説明

圧縮空気製造方法および製造装置

【課題】 簡便な機能によって効率性が高く、酸素濃度の安定したCDAを供給できる圧縮空気製造方法および製造装置を提供すること。
【解決手段】 ゼオライト系の吸着剤を全部もしくは一部に充填した2塔以上の吸着塔を切換えて原料空気を精製するとともに、該吸着塔の内の少なくとも1塔の吸着塔に充填された吸着剤を再生ガスによって順次再生させる圧縮空気製造方法において、再生工程にある吸着塔(R)が精製工程へ移行するに際し、精製された空気によって前記吸着剤のパージを行う工程を有するとともに、パージ工程にある吸着塔(R)の内部圧力を、精製工程にある吸着塔(P)の内部圧力との差圧を規定値以内に制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気製造方法および製造装置に関するもので、詳細には、半導体製造工場あるいは液晶製造工場などに多用される圧縮乾燥空気(CDA)の供給用として利用される圧縮空気製造方法および製造装置に有用である。なお、ここでいう「CDA」とは、水分の他にメタンや二酸化炭素あるいは各種炭化水素などを除去・処理を行った空気を含む広い概念をいう。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工場あるいは液晶製造工場などにおいては、各工程における洗浄用あるいはパージ用などとして、液化窒素を気化した純窒素が大量に利用されていたが、近年それに代わり、安価なCDAの利用が増加してきている。
【0003】
こうした要求に応じて、CDAを製造する設備は、モレキュラシーブス、シリカゲル等を使用した通常2塔切り換え式のTSA(加熱再生装置、Temperature Swing Adsorption)方式やPSA(減圧再生装置、Pressure Swing Adsorption)方式の吸着装置が採用されている。また、効率性や操作性あるいはコスト面等の改善を図り、種々の圧縮空気製造方法および製造装置が提案されている。
【0004】
例えば、図6に示すように、高清浄なCDAと従来から使用されている乾燥空気とを同時に効率よく、かつ、安定的に供給するための方法及び装置が開示されている。つまり、原料空気を空気圧縮機101で圧縮する圧縮工程と、該原料空気中の水分を前置精製器103で除去する前置精製工程と、原料空気中の水素,一酸化炭素を触媒精製器105で水,二酸化炭素に転換する触媒精製工程と、水,二酸化炭素を吸着精製器106除去する吸着精製工程とを、この順で行うことにより高清浄乾燥空気を得るとともに、前記前置精製工程を経た乾燥空気を随時製品として採取することができる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、図7に示すように、メタン,一酸化炭素、水素、炭酸ガス、及び水等の半導体の製造には不適な不純物を含まないCDAの製造方法及び装置が開示されている。つまり、原料空気ARを圧縮機201で圧縮し、当該圧縮熱により加温された圧縮空気ARpを加熱器203で更に加熱して圧縮加熱空気ARphとし、触媒筒204で原料空気中に含有するメタン、一酸化炭素、水素等を空気中の酸素と反応させて水分、炭酸ガス等とし、次いで該反応後の圧縮空気ARrを冷却設備205で常温又はそれ以下の温度とした後、吸着式精製設備206の吸着剤Mと接触せしめて、含有する前記転化した水分、炭酸ガス等の不純物を吸着除去して空気中に含有するメタン、一酸化炭素、水素、炭酸ガス、及び水分を1ppm以下にしたクリーン・ドライ空気Aoを得ることができる(例えば特許文献2参照)。
【0006】
また、図8に示すように、空気分離装置301から排出される排ガスをCDA製造装置の吸着剤の再生ガスとして利用することが開示されている。従前のPSA装置を用いた2塔切換え方式のCDA製造装置における再生ガスとして利用することによって、空気分離装置の排ガスの組成に影響されることなく、これを有効利用することができ、かつ、CDA製造装置の再生ガスとして使用される自己生成ガスの使用量を低減させもしくは無くすことができ、しかも、安価で、管理等が簡単なCDA製造方法を提供することができる(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−24445号公報
【特許文献2】特開2002−346330号公報
【特許文献3】特開2003−326127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のCDAの製造方法や製造装置においては、精製したガスの一部を用いて再生することから、再生時間を多くすると製品としてのCDAの量を減少させることとなる。また、再生時間を十分に確保しなければ精製能力の低下を招くこととなり、CDA製造の生産性や生産効率の低下を招くこととなる。
【0009】
また、吸着能力および再生能力が高くCDAの精製に好適なモレキュラシーブスは、空気成分のうち窒素成分を選択的に吸着するという特性を有している。このため、再生工程の終了した吸着塔を再度昇圧する過程で昇圧ガスのうち、窒素分が吸着剤に吸収されてしまい、結果的に酸素の濃縮したガスが精製工程に切換える直前の吸着塔を含む系内に残ることになる。従って、精製工程に切換った直後において、一時的にCDA中の酸素濃度が30〜50%に急上昇してしまうことがある。従前の圧縮空気製造方法や製造装置については、こうした現象を把握できておらず、いずれも言及されていない。また、酸素濃度の高いCDAは、ステッパー等の半導体製造工程の歩留まりに影響を与えてしまうことから、酸素濃度の安定したCDAを供給できる装置が求められていた。
【0010】
さらに、窒素の吸着剤への吸着量は系内の圧力上昇に伴い増加するため、従来のPSA方式のように内部の圧力を上下させる置換操作では、窒素分の吸着の影響を完全に排除できず、切り換え直後の酸素濃度は数パーセント上昇していた。
【0011】
本発明の目的は、簡便な機能によって効率性が高く、酸素濃度の安定したCDAを供給できる圧縮空気製造方法および製造装置を提供することである。特に、半導体製造工場あるいは液晶製造工場などに多用されるCDAの供給用として、有用性および信頼性の高い圧縮空気製造方法および製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す圧縮空気製造方法および製造装置により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
本発明は、圧縮空気製造方法であって、ゼオライト系の吸着剤を全部もしくは一部に充填した2塔以上の吸着塔を切換えて原料空気を精製するとともに、該吸着塔の内の少なくとも1塔の吸着塔に充填された吸着剤を再生ガスによって順次再生させる圧縮空気製造方法において、再生工程にある吸着塔(R)が精製工程へ移行するに際し、精製された空気によって前記吸着剤のパージを行う工程を有するとともに、パージ工程にある吸着塔(R)の内部圧力を、精製工程にある吸着塔(P)の内部圧力との差圧を規定値以内に制御することを特徴とする。
【0014】
圧縮空気製造方法であっては、精製能力の高さからゼオライト系の吸着剤を用いることが好ましい一方、特にPSA方式などのおいては、吸着物質の吸着特性の相違に起因する再生工程から精製工程への移行に伴う過渡現象を防止することが難しい。本発明は、再生工程から精製工程への移行の中間に別途パージ工程を挿入し、該吸着塔において次の精製工程によって得られるべき精製空気と同等の精製された空気を別途準備して、充填されている吸着剤のパージを行うことによって、こうした過渡現象を防止することを可能とした。
【0015】
また、パージ工程におけるパージガスの組成を精製空気と同一にすることによって、再生ガスの組成などの制約条件を排除し、任意に選択することができる。例えば、本圧縮空気製造方法を用いた製造装置と空気分離装置(ASU)との組合せにおいては、ASUで不要となったドライな窒素リッチあるいは酸素リッチな副生物を、再生ガスとして使用することによって、装置トータルでの物質的あるいはエネルギー的に高い効率性を確保することが可能となる。
【0016】
さらに、TSA方式やPSA方式などいずれの圧縮空気製造方法であっても、再生工程と精製工程にある吸着剤の温度条件や圧力条件は大きく異なることから、吸着剤に接触するガスの組成が同じであっても、その切り換え時の過渡現象の直接的な回避は難しい。本発明においては、パージ工程にある吸着塔(R)と精製工程にある吸着塔(P)をほぼ均等な(両者の差圧を規定値以内に)圧力条件下において同一空気を流通させることによって、吸着塔(R)を過渡現象の大きな原因となる圧力条件の相違を排除することができ、結果効率性よく酸素濃度の安定したCDAを供給することができる。実際に、こうした方法を用いることによって、切り換え後の酸素濃度の上昇を0.5%以下に抑えることができ、酸素濃度の安定したCDAを供給できる圧縮空気製造方法を提供することが可能となった。ここでいう、「規定値」とは、精製工程にある吸着塔内部の設定圧力を基準として定められる制御値であって、例えば、後述するように該設定圧に対し規定値5%以内でパージ工程にある吸着塔の内部圧力を制御する場合には基準値に対する比率で表し、例えば該設定圧力を1MPaに設定し±0.05MPaで制御する場合には範囲を示す数値で表すことができる。
【0017】
本発明は、上記圧縮空気製造方法であって、前記吸着塔を、少なくとも(1)高圧・低温条件での原料空気の精製工程、(2)低圧・高温条件での再生ガスによる再生加温工程、(3)低圧・低温条件での再生ガスによる再生冷却工程、(4)高圧・低温条件でのパージガスによるパージ工程、を1サイクルとして順に連続的に切換えを行うとともに、該吸着塔の内の対または群となる吸着塔の1塔が再生工程あるいはパージ工程のときに、少なくとも他の1塔が精製工程にあるように制御されることを特徴とする。
【0018】
圧縮空気製造方法であっては、上記のような過渡現象の防止とともに、CDAの連続供給の要請が強い。本発明においては、対となる吸着塔を構成し、その一方が再生工程あるいはパージ工程のときに、他方が精製工程にあるようにするとことによって、過渡現象の防止を図ることができるとともに、CDAの連続供給を確保することができる。また同時に、精製された空気によってパージされた1の吸着塔P1が、次に精製工程に切り換えられることから、対となる精製工程にあった吸着塔P2からの精製空気の特性との互換性、および同一の精製機能を確保することができ、両方の吸着塔から供出される精製空気ともに同じ組成を有することができる。ここで、再生工程については、TSAやTSATOPSA加温による再生工程と冷却
また、3塔以上が群を形成する場合にあっては、その内の1塔が再生工程あるいはパージ工程のときに、少なくとも他の1塔が精製工程にあるように制御することによって、同様の機能を確保することができる。従って、簡便な機能によって効率性が高く、酸素濃度の安定したCDAを供給できる圧縮空気製造方法を提供することが可能となった。
【0019】
ここで、「高圧」とは、通常0.5〜2MPaGの範囲の圧力状態をいい、「低圧」とは、減圧状態にする場合を含め、通常−0.1〜0.1MPaGの範囲の圧力状態をいう。また、「高温」とは、通常60〜300℃の範囲の温度状態をいい、「低温」とは、通常5〜60℃の範囲の温度状態をいう。
【0020】
本発明は、上記圧縮空気製造方法であって、前記精製工程にある少なくとも1つの吸着塔(P)から供出される精製空気の一部を、パージガスとして使用することを特徴とする。
【0021】
上記のように、本発明においては、再生工程終了後にパージ工程を設け、精製工程にある吸着塔(P)とパージ工程にある吸着塔(R)の差圧を規定値以内に圧力条件下において同一空気を流通させることによって、吸着塔(R)における過渡現象の原因となる種々の条件の相違を排除することができ、結果効率性よく酸素濃度の安定したCDAを供給することができる。このとき、パージ工程におけるパージガスとして、対となる吸着塔(P)からの精製空気の一部を使用することによって、別途パージガスを準備することなく、効率よく酸素濃度の安定したCDAを供給できる。一方、製品たる精製空気の一部を使用することによる生産の低下量については、吸着剤の再生機能の大半を再生工程において行うことができることから、パージに必要とされるガスが少量であり、製品の品質維持の重要性からみて十分に見合うものである。従前の再生ガスとして精製空気を使用した場合との比較においても、非常に少量であるといえる。
【0022】
本発明は、上記圧縮空気製造方法であって、前記パージ工程にある吸着塔が精製工程へ移行するに際し、他の少なくとも1塔の精製工程にある吸着塔(P)と並行して原料空気を吸着処理する工程を有することを特徴とする。
【0023】
圧縮空気製造方法であっては、連続的に酸素濃度の安定なCDAの供給が要求される。本発明は、上記の方法に加えさらに、精製工程へ移行する直前の吸着塔と精製工程にある吸着塔を同じ条件で並行運転させることによって、吸着塔のパージ工程から精製工程への移行時の過渡現象の影響を排除し、安定なCDA供給の連続性を確保することが可能となる。
【0024】
本発明は、圧縮空気製造装置であって、ゼオライト系の吸着剤を全部もしくは一部に充填した2塔以上の吸着塔と、各吸着塔に原料空気を導入する流路と、精製後の空気を各吸着塔から供出する流路と、各吸着塔に再生ガスを導入する流路と、各吸着塔にパージガスを導入する流路と、再生処理またはパージ後のガスを各吸着塔から排出する流路と、前記各流路に設けられた制御弁と、該制御弁の作動、各吸着塔の内部圧力を制御する制御器と、を有することを特徴とする。
【0025】
圧縮空気製造装置においては、再生工程から精製工程への移行過程において、両工程における圧力などの相違による過渡現象を防止することが重要であるとともに、簡便な機能によって効率性が高く、酸素濃度の安定したCDAを供給できる装置が求められる。本発明においては、精製工程および再生工程に加えパージ工程を挿入することが可能で、パージ工程において精製工程にある吸着塔(P)の内部圧力との差圧を規定値以内にすることが可能な構成を有する装置とすることによって、連続的に酸素濃度の安定したCDAを供給ことができる。また、吸着剤を再生するための精製空気を少量の使用とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係る圧縮空気製造方法および製造装置を適用し、簡便な機能によって効率性が高く、酸素濃度の安定したCDAを供給できる圧縮空気製造方法および製造装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、基本的に、後述する3つの工程を順次繰り返す2塔の吸着塔P1,P2からなる構成例を中心に説明するが、少なくとも1塔の精製工程にある吸着塔(P)が常に存在すれば吸着塔の数量はこれに限定されるものではない。さらに、再生工程あるいはパージ工程にある少なくとも1塔の吸着塔(R)が、吸着塔(P)のうちの少なくとも1塔と対になっていれば、特定の吸着塔同士が対となる場合に限定されるものではなく、1の吸着塔(R)に対し2塔以上の吸着塔(P)が順次対となる場合にも、本発明を適用することが可能である。
【0028】
<本発明に係る圧縮空気製造装置の基本構成例>
図1に、本発明に係る圧縮空気製造装置の1の構成例を示す。具体的には、ゼオライト系の吸着剤を全部もしくは一部に充填した2塔以上の吸着塔P1,P2と、吸着塔P1,P2に原料空気を導入する流路Laと、精製後の空気を吸着塔P1,P2から供出する流路Lbと、吸着塔P1,P2に再生ガスを導入する流路Lcと、吸着塔P1,P2にパージガスを導入する流路Ldと、再生処理またはパージ後のガスを吸着塔P1,P2から排出する流路Le1,Le2およびLf1,Lf2と、流路La〜Lfに設けられた制御弁Va1,Va2〜Vf1,Vf2と、制御弁Va1,Va2〜Vf1,Vf2の作動、吸着塔P1,P2の内部圧力および内部温度を制御する制御器(図示せず)から構成される。
【0029】
原料空気は、流路Laを介して吸着塔P1またはP2に導入され、内部に充填されたゼオライト系の吸着剤によって、水分や二酸化炭素、メタンあるいは各種炭化水素などを除去・処理された後(精製工程)、流路Lbを介して製品たるCDAとして供出される。供出されたCDAは、半導体製造プロセスあるいは液晶製造プロセス用の清浄空気などとして使用される。原料空気の供給条件は、通常環境温度とし、流量約1000〜10000[Nm/h]の空気が使用される。また、圧力条件は、精製空気の用途などによって異なるが、PSA方式などにおいては、吸着効率を上げるためにコンプレッサ(図示せず)などによって、0.5〜2[MPaG]程度に加圧して使用する。
【0030】
このとき、精製工程にて使用される吸着剤は、水分のみならず二酸化炭素や炭化水素などを除去することが好ましいことから、ゼオライト系の吸着剤、具体的にはモレキュラシーブス3Aや5Aなどを主成分とすることが好ましい。混合する吸着剤としては、シリカゲルやアルミナゲルなどを挙げることができる。原料空気の性状に対応して、その種類および混合比を設定することが好ましい。また、吸着剤の使用条件は、予め定められた内部温度としての「高温」・「低温」あるいは内部圧力としての「高圧」・「低圧」などの条件を基に設定され、温度計や圧力計(図示せず)から出力を指標として制御される。要求される精製空気の量、圧力、温度、不純物の種類や濃度などによって、吸着塔の大きさ(内容積)や吸着剤の量などが設定される。
【0031】
また、吸着剤は、所定の使用時間(例えば数時間〜数日)経過後、再生工程に移行し、再生ガスが流路Lcを介して吸着塔P1またはP2に導入され、吸着された水分等を脱離し、吸着活性を再生させる。脱離した成分は、再生ガスとともに、流路Le1またはLe2を介して外部に排出される。なお、上記使用時間は、原料空気の清浄度によってよって異なるが、一般には工場外気を原料空気として採取する場合が多く、季節や気候あるいは採取地点の立地条件などの影響を受けることがある。こうした影響を緩和するため、前処理装置によって除塵や予冷、さらには凝縮分離など予め行うこともある。
【0032】
このとき、再生ガスとしては、従前の方法と異なり、吸着剤の再生能力を有し汚染するものでなければ特に制限がない点において特徴がある。本装置の対象物が空気であることから、清浄な(精製された)空気あるいは窒素であることが好ましい。特に、ASUと組合せて使用される場合には、ASUからの余剰あるいは廃棄される酸素と窒素の純度の高い精製されたガスを利用することが可能であることからこれらを用いることが好ましい。再生ガスの条件は、精製空気の用途などによって異なるが、流量約500〜2000[Nm/h]の空気が使用される。
【0033】
本装置の特徴の1つとして、再生工程から精製工程への移行時にパージ工程を挿入したことを挙げることができる。つまり、再生工程から精製工程への移行時に生じるゼオライト系吸着剤などの吸着特性に起因する過渡現象の緩和を図るものである。具体的には、パージ工程では、パージガスが流路Ldを介して吸着塔P1またはP2の塔頂から塔内に導入され、パージガスは、塔下部から流路Le1とLf1またはLe2とLf2を介して排出される。パージガスは、精製工程にある吸着塔から供出される精製空気と同条件であることが好ましく、低温・高圧条件で、流量約500〜2000[Nm/h]の精製空気が供給される。なお、供給圧力は、精製工程と同様コンプレッサ(図示せず)などによって確保し、0.5〜2[MPaG]程度に加圧する。また、本構成例においては、図1のように、パージガスとして用いる精製空気を外部から供給する構成を示しているが、後述する第2構成例のように、精製工程にある吸着塔から供出される精製空気の一部を用いることも可能である。
【0034】
パージ工程は、TSA方式やPSA方式あるいはこれらの組み合わせた方式において、そのメカニズムによって設定条件等が相違する。以下個別に詳述する。
【0035】
(1)TSA方式において
TSA方式では、各吸着塔において再生工程(高温条件下での再生加温工程と低温条件下での再生冷却工程)および低温条件下での精製工程を繰り返す。特に、再生ガス中の窒素濃度が空気中の窒素濃度より低い場合、精製工程に移行した時点で、窒素分圧が高くなるため窒素の選択的吸着が起こるため、一時的に酸素濃度が数%高くなることがあった。
【0036】
こうした過渡現象を緩和するために、本発明においては、両工程の中間に、精製空気と同成分のガスを用いたパージ工程を設けるとともに、吸着塔の圧力をパージ工程において精製過程とほぼ同圧となるように制御される。
【0037】
(2)PSA方式において
PSA方式では、各吸着塔において低圧条件下の再生工程と高圧条件下の精製工程が一定周期で切り換えられる。このとき、吸着剤が、低圧の吸着剤表面での吸着物質の量が少ない状態の再生工程から、吸着物質の分圧が高い状態を形成する高圧の精製工程に移行した場合、その窒素吸着能力の高さによって、TSA同様吸着塔から供出される精製空気中の窒素濃度が一時的に低下する。TSAに比較して再生ガス中の窒素分圧が精製工程における窒素分圧より大幅に低いことから、その影響も大きくなる場合があり、実測値として既述の通り酸素濃度が25〜50%となる場合があった。
【0038】
このとき、両工程の中間に、精製空気と同成分のガスを用いたパージ工程を設けるとともに、パージ工程における吸着塔の内部圧力Ppを精製工程における内部設定圧力Prとの差圧を規定値以内にすることによって、こうした過渡現象を緩和することができる。具体的には、昇圧過程において、Pr×1.05≧Pp≧Pr×0.95となるように制御することによって、切換え後の酸素濃度の上昇を0.5%以下に抑えることができた。
【0039】
(3)TSAとPSAの組合せ方式において
本装置においては、上記TSAとPSAを組合せた方式を採られることが多い。この場合も、各方式における過渡現象が相乗的に生じることから、両工程の中間に、精製空気と同成分のガスを用いたパージ工程を設けるとともに、パージ工程における吸着塔の内部圧力Ppを精製工程における内部設定圧力Prとの差圧を規定値以内にすることによって、こうした過渡現象を緩和することができる。
【0040】
また、本装置において、パージ工程にある吸着塔が精製工程へ移行するに際し、精製工程にある吸着塔(P)と並行して原料空気を吸着処理する工程を設けることが可能である。つまり、精製工程へ移行する直前の吸着塔に充填された吸着剤は、精製工程にある吸着塔に充填された吸着剤に非常に近い状態になっているが、完全に同一の条件とするには所定の時間を必要とする。従って、精製工程へ移行する直前の吸着塔と精製工程にある吸着塔を同じ条件で並行運転させることによって、パージ工程から精製工程への移行時の過渡現象の影響を排除することができる。並行運転時の、移行過程の吸着塔からのCDAと精製工程にある吸着塔からのCDAの供給量は、任意に設定することが好ましい。詳細は、後述する。
【0041】
<上記圧縮空気製造装置を用いた製造方法>
本発明に係る圧縮空気製造方法は、精製工程、再生工程およびパージ工程の3つの工程を1サイクルとして順に連続的に切換えを行うとともに、対となる吸着塔P1,P2の一方が精製工程のときに、他方が再生工程あるいはパージ工程にあるように制御されることを特徴とする。以下、図2に基づき、TSAとPSAの組合せ方式を用いた場合、つまり、高圧・低温条件での原料空気の精製工程、低圧・高温条件での再生ガスによる再生加温工程、低圧・低温条件での再生ガスによる再生冷却工程、高圧・低温条件でのパージガスによるパージ工程、を1つのサイクルとする場合を例として、その詳細を説明する。
【0042】
(1)吸着塔P1による原料空気の精製
図2(1)は、吸着塔P1が精製工程にあり、吸着塔P2が再生工程にある状態を示している。図2(1)の実線に示すように、原料空気が、流路Laを介して吸着塔P1の下部から塔内に導入される。吸着塔P1に導入された空気は、塔内部に充填された吸着剤によって精製処理される。処理された精製空気は、塔頂から流路Lbを介して製品たるCDAとして供出される。このとき、制御弁Va1およびVb1は、開に制御される。また、吸着塔P1は、内部温度を低温条件とし内部圧力を高圧条件に制御することによって、高い吸着能力を活かすことができる。この精製工程は、原料空気の性状や前処理の有無によって相違するが、通常数10分〜数10時間の連続処理が可能なように設定される。
【0043】
(2)吸着塔P2による吸着剤の再生
図2(1)の一点鎖線に示すように、再生ガスが、流路Lcを介して吸着塔P2の塔頂から塔内に導入される。精製工程と逆送する方向で再生ガスを導入することによって、再生効果を高めることができる。吸着塔P2に導入された再生ガスは、塔内部に充填された吸着剤表面から脱離した水分や二酸化炭素などの物質を移送することによって吸着剤の再生処理を行う。処理された再生ガスは、塔下部から流路Le2を介して排出される。このとき、制御弁Vc,Vc2およびVe2が、開に制御される。また、吸着塔P2は、内部温度を加温工程で低温状態から高温状態に移行させ、冷却工程では高温状態から低温状態に移行し、内部圧力を低圧条件に制御することによって、高い再生機能を発揮することができる。再生加温工程は、例えば再生ガスの吸着塔入口にヒータを設置し、該ヒータをONとすることによって再生ガスの供給温度を高温条件に切換えて形成する。また、再生冷却工程は、該ヒータをOFFとすることによって再生ガスの供給温度を低温条件に切換えて形成する。
【0044】
この再生工程は、原料空気の性状や吸着剤の特性によって相違するが、通常数10分〜数時間の連続処理が可能なように設定される。また、通常所定の流量の再生ガスを連続的に吸着塔に流通させる方法が用いられるが、再生ガスの少量化を図るために再生ガスを断続的に流通させることも可能である。
【0045】
(3)吸着塔P2のパージ
図2(2)は、吸着塔P1が精製工程にあり、吸着塔P2がパージ工程にある状態を示している。図2(2)の一点鎖線に示すように、パージガスが、流路Ldを介して吸着塔P2の塔頂から塔内に導入される。精製工程と逆送する方向でパージガスを導入することによって、精製工程に切り換えた直後の過渡現象を効果的に減少させることができる。吸着塔P2に導入されたパージガスは、内部に存在する再生ガスをパージするとともに、吸着剤表面での酸素と窒素の吸着状態を精製工程時の表面状態と同じように置換する。処理されたパージガスは、塔下部から流路Le2およびLf2を介して排出される。本構成例においては、パージガスは精製空気と同等であり、少量を効果的に使用する必要があることから、再生ガスの排出流路と異なる流路Lf1,Lf2を設け、パージガスの流量を制限している。このとき、制御弁Vd,Vc2およびVf2が、開に制御される。また、吸着塔P2は、精製工程に移行するように、内部温度を低温条件とし内部圧力を高圧条件に制御することによって、円滑な精製工程への移行を図ることができる。
【0046】
このパージ工程は、原料空気の性状や吸着剤の特性によって相違するが、通常数分〜数10分の連続処理が可能なように設定される。また、通常所定の流量のパージガスを連続的に吸着塔に流通させる方法が用いられるが、パージガスの少量化を図るためにパージガスを断続的に流通させることも可能である。あるいは、再生工程にあった吸着塔内部の低圧状態から、一旦所定量のパージガスを導入して加圧状態を形成したした後、僅かな流量を流通させることによって、さらに効率的なパージ処理を行うことが可能である。
【0047】
(4)吸着塔P1とP2の並行運転
図2(3)は、パージ工程にある吸着塔P2が精製工程へ移行するに際し、精製工程にある吸着塔P1と並行して原料空気を吸着処理する期間を設けた場合を示している。図2(3)の実線に示すように、原料空気が、流路Laを介して吸着塔P1およびP2の下部から塔内に導入される。吸着塔P1およびP2の塔頂からの処理された精製空気は、混合され流路Lbを介して製品たるCDAとして供出される。このとき、制御弁Va1とVa2およびVb1とVb2が、開に制御される。吸着塔P1およびP2は、内部温度を低温条件とし内部圧力を高圧条件に制御することによって、高い吸着能力を活かすことができる。また、吸着塔P2においては、処理する空気の流れが逆送し、パージ工程にあった精製空気と同等のパージガスに引き続き原料空気を再生したCDAが塔頂から供出される。このとき、混合されたCDAは、吸着塔P2におけるパージ工程から精製工程への移行時の過渡現象の影響を殆んど(全くといえるほど)受けずに酸素濃度等安定した性状を有するものとなる。
【0048】
並行運転時の、吸着塔P1からの供出量C1と吸着塔P2からの供給量C2は、(a)パージ工程からの切り換え当初からC1=C2とする方法、(b)当初においてはC2<C1とし段階的にC2>C1に移行し、次工程に移行する方法、(c)C2>C1への移行を連続的に徐々に行う方法、など任意に設定することが可能であり、供給量の比率を任意に変更可能とすることが好ましい。
【0049】
(5)吸着塔P1とP2の工程の切り換え
図2(4)は、吸着塔P1が再生工程にあり、吸着塔P2が精製工程にある状態を示している。また、図2(5)は、吸着塔P1がパージ工程にあり、吸着塔P2が精製工程にある状態を示している。つまり、圧縮空気製造プロセスにおいて、図2(1)〜(2)または図2(1)〜(3)の工程に移行した後、吸着塔P1とP2を切り換えて上記(1)〜(3)または(1)〜(4)と同様の工程が行われる。吸着塔がこのように2塔の場合には、対となる吸着塔P1,P2の一方が精製工程のときに他方が再生工程あるいはパージ工程にあるように交互に制御されることによって、連続的に精製空気を供給することができる。また、吸着塔が3塔以上の場合には、再生工程あるいはパージ工程にある吸着塔(R)に基づき精製工程にある吸着塔(P)を順次対になる吸着塔として組み合わせていく方法、あるいは予め対になる吸着塔を固定し両塔の間においてサイクルを形成する方法があり、いずれも対となる吸着塔によって、連続的に精製空気を供給することができる。
【0050】
(6)吸着塔における圧力の変化
上記(1)〜(5)のプロセスにおける吸着塔における圧力の変化を、図3に例示する。高圧P(H)・低温T(L)状態にある精製工程pから、再生ガスを導入しながら低圧P(L)・高温T(H)状態への移行過程r1、所定時間の再生処理状態r2およびその状態から高圧P(H)(正確にはP(H’))・低温T(L)状態への移行過程r3を経て再生工程が形成される。このとき、再生加温工程を移行過程r1および再生処理状態r2の前半において形成し、再生冷却工程を再生処理状態r2の後半および移行過程r3において形成することによって、再生工程を完結することができる。
【0051】
その後、パージガスを導入しながら高圧P(H’)・低温T(L)・状態を維持する過程r4、高圧P(H)・低温T(L)状態への移行過程r5までのパージ工程を形成する。
なお、図3の破線部Qに示すように、再生ガス停止後パージガス導入前に、一旦吸着塔内部の再生ガスを放出することによって、パージ効果を高めることも可能である。
【0052】
また、図3は、並列運転期間p’を設けた場合の工程における圧力変化を示している。精製工程への切り換え時に、対となる吸着塔(P)と同様の高圧P(H)・低温T(L)状態を維持し原料空気を両吸着塔に導入する並列運転を所定の期間行うことによって、吸着塔(P)からの精製空気の特性との互換性、および同一の精製機能を確保することができ、両方の吸着塔から供出される精製空気ともに同じ組成を有することができるためである。
【0053】
その後、パージ工程あるいは上記並列運転期間p’を経て、高圧P(H)・低温T(L)状態を維持しながら、再び精製工程pを形成する。
【0054】
<本発明に係る圧縮空気製造装置の他の構成例(第2構成例)>
本発明に係る圧縮空気製造装置の他の構成例を図4に示す。つまり、第1構成例において流路Ldを介して外部から供給していたパージガスとして、対となる吸着塔(P)から供出される精製空気の一部を用いる点において特徴を有する。具体的には、図4のように、吸着塔P1,P2の塔頂に設けられているCDA供給用流路Lbあるいは再生ガス導入用流路Lcを形成する流路にバイバスとして流路Lgを設け、一方の吸着塔(P)の塔頂から供出される精製空気の一部を、制御弁Vgを介して他方の吸着塔(R)に導入するように構成する。別途パージガスを準備することなく、効率よく酸素濃度の安定したCDAを供給することが可能となる。一方、パージに必要とされるガスが少量であることから、精製空気の一部を使用することによる生産の低下等について問題となることもない。他の構成要素および制御条件あるいは機能などは、第1構成例と同様である。
【0055】
<第2構成例に係る圧縮空気製造装置を用いた製造方法>
第2構成例に係る圧縮空気製造方法は、基本的には第1構成例と同様の構成を有することから、本発明に係る圧縮空気製造方法の特徴を有するとともに、以下のような3つの工程において第1構成例との構成の相違から、上記のようないくつかの異なる特徴を有している。図5に基づきその詳細を説明する。
【0056】
(1)吸着塔P1による原料空気の精製
図5(1)の実線に示すように、図2に例示した製造方法(1)と同様である。
【0057】
(2)吸着塔P2による吸着剤の再生
図5(1)の一点鎖線に示すように、再生ガスが、流路Lcを介して吸着塔P2の塔頂から塔内に導入される。このときの操作、機能は、図2に例示した製造方法(2)と同様である。
【0058】
(3)吸着塔P2のパージ
図5(2)の一点鎖線に示すように、パージガスが、流路Lgを介して吸着塔P2の塔頂から塔内に導入される。このとき、制御弁Vgが、開に制御される。簡便な構成によって、パージ機能を確保することができるとともに、精製空気の高い同一性を確保できるという特徴を有することができる。その他の操作、機能は、図2に例示した製造方法(3)と同様である。
【0059】
(4)吸着塔P1とP2の並行運転
図5(3)の実線に示すように、パージ工程にある吸着塔P2が精製工程へ移行するに際し、精製工程にある吸着塔P1と並行して原料空気を吸着処理する期間を設けたことが可能な点は第1構成例と同様である。このときの制御弁を含む操作、機能は、図2に例示した製造方法(4)と同様である。
【0060】
(5)吸着塔P1とP2の工程の切り換え
図5(4)は、吸着塔P1が再生工程にあり、吸着塔P2が精製工程にある状態を示している。また、図5(5)は、吸着塔P1がパージ工程にあり、吸着塔P2が精製工程にある状態を示している。つまり、圧縮空気製造プロセスにおいて、図5(1)〜(2)または図5(1)〜(3)の工程に移行した後、吸着塔P1とP2を切り換えて上記(1)〜(3)または(1)〜(4)と同様の工程が行われる。その他の操作、機能は、図2に例示した製造方法(5)と同様である。吸着塔P1のパージにおいて、上記(3)と同一の制御弁Vgを開に制御することによって、パージ機能を確保することができるとともに、精製空気の高い同一性を確保できるという特徴を有することができる。
【0061】
(6)吸着塔における圧力の変化
上記(1)〜(5)のプロセスにおける吸着塔における圧力の変化は、図2に例示した製造方法(6)と同様、図3に例示された内容である。その他の操作、機能は、図2に例示した製造方法(6)と同様である。
【0062】
<実施例>
上記の圧縮空気製造プロセスを用い、CDAの製造を行った結果を示す。具体的には、図4に例示するような構成を有する半導体製造工場に設置されたCDA併産型窒素製造装置において、実施した。
【0063】
〔実施条件〕
(1)吸着塔の内容積:5m
(2)精製工程時の内部圧力および温度:0.88MPaG/17℃
(3)再生工程時の内部圧力:0.01MPaG
(4)原料空気流量:約8400Nm/h
(5)再生ガス流量:約2000Nm/h
(6)再生時間:約200分
(7)パージガス流量:約400Nm/h
(8)パージ時間:10分間
【0064】
〔操作方法〕
(1)上記実施条件において、乾燥空気を原料空気として吸着塔に導入し、<第2構成例に係る圧縮空気製造装置を用いた製造方法>に従い操作した。
(2)再生工程の後、吸着塔P1あるいはP2の底部の制御弁Vf1あるいはVf2を開とし、精製工程時の内部圧力(1.0MPaG)に近い圧力を保ったまま10分間パージを続けた後、制御弁Vf1あるいはVf2を全閉し、再度昇圧工程を経て精製工程時の内部圧力(1.0MPaG)との差圧を規定値以内の圧力にした後、精製工程への切り換え操作を進める。ここで、「精製工程時の内部圧力に近い圧力」とは、図3におけるP(H’)の状態をいい、実験結果によれば、例えばP(H)×1.05>P(H’)>P(H)×0.95とすることが好ましい。
(3)具体的には、吸着塔P1あるいはP2の頂部から処理済の乾燥空気をパージガスとして導入して昇圧工程を行い、塔内部の圧力P(H’)が、精製工程の吸着塔の内部圧力P(H)の約98%迄昇圧された時点で塔底部から制御弁Vf1あるいはVf2を開として保圧しながら約10分パージを行った(図3における工程r4に相当)。
【0065】
〔結果〕
吸着塔P1あるいはP2を、精製工程へ切り換え後の該吸着塔から供出される精製空気の酸素濃度を測定した結果、酸素濃度の上昇を0.2%程度に抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上、本発明に係るCDA製造方法および製造装置単独の作用や機能などについて説明したが、実機においては、これらを上述のASUなどの一部として使用することも多い。こうした場合、本装置が有する昇圧手段(コンプレッサ)や圧力調整手段あるいは流量調整手段等をASUなどと共用することも可能であり、エネルギーの効率化を図ることができる。
【0067】
また、上記の説明においては、本発明をCDAプロセスに用いた場合について好ましい実施例に基づき詳述したが、CDAプロセス以外にも、本発明の請求項およびその基礎概念の範囲内で様々な応用が可能である。例えば、天然ガスなどのように複数の主成分を有する試料中の不純物の除去手段として吸着剤を用いた場合、メタンとエタンあるいはプロパンなど主成分の間において吸着剤への吸着および脱離能力の相違から、TSA方式やPSA方式などのように圧力の差に伴う過渡的な成分比率が異なる状態が形成されることがある。こうした組成変動が無視できないプロセスにおいても、本発明に係る構成・機能を有する方法および装置を利用することによって、安定性および信頼性の高い精製物の供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る圧縮空気製造装置の基本の構成例を示す説明図
【図2】上記圧縮空気製造装置を用いた製造工程を例示する説明図
【図3】上記製造工程における吸着塔内部の温度・圧力の変化を例示する説明図
【図4】本発明に係る圧縮空気製造装置の他の構成例を示す説明図
【図5】上記圧縮空気製造装置を用いた製造工程を例示する説明図
【図6】従来技術に係る乾燥空気製造装置の構成を例示する説明図
【図7】従来技術に係るCDA製造装置の構成を例示する説明図
【図8】従来技術に係るCDA製造装置の構成を例示する説明図
【符号の説明】
【0069】
P1,P2 吸着塔
La,Lb,Lc,Ld,Le1,Le2,Lf1,Lf2 流路
Va1,Va2,Vb1,Vb2,Vc,Vc1,Vc2,Vd,Ve1,Ve2,Vf1,Vf2,Vg 制御弁
Tp 吸着塔の内部温度
Tr 精製工程における内部設定温度
Pp 吸着塔の内部圧力
Pr 精製工程における内部設定圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト系の吸着剤を全部もしくは一部に充填した2塔以上の吸着塔を切換えて原料空気を精製するとともに、該吸着塔の内の少なくとも1塔の吸着塔に充填された吸着剤を再生ガスによって順次再生させる圧縮空気製造方法において、再生工程にある吸着塔(R)が精製工程へ移行するに際し、精製された空気によって前記吸着剤のパージを行う工程を有する、あるいは再生工程ととともに、パージ工程にある吸着塔(R)の内部圧力を、精製工程にある吸着塔(P)の内部圧力との差圧を規定値以内に制御することを特徴とする圧縮空気製造方法。
【請求項2】
前記吸着塔を、少なくとも(1)高圧・低温条件での原料空気の精製工程、(2)低圧・高温条件での再生ガスによる再生加温工程、(3)低圧・低温条件での再生ガスによる再生冷却工程、(4)高圧・低温条件でのパージガスによるパージ工程、を1サイクルとして順に連続的に切換えを行うとともに、該吸着塔の内の対または群となる吸着塔の1塔が再生工程あるいはパージ工程のときに、少なくとも他の1塔が精製工程にあるように制御されることを特徴とする請求項1記載の圧縮空気製造方法。
【請求項3】
前記精製工程にある少なくとも1つの吸着塔(P)から供出される精製空気の一部を、パージガスとして使用することを特徴とする請求項1または2記載の圧縮空気製造方法。
【請求項4】
前記パージ工程にある吸着塔が精製工程へ移行するに際し、他の少なくとも1塔の精製工程にある吸着塔(P)と並行して原料空気を吸着処理する工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧縮空気製造方法。
【請求項5】
ゼオライト系の吸着剤を全部もしくは一部に充填した2塔以上の吸着塔と、各吸着塔に原料空気を導入する流路と、精製後の空気を各吸着塔から供出する流路と、各吸着塔に再生ガスを導入する流路と、各吸着塔にパージガスを導入する流路と、再生処理またはパージ後のガスを各吸着塔から排出する流路と、前記各流路に設けられた制御弁と、該制御弁の作動、各吸着塔の内部圧力を制御する制御器と、を有することを特徴とする圧縮空気製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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