓性感圧体と前記電極とを保護する保護層と備え前記保護層の内部に空気のみで形成される部分がある構成を有するものとした。
【0018】
空気のみで形成される部分があるために、外部から圧力が印加された場合に、加撓性感圧体が撓みやすくなるため、低温での発生電圧低下が抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能なる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、空気のみで形成される部分が気泡から構成されるようにしたものである。
【0020】
空気からなる部分が気泡の集合体として形成されることで、全体が均一になり、圧力検出素子へ外部から圧力が印加された場合に、圧力印加の方向が異なる場合でも、可撓性感圧体への圧力印加の変化が小さく、より安定な圧力検出が可能となる。
【0021】
第3の発明は、第1または第2の発明において、空気のみから形成される部分が、可撓性感圧体の上部よりも下部に多くなるようにしたものである。
【0022】
空気のみから形成される部分が、可撓性感圧体の下部に多くなることにより、外部から下部へ向かって圧力が印可された場合に、可撓性感圧体の下部への撓みが大きくなり、低温での発生電圧低下がより抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能なる。
【0023】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、保護層の下部に撓性増大層を有する構成としたものである。
【0024】
保護層の下部に撓性増大層を有することで、外部から下部へ向かって圧力が印可された場合に、可撓性感圧体の下部への撓みが大きくなり、低温での発生電圧低下がより抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能なる。
【0025】
第5の発明は、残留分極を有する可撓性感圧体と、前記可撓性感圧体を挟んで構成される複数の電極と、前記可撓性感圧体と前記電極とを保護する保護層とを備え、前記保護層の垂直方向の弾性率が、水平方向の弾性率よりも大きくしたものである。
【0026】
垂直方向の弾性率が、水平方向の弾性率よりも大きいことにより、外部から圧力が垂直方向に下部へ向かって印加された場合に、垂直方向の圧縮モードの変形が抑制され、撓みモードの変形が主となるため、低温での応答電圧低下がより抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能なる。
【0027】
第6の発明は、第5の発明において、保護層の側部の厚みが、上下部の厚みより厚くなるようにしたものである。
【0028】
保護層の側部の厚みを、上下部の厚みより厚くするという形状の変更だけで、弾性率を容易に制御でき、より簡単に圧縮モードの変形を抑制して撓みモードの変形を促進し、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能となる。
【0029】
第7の発明は、第5または第6の発明において、保護層の側部を形成する材料の弾性率が、上部、下部を形成する材料の弾性率よりも大きくしたものである。保護層の側部を形成する材料の弾性率を大きくすることにより、垂直方向の圧縮モードの変形が抑制され、撓みモードが主となるため、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能なる。また、側部に弾性率の高い材料を用いるため、必要な弾性率を得るための側部の厚みの調整が可能となり、寸法の設計自由度が高くなる効果も得られる。
【0030】
第8の発明は、第5から第7のいずれかの発明において、保護層の側部に圧縮抑制層を有するようにしたものである。
【0031】
保護層の側部に圧縮抑制層を有するようにしたことにより、より効果的に、垂直方向の圧縮モードの変形が抑制し、撓みモードの変形を主とすることができるため、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能なる。また、保護層を形成した後の、最終工程で、圧縮抑制層を形成して、圧縮モードの変形の抑制が調整可能なため、設計の自由度が高くなる効果が得られる。
【0032】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明において、保護層が、撓み幅拡大材を含むようにしたものである。
【0033】
保護層が撓み幅拡大材を含むことにより、外部から圧力が印加された場合に、撓み幅拡大材により保護層全体が引っ張られるために、撓み幅が広くなり、より撓みモードの変形が促進される。こうして、低温での応答電圧低下がより抑制され、環境温度が変化しても
精度の高い圧力検出が可能なる。
【0034】
第10の発明は、第1から第9のいずれかの発明において、保護層の上部あるいは下部に撓み幅拡大層を含むようにしたものである。
【0035】
保護層が、撓み幅拡大層を含むようにしたことで、外部から圧力が印加された場合に、可撓性感圧体の撓む領域が広くなり、低温での応答電圧の低下がより抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能なる。保護層を形成した後の、最終工程で、撓み幅拡大層を形成して、撓みモードの変形の促進の調整が可能なため、設計の自由度が高くなる効果が得られる。
【0036】
第11の発明は、第10の発明において、保護層の下部のみに撓み幅拡大層を含むようにしたものである。
【0037】
保護層の上部のみに撓み幅拡大層を含むようにしたことで、下部への撓みが大きくなり、低温での応答電圧の低下がより抑制される効果が得られる。
【0038】
第12の発明は、第1から第10のいずれかの発明において、保護層の長手方向に弾性率の極大部を有するようにしたものである。保護層の長手方向に弾性率の極大があることにより、弾性率の極大部で圧縮が抑制され、全体として撓みモードが優勢となり、低温での応答電圧低下が抑制される効果が得られる。
【0039】
第13の発明は、第12の発明において、保護層の長手方向の一部に圧縮抑制層を形成することで、弾性率の極大部を形成するようにしたものである。こうすることで、容易に弾性率の極大部を形成できる効果が得られる。
【0040】
第14の発明は、保護層の長手方向の弾性率の極大分部に検出すべき外部からの圧力を印加させて使用する方法である。弾性率の高い部分に検出すべき圧力を印加することで、圧縮モードが抑制され、その他の部分の撓みにより、撓みモードが優勢となり、低温での応答電圧低下が抑制される効果が得られる。また、検出すべき圧力が大きい場合は、センサへの塑性変形や、損傷を抑制する効果もある。
【0041】
(実施の形態1)
具体的な実施の形態の説明に入る前に、本発明に至った実験結果について図1を用いて説明する。
【0042】
図1(a)は、圧力検出素子の下部に剛体を置き、上部から圧子で圧力を加える様子を示した断面図であり、図1(b)は、圧力検出素子の下部にスポンジを置き、上部から圧子で圧力を加える様子を示した断面図である。また、図1(c)は、(a)と(b)に対応する応答電圧Vの温度依存性を定性的に示したものであり、その際の主要な変形モードを記載したものである。
【0043】
図1(a)では、圧力検出素子14は、剛体の上に置かれているために、ほとんど撓むことはなく、圧子のために、圧縮モードの変形が生じ可撓性感圧体11に歪が生じる。これに対し、図1(b)では、圧力検出素子14の下には、スポンジが置かれているため、可撓性感圧体11はスポンジ中に大きく沈み込み、中心部に生じる圧縮モードの歪に加えて、より広い範囲に撓み変形による歪が生じる。
【0044】
図1(a)に対応する応答電圧Vは、図1(c)の圧縮モードで示したように低温で大きく低下する。これは、低温で可撓性感圧体11が硬くなり、圧縮モードの変形による歪
が可撓性感圧体11に生じ難くなるためと考えられる。これに対し、発明者らは、図1(b)の場合には、図1(c)の圧縮+撓みモードに示したように応答電圧Vの低下が抑制されることを見出した。これは、低温で可撓性感圧体11が硬くなると、圧縮モードの変形の歪は抑制されるものの、逆に撓みモードの変形の歪は可撓性感圧体11が硬くなることで、歪む領域が増加して応答電圧が高くなるためと考えられる。
【0045】
従って、圧縮モードの変形を抑制して、撓みモードの変形を促進することで、低温における可撓性感圧体11の硬化による応答電圧の低下を抑制することができる。これが、本発明の主旨である。
【0046】
以下では、上記の主旨に従って、本発明の具体的な構成を導いて行く。(1)撓みモードの変形を促進する構成、(2)圧縮モードの変形を抑制する構成とに分けて説明するが、本実施の形態では、(1)撓みモードの変形を促進する構成に関して説明を行う。
【0047】
図2は、可撓性感圧体11と電極12の断面により、撓みモードの変形の促進を説明した図である。図2(a)では、撓みの量を、撓み幅L1と、下方への撓み深さL2とで示してある。撓みモードの変形の促進のパターンは二通り考えられる。一つは図2(a)から(b)への変化で表されるように、撓み幅L1がL1+αに広がるパターンである。もう一つは、図2(a)から(c)への変化で表されるように、下方への撓み深さL2がL2+βへ増加するパターンである。
【0048】
本実施の形態では、上記二つのパターンのうちの後者のパターンを実現する構成に関して、図3から図7を用いて説明を行う。
【0049】
まず、図3において本実施の形態の構成の例を説明する。図3は、本実施の形態の層状構造を有した線状の圧力検出素子14の断面図であり、図3(a)は長手方向の断面、図3(b)は図3(a)のB−B線位置での断面を表している。
【0050】
保護層13には空気のみで形成される部分として空洞が形成されている。空洞が形成されているために、保護層13は変形し易くなり、外部からの圧力Poが印加された場合に、図2の(c)に示したように、下方(外部からの圧力Poの印加方向とは逆の向き)へ撓みL2が増加し、撓みモードの変形が促進される。こうして、低温で可撓性感圧体11が硬化した場合でも、撓みモードの変形の割合が増加するために、応答電圧の低下が抑制される効果が得られる。
【0051】
このような圧力検出素子は、使用する環境温度が変化しても、高い精度で圧力の検出が可能であるため、特に屋外あるいは屋外に近い環境で使用されるアプリケーションに好適に用いられる。例えば、特にセキュリティ用途に、バルコニーやフェンス等の家屋の外部に設置して、侵入者を検知する用途に適している。また、自動車のドアへの人やものの挟みこみ検知や、自動車のドアハンドルに設置して、ドアハンドルに触れるだけでドアの施錠を解除するために、ドアハンドルへの接触を検知する用途等に適している。
【0052】
尚、以下で本実施の形態の別の構成に関して説明するが、同じ構成については同じ作用効果を奏するものであり同じ符号を付して説明を省略した。従って、異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図4は、本実施の形態の別の可撓性感圧体を説明したものであり、層状構造を有する線状の圧力検出素子14の断面図を表している。具体的には、図4(a)が長手方向の断面、図4(b)が図4(a)のC−C線位置での断面を表している。保護層13には空気のみから形成される部分として気泡が形成されている。気泡が形成されているために、図3
の場合と同様に、保護層13の変形が容易となり、外部からの圧力Poが印加された場合に、図2の(c)のように、下部(外部からの圧力Poの印加方向とは逆側の部分)へ撓みL2が増加し、撓みモードの変形が促進され、低温での応答電圧の低下が抑制される効果が得られる。尚、本明細書中の下部、上部は、外部からの圧力が加わる方向を上部、反対方向を下部と定義することとする。
【0054】
空洞の代わりに多数の微細な気泡が形成されることにより、可撓性感圧体11に生じる撓みも、より均一となり、外部からの圧力Poが印加される角度や場所のずれに対しても、より安定な応答電圧が得られる効果が得られる。
【0055】
気泡を含む保護層13としては、熱可塑性エラストマー、加硫ゴム等の発泡体を好適に用いることができる。発泡体の気泡は連通である方が弾性率が低く、外部からの圧力Poに対して変形し易くなるため好ましい。
【0056】
図5は、本実施の形態の別の構成の可撓性感圧体を説明したものであり、層状構造を有する線状の圧力検出素子14の断面図を表している。具体的には、図5(a)が長手方向の断面、図5(b)が図5(a)のD−D線位置での断面を表している。図4と同様に保護層13には空気のみで形成される部分として気泡が形成されているが、異なるのは保護層13の下部(外部からの圧力Poが印加される側とは反対側の部分)にのみ気泡が形成されていることである。
【0057】
下部にのみ気泡が形成されていることにより、図2の(b)に示した撓み幅L1を広げることができる。これは、保護層13全体に気泡が形成されている場合は、保護層13が軟らかいために、外部からの圧力Poが印加された上部の保護層13が選択的に歪み、それに接する加撓性感圧体11の特定の部分に選択的に力が加わるが、上部の保護層13に気泡がなく比較的硬くなる場合には、より広い部分の保護層13が歪み、それに対応する広い領域の可撓性感圧体11に力が加わって広い幅で撓むようになるためである。
【0058】
図6は、本実施の形態の別の可撓性感圧体の構成を説明したものであり、ケーブル状の圧力検出素子14の断面図を表している。具体的には、図6(a)が長手方向の断面、図6(b)が図6(a)のE−E線位置での断面を表している。図4と同様に保護層13には空気のみで形成される部分として気泡が形成されているが、異なるのは電極が、可撓性感圧体11の中心に位置する内部電極15と、可撓性感圧体11の周設された外部電極16として形成された、ケーブル状の構造を有している点である。
【0059】
ケーブル状の構成を有することで、連続的な押し出し工程に製造が可能であるため、より製造が容易となる効果が得られる。また、ケーブル状で中心対称な構造を有しているため、残留分極は中心から放射状に形成される。このため、どの方向からの圧力印加に対しても等方的な検出が可能である。従って、圧力応答手段が配設時に回転したり捻れたりした場合でも、応答電圧に変化が生じ難い。この結果、配設の自由度が高くなり、安定した圧力印加の有無の判定、および安定した場所座標判定が可能となる効果が得られる。
【0060】
図7は、本実施の形態の別の可撓性感圧体を説明したものであり、ケーブル状の圧力検出素子14の断面図を表している。具体的には、図7(a)が長手方向の断面、図7(b)が図7(a)のF−F線位置での断面を表している。図6と同様にケーブル状の構造を有している。保護層13中の下部(外部からの圧力Poが印加される側とは反対側の部分)撓性増大層18が形成されている。
【0061】
撓性増大層18は、保護層13と同様に熱可塑性エラストマや架橋ゴム等の中でも、より弾性率の小さい材質から形成されており、外部からの圧力Poが引加された場合に、加
撓性感圧体11を大きく下部へ撓ませる効果を有する。多くの場合、柔軟性を上げるために、空洞を有する構造や発泡体が、より好適に用いられる。また、保護層13が発泡体であるとき、撓性増大層17としては、より低密度の発泡体が好適に用いられる。
【0062】
一定の保護層13を形成した後に、最終工程で撓性増大層17を形成することで、撓みモードの変形の程度が利用目的に応じて調整可能となり、設計の自由度も高くなるため好ましい。
【0063】
本実施の形態の圧力検出素子は、それぞれ層状構造を有する形態、ケーブル状の構造を有する形態を例に説明したが、一方の形態で効果があるものは他方の形態でも効果があり、特に図示した形態に限定されるものではない。
【0064】
但し、以下の実施の形態も含めて多くは、ケーブル状の圧力検出素子に関して記載している。これは、既に述べたように、下記の効果が得られるためである。
【0065】
ケーブル状であれば、圧力検出素子を連続的な押し出し工程に製造が可能であるため、より製造が容易となる効果が得られる。また、同軸のケーブル状としているため、芯電極と可撓性感圧体の周囲に外電極を構成して中心対称な構造を有しており、残留分極は中心から放射状に形成される。このため、どの方向からの圧力印加に対しても等方的な検出が可能である。従って、圧力応答手段が配設時に回転したり捻れたりした場合でも、応答電圧に変化が生じ難い。この結果、配設の自由度が高くなり、安定した圧力検出が可能となる効果が得られる。
【0066】
以下で、本実施の形態の可撓性感圧体で用いられる材料に関して説明する。
【0067】
可撓性感圧体11は、合成ゴムや合成樹脂の中に圧電セラミックス粉末が分散されて構成される。合成ゴムや合成樹脂としては、塩化ビニル、塩素化ポリエチレン等の熱可塑性エラストマー、EPDM等の加硫ゴム等が用いられる。また、圧電セラミックスとしては、チタン酸鉛、ジルコン鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム−チタン酸バリウム、ニオブ酸アルカリ等のペロブスカイト構造を有する化合物、ビスマス層状構造を有する化合物、タングステンブロンズ構造を有する化合物等圧電性を発現するセラミック材料が用いられる。
【0068】
保護層13は、可撓性感圧体11に用いられる合成ゴムや合成樹脂が用いられ、熱可塑性エラストマー、加硫ゴムの少なくとも一種が用いられる。また、これらの材料を発泡させたものが、撓み深さを大きくするために用いられる。
【0069】
撓性増大層17は、既に述べたように、保護層13、可撓性感圧体11と同じ材料で弾性率の低い材料特に、同じ材料の発泡体や、同じ材料で空洞を有した構造のものが好適に用いられる。
【0070】
電極12、外部電極16としては、C,Pt、Au、Pd、Ag、Cu、Al、Ni、ステンレス等の線材あるいは線材を圧延して平たいテープ状にしたもの等が用いられる。あるいは前記テープ状の高分子フィルムに前記金属線材あるいは線材をテープ状にしたものをラミネートしたものを用いれば、より可撓性の高い外部電極が得られる。また、金属細線を単独で編んで可撓性感圧体11を覆った電極も使用することができる。あるいは、上記金属を蒸着、スパッタ等により薄膜として形成したものも用いられる。
【0071】
内部電極15としては、外部電極16で用いられる単数、複数の金属細線、複数のポリエステル等の繊維に前記金属線を巻いたもの等が用いられる。
【0072】
また、可撓性感圧体11、保護層13、電極12、内部電極15、外部電極16に関しては、以下の実施の形態でも同様のものが適用可能である。
【0073】
次に、特に上記のケーブル状の圧力応答手段の製造方法に関して、一般的な例を説明する。
【0074】
まず、圧電セラミックス粉末と、合成ゴムや合成樹脂としての熱可塑性エラストマーとを、混練して複合体とする。次に、押し出し機を用いて、この複合体を内部電極15と共に押し出すことにより、内部電極15を中心にして、周囲に上記の複合体よりなる可撓性感圧体11が形成されたケーブルを得る。さらにケーブルの周囲を覆う分極用電極を用意し、この電極とケーブル中の内部電極15との間に電圧を印加することにより、内部電極から放射状に電界を形成し、対応する向きのセラミック圧電体中に分極を形成する。さらに、分極用電極を取り外した後、上記ケーブルの周りにテープ状の金属線材、テープ状金属、あるいはテープ状金属とテープ状高分子とがラミネートされたテープを巻き付けることにより、外部電極12を形成する。次に、この外部電極16が形成されたケーブルを中心にして、押し出し機により、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等を押し出し、ケーブルの保護層13を形成することで圧力検出素子14が得られる。また、分極は、外部電極16が形成された後に、外部電極16と内部電極15との間に電圧を印加することでも可能である。
【0075】
また、本発明の圧力検出素子の可撓性感圧体中の圧電セラミックスとしては、廃棄時の処理を考えると、鉛を含まないものが好ましい。例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム、チタン酸ビスマス・ナトリウム−チタン酸バリウム、ニオブ酸アルカリ等が好適に用いられる。さらに、セキュリティ用途等屋外で用いられる場合や、トイレ、風呂、台所等水を使用する環境では、上記圧電セラミックス粉体が撥水処理されて、水分の侵入が抑制されることがさらに好ましい。これは、上記のアルカリ金属を含む、圧電セラミックスは、水分を吸収し易く、そのことにより性能も変動し易くなるためである。
【0076】
尚、本実施の形態で記載した材料、工法は以下の実施の形態でも好適に適用できる。
【0077】
(実施の形態2)
次に第2の実施の形態について説明する。
【0078】
本実施の形態では実施の形態1と同じ構成については同じ作用効果を奏するものであり同じ符号を付して説明を省略した。従って、異なる部分についてのみ説明する。
【0079】
既に説明したように、圧縮モードの変形を抑制して、撓みモードの変形を促進することで、低温における可撓性感圧体11の硬化による応答電圧の低下を抑制することが、本発明の骨子である。
【0080】
実施の形態1では、主として撓みモードの変形を促進する構成(図2の(c)に対応する撓み深さの増大する構成)に関して説明したが、本実施の形態では、主として圧縮モードの変形を抑制することで、撓みモードの変形を主とする構成に関して図8、9、10を用いて説明する。
【0081】
圧縮モードの変形の抑制のための具体的な構成としては、保護層の弾性率が、垂直方向(外部からの力Poが加わる方向)の方が、水平方向(外部からの力Poが加わる方向と垂直な方向)よりも大きくなる構成がある。垂直方向での保護層の弾性率が大きくなるこ
とで、垂直方向に対応する圧縮モードの変形が抑制される。尚、以下の説明で用いる垂直、水平方向は、外部からの力Poが加わる方向に平行な方向を垂直方向、直行する方向を水平方向として定義して用いることとする。
【0082】
本実施の形態では、この構成に関して説明する。また、ここで定義される弾性率については、以下で説明を行う。
【0083】
まず、図8を用いて、上記の弾性率を有する構成の一例について説明する。
【0084】
図8はケーブル状の圧力検出素子14の断面図であり、図8(a)は長手方向の断面、

図8(b)は図8(a)のG−G線位置での断面を表している。この構成の特徴は、水平方向の保護層13の厚みが、垂直方向よりも厚い点である。このことにより、垂直方向の保護層13の弾性率が、水平方向の弾性率よりも大きくなり、垂直方向の圧縮が抑制される。このとき、水平方向の弾性率は小さいため、水平方向のケーブル長手方向の変形に対応する撓みモードの変形は抑制されない。こうして、圧縮モードの変形が抑制され、撓みモードの変形が主となる構成が実現される。
【0085】
ここで用いる保護層の弾性率に関して図9を用いて説明する。
【0086】
図9は、図8(b)に対応する圧力検出素子14から、内部電極15、外部電極16、可撓性感圧体11を除き、保護層13のみとしたものに、外部から弾性率測定のための力FSを加えた場合の歪みを表したものである。図9(a)では、垂直方向の歪みを、図9(b)では水平方向の歪みを表している。
【0087】
具体的には、垂直方向に関しては、図9(a)に示したように、外部からの力FSに対して垂直方向の歪みをxvとすると、垂直方向の弾性率はF/xvで定義される。同様に、水平方向の弾性率は、垂直方向の歪みをxhとして、F/xhで定義される。
【0088】
図9で定義される保護層の弾性率を変えるには、保護層の厚みを変える以外にも、保護層の構成材料の弾性率をかえてもよい。この場合に関して、図10を用いて説明を行う。
【0089】
図10はケーブル状の圧力検出素子14の断面図であり、図10(a)は長手方向の断面、 図10(b)は図10(a)のH−H線位置での断面を表している。図8と異なるのは保護層13が保護層13aと保護層13bの二つの部分から構成されており、その材料として弾性率が、保護層13bの方が保護層13aよりも大きい点である。
【0090】
保護層13bの材料としての弾性率が、保護層13aよりも大きいために、図9で定義される弾性率でも、垂直方向の弾性率が水平方向の弾性率よりも大きくなる。こうして、圧縮モードの変形が抑制され、撓みモードの変形が増強される構成が実現される。
【0091】
尚、この弾性率は材料としての弾性率であり、図9で説明したのは、形状も含めた保護層としての弾性率である。
【0092】
図9で定義される保護層の弾性率を変えるには、厚みを変える以外にも、保護層の一部に圧縮モードの変形を抑制する層を設けることもできる。この場合に関して、図11を用いて説明を行う。
【0093】
図11はケーブル状の圧力検出素子14の断面図であり、図11(a)は長手方向の断面、図11(b)は図11(a)のI−I線位置での断面を表している。図8と異なるの
は、保護層13の側面に、圧縮抑制層18が設けられている点である。
【0094】
尚、本実施の形態の圧縮抑制層18を構成する材料は、可撓性感圧体11に用いられているものよりも材料としての弾性率の高いものが用いられる。具体的には、熱可塑性エラスマや架橋ゴム等の中で、可撓性感圧体11に用いられているものよりも材料としての弾性率が高いものが好適に用いられる他、上下方向に撓む弾性を有していれば一般的な樹脂や、金属も用いることができる。
【0095】
このような材料を用いて構成することで、保護層13と圧縮抑制層18とを併せた、図9で定義される弾性率が、垂直方向において水平方向よりも高く調整することが可能となる。
【0096】
この結果、圧縮モードの変形が抑制され、撓みモードの変形が増強される構成が実現される。
【0097】
また、この構成によれば、一定の保護層13を形成した後に、最終工程で圧縮抑制層18を形成することで、撓みモードの変形の程度を利用目的に応じて調整することができるため、設計の自由度が高くなる効果が得られる。
【0098】
また、圧縮保護層18の材料としての弾性率をより高くすることで、圧力検出素子の厚みを調整することも可能であり、素子のサイズに関して自由度が広がり、配設が容易となる効果も得られる。
【0099】
(実施の形態3)
本実施の形態では実施の形態1と同じ構成については同じ作用効果を奏するものであり、同じ符号を付して説明を省略した。従って、異なる部分についてのみ説明する。
【0100】
既に説明したように、本発明は、(1)撓みモードの変形を促進する構成、(2)圧縮モードの変形を抑制する構成とからなり、圧縮モードの変形を抑制して、撓みモードを促進することで、低温における可撓性感圧体11の硬化による応答電圧の低下を抑制し、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出を可能にすることが、本発明の骨子である。
【0101】
既に、実施の形態1で、主として(1)撓みモードの変形を促進する構成(図2の(c)に対応する撓み深さの増大する構成)に関して述べ、実施の形態2では、主として(2)圧縮モードの変形を抑制する構成に関して説明した。
【0102】
本実施の形態では、(1)撓みモードの変形を促進する構成のうち、図2の(b)に対応する撓み幅を増加させるために、撓み幅拡大材、撓み幅拡大層を用いた構成に関して図12、13、14を用いて説明する。
【0103】
まず図12を用いて、本実施の形態の一つの構成を説明する。図12は、ケーブル状の圧力検出素子14の断面図であり、図12(a)は長手方向の断面、図12(b)は図12(a)のJ−J線位置での断面を表している。図6と同様にケーブル状の構造を有しているが、図6のような気泡は保護層13中には形成されていない。さらに最も重要な違いは、保護層13中に撓み幅拡大材19が形成されている点である。
【0104】
保護層13中に固定された撓み幅拡大材19が形成されたことで、外部からの圧力Poが印加された場合に、保護層13全体が、撓み幅拡大材19に引っ張られて撓もうとするようになり、図2(b)に示したように撓み幅が増大する効果が得られる。
【0105】
こうして、撓みモードの変形が促進されることで、低温で可撓性感圧体11が硬化した場合でも、応答電圧の低下が抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能となる効果が得られる。
【0106】
次に、図13を用いて、本実施の形態の異なる構成を説明する。図13は、保護層13中に形成される撓み幅拡大材19の構造を示したものである。
【0107】
既に説明したように、撓み幅拡大材19は、保護層13を引っ張って保護層13の広い範囲を撓ませるものであるため、保護層13の中で滑ることなく、しっかりと固定されていることが重要である。
【0108】
そのために、図13に示したように、撓み幅拡大材19は、凹凸の大きい構造を有することが好ましい。具体的には、図13(a)のように、多くの凸部有しているもの、図13(b)のように多くの凹部を有しているものが好ましい。また、図13(c)のように主軸に線状物を巻き付けて線状凸部を形成したもの、また図13(d)に示したように、複数の線を縒って縒り線構造とし、表面に多数の縞状の凸部を形成する構造が好ましい。
【0109】
また、材質は線材として撓む性質を有していれば特に限定されず、金属、樹脂、カーボン等で形成することが可能である。
【0110】
特に金属で形成した多数の撓み幅拡大材19を保護層13中に形成すれば、シールド性を増強し、外部の電界によるノイズにも強くなる効果が得られる。また、金属細線で編まれた面状の撓み幅拡大材を保護層中に形成しても優れた撓み幅拡大の効果とシールド効果とが得られる。
【0111】
さらに、図14を用いて、本実施の形態の異なる構成に関して説明する。図14は、ケーブル状の圧力検出素子14の断面図であり、図14(a)は長手方向の断面、図14(b)は図14(a)のK−K線位置での断面を表している。図12と同様にケーブル状の構造を有しているが、図12と異なるのは撓み幅拡大材19がなく、その代わりに、上部(外部からの圧力Poが引加される側の部分)の保護層13の上に撓み幅拡大層20が形成されている点である。
【0112】
撓み幅拡大層20が形成されることで、外部からの圧力Poが引加された場合に、保護層13全体が、撓み幅拡大層20に引っ張られて撓もうとするようになり、図2(b)に示したように撓み幅が増大する効果が得られる。
【0113】
こうして、撓みモードの変形が促進されることで、低温で可撓性感圧体11が硬化した場合でも、応答電圧の低下が抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能となる効果が得られる。
【0114】
撓み幅拡大層20は、撓み幅拡大材19と同じように、滑りなく保護層13に固定されていることが好ましい。固定は接着剤で接着されることによることもできる。この際、保護層13と撓み幅拡大層20の接着側の界面は、図12の撓み幅拡大材19の表面のように凹凸を有して、それらが相互に侵入している構造が好ましい。また、固定は、保護層13と撓み幅拡大層20とがともに熱可塑性樹脂で形成されている場合は、融着により行うこともできる。
【0115】
また、撓み幅拡大層20に用いられる材料としては、保護層13よりも伸び縮みし難く、ケーブル長手方向の弾性率が高い材料が用いられる。薄くて良く撓むが、伸び縮みはし難い樹脂板、あるいは金属板等が特に好適に用いられる。
【0116】
(実施の形態4)
本実施の形態では実施の形態1と同じ構成については同じ作用効果を奏するものであり、同じ符号を付して説明を省略した。従って、異なる部分についてのみ説明する。
【0117】
既に説明したように、本発明は、(1)撓みモードの変形を促進する構成、(2)圧縮モードの変形を抑制する構成とからなり、圧縮モードの変形を抑制して、撓みモードを促進することで、低温における可撓性感圧体11の硬化による応答電圧の低下を抑制し、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出を可能にすることが、本発明の骨子である。
【0118】
本実施の形態は、実施の形態2で説明した(2)圧縮モードの変形を抑制する構成において、保護層の弾性率が長手方向に極大部を有するものであり、この構成に関して図15、16を用いて説明する。
【0119】
まず図15を用いて、本実施の形態の一つの構成を説明する。図15は、ケーブル状の圧力検出素子14の断面図であり、図15(a)は長手方向の断面、図15(b)は図15(a)のL−L線位置での断面を表している。最も重要な特徴は、長手方向の保護層の一部に圧縮抑制層18が形成されていることである。
【0120】
保護層の一部に圧縮抑制層18が形成されることで、図9で定義した垂直方向、水平方向の弾性率が増大するが、この弾性率の上昇は、圧縮抑制層18が形成された長手方向の領域に限られる。この結果、圧縮抑制層18の形成された部分の変形が選択的に抑制されることになる。
【0121】
次に、このような圧力検出素子の使用方法と作用を図16により説明する。図16は、図15に示したケーブル状の圧力検出素子14を、弾性体の上に固定された状態を示している。
【0122】
使用方法としての特徴は、外部からの圧力Poが、圧縮抑制層18上に印加されるようにして用いる点である。既に述べたように、圧縮抑制層18が形成された部分の弾性率が増大しているため、この部分の変形は抑制される。さらに、圧縮モードの大半が、外部からの圧力Poが印加される部分で起こるため、圧縮抑制層18の形成により、圧縮モードが効果的に抑制され、撓みモードが主たる変形モードとなる。具体的には、図16に示したように、保護層18が形成された部分に対応する可撓性感圧体15+内部電極15の厚みdは、検出すべき外部からの圧力Poの印加により殆ど変化することなく、保護層18が形成されていない部分が、下方へ大きく撓むことになる。
【0123】
このように、圧縮モードの変形が抑制され、撓みモードの変形が促進されることで、低温で可撓性感圧体11が硬化した場合でも、応答電圧の低下が抑制され、環境温度が変化しても精度の高い圧力検出が可能となる効果が得られる。
【0124】
また、外部から印加される圧力Poが大きい場合には、圧縮抑制層18が、その内部の変形を抑制するために、圧力検出素子の塑性変形や、損傷が抑制される効果もある。
【0125】
また、ここで用いられる圧縮抑制層18の材質としては、実施の形態2で述べたものと同じものが用いられる。具体的には、保護層13まで形成した後に、金属の筒や、樹脂性の熱収縮チューブ等を保護層の上にかぶせて圧縮抑制層18とすることが簡便で好ましい。
【0126】
また、図15では、圧縮抑制層18を保護層13の全周に形成したが、図11のように
側面にのみ形成することもできる。この場合、圧縮抑制層18部での撓みモードによる変形が進むため好ましい。
【0127】
図16で用いられる弾性体としては、保護層13よりも弾性率の小さいものであれば使用できるが、樹脂発泡体等が、弾性率が小さく、撓みモードの変形を促進するため、好適に用いられる。
【0128】
また、図15、図16では、ケーブル状の圧力検出素子を例に説明したが、シート状の圧力検出素子においても同様の効果が得られる。
【0129】
また、図15、図16では、圧縮抑制層18は一箇所に形成されているが、長手方向の数箇所に形成されることもある。その場合、撓みモードの変形が起こり易くなるように、各圧縮抑制層間には、長手方向に、ある程度の距離が確保されていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上のように本発明の圧力検出素子は、使用する環境温度が変化しても、高い精度で圧力の検出が可能であるため、特に屋外あるいは屋外に近い環境で使用されるアプリケーションに好適に用いられる。例えば、特にセキュリティ用途に、バルコニーやフェンス等の家屋の外部に設置して、侵入者を検知する用途に適している。また、自動車や建物のドアへの人やものの挟みこみ検知や、自動車のドアハンドルに設置して、ドアハンドルに触れるだけでドアの施錠を解除するための、ドアハンドルへの接触を検知する用途等に適している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】(a)圧力検出素子を剛体状に置き、上部から圧子により圧力を加えた場合の断面図(b)同素子をスポンジ上に置き、上部から圧子により圧力を加えた場合の断面図(c)圧力検出素子の(a)(b)に対応する応答電圧の温度特性を定性的に表した図
【図2】(a)圧力検出素子の可撓性感圧体と電極の撓みモードの変形の様子を表した断面図(b)可撓性感圧体の撓み幅が広がる撓みモードの変形の促進を表した断面図(c)可撓性感圧体の撓み深さが深くなる撓みモードの変形促進を表した断面図
【図3】(a)本発明の実施の形態1の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のB−B線位置の断面図
【図4】(a)本発明の実施の形態1の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のC−C線位置の断面図
【図5】(a)本発明の実施の形態1の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のD−D線位置の断面図
【図6】(a)本発明の実施の形態1の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のE−E線位置の断面図
【図7】(a)本発明の実施の形態1の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のF−F線位置の断面図
【図8】(a)本発明の実施の形態2の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のG−G線位置の断面図
【図9】(a)本発明の実施の形態2の圧力検出素子の保護層の垂直方向の弾性率を説明した図(b)同圧力検出素子の水平方向の弾性率を説明した図
【図10】(a)本発明の実施の形態2の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のH−H線位置の断面図
【図11】(a)本発明の実施の形態2の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のI−I線位置の断面図
【図12】(a)本発明の実施の形態3の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のJ−J線位置の断面図
【図13】(a)本発明の実施の形態3の撓み幅拡大材について、多くの凸部を有する構造を表した模式図(b)同、多くの凹部を有する構造を表した模式図(c)同、線状凸部を形成した構造を表した模式図(d)同、多数の縞状凸部を形成した構造を表した模式図
【図14】(a)本発明の実施の形態3の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のK−K線位置の断面図
【図15】(a)本発明の実施の形態4の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のL−L線位置の断面図
【図16】本発明の実施の形態4の圧力検出素子の使用方法を示した断面図
【図17】従来の層状の圧力検出素子の断面図
【図18】(a)従来のケーブル状の圧力検出素子の長手方向の断面図(b)同圧力検出素子のA−A線位置の断面図
【符号の説明】
【0132】
11 可撓性感圧体
12 電極
13 保護層
14 圧力検出素子
15 内部電極
16 外部電極
17 撓性増大層
18 圧縮抑制層
19 撓み幅拡大材
20 撓み幅拡大層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留分極を有する可撓性感圧体と、前記可撓性感圧体を挟んで構成される複数の電極と、前記可撓性感圧体と前記電極とを保護する保護層と備え、前記保護層の内部に空気のみで形成される部分を有する圧力検出素子。
【請求項2】
空気のみから形成される部分が、気泡である請求項1記載の圧力検出素子。
【請求項3】
空気のみから形成される部分が、前記可撓性感圧体の上部よりも下部に多い請求項1記載の圧力検出素子。
【請求項4】
保護層の下部に撓性増大層を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力検出素子。
【請求項5】
残留分極を有する可撓性感圧体と、前記可撓性感圧体を挟んで構成される複数の電極と、前記可撓性感圧体と前記電極とを保護する保護層とを備え、前記保護層の垂直方向の弾性率が、水平方向の弾性率よりも大きい圧力検出素子。
【請求項6】
保護層の側部の厚みが、上下部の厚みより厚い請求項5に記載の圧力検出素子。
【請求項7】
保護層の側部を形成する材料の弾性率が、上部、下部を形成する材料の弾性率よりも大きい請求項5または6に記載の圧力検出素子。
【請求項8】
保護層の側部に圧縮抑制層を有する請求項5から7のいずれか1項に記載の圧力検出素子。
【請求項9】
保護層が、撓み幅拡大材を含む請求項請求項1から8のいずれか1項に記載の圧力検出素子。
【請求項10】
保護層の上部あるいは下部に、撓み幅拡大層を含む請求項請求項1から9のいずれか1項に記載の圧力検出素子。
【請求項11】
保護層の上部のみに、撓み幅拡大層を含む請求項10に記載の圧力検出素子。
【請求項12】
保護層の長手方向に弾性率の極大部を有する請求項1から11のいずれか1項に記載の圧力検出素子。
【請求項13】
保護層の長手方向の一部に圧縮抑制層を形成することで、弾性率の極大部を形成する請求項12記載の圧力検出素子。
【請求項14】
保護層の長手方向の弾性率の極大部に、検出すべき外部からの圧力を印加させて使用する請求項12あるいは13に記載の圧力検出素子の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図13】
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【図14】
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