説明

圧延機、特に冷間ピルガー圧延機用の駆動システム

【課題】簡略化されて価格の安い構成の冷間ピルガー圧延機用の駆動システムを提供する。
【解決手段】少なくとも一つの前後移動可能な圧延スタンド2と、圧延スタンド2により発生された質量力を少なくとも部分的に補償させる補償重量5を備えるクランクアーム4を有する少なくとも一つのクランク駆動部3と、少なくとも一つの駆動手段6と、圧延スタンド2とクランクアーム4とを関節的に互いに連結する少なくとも一つの推力ロッド7とを備える圧延機、特に冷間ピルガー圧延機用の駆動システム1において、それぞれにクランク駆動部3’、3”、クランクアーム4’、4”、補償重量5’、5”と推力ロッド7’、7”から成る二つのユニットが存在し、これらユニットは駆動システム1の中心平面8の両側に配置されていて、少なくとも一つの駆動手段6により反対方向に駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、少なくとも一つの前後移動可能な圧延スタンドと、圧延スタンドにより発生された質量力を少なくとも部分的に補償させる補償重りを備えるクランクアームを有する少なくとも一つのクランク駆動部と、少なくとも一つの駆動手段と、圧延スタンドとクランクアームとを関節的に互いに連結する少なくとも一つの推力ロッドとを備える圧延機、特に冷間ピルガー圧延機用の駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動システムは、例えばドイツ特許第4336422号明細書(特許文献1)から知られている。冷間ピルガー処理を実施するために、冷間ピルガー圧延機対により構成された圧延スタンドが必要であって、往復動するように駆動される。このために、モータにより駆動されるクランク駆動部が使用される。クランク駆動部は圧延スタンドの質量力を補償させるために、補償重りを備えている。無論、この重りが質量力の十分な補償のために少なくとも十分ではない。
【0003】
冷間ピルガー圧延機の生産性は直接に時間単位当たり圧延スタンドの工程数に依存していて、それ故に、経済的理由から分当たり出来るだけ大きな数の作業工程が手に入れられるからである。けれども、これは、駆動システムと特にその軸受け並びに土台と周辺に負担を負わせる大きな質量力を意味する。それ故に、上記知られた解決手段では、クランク駆動部が歯部を介して逆質量が重点に関して偏心的に配置されている別の軸を駆動することが企図されている。この逆質量がクランク駆動部の回転の際に逆方向に且つ十分な質量力或いは質量モーメントを発生させる位置で回転するので、全体として全駆動システムにおける質量力補償が生じる。
【0004】
公知の構成では、多数の機械要素が歯部を介して互いに係合することを必要であるから、全体として全駆動システムの本当に費用のかかる構造が生じることが欠点である。それ故に、駆動システムと冷間ピルガー圧延機の費用が上昇し、この場合に、この下で装備自体用の投資費用のみばかりではなく、むしろ装備土台、代用部材や摩耗部材及び保守と修理のための費用も含まれる。
【0005】
ドイツ特許第962062号明細書(特許文献2)から冷間ピルガー圧延機用の駆動システムは知られていて、圧延スタンドを駆動するクランクアームが遠心重量と、第一順序の質量力及び駆動部における質量モーメントを補償させる垂直往復動補償重量とを備えている。この解決手段では、補償重量を土台に垂直交換を配慮されなければならないから、圧延機の土台が非常に費用のかかり且つそれでより高く構成されていることが欠点である。この場合に、大きく且つ深い地階が必要であり、それは一致して圧延機の費用を上昇させる。
【0006】
ドイツ特許第3613036号明細書(特許文献3)は冷間ピルガー圧延機の圧延スタンド用の駆動部を開示し、遊星クランク駆動部が質量力と質量モーメントを駆動補償させるために使用される。この解決手段により最適質量補償が行われるにもかかわらず、この駆動が小さい冷間ピルガー圧延機の際のみに適している、というのは大きな装備の場合にはそのような駆動システムの構造大きさが過度に増加し、それにより高い費用を引き起こすからである。
【0007】
ドイツ特許第10147046号明細書(特許文献4)から冷間ピルガー圧延機用の駆動システムが知られていて、この駆動システムは質量力補償を改良させるために補償重量を備える別体の軸を使用し、これら軸が一つの駆動手段によって駆動され、クランク駆動部の駆動手段と無関係である。圧延機の作動中の軸の同期化が電子的形式で行われる。この場合に駆動すべき費用は無論かなり重大である。
【0008】
冷間ピルガー圧延機用の公知の駆動システムでは、少なくとも二倍に直角に曲げられた高価なクランク軸が使用され、推力ロッドを介して圧延スタンドを往復動するよう移動する。クランク軸と別の回転する追加軸における補償重量が圧延スタンドを往復動する運動によって生じる質量力を取り除く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ特許第4336422号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第962062号明細書
【特許文献3】ドイツ特許第3613036号明細書
【特許文献4】ドイツ特許第10147046号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故に、この発明の課題は、簡略化されてそれにより価格の安い構成の際に質量力がいずれにしても最初の秩序で出来るだけ僅かに保持され得るように特に冷間ピルガー圧延機用のこの種の駆動システムを創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、この発明によると、それぞれにクランク駆動部、クランクアーム、補償重量と推力ロッドから成る二つのユニットが存在し、これらユニットが駆動システムの中心平面の両側に配置されていて、少なくとも一つの駆動手段により逆方向に駆動されることによって解決される。
【0012】
この場合に、両ユニットは好ましくは中心平面に対して鏡像的に形成されている。
【0013】
両ユニットの各々は、両ユニットが逆方向に駆動される一つの固有駆動手段を有する利点である。この場合に駆動手段が少なくとも一つの電動モータである。
【0014】
電動モータとクランク駆動部の間には一個づつの伝動装置が配置されている。この場合に、伝動装置として好ましくは一段状平歯車伝動装置が設けられている。
【0015】
選択的且つ別の好ましい解決手段は、電動モータがクランク駆動部を伝動装置の中間接続なしに駆動することを企図する。この場合に、電動モータが好ましくはゆっくりな回転するトルク強さモータとして形成されている。
【0016】
クランク駆動部は好ましくは限定されていない推力ロッドとして形成されている。
【0017】
提案された駆動システムは補償質量を備える別の軸がない。
【0018】
補償重量の質量は、駆動システムの稼働における最初の秩序のスタンド質量力が少なくとも実質的に好ましくは完全に補償されるように、選択され得る。
【0019】
必要とされたクランク駆動部が非常に簡単に構成されていることは利点である。特に特殊なクランク駆動部が必要なく、それは典型的に冷間ピルガー圧延機用の予め公知の駆動システムを使用する。特に費用がかかり、高価である二倍に直角に曲げられたクランク軸を放棄され得る。
【0020】
さらに、別体の補償軸が、先行技術では公知であるように、省略され得る。
【0021】
さらに、全装備がより短く構成できる。
【0022】
この発明の駆動システムはクランク駆動部の両クランク屈曲部の機械的結合を余計となす。このクランク駆動部は限定されていない推力ロッドとして形成されている;それ故に、圧延スタンドに対する推力ロッド継手がクランクの回転軸線を通して延びている直線上を移動する。両クランクが特に別体のモータにより駆動される。クランクは互いに反対回転方向を有し、それ故に、単にクランクにおける補償重量により最初の秩序の質量力が完全に補償され得る。補償重量を備える追加軸がクランクの反対回転方向の仮定の下で省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図2による断面A−Bにおける第一実施態様による圧延スタンドを備える冷間ピルガー圧延機用の駆動システムの側面図を示す。
【図2】駆動システムに関する図1に対する平面図を示す。
【図3】図4による断面C−Dにおける第二実施態様による圧延スタンドを備える冷間ピルガー圧延機用の駆動システムの側面図を示す。
【図4】駆動システムに関する図3に対する平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面にはこの発明の二つの実施例が図示されている。
【実施例1】
【0025】
図1と2には、この発明による提案の第一実施態様が図示されている。駆動システム1は冷間ピルガー圧延機を駆動するために用いられ、この駆動システムにより、公知の冷間ピルガー圧延処理を実施するために、水平方向に振動するように往復移動しなければならない圧延スタンド2が図示されている。
【0026】
圧延スタンド2の振動する駆動は二つの鏡像的に垂直に整合された中心平面8(図2を参照)に配置されたユニットにより行われ、これらユニットはそれぞれに一つのクランク駆動部3’或いは3”、一つのクランクアーム4’或いは4”、一つの補償重量5’或いは5”と一つの推力ロッド7’或いは7”から成り立つ。これらユニットは冷間ピルガー圧延機用のそのようなユニットとして知られている。
【0027】
これと相違して、ここで二つのこれらユニットは鏡像的に配置されて電動モータの形態の一個づつの駆動手段6’、6”により駆動され、しかも反対方向に駆動される。一方のユニットのクランク駆動部3’が中心平面8の一側面上で例えば時計針方向に回転する一方で、他方のユニットのクランク駆動部3”が中心平面8の反対側面上で反時計針方向に移動する。
【0028】
一個づつの一段状平歯車伝動装置9’或いは9”を介してクランク駆動部3’或いは3”駆動する二つの電動モータ6’、6”を使用する。
【0029】
圧延スタンド2はさらに両クランク駆動部3’、3”によって別体のモータ6’、6”から反対方向に駆動される二つの推力ロッド7’、7”により作用される。質量補償は、クランク駆動部3’、3”の補償重量5’、5”が反対に回転することによって行われる。それ故に、最初の秩序の質量力が完全に補償され得る。
【実施例2】
【0030】
図3と4には、代用的実施態様が図示されている。ここでは、モータ6’、6”とクランク駆動部3’、3”の間の伝動装置9’、9”を放棄され得た、即ちクランク駆動部3’、3”の駆動が直接にモータ6’、6”の駆動軸により行われる。伝動装置9’、9”の変速段の放棄は、ゆっくりな回転して且つトルク強力なモータの使用によって代用されるか、或いは可能となる。
【0031】
これによってすべての平歯車と一致する伝動装置ハウジングが省略されるので、駆動システムのなお簡単な構成が達成される。
【符号の説明】
【0032】
1.....駆動システム
2.....圧延スタンド
3.....クランク駆動部
3’、3”....クランク駆動部
4.....クランクアーム
4’、4”....クランクアーム
5.....補償重量
5’、5”....補償重量
6.....駆動手段
6’、6”....駆動手段
7.....推力ロッド
7’、7”....推力ロッド
8.....中心平面
9’、9”....伝動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの前後移動可能な圧延スタンド(2)と、圧延スタンド(2)により発生された質量力を少なくとも部分的に補償させる補償重量(5)を備えるクランクアーム(4)を有する少なくとも一つのクランク駆動部(3)と、少なくとも一つの駆動手段(6)と、圧延スタンド(2)とクランクアーム(4)とを関節的に互いに連結する少なくとも一つの推力ロッド(7)とを備える圧延機、特に冷間ピルガー圧延機用の駆動システム(1)において、それぞれにクランク駆動部(3’、3”)、クランクアーム(4’、4”)、補償重量(5’、5”)と推力ロッド(7’、7”)から成る二つのユニットが存在し、これらユニットは駆動システム(1)の中心平面(8)の両側に配置されていて、少なくとも一つの駆動手段(6)により反対方向に駆動されることを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
両ユニットが中心平面(8)に対して鏡像的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動システム。
【請求項3】
両ユニットの各々は一個の固有駆動手段(6’、6”)を有し、その駆動手段により両ユニットが反対方向に駆動されることを特徴とする請求項1或いは2に記載の駆動システム。
【請求項4】
駆動手段(6’、6”)が電動モータであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項5】
駆動手段(6’、6”)とクランク駆動部(3’、3”)の間には伝動装置(9’、9”)が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動システム。
【請求項6】
伝動装置(9’、9”)が一段状平歯車伝動装置として形成されていることを特徴とする請求項5に記載の駆動システム。
【請求項7】
駆動手段(6’、6”)が伝動装置の仲介なしにクランク駆動部(3’、3”)駆動することを特徴とする請求項4に記載の駆動システム。
【請求項8】
駆動手段(6’、6”)がゆっくりに回転してトルク強力なモータとして形成されていることを特徴とする請求項7に記載の駆動システム。
【請求項9】
クランク駆動部(3’、3”)が限定されていない推力クランクとして形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項10】
補償重量(5’、5”)の質量は、駆動システム(1)の稼働中の最初の秩序のスタンド質量力が少なくとも実質的に特に完全に補償されるように、選択されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−179366(P2010−179366A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8914(P2010−8914)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(502056226)エスエムエス メーア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (22)
【氏名又は名称原語表記】SMS Meer GmbH
【住所又は居所原語表記】Ohlerkirchweg 66, D−41069 Moenchengladbach, Germany