説明

圧送装置付き衛生機器

【課題】衛生機器に圧送室を一体的に形成することで、構造の簡素化、小型化、軽量化を図るのに効果的で信頼性の高い衛生機器の提供を目的とする。
【解決手段】排泄物を受ける汚物受けボール部と、この汚物受けボール部底部と逆U字状管路とでトラップ部を形成し、汚物受けボール部に洗浄水を供給する洗浄水給水口を有し、汚物受けボール部底部と連通したトラップ部内にインペラを配設した圧送ポンプを有し、一の端部を逆U字状管路のおおむね上部に連結し、他の端部を汚物受けボール部に向けて開口した通気管路を有し、通気管路途中に空気の吸排気は可能だが汚水は止水できる流路制御弁を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧送装置付き衛生機器類に関し、イベント開催時や建築・建設現場あるいはリフォーム時に供する仮設トイレ、社会福祉施設及び介護のための室内トイレ、旅館等における吐瀉物の処理に使用する衛生機器に係る。
【背景技術】
【0002】
圧送装置付き衛生機器の代表例として、従来の便器において圧送装置は、便器とは別に設置するものであった。
例えば図4に示すように、便器610外部に破砕室620a及びポンプ室620bを有する圧送装置620を設置するものであるが、圧送装置を便器に外部連結する必要があるため、構造が複雑になるとともに、重量が重くなり大型化する問題があった。
【0003】
特開2003−278255号公報には、トラップ部を封水するため、便器の下流側に開閉弁を設置し、汚水を圧送排出する際に開閉弁を開き汚水を圧送装置に送り込み、洗浄水給水口から洗浄水を供給しつつ、汚水を圧送排出する技術を開示する。
この場合に、汚物受けボール部における水溜まり水位は、水位センサーの検知で洗浄水の供給を操作し調節しているため、水位センサーは不具合が発生し易く、汚物受けボール部から洗浄水が溢れ出す虞があった。
【0004】
また、洗浄水給水口への洗浄水の給水を制御する手段として、電磁弁が広く用いられているが、電磁弁は作動速度が速い利点を有するものの、栄養塩類を含む井戸水等を洗浄水として使用することが多い仮設トイレ等では、弁部に藻の付着及びゴミ詰まり等が発生しやすく、止水不良となりやすかった。
その上電磁弁は、着座センサー及び水位センサー等の検知用センサーに対するタイマースイッチの設定等をしなければならず、設定の調整及び補正等に手間と時間とが掛かる問題があった。
【特許文献1】特開2003−278255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術に内在する技術的課題に鑑みて、衛生機器に圧送室を一体的に形成することで、構造の簡素化、小型化、軽量化を図るのに効果的で信頼性の高い衛生機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的要旨は、排泄物を受ける汚物受けボール部と、この汚物受けボール部底部と逆U字状管路とでトラップ部を形成し、汚物受けボール部に洗浄水を供給する洗浄水給水口を有し、汚物受けボール部底部と連通したトラップ部内にインペラを配設した圧送ポンプを有し、一の端部を逆U字状管路のおおむね上部に連結し、他の端部を汚物受けボール部に向けて開口した通気管路を有し、通気管路途中に空気の吸排気は可能だが汚水は止水できる流路制御弁を有していることを特徴とする。
ここで、汚物受けボール部底部と連通したトラップ部内にインペラを配設した圧送ポンプを有しとは、例えば汚物受けボール部底部からトラップ部内にかけて水が溜まっている部分に水中式のポンプ等を備えることをいう。
従って、水中ポンプをトラップ部内にそのまま据え付けてもよく、ポンプのインペラ部分のみを水中に臨ませてもよい。
また、一の端部を逆U字状管路のおおむね上部に連結しとは、逆U字状管路に一旦流水すると排水側のレベルが汚物受けボール部底部よりも低い場合に、いわゆるサイホンの原理により汚物受けボール部側の水位が異常に低下してしまう恐れがあるので、排水終了時には逆U字状管路の上部に吸気し、サイホンを防止する趣旨である。
従って、逆U字状管路の最上部に連結するのが良い。
【0007】
本発明において、通気管路途中に空気の吸排気は可能だが、汚水は止水できる流路制御弁を設けたのは逆U字状管路からなるトラップ部を通じて汚水を圧送排水し、排水後は逆U字状管路部に吸気してサイホン排水を防止したものであり、そのような流路制御弁の例としては、流路制御弁は、上部に止水弁座及び下部に通気・通水弁座を配設し、止水弁座と通気・通水弁座との間に水流にて浮上する弁体を有するものが挙げられる。
ここで弁体はボール状等であって、空気の流れでは動じない程度の重さであり、水に対してはその水流にて浮上する重さレベルである。
汚水を圧送ポンプで圧送排出する際には、通気管路にも汚水が流入する。
すると、汚水による浮力によって弁体が浮上し止水弁座に当接し、通気管路から汚水が漏れるのを防止する。
汚水の圧送が終了すると弁体の押し上げが止まり、重量で少し下がるとその後は空気が入り込みサイホン流れが生じない。
また、仮に弁体と止水弁座の間から一部汚水が漏れても、通気管路の最上部より反対側にまで流れ込んだ汚水は、そのまま反対側の開口部より汚物受けボール部に戻り、一方
通気管路の立ち上がり部等最上部より手前の汚水は、トラップ部に戻るので外部に流れ出ることはない。
【0008】
洗浄水給水口から供給する洗浄水の制御手段を有し、この制御手段は電動ボールバルブを用いたものとするとよい。
ここで電動ボールバルブとは、ボール状の弁体が電動で回転するバルブをいい、ボール状の弁体は流水孔を有して、流路部を形成し弁体が回転することで弁体ハウジング側との間で流路を閉じたり開いたりする構造であるため、作動スイッチONから弁が完全に閉じるあるいは開くまでに所定の時間を有する。
従って、使用者が作動スイッチをONにし、圧送ポンプと給水用の電動ボールバルブを作動し、その後に一つのタイマーで同時に圧送ポンプと給水側の電動ボールバルブをOFFにしても給水は徐々に停止するので、その間に汚物受けボール部に所定の水が溜まる。
また、このように給水は徐々に停止するのでOFFタイマーを省略して使用者が作動スイッチをある程度長く押すだけでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、汚物受けボール部底部と逆U字状管路の便器側とで形成したトラップ部内にインペラを配設した圧送ポンプを備えたので、構造を簡素化し軽量化することができ、小型化することができる。
【0010】
給水弁には、電磁弁に替え藻の付着やゴミ詰まりに強い電動ボールバルブを使用することで給水トラブルを防止しつつ、なおかつ、作動速度の遅い電動ボールバルブの特性を利用して、水位センサーや着座センサー等の検知用センサーを用いることなく、利用者が押す作動スイッチあるいはこのスイッチで作動開始するタイマースイッチのみで圧送ポンプと電動ボールバルブを制御するので、圧送開始から洗浄水給水終了までの全工程を管理する制御システムを簡素化できる。
【0011】
さらに、電気信号として圧送ポンプ停止後に電動ボールバルブがゆっくりと閉まるので、特別な制御を用いずとも汚物受けボール部内の洗浄水を使用前のレベルに回復し、インペラ部分やトラップ立ち上がり部のエアーが流路制御弁から抜けるので、圧送ポンプ内は自動的に洗浄水でみたされるため、次の使用時におけるエアがみや閉塞による圧送ポンプ駆動時の空転や停止を防止できる。
【0012】
また、汚水圧送排出の際に通気管路の流路制御弁から仮に汚水が漏出しても、該汚水は汚物受けボール部に向けて開口した通気口から汚物受けボール部内に戻り、また流路制御弁は逆方向に流れるようになっているので衛生的に良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に本発明に係る衛生機器の適用例として、圧送装置付き衛生機器100を示し、(イ)は説明用断面図であり、(ロ)は通気管路190に備えた流路制御弁180の拡大斜視図である。
この圧送装置付き衛生機器100は洋式便器タイプであり、排泄物を受ける汚物受けボール部110を有している。本発明を実施する際の便器の形状は特に限定する必要はなく、仮設トイレ及び屋内外トイレ等設置場所等は問わない。
また、トイレの便器のみならず、汚物等を処理する各種衛生機器に展開できる。
汚物受けボール部110には洗浄水400を供給する洗浄水給水口120を備えており、洗浄水給水口120の給水管路121には給水を制御する電動ボールバルブ122を備えている。
ここで、洗浄水給水口の設ける位置は、汚物受けボール部内側の洗浄が効果的である位置が好ましく、一般的には、汚物受けボール部内側の上部である。
圧送装置付き衛生機器100のトラップ部130は、汚物受けボール部底部160と逆U字状管路170とで形成しており、トラップ部130内にインペラ141を配設した圧送ポンプ140を備え、この圧送ポンプ140によって圧送排水した汚水300を排出する排水管路150を備えている。
逆U字状管路170のおおむね上部には、通気口側から順に止水弁座181と、ボール状の弁体182と、通気・通水弁座183とを有する、流路制御弁180を備えた通気管路190が配設してある。
そして、通気管路190の通気口191は、汚物受けボール部110に向けて開口している。
止水弁座181は、弁体182と当接する当接部181aを有しており、該当接部181aには通気孔181bを備えている。
弁体182は、空気500の流通では動じない程度の重さであり、汚水300及び洗浄水400等の水の流れに対しては浮上する重さである。
弁体182の大きさは、止水弁座181の当接に支障を来さない程度で汚水が戻る大きさが良く、流路制御弁180の内径よりも小さい。
通気・通水弁座183は、弁体182の台座であり、汚水300と空気500とが流通する通気・通水孔183aを備えている。
圧送ポンプ140作動のON/OFFと電動ボールバルブ122作動のON/OFFとを同時に操作する作動スイッチ200を備えている。作動スイッチ200は利用者がONにできる場所に配設し、設定した時間を経過すると自動的にOFFに切り替わるタイマースイッチ付が好ましい。
【0014】
作動スイッチ200をONにすることにより、圧送ポンプ140と電動ボールバルブ122とが始動し、洗浄水給水口120から供給する洗浄水400で汚物受けボール部110を洗浄しつつ、汚水300を圧送排出する。
汚水300を圧送排出する際の圧送装置付き衛生機器100の様子と流路制御弁180の動きとを図2に示す。(イ)は汚水圧送排出時の圧送装置付き衛生機器100の説明用断面図であり、(ロ)は汚水300圧送排出前と汚水300圧送排出後との流路制御弁180のA−A線断面図であり、(ハ)は汚水300圧送排出中の流路制御弁180のA−A線断面図である。
【0015】
図2(ロ)に示すように、汚水300が流路制御弁180に流入していない時には、通気管路190から逆U字状管路170に空気500が流入し、図1(イ)に示すように、汚物受けボール部110の水溜まり水位H1が逆U字状管路170の高さH2と同じ高さになる。
空気500は通気口191から通気管路190に流入し、止水弁座181の通気孔181bから流路制御弁180に流入する。そして、弁体182の台座になっている通気・通水弁座183の通気・通水孔183aを通過して逆U字状管路170に流入する。
【0016】
図2(イ)と図2(ハ)とに示すように、圧送排水された汚水300が逆U字状管路170に流入した際には通気管路190に流入し、通気・通水弁座183の通気・通水孔183aを通過して流路制御弁180に流入する。通気・通水弁座183を台座にしていた弁体182が汚水300の水流によって浮上し、止水弁座181の当接部181aに圧着する。当接部181aに備えた通気孔181bを弁体182の圧着で塞ぐことにより、汚水300を通気管路190に漏出させずに、排水管路150に圧送排水し排出する。
もし、弁体182の圧着が妨げられ、汚水300が通気管路190に漏出しても、その汚水300は汚物受けボール部110に備えた通気口191から漏出する。
また、この時に残る通気管路の立ち上がり部190aの汚水は、流路制御弁180からトラップ側に戻る。
図3(イ)に示すように、汚水を出来るだけ完全に排水するためには、トラップ内にエアーを巻き込みながら排水する場合が多い。
すると、インペラ室上部141aにエアーが残る恐れが生じる。
しかし、本発明においては、流路制御弁180に通気性があるので図3(ロ)に示すように、インペラ室上部141aのエアーを排気しながら水が流れ込み、トラップ内の液面Lが上昇するので、次の使用時にインペラ部にエアーがかむことはない。
【0017】
図4に洗浄水400の給水を制御する電動ボールバルブ122の構造例断面図を示し、(イ)は開いた状態を示し、(ロ)は閉じた状態を示す。
電動バルブ122は、ハウジング部122aに配設したボール状の弁体122bがバルブ軸122cを軸として電動で回転する。
弁体122bは、流路部122dを形成する流水孔を有している。
また弁体122bは、作動スイッチ200のON/OFFを検知してから回転し始め、所定の時間を有してから完全に開いた状態/閉じた状態になる。
従って、作動スイッチ200のOFFを検知してから、弁体122bが閉回転し始め、徐々に給水が停止するので、その間に汚物受けボール部110に洗浄水400が溜まり、水位は逆U字状管路170の高さH2を保持出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る衛生機器の例を示す。
【図2】汚水圧送排出の流れを示す。
【図3】ポンプのインペラ部に水が戻る説明図を示す。
【図4】電動ボールバルブの構造例を示す。
【図5】従来の圧送装置付き便器の例を示す。
【符号の説明】
【0019】
100 圧送装置付き衛生機器
110 汚物受けボール部
120 洗浄水給水口
121 給水管路
122 電動ボールバルブ
122a ハウジング部
122b 弁体
122c バルブ軸
122d 流路部
130 トラップ部
140 圧送ポンプ
141 インペラ
150 排水管路
160 汚物受けボール部底部
170 逆U字状管路
180 流路制御弁
181 止水弁座
181a 当接部
181b 通気孔
182 弁体
183 通気・通水弁座
183a 通気・通水孔
190 通気管路
191 通気口
200 作動スイッチ
300 汚水
400 洗浄水
500 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排泄物を受ける汚物受けボール部と、この汚物受けボール部底部と逆U字状管路とでトラップ部を形成し、
汚物受けボール部に洗浄水を供給する洗浄水給水口を有し、
汚物受けボール部底部と連通したトラップ部内にインペラを配設した圧送ポンプを有し、
一の端部を逆U字状管路のおおむね上部に連結し、他の端部を汚物受けボール部に向けて開口した通気管路を有し、通気管路途中に空気の吸排気は可能だが汚水は止水できる流路制御弁を有していることを特徴とする圧送装置付き衛生機器。
【請求項2】
流路制御弁は、上部に止水弁座及び下部に通気・通水弁座を配設し、止水弁座と通気・通水弁座との間に水流にて浮上する弁体を有していることを特徴とする請求項1記載の圧送装置付き衛生機器。
【請求項3】
洗浄水給水口から供給する洗浄水の制御手段を有し、この制御手段は電動ボールバルブを用いたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧送装置付き衛生機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−9434(P2007−9434A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188404(P2005−188404)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(505244349)株式会社アイ・ファクトリー (2)
【Fターム(参考)】