圧力開放装置及びこれを備えた開閉弁ユニット
【課題】配管や接続構造を簡易に構成できる新規の構成により、製造コストの低減、コンパクト化及び信頼性の向上を図る。
【解決手段】本発明の圧力開放装置100は、流体を一次側から二次側へ供給するための流路100Lと、前記流路に沿った流通孔121aを構成するとともに一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力により前記流路内において流路方向に移動可能に配置される可動部121b、122、及び、該可動部と連動する弁体部121cを有する可動体と、前記流路に開口するとともに前記弁体部に対向配置され、前記可動部が一次側に配置されるときには前記弁体部が離間して開放され、前記可動部が二次側に配置されるときには前記弁体部により閉鎖される大気開放口103aと、を具備することを特徴とする。
【解決手段】本発明の圧力開放装置100は、流体を一次側から二次側へ供給するための流路100Lと、前記流路に沿った流通孔121aを構成するとともに一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力により前記流路内において流路方向に移動可能に配置される可動部121b、122、及び、該可動部と連動する弁体部121cを有する可動体と、前記流路に開口するとともに前記弁体部に対向配置され、前記可動部が一次側に配置されるときには前記弁体部が離間して開放され、前記可動部が二次側に配置されるときには前記弁体部により閉鎖される大気開放口103aと、を具備することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力開放装置及びこれを備えた開閉弁ユニットに係り、特に、給湯機から浴槽に湯水を供給する給湯経路を含む給湯システムにおいて、当該給湯経路中に配置され、浴槽側から給湯機側に湯水が逆流することを防止する場合に好適な圧力開放装置若しくは開閉弁ユニットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、給湯機から浴槽に湯水を供給する給湯システムには、浴槽側から給湯機側への湯水の逆流を防止するために、電磁弁や逆止弁を備えた逆流防止機構が取り付けられる。特に、給湯システムでは、給湯機側の水圧が断水等によって低下する場合や浴槽が給湯機の階上にあることで二次側の水圧が一次側の水圧を上回る場合が考えられるので、給湯経路の途中で一次側と二次側を縁切りする機能を有する逆流防止機構として、例えば、逆止弁の弁体と連動する逃がし弁1cで大気開放口を開閉させる構成(例えば、以下の特許文献1)と、逆止弁がごみ詰まり等で機能しない場合に備えて、一次側の圧力が低下したときに二次側の圧力を大気に開放したり、二次側の湯水を排出したりするための大気開放弁が設けられる構成(例えば、以下の特許文献2乃至4参照)等を有する圧力開放装置が用いられる。
【特許文献1】特開平7−225057号公報
【特許文献2】特開2000−304144号公報
【特許文献3】特開2003−336906号公報
【特許文献4】特開2004−150662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の特許文献1の構成では、逆止弁の弁体と逃がし弁とが連動するため、給湯開始時及び停止時に逃がし弁から湯水が漏出する虞があり、また、逆止弁の弁体と逃がし弁との連動構造を改良する方法も開示されているが、それでも一次側の圧力の変動による誤作動で漏水や大気の流入などを完全に防止することができない(特許文献3、図14及び図15参照)という問題点がある。
【0004】
一方、前述の特許文献2乃至4の構成では、大気圧開放弁自体は比較的簡易に構成されているものの、図5(a)に示すように、圧力差を検出するために大気開放弁の両側を一次側と二次側に別々に接続しなければならないので、圧力を検出するための配管及び配管接続部を余分に設ける必要があり、これらの配管や配管接続部を設けることによって構造が複雑となるため、製造コストが増加するとともに大型化し、しかもレイアウトの自由度が低くなり、さらに配管接続部が多い分だけ漏水の危険性も高くなるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、一次側と二次側の圧力関係に応じて大気開放口の開閉を行う圧力開放装置において、配管や接続構造を簡易に構成できる新規の構成を採用することにより、製造コストの低減、コンパクト化及び信頼性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる実情に鑑み、本発明の圧力開放装置は、流体を一次側から二次側へ供給するための流路と、該流路に沿った流通孔を構成するとともに一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力により前記流路内において流路方向に移動可能に配置される可動部、及び、該可動部と連動する弁体部を有する可動体と、前記流路に開口するとともに前記弁体部に対向配置され、前記可動部が一次側に配置されるときには前記弁体部が離間して開放され、前記可動部が二次側に配置されるときには前記弁体部により閉鎖される大気開放口と、を具備することを特徴とする。
【0007】
これによれば、流路内に配置される可動部が一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力によって移動可能に構成され、この可動部に連動する弁体部が可動部の位置に応じて大気開放口を開閉するように構成される。したがって、通常時において一次側から受ける流体圧が二次側より勝る場合には可動部が二次側に移動して弁体部が大気開放口を閉鎖するが、逆流が生じうる非常時においては、二次側の流体圧が一次側より勝る場合には可動部が一次側に移動して弁体部が大気開放口を開放するので、大気開放口を通して流路内に大気を導入したり二次側の流体を排出したりすることが可能になる。
【0008】
本発明の一の態様においては、前記可動部に保持される逆止弁をさらに具備する。この場合には、逆止弁を可動部に保持することで、流体が一次側から二次側へ流れるときには逆止弁の圧力損失によって可動部の一次側と二次側の流体圧差を増大させることができるので大気開放口を安定的に閉鎖でき、一方、流体が逆流するときには逆止弁の弁体が閉鎖しようとすることで逆流防止を図ると同時に、一次側と二次側の流体圧差が増大するので大気開放口を確実に開放することが可能になる。なお、上記逆止弁は前記流通孔内に配置されることが好ましい。逆止弁を流通孔内に配置することで、流路中において逆止弁を有効に作用させることができるとともに、可動部と逆止弁をコンパクトに構成できる。なお、本発明では、逆止弁に限らず、流量計、電磁弁その他の開閉弁などといった、可動体の流路方向前後において圧損を生じさせる構造を可動部に保持させ、或いは、一体に設けることも可能である。当該構造を設ける場合にも、可動体による圧力損失をさらに増大させることで一次側と二次側の流体圧差を増大させることができるので、大気開放口の開閉をより確実に行うことが可能である。
【0009】
本発明の他の態様においては、前記可動体は、前記流通孔を構成する可動支持部材と、該可動支持部材を前記管壁に移動可能に接続する可撓性膜とを有する。この場合には、流通孔を構成する可動支持部材が管壁に接続された可撓性膜によって流路内において移動可能に構成されることから、可動支持部材を流路内で移動可能に構成しつつ、その移動態様を安定させることができる。
【0010】
本発明の異なる態様においては、前記流路には外周側に張り出す外延部が設けられ、前記大気開放口は前記外延部に対して一次側に向けて開口し、前記弁体部は、前記大気開放口の一次側に対向配置され、前記流路方向に移動することで前記大気開放口を開閉する。この場合には、流路の外周側へ張り出す外延部に対して一次側に向けて開口する大気開放口を設け、その一次側に対向配置された弁体部が流路方向に移動することで大気開放口を開閉するので、可動部と弁体部の移動態様を同一に設定しても動作が可能になることから、可動部と弁体部を一体に構成するなど、可動体の構成を簡易に構成することが可能になる。
【0011】
本発明の別の態様においては、前記外延部は前記流路の外周部において環状に構成され、前記大気開放口は前記外延部に対して環状に開口する。この場合には、大気開放口の開口範囲を広く確保できるとともに、装置の外径をコンパクトに構成できる。なお、この場合、環状の大気開放口を良好かつ確実に開閉可能とするために、前記弁体部が前記可動体の外周部に環状に構成されることが好ましい。
【0012】
上記各発明において、前記逆止弁のさらに二次側に二次側逆止弁をさらに具備することが好ましい。
【0013】
また、本発明の開閉弁ユニットは、上記のいずれかに記載の圧力開放装置と、前記流路を開閉する開閉弁とをさらに具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上述のように流路内に配置される可動部に連動して弁体部が流路に開口する大気開放口を開閉させるので、配管や接続構造を簡易に構成できる新規の構成により、製造コストの低減、コンパクト化及び信頼性の向上を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本発明に係る第1実施形態の圧力開放装置若しくは開閉弁ユニットの通常時における動作状態(大気開放弁閉状態)を流路方向に沿った断面で示す縦断面図、図2は同実施形態の圧力開放機構の流路方向と直交する断面を示す縦断面図、図3は同実施形態の圧力開放機構の断面における圧力印加状態の異なる断面領域を示す断面説明図、図4は同実施形態の非常時における動作状態(大気開放弁開状態)を流路方向に沿った断面で示す縦断面図である。
【0016】
本実施形態の開閉弁ユニット(圧力開放装置)100は、一次側から二次側へ流体を供給する流体供給経路中において用いられるもので、例えば、給湯機などを含む供給系から浴槽等の供給場所へ湯水等の流体を供給する配管系に組み込まれて用いられる。この開閉弁ユニット100は、一次側管体101と、この一次側管体101の二次側(図1の左側)に接続される二次側管体102とを有する。一次側管体101は、その二次側の端部に拡径したフランジ状の接続端部111を備えている。また、二次側管体102は、その一次側の端部に拡径したフランジ状の接続端部112を備えている。一次側管体101と二次側管体102は、上記接続端部111に上記接続端部112を突き合わせた状態で、固定ネジ等により接続固定される。
【0017】
一次側管体101は一次側の流入口101aと、二次側の流出口101bとを有し、その間に構成される流路部分101L内に流量計110が配置されている。流量計110は流路部分101Lを流通する流体の流量を測定する。
【0018】
二次側管体102は、上記一次側管体101の流出口101bに接続される流路部分102Lを有する。拡径した接続端部112の内部には、一次側管体101に向けて開口する拡径収容部102aと、この拡径収容部102aの二次側に隣接し、拡径収容部102aより小径に構成されたガイド収容部102bと、このガイド収容部102bの二次側に隣接し、ガイド収容部102bよりさらに小径に構成された下流部102cとを有する。
【0019】
上記拡径収容部102a及びガイド収容部102bの内部には可動支持部材121が配置される。この可動支持部材121は、中央に流通孔121aを有し、一次側の端部に流通孔121aの周囲に張り出すように構成された開口枠部121bを有している。また、開口枠部121bの一側(図示下側)の周囲部分には開口枠部121bの外周部から半径方向外側に延長するように一体に設けられた弁体部121cが設けられる。この弁体部121cには二次側に突出した弁ガイド部121dが設けられる。この弁ガイド部121dは大気開放口103aに嵌合し、可動支持部材121が流路方向に移動するとき、大気開放路103Lの内面に当接して弁体部121cを上記流路方向に案内する機能を有する。また、弁ガイド部121dは流路部分102L側から大気開放路103Lへ弁ガイド部121dを通して流体が通過可能となるように骨組状に構成されている。
【0020】
また、上記流通孔121aを包囲する筒状部121eの外周面には流路方向(一次側と二次側を結ぶ方向、以下同様。)に伸びる外周リブ121fが軸線周りの複数個所に形成されている。図示例では外周リブ121fは外周の4箇所に等角度(90度)間隔で設けられている。これらの外周リブ121fがガイド収容部102bの内周面に当接することによって、可動支持部材121が流路部分102L内において流路方向に案内されるとともに、筒状部121eの外周面とガイド収容部102bの内周面との間に流路方向の通路が構成される。なお、上記筒状部121eの二次側の端部121gは内側に突出した内側突出部を形成している。ここで、上記外周リブ121fは三つ以上の任意の数設けてもよく、また、上記筒状部121eの外周面上ではなく、上記ガイド収容部102bの内周面上に構成してもよいことは言うまでもない。
【0021】
可動支持部材121の開口枠部121b及び弁体部121cの外周部にはダイヤフラム(可撓性膜)122が装着される。このダイヤフラム122は、その外縁部122aが上記一次側管体101と二次側管体102の接合部間に挟持されることで流路部分101Lと流路部分102Lの間の管壁に固定されるとともに、その内縁部122bが開口枠部121b及び弁体部121cの外周部に嵌合することにより、流路部分101L、102Lの上記流通孔121aの開口範囲を除く部分を完全に閉鎖している。ダイヤフラム122は可動支持部材121を流路部分102L内で流路方向に移動可能に保持している。なお、可動支持部材121とダイヤフラム122は本発明の可動体を構成する。また、上記の可動支持部材121とダイヤフラム122の相互間の、或いは、ダイヤフラム122の管壁等に対する固定方法、固定箇所、固定手段等については上記構成に限定されるものではなく、たとえば、溶着、ねじ止め、圧入等の他の方法、手段を用いても構わない。
【0022】
可動支持部材121の開口枠部121b及びダイヤフラム122は上記拡径収容部102a内に配置され、可動支持部材121の筒状部121eは上記ガイド収容部102b内に配置される。ガイド収容部102bは、その内面に上記外周リブ121fが当接した状態で可動支持部材121を流路方向に移動可能に案内する。また、ガイド収容部102bと下流部102cとの間に形成された段差部102dには可動支持部材121の端部121gが当接するように構成され、これによって可動支持部材121の二次側への移動が規制される(すなわち、可動支持部材121の二次側の移動限界は、段差部102dによって規定される)。
【0023】
また、上記下流部102cの二次側にはさらに段差部102eが形成され、この段差部102eと可動支持部材121の端部121gとの間にコイルバネ等の弾性部材123が圧縮状態で収容されることもある。この弾性部材123は可動支持部材121を常に一次側に付勢する。なお、当該弾性部材123を設けなくてもよい。
【0024】
二次側管体102には、上記流路部分102Lに開口する大気開放口103aを備えた大気開放管103が設けられる。この大気開放管103は、図示例では二次側管体102と一体に構成されるが、別体で構成されていてもよい。大気開放管103に設けられた大気開放路103Lは、大気開放口103aから流路部分102Lと平行に伸びた後に屈折して外周方向に伸び、全体としてL字状に構成される。流路部分102Lには、上記拡径収容部102aの一部が半径方向外側に広がる形状を有することで、外周側に張り出すように形成された外延部102Tが設けられる。この外延部102Tは本実施形態のでは流路部分102Lの周囲の一方向に突出するように構成される。そして、この外延部102Tに対して大気開放口103aが一次側に向けて開口している。すなわち、大気開放口103aは流路部分102Lの可動支持部材121に隣接する外周部に対し一次側に向けて開口している。
【0025】
上記外延部102Tには、上記可動支持部材121の開口枠部121bから外側へ延出してなる弁体部121cが収容され、この弁体部121cは大気開放口103aの一次側に配置され、大気開放口103aに対向配置される。なお、弁体部121cにおける大気開放口103aの開口縁(大気開放弁の弁座に相当する。)103bに対向する部分は、ダイヤフラム122の一部が延長されてなる弁シール部122cによって被覆される。この弁シール部122cは弁体部121cの二次側の表面のうち上記弁ガイド部121dを避けた部分を被覆している。
【0026】
可動支持部材121の流通孔121aの内部には逆止弁124が保持される。逆止弁124は、筒状部121eに保持された弁筒部124aと、この弁筒部124aの内側に流路方向に移動可能に構成された弁体部124bとを有する。逆止弁124は、一次側の流体圧が二次側より高くなると弁筒部124aに対して弁体部124bが二次側に移動して開弁し、二次側の流体圧が一次側より高くなると弁筒部124aに対して弁体部124bが一次側に移動して閉弁する。弁筒部124aは上記筒状部121eに対して一次側から挿入され、筒状部121eの端部121gに設けられた段差部に当接して位置決めされている。なお、図示例では逆止弁124の弁筒部124aは可動支持部材121の筒状部121eの内面にシール材等を介して密着しているが、弁筒部124aを筒状部121e内で接着固定してもよく、或いは、弁筒部124aを筒状部121eと一体に構成してもよい。
【0027】
上記の接続端部111及び112、可動支持部材121、ダイヤフラム122、弾性部材123、逆止弁124は、逆止弁と大気開放弁の機能を有する圧力開放機構120を構成する。この圧力開放機構120の二次側には電磁弁(開閉弁)130が設けられ、駆動部131が弁体132を駆動することにより、二次側管体102の流路内に設けられた筒状部の開口縁(弁座)102fに対する当接の有無により開閉可能に構成され、これによって流路部分102Lとその下流側に設けられた流路部分102Mを連通させたり遮断したりすることができる。
【0028】
また、電磁弁130の二次側には、流路部分102M中に配置された二次側逆止弁140が配置される。この二次側逆止弁140は、弁筒部141と弁体部142を有し、一次側の流体圧が二次側より高くなると弁体部142が二次側に移動して開弁し、二次側の流体圧が一次側より高くなると弁体部142が一次側に移動して閉弁する。二次側逆止弁140のさらに二次側には、流路部分102Mの出口である、二次側管体102に設けられた流出口102hが設けられる。なお、上記流路部分101L、102L、102Mは圧力開放装置若しくは開閉弁ユニットの流路100Lを構成し、この流路100Lは本発明の上記流路に相当する。
【0029】
以上説明した本実施形態の開閉弁ユニット100において、圧力開放機構120は以下のように動作する。すなわち、流体供給経路において一次側から二次側へ流体が供給可能とされる状態では、電磁弁130が開くと流体は一次側より流路部分101L、102L、102Mを順次に通過して二次側へ流れる。このとき、流体は流通孔121a内の逆止弁124を開弁させ(図示一点鎖線より上が開弁状態を示す。)、その内部を通過する。このとき、一次側の流体圧が二次側の流体圧より高いために可動支持部材121及びダイヤフラム122は弾性部材123の弾性力に逆らって二次側に移動する。このときの可動支持部材121及びダイヤフラム122が一次側より受ける力の元となる一次側の流体圧と二次側の流体圧の差は、逆止弁124の内部を流体が通過することによる圧力損失によっても生ずる。いずれにしても、ダイヤフラム122によって可動に構成される可動支持部材121は二次側に移動し、その弁体部121c(弁シール部122c)は開口縁103bに当接して大気開放口103aを閉鎖する。
【0030】
また、上記の状態において電磁弁130を閉じると流体の供給は停止するが、弁体部121cの流路部分102L側と大気開放口103a側との間に流体圧と大気圧の差圧が存在することにより可動支持部材121は二次側に移動したままとされ、大気開放口103aは閉鎖されたままとなる。
【0031】
上記のように大気開放口103aが弁体部121cによって閉鎖された状態では、可動支持部材121の筒状部121eの端部121fは段差部102dに当接する。また、開口枠部121b及びこれに隣接するダイヤフラム122の部分はガイド収容部102bの開口縁102gに当接し、弁体部121c(弁シール部122c)は大気開放口103aの開口縁103bに当接するので、上記通路と大気開放路103Lとの間も遮断される。なお、本実施形態では、端部121fが段差部102dに当接するとともに大気開放口103aが閉鎖されるように構成されているので、可動支持部材121が当接部分によって支持され、これにより弁シール部122cと開口縁103bの間の荷重が過大にならないように構成し、弁シールの劣化や開弁不良を防止している。ただし、大気開放口103aが確実に閉鎖できるように構成されていれば、端部121fと段差部102dが当接しなくても構わない。
【0032】
一方、断水や給湯機の故障等によって一次側の流体圧が失われたり、浴槽側の圧力が増大すること等によって二次側の圧力が増加した場合には、二次側の流体圧が一次側の流体圧を上回り、逆流を生じる場合がある。このような場合には、二次側逆止弁140が閉弁して逆流を防止するが、この二次側の逆止弁140において弁筒部141と弁体部142の間にゴミの噛み込み等が生じるなどの動作不良が発生して逆流を防止できない場合もある。この場合には、本実施形態の圧力開放機構120が動作する。すなわち、圧力開放装置120において二次側の流体圧が一次側の流体圧を上回ると、逆止弁124が閉弁方向に動作するが、同時に可動支持部材121が二次側の流体圧を受けて一次側に移動し、弁体部121cが開口縁103bより離間して図4に示すように大気開放口103aが開く。すると、二次側の流体は可動支持部材121の筒状部121eの外周面とガイド収容部102bの内周面との間の上記通路を通過して大気圧開放口103aから大気開放路103Lを通って排出される。また、大気開放口103aから大気が流路部分102L内に流入して流路部分102L中の流体を分断し、それ以上の流体の逆流現象が継続しないように構成する。
【0033】
図3は、上記圧力開放機構120の流路断面における各断面領域の関係を示す説明図である。ここで、図示実線及び実線ハッチングで示す断面領域Aは、可動支持部材121の開口枠部121b及び弁体部121cと、この開口枠部121b及び弁体部121cの周囲に取り付けられたダイヤフラム122が存在する断面範囲であり、ここには可動支持部材121に対し一次側の流体圧が及ぼされる。また、図示点線及び点線ハッチングで示す断面領域Bは、開口枠部121b及び弁体部121cの周囲に取り付けられたダイヤフラム122が存在する断面範囲から、大気開放口103aの断面範囲を除いた領域であり、ここには、逆止弁124を介して可動支持部材121に対し二次側の流体圧が及ぼされる。さらに、図示一点鎖線及び一点鎖線ハッチングで示す断面領域Cは、大気開放口103aの開口断面であり、ここには、弁体部121cに対し大気圧が及ぼされる。
【0034】
ここで、一次側の流体圧をP1、二次側の流体圧をP2、大気圧をPAとし、上記断面領域Aの断面積をSA、上記断面領域Bの断面積をSB(=SA−SC)、上記断面領域Cの断面積をSCとする。この場合、可動支持部材121及びダイヤフラム122には二次側にF=P1×SA−P2×SB−PA×SC=P1×SA−P2×(SA−SC)−PA×SCの力が加わる。そして、流体供給時においては、P1>P2、P1>PAである。また、断面積SAは断面積SBとSCを含むのでSA>SCが成立し、さらに、SA>SBとなっている。
【0035】
したがって、上記の力Fは流体供給時においては常に正であり、これが弾性部材123の弾性力を上回るように設定されていれば、可動支持部材121は二次側へ限界位置まで移動し、大気開放口103aを閉鎖する。また、流体の供給停止時においても大気開放口103aは閉鎖されたままとする必要があるので、P1=P2になった場合でも上記の力Fが正になり、しかも、それが弾性部材123の弾性力を上回るように設定される。一方、一次側の流体圧P1が二次側の流体圧P2より或る程度小さくなり、上記の力Fが弾性部材123の弾性力を下回ると、可動支持部材121は一次側へ移動し、上述のように大気開放口103aを開く。
【0036】
以上説明した本実施形態では、図5(b)に示すように、流通孔121aを備えた可動支持部材121が流路部分102L内において流路方向に移動可能に配置されるとともに、可動支持部材121に設けられた弁体部121cによって大気開放口103aが開閉可能に構成されていることにより、一次側の流体圧P1と二次側の流体圧P2の関係に応じた可動支持部材121の流路方向への移動によって大気開放口103aが開閉するので、図5(a)に示す従来構造のように大気開放弁に対して配管を介して一次側の流体圧を与える必要がなくなるため、配管構造や接続構造を簡易に構成することができる。したがって、圧力開放装置120を低コストで製造できるとともに漏水などの危険性を低減して高い信頼性を得ることができ、さらに装置全体をコンパクトに構成できる。
【0037】
本実施形態では、可動支持部材121の流通孔121a内に逆止弁124が保持され、流体供給時において流通孔121a内で圧力損失を生じさせることができるため、一時側の圧力P1と二次側の圧力P2の圧力差を大きくすることができ、その結果、流体圧の変動や過流等による影響が多少存在しても可動支持部材121を安定させることができ、大気開放口103aを確実に閉鎖し続けることが可能になる。
【0038】
また、逆止弁124は二次側の流体圧P2が一次側の流体圧P1より高くなった場合に閉弁するとともに、当該場合において二次側の流体圧P2を受けて可動支持部材121を一次側へ移動させる力を増大させるので、確実に大気開放口103aを開放させることができる。このことは、弾性部材123の弾性力を小さくしても確実な動作が可能になることを意味するから、圧力開放装置120の通常時の動作安定性(大気開放口103aの閉鎖状態の安定性)を向上させる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、図6を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態において、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。図6は第2実施形態の大気開放弁閉状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図である。
【0040】
本実施形態では、二次側管体102の内部に圧力開放機構120、電磁弁130、二次側逆止弁140がそれぞれ配置されている点では第1実施形態と同様であるが、内部に設けられた二次側の流路部分102M′が一次側の流路部分102Lと略平行に構成され、これによって一次側管体101内に構成された流路部分101Lと二次側管体102内の二次側の流路部分102M′とが略平行に構成される。したがって、一次側管体101の流入口101aと、二次側管体102の流出口102h′とが相互に逆向きに開口するので、流体供給経路中において、開閉弁ユニット100をほぼ直線状に配置することが可能になる。したがって、開閉弁ユニット(圧力開放装置)100をタンク隅部などの狭い場所にも流体供給経路に沿ってコンパクトに配置できる。
【0041】
[第3実施形態]
次に、図7乃至図9を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。図7は第3実施形態の大気開放弁閉状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図8は同実施形態の大気開放弁開状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図9は圧力開放機構の断面における圧力印加状態の異なる断面領域を示す断面説明図である。
【0042】
本実施形態では、圧力開放機構120′の断面構造が上記各実施形態とは異なる。すなわち、二次側管体102′の拡径収容部102a′が環状に構成され、この内部に配置される可動支持部材121′の開口枠部121b′も環状に構成され、この開口枠部121b′の外周部と管壁との間に環状のダイヤフラム122′が取り付けられている。そして、流路部分102L′には流路方向の前後に比べて周囲に環状に張り出した外延部102T′が設けられ、この環状の外延部102T′に対し、二次側から一次側に向けて大気開放口103a′が開口している。ここで、断面円形等の管路状に構成された大気開口路103Lの内端側に環状の大気開放室104が形成され、この大気開放室104の開口部として構成されることによって大気開放口103a′もまた流路部分102L′の外周部に開口するように環状に構成される。ここで、開口枠部121b′の外縁部分と環状のダイヤフラム122′は、環状に構成された本発明の弁体部として機能し、これによって環状の大気開放口103a′が開閉される。ただし、大気開放口103a′は環状の大気開放室104の任意の位置に任意の形状で形成することも可能である。例えば、環状の大気開放室104に対して任意の角度位置に部分的に円形状、多角形状などといった環状以外の開口形状を有する大気開放口103a′を形成してもよい。
【0043】
本実施形態では、上記のように環状に構成されることによって大気開放口103a′の開口面積を増大させることが容易であり、これによって大気開放弁としての機能を高めることができる。逆に言えば、大気開放口103a′の開口面積を確保しつつ、接続端部112′をコンパクトに構成することが可能になる。また、大気開放路103Lに環状の大気開放室104を設置することで、上記のように大気開放口103a′を任意の位置に任意の形状で形成することができるため、配置構成の自由度が向上することから、接続端部112′をコンパクトに構成することが可能になる。
【0044】
図9に示すように、本実施形態の場合、一次側の流体圧を受ける断面領域A、二次側の流体圧を受ける断面領域B、及び、大気開放口103a′(或いは大気開放室104)に対応して大気圧を受ける断面領域Cはそれぞれ環状に構成され、相互に全て同心状に構成される。また、本実施形態では、断面領域Aと断面領域Cは外周部分において半径方向に重なる。
【0045】
本実施形態の場合、大気開放口103a′の開口面積を大きく採れるので、通常時において可動支持部材121′及びダイヤフラム122′の受ける一次側の流体圧と大気圧の差に起因する大気開放口103a′の環状の縁103b′に対する閉鎖力を大きくすることができる。したがって、通常時における圧力開放機構120′の安定性をさらに高めることが可能である。
【0046】
[第4実施形態]
次に、図10乃至図12を参照して本発明に係る第4実施形態について説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。図10は第4実施形態の大気開放弁閉状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図11は本実施形態の大気開放弁開状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図12は圧力開放機構の断面における圧力印加状態の異なる断面領域を示す断面説明図である。
【0047】
本実施形態では、圧力開放機構120″が基本的には第1実施形態と同様の構造を有するが、可動支持部材121の端部121gを付勢する弾性部材123の代わりに、可動支持部材121″の弁ガイド部121d″に設けられた段差部121hと大気開放管103″の内部に設けられた段差部103cとの間に圧縮状態で保持された弾性部材125が大気開放路103L″内に配置されている点で異なる。
【0048】
上記のように構成すると、大気開放口103a″を閉鎖する部位(すなわち、開口縁103b″に当接する弁体部121c及び弁シール部122c並びに弁ガイド部121d″)に弾性部材125の弾性力を直接加えて大気開放口103a″を開放させることができるので、非常時の開弁動作を確実に行うことができる。もちろん、本実施形態において第1実施形態と同様の弾性部材123を併用してもよい。
【0049】
なお、本実施形態では、図10及び図11に示すように、大気開放口103a″の先の大気開放管103の内面に段差部103dを設け、該段差部103dに弁ガイド部121d″が当接することで、通常時において弁シール部122cに過剰な閉鎖力が加わらないようにしている。これは、ほとんどの使用態様では大気開放口103a″の開口縁103b″は弁シール部122cに常時当接した状態とされるので、過剰な閉鎖力が加わると、弁シール部122cが劣化し、漏水やシールの固着による開弁動作不良が生ずる危険性が高まるからである。
【0050】
また、通常時における可動支持部材121の姿勢は、上記筒状部121eの端部121gと段差部102dの当接位置と、上記段差部103dと弁ガイド部121d″の当接位置との関係で規定されるので、両当接位置を整合させることで通常時において可動支持部材121の姿勢が傾斜することを防止することも可能になる。
【0051】
図12に示すように、圧力開放装置120″においても、第1実施形態と同様に、一次側の流体圧が加わる断面領域A、二次側の流体圧が加わる断面領域B、及び、大気圧の加わる断面領域Cが存在する。なお、本実施形態の場合、流路部分102Lの開口縁102gと大気開放口103a″の開口縁103b″とは、流路部分102Lと大気開放路103Lの隣接部分において一体化されている。このように構成すると、流路断面や大気開放口の開口断面を確保しつつ、接続端部112の外形をコンパクトに構成できる。
【0052】
尚、本発明の圧力開放装置及び開閉弁ユニットは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では流路100L内に配置された可動支持部材121に大気開放口103aを開閉するための弁体部121cが一体に設けられて両者が連動するように構成されているが、可動支持部と弁体部とを別体で構成し、両者を直接若しくは他のリンク部材等を介して接続することで、可動支持部と弁体部とが連動するように構成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では逆止弁124は可動支持部材121の流通孔121aの内部に保持されているが、例えば可動部に保持された状態であれば、可動部の上流側や下流側に逆止弁124が配置されていても構わない。さらに、流量計110及び電磁弁130は圧力開放機構120の機能に直接関係せず独立して機能するものであるため、それらの配置が変化しても本願の趣旨が変わるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図2】第1実施形態の圧力開放機構の流路方向と直交する断面構造を示す縦断面図。
【図3】第1実施形態の圧力開放機構の異なる圧力が印加される断面領域を示す説明図。
【図4】第1実施形態の流路方向に沿った断面を示す非常時の縦断面図。
【図5】従来の圧力開放装置と本発明に係る圧力開放装置の構成を対比して示す基本構成図。
【図6】第2実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図7】第3実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図8】第3実施形態の流路方向に沿った断面を示す非常時の縦断面図。
【図9】第3実施形態の圧力開放機構の異なる圧力が印加される断面領域を示す説明図。
【図10】第4実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図11】第4実施形態の流路方向に沿った断面を示す非常時の縦断面図。
【図12】第4実施形態の圧力開放機構の異なる圧力が印加される断面領域を示す説明図。
【符号の説明】
【0055】
100…開閉弁ユニット(圧力開放装置)、100L…流路、101…一次側管体、102…二次側管体、110…流量計、120…圧力開放機構、121…可動支持部材、121a…流通孔、121b…開口枠部、121c…弁体部、122…ダイヤフラム、123…弾性部材、124…逆止弁、130…電磁弁(開閉弁)、140…二次側逆止弁
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力開放装置及びこれを備えた開閉弁ユニットに係り、特に、給湯機から浴槽に湯水を供給する給湯経路を含む給湯システムにおいて、当該給湯経路中に配置され、浴槽側から給湯機側に湯水が逆流することを防止する場合に好適な圧力開放装置若しくは開閉弁ユニットの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、給湯機から浴槽に湯水を供給する給湯システムには、浴槽側から給湯機側への湯水の逆流を防止するために、電磁弁や逆止弁を備えた逆流防止機構が取り付けられる。特に、給湯システムでは、給湯機側の水圧が断水等によって低下する場合や浴槽が給湯機の階上にあることで二次側の水圧が一次側の水圧を上回る場合が考えられるので、給湯経路の途中で一次側と二次側を縁切りする機能を有する逆流防止機構として、例えば、逆止弁の弁体と連動する逃がし弁1cで大気開放口を開閉させる構成(例えば、以下の特許文献1)と、逆止弁がごみ詰まり等で機能しない場合に備えて、一次側の圧力が低下したときに二次側の圧力を大気に開放したり、二次側の湯水を排出したりするための大気開放弁が設けられる構成(例えば、以下の特許文献2乃至4参照)等を有する圧力開放装置が用いられる。
【特許文献1】特開平7−225057号公報
【特許文献2】特開2000−304144号公報
【特許文献3】特開2003−336906号公報
【特許文献4】特開2004−150662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の特許文献1の構成では、逆止弁の弁体と逃がし弁とが連動するため、給湯開始時及び停止時に逃がし弁から湯水が漏出する虞があり、また、逆止弁の弁体と逃がし弁との連動構造を改良する方法も開示されているが、それでも一次側の圧力の変動による誤作動で漏水や大気の流入などを完全に防止することができない(特許文献3、図14及び図15参照)という問題点がある。
【0004】
一方、前述の特許文献2乃至4の構成では、大気圧開放弁自体は比較的簡易に構成されているものの、図5(a)に示すように、圧力差を検出するために大気開放弁の両側を一次側と二次側に別々に接続しなければならないので、圧力を検出するための配管及び配管接続部を余分に設ける必要があり、これらの配管や配管接続部を設けることによって構造が複雑となるため、製造コストが増加するとともに大型化し、しかもレイアウトの自由度が低くなり、さらに配管接続部が多い分だけ漏水の危険性も高くなるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、一次側と二次側の圧力関係に応じて大気開放口の開閉を行う圧力開放装置において、配管や接続構造を簡易に構成できる新規の構成を採用することにより、製造コストの低減、コンパクト化及び信頼性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる実情に鑑み、本発明の圧力開放装置は、流体を一次側から二次側へ供給するための流路と、該流路に沿った流通孔を構成するとともに一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力により前記流路内において流路方向に移動可能に配置される可動部、及び、該可動部と連動する弁体部を有する可動体と、前記流路に開口するとともに前記弁体部に対向配置され、前記可動部が一次側に配置されるときには前記弁体部が離間して開放され、前記可動部が二次側に配置されるときには前記弁体部により閉鎖される大気開放口と、を具備することを特徴とする。
【0007】
これによれば、流路内に配置される可動部が一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力によって移動可能に構成され、この可動部に連動する弁体部が可動部の位置に応じて大気開放口を開閉するように構成される。したがって、通常時において一次側から受ける流体圧が二次側より勝る場合には可動部が二次側に移動して弁体部が大気開放口を閉鎖するが、逆流が生じうる非常時においては、二次側の流体圧が一次側より勝る場合には可動部が一次側に移動して弁体部が大気開放口を開放するので、大気開放口を通して流路内に大気を導入したり二次側の流体を排出したりすることが可能になる。
【0008】
本発明の一の態様においては、前記可動部に保持される逆止弁をさらに具備する。この場合には、逆止弁を可動部に保持することで、流体が一次側から二次側へ流れるときには逆止弁の圧力損失によって可動部の一次側と二次側の流体圧差を増大させることができるので大気開放口を安定的に閉鎖でき、一方、流体が逆流するときには逆止弁の弁体が閉鎖しようとすることで逆流防止を図ると同時に、一次側と二次側の流体圧差が増大するので大気開放口を確実に開放することが可能になる。なお、上記逆止弁は前記流通孔内に配置されることが好ましい。逆止弁を流通孔内に配置することで、流路中において逆止弁を有効に作用させることができるとともに、可動部と逆止弁をコンパクトに構成できる。なお、本発明では、逆止弁に限らず、流量計、電磁弁その他の開閉弁などといった、可動体の流路方向前後において圧損を生じさせる構造を可動部に保持させ、或いは、一体に設けることも可能である。当該構造を設ける場合にも、可動体による圧力損失をさらに増大させることで一次側と二次側の流体圧差を増大させることができるので、大気開放口の開閉をより確実に行うことが可能である。
【0009】
本発明の他の態様においては、前記可動体は、前記流通孔を構成する可動支持部材と、該可動支持部材を前記管壁に移動可能に接続する可撓性膜とを有する。この場合には、流通孔を構成する可動支持部材が管壁に接続された可撓性膜によって流路内において移動可能に構成されることから、可動支持部材を流路内で移動可能に構成しつつ、その移動態様を安定させることができる。
【0010】
本発明の異なる態様においては、前記流路には外周側に張り出す外延部が設けられ、前記大気開放口は前記外延部に対して一次側に向けて開口し、前記弁体部は、前記大気開放口の一次側に対向配置され、前記流路方向に移動することで前記大気開放口を開閉する。この場合には、流路の外周側へ張り出す外延部に対して一次側に向けて開口する大気開放口を設け、その一次側に対向配置された弁体部が流路方向に移動することで大気開放口を開閉するので、可動部と弁体部の移動態様を同一に設定しても動作が可能になることから、可動部と弁体部を一体に構成するなど、可動体の構成を簡易に構成することが可能になる。
【0011】
本発明の別の態様においては、前記外延部は前記流路の外周部において環状に構成され、前記大気開放口は前記外延部に対して環状に開口する。この場合には、大気開放口の開口範囲を広く確保できるとともに、装置の外径をコンパクトに構成できる。なお、この場合、環状の大気開放口を良好かつ確実に開閉可能とするために、前記弁体部が前記可動体の外周部に環状に構成されることが好ましい。
【0012】
上記各発明において、前記逆止弁のさらに二次側に二次側逆止弁をさらに具備することが好ましい。
【0013】
また、本発明の開閉弁ユニットは、上記のいずれかに記載の圧力開放装置と、前記流路を開閉する開閉弁とをさらに具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上述のように流路内に配置される可動部に連動して弁体部が流路に開口する大気開放口を開閉させるので、配管や接続構造を簡易に構成できる新規の構成により、製造コストの低減、コンパクト化及び信頼性の向上を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本発明に係る第1実施形態の圧力開放装置若しくは開閉弁ユニットの通常時における動作状態(大気開放弁閉状態)を流路方向に沿った断面で示す縦断面図、図2は同実施形態の圧力開放機構の流路方向と直交する断面を示す縦断面図、図3は同実施形態の圧力開放機構の断面における圧力印加状態の異なる断面領域を示す断面説明図、図4は同実施形態の非常時における動作状態(大気開放弁開状態)を流路方向に沿った断面で示す縦断面図である。
【0016】
本実施形態の開閉弁ユニット(圧力開放装置)100は、一次側から二次側へ流体を供給する流体供給経路中において用いられるもので、例えば、給湯機などを含む供給系から浴槽等の供給場所へ湯水等の流体を供給する配管系に組み込まれて用いられる。この開閉弁ユニット100は、一次側管体101と、この一次側管体101の二次側(図1の左側)に接続される二次側管体102とを有する。一次側管体101は、その二次側の端部に拡径したフランジ状の接続端部111を備えている。また、二次側管体102は、その一次側の端部に拡径したフランジ状の接続端部112を備えている。一次側管体101と二次側管体102は、上記接続端部111に上記接続端部112を突き合わせた状態で、固定ネジ等により接続固定される。
【0017】
一次側管体101は一次側の流入口101aと、二次側の流出口101bとを有し、その間に構成される流路部分101L内に流量計110が配置されている。流量計110は流路部分101Lを流通する流体の流量を測定する。
【0018】
二次側管体102は、上記一次側管体101の流出口101bに接続される流路部分102Lを有する。拡径した接続端部112の内部には、一次側管体101に向けて開口する拡径収容部102aと、この拡径収容部102aの二次側に隣接し、拡径収容部102aより小径に構成されたガイド収容部102bと、このガイド収容部102bの二次側に隣接し、ガイド収容部102bよりさらに小径に構成された下流部102cとを有する。
【0019】
上記拡径収容部102a及びガイド収容部102bの内部には可動支持部材121が配置される。この可動支持部材121は、中央に流通孔121aを有し、一次側の端部に流通孔121aの周囲に張り出すように構成された開口枠部121bを有している。また、開口枠部121bの一側(図示下側)の周囲部分には開口枠部121bの外周部から半径方向外側に延長するように一体に設けられた弁体部121cが設けられる。この弁体部121cには二次側に突出した弁ガイド部121dが設けられる。この弁ガイド部121dは大気開放口103aに嵌合し、可動支持部材121が流路方向に移動するとき、大気開放路103Lの内面に当接して弁体部121cを上記流路方向に案内する機能を有する。また、弁ガイド部121dは流路部分102L側から大気開放路103Lへ弁ガイド部121dを通して流体が通過可能となるように骨組状に構成されている。
【0020】
また、上記流通孔121aを包囲する筒状部121eの外周面には流路方向(一次側と二次側を結ぶ方向、以下同様。)に伸びる外周リブ121fが軸線周りの複数個所に形成されている。図示例では外周リブ121fは外周の4箇所に等角度(90度)間隔で設けられている。これらの外周リブ121fがガイド収容部102bの内周面に当接することによって、可動支持部材121が流路部分102L内において流路方向に案内されるとともに、筒状部121eの外周面とガイド収容部102bの内周面との間に流路方向の通路が構成される。なお、上記筒状部121eの二次側の端部121gは内側に突出した内側突出部を形成している。ここで、上記外周リブ121fは三つ以上の任意の数設けてもよく、また、上記筒状部121eの外周面上ではなく、上記ガイド収容部102bの内周面上に構成してもよいことは言うまでもない。
【0021】
可動支持部材121の開口枠部121b及び弁体部121cの外周部にはダイヤフラム(可撓性膜)122が装着される。このダイヤフラム122は、その外縁部122aが上記一次側管体101と二次側管体102の接合部間に挟持されることで流路部分101Lと流路部分102Lの間の管壁に固定されるとともに、その内縁部122bが開口枠部121b及び弁体部121cの外周部に嵌合することにより、流路部分101L、102Lの上記流通孔121aの開口範囲を除く部分を完全に閉鎖している。ダイヤフラム122は可動支持部材121を流路部分102L内で流路方向に移動可能に保持している。なお、可動支持部材121とダイヤフラム122は本発明の可動体を構成する。また、上記の可動支持部材121とダイヤフラム122の相互間の、或いは、ダイヤフラム122の管壁等に対する固定方法、固定箇所、固定手段等については上記構成に限定されるものではなく、たとえば、溶着、ねじ止め、圧入等の他の方法、手段を用いても構わない。
【0022】
可動支持部材121の開口枠部121b及びダイヤフラム122は上記拡径収容部102a内に配置され、可動支持部材121の筒状部121eは上記ガイド収容部102b内に配置される。ガイド収容部102bは、その内面に上記外周リブ121fが当接した状態で可動支持部材121を流路方向に移動可能に案内する。また、ガイド収容部102bと下流部102cとの間に形成された段差部102dには可動支持部材121の端部121gが当接するように構成され、これによって可動支持部材121の二次側への移動が規制される(すなわち、可動支持部材121の二次側の移動限界は、段差部102dによって規定される)。
【0023】
また、上記下流部102cの二次側にはさらに段差部102eが形成され、この段差部102eと可動支持部材121の端部121gとの間にコイルバネ等の弾性部材123が圧縮状態で収容されることもある。この弾性部材123は可動支持部材121を常に一次側に付勢する。なお、当該弾性部材123を設けなくてもよい。
【0024】
二次側管体102には、上記流路部分102Lに開口する大気開放口103aを備えた大気開放管103が設けられる。この大気開放管103は、図示例では二次側管体102と一体に構成されるが、別体で構成されていてもよい。大気開放管103に設けられた大気開放路103Lは、大気開放口103aから流路部分102Lと平行に伸びた後に屈折して外周方向に伸び、全体としてL字状に構成される。流路部分102Lには、上記拡径収容部102aの一部が半径方向外側に広がる形状を有することで、外周側に張り出すように形成された外延部102Tが設けられる。この外延部102Tは本実施形態のでは流路部分102Lの周囲の一方向に突出するように構成される。そして、この外延部102Tに対して大気開放口103aが一次側に向けて開口している。すなわち、大気開放口103aは流路部分102Lの可動支持部材121に隣接する外周部に対し一次側に向けて開口している。
【0025】
上記外延部102Tには、上記可動支持部材121の開口枠部121bから外側へ延出してなる弁体部121cが収容され、この弁体部121cは大気開放口103aの一次側に配置され、大気開放口103aに対向配置される。なお、弁体部121cにおける大気開放口103aの開口縁(大気開放弁の弁座に相当する。)103bに対向する部分は、ダイヤフラム122の一部が延長されてなる弁シール部122cによって被覆される。この弁シール部122cは弁体部121cの二次側の表面のうち上記弁ガイド部121dを避けた部分を被覆している。
【0026】
可動支持部材121の流通孔121aの内部には逆止弁124が保持される。逆止弁124は、筒状部121eに保持された弁筒部124aと、この弁筒部124aの内側に流路方向に移動可能に構成された弁体部124bとを有する。逆止弁124は、一次側の流体圧が二次側より高くなると弁筒部124aに対して弁体部124bが二次側に移動して開弁し、二次側の流体圧が一次側より高くなると弁筒部124aに対して弁体部124bが一次側に移動して閉弁する。弁筒部124aは上記筒状部121eに対して一次側から挿入され、筒状部121eの端部121gに設けられた段差部に当接して位置決めされている。なお、図示例では逆止弁124の弁筒部124aは可動支持部材121の筒状部121eの内面にシール材等を介して密着しているが、弁筒部124aを筒状部121e内で接着固定してもよく、或いは、弁筒部124aを筒状部121eと一体に構成してもよい。
【0027】
上記の接続端部111及び112、可動支持部材121、ダイヤフラム122、弾性部材123、逆止弁124は、逆止弁と大気開放弁の機能を有する圧力開放機構120を構成する。この圧力開放機構120の二次側には電磁弁(開閉弁)130が設けられ、駆動部131が弁体132を駆動することにより、二次側管体102の流路内に設けられた筒状部の開口縁(弁座)102fに対する当接の有無により開閉可能に構成され、これによって流路部分102Lとその下流側に設けられた流路部分102Mを連通させたり遮断したりすることができる。
【0028】
また、電磁弁130の二次側には、流路部分102M中に配置された二次側逆止弁140が配置される。この二次側逆止弁140は、弁筒部141と弁体部142を有し、一次側の流体圧が二次側より高くなると弁体部142が二次側に移動して開弁し、二次側の流体圧が一次側より高くなると弁体部142が一次側に移動して閉弁する。二次側逆止弁140のさらに二次側には、流路部分102Mの出口である、二次側管体102に設けられた流出口102hが設けられる。なお、上記流路部分101L、102L、102Mは圧力開放装置若しくは開閉弁ユニットの流路100Lを構成し、この流路100Lは本発明の上記流路に相当する。
【0029】
以上説明した本実施形態の開閉弁ユニット100において、圧力開放機構120は以下のように動作する。すなわち、流体供給経路において一次側から二次側へ流体が供給可能とされる状態では、電磁弁130が開くと流体は一次側より流路部分101L、102L、102Mを順次に通過して二次側へ流れる。このとき、流体は流通孔121a内の逆止弁124を開弁させ(図示一点鎖線より上が開弁状態を示す。)、その内部を通過する。このとき、一次側の流体圧が二次側の流体圧より高いために可動支持部材121及びダイヤフラム122は弾性部材123の弾性力に逆らって二次側に移動する。このときの可動支持部材121及びダイヤフラム122が一次側より受ける力の元となる一次側の流体圧と二次側の流体圧の差は、逆止弁124の内部を流体が通過することによる圧力損失によっても生ずる。いずれにしても、ダイヤフラム122によって可動に構成される可動支持部材121は二次側に移動し、その弁体部121c(弁シール部122c)は開口縁103bに当接して大気開放口103aを閉鎖する。
【0030】
また、上記の状態において電磁弁130を閉じると流体の供給は停止するが、弁体部121cの流路部分102L側と大気開放口103a側との間に流体圧と大気圧の差圧が存在することにより可動支持部材121は二次側に移動したままとされ、大気開放口103aは閉鎖されたままとなる。
【0031】
上記のように大気開放口103aが弁体部121cによって閉鎖された状態では、可動支持部材121の筒状部121eの端部121fは段差部102dに当接する。また、開口枠部121b及びこれに隣接するダイヤフラム122の部分はガイド収容部102bの開口縁102gに当接し、弁体部121c(弁シール部122c)は大気開放口103aの開口縁103bに当接するので、上記通路と大気開放路103Lとの間も遮断される。なお、本実施形態では、端部121fが段差部102dに当接するとともに大気開放口103aが閉鎖されるように構成されているので、可動支持部材121が当接部分によって支持され、これにより弁シール部122cと開口縁103bの間の荷重が過大にならないように構成し、弁シールの劣化や開弁不良を防止している。ただし、大気開放口103aが確実に閉鎖できるように構成されていれば、端部121fと段差部102dが当接しなくても構わない。
【0032】
一方、断水や給湯機の故障等によって一次側の流体圧が失われたり、浴槽側の圧力が増大すること等によって二次側の圧力が増加した場合には、二次側の流体圧が一次側の流体圧を上回り、逆流を生じる場合がある。このような場合には、二次側逆止弁140が閉弁して逆流を防止するが、この二次側の逆止弁140において弁筒部141と弁体部142の間にゴミの噛み込み等が生じるなどの動作不良が発生して逆流を防止できない場合もある。この場合には、本実施形態の圧力開放機構120が動作する。すなわち、圧力開放装置120において二次側の流体圧が一次側の流体圧を上回ると、逆止弁124が閉弁方向に動作するが、同時に可動支持部材121が二次側の流体圧を受けて一次側に移動し、弁体部121cが開口縁103bより離間して図4に示すように大気開放口103aが開く。すると、二次側の流体は可動支持部材121の筒状部121eの外周面とガイド収容部102bの内周面との間の上記通路を通過して大気圧開放口103aから大気開放路103Lを通って排出される。また、大気開放口103aから大気が流路部分102L内に流入して流路部分102L中の流体を分断し、それ以上の流体の逆流現象が継続しないように構成する。
【0033】
図3は、上記圧力開放機構120の流路断面における各断面領域の関係を示す説明図である。ここで、図示実線及び実線ハッチングで示す断面領域Aは、可動支持部材121の開口枠部121b及び弁体部121cと、この開口枠部121b及び弁体部121cの周囲に取り付けられたダイヤフラム122が存在する断面範囲であり、ここには可動支持部材121に対し一次側の流体圧が及ぼされる。また、図示点線及び点線ハッチングで示す断面領域Bは、開口枠部121b及び弁体部121cの周囲に取り付けられたダイヤフラム122が存在する断面範囲から、大気開放口103aの断面範囲を除いた領域であり、ここには、逆止弁124を介して可動支持部材121に対し二次側の流体圧が及ぼされる。さらに、図示一点鎖線及び一点鎖線ハッチングで示す断面領域Cは、大気開放口103aの開口断面であり、ここには、弁体部121cに対し大気圧が及ぼされる。
【0034】
ここで、一次側の流体圧をP1、二次側の流体圧をP2、大気圧をPAとし、上記断面領域Aの断面積をSA、上記断面領域Bの断面積をSB(=SA−SC)、上記断面領域Cの断面積をSCとする。この場合、可動支持部材121及びダイヤフラム122には二次側にF=P1×SA−P2×SB−PA×SC=P1×SA−P2×(SA−SC)−PA×SCの力が加わる。そして、流体供給時においては、P1>P2、P1>PAである。また、断面積SAは断面積SBとSCを含むのでSA>SCが成立し、さらに、SA>SBとなっている。
【0035】
したがって、上記の力Fは流体供給時においては常に正であり、これが弾性部材123の弾性力を上回るように設定されていれば、可動支持部材121は二次側へ限界位置まで移動し、大気開放口103aを閉鎖する。また、流体の供給停止時においても大気開放口103aは閉鎖されたままとする必要があるので、P1=P2になった場合でも上記の力Fが正になり、しかも、それが弾性部材123の弾性力を上回るように設定される。一方、一次側の流体圧P1が二次側の流体圧P2より或る程度小さくなり、上記の力Fが弾性部材123の弾性力を下回ると、可動支持部材121は一次側へ移動し、上述のように大気開放口103aを開く。
【0036】
以上説明した本実施形態では、図5(b)に示すように、流通孔121aを備えた可動支持部材121が流路部分102L内において流路方向に移動可能に配置されるとともに、可動支持部材121に設けられた弁体部121cによって大気開放口103aが開閉可能に構成されていることにより、一次側の流体圧P1と二次側の流体圧P2の関係に応じた可動支持部材121の流路方向への移動によって大気開放口103aが開閉するので、図5(a)に示す従来構造のように大気開放弁に対して配管を介して一次側の流体圧を与える必要がなくなるため、配管構造や接続構造を簡易に構成することができる。したがって、圧力開放装置120を低コストで製造できるとともに漏水などの危険性を低減して高い信頼性を得ることができ、さらに装置全体をコンパクトに構成できる。
【0037】
本実施形態では、可動支持部材121の流通孔121a内に逆止弁124が保持され、流体供給時において流通孔121a内で圧力損失を生じさせることができるため、一時側の圧力P1と二次側の圧力P2の圧力差を大きくすることができ、その結果、流体圧の変動や過流等による影響が多少存在しても可動支持部材121を安定させることができ、大気開放口103aを確実に閉鎖し続けることが可能になる。
【0038】
また、逆止弁124は二次側の流体圧P2が一次側の流体圧P1より高くなった場合に閉弁するとともに、当該場合において二次側の流体圧P2を受けて可動支持部材121を一次側へ移動させる力を増大させるので、確実に大気開放口103aを開放させることができる。このことは、弾性部材123の弾性力を小さくしても確実な動作が可能になることを意味するから、圧力開放装置120の通常時の動作安定性(大気開放口103aの閉鎖状態の安定性)を向上させる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、図6を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。本実施形態において、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。図6は第2実施形態の大気開放弁閉状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図である。
【0040】
本実施形態では、二次側管体102の内部に圧力開放機構120、電磁弁130、二次側逆止弁140がそれぞれ配置されている点では第1実施形態と同様であるが、内部に設けられた二次側の流路部分102M′が一次側の流路部分102Lと略平行に構成され、これによって一次側管体101内に構成された流路部分101Lと二次側管体102内の二次側の流路部分102M′とが略平行に構成される。したがって、一次側管体101の流入口101aと、二次側管体102の流出口102h′とが相互に逆向きに開口するので、流体供給経路中において、開閉弁ユニット100をほぼ直線状に配置することが可能になる。したがって、開閉弁ユニット(圧力開放装置)100をタンク隅部などの狭い場所にも流体供給経路に沿ってコンパクトに配置できる。
【0041】
[第3実施形態]
次に、図7乃至図9を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。図7は第3実施形態の大気開放弁閉状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図8は同実施形態の大気開放弁開状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図9は圧力開放機構の断面における圧力印加状態の異なる断面領域を示す断面説明図である。
【0042】
本実施形態では、圧力開放機構120′の断面構造が上記各実施形態とは異なる。すなわち、二次側管体102′の拡径収容部102a′が環状に構成され、この内部に配置される可動支持部材121′の開口枠部121b′も環状に構成され、この開口枠部121b′の外周部と管壁との間に環状のダイヤフラム122′が取り付けられている。そして、流路部分102L′には流路方向の前後に比べて周囲に環状に張り出した外延部102T′が設けられ、この環状の外延部102T′に対し、二次側から一次側に向けて大気開放口103a′が開口している。ここで、断面円形等の管路状に構成された大気開口路103Lの内端側に環状の大気開放室104が形成され、この大気開放室104の開口部として構成されることによって大気開放口103a′もまた流路部分102L′の外周部に開口するように環状に構成される。ここで、開口枠部121b′の外縁部分と環状のダイヤフラム122′は、環状に構成された本発明の弁体部として機能し、これによって環状の大気開放口103a′が開閉される。ただし、大気開放口103a′は環状の大気開放室104の任意の位置に任意の形状で形成することも可能である。例えば、環状の大気開放室104に対して任意の角度位置に部分的に円形状、多角形状などといった環状以外の開口形状を有する大気開放口103a′を形成してもよい。
【0043】
本実施形態では、上記のように環状に構成されることによって大気開放口103a′の開口面積を増大させることが容易であり、これによって大気開放弁としての機能を高めることができる。逆に言えば、大気開放口103a′の開口面積を確保しつつ、接続端部112′をコンパクトに構成することが可能になる。また、大気開放路103Lに環状の大気開放室104を設置することで、上記のように大気開放口103a′を任意の位置に任意の形状で形成することができるため、配置構成の自由度が向上することから、接続端部112′をコンパクトに構成することが可能になる。
【0044】
図9に示すように、本実施形態の場合、一次側の流体圧を受ける断面領域A、二次側の流体圧を受ける断面領域B、及び、大気開放口103a′(或いは大気開放室104)に対応して大気圧を受ける断面領域Cはそれぞれ環状に構成され、相互に全て同心状に構成される。また、本実施形態では、断面領域Aと断面領域Cは外周部分において半径方向に重なる。
【0045】
本実施形態の場合、大気開放口103a′の開口面積を大きく採れるので、通常時において可動支持部材121′及びダイヤフラム122′の受ける一次側の流体圧と大気圧の差に起因する大気開放口103a′の環状の縁103b′に対する閉鎖力を大きくすることができる。したがって、通常時における圧力開放機構120′の安定性をさらに高めることが可能である。
【0046】
[第4実施形態]
次に、図10乃至図12を参照して本発明に係る第4実施形態について説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。図10は第4実施形態の大気開放弁閉状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図11は本実施形態の大気開放弁開状態における流路方向に沿った断面を示す縦断面図、図12は圧力開放機構の断面における圧力印加状態の異なる断面領域を示す断面説明図である。
【0047】
本実施形態では、圧力開放機構120″が基本的には第1実施形態と同様の構造を有するが、可動支持部材121の端部121gを付勢する弾性部材123の代わりに、可動支持部材121″の弁ガイド部121d″に設けられた段差部121hと大気開放管103″の内部に設けられた段差部103cとの間に圧縮状態で保持された弾性部材125が大気開放路103L″内に配置されている点で異なる。
【0048】
上記のように構成すると、大気開放口103a″を閉鎖する部位(すなわち、開口縁103b″に当接する弁体部121c及び弁シール部122c並びに弁ガイド部121d″)に弾性部材125の弾性力を直接加えて大気開放口103a″を開放させることができるので、非常時の開弁動作を確実に行うことができる。もちろん、本実施形態において第1実施形態と同様の弾性部材123を併用してもよい。
【0049】
なお、本実施形態では、図10及び図11に示すように、大気開放口103a″の先の大気開放管103の内面に段差部103dを設け、該段差部103dに弁ガイド部121d″が当接することで、通常時において弁シール部122cに過剰な閉鎖力が加わらないようにしている。これは、ほとんどの使用態様では大気開放口103a″の開口縁103b″は弁シール部122cに常時当接した状態とされるので、過剰な閉鎖力が加わると、弁シール部122cが劣化し、漏水やシールの固着による開弁動作不良が生ずる危険性が高まるからである。
【0050】
また、通常時における可動支持部材121の姿勢は、上記筒状部121eの端部121gと段差部102dの当接位置と、上記段差部103dと弁ガイド部121d″の当接位置との関係で規定されるので、両当接位置を整合させることで通常時において可動支持部材121の姿勢が傾斜することを防止することも可能になる。
【0051】
図12に示すように、圧力開放装置120″においても、第1実施形態と同様に、一次側の流体圧が加わる断面領域A、二次側の流体圧が加わる断面領域B、及び、大気圧の加わる断面領域Cが存在する。なお、本実施形態の場合、流路部分102Lの開口縁102gと大気開放口103a″の開口縁103b″とは、流路部分102Lと大気開放路103Lの隣接部分において一体化されている。このように構成すると、流路断面や大気開放口の開口断面を確保しつつ、接続端部112の外形をコンパクトに構成できる。
【0052】
尚、本発明の圧力開放装置及び開閉弁ユニットは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では流路100L内に配置された可動支持部材121に大気開放口103aを開閉するための弁体部121cが一体に設けられて両者が連動するように構成されているが、可動支持部と弁体部とを別体で構成し、両者を直接若しくは他のリンク部材等を介して接続することで、可動支持部と弁体部とが連動するように構成してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では逆止弁124は可動支持部材121の流通孔121aの内部に保持されているが、例えば可動部に保持された状態であれば、可動部の上流側や下流側に逆止弁124が配置されていても構わない。さらに、流量計110及び電磁弁130は圧力開放機構120の機能に直接関係せず独立して機能するものであるため、それらの配置が変化しても本願の趣旨が変わるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図2】第1実施形態の圧力開放機構の流路方向と直交する断面構造を示す縦断面図。
【図3】第1実施形態の圧力開放機構の異なる圧力が印加される断面領域を示す説明図。
【図4】第1実施形態の流路方向に沿った断面を示す非常時の縦断面図。
【図5】従来の圧力開放装置と本発明に係る圧力開放装置の構成を対比して示す基本構成図。
【図6】第2実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図7】第3実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図8】第3実施形態の流路方向に沿った断面を示す非常時の縦断面図。
【図9】第3実施形態の圧力開放機構の異なる圧力が印加される断面領域を示す説明図。
【図10】第4実施形態の流路方向に沿った断面を示す通常時の縦断面図。
【図11】第4実施形態の流路方向に沿った断面を示す非常時の縦断面図。
【図12】第4実施形態の圧力開放機構の異なる圧力が印加される断面領域を示す説明図。
【符号の説明】
【0055】
100…開閉弁ユニット(圧力開放装置)、100L…流路、101…一次側管体、102…二次側管体、110…流量計、120…圧力開放機構、121…可動支持部材、121a…流通孔、121b…開口枠部、121c…弁体部、122…ダイヤフラム、123…弾性部材、124…逆止弁、130…電磁弁(開閉弁)、140…二次側逆止弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を一次側から二次側へ供給するための流路と、
該流路に沿った流通孔を構成するとともに一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力により前記流路内において流路方向に移動可能に配置される可動部、及び、該可動部と連動する弁体部を有する可動体と、
前記流路に開口するとともに前記弁体部に対向配置され、前記可動部が一次側に配置されるときには前記弁体部が離間して開放され、前記可動部が二次側に配置されるときには前記弁体部により閉鎖される大気開放口と、
を具備することを特徴とする圧力開放装置。
【請求項2】
前記可動部に保持される逆止弁をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の圧力開放装置。
【請求項3】
前記可動体は、前記流通孔を構成する可動支持部材と、該可動支持部材を前記管壁に移動可能に接続する可撓性膜とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力開放装置。
【請求項4】
前記流路には外周側に張り出す外延部が設けられ、前記大気開放口は前記外延部に対して一次側に向けて開口し、
前記弁体部は、前記大気開放口の一次側に対向配置され、前記流路方向に移動することで前記大気開放口を開閉することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧力開放装置。
【請求項5】
前記外延部は前記流路の外周部において環状に構成され、前記大気開放口は前記外延部に対して環状に開口することを特徴とする請求項4に記載の圧力開放装置。
【請求項6】
前記逆止弁のさらに二次側に二次側逆止弁をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧力開放装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧力開放装置と、前記流路を開閉する開閉弁とをさらに具備することを特徴とする開閉弁ユニット。
【請求項1】
流体を一次側から二次側へ供給するための流路と、
該流路に沿った流通孔を構成するとともに一次側と二次側の流体圧差に基づいて生ずる力により前記流路内において流路方向に移動可能に配置される可動部、及び、該可動部と連動する弁体部を有する可動体と、
前記流路に開口するとともに前記弁体部に対向配置され、前記可動部が一次側に配置されるときには前記弁体部が離間して開放され、前記可動部が二次側に配置されるときには前記弁体部により閉鎖される大気開放口と、
を具備することを特徴とする圧力開放装置。
【請求項2】
前記可動部に保持される逆止弁をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の圧力開放装置。
【請求項3】
前記可動体は、前記流通孔を構成する可動支持部材と、該可動支持部材を前記管壁に移動可能に接続する可撓性膜とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力開放装置。
【請求項4】
前記流路には外周側に張り出す外延部が設けられ、前記大気開放口は前記外延部に対して一次側に向けて開口し、
前記弁体部は、前記大気開放口の一次側に対向配置され、前記流路方向に移動することで前記大気開放口を開閉することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧力開放装置。
【請求項5】
前記外延部は前記流路の外周部において環状に構成され、前記大気開放口は前記外延部に対して環状に開口することを特徴とする請求項4に記載の圧力開放装置。
【請求項6】
前記逆止弁のさらに二次側に二次側逆止弁をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧力開放装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧力開放装置と、前記流路を開閉する開閉弁とをさらに具備することを特徴とする開閉弁ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−25361(P2010−25361A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183656(P2008−183656)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(591021671)日本電産ニッシン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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