説明

圧着用プライヤー

【課題】 ワイヤーを通したスリーブを圧潰してワイヤーにスリーブを固定するに際して使用し,照明装置のように狭いスペースしかなくてもスリーブの固定作業を容易且つ確実になし得るようにしたプライヤーを提供する。
【解決手段】 プライヤーAにおける一対の挟持部5の先端に同一の交差方向に向けて断面L字状をなすように数mm程度の突出幅の交差突片10を突設し,該交差突片10の対接面に,一方を半円の受入溝12とし,他方を小突起の圧潰突起13としたスリーブ圧潰部11を形成する。レベル固定金具30の下端に突出して吊りワイヤー21を通したスリーブ35をスリーブ圧潰部11によって圧潰してかしめ固定するように使用する。プライヤーAは吊りワイヤー21に平行となるように上向きに手持ちすればよいから,スペースが狭い箇所でもプライヤーAの先端を挿入できれば,スリーブ35のかしめ固定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,作業現場において工具として使用する圧着用プライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば,照明器具等の物体をコンクリートスラブスラブにワイヤー吊りするとき,その吊り支持部,例えば天板に透設した透孔に挿通して上下のナットによって天板を挟持し,吊りワイヤーを挿通して下端に設置したスリーブをプライヤーで圧潰することによって吊りワイヤーとスリーブをかしめ固定するように使用するレベル固定金具(抜き通し型ワイヤーチャック)が提案されている。またスリーブを圧潰してかしめ固定するために使用するプライヤーとして,例えば一対の杆体をその長手方向中間で軸支固定し,軸支固定部の一方に把持部を,他方に一対の挟持部を配置し,該挟持部の先端側の対接面にスリーブ圧潰用の対向半円溝を配置したものが一般に市販されている。
【0003】
【特許文献1】特願2004−80958号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記レベル固定金具を使用して,例えば照明器具をコンクリートスラブに対してワイヤー吊り支持するに際して,上記プライヤーを使用してそのスリーブを圧潰してかしめ固定を行なうには,この種スリーブは一般に細径にして長さを1cm乃至それ以下の,例えば数mm程度のものとして形成されるために,プライヤーの挟持部に配置した対向半円溝にスリーブを受け入れるようにプライヤーを水平に手持ちしてその圧潰作業を行なう必要がある。しかし乍ら,レベル固定金具の突出長さは一般に天板から下方に数cm程度とされることになるし,また照明器具の内側空間も蛍光灯のプラグ等が設置されて狭いために,プライヤーを水平に手持ちして圧潰のかしめ固定作業を行なうと,プライヤーを把持した手が照明器具の天板や側板に当ることも多く,これを避けながら圧潰する必要が生じてかしめ固定の作業が煩雑化する傾向を生じるし,水平に手持ちした状態でスリーブを適切に圧潰しないと,吊りワイヤーに対するスリーブのかしめ固定が不充分となって所定の吊り強度を得られずに照明器具が落下する可能性が残るという問題点がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,狭い箇所でも挟持部が挿入できる程度の空間が存在すれば,スリーブの圧潰作業を可及的容易且つ確実になし得るようにした圧着用プライヤーを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に添って本発明は,一対の挟持部にそれぞれ交差突片を一体に形成して,該交差突片にスリーブ圧潰部を設置することによって,プライヤーをワイヤー方向,即ちこれに挿通したスリーブ方向と同じ方向に向けて手持ちするようにして,挟持部先端のスリーブ圧潰部を挿入し得る程度のスペースを確保できれば,そのスリーブ圧潰によるかしめ固定作業を可及的容易且つ確実になし得るようにしたものであって,即ち請求項1に記載の発明を,一対の把持部を開閉することによって開閉する一対の挟持部の先端に同一の交差方向に向けてそれぞれ一体に突出した一対の交差突片を形成し,該一対の交差突片の対接面に該交差突片を閉鎖することによって交差突片間に挿通したスリーブを圧潰することによってかしめ固定するスリーブ圧潰部を設置してなることを特徴とする圧着用プライヤーとしたものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,スリーブの圧潰を片側のスリーブ受入溝に受入れて,プライヤーの把持部を把持することによって強度に優れたかしめ固定を可及的確実になし得るものとするように,これを,上記スリーブ圧潰部を,一方の交差突片においてスリーブ受入れ用の受入溝,他方の交差突片において該受入溝と対をなすスリーブ圧潰用の圧潰突起によって形成してなることを特徴とする請求項1に記載の圧着用プライヤーとしたものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,プライヤーをワイヤーと平行に向けて手持ちすることによって自ずとスリーブ圧潰部がスリーブ圧潰に適した位置となって,更に確実なスリーブ圧潰作業をなし得るものとするように,これを,上記一対の交差突片を,それぞれ一対の挟持部先端に対して断面L字状をなすように直交配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧着用プライヤーとしたものである。
【0009】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のとおりに構成したから,プライヤーをワイヤー方向,即ちこれに挿通したスリーブ方向と同じ方向に向けて手持ちするようにして,挟持部先端のスリーブ圧潰部を挿入し得る程度のスペースを確保できれば,そのスリーブ圧潰によるかしめ固定作業を可及的容易且つ確実になし得るようにした圧着用プライヤーを提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,スリーブの圧潰を片側のスリーブ受入溝に受入れて,圧着用プライヤーの把持部を把持することによって強度に優れたかしめ固定を可及的確実になし得るものとすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は,同じく上記に加えて,圧着用プライヤーをワイヤーと平行に向けて手持ちすることによって自ずとスリーブ圧潰部がスリーブ圧潰に適した位置となって,更に確実なスリーブ圧潰作業をなし得るものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,Aは圧着用プライヤーであって,該プライヤーAは,例えばレベル固定金具30を使用して,照明器具,配管支持用L形鋼,空調吹出口等の物体をコンクリートスラブに一端を固定した吊りワイヤー21によって吊り支持するに際して,レベル固定金具30に設置してワイヤー21を挿通したスリーブ35を圧潰して該スリーブ35をかしめ固定するに好適に使用し得るかしめ固定のための圧着用のものとしてあり,該プライヤーAは,一対の把持部1を開閉することによって開閉する一対の挟持部5の先端に同一の交差方向に向けてそれぞれ一体に突出した一対の交差突片10を形成し,該一対の交差突片10の対接面に該交差突片10を閉鎖することによって交差突片10間に挟持したスリーブ35を圧潰してかしめ固定するスリーブ圧潰部11を設置したものとしてある。
【0014】
本例にあって圧着用プライヤーAは,一対の挟持部5をそれぞれ回転自在に軸支固定することによって先端側に挟持部5を有する一対の把持部1を,該把持部1の表裏にその対向方向に交差するように突設した軸支プレート2を回動自在に軸支し且つ一対の挟持部5を表裏の連結リンク7によって回動自在に軸支し,軸支プレート2と挟持部5及び連結リンク7と挟持部5の軸支によって2重てこを構成するようにして,把持部1の開閉に伴って挟持部5を強力且つ緩やかに開閉するものとしてある。
【0015】
挟持部5の先端に突出した一対の交差突片10には,上記スリーブ圧潰部11を配置してあり,本例にあって上記一対の交差突片10は,これを,それぞれ一対の挟持部5先端に対して断面L字状をなすように直交配置したものとしてある。
【0016】
即ち本例にあって一対の交差突片10は,一対の挟持部5の先端を同一の交差方向にL字状に屈曲して突出した,例えば突出幅を1cm以下,特に7〜8mmm程度,肉厚を5mm程度として,例えば同じく5mm程度とした挟持部5の肉厚との合計厚さを1.5cm程度乃至それ以下とすることによって,数cm程度の狭いスペースを確保できれば,プライヤーAの先端を挿入して上記かしめ固定の作業をなし得るようにしてある。
【0017】
スリーブ圧潰部11は一対の交差突片10の対接面の肉厚方向に垂直をなし,スリーブ35を受入れてその圧潰をなし得るように一対の交差突片10の対接面に対をなして配置したものとしてあり,本例にあって該スリーブ圧潰部11は,これを,一方の交差突片10においてスリーブ受入れ用の受入溝12,他方の交差突片10において該受入溝12と対をなすスリーブ圧潰用の圧潰突起13によって形成してある。
【0018】
本例にあってスリーブ圧潰部11をなす一方の受入溝12は,例えばレベル固定金具30に設置したスリーブ35の円形形状に合せて平面半円をなす半円溝によるものとし,他方の圧潰突起13は,例えば該受入溝12に挿入された際に吊りワイヤー21の太さに応じた空間を形成するように円形乃至矩形にして受入溝12の深さ(半径)より短寸の小突起によるものとし,把持部1を開閉操作することによって開閉する挟持部5を閉成した際に受入溝12に圧潰突起13が挿入されて受入溝12に挿通したスリーブ35を該圧潰突起13が押圧変形して,該スリーブ35が破断したりすることなく,該スリーブ35が吊りワイヤー21に対して強固な圧着状態に圧潰してそのかしめ固定をなし得るようにしてある。
【0019】
図中3は把持部1間に配置した開成方向に付勢したねじりコイルばね,4は把持部1の一方のつめ車と他方のつめによって,把持部1の閉成による挟持部5のトルクを次第に強めるように配置したラチェット機構における上記他方のつめを,スリーブ35の圧潰後に挟持部5を把持して上記ねじりコイルばね3の付勢力によってつめ車から解除する引張コイルばね,6は挟持部5の対接面に設置し,上記吊りワイヤー21に上記レベル固定金具30のスリーブ35を圧着する以外の用途にして,例えばワイヤーにコンクリート埋込用ループを形成するに使用するため等他のスリーブを圧潰するに使用する圧潰部である。
【0020】
上記レベル固定金具30を用いた物体,例えば照明器具の吊り支持は,例えばコンクリートスラブの打設時に吊りワイヤー21の一端を埋め込み固定する等によって吊りワイヤー21をコンクリートスラブから垂下するように設置する一方,レベル固定金具30の下位ナット33を取り外して,該レベル固定金具30を照明器具の天板20に透設した透孔に落とし込むように嵌挿し,上記取り外した下位ナット33を筒部31に螺装してその締着を行なうように該レベル固定金具30を照明器具の支持対象部位をなす天板20に対して,例えば面内複数箇所に装着し,該照明器具を手持ちしてレベル固定金具30の,例えばこれを上下に貫通するように配置したアルミパイプによるスリーブ35に上方から吊りワイヤー21を挿通してレベル固定金具30に吊りワイヤー21をセットし,レベル固定金具30から下方に突出した吊りワイヤー21下端を引き下げるように照明器具を押上げて天井面に対して照明器具のレベル出しを行い,然る後にレベル固定金具30の下端に突出した上記アルミパイプによるスリーブ35を上記プライヤーAによって圧潰して吊りワイヤー21にスリーブ35をかしめ固定し,必要に応じてレベル固定金具30から突出した残余の吊りワイヤー21を切断除去して,その吊り支持を行なうものとしてある。図中32はレベル固定金具30の上位ナット,34は天板21を挟持するためのワッシャーである。
【0021】
このときプライヤーAは該スリーブのかしめ固定用に上記一対の挟持部5にその先端をそれぞれ断面L字状に屈曲した一対の交差突片10にスリーブ圧潰部11を形成してあるから,プライヤーAを上記レベル固定金具30に向けて,吊りワイヤー21と平行となるように把持部1を把持することにより該プライヤーAを上向きに手持ちしてそのスリーブ圧潰部11を照明器具内のスペースに挿入し,その一方の受入溝12に吊りワイヤー21を受入れた状態で把持部1を閉成し交差突片10を閉成してその対接を行なって,その他方の圧潰突起13を受入溝12に部分的に挿入するようにしてスリーブ35を圧潰すればよく,従ってボックスをなすように天板21と図示省略の側板が配置され,天板21には蛍光灯のプラグ等が配置されることによって狭いスペースが残されるにすぎない照明器具にあって,プライヤーAを上向きに手持ちした状態で該狭いスペースに対してスリーブ圧潰部11を挿入できれば,吊りワイヤー21に対するスリーブ35の圧潰とこれによるかしめ固定を容易且つ確実に行なうことができ,例えばプライヤーを横向きに手持ちすることによって手が当ったり,スリーブ35とスリーブ圧潰部11の位置がずれてかしめ固定が不充分となるような可能性を解消することができる。
【0022】
図示した例は以上のとおりとしたが,スリーブ圧潰部を交差突片にその肉厚方向に複数のスリーブ径に対応し得るように複数配置すること,スリーブ圧潰部を対向半円溝によるものとすること,交差突片の突出角度をやや上向き傾斜や下向き傾斜して挟持部から突出し,該交差突片に傾斜角度に応じたスリーブ圧潰部を配置し,プライヤーをやや傾けた状態に手持ちしてスリーブのかしめ固定を行なうようにすること等を含めて,本発明の実施に当って,プライヤー,その把持部,挟持部,交差突片,スリーブ圧潰部等の各具体的形状,構造,材質,用途,これらの関係,これらに対する付加等は,上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】プライヤーの正面図である。
【図2】プライヤーの側面図である。
【図3】プライヤーの把持部とスリーブ圧潰部の関係を示す拡大平面図である。
【図4】レベル固定金具と吊りワイヤーの関係を示す縦断面図である。
【図5】プライヤーによるスリーブの圧潰状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
A プライヤー
1 把持部
5 挟持部
10 交差突片
11 スリーブ圧潰部
21 吊りワイヤー
30 レベル固定金具
35 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の把持部を開閉することによって開閉する一対の挟持部の先端に同一の交差方向に向けてそれぞれ一体に突出した一対の交差突片を形成し,該一対の交差突片の対接面に該交差突片を閉鎖することによって交差突片間に挟持したスリーブを圧潰してかしめ固定するスリーブ圧潰部を設置してなることを特徴とする圧着用プライヤー。
【請求項2】
上記スリーブ圧潰部を,一方の交差突片においてスリーブ受入れ用の受入溝,他方の交差突片において該受入溝と対をなすスリーブ圧潰用の圧潰突起によって形成してなることを特徴とする請求項1に記載の圧着用プライヤー。
【請求項3】
上記一対の交差突片を,それぞれ一対の挟持部先端に対して断面L字状をなすように直交配置してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧着用プライヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−116677(P2006−116677A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309595(P2004−309595)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(392018078)日栄インテック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】