説明

圧縮成形装置

【課題】圧縮成形機での圧縮効率と成形性を向上できるスクリュ形式の供給機を提供することである。
【解決手段】ホッパ2からケーシング1に投入される被処理物をスクリュ3で混練しながら移送する供給機5に、先狭まりのテーパ部を有する排出部材4を取り付け、この排出部材4のテーパ部に複数の排出孔4bを設けることにより、被処理物を排出部材4のテーパ部による排出抵抗で圧縮して、テーパ部に設けられた排出孔4bの部分で擦り、これらの組み合わせ作用で付与される圧縮せん断力で、被処理物の嵩密度を高めたり、被処理物を分断したりするとともに、被処理物中の粘着性成分を抽出し、圧縮成形機11での圧縮効率と成形性を向上できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈草や可燃廃棄物等の被処理物を圧縮成形する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
刈草や可燃廃棄物等の被処理物を圧縮成形する圧縮成形装置には、圧縮成形機に供給する被処理物を予備混練するために、被処理物をケーシング内に配設されたスクリュで移送して排出口から供給するスクリュ形式の供給機を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
前記圧縮成形機は様々な形式のものがあるが、特許文献1に記載されたものを始め、筒状のケーシング内にスクリュを一端の供給端側から他端の排出端側に向けて配設し、供給端側から供給される被処理物を排出端側に設けたノズル等から、圧縮成形して排出する形式のものが多く用いられている。単孔ノズルをテーパ部とストレート部とで形成し、テーパ部で圧縮力を付与するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照。)。また、高含水率の被処理物を圧縮成形するものでは、テーパ部に排水用の孔やスリットを設けたものもある(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−181432号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】特開平7−256644号公報(第6頁、第9図)
【特許文献3】特開2000−63858号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した予備混練機能を有する従来のスクリュ形式の供給機は、被処理物を圧縮成形機に供給する排出口が排出抵抗のない単なる開口であるので、被処理物をかき混ぜる程度の予備混練機能しかない。この予備混練機能に、被処理物を圧縮して擦るような圧縮せん断作用を加えれば、予備混練の度合いを高めて、圧縮成形機での圧縮効率を向上できることが期待される。
【0006】
すなわち、混練される被処理物に圧縮せん断力を付与することにより、被処理物の嵩密度を高めたり、被処理物を分断したりする効果で、圧縮効率を向上できることが期待される。また、圧縮せん断による擦りやその発熱で、被処理物中の粘着性成分が抽出されやすくなるので、圧縮成形機での成形性も向上することが期待される。
【0007】
そこで、本発明の課題は、圧縮成形機での圧縮効率と成形性を向上できるスクリュ形式の供給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、被処理物をケーシング内に配設されたスクリュで移送して排出口に供給する供給機と、この供給機から供給される被処理物を圧縮成形する圧縮成形機を備えた圧縮成形装置において、前記供給機の排出口に先狭まりのテーパ部を有する排出部材を設け、この排出部材のテーパ部に複数の排出孔を設けた構成を採用した。
【0009】
すなわち、スクリュ形式の供給機の排出口に先狭まりのテーパ部を有する排出部材を設けて、この排出部材のテーパ部に複数の排出孔を設け、被処理物を排出部材の先狭まりのテーパ部による排出抵抗で圧縮して、テーパ部に設けられた排出孔の部分で擦ることにより、被処理物に圧縮せん断力を付与し、被処理物の嵩密度を高めたり、被処理物を分断したりするとともに、被処理物中の粘着性成分を抽出し、圧縮成形機での圧縮効率と成形性を向上できるようにした。
【0010】
前記供給機のケーシング内面に、前記被処理物の移送方向に延びる複数の溝を形成することにより、これらの溝の部分で移送中の被処理物を擦って、被処理物を分断したり、被処理物中の粘着性成分を抽出したりし、圧縮成形機での圧縮効率と成形性をより向上させることができる。
【0011】
前記排出孔を部分的に閉塞してその開口面積を調整するシャッタ部材を設けることにより、排出部材の排出抵抗を変化させて、被処理物の嵩密度や練り度合を調節することができる。また、供給機のスクリュを駆動する動力を検出し、排出孔の開口面積を調整して、スクリュの動力を適正な値に制御することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧縮成形装置は、スクリュ形式の供給機の排出口に先狭まりのテーパ部を有する排出部材を設けて、この排出部材のテーパ部に複数の排出孔を設けることにより、被処理物を排出部材の先狭まりのテーパ部による排出抵抗で圧縮して、テーパ部に設けられた排出孔の部分で擦り、被処理物に圧縮せん断力を付与するようにしたので、被処理物の嵩密度を高めたり、被処理物を分断したりするとともに、被処理物中の粘着性成分を抽出し、圧縮成形機での圧縮効率と成形性を向上することができる。
【0013】
また、前記供給機のケーシング内面に、被処理物の移送方向に延びる複数の溝を形成することにより、これらの溝の部分で移送中の被処理物を擦って、被処理物を分断したり、被処理物中の粘着性成分を抽出したりし、圧縮成形機での圧縮効率と成形性をより向上させることができる。
【0014】
前記排出孔を部分的に閉塞してその開口面積を調整するシャッタ部材を設けることにより、排出部材の排出抵抗を変化させて、被処理物の嵩密度や練り度合を調節することができる。また、供給機のスクリュを駆動する動力を検出し、排出孔の開口面積を調整して、スクリュの動力を適正な値に制御することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図6は、第1の実施形態を示す。この圧縮成形装置は、図1および図2に示すように、ケーシング1の一端側上部に設けられたホッパ2から投入される刈草や可燃廃棄物等の被処理物を、スクリュ3で混練しながら他端側へ移送して、ケーシング1の他端側に設けられたテーパ筒状の排出部材4から供給する供給機5と、筒状のケーシング6内に回転軸が互いに平行な一対のスクリュ7が設けられ、供給機5から供給口8へ供給される被処理物を、スクリュ7で混練して加圧しながら他端側の排出板9側へ移送し、排出板9の手前でさらに圧縮して、排出板9に設けた複数のノズル10から棒状の圧縮成形物として排出するスクリュ型の圧縮成形機11とで基本的に構成されており、各ノズル10から排出される棒状の圧縮成形物は、カッタ12で定尺に切断されるようになっている。
【0016】
図3および図4(a)、(b)に示すように、前記供給機5の排出部材4は、ケーシング1のスクリュ3先端側にフランジ結合で着脱可能に取り付けられており、先狭まりのテーパ部先端に1つの丸孔排出孔4aが設けられるとともに、テーパ部に筒方向へ延びる複数の長孔排出孔4bが設けられている。また、テーパ部の基端側内面には、内方へ突出する複数の突起4cも設けられている。
【0017】
前記供給機5のケーシング1には、移送される被処理物に蒸気を供給する蒸気入口13が設けられ、その内面にはライナ14が内張りされている。このライナ14は、図5(a)、(b)、(c)に示すように、軸方向に延びる複数の長孔15が形成されており、図3に示したように、ケーシング1の内面に被処理物の移送方向へ延びる複数の溝15aを形成するようになっている。
【0018】
上述した供給機5では、ホッパ2から投入される被処理物が、蒸気入口13から供給される蒸気により、その成分として含まれるセルロースやヘミセルロースを加水分解されて、ケーシング1の内面に形成された複数の溝15aで擦られ、移送中の被処理物が分断されるとともに、その粘着性成分が抽出される。
【0019】
こののち、前記排出部材4側へ移送された被処理物は、排出部材4の基端側に設けられた突起4cでスクリュ7の螺旋面から剥がされるとともに分断作用を受ける。さらに、被処理物は先狭まりの排出部材4による排出抵抗で圧縮されて、テーパ部に設けられた排出孔4bの部分で擦られ、これらの組み合わせ作用で付与される圧縮せん断力により、嵩密度が高められるとともに、再び分断されて粘着性成分を抽出される。したがって、この供給機5から供給される被処理物は、圧縮成形機11での圧縮効率と成形性を著しく向上させることができる。
【0020】
図6は、上述した圧縮成形装置を車両Aに搭載し、被処理物として野積みされた刈草Bを圧縮成形するようにしたものである。刈草Bはホース16等で吸引されて供給機5のホッパ2に投入され、その場で圧縮成形機11のノズル10から排出される棒状の圧縮成形物がカッタ12で定尺に切断される。車両Aには、供給機5や圧縮成形機11を駆動する発電機や制御盤等の付帯設備17も搭載されている。
【0021】
図7および図8は、第2の実施形態を示す。この圧縮成形装置は、基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、図7(a)、(b)に示すように、供給機5の排出部材4のテーパ部の内面側に沿って回動し、各排出孔4bを部分的に閉塞してその開口面積を調整するシャッタ部材18が設けられている点のみが異なる。したがって、この実施形態では、各排出孔4bの開口面積を調整して、排出部材4の排出抵抗を変化させることにより、被処理物の嵩密度や練り度合を調節することができる。また、供給機5のスクリュ3を駆動する動力を検出し、排出孔4bの開口面積を調整して、スクリュ3の動力を適正な値に制御することもできる。
【0022】
前記シャッタ部材18は、図8に示すように、コーン状でテーパ部に排出孔4bと同じ形状の複数の窓18aを設けたものであり、各窓18aを各排出孔4bに重ねた位置で排出孔4bが全開となり、徐々に回動させることにより、排出孔4bの開口面積が狭くなる。なお、このシャッタ部材18は、排出部材4のテーパ部の外面側に沿って回動させるものとしてもよい。
【0023】
上述した各実施形態では、排出部材のテーパ部先端に排出孔を設けるとともに、テーパ部に複数の排出孔を設けたが、テーパ部の排出孔は実施形態の長孔形状のものに限定されることはなく、任意の形状に形成することができる。また、テーパ部先端の排出孔は省略することもできる。なお、これらの排出孔の開口率をあまり小さくすると、排出部材の排出抵抗が過大となって、被処理物の移送に大きな動力を必要とするので、例えば、テーパ部先端の排出孔を省略する場合は、テーパ部の排出孔の開口率を大きくするとよい。
【0024】
また、上述した各実施形態では、圧縮成形機をスクリュ型のものとしたが、ディスクダイ式やリングダイ式のロール型、プレスを用いるラム型等の他の形式の圧縮成形機を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態の圧縮成形装置を示す切欠き正面図
【図2】図1の圧縮成形機を示す切欠き平面図
【図3】図1の供給機を示す縦断正面図
【図4】aは図3の側面図、bは図3の排出部材の正面図
【図5】aは図3のライナの縦断正面図、bはaのVb−Vb線に沿った断面図、cはaのVc−Vc線に沿った断面図
【図6】図1の圧縮成形装置を車両に搭載した状態を示す切欠き正面図
【図7】aは第2の実施形態の圧縮成形装置の供給機を示す側面図、bはaのVIIb−VIIb線に沿った断面図
【図8】図7のシャッタ部材を示す斜視図
【符号の説明】
【0026】
1 ケーシング
2 ホッパ
3 スクリュ
4 排出部材
4a、4b 排出孔
4c 突起
5 供給機
6 ケーシング
7 スクリュ
8 供給口
9 排出板
10 ノズル
11 圧縮成形機
12 カッタ
13 蒸気入口
14 ライナ
15 長孔
15a 溝
16 ホース
17 付帯設備
18 シャッタ部材
18a 窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物をケーシング内に配設されたスクリュで移送して排出口に供給する供給機と、この供給機から供給される被処理物を圧縮成形する圧縮成形機を備えた圧縮成形装置において、前記供給機の排出口に先狭まりのテーパ部を有する排出部材を設け、この排出部材のテーパ部に複数の排出孔を設けたことを特徴とする圧縮成形装置。
【請求項2】
前記供給機のケーシング内面に、前記被処理物の移送方向に延びる複数の溝を形成した請求項1に記載の圧縮成形装置。
【請求項3】
前記排出孔を部分的に閉塞してその開口面積を調整するシャッタ部材を設けた請求項1または2に記載の圧縮成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−181614(P2006−181614A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379075(P2004−379075)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(301031783)国土交通省中国地方整備局長 (5)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】