圧縮成形用ロール及び圧縮成形用ロールを用いた吸収構造体の製造方法並びに吸収構造体を含む吸収性物品
【課題】嵩高な吸収性パネルの柔軟性を損なうことなく部分的に圧縮するための圧縮成形用ロールおよびそれを用いた吸収構造体の製造方法の提供。
【解決手段】圧縮成形用ロール20は、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向Rに窪んだ凹部22を有し、該凹部22を除く周面21は平滑である。この圧縮成形用ロール20を用いて成形した吸収性パネルと、少なくともその表面を覆う表面シートとを有する吸収構造体を得る。
【解決手段】圧縮成形用ロール20は、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向Rに窪んだ凹部22を有し、該凹部22を除く周面21は平滑である。この圧縮成形用ロール20を用いて成形した吸収性パネルと、少なくともその表面を覆う表面シートとを有する吸収構造体を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に含まれる吸収構造体を製造する際に用いられる圧縮成形用ロールに関する。また、その圧縮成形用ロールを用いた吸収構造体の製造方法に関する。さらにまた、その製造方法により得られた吸収構造体を含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンなどの吸収性物品は、それに含まれる吸収性パネルが嵩高で柔軟であると、肌触りがよく、着用感が良好である。特に、特許文献1に開示されている生理用ナプキンのように、吸収性パネルにおける着用者の体液排泄口に当接する部分が嵩高である中高構造の吸収性物品は、体液吸収性および体液保持能力が高い。
【特許文献1】実用新案登録2603011号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、嵩高な部分を含む吸収性パネルを得るためには、吸収性パネルの構成材料であるフラッフパルプを部分的に多く供給する方法や、吸収性パネルの成形後にその一部においてフラッフパルプをさらに積層する方法などが知られているが、作業工程が煩雑である。
【0004】
この発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、部分的に嵩高な部分を含む吸収性パネルを簡単に効率よく成形することを可能にする圧縮成形用ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのこの発明に係る圧縮成形用ロールは、円柱状であって、被加工物と接触するその周面の一部のみにおいて該周面からその径方向に窪んだ成形凹部を有し、該凹部を除く周面が平滑であることを特徴とする。
この圧縮成形用ロールで吸収性パネルを成形するときには、被加工物である吸収性パネルが、ロールの周面に供給されると、接触するロールの周面と凹部とにおいて異なる圧力で圧縮加工される。具体的に言えば、ロールの凹部が当接した吸収性パネルの部分には、圧力がかからないか、または、凹部以外のロール周面が当接した吸収性パネルの部分よりも小さい圧力しかかからないから、吸収性パネルの、ロールの凹部が当接した部分が、比較的嵩高な部分となる。
【0006】
圧縮成形用ロールは、周面からの径方向の深さが異なる深い凹部と浅い凹部とを含むものであると好ましい。深い凹部の径方向の深さは、その部分によって被加工物がほとんど圧縮されないように、被加工物の厚みや、この圧縮成形用ロールとそれに対向するアンビルロールとのギャップの大きさ等を考慮して適宜設定することができる。浅い凹部の径方向の深さは、その部分によって被加工物が幾らか圧縮されるように、被加工物の厚みや、圧縮成形用ロールとアンビルロールとのギャップの大きさ等を考慮して適宜設定することができる。軸を中心に回転する圧縮成形用ロールの周面が、周面上の軸方向に延びる一直線上で吸収性パネルと接触するとき、その一直線上に凹部が含まれている場合と含まれていない場合がある。前者の場合に、被加工物の、圧縮成形用ロールの周面が当接した部分にかかる線圧は、後者の場合に被加工物にかかる線圧よりも大きくなる。しかし、そのとき、圧縮成形用ロールの凹部に、深い凹部と浅い凹部とが含まれていて、それら深い凹部と浅い凹部とが上記一直線上に並んでいると、前者の場合に、浅い凹部が含まれていることによって、被加工物の、圧縮成形用ロールの周面が当接する部分にかかる線圧の増大が抑えられ、被加工物が過度に圧縮されることを防止できる。
【0007】
上記一直線上における上記深い凹部の幅寸法が、上記一直線上における被加工物の幅寸法の10%以上、より好ましくは40%以上であるときに、圧縮成形用ロールが上記浅い凹部を含んでいることが好ましい。
【0008】
周面上に現れている凹部の形状は、圧縮成形用ロールの周面を軸方向に二等分する中心線に関して対称であると好ましい。
深い凹部と浅い凹部とは、軸方向および/または周方向に隣接して並んでいると好ましい。凹部の軸方向の中心に、第1の深い凹部が位置し、その第1の深い凹部の軸方向の両側に、一対の浅い凹部が隣接し、一対の浅い凹部の軸方向の外側に、一対の第2の深い凹部が隣接しているとより好ましい。
【0009】
上記圧縮成形用ロールを用いて吸収性パネルを圧縮成形する工程を含む製造方法により得られた、吸収性パネルと、少なくともその表面を覆う透液性表面シートを有する吸収構造体は、生理用ナプキン、おりもの用シート、および吸尿パッド等の吸収性物品に使用するのに好適である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る圧縮成形用ロールおよびその圧縮成形用ロールを用いた吸収構造体の製造方法によれば、圧縮した部分と嵩高な部分を含む吸収性パネルを有する吸収構造体を簡単に効率よく得ることができる。そのような製造方法により得られた吸収構造体を含む吸収性物品は、吸収構造体が嵩高で着用感が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明に係る圧縮成形用ロールおよび圧縮成形用ロールを用いた吸収構造体の製造方法並びに吸収構造体を含む吸収性物品の好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、この発明は、実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示されているこの発明の第1実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、吸収性パネルの成形に用いるのに好適なものであり、被加工物である吸収性パネルと接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向Rに窪んだ成形凹部22のみを有し、凹部22を除く周面21が平滑である。換言すると、この圧縮成形用ロール20は、周面21より径方向Rに突出する凸部は有していない。凹部22は、周面21からの径方向Rの深さが異なる深い凹部23と浅い凹部26とを含んでいる。図2には、図1の圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図3には、圧縮成形用ロール周面21のa−a線,b−b線,c−c線,d−d線における端面図が示されている。図4には、圧縮成形用ロール周面21のe−e線,f−f線,T−T線における端面図が示されている。
凹部22は、一対の側縁22aおよび一対の端縁22bによって囲まれている。凹部22の中央には、第1の深い凹部24が位置し、この第1の深い凹部24の軸方向Sの両側に、一対の浅い凹部26が位置している。一対の浅い凹部26の軸方向Sのさらに外側には、一対の第2の深い凹部25が位置している。一対の側縁22aおよび一対の端縁22bによって囲まれた凹部22内は、深い凹部23か浅い凹部26であり、周面21は含まれていない。凹部22のほぼ全体で、深い凹部23と浅い凹部26とが、周面21上で軸方向Sに延びる一直線上において隣接して並んでいる。深い凹部23と浅い凹部26とは、周方向Pにおいても隣接して並んでいる。周面21上に現れている凹部22の形状は、周面21を軸方向Sに二等分する中心線Tに関して対称である。
【0013】
凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。一対の側縁22aが、被加工物である吸収性パネルの側縁とほぼ一致する、換言すれば、被加工物である吸収性パネルの幅寸法が、凹部22の軸方向Sにおける幅寸法とほぼ同じであると好ましい。一対の端縁22bの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの長さ寸法よりも大きいことが好ましい。
第1の深い凹部24は、周方向Pに長く、周方向Pに延びる一対の側縁24aと、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている端縁24bとを含み、周方向Pの一方に向かって先細になっており、その先細の端24cは、凹部22の一方の端縁22bに達している。先細の端24cと対向する端縁24bは、凹部22の他方の端縁22bに達していない。したがって、一対の浅い凹部26は、上記他方の端縁22b側で連続している。一対の第2の深い凹部25の各々は、周方向Pに長く、凹部の側縁22aに接している。浅い凹部26に接している第2の深い凹部25の側縁25aは、軸方向Sの内側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながら周方向Pに延びている。第2の深い凹部25は、第1の深い凹部24の先細の端24cが接している凹部22の端縁22bには接していないが、凹部22の上記他方の端縁22bに接している。第1の深い凹部24の先細の端24cは、中心線T上に位置している。
【0014】
第1および第2の深い凹部24,25の周面21からの深さは、それらが被加工物である吸収性パネルに当接したときに、その吸収性パネルがほとんど圧縮されないように適宜設定することが好ましい。例えば、圧縮成形加工前の厚みがおよそ8mmの吸収性パネルに対しては、深い凹部23の深さが、およそ8〜10mmであることが好ましい。浅い凹部26の周面21からの深さは、それが被加工物である吸収性パネルに当接したときに、その吸収性パネルがある程度圧縮されるように適宜設定することが好ましく、例えば、圧縮成形加工前の厚みがおよそ4mmの吸収性パネルに対しては、浅い凹部26の深さが、およそ0.1〜0.5mmであることが好ましい。
【0015】
上記圧縮成形用ロール20を用いて成形された吸収性パネル27が、図5に示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の第1および第2の深い凹部24,25が当接した中央部分と両側縁部の一部分とがほとんど圧縮されておらず、それぞれ、第1非圧縮領域28aと第2非圧縮領域28bとなり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。吸収性パネル27は、幅寸法を二等分する中心線Lに関して対称である。
このような非圧縮領域28a,28bと圧縮領域29とを含む吸収性パネル27を用いた吸収性物品の一例としての生理用ナプキン30が、図6に示されている。
このナプキン30は、吸収性パネル27とその表面を覆う透液性表面シート32とを有する吸収構造体31を含み、さらに、吸収性パネル27の裏面を覆う不透液性の裏面シート33を含む。ナプキン30は、長さ方向の中心よりもやや前端縁34寄りに位置して幅方向に張り出した一対のウィング35を備えている。ナプキン30の吸収構造体31は、中高構造であり、その表面に、中高部36を囲む圧搾溝40を含んでいる。圧搾溝40は、少なくとも表面シート32と吸収性パネル27とを含む吸収構造体31を局部的に加圧・加熱することによって形成する。具体的には、後述するように、周面より径方向に突出した凸部を有する加熱エンボスロールを用いて形成する。
【0016】
図6に示されているように、圧搾溝40は、全体として閉じた環状であり、大きく分けて、ナプキン30の幅寸法を二等分する中心線Cを挟んでナプキン30の長さ方向に延びる一対の側方条溝41と、各側方条溝41の前端41aから側方条溝41どうしをつなぐように延びる前方条溝42と、各側方条溝41の後端41bから後方に向かって側方条溝41どうしをつなぐように延びる後方条溝45とに区分することができる。前方条溝42は、さらに前方内側条溝43と前方外側条溝44とに区分することができ、後方条溝45は、さらに後方内側条溝46とそれよりも後方かつ外方に位置する後方外側条溝47とに区分することができる。後方内側条溝46の後端部分を除く圧搾溝40のほぼ全体が、吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。
一対の側方条溝41は、中心線Cに関して左右対称であり、中心線Cに向かって僅かに膨らんだ緩やかな曲線を描いている。側方条溝41は、第1非圧縮領域28aと第2非圧縮領域28bとの間の圧縮領域29上に位置している。前方内側条溝43および前方外側条溝44の各々は、中心線Cに関して左右対称であって、ナプキン30の前端縁34側にやや膨らんだ曲線を描いている。前方条溝42は、その全体が、吸収性パネル27の圧縮領域29上に位置している。後方内側条溝46および後方外側条溝47は、どちらも中心線Cに関して左右対称である。後方内側条溝46,後方外側条溝47各々の右半分および左半分は、側方条溝41の後端41bから後方に向かって集束するように延びる曲線を描いている。後方内側条溝46,後方外側条溝47の各々は中心線C上で集束し、後端46b,47bが中心線C上に位置している。後方内側条溝46は、特に、後方に向かって尖った形状に形成されている。後方条溝45は、後方内側条溝46の後端部分を除くその大部分が、吸収性パネル27の圧縮領域29上に位置している。
【0017】
このナプキン30は、それに含まれる吸収性パネル27が、その中央部分に嵩高な非圧縮領域28を含んでいるから、柔軟で着用感がよい。また、圧縮成形用ロールの周面21が当接した部分、浅い凹部26が当接した部分、および深い凹部23が当接した部分において、圧縮成形加工時に吸収性パネル27が受ける圧力の大きさが異なり、吸収性パネル27が不均一に圧縮された結果、吸収性パネル27には密度勾配が生じているから、このナプキン30においては、その中央部分に排泄された体液が周辺に移行し易い。圧搾溝40の部分では、特に体液が吸収され易い。圧搾溝40が図示のよう形状であることに加えて、後方内側条溝46と後方外側条溝47との間の領域が、圧縮されて、中高部36よりも薄くなっていることにより、ナプキン30が、着用中に横方向からの圧力を受けたときに、後方条溝45を案内にして肌当接面側に凸となるように折れ曲がって着用者の臀裂に入り込み易い。さらにまた、このナプキン30では、図6に示されているように、後方内側条溝46の後端部分よりも後方、かつナプキン30の幅方向の中心線C上に、吸収性パネル27の非圧縮領域28が位置し、その部分が幅方向の両側部分に比べて厚いから、着用者の臀裂に対するフィット性が向上し、臀裂を伝って生じる体液の漏れを効果的に防止できる。
【0018】
上記生理用ナプキン30に含まれる吸収構造体31は、以下のような製造方法によって得られる。
<積層工程>
フラップパルプと高吸収性ポリマー粒子とをほぼ均質となるように混合し、担体上にほぼ均一に堆積させる(図示せず)。そのフラップパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合堆積物を液拡散性シートで巻きあげ、所要の長さに切断し、個々の吸収性パネルを得る(図示せず)。吸収性パネルにおけるフラップパルプの坪量は、およそ150〜300g/m2である。高吸収性ポリマー粒子は、吸収性パネルの全体にわたってほぼ均一に散在しており、その坪量は5〜25g/m2である。液拡散性シートの坪量は10〜25g/m2である。吸収性パネルの厚みは、3〜7mmである。
【0019】
<圧縮成形工程>
上記圧縮成形ロール20の周面21には、1回転当たり2つの吸収性パネルを圧縮できるように凹部22が設けられている。圧縮成形用ロール20と対向するアンビルロール50は、凹凸のない滑らかな周面を有する円柱状のロールである。それらのロール20,50を80〜120℃に加熱し、同期させて、それぞれ、軸20a,50aを中心として図7に示されている矢印の方向に150〜800回転/分で回転させる。両ロール間のギャップG(図7を参照)は、挟み込む吸収性パネル27の厚みやロール20,50の回転速度を考慮して適宜設定することができるが、好ましくは0〜0.5mmである。両ロールの軸20a,50aは、それぞれ、伸縮するピストンロッドを含む油圧シリンダ装置を介して軸受により回転可能に支えられている(図示せず)から、両ロール間のギャップGがゼロであっても、両ロール20,50の間に吸収性パネル27を供給して圧縮成形加工を施すことができる。吸収性パネル27の幅寸法を二等分する中心線Lが、圧縮成形用ロール20の周面21を軸方向Sに二等分する中心線Tとほぼ一致するように、吸収性パネル27を圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給する。
【0020】
<エンボス工程>
圧縮成形加工後の吸収性パネル27に表面シート32を重ねて吸収構造体31を得る(図示せず)。この吸収構造体31を、エンボスロールと、それと対向するアンビルロールとによって挟み、吸収構造体31の表面に圧搾溝を形成する(図示せず)。エンボスロールは、その周面から径方向に突出した凸状のエンボスパターンを有し、この凸状のエンボスパターンは、図6に示されている圧搾溝40の形状と一致する形状である。このエンボス工程においてエンボスロールとともに用いるアンビルロールは、圧縮成形工程で用いられるアンビルロールと同様に、凹凸のない滑らかな周面を有する円柱状のロールである。それらのロールを80〜120℃に加熱し、同期させて、それぞれ軸を中心に回転させる。両ロール間のギャップは、吸収構造体31の厚みやロールの回転速度などを考慮して、吸収性パネル27の上記非圧縮領域28が圧縮されないように設定することが好ましい。このエンボス工程において形成される圧搾溝40の少なくとも一部分が前の圧縮成形工程で圧縮された領域29に位置するように、エンボスロールとアンビルロールとの間に上記吸収構造体31を供給する。
圧搾溝40を形成した後、吸収構造体31の裏面に不透液性の裏面シート33を重ね、周縁に沿って吸収構造体31と裏面シート33とを接合し、生理用ナプキン30を得る。
【0021】
この吸収構造体31の製造方法によれば、凹部22のみを含む圧縮成形用ロール20を用いて吸収性パネル27を成形した後、主にその圧縮された部分29上にエンボスロールの凸状のエンボスパターンを圧接させるから、嵩高な吸収性パネル27を含む吸収構造体31であっても確実に圧搾溝40を形成することができる。ここで、圧搾溝40が確実に形成されるとは、表面シート32と吸収性パネル27とが、確実に接合された状態をいう。上記圧縮成形用ロール20を用いれば、圧縮成形加工を施しても、吸収性パネル27の、後にエンボスロールの凸状のエンボスパターンが圧接する部分以外の部分はほとんど圧縮されないから、嵩高で、柔軟な吸収性パネル27を含む生理用ナプキン30が得られる。
【0022】
圧縮成形加工が施される前の吸収性パネル27が、中高構造を有するものであってもよい。中高構造を有する吸収性パネル27は、上記積層工程において、一部に多くのフラップパルプを堆積させるか、または、担体上で均一に堆積させたフラップパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合堆積物の上に、別途準備したフラップパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物を部分的に重ねることにより得られる。その場合、吸収性パネルの中高部におけるフラップパルプの坪量は、およそ500〜1000g/m2、その他の部分におけるフラップパルプの坪量はおよそ150〜300g/m2であることが好ましい。圧縮成形用ロールにより圧縮される前の吸収性パネル27の厚みは、中高部においては7〜12mm、その他の部分においては3〜7mmであることが好ましい。その場合、圧縮成形加工後の吸収性パネル27における上記その他の部分の厚みがおよそ0.5〜2.5mmとなるように、吸収性パネル27を圧縮成形することが好ましい。
【0023】
圧縮成形用ロール20の凹部22は、図3のa〜dに示されているような軸方向Sの端面形状および図4のe,f,Tに示されているような周方向Pの端面形状を有するが、c−c線における端面図に相当する図3のc’に示されているように、底部の角がとれた形状でもよい。また、f−f線における端面図に相当する図4のf’に示されているように、浅い凹部26が周方向Pの両端部における底部の角がとれた形状であってもよい。同様に、第1の深い凹部24もまた周方向Pの両端部における底部の角がとれた形状であってもよい
さらにまた、浅い凹部26は、同じくf−f線における端面図に相当する図4のf’’に示されているように、第1の深い凹部24の軸方向Sの幅寸法が小さくなり始める部分の近傍から、その深さが、第1の深い凹部24の幅寸法が小さくなるにつれて次第に浅くなっている形状でもよい。第1の深い凹部24もまた、その幅寸法が小さくなり始める部分の近傍から、先細の端24cに向かって深さが次第に浅くなっている形状であってもよい。
圧縮成形用ロール20の凹部22は、図8に示されているような形状でもよい。図8に示されている凹部22は、周方向Pの一方に向かって先端が細くなった形状の第1の深い凹部24と、この第1の深い凹部24の軸方向Sの両側に第1の深い凹部24と隣接して並んでいる一対の浅い凹部26と、これら一対の浅い凹部26の軸方向Sのさらに外側に、浅い凹部26と隣接して並んでいる一対の第2の深い凹部25とを含む。第1の深い凹部24および第2の深い凹部25は、図2に示されているものと同じであるが、一対の浅い凹部26は、図2に示されているものとは異なり、第1の深い凹部24によって分断され、連続しておらず、周方向Pの長さが第2の深い凹部25よりも短い。
【0024】
この第1実施形態に係る圧縮成形用ロール20において、一対の浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロールの周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネル27が、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。それによって、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の部分にかかる圧力の増大を抑えることができる。
【0025】
この発明の第1実施形態に係る圧縮成形用ロールを用いて成形された吸収性パネルを含む吸収構造体において、圧搾溝は必ずしも必要ではなく、上述の製造方法においてエンボス工程を省略することができる。その場合、吸収性パネルと表面シートとは、周縁において接合されていればよい。
【0026】
(第2実施形態)
図11には、この発明の第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図12には、図11のロール周面21のa−a線,b−b線,c−c線,d−d線における端面図が示されている。図13には、ロール周面21のe−e線,T−T線における端面図が示されている。
この発明の第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、円柱状であって、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向に窪んだ凹部22のみを有し、周面21より径方向に突出する凸部は有していない。凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。上記一対の側縁22aどうしの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの幅寸法とほぼ同じであるか、それよりも長いことが好ましい。
凹部22は、ロール周面21上で軸方向Sの中央に位置し、周方向Pに互いに離間している一対の浅い凹部26と、それ以外の深い凹部23とを含む。すなわち、深い凹部23と浅い凹部26とは、軸方向Sにおいて隣接して並んでいるばかりでなく、周方向Pにおいても隣接して並んでいる。一対の浅い凹部26は、ロールの軸方向Sの幅寸法を二等分する中心線Tをまたぐように位置している。
【0027】
浅い凹部26の軸方向Sの幅寸法は、エンボス工程において用いられるエンボスロールの、一対の側方条溝41を形成する凸部どうしの離間寸法よりも小さいことが好ましい。一対の浅い凹部26の周方向Pの中心どうしの離間寸法は、エンボスロールの凸状エンボスパターンおいて前方内側条溝の前端に相当する部分と後方内側条溝の後端に相当する部分との離間寸法とほぼ同じになるように設定されることが好ましい。
【0028】
第1実施形態に係るそれと同様に、第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20も、上述した吸収性パネルの圧縮成形工程において用いることができる。図14には、第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて圧縮成形加工が施された吸収性パネ27が示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の深い凹部23が当接した部分がほとんど圧縮されておらず、非圧縮領域28となり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。
圧縮成形後の吸収性パネル27に表面シート32が重ねられた後、上述したエンボス工程を経て得られた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30が、図15に示されている。このナプキン30では、前方外側条溝44の前端44aおよび後方外側条溝47の後端47bが、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。前方内側条溝43の前端43aおよび後方内側条溝46の後端46bは、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。圧搾溝40のその他の部分は、吸収性パネル27の非圧縮領域28に位置している。
【0029】
吸収構造体31の表面に、図示のような形状の圧搾溝40を形成しようとするときには、前方外側条溝44の前端44a,後方外側条溝47の後端47b,前方内側条溝43の前端43a,および後方内側条溝46の後端46bのように、圧搾溝30が吸収構造体31の幅方向に延びる部分は、嵩高な吸収性パネル27を用いた場合に、その他の部分と比べて圧搾溝40が形成され難くなることがある。しかしながら、この第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20によれば、嵩高な吸収性パネル27の柔軟性を損なうことなく、圧搾溝40が形成され難い部分だけを圧縮することができ、後のエンボス工程において吸収構造体31に圧搾溝40を確実に形成することができる。この圧縮成形用ロール20によって圧縮成形加工が施された吸収性パネル27を用いた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30は、圧搾溝40以外の部分が嵩高で、柔軟であり、着用感がよい。
【0030】
この第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20では、一対の浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロール20の周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネル27が、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。
【0031】
この発明の第2実施形態に係る圧縮成形用ロールを用いて成形された吸収性パネルを含む吸収構造体においても、圧搾溝は必ずしも必要ではなく、上述の製造方法においてエンボス工程を省略することができる。
【0032】
(第3実施形態)
図16には、この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図17には、図16のロール周面21のa−a線,b−b線,c−c線における端面図が示されている。図18には、ロール周面21のd−d線,T−T線における端面図が示されている。
この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、円柱状であって、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向に窪んだ凹部22のみを有し、周面21より径方向に突出する凸部は有していない。凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。上記一対の側縁22aどうしの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの幅寸法とほぼ同じであるか、それよりも長いことが好ましい。凹部22は、その周方向Pの中心よりも一方の端縁22b寄りでロールの軸方向Sの中央に位置する一つの浅い凹部26と、それ以外の深い凹部23とから構成されている。すなわち、深い凹部23と浅い凹部26とは、軸方向Sにおいて隣接して並んでいるばかりでなく、周方向Pにおいても隣接して並んでいる。浅い凹部26は、ロールの軸方向Sの幅寸法を二等分する中心線Tをまたぐように位置している。
【0033】
浅い凹部26の軸方向Sの幅寸法は、エンボス工程において用いられるエンボスロールの、一対の側方条溝41を形成する凸部どうしの離間寸法よりも小さいことが好ましい。浅い凹部26の周方向Pの長さ寸法は、エンボスロールの凸状エンボスパターンおける後方内側条溝46の後端に相当する部分と後方外側条溝47の後端47bに相当する部分との離間寸法よりも小さいことが好ましい。
【0034】
第1実施形態に係るそれと同様に、第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20も、上述した吸収性パネルの圧縮成形工程において用いることができる。図19には、第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて圧縮成形加工が施された吸収性パネル27が示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の深い凹部23が当接した部分がほとんど圧縮されておらず、非圧縮領域28となり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。
圧縮成形後の吸収性パネル27には、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分に、2本のスリット37が形成される(図19を参照)。この2本のスリット37は、吸収性パネル27の幅寸法を二等分する中心線Lの両側で、それぞれ吸収性パネル27の長さ方向に沿って延びるように、公知のスリットロールにより形成される(図示せず)。
スリット37が形成された吸収性パネル27に表面シート32が重ねられた後、上述したエンボス工程を経て得られた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30が、図20に示されている。
前方外側条溝44の前端44aおよび後方外側条溝47の後端46bは、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。圧搾溝40のその他の部分は、吸収性パネル27の非圧縮領域28に位置している。
【0035】
嵩高な吸収性パネルに対しては、図示のようなスリット37を形成し難いことがあるが、この第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いれば、吸収性パネル27における図示のような圧搾溝40の端部分が位置する予定の部分とスリット37が形成される予定の部分とを同時に圧縮することができる。それによって、嵩高な吸収性パネル27の柔軟性を損なうことなく、後のエンボス工程において吸収構造体31に圧搾溝40およびスリット37を確実に形成することができる。上述のような工程を含む製造方法により得られたナプキン30は、圧搾溝40以外の部分が嵩高で、柔軟であり、着用感がよい。加えて、圧縮されて薄くなった後方内側条溝46と後方外側条溝47とに挟まれた領域にスリット37が形成されていることによって、このナプキン30は、着用中に横方向からの圧力を受けたときに、後方条溝45を案内にして肌当接面側に凸となるように折れ曲がり、着用者の臀裂に入り込み易い。
【0036】
この第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20では、浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロール20の周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネルが、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。
【0037】
この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロールを用いて成形された吸収性パネルを含む吸収構造体においても、圧搾溝は必ずしも必要ではなく、上述の製造方法においてエンボス工程を省略することができる。
【0038】
(第4実施形態)
図21には、この発明の第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図22には、図21のロール周面21のa−a線,b−b線における端面図が示されている。図23には、ロール周面21のc−c線,T−T線における端面図が示されている。
この発明の第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、円柱状であって、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向に窪んだ凹部22のみを有し、周面21より径方向に突出する凸部は有していない。凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。上記一対の側縁22aどうしの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの幅寸法とほぼ同じであるか、それよりも長いことが好ましい。凹部22は、上記一対の側縁22aに隣接して上記一対の端縁22b間をロールの周方向Pに延びる一対の浅い凹部26と、一対の浅い凹部26の間に位置するそれ以外の深い凹部23とから構成されている。すなわち、浅い凹部26と深い凹部23とは、軸方向Sにおいて隣接して並んでいる。
【0039】
この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、上述した吸収性パネルの圧縮成形工程において用いることができる。図24には、第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて成形された吸収性パネル27が示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の深い凹部23が当接した部分がほとんど圧縮されておらず、非圧縮領域28となり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。
圧縮成形後の吸収性パネル27に表面シート32が重ねられた後、上述したエンボス工程を経て得られた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30が、図25に示されている。
前方外側条溝44の前端44aおよび後方外側条溝47の後端47bは、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。圧搾溝40のその他の部分は、吸収性パネル27の非圧縮領域28に位置している。
【0040】
この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いれば、嵩高な吸収性パネル27の柔軟性を損なうことなく、圧搾溝40が形成され難い端部分が位置する予定の部分を圧縮することができ、後のエンボス工程において吸収構造体31に圧搾溝40を確実に形成することができる。また、この圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が、一対の側方条溝41の外側の部分に当接するように設けられていることによって、体液吸収に主に寄与する吸収性パネル27の幅方向の中央部分を圧縮することなく、ロールの周面21が当接する吸収性パネル27の部分にかかる圧力の増大を抑えることができる。この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて、上述のような工程を含む製造方法により得られた生理用ナプキン30は、圧搾溝40以外の部分が嵩高で、柔軟であり、着用感がよい。
【0041】
この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20では、浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロール20の周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネルが、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。
【0042】
この発明に係る圧縮成形用ロール20が1回転したときに圧縮成形加工できる吸収性パネルの数は幾つでもよいが、その数が多いほど、吸収性パネルの圧縮成形加工を連続的に高速で行うことが可能になる。
この発明に係る圧縮成形用ロール20は、金属や硬質合成樹脂など公知の材料で構成することができる。凹部の一部がその他の部分と異なる材料で構成されてもよい。圧縮成形用ロール20の一部に浅い凹部26を設ける代わりに、その一部を、その他の部分を構成する材料に比べて硬度の低い別材料で構成してもよい。例えば、鉄製の圧縮成形用ロール20において浅い凹部26を設ける代わりに、一部を公知の硬質ゴムや公知の硬質プラスチックにより構成すると、その一部は、ロール周面21より窪んだ凹部22ではなくても、それが浅い凹部26であるのと同様の効果を得ることが可能になる。
【0043】
また、圧縮成形用ロール20の一部に浅い凹部26を設ける代わりに、圧縮成形用ロール20とともに用いられるアンビルロール50の周面に凹部を設けてもよい。
アンビルロール50は、周面全体が平滑であってもよく、また、周面に、図26に示されているような格子状に溝が形成されているものでもよい。このとき、溝に囲まれた周面部分は、一辺が1〜5mmの正方形であることが好ましく、溝の深さは0.1〜0.7mmであることが好ましく、溝の幅寸法は1〜5mmであることが好ましい。
この発明に係る吸収構造体の製造方法において用いられるその他の機械器具および装置は、従来この種の物品の製造方法において一般的に用いられているものを使用することができる。
【0044】
ナプキン30の各構成部材は、通常公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート32には、目付15〜70g/m2、密度0.01〜0.025g/cm3のエアースルー不織布や、目付20〜40g/m2の開孔フィルムを用いることができる。裏面シート33には、目付15〜40g/m2の低密度ポリエチレン(LDPE)からなる不透液性フィルムを用いることができる。液拡散性シートには、ティッシュペーパを用いることができる。ナプキン30の各構成部材の接合には、通常公知のホットメルト接着剤による接着あるいは熱または超音波による溶着等の適宜の接合方法を用いることができる。
【0045】
この発明に係る圧縮成形用ロールおよびそれを用いた製造方法により得られた吸収構造体は、生理用ナプキン以外のおりもの用シート、吸尿パッド等の吸収性物品にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の第1実施形態に係る圧縮成形用ロールを示す斜視図。
【図2】図1の圧縮成形用ロール周面の拡大図。
【図3】図1の圧縮成形用ロールのa−a線,b−b線,c−c線,d−d線端面図および図1の圧縮成形用ロールの変形例を示すc’−c’線端面図。
【図4】図1の圧縮成形用ロールのe−e線,f−f線,T−T線端面図および図1の圧縮成形用ロールの変形例を示すf’−f’線,f’’−f’’線端面図。
【図5】図1の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図6】図5の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図7】圧縮成形工程を示す図。
【図8】異なる形状の凹部を有する圧縮成形用ロール周面の拡大図
【図9】図8の圧成形縮ロールのa−a線,b−b線,c−c線,d−d線端面図。
【図10】図8の圧縮成形用ロールのe−e線,f−f線,T−T線端面図。
【図11】この発明の第2実施形態に係る圧成形縮ロール周面の拡大図。
【図12】図11の圧縮成形用ロール周面のa−a線,b−b線,c−c線,d−d線端面図。
【図13】図11の圧縮成形用ロール周面のe−e線,T−T線端面図。
【図14】図11の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図15】図14の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図16】この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロールの周面の拡大図。
【図17】図16の圧縮成形用ロール周面のa−a線,b−b線,c−c線端面図。
【図18】図16の圧縮成形用ロール周面のd−d線,T−T線端面図。
【図19】図16の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図20】図19の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図21】この発明の第4実施形態に係る圧縮成形用ロールの周面の拡大図。
【図22】図21の圧縮成形用ロール周面のa−a線,b−b線端面図。
【図23】図21の圧縮成形用ロール周面のc−c線,T−T線端面図。
【図24】図21の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図25】図24の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図26】圧縮成形用ロールとともに用いられるアンビルロール周面の部分拡大図。
【符号の説明】
【0047】
20 圧縮成形用ロール
21 周面
22 凹部
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸収性物品に含まれる吸収構造体を製造する際に用いられる圧縮成形用ロールに関する。また、その圧縮成形用ロールを用いた吸収構造体の製造方法に関する。さらにまた、その製造方法により得られた吸収構造体を含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキンなどの吸収性物品は、それに含まれる吸収性パネルが嵩高で柔軟であると、肌触りがよく、着用感が良好である。特に、特許文献1に開示されている生理用ナプキンのように、吸収性パネルにおける着用者の体液排泄口に当接する部分が嵩高である中高構造の吸収性物品は、体液吸収性および体液保持能力が高い。
【特許文献1】実用新案登録2603011号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、嵩高な部分を含む吸収性パネルを得るためには、吸収性パネルの構成材料であるフラッフパルプを部分的に多く供給する方法や、吸収性パネルの成形後にその一部においてフラッフパルプをさらに積層する方法などが知られているが、作業工程が煩雑である。
【0004】
この発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、部分的に嵩高な部分を含む吸収性パネルを簡単に効率よく成形することを可能にする圧縮成形用ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのこの発明に係る圧縮成形用ロールは、円柱状であって、被加工物と接触するその周面の一部のみにおいて該周面からその径方向に窪んだ成形凹部を有し、該凹部を除く周面が平滑であることを特徴とする。
この圧縮成形用ロールで吸収性パネルを成形するときには、被加工物である吸収性パネルが、ロールの周面に供給されると、接触するロールの周面と凹部とにおいて異なる圧力で圧縮加工される。具体的に言えば、ロールの凹部が当接した吸収性パネルの部分には、圧力がかからないか、または、凹部以外のロール周面が当接した吸収性パネルの部分よりも小さい圧力しかかからないから、吸収性パネルの、ロールの凹部が当接した部分が、比較的嵩高な部分となる。
【0006】
圧縮成形用ロールは、周面からの径方向の深さが異なる深い凹部と浅い凹部とを含むものであると好ましい。深い凹部の径方向の深さは、その部分によって被加工物がほとんど圧縮されないように、被加工物の厚みや、この圧縮成形用ロールとそれに対向するアンビルロールとのギャップの大きさ等を考慮して適宜設定することができる。浅い凹部の径方向の深さは、その部分によって被加工物が幾らか圧縮されるように、被加工物の厚みや、圧縮成形用ロールとアンビルロールとのギャップの大きさ等を考慮して適宜設定することができる。軸を中心に回転する圧縮成形用ロールの周面が、周面上の軸方向に延びる一直線上で吸収性パネルと接触するとき、その一直線上に凹部が含まれている場合と含まれていない場合がある。前者の場合に、被加工物の、圧縮成形用ロールの周面が当接した部分にかかる線圧は、後者の場合に被加工物にかかる線圧よりも大きくなる。しかし、そのとき、圧縮成形用ロールの凹部に、深い凹部と浅い凹部とが含まれていて、それら深い凹部と浅い凹部とが上記一直線上に並んでいると、前者の場合に、浅い凹部が含まれていることによって、被加工物の、圧縮成形用ロールの周面が当接する部分にかかる線圧の増大が抑えられ、被加工物が過度に圧縮されることを防止できる。
【0007】
上記一直線上における上記深い凹部の幅寸法が、上記一直線上における被加工物の幅寸法の10%以上、より好ましくは40%以上であるときに、圧縮成形用ロールが上記浅い凹部を含んでいることが好ましい。
【0008】
周面上に現れている凹部の形状は、圧縮成形用ロールの周面を軸方向に二等分する中心線に関して対称であると好ましい。
深い凹部と浅い凹部とは、軸方向および/または周方向に隣接して並んでいると好ましい。凹部の軸方向の中心に、第1の深い凹部が位置し、その第1の深い凹部の軸方向の両側に、一対の浅い凹部が隣接し、一対の浅い凹部の軸方向の外側に、一対の第2の深い凹部が隣接しているとより好ましい。
【0009】
上記圧縮成形用ロールを用いて吸収性パネルを圧縮成形する工程を含む製造方法により得られた、吸収性パネルと、少なくともその表面を覆う透液性表面シートを有する吸収構造体は、生理用ナプキン、おりもの用シート、および吸尿パッド等の吸収性物品に使用するのに好適である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る圧縮成形用ロールおよびその圧縮成形用ロールを用いた吸収構造体の製造方法によれば、圧縮した部分と嵩高な部分を含む吸収性パネルを有する吸収構造体を簡単に効率よく得ることができる。そのような製造方法により得られた吸収構造体を含む吸収性物品は、吸収構造体が嵩高で着用感が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明に係る圧縮成形用ロールおよび圧縮成形用ロールを用いた吸収構造体の製造方法並びに吸収構造体を含む吸収性物品の好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。ただし、この発明は、実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示されているこの発明の第1実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、吸収性パネルの成形に用いるのに好適なものであり、被加工物である吸収性パネルと接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向Rに窪んだ成形凹部22のみを有し、凹部22を除く周面21が平滑である。換言すると、この圧縮成形用ロール20は、周面21より径方向Rに突出する凸部は有していない。凹部22は、周面21からの径方向Rの深さが異なる深い凹部23と浅い凹部26とを含んでいる。図2には、図1の圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図3には、圧縮成形用ロール周面21のa−a線,b−b線,c−c線,d−d線における端面図が示されている。図4には、圧縮成形用ロール周面21のe−e線,f−f線,T−T線における端面図が示されている。
凹部22は、一対の側縁22aおよび一対の端縁22bによって囲まれている。凹部22の中央には、第1の深い凹部24が位置し、この第1の深い凹部24の軸方向Sの両側に、一対の浅い凹部26が位置している。一対の浅い凹部26の軸方向Sのさらに外側には、一対の第2の深い凹部25が位置している。一対の側縁22aおよび一対の端縁22bによって囲まれた凹部22内は、深い凹部23か浅い凹部26であり、周面21は含まれていない。凹部22のほぼ全体で、深い凹部23と浅い凹部26とが、周面21上で軸方向Sに延びる一直線上において隣接して並んでいる。深い凹部23と浅い凹部26とは、周方向Pにおいても隣接して並んでいる。周面21上に現れている凹部22の形状は、周面21を軸方向Sに二等分する中心線Tに関して対称である。
【0013】
凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。一対の側縁22aが、被加工物である吸収性パネルの側縁とほぼ一致する、換言すれば、被加工物である吸収性パネルの幅寸法が、凹部22の軸方向Sにおける幅寸法とほぼ同じであると好ましい。一対の端縁22bの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの長さ寸法よりも大きいことが好ましい。
第1の深い凹部24は、周方向Pに長く、周方向Pに延びる一対の側縁24aと、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている端縁24bとを含み、周方向Pの一方に向かって先細になっており、その先細の端24cは、凹部22の一方の端縁22bに達している。先細の端24cと対向する端縁24bは、凹部22の他方の端縁22bに達していない。したがって、一対の浅い凹部26は、上記他方の端縁22b側で連続している。一対の第2の深い凹部25の各々は、周方向Pに長く、凹部の側縁22aに接している。浅い凹部26に接している第2の深い凹部25の側縁25aは、軸方向Sの内側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながら周方向Pに延びている。第2の深い凹部25は、第1の深い凹部24の先細の端24cが接している凹部22の端縁22bには接していないが、凹部22の上記他方の端縁22bに接している。第1の深い凹部24の先細の端24cは、中心線T上に位置している。
【0014】
第1および第2の深い凹部24,25の周面21からの深さは、それらが被加工物である吸収性パネルに当接したときに、その吸収性パネルがほとんど圧縮されないように適宜設定することが好ましい。例えば、圧縮成形加工前の厚みがおよそ8mmの吸収性パネルに対しては、深い凹部23の深さが、およそ8〜10mmであることが好ましい。浅い凹部26の周面21からの深さは、それが被加工物である吸収性パネルに当接したときに、その吸収性パネルがある程度圧縮されるように適宜設定することが好ましく、例えば、圧縮成形加工前の厚みがおよそ4mmの吸収性パネルに対しては、浅い凹部26の深さが、およそ0.1〜0.5mmであることが好ましい。
【0015】
上記圧縮成形用ロール20を用いて成形された吸収性パネル27が、図5に示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の第1および第2の深い凹部24,25が当接した中央部分と両側縁部の一部分とがほとんど圧縮されておらず、それぞれ、第1非圧縮領域28aと第2非圧縮領域28bとなり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。吸収性パネル27は、幅寸法を二等分する中心線Lに関して対称である。
このような非圧縮領域28a,28bと圧縮領域29とを含む吸収性パネル27を用いた吸収性物品の一例としての生理用ナプキン30が、図6に示されている。
このナプキン30は、吸収性パネル27とその表面を覆う透液性表面シート32とを有する吸収構造体31を含み、さらに、吸収性パネル27の裏面を覆う不透液性の裏面シート33を含む。ナプキン30は、長さ方向の中心よりもやや前端縁34寄りに位置して幅方向に張り出した一対のウィング35を備えている。ナプキン30の吸収構造体31は、中高構造であり、その表面に、中高部36を囲む圧搾溝40を含んでいる。圧搾溝40は、少なくとも表面シート32と吸収性パネル27とを含む吸収構造体31を局部的に加圧・加熱することによって形成する。具体的には、後述するように、周面より径方向に突出した凸部を有する加熱エンボスロールを用いて形成する。
【0016】
図6に示されているように、圧搾溝40は、全体として閉じた環状であり、大きく分けて、ナプキン30の幅寸法を二等分する中心線Cを挟んでナプキン30の長さ方向に延びる一対の側方条溝41と、各側方条溝41の前端41aから側方条溝41どうしをつなぐように延びる前方条溝42と、各側方条溝41の後端41bから後方に向かって側方条溝41どうしをつなぐように延びる後方条溝45とに区分することができる。前方条溝42は、さらに前方内側条溝43と前方外側条溝44とに区分することができ、後方条溝45は、さらに後方内側条溝46とそれよりも後方かつ外方に位置する後方外側条溝47とに区分することができる。後方内側条溝46の後端部分を除く圧搾溝40のほぼ全体が、吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。
一対の側方条溝41は、中心線Cに関して左右対称であり、中心線Cに向かって僅かに膨らんだ緩やかな曲線を描いている。側方条溝41は、第1非圧縮領域28aと第2非圧縮領域28bとの間の圧縮領域29上に位置している。前方内側条溝43および前方外側条溝44の各々は、中心線Cに関して左右対称であって、ナプキン30の前端縁34側にやや膨らんだ曲線を描いている。前方条溝42は、その全体が、吸収性パネル27の圧縮領域29上に位置している。後方内側条溝46および後方外側条溝47は、どちらも中心線Cに関して左右対称である。後方内側条溝46,後方外側条溝47各々の右半分および左半分は、側方条溝41の後端41bから後方に向かって集束するように延びる曲線を描いている。後方内側条溝46,後方外側条溝47の各々は中心線C上で集束し、後端46b,47bが中心線C上に位置している。後方内側条溝46は、特に、後方に向かって尖った形状に形成されている。後方条溝45は、後方内側条溝46の後端部分を除くその大部分が、吸収性パネル27の圧縮領域29上に位置している。
【0017】
このナプキン30は、それに含まれる吸収性パネル27が、その中央部分に嵩高な非圧縮領域28を含んでいるから、柔軟で着用感がよい。また、圧縮成形用ロールの周面21が当接した部分、浅い凹部26が当接した部分、および深い凹部23が当接した部分において、圧縮成形加工時に吸収性パネル27が受ける圧力の大きさが異なり、吸収性パネル27が不均一に圧縮された結果、吸収性パネル27には密度勾配が生じているから、このナプキン30においては、その中央部分に排泄された体液が周辺に移行し易い。圧搾溝40の部分では、特に体液が吸収され易い。圧搾溝40が図示のよう形状であることに加えて、後方内側条溝46と後方外側条溝47との間の領域が、圧縮されて、中高部36よりも薄くなっていることにより、ナプキン30が、着用中に横方向からの圧力を受けたときに、後方条溝45を案内にして肌当接面側に凸となるように折れ曲がって着用者の臀裂に入り込み易い。さらにまた、このナプキン30では、図6に示されているように、後方内側条溝46の後端部分よりも後方、かつナプキン30の幅方向の中心線C上に、吸収性パネル27の非圧縮領域28が位置し、その部分が幅方向の両側部分に比べて厚いから、着用者の臀裂に対するフィット性が向上し、臀裂を伝って生じる体液の漏れを効果的に防止できる。
【0018】
上記生理用ナプキン30に含まれる吸収構造体31は、以下のような製造方法によって得られる。
<積層工程>
フラップパルプと高吸収性ポリマー粒子とをほぼ均質となるように混合し、担体上にほぼ均一に堆積させる(図示せず)。そのフラップパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合堆積物を液拡散性シートで巻きあげ、所要の長さに切断し、個々の吸収性パネルを得る(図示せず)。吸収性パネルにおけるフラップパルプの坪量は、およそ150〜300g/m2である。高吸収性ポリマー粒子は、吸収性パネルの全体にわたってほぼ均一に散在しており、その坪量は5〜25g/m2である。液拡散性シートの坪量は10〜25g/m2である。吸収性パネルの厚みは、3〜7mmである。
【0019】
<圧縮成形工程>
上記圧縮成形ロール20の周面21には、1回転当たり2つの吸収性パネルを圧縮できるように凹部22が設けられている。圧縮成形用ロール20と対向するアンビルロール50は、凹凸のない滑らかな周面を有する円柱状のロールである。それらのロール20,50を80〜120℃に加熱し、同期させて、それぞれ、軸20a,50aを中心として図7に示されている矢印の方向に150〜800回転/分で回転させる。両ロール間のギャップG(図7を参照)は、挟み込む吸収性パネル27の厚みやロール20,50の回転速度を考慮して適宜設定することができるが、好ましくは0〜0.5mmである。両ロールの軸20a,50aは、それぞれ、伸縮するピストンロッドを含む油圧シリンダ装置を介して軸受により回転可能に支えられている(図示せず)から、両ロール間のギャップGがゼロであっても、両ロール20,50の間に吸収性パネル27を供給して圧縮成形加工を施すことができる。吸収性パネル27の幅寸法を二等分する中心線Lが、圧縮成形用ロール20の周面21を軸方向Sに二等分する中心線Tとほぼ一致するように、吸収性パネル27を圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給する。
【0020】
<エンボス工程>
圧縮成形加工後の吸収性パネル27に表面シート32を重ねて吸収構造体31を得る(図示せず)。この吸収構造体31を、エンボスロールと、それと対向するアンビルロールとによって挟み、吸収構造体31の表面に圧搾溝を形成する(図示せず)。エンボスロールは、その周面から径方向に突出した凸状のエンボスパターンを有し、この凸状のエンボスパターンは、図6に示されている圧搾溝40の形状と一致する形状である。このエンボス工程においてエンボスロールとともに用いるアンビルロールは、圧縮成形工程で用いられるアンビルロールと同様に、凹凸のない滑らかな周面を有する円柱状のロールである。それらのロールを80〜120℃に加熱し、同期させて、それぞれ軸を中心に回転させる。両ロール間のギャップは、吸収構造体31の厚みやロールの回転速度などを考慮して、吸収性パネル27の上記非圧縮領域28が圧縮されないように設定することが好ましい。このエンボス工程において形成される圧搾溝40の少なくとも一部分が前の圧縮成形工程で圧縮された領域29に位置するように、エンボスロールとアンビルロールとの間に上記吸収構造体31を供給する。
圧搾溝40を形成した後、吸収構造体31の裏面に不透液性の裏面シート33を重ね、周縁に沿って吸収構造体31と裏面シート33とを接合し、生理用ナプキン30を得る。
【0021】
この吸収構造体31の製造方法によれば、凹部22のみを含む圧縮成形用ロール20を用いて吸収性パネル27を成形した後、主にその圧縮された部分29上にエンボスロールの凸状のエンボスパターンを圧接させるから、嵩高な吸収性パネル27を含む吸収構造体31であっても確実に圧搾溝40を形成することができる。ここで、圧搾溝40が確実に形成されるとは、表面シート32と吸収性パネル27とが、確実に接合された状態をいう。上記圧縮成形用ロール20を用いれば、圧縮成形加工を施しても、吸収性パネル27の、後にエンボスロールの凸状のエンボスパターンが圧接する部分以外の部分はほとんど圧縮されないから、嵩高で、柔軟な吸収性パネル27を含む生理用ナプキン30が得られる。
【0022】
圧縮成形加工が施される前の吸収性パネル27が、中高構造を有するものであってもよい。中高構造を有する吸収性パネル27は、上記積層工程において、一部に多くのフラップパルプを堆積させるか、または、担体上で均一に堆積させたフラップパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合堆積物の上に、別途準備したフラップパルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物を部分的に重ねることにより得られる。その場合、吸収性パネルの中高部におけるフラップパルプの坪量は、およそ500〜1000g/m2、その他の部分におけるフラップパルプの坪量はおよそ150〜300g/m2であることが好ましい。圧縮成形用ロールにより圧縮される前の吸収性パネル27の厚みは、中高部においては7〜12mm、その他の部分においては3〜7mmであることが好ましい。その場合、圧縮成形加工後の吸収性パネル27における上記その他の部分の厚みがおよそ0.5〜2.5mmとなるように、吸収性パネル27を圧縮成形することが好ましい。
【0023】
圧縮成形用ロール20の凹部22は、図3のa〜dに示されているような軸方向Sの端面形状および図4のe,f,Tに示されているような周方向Pの端面形状を有するが、c−c線における端面図に相当する図3のc’に示されているように、底部の角がとれた形状でもよい。また、f−f線における端面図に相当する図4のf’に示されているように、浅い凹部26が周方向Pの両端部における底部の角がとれた形状であってもよい。同様に、第1の深い凹部24もまた周方向Pの両端部における底部の角がとれた形状であってもよい
さらにまた、浅い凹部26は、同じくf−f線における端面図に相当する図4のf’’に示されているように、第1の深い凹部24の軸方向Sの幅寸法が小さくなり始める部分の近傍から、その深さが、第1の深い凹部24の幅寸法が小さくなるにつれて次第に浅くなっている形状でもよい。第1の深い凹部24もまた、その幅寸法が小さくなり始める部分の近傍から、先細の端24cに向かって深さが次第に浅くなっている形状であってもよい。
圧縮成形用ロール20の凹部22は、図8に示されているような形状でもよい。図8に示されている凹部22は、周方向Pの一方に向かって先端が細くなった形状の第1の深い凹部24と、この第1の深い凹部24の軸方向Sの両側に第1の深い凹部24と隣接して並んでいる一対の浅い凹部26と、これら一対の浅い凹部26の軸方向Sのさらに外側に、浅い凹部26と隣接して並んでいる一対の第2の深い凹部25とを含む。第1の深い凹部24および第2の深い凹部25は、図2に示されているものと同じであるが、一対の浅い凹部26は、図2に示されているものとは異なり、第1の深い凹部24によって分断され、連続しておらず、周方向Pの長さが第2の深い凹部25よりも短い。
【0024】
この第1実施形態に係る圧縮成形用ロール20において、一対の浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロールの周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネル27が、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。それによって、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の部分にかかる圧力の増大を抑えることができる。
【0025】
この発明の第1実施形態に係る圧縮成形用ロールを用いて成形された吸収性パネルを含む吸収構造体において、圧搾溝は必ずしも必要ではなく、上述の製造方法においてエンボス工程を省略することができる。その場合、吸収性パネルと表面シートとは、周縁において接合されていればよい。
【0026】
(第2実施形態)
図11には、この発明の第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図12には、図11のロール周面21のa−a線,b−b線,c−c線,d−d線における端面図が示されている。図13には、ロール周面21のe−e線,T−T線における端面図が示されている。
この発明の第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、円柱状であって、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向に窪んだ凹部22のみを有し、周面21より径方向に突出する凸部は有していない。凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。上記一対の側縁22aどうしの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの幅寸法とほぼ同じであるか、それよりも長いことが好ましい。
凹部22は、ロール周面21上で軸方向Sの中央に位置し、周方向Pに互いに離間している一対の浅い凹部26と、それ以外の深い凹部23とを含む。すなわち、深い凹部23と浅い凹部26とは、軸方向Sにおいて隣接して並んでいるばかりでなく、周方向Pにおいても隣接して並んでいる。一対の浅い凹部26は、ロールの軸方向Sの幅寸法を二等分する中心線Tをまたぐように位置している。
【0027】
浅い凹部26の軸方向Sの幅寸法は、エンボス工程において用いられるエンボスロールの、一対の側方条溝41を形成する凸部どうしの離間寸法よりも小さいことが好ましい。一対の浅い凹部26の周方向Pの中心どうしの離間寸法は、エンボスロールの凸状エンボスパターンおいて前方内側条溝の前端に相当する部分と後方内側条溝の後端に相当する部分との離間寸法とほぼ同じになるように設定されることが好ましい。
【0028】
第1実施形態に係るそれと同様に、第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20も、上述した吸収性パネルの圧縮成形工程において用いることができる。図14には、第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて圧縮成形加工が施された吸収性パネ27が示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の深い凹部23が当接した部分がほとんど圧縮されておらず、非圧縮領域28となり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。
圧縮成形後の吸収性パネル27に表面シート32が重ねられた後、上述したエンボス工程を経て得られた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30が、図15に示されている。このナプキン30では、前方外側条溝44の前端44aおよび後方外側条溝47の後端47bが、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。前方内側条溝43の前端43aおよび後方内側条溝46の後端46bは、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。圧搾溝40のその他の部分は、吸収性パネル27の非圧縮領域28に位置している。
【0029】
吸収構造体31の表面に、図示のような形状の圧搾溝40を形成しようとするときには、前方外側条溝44の前端44a,後方外側条溝47の後端47b,前方内側条溝43の前端43a,および後方内側条溝46の後端46bのように、圧搾溝30が吸収構造体31の幅方向に延びる部分は、嵩高な吸収性パネル27を用いた場合に、その他の部分と比べて圧搾溝40が形成され難くなることがある。しかしながら、この第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20によれば、嵩高な吸収性パネル27の柔軟性を損なうことなく、圧搾溝40が形成され難い部分だけを圧縮することができ、後のエンボス工程において吸収構造体31に圧搾溝40を確実に形成することができる。この圧縮成形用ロール20によって圧縮成形加工が施された吸収性パネル27を用いた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30は、圧搾溝40以外の部分が嵩高で、柔軟であり、着用感がよい。
【0030】
この第2実施形態に係る圧縮成形用ロール20では、一対の浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロール20の周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネル27が、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。
【0031】
この発明の第2実施形態に係る圧縮成形用ロールを用いて成形された吸収性パネルを含む吸収構造体においても、圧搾溝は必ずしも必要ではなく、上述の製造方法においてエンボス工程を省略することができる。
【0032】
(第3実施形態)
図16には、この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図17には、図16のロール周面21のa−a線,b−b線,c−c線における端面図が示されている。図18には、ロール周面21のd−d線,T−T線における端面図が示されている。
この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、円柱状であって、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向に窪んだ凹部22のみを有し、周面21より径方向に突出する凸部は有していない。凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。上記一対の側縁22aどうしの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの幅寸法とほぼ同じであるか、それよりも長いことが好ましい。凹部22は、その周方向Pの中心よりも一方の端縁22b寄りでロールの軸方向Sの中央に位置する一つの浅い凹部26と、それ以外の深い凹部23とから構成されている。すなわち、深い凹部23と浅い凹部26とは、軸方向Sにおいて隣接して並んでいるばかりでなく、周方向Pにおいても隣接して並んでいる。浅い凹部26は、ロールの軸方向Sの幅寸法を二等分する中心線Tをまたぐように位置している。
【0033】
浅い凹部26の軸方向Sの幅寸法は、エンボス工程において用いられるエンボスロールの、一対の側方条溝41を形成する凸部どうしの離間寸法よりも小さいことが好ましい。浅い凹部26の周方向Pの長さ寸法は、エンボスロールの凸状エンボスパターンおける後方内側条溝46の後端に相当する部分と後方外側条溝47の後端47bに相当する部分との離間寸法よりも小さいことが好ましい。
【0034】
第1実施形態に係るそれと同様に、第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20も、上述した吸収性パネルの圧縮成形工程において用いることができる。図19には、第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて圧縮成形加工が施された吸収性パネル27が示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の深い凹部23が当接した部分がほとんど圧縮されておらず、非圧縮領域28となり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。
圧縮成形後の吸収性パネル27には、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分に、2本のスリット37が形成される(図19を参照)。この2本のスリット37は、吸収性パネル27の幅寸法を二等分する中心線Lの両側で、それぞれ吸収性パネル27の長さ方向に沿って延びるように、公知のスリットロールにより形成される(図示せず)。
スリット37が形成された吸収性パネル27に表面シート32が重ねられた後、上述したエンボス工程を経て得られた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30が、図20に示されている。
前方外側条溝44の前端44aおよび後方外側条溝47の後端46bは、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。圧搾溝40のその他の部分は、吸収性パネル27の非圧縮領域28に位置している。
【0035】
嵩高な吸収性パネルに対しては、図示のようなスリット37を形成し難いことがあるが、この第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いれば、吸収性パネル27における図示のような圧搾溝40の端部分が位置する予定の部分とスリット37が形成される予定の部分とを同時に圧縮することができる。それによって、嵩高な吸収性パネル27の柔軟性を損なうことなく、後のエンボス工程において吸収構造体31に圧搾溝40およびスリット37を確実に形成することができる。上述のような工程を含む製造方法により得られたナプキン30は、圧搾溝40以外の部分が嵩高で、柔軟であり、着用感がよい。加えて、圧縮されて薄くなった後方内側条溝46と後方外側条溝47とに挟まれた領域にスリット37が形成されていることによって、このナプキン30は、着用中に横方向からの圧力を受けたときに、後方条溝45を案内にして肌当接面側に凸となるように折れ曲がり、着用者の臀裂に入り込み易い。
【0036】
この第3実施形態に係る圧縮成形用ロール20では、浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロール20の周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネルが、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。
【0037】
この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロールを用いて成形された吸収性パネルを含む吸収構造体においても、圧搾溝は必ずしも必要ではなく、上述の製造方法においてエンボス工程を省略することができる。
【0038】
(第4実施形態)
図21には、この発明の第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20の周面21の拡大図が示されている。図22には、図21のロール周面21のa−a線,b−b線における端面図が示されている。図23には、ロール周面21のc−c線,T−T線における端面図が示されている。
この発明の第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、円柱状であって、被加工物と接触するその周面21の一部のみにおいて該周面21より径方向に窪んだ凹部22のみを有し、周面21より径方向に突出する凸部は有していない。凹部22の外周縁を構成する一対の側縁22aおよび一対の端縁22bのうち、一対の側縁22aは、周方向Pにほぼ平行に延び、一対の端縁22bは、周方向Pの外側に向かって膨らむように緩やかに湾曲しながらロールの端面20bの側へ延びている。上記一対の側縁22aどうしの離間寸法は、被加工物である吸収性パネルの幅寸法とほぼ同じであるか、それよりも長いことが好ましい。凹部22は、上記一対の側縁22aに隣接して上記一対の端縁22b間をロールの周方向Pに延びる一対の浅い凹部26と、一対の浅い凹部26の間に位置するそれ以外の深い凹部23とから構成されている。すなわち、浅い凹部26と深い凹部23とは、軸方向Sにおいて隣接して並んでいる。
【0039】
この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20は、第1実施形態に係るそれと同様に、上述した吸収性パネルの圧縮成形工程において用いることができる。図24には、第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて成形された吸収性パネル27が示されている。この吸収性パネル27では、圧縮成形用ロール20の深い凹部23が当接した部分がほとんど圧縮されておらず、非圧縮領域28となり、その他の部分が圧縮領域29となっている。圧縮領域29には、吸収性パネル27の前後端部に位置する圧縮成形用ロール20の周面21が当接した部分と、圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が当接した部分とが含まれており、両部分はほぼ同程度に圧縮されている。
圧縮成形後の吸収性パネル27に表面シート32が重ねられた後、上述したエンボス工程を経て得られた吸収構造体31を含む生理用ナプキン30が、図25に示されている。
前方外側条溝44の前端44aおよび後方外側条溝47の後端47bは、圧縮成形用ロール20の周面21が当接した吸収性パネル27の圧縮領域29に位置している。圧搾溝40のその他の部分は、吸収性パネル27の非圧縮領域28に位置している。
【0040】
この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いれば、嵩高な吸収性パネル27の柔軟性を損なうことなく、圧搾溝40が形成され難い端部分が位置する予定の部分を圧縮することができ、後のエンボス工程において吸収構造体31に圧搾溝40を確実に形成することができる。また、この圧縮成形用ロール20の浅い凹部26が、一対の側方条溝41の外側の部分に当接するように設けられていることによって、体液吸収に主に寄与する吸収性パネル27の幅方向の中央部分を圧縮することなく、ロールの周面21が当接する吸収性パネル27の部分にかかる圧力の増大を抑えることができる。この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20を用いて、上述のような工程を含む製造方法により得られた生理用ナプキン30は、圧搾溝40以外の部分が嵩高で、柔軟であり、着用感がよい。
【0041】
この第4実施形態に係る圧縮成形用ロール20では、浅い凹部26が位置している部分を凹部とせずに、ロール20の周面21としてもよい。しかし、被加工物である吸収性パネルが、圧縮成形用ロール20とアンビルロール50との間に供給されたときに、圧縮成形用ロール20の周面21が当接して圧縮される領域29の軸方向Sの寸法が、吸収性パネル27の軸方向Sの全幅の60%以下であるときには、圧縮成形用ロール20が凹部22中に浅い凹部26を含んでいることが好ましい。
【0042】
この発明に係る圧縮成形用ロール20が1回転したときに圧縮成形加工できる吸収性パネルの数は幾つでもよいが、その数が多いほど、吸収性パネルの圧縮成形加工を連続的に高速で行うことが可能になる。
この発明に係る圧縮成形用ロール20は、金属や硬質合成樹脂など公知の材料で構成することができる。凹部の一部がその他の部分と異なる材料で構成されてもよい。圧縮成形用ロール20の一部に浅い凹部26を設ける代わりに、その一部を、その他の部分を構成する材料に比べて硬度の低い別材料で構成してもよい。例えば、鉄製の圧縮成形用ロール20において浅い凹部26を設ける代わりに、一部を公知の硬質ゴムや公知の硬質プラスチックにより構成すると、その一部は、ロール周面21より窪んだ凹部22ではなくても、それが浅い凹部26であるのと同様の効果を得ることが可能になる。
【0043】
また、圧縮成形用ロール20の一部に浅い凹部26を設ける代わりに、圧縮成形用ロール20とともに用いられるアンビルロール50の周面に凹部を設けてもよい。
アンビルロール50は、周面全体が平滑であってもよく、また、周面に、図26に示されているような格子状に溝が形成されているものでもよい。このとき、溝に囲まれた周面部分は、一辺が1〜5mmの正方形であることが好ましく、溝の深さは0.1〜0.7mmであることが好ましく、溝の幅寸法は1〜5mmであることが好ましい。
この発明に係る吸収構造体の製造方法において用いられるその他の機械器具および装置は、従来この種の物品の製造方法において一般的に用いられているものを使用することができる。
【0044】
ナプキン30の各構成部材は、通常公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート32には、目付15〜70g/m2、密度0.01〜0.025g/cm3のエアースルー不織布や、目付20〜40g/m2の開孔フィルムを用いることができる。裏面シート33には、目付15〜40g/m2の低密度ポリエチレン(LDPE)からなる不透液性フィルムを用いることができる。液拡散性シートには、ティッシュペーパを用いることができる。ナプキン30の各構成部材の接合には、通常公知のホットメルト接着剤による接着あるいは熱または超音波による溶着等の適宜の接合方法を用いることができる。
【0045】
この発明に係る圧縮成形用ロールおよびそれを用いた製造方法により得られた吸収構造体は、生理用ナプキン以外のおりもの用シート、吸尿パッド等の吸収性物品にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の第1実施形態に係る圧縮成形用ロールを示す斜視図。
【図2】図1の圧縮成形用ロール周面の拡大図。
【図3】図1の圧縮成形用ロールのa−a線,b−b線,c−c線,d−d線端面図および図1の圧縮成形用ロールの変形例を示すc’−c’線端面図。
【図4】図1の圧縮成形用ロールのe−e線,f−f線,T−T線端面図および図1の圧縮成形用ロールの変形例を示すf’−f’線,f’’−f’’線端面図。
【図5】図1の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図6】図5の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図7】圧縮成形工程を示す図。
【図8】異なる形状の凹部を有する圧縮成形用ロール周面の拡大図
【図9】図8の圧成形縮ロールのa−a線,b−b線,c−c線,d−d線端面図。
【図10】図8の圧縮成形用ロールのe−e線,f−f線,T−T線端面図。
【図11】この発明の第2実施形態に係る圧成形縮ロール周面の拡大図。
【図12】図11の圧縮成形用ロール周面のa−a線,b−b線,c−c線,d−d線端面図。
【図13】図11の圧縮成形用ロール周面のe−e線,T−T線端面図。
【図14】図11の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図15】図14の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図16】この発明の第3実施形態に係る圧縮成形用ロールの周面の拡大図。
【図17】図16の圧縮成形用ロール周面のa−a線,b−b線,c−c線端面図。
【図18】図16の圧縮成形用ロール周面のd−d線,T−T線端面図。
【図19】図16の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図20】図19の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図21】この発明の第4実施形態に係る圧縮成形用ロールの周面の拡大図。
【図22】図21の圧縮成形用ロール周面のa−a線,b−b線端面図。
【図23】図21の圧縮成形用ロール周面のc−c線,T−T線端面図。
【図24】図21の圧縮成形用ロールにより成形された吸収性パネルを示す平面図。
【図25】図24の吸収性パネルを含む生理用ナプキンの平面図。
【図26】圧縮成形用ロールとともに用いられるアンビルロール周面の部分拡大図。
【符号の説明】
【0047】
20 圧縮成形用ロール
21 周面
22 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の圧縮成形用ロールであって、被加工物と接触するその周面の一部のみにおいて該周面からその径方向に窪んだ成形凹部を有し、該凹部を除く周面が平滑であることを特徴とする前記圧縮成形用ロール。
【請求項2】
前記周面上に現れている前記凹部の形状が、前記ロールの周面を軸方向に二等分する中心線に関して対称である請求項1に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項3】
前記凹部が、前記周面からの径方向の深さが異なる深い凹部と浅い凹部とを含む請求項1または2記載の圧縮成形用ロール。
【請求項4】
前記凹部の少なくとも一部において、前記深い凹部と前記浅い凹部とが、前記周面上で軸方向に延びる一直線上に並んでいる請求項3記載の圧縮成形用ロール。
【請求項5】
前記凹部の少なくとも一部において、前記深い凹部と前記浅い凹部とが、軸方向に隣接して並んでいる請求項3または4に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項6】
前記凹部の少なくとも一部において、前記深い凹部と前記浅い凹部とが周方向に隣接して並んでいる請求項3〜5のいずれか1項に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項7】
前記凹部の軸方向の中心に、第1の深い凹部が位置し、
前記第1の深い凹部の軸方向の両側に、一対の浅い凹部が隣接し、
前記一対の浅い凹部の軸方向の外側に、一対の第2の深い凹部が隣接している請求項3〜6のいずれか1項に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項8】
吸収性パネルと、少なくともその表面を覆う透液性表面シートとを有する吸収構造体の製造方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧縮成形用ロールを用いて吸収性パネルを圧縮成形する工程を含むことを特徴とする前記製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法により得られた前記吸収構造体を含むことを特徴とする吸収性物品。
【請求項1】
円柱状の圧縮成形用ロールであって、被加工物と接触するその周面の一部のみにおいて該周面からその径方向に窪んだ成形凹部を有し、該凹部を除く周面が平滑であることを特徴とする前記圧縮成形用ロール。
【請求項2】
前記周面上に現れている前記凹部の形状が、前記ロールの周面を軸方向に二等分する中心線に関して対称である請求項1に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項3】
前記凹部が、前記周面からの径方向の深さが異なる深い凹部と浅い凹部とを含む請求項1または2記載の圧縮成形用ロール。
【請求項4】
前記凹部の少なくとも一部において、前記深い凹部と前記浅い凹部とが、前記周面上で軸方向に延びる一直線上に並んでいる請求項3記載の圧縮成形用ロール。
【請求項5】
前記凹部の少なくとも一部において、前記深い凹部と前記浅い凹部とが、軸方向に隣接して並んでいる請求項3または4に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項6】
前記凹部の少なくとも一部において、前記深い凹部と前記浅い凹部とが周方向に隣接して並んでいる請求項3〜5のいずれか1項に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項7】
前記凹部の軸方向の中心に、第1の深い凹部が位置し、
前記第1の深い凹部の軸方向の両側に、一対の浅い凹部が隣接し、
前記一対の浅い凹部の軸方向の外側に、一対の第2の深い凹部が隣接している請求項3〜6のいずれか1項に記載の圧縮成形用ロール。
【請求項8】
吸収性パネルと、少なくともその表面を覆う透液性表面シートとを有する吸収構造体の製造方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧縮成形用ロールを用いて吸収性パネルを圧縮成形する工程を含むことを特徴とする前記製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法により得られた前記吸収構造体を含むことを特徴とする吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2007−89600(P2007−89600A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278813(P2005−278813)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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