説明

圧電共振子

【目的】フィルタの群遅延時間特性の乱れを低減し、スプリアス特性の悪化を防止し、さらに、ディスクリミネータの歪率特性に乱れが生じない小型の圧電共振子を提供することにある。
【構成】略四角形状板の圧電基板の両表面に、振動電極を対向して設け、振動部を形成してなるエネルギー閉じ込め形厚み縦振動の圧電共振ユニットからなる圧電共振子において、前記振動部の外部で、圧電基板内の一部に、未分極部を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エネルギー閉じ込め形厚み縦振動を利用するセラミックフィルタおよびセラミックスディスクリミネータ等の圧電共振子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、焼成した圧電基板は、圧電特性を引き出すために、直流高電圧を印加して、圧電基板内の各分域の分極方向を揃える、という分極処理を施すものである。この分極方向を圧電基板の板厚方向にして、圧電基板の両表面の一部に対向する振動電極部を設けてなるものが、エネルギー閉じ込め形厚み縦振動を利用する圧電共振ユニットである。
【0003】ここで、従来のエネルギー閉じ込め形厚み縦振動を利用する圧電共振ユニットと、その圧電共振ユニットを用いた圧電共振子について、周知のセラミックフィルタを例に、図5および図6に基づいて説明する。
【0004】図5に示すように、圧電共振ユニット1は、略四角形状板で全域が分極された圧電基板2の両表面の中央部に、例えば、円形の振動電極3,3を対向して形成し、振動電極3,3の一部から延出して引出電極4,4を圧電基板2の両側端部に形成するものである。
【0005】上述した圧電共振ユニット1を、表面実装形のセラミックフィルタに適用した例を、図6に示す。図6において、セラミックフィルタ5は、圧電共振ユニット1の両表面の中央部に位置する振動電極3,3の外方を、振動空間6を残して絶縁物、例えば、絶縁樹脂7で被覆し、圧電共振ユニット1上の両側端部の引出電極4,4と導電的に接続した外部電極8,8を、絶縁樹脂7の両側端部に設けるものである。
【0006】かかる構成のセラミックフィルタ5の外部電極8,8に、交流電圧を印加すると、圧電共振ユニット1の振動電極3に対応する圧電基板2の振動部9が、厚み方向に振動する。振動部9で発生する振動を主振動と呼び、その主振動が振動部9の周囲から外方に圧電基板2内を伝播する振動エリアAは、振動部9の外周から圧電共振ユニット1の厚さTの5〜10倍である。また、その振動エネルギーは振動部9から外方へ指数関数的に減衰しながら分布している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、一般の電子部品の小形化が進み、それにともなって、セラミックフィルタに代表される圧電共振子に関しても小形化が指向されてきた。そこで、圧電基板も小形化され、振動エリアよりも小さい圧電基板を用いざるを得なくなってきた。この結果、振動エリアよりも小さい圧電基板を用いた圧電共振子は、振動エリア内にある圧電共振ユニットの端面を固定端として、振動の反射が起きる。その反射波が主振動の中に混在して、フィルタの群遅延時間特性に乱れが発生し,スプリアス特性が悪化し、ディスクリミネータの歪率特性に乱れが発生するという問題点を有していた。
【0008】本発明の目的は、上記問題点を解消すべくなされたもので、フィルタの群遅延時間特性の乱れを低減し、スプリアス特性の悪化を防止し、さらに、ディスクリミネータの歪率特性の乱れ防止を兼ね備えた小形の圧電共振子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】このため本発明の構成は、略四角形状板の圧電基板の両表面に、振動電極を対向して設け、振動部を形成してなるエネルギー閉じ込め形厚み縦振動の圧電共振ユニットからなる圧電共振子において、前記振動部の外部で、圧電基板内の一部に、未分極部を設けたことを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明は、上記のように圧電基板の一部に未分極部を設けることにより、圧電共振ユニットの主振動に起因する振動が未分極部分で収束する。このため、圧電共振ユニットの端面での反射がなくなり、もしくは、隣り合った他の振動部の主振動に不必要な振動が伝わらなくなる。
【0011】
【実施例】以下、本発明による第1の実施例を添付の図1R>1にもとづいて説明する。但し、前述の従来例と同一部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本発明は、振動部の外部に当たる圧電基板中に未分極部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】図1において、圧電共振ユニット11は、略四角形状板の分極した圧電基板12の両表面に、振動電極3,3と引出電極4,4を形成し、圧電基板12の長辺に沿って一定幅の両側端部に、未分極部13,13を設けるものである。
【0013】かかる圧電共振ユニット11を用いて、図6R>6の従来例と同様に、圧電共振子、例えば、表面実装形のセラミックフィルタ(図示せず)を構成する。セラミックフィルタの外部電極に、交流電圧を印加すると、分極された圧電共振ユニット11の振動部9に主振動が発生し、その主振動に起因する振動が振動部9の周囲に、圧電基板12内の振動エリアAに伝播する。しかし、本来、振動が伝播する振動エリアA内にある未分極部13では、圧電共振ユニット11の共振周波数定数が急激に増大して、振動の伝播がなくなる。この結果、圧電共振ユニット11の端面14,14に振動が伝わらないため、端面14,14による反射波は発生しなくなる。
【0014】次に、第2ないし第4の実施例を添付の図2R>2ないし図4にもとづいて説明する。図2において、圧電共振ユニット21は、略四角形状板の分極した圧電基板22の両表面に、振動電極3,3と引出電極4,4を形成し、圧電基板22の長辺に沿って一定幅の両側端部の中央部、すなわち、振動部9に近い部分に未分極部23,23を設けるものである。
【0015】次に、図3において、圧電共振ユニット31は、略四角形状板の分極した圧電基板32の両表面に、振動電極3,3と引出電極4,4を形成し、圧電基板32の中央部に位置する振動電極3,3を取り囲むように振動部9の外周部に、例えば、ドーナツ状の未分極部33を設けるものである。
【0016】さらに、図4において、圧電共振ユニット41は、略四角形状板の分極した圧電基板42の略中央部に複数の振動電極43,44(図4の表面に対向する裏面にも振動電極43,44がそれぞれ形成されている)および圧電基板42の両側端部に延出する引出電極45,46を形成し、その振動電極43,44の間の圧電基板42に未分極部、例えば、振動部47,48の主振動から伝播する振動を互いに防止するように一定幅の直線状の未分極部49を形成する。尚、振動電極数は2個に限るものでなく、3個以上ある場合も、振動部の主振動から伝播する振動を互いに防止するように未分極部を設けるもので、その数は振動部間で適宜に増すものである。
【0017】上述した第2ないし第3の実施例の圧電共振ユニット21,31を用いたセラミックフィルタ(図示せず)に交流電圧を印加すると、第1の実施例と同様に、分極された圧電基板22,32の振動部9に主振動が発生し、その主振動に起因する振動が振動部9の周囲に伝播する。しかし、振動エリアA内にある未分極部23,33では、圧電基板の共振周波数定数が急激に増大して、振動の伝播がなくなる。この結果、圧電共振ユニット21,31の端面24,34に振動が伝わらないため、端面24,34による反射波は発生しない。
【0018】また、第4の実施例の圧電共振ユニット41を用いたセラミックフィルタ(図示せず)に交流電圧を印加すると、分極された圧電基板42に形成される円形の振動電極43,44に対応して2か所の振動部47,48に主振動が発生する。その主振動に起因する振動は振動部47,48の周囲に伝播する。しかし、振動エリアA内にある各振動部47,48の間の未分極部49では、圧電基板42の共振周波数定数が急激に増大して、振動の伝播がなくなる。この結果、振動部47,48で発生する主振動に起因する振動が周囲に伝播しても、互いの振動部47,48の主振動に干渉するような悪影響を与えることがない。
【0019】尚、上述した第1,第2,第4の実施例において、主振動に起因する振動が振動部の周囲に伝播するが、未分極部を形成していない辺側、例えば第1,第2の実施例の短辺側は、主振動が伝播する振動エリアとしての十分な距離があるものとしている。即ち、未分極部を設ける際、その位置は、振動エリアA内にあり、且つ、主振動に起因する振動の伝播を防止する必要がある部位にあればよい。
【0020】また、振動電極3,43,44および未分極部33は、実施例のごとく円形に限定するものでなく、多角形でもよい。
【0021】
【発明の効果】本発明による圧電共振ユニットでは、振動部の周囲に未分極部を形成するため、主振動に起因する振動が未分極部を通過せず、振動部の周囲に伝播しなくなる。このため、振動エリアより小さい圧電基板を用いても、圧電基板の端面による反射波および一つの圧電基板に形成する複数の振動部にたいする干渉がなくなる。即ち、主振動による振動エリアを考慮する必要がなくなり、圧電基板のサイズを大幅に小さくできる。
【0022】このように、圧電基板のサイズの小形化に伴って、圧電共振ユニットおよびこの圧電共振ユニットを用いたセラミックフィルタも小形化が可能になる。また、上述したように、主振動に対して、悪影響を及ぼす端面による反射波や互いの振動による干渉を防止しているため、フィルタの群遅延時間特性の乱れの低減とスプリアス特性の悪化の防止、および、ディスクリミネータの歪率特性の乱れを防止することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電共振ユニットに係る第1の実施例の斜視図である。
【図2】本発明の圧電共振ユニットに係る第2の実施例の斜視図である。
【図3】本発明の圧電共振ユニットに係る第3の実施例の斜視図である。
【図4】本発明の圧電共振ユニットに係る第4の実施例の斜視図である。
【図5】従来の圧電共振ユニットの斜視図である。
【図6】従来の圧電共振ユニットを用いた表面実装形のセラミックフィルタの一部透視斜視図である。
【符号の説明】
3,43,44 振動電極
5 圧電共振子
9,47,48 振動部
11,21,31,41 圧電共振ユニット
12,22,32,42 圧電基板
13,23,33,49 未分極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】略四角形状板の圧電基板の両表面に、振動電極を対向して設け、振動部を形成してなるエネルギー閉じ込め形厚み縦振動の圧電共振ユニットからなる圧電共振子において、前記振動部の外部で、圧電基板内の一部に、未分極部を設けたことを特徴とする圧電共振子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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