説明

圧縮機、空気調和機及び給湯器

【課題】低段側圧縮機構で液圧縮が行われることによる摺動部の破損を防止すると共に、高段側圧縮機構で冷媒が漏れることによる圧縮効率の低下を防止する。
【解決手段】圧縮機30は、低段側圧縮機構5Lで圧縮した冷媒を高段側圧縮機構5Hでさらに圧縮する2段圧縮式の圧縮機であって、低段側圧縮機構5Lは、低段側圧縮室6s内に配置された低段側ローラ61aと、低段側ローラ61aの外周面に押圧され且つ低段側圧縮室6sを高圧室6shと低圧室6slとに区画する低段側ブレード61bとを備え、高段側圧縮機構5Hは、高段側圧縮室7s内に配置された高段側ローラ71aと、高段側ローラ71aの外周面から延在し且つ高段側圧縮室7sを高圧室7shと低圧室7slとに区画する高段側ブレード71bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電用機器等で使用される圧縮機であって、特に、2段圧縮式の圧縮機と、この圧縮機を用いた空気調和機及び給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2段圧縮式の圧縮機として、ケーシング内に配置した低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構を備えた圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この圧縮機では、アキュムレータから低圧ガス冷媒を低段側圧縮機構に吸入可能な構成となっている。そして、低段側圧縮機構の低段側圧縮室の内部で圧縮された中間圧ガス冷媒が、ケーシング内の空間に対して吐出され、この空間に吐出された中間圧ガス冷媒が高段側圧縮機構に吸入される構成となっている。そして、高段側圧縮機構の高段側圧縮室の内部で圧縮された高圧ガス冷媒がケーシングの外部に吐出される。
【0003】
また、このような従来の圧縮機としては、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを一体で構成したピストンを用いた圧縮機(例えば、特許文献2参照)や、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた圧縮機(例えば、特許文献3〜5参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4151120号公報
【特許文献2】特開2000−87892号公報
【特許文献3】特許第4146781号公報
【特許文献4】特開2001−73976号公報
【特許文献5】特開2007−113542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の2段圧縮式の圧縮機では、湿り運転等で、低段側圧縮機構に液冷媒が吸入され、液圧縮運転を行うことによる異常高圧に起因した摺動部の破損を防止する観点から、低段側圧縮室の低圧室に吸い込まれたガス冷媒中に混在する液冷媒を高圧室側に逃がすために、ピストンは、ローラとブレードとを別体で構成した方が有利である。
【0006】
一方、高段側圧縮機構では、高段側圧縮室において高圧室と低圧室の圧力差が大きくなるので、このような圧力差に起因して、高圧室から低圧室に向けて冷媒が漏れることによる圧縮効率の低下を防止する観点から、ピストンは、ローラとブレードとを一体で構成した方が有利である。
【0007】
本発明の目的は、低段側圧縮機構で液圧縮が行われることによる摺動部の破損を防止できると共に、高段側圧縮機構で冷媒が漏れることによる圧縮効率の低下を防止可能な、2段圧縮式の圧縮機と、この圧縮機を用いた空気調和機及び給湯器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る圧縮機は、低段側圧縮機構で圧縮した冷媒を高段側圧縮機構でさらに圧縮する2段圧縮式の圧縮機であって、低段側圧縮機構は、低段側圧縮室内に配置された低段側ローラと、低段側ローラの外周面に押圧され且つ低段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する低段側ブレードとを備え、高段側圧縮機構は、高段側圧縮室内に配置された高段側ローラと、高段側ローラの外周面から延在し且つ高段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する高段側ブレードとを備える。
【0009】
この圧縮機では、低段側圧縮機構を、低段側ローラと、この低段側ローラの外周面に押圧され且つ低段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する低段側ブレードとで構成することにより、低段側圧縮室の低圧室に吸い込まれたガス冷媒中に液冷媒が混在していても、低段側ローラと低段側ブレードとが別体で構成されているので、混在する液冷媒を高圧室側に向けて容易に逃がすことができる。したがって、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを一体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、低段側圧縮機構で液圧縮を行うことによる異常高圧に起因した各摺動箇所の破損を防止できる。
【0010】
また、この圧縮機では、高段側圧縮機構を、高段側ローラと、この高段側ローラの外周面から延在し且つ高段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する高段側ブレードとで構成することにより、つまり、高段側圧縮機構において高段側ローラと高段側ブレードとを一体で構成することにより、高段側圧縮室における高圧室と低圧室の圧力差が大きくなっても、この圧力差に起因した高圧室から低圧室への冷媒の漏れを、高段側ブレードによって防ぐことができるので、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、圧縮効率の低下を確実に防止することができる。
【0011】
第2の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、高段側圧縮室の高圧室と低圧室との圧力差が、低段側圧縮室の高圧室と低圧室との圧力差より大きい。
【0012】
この圧縮機では、高段側圧縮室における高圧室と低圧室との圧力差が、低段側圧縮室における高圧室と低圧室との圧力差よりも大きくなることにより、高段側圧縮室において高圧室と低圧室との圧力差に起因した冷媒の漏れが顕著に現れるような場合であっても、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、高段側圧縮室における冷媒の漏れを確実に防止できる。
【0013】
第3の発明に係る圧縮機は、第1または第2の発明に係る圧縮機において、CO冷媒を圧縮する。
【0014】
この圧縮機では、CO冷媒のように高圧の冷媒を用いた場合では、高段側圧縮室における高圧室と低圧室との圧力差に起因した冷媒の漏れがより顕著に現れるのが一般的であるが、このような場合であっても、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、高段側圧縮室における冷媒の漏れを確実に防止できる。
【0015】
第4の発明に係る空気調和機では、第1〜第3のいずれかに係る圧縮機を用いる。
【0016】
この空気調和機では、第1〜第3に係る圧縮機と同様の効果を得ることができる。
【0017】
第5の発明に係る給湯器では、第1〜第3のいずれかに係る圧縮機を用いる。
【0018】
この給湯器では、第1〜第3に係る圧縮機と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0020】
第1の発明では、低段側圧縮機構を、低段側ローラと、この低段側ローラの外周面に押圧され且つ低段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する低段側ブレードとで構成することにより、低段側圧縮室の低圧室に吸い込まれたガス冷媒中に液冷媒が混在していても、低段側ローラと低段側ブレードとが別体で構成されているので、混在する液冷媒を高圧室側に向けて容易に逃がすことができる。したがって、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを一体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、低段側圧縮機構で液圧縮を行うことによる異常高圧に起因した各摺動箇所の破損を防止できる。
【0021】
さらに、第1の発明では、高段側圧縮機構を、高段側ローラと、この高段側ローラの外周面から延在し且つ高段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する高段側ブレードとで構成することにより、つまり、高段側圧縮機構において高段側ローラと高段側ブレードとを一体で構成することにより、高段側圧縮室における高圧室と低圧室の圧力差が大きくなっても、この圧力差に起因した高圧室から低圧室への冷媒の漏れを、高段側ブレードによって防ぐことができるので、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、圧縮効率の低下を確実に防止することができる。
【0022】
また、第2の発明では、高段側圧縮室における高圧室と低圧室との圧力差が、低段側圧縮室における高圧室と低圧室との圧力差よりも大きくなることにより、高段側圧縮室において高圧室と低圧室との圧力差に起因した冷媒の漏れが顕著に現れるような場合であっても、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、高段側圧縮室における冷媒の漏れを確実に防止できる。
【0023】
また、第3の発明では、CO冷媒のように高圧の冷媒を用いた場合では、高段側圧縮室における高圧室と低圧室との圧力差に起因した冷媒の漏れがより顕著に現れるのが一般的であるが、このような場合であっても、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、高段側圧縮室における冷媒の漏れを確実に防止できる。
【0024】
また、第4の発明では、第1〜第3に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【0025】
また、第5の発明では、第1〜第3に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧縮機を適用した空気調和機の配管系統図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る圧縮機の内部構造を示した断面図である。
【図3】図2に示した低段側シリンダの上面視図である。
【図4】図2に示した高段側シリンダの上面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明に係る圧縮機の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧縮機を適用した空気調和機の配管系統図である。図2は、本発明に係る圧縮機の斜視図である。図3及び図4は、図2に示した低段側シリンダ及び高段側シリンダの各上面視図である。
【0028】
[空気調和装置の構成]
図1に示すように、空気調和装置10は、CO冷媒(以下、冷媒と略記する)を用いたヒートポンプ式の空気調和装置であって、冷房運転と暖房運転とに切り換え自在に構成されている。空気調和装置10の冷媒回路20は、圧縮機30と、四路切換弁21と、熱源側熱交換器である室外熱交換器22と、第1膨張機構である第1膨張弁E1と、気液分離器23と、第2膨張機構である第2膨張弁E2と、利用側熱交換器である室内熱交換器24と、アキュムレータ25とが冷媒配管26によって順に接続された主冷媒回路2Mを備えている。
【0029】
四路切換弁21は、図1の実線で示す状態の冷房運転と、図1の破線で示す状態の暖房運転とに切り換わる。冷媒回路20には、インジェクション管2Bが設けられている。このインジェクション管2Bは、中間圧流体である中間圧ガス冷媒を圧縮機30に対してインジェクションするための導入管であって、その一端側が、気液分離器23に、その他端側が、圧縮機30に連通している。
【0030】
つまり、気液分離器23には、高圧流体である冷媒の凝縮圧力と低圧流体である冷媒の蒸発圧力との中間圧力になっている中間圧冷媒が貯溜されている。インジェクション管2Bは、気液分離器23の中間圧冷媒のうち、ガス相の中間圧ガス冷媒を圧縮機30にインジェクションする。第1膨張弁E1と第2膨張弁E2は、開度の調整が自在な電動弁により構成されている。そして、第1膨張弁E1または第2膨張弁E2で減圧された中間圧冷媒は、気液分離器23に貯溜される。
【0031】
[圧縮機の構成]
圧縮機30は、運転容量を無段階または多段階に制御可能に構成されており、図2に示すように、2段圧縮機として構成されている。この圧縮機30は、密閉型のケーシング31の内部にモータ40と、低段側圧縮機構5L及び高段側圧縮機構5Hとを収納することにより構成されている。モータ40は、ケーシング31の内周面に固着されたステータ41と、このステータ41の中央部に配設されたロータ42とを備えている。このロータ42の中央部には、駆動軸32が連結されている。この駆動軸32は、図2に示すように、下方に向けて延在しており、低段側圧縮機構5L及び高段側圧縮機構5Hに連結されている。
【0032】
ケーシング31内の底部は潤滑油の油溜め部33として構成されており、この油溜め部33に貯留された潤滑油には、駆動軸32の下端部が浸漬されている。なお、駆動軸32の下端部には、図示しない遠心式の油ポンプが設けられており、駆動軸32内の給油路34に潤滑油を通過させることにより、潤滑油を低段側圧縮機構5L及び高段側圧縮機構5Hの各摺動箇所に対して供給可能な構成となっている。
【0033】
図2に示すように、低段側圧縮機構5L及び高段側圧縮機構5Hは、モータ40の下方に位置すると共に、低段側圧縮機構5Lの上方に高段側圧縮機構5Hが配置されている。また、低段側圧縮機構5Lの低段側シリンダ60と、高段側圧縮機構5Hの高段側シリンダ70との間にはミドルプレート6mが設けられており、低段側シリンダ60の下面は下部プレート6dが設けられて閉鎖されており、高段側シリンダ70の上面は上部プレート6uが設けられて閉鎖されている。
【0034】
図3に示すように、低段側圧縮機構5Lは、低段側シリンダ60内に形成された低段側圧縮室6sの内部に低段側ピストン61を収納することにより構成されている。この低段側ピストン61は、円環状の低段側ローラ61aと、低段側ブレード61bと、スプリング61cとを有しており、低段側ローラ61aと低段側ブレード61bとは、それぞれが別体で構成されている。この低段側ピストン61の径方向内側には、駆動軸32を装着した偏心軸部62が回転自在に嵌め込まれている。
【0035】
また、低段側圧縮室6sの径方向外側に形成した案内溝の内部には、低段側ブレード61b及びスプリング61cが配置されている。低段側ブレード61bは、スプリング61cにより低段側ローラ61aの外周面を押圧するように付勢されている。また、図3に示すように、低段側圧縮室6sは、低段側ブレード61bによって、吸入通路51に連通する低圧室6slと、吐出通路53に連通する高圧室6shとに区画されている。
【0036】
図3に示すように、低段側シリンダ60には吸入通路51が形成されており、この吸入通路51の一端が低段側圧縮室6sの低圧室6slに開口することにより吸入口が構成されている。また、図2に示すように、ミドルプレート6mには低段側圧縮機構5Lの吐出通路53が形成されており、この吐出通路53の一端が低段側圧縮室6sの高圧室6shに開口することにより吐出口が構成されている。なお、吐出通路53には、所定の吐出圧力になると吐出口を開口する吐出弁(図示せず)が設けられている。
【0037】
図4に示すように、高段側圧縮機構5Hは、高段側シリンダ70内に形成された高段側圧縮室7sの内部に高段側ピストン71を収納することにより構成されている。この高段側ピストン71は、円環状の高段側ローラ71aと、高段側ブレード71bとを有しており、高段側ローラ71aと高段側ブレード71bは一体で構成されている。
【0038】
図4に示すように、高段側圧縮室7sは、高段側ブレード71bによって、吸入通路52に連通する低圧室7slと、吐出通路54に連通する高圧室7shとに区画されている。この高段側ピストン71の径方向内側には、駆動軸32を装着した偏心軸部72が回転自在に嵌め込まれている。また、高段側シリンダ70には、高段側圧縮室7sの径方向外側において、軸方向の円柱状のブッシュ孔73が形成されている。このブッシュ孔73の内部には、一対の揺動ブッシュ7bを介して高段側ブレード71bの先端部が挿入されている。
【0039】
図4に示すように、高段側シリンダ70には吸入通路52が形成されており、この吸入通路52の一端が高段側圧縮室7sの低圧室7slに開口することにより吸入口が構成されている。また、図2に示すように、上部プレート6uには高段側圧縮機構5Hの吐出通路54が形成されており、この吐出通路54の一端が高段側圧縮室7sの高圧室7shに開口することにより吐出口が構成されている。なお、吐出通路54には、所定の吐出圧力になると吐出口を開口する吐出弁(図示せず)が設けられている。
【0040】
なお、高段側ブレード71bで高段側圧縮室7sを区画することにより形成した高圧室7shの圧力と低圧室7slの圧力との圧力差は、低段側ブレード61bで低段側圧縮室6sを区画することにより形成した高圧室6shの圧力と低圧室6slの圧力との圧力差よりも大きくなるように構成されている。
【0041】
図2に示すように、低段側圧縮機構5Lの吸入通路51には、主冷媒回路2Mの吸入側冷媒配管2rが接続されている。この吸入側冷媒配管2rは、アキュムレータ25から低段側圧縮機構5Lに向けて低圧ガス冷媒を供給するための吸入管として構成されている。また、ミドルプレート6mには、環状の中間通路55が形成されている。そして、インジェクション管2Bがミドルプレート6mと接続されることにより、インジェクション管2Bが中間通路55と連通している。つまり、この中間通路55の内部は、中間圧ガス冷媒が供給されることにより中間圧雰囲気に構成されている。
【0042】
また、低段側圧縮機構5Lの吐出通路53は中間通路55と連通する一方で、高段側圧縮機構5Hの吸入通路52が中間通路55と連通することにより、中間圧冷媒を高段側圧縮機構5Hに対して供給可能な構成となっている。また、高段側圧縮機構5Hの吐出通路54は、ケーシング31の内部に開口しており、このケーシング31内部は高圧雰囲気に構成されている。
【0043】
そして、ケーシング31の上部は、主冷媒回路2Mの吐出側冷媒配管2dが接続されており、この吐出側冷媒配管2dは、高圧ガス冷媒を吐出するための吐出管として構成されている。また、上部プレート6uには、高段側圧縮機構5Hの吐出通路54を覆うためのマフラ65が設けられている。
【0044】
[本実施形態の圧縮機の特徴]
以上、本実施形態の圧縮機30では、低段側圧縮機構5Lを、低段側ローラ61aと、この低段側ローラ61aの外周面に押圧され且つ低段側圧縮室6sを高圧室6shと低圧室6slとに区画する低段側ブレード61bとで構成することにより、低段側圧縮室6sの低圧室6slに吸入通路51を介して吸い込まれた低圧ガス冷媒中に液冷媒が混在していても、低段側ローラ61aと低段側ブレード61bとが別体で構成されているので、混在する液冷媒を高圧室6sh側に向けて容易に逃がすことができる。したがって、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを一体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、低段側圧縮機構5Lで液圧縮が行われることを防止でき、異常高圧に起因した各摺動箇所の破損を防止できる。
【0045】
また、本実施形態の圧縮機30では、高段側圧縮機構5Hを、高段側ローラ71aと、この高段側ローラ71aの外周面から延在し且つ高段側圧縮室7sを高圧室7shと低圧室7slとに区画する高段側ブレード71bとで構成することにより、つまり、高段側圧縮機構5Hにおいて高段側ローラ71aと高段側ブレード71bとを一体で構成することにより、高段側圧縮室7sにおける高圧室7shと低圧室7slの圧力差が大きくなっても、この圧力差に起因した高圧室7shから低圧室7slへの冷媒の漏れを、高段側ブレード71bによって防ぐことができるので、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、圧縮機30の圧縮効率の低下を確実に防止できる。
【0046】
また、本実施形態の圧縮機30のように、R410A等の代替冷媒よりも、高圧で使用されるCO冷媒を用いた場合では、高段側圧縮室7sにおける低圧室7slと高圧室7shの圧力差は大きくなり、冷媒の漏れがより顕著に現れるのが一般的であるが、このような場合であっても、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、高段側圧縮室7sにおける冷媒の漏れを防止でき、圧縮機30の圧縮効率の低下を確実に防止できる。
【0047】
また、本実施形態の圧縮機30のように、高段側圧縮室7sにおける高圧室7shの圧力と低圧室7slの圧力との圧力差が、低段側圧縮室6sにおける高圧室6shの圧力と低圧室6slの圧力との圧力差よりも大きく、高段側圧縮室7sにおいて高圧室7shの圧力と低圧室7slの圧力との圧力差に起因した冷媒の漏れが顕著に現れるような場合であっても、高段側圧縮室7sにおける冷媒の漏れを、高段側ブレード71bによって防止でき、低段側圧縮機構及び高段側圧縮機構で共に、ローラとブレードとを別体で構成したピストンを用いた従来の圧縮機と比べて、圧縮機30の圧縮効率の低下を確実に防止できる。
【0048】
なお、以下の表1に、冷媒別の条件の一例を示す。この表1から明らかなように、高段側圧縮室における圧力差は、低段側圧縮室における圧力差よりも大きくなっており、その傾向は、冷媒としてR410Aを使用した場合よりも、COを使用した場合に顕著となっている。
【表1】

【0049】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、本発明を、CO冷媒を冷媒として利用した圧縮機に適用する例について述べたが、本発明は、CO冷媒以外にも、R410A冷媒やR22冷媒等を冷媒として利用した圧縮機に適用可能である。
【0051】
なお、上述した実施形態では、圧縮機30において、高段側圧縮機構5Hよりも下方に低段側圧縮機構5Lを配置する例について述べたが(図2参照)、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。圧縮機30において、高段側圧縮機構5Hよりも上方に低段側圧縮機構5Lを配置してもよい。
【0052】
なお、上述した実施形態では、本発明の圧縮機を空気調和機に適用する例について述べたが(図1参照)、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。本発明の圧縮機は、空気調和機に限らず、給湯器等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
5L 低段側圧縮機構
5H 高段側圧縮機構
6s 低段側圧縮室
7s 高段側圧縮室
6sl、7sl 低圧室
6sh、7sh 高圧室
10 空気調和装置
30 圧縮機
60 低段側シリンダ
61 低段側ピストン
61a 低段側ローラ
61b 低段側ブレード
70 高段側シリンダ
71 高段側ピストン
71a 高段側ローラ
71b 高段側ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低段側圧縮機構で圧縮した冷媒を高段側圧縮機構でさらに圧縮する2段圧縮式の圧縮機であって、
前記低段側圧縮機構は、
低段側圧縮室内に配置された低段側ローラと、
前記低段側ローラの外周面に押圧され且つ前記低段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する低段側ブレードとを備え、
前記高段側圧縮機構は、
高段側圧縮室内に配置された高段側ローラと、
前記高段側ローラの外周面から延在し且つ前記高段側圧縮室を高圧室と低圧室とに区画する高段側ブレードとを備えることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記高段側圧縮室の高圧室と低圧室との圧力差が、前記低段側圧縮室の高圧室と低圧室との圧力差より大きいことを特徴とする請求項1記載の圧縮機。
【請求項3】
CO冷媒を圧縮することを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮機を用いたことを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮機を用いたことを特徴とする給湯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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