説明

圧電アクチュエータ

本発明で提案されるのは、例えば機械的な構成部材を操作するための圧電アクチュエータであり、この圧電アクチュエータ(1)は、少なくとも1つの圧電性アクティブ領域(2)からなる圧電層の多層構造から構成され、この圧電性アクティブ領域は、圧電層間に配置された内部電極(6,8,13,15)を有する。これらの内部電極には、極性の異なる電圧が交互に加えられる。圧電アクチュエータ(1)は、頭部領域および/または脚部領域(3,4)を含めてアクティブに構成されており、上記の頭部領域および/または脚部領域(3,4)の内部電極(13,15)は、各外部コンタクト部(7,9)に至る最小限のコンタクトゾーン(14,16)を除いて完全に内側に入り込んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の技術
本発明は、請求項1の上位概念に記載された、例えば機械的な構成部材を操作するための圧電アクチュエータに関する。
【0002】
例えばDE 199 28 189 A1から公知であるのは、いわゆる圧電効果を利用すれば、有利な結晶構造を有する材料から圧電素子を形成することによってバルブのニードルのストロークなどを制御できることである。外部から電圧を加えると、圧電素子は機械的に応答する。この応答は、結晶構造および電圧の印加領域に依存して、あらかじめ定めた方向の引っ張りか圧縮のいずれかになる。
【0003】
極めて高速で精確に制御可能なストローク作用に起因して、上記のような圧電アクチュエータは、調整器を作製するため、例えば自動車の燃料噴射システムにおける切換バルブの駆動部に対して設けることができる。ここでは電圧制御または電荷制御による圧電アクチュエータの動きを利用することによって制御バルブの位置決めが行われ、つぎにこの制御バルブによってスロットルニードルのストロークが制御されるのである。
【0004】
圧電アクチュエータを操作するのに必要な電界強度は、数kV/mm程度であり、また通例、駆動制御のために適度な電圧が所望されるため、この圧電アクチュエータは、互いに積層されメタライゼーションされた圧電セラミックの複数の層に構造化されて、いわゆる多層形アクチュエータとされる。これに加えて層間にはそれぞれ内部電極が設けられており、これらの電極は例えば印刷法によって被着される。またここでは外部電極が設けられており、この外部電極を介して電圧が加えられる。このような層を作製するする典型的な方法は、シートキャスティング法である。ここでは個々の層がメタライゼーションされまた互いに積層されて内部電極が作製される。この場合、極性の異なる内部電極を有する2つの層間に圧電作用が発生するのである。
【0005】
このような圧電アクチュエータにはふつう内部電極が設けられ、これらの内部電極は、、4つの側面のうちの1つの長辺側全体に、後退した内部電極、すなわちここでは内側に入った内部電極を有する。他のすべての側面において内部電極は、外側に向かってセラミック縁部にまで達している。圧電アクチュエータの外側の側面における接触接続ストライプを除いて、内部電極がすべての側面において後退している圧電アクチュエータも公知である。この装置は、さまざまな接触接続ゾーンを有することができ、例えば面にまたはコーナを跨いで接触接続ゾーンを有することが可能である。
【0006】
これらの公知の圧電アクチュエータはふつう、相応するアクチュエータ装置に取り付けるため、内部電極が設けられていないパッシブな頭部および脚部を有している。すなわち、ここでは専用の案内ゾーンまたは嵌合ゾーンを設けなければならず、また場合によってはカバーないしは絶縁層が必要であるが、これらは容易に破損しがちである。
【0007】
発明の利点
従来技術から公知の圧電アクチュエータには、圧電層からなる多層構造が設けられており、ここでこの圧電層は、内部電極を有するパッシブ領域または内部電極を有しないパッシブ領域と、層間に配置され接触接続された内部電極を有する圧電性アクティブ領域とから構成される。この圧電アクチュエータはアクティブ領域において内部電極の接触接続部が層毎に変わっており、この内部電極に電圧が加えられる。これとは異なり、本発明によれば、圧電アクチュエータは、有利にも頭部領域および/または脚部領域を含めて、接触接続された内部電極によってアクティブに構成される。しかしながら本発明では頭部領域および/または脚部領域における内部電極は、中央のアクティブ領域とは異なり、各外部接触接続部に至る最小限の接触接続ゾーンを除いて完全に内側に入り込んでいる。
【0008】
多くの適用事例に対して、アクティブ領域が頭部から脚部まで圧電アクチュエータ全体に達している圧電アクチュエータが有利であり、このため、脚部領域ないしは頭部領域において案内または嵌合ゾーンが省略される。しかしながら通例外部に案内される内部電極を有するアクティブ領域は、それ自体電気的に絶縁してカバーして、表面伝導または変形を阻止しなければならない。ここにはふつうカバーペースト、例えばシリコン樹脂またはシリコンエラストマないしは別の絶縁材料、絶縁塗料または絶縁層を使用する。これは作製および後続処理時の機械的損傷に対して影響を受け易いのである。
【0009】
完全にアクティブな圧電アクチュエータを本発明にしたがって実施すると、頭部または脚部の嵌合領域または接合領域に、絶縁層を有するカバーは必要でない。本発明では、圧電アクチュエータの層構造において内部電極をさまざまに内側に入り込ませる有利な組み合わせが提案され、一部分だけが内側に入り込んだ内部電極は、中央の自由領域において自由に広がることができ、また頭部および/または脚部の接合領域では、ほぼ完全に内側に入り込んだ内部電極によって付加的な層をアクティブ化することができる。
【0010】
頭部領域および/または脚部領域においてほぼ完全に内側に入り込んだ内部電極設計が容易にわずかに広がることによって発生する些細な損失は、容易に受け入れることができる。都度残存している接触接続ゾーンは、外部接触接続部幅全体のごく一部である。
【0011】
図面
本発明の圧電アクチュエータの実施例を図面の複数の図に基づいて説明する。ここで、
図1は、頭部および脚部領域を有し、全体がアクティブ構造である圧電アクチュエータを略示しており、
図2は、一部分が内側に入り込んだ内部電極を有する圧電アクチュエータの中央の自由領域における層構造を詳細に示しており、
図3は、ほぼ完全に内側に入り込んだ内部電極を有する圧電アクチュエータの頭部ないしは脚部領域における層構造の詳細を示している。
【0012】
実施例の説明
図1には圧電アクチュエータ1が略示されている。この圧電アクチュエータは、公知のように、有利な結晶構造を有するセラミック材料、例えばいわゆるグリーンシートの圧電層から構成されているため、外部にコンタクトしている電極を介して、内部電極に外部の直流電圧を加えた際のいわゆる圧電作用を利用することにより、圧電アクチュエータ1は機械的に応答する。
【0013】
圧電アクチュエータ1は、全体としてこのような圧電性アクティブ領域から構成されており、詳しくいうと中央の自由領域2と、頭部領域3と、脚部領域4とから構成されている。ここでこの頭部および/または脚部領域3,4は、殊に圧電アクチュエータ1を機械的に保持するために使用される。
【0014】
図2には、図1に示した圧電層の中央領域2における構造が詳細に示されており、これはセラミック層5と、セラミック層5によって右側の縁部が覆われている内部電極6を有している。この内部電極は、圧電アクチュエータ1の外部に取り付けられた、接触接続部7を介して電圧の一方の極に接続される。内部電極6は、層構造の左側の縁部においてセラミック層5だけでなく、その上にある内部電極8によっても覆われている。この内部電極8は、外側の接触接続部9を介して電圧の他方の極に接続される。この層構造の左側部分では破線で内部電極6の見えない辺が示されている。
【0015】
したがって図2からわかるのは、内部電極6の接触接続していない辺は左側部分において、また内部電極8の接触接続していない辺は右側部分においてそれぞれ覆われているか、ないしは一部が内側に入り込んでいることである。圧電アクチュエータ1の側面10および11には外部を覆うため、例えばシリコン樹脂またはシリコンエラストマ製の絶縁層が被着されている。したがってアクティブ領域2の構造は、内部電極を有するこれまでふつうの構造から構成され、ここでこれらの内部電極は一方の面だけが後退しており、ひいてはこの内部電極によって可能な限りに大きい面積が可能になる。圧電アクチュエータ1は図示のように矩形に構成するか、またはコーナが斜めに切られた輪郭によって構成することができる。
【0016】
図3からは、図1に示した頭部領域3または脚部領域4にセラミック層12を有する圧電層の構造がわかる。ここでは内部電極13が、比較的小さい接触接続ゾーン14を介して、圧電アクチュエータ1の外部に取り付けられた接触接続部7に接続されている。見やすくするため、ここでは別の外部の接触接続部を有しない内部電極13の左側部分は切り取られている。圧電層の左側部分では、この下にあり、破線が付されまた同様に切り取られた内部電極15が識別でき、これも同様に比較的小さな接触接続ゾーン16を介して、圧電アクチュエータ1の外部に取り付けられた接触接続部9に接続されている。接触接続ゾーン14,16の幅は圧電アクチュエータの幅の20%〜50%である。接触接続ゾーン14,16の位置は、圧電アクチュエータ1の側面の中央に配置するか、両側または片側だけを中央からずらして配置することができる。
【0017】
これにより、図3からわかるのは、例示した2つの内部電極13および15がほぼ完全に圧電アクチュエータの構造に内側に入り込んでいることである。それは比較的小さなコンタクトゾーン14および16を除いて、圧電アクチュエータ1のセラミック表面に接するように外側に向かって案内されている内部電極部分はなく、ひいては内部電極が周りに突き出ていないからである。したがって本発明では、脚部領域および/または頭部領域3,4において圧電アクチュエータ1の側面を覆う必要がなく、ひいては絶縁層が損傷し得ないのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】頭部および脚部領域を有し、全体がアクティブ構造である圧電アクチュエータの概略図である。
【図2】一部分が内側に入り込んだ内部電極を有する圧電アクチュエータの中央の自由領域における層構造の詳細を示す図である。
【図3】ほぼ完全に内側に入り込んだ内部電極を有する圧電アクチュエータの頭部ないしは脚部領域における層構造を詳細に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1つの圧電性アクティブ領域(2)からなる圧電層の多層構造と、
− 圧電アクチュエータ(1)の頭部領域および/または脚部領域(3,4)とを有しており、
前記の圧電性アクティブ領域は、圧電層間に配置された内部電極(6,8,13,15)を有しており、
前記の内部電極には、極性の異なる電圧が交互に加えられ、ここで1つずつの極性は、圧電アクチュエータ(1)の1側面および/またはコーナにてその長さにわたって外部から接触接続しており、
前記の内部電極は、前記の多層構造内に交互に配置されかつ接触接続していない都度別の極性をする外側の辺が、層構造の各面および/またはコーナにて内側に入り込んでおり、
前記の頭部領域および/または脚部領域(3,4)は、多層構造とは異なる構造を有している形式の圧電アクチュエータにおいて、
− 前記の圧電アクチュエータ(1)は、その頭部領域および/または脚部領域(3,4)を含めてアクティブに構成されており、
前記の頭部領域および/または脚部領域(3,4)の内部電極(13,15)は、各外部接触部(7,9)に至る最小限の接触接続ゾーン(14,16)を除いて完全に内側に入り込んでいることを特徴とする
圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記の接触接続ゾーン(14,16)はそれぞれ、外部コンタクト部(7,9)の全幅のごく一部を成している、
請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記の接触接続ゾーン(14,16)は、圧電アクチュエータ(1)の幅の20%〜50%の範囲を含む、
請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記の接触接続ゾーン(14,16)は、中央に配置されるか、または圧電アクチュエータ(1)の中心に対して側方ずらされて配置されている、
請求項3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記のアクティブな頭部領域および/または脚部領域(3,4)は、中央のアクティブ領域(2)とは異なり、外部接触部(7,9)が設けられていない外側の面に絶縁層を有しない、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記の絶縁層は、シリコン樹脂、シリコンエラストマ、塗料またはその他の絶縁層である、
請求項5に記載の圧電アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−504703(P2008−504703A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518567(P2007−518567)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051832
【国際公開番号】WO2006/003039
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany