説明

圧電慣性変換器

有効周波数範囲を有する慣性力変換器(1)は、該変換器の有効周波数範囲にモードの周波数分布を有する共振素子(2)と、力が加えられることになる場所に共振素子(2)を取り付けるための結合手段(4)とを含む。共振素子(2)は、圧電材料(6)層と該圧電材料(6)層の上に基材層(3)とを含む圧電素子である。基材層(3)は圧電層(6)を越えて延長する領域を有し、結合手段は該延長領域(7)に取り付けられることにより、変換器(1)の低周波特性が拡張される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパネル形状音響ダイアフラムに撓み波エネルギーを加えてラウドスピーカを形成するための力変換器又はアクチュエータに関する。より詳細には、本発明は、国際特許出願WO 01/54450に記載された類の力変換器又はアクチュエータに関する。これらの装置は、「分布モードアクチュエータ」又は頭文字「DMA」として知られている。
【背景技術】
【0002】
例えばスタブである偏心結合手段によって力が加えられることになる場所にDMAを結合することは、WO 01/54450から公知である。更に、DMAのパラメータを調整してDMAのモード特性を強調することができることは、WO 01/54450から知られている。
【0003】
変換器の基本波共振を変える代替方法を提供することが望ましいであろう。
【0004】
【特許文献1】WO 01/54450公報
【発明の開示】
【0005】
本発明によれば、圧電材料の層と該圧電材料層の上にある基材層とを含む圧電デバイスであり、変換器の有効周波数範囲にモードの周波数分布を有する共振素子と、力が加えられる場所に該共振素子を取り付けるための結合手段とを備えた、有効周波数範囲を有する慣性力変換器であって、前記基材層は前記圧電層を越えて延長された領域を有し、前記結合手段が前記延長領域に取り付けられることにより、前記変換器の低周波特性が拡張されることを特徴とする変換器が提供される。
【0006】
WO 01/54450では、変換器の基本波共振モードf0の周波数を決定付ける要因として、偏心結合によりスタブの剛性がもたらされる。スタブの剛性を低くすることで、撓みの一部はもはやタブ内で生じるので、ビームの基本波共振f0は、ビーム撓みの単純な関数から撓みと並進の関数に変わる。
【0007】
本発明では、共振素子の基材を延長すると結合システムの剛性が低くなり、結合手段と共振素子の間にコンプライアンス、すなわち可撓性をもたらす。このコンプライアンスにより変換器の基本波共振f0が低下する結果となる。従って、変換器の特性は、より低い周波数まで拡張される。
【0008】
コンプライアンスが延長ベーンによって与えられるので、システムの複雑さを低減することができると同時に、設計の柔軟性を保つことができる。結合手段の撓み剛性は、好ましくは、延長領域の撓み剛性よりも大きい。結合手段は、硬質で剛性とすることができる。同様に、基材層と結合手段との間の接続も剛性にすることができる。
【0009】
結合手段は、制御された接着層などの痕跡とすることができ、又はスタブの形態にすることができる。接続は、接着性の層などの痕跡とすることができる。
【0010】
変換器は、慣性式、すなわちフレーム又は他の支持体に対して非接地式であり、延長領域外で自由に振動できる。換言すれば、共振素子は自由に撓むことができ、そのため、振動中のそれ自己質量の加速及び減速に伴う慣性によって力を発生する。
【0011】
共振素子は、ほぼ矩形又はビーム状とすることができる。基材層の延長領域は、矩形又はビーム状共振素子の一方の端部にあり、反対側の端部で、最大並進が生じる。
【0012】
共振素子は、圧電材料の2つの層の間に基材層が挟まれた圧電バイモルフの形態にすることができる。基材層は、例えば真鍮などの金属性とすることができる。
【0013】
別の態様によれば、本発明は、上記で定義された力変換器又はアクチュエータを含むラウドスピーカである。
【0014】
更に別の態様によれば、本発明は、例えば上述のラウドスピーカを含む携帯電話又はセル方式携帯電話などの電子デバイスである。
【0015】
本発明は、例証として添付図面において図式的に示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図2は、圧電バイモルフビーム2の形態の2つの共振素子を含む力変換器1を示す。各ビーム2は、圧電層6の間に挟まれた例えば真鍮である金属性ベーン3の形態の中央基板層を含む。各ビームの一端部では、中央ベーン3は圧電層6を越えて延長領域7に突出するよう延びている。
【0017】
ビーム2は、硬質の支持スタブ4の形態の結合手段を介して結合され、スタブの撓み剛性は、例えば接着手段によって、ベーン領域7では延長されたベーンの撓み剛性よりも大きい。スタブ4は、力が加えられることになる場所、すなわちこの事例ではブロック力治具5に接着手段により固定される。この治具5は、機械的接地すなわち取り付け位置を提供し、ここでは機械インピーダンスが高く(>1000Ns/m)、対象物のすべての周波数でゼロ速度を効果的にもたらす。実際には、これは、変換器に対して高質量(>1kg)を有する金属ブロックである。
【0018】
図2は、基本波撓み周波数f0近傍の周波数における変換器の変位した形状を示す。延長領域に対して反対側にある変換器の端部は、フレーム又は他の支持体には取り付けられず、自由に振動することができる。変換器の平面に対し垂直な平面での変換器の変位は、この端部で最大となる。それでも撓みの大部分は延長ベーン領域7で生じている。
【0019】
図3は、ビームの端部と硬質スタブとの間のベーン長が増加したことによるブロック力に対する影響を示す。力の垂直成分だけが示され、ノイズ及び構造に起因する誤差を低減するために、較正有限要素モデルを用いてこの影響を実証する。実線は延長されていないベーンの影響を示し、点線は長さが0.5mmの延長領域、一点鎖線は長さが1.5mmの延長領域の影響を示す。
【0020】
最も低い力のピークが発生する周波数は、谷における振幅と同じようにベーンが延長されると低くなる。グラフから外挿すると、1mmの延長領域を使用することによって、ピーク周波数を300Hzから200Hzまで低下させることができ、対応する力の低下は6.3dBNである。
【0021】
5kHz領域に存在する谷は、ビーム平面に垂直なブロック力に対してのみ存在する。ビームの長さに平行な方向のブロック力の成分の試験では、このような性質を示さない。従って、ビームが撓み波パネル音響放射体上に取り付けられると、5kHzでの谷は測定される音圧では見られない。
【0022】
本発明は、中央ベーンの長さをビームの端部を越えて延ばし、延長部に接合することによって、DMAの動作帯域幅を増大させる簡単な方法を提供する。しかしながら、力出力はこれに対応し減少する。
【0023】
図4は、図1に示される変換器1が偏心した位置に取り付けられたパネル形のダイアフラム8を含むラウドスピーカを示している。変換器1は、ダイアフラム中の撓み波振動を励振することにより、ダイアフラムが放射し音響を発生する。
【0024】
図5は、図4に示されたのと同様のラウドスピーカを組み込んだ携帯電話9を示す。変換器1は、画面を見るウインドウを隠さないように側部でスクリーンカバー10に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による力変換器又はアクチュエータの斜視図である。
【図2】図1の力変換器又はアクチュエータの側面図である。
【図3】延長領域の様々な長さにおける周波数に対するブロック力のグラフである。
【図4】ダイアフラムに取り付けられた図1の変換器の斜視図である。
【図5】図1の変換器を組み込んだ携帯電話の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 力変換器
2 ビーム
3 基材層
4 支持スタブ
5 治具
6 圧電層
7 延長領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料の層と該圧電材料層の上にある基材層とを含む圧電デバイスであり、変換器の有効周波数範囲にモードの周波数分布を有する共振素子と、
力が加えられる場所に前記共振素子を取り付けるための結合手段と、
を備えた、有効周波数範囲を有する慣性力変換器であって、
前記基材層は前記圧電層を越えて延長された領域を有し、前記結合手段が前記延長領域に取り付けられることにより、前記変換器の低周波特性が拡張されることを特徴とする変換器。
【請求項2】
前記延長領域のパラメータは、前記共振素子のモード特性を強調するように選択されることを特徴とする請求項1に記載の力変換器。
【請求項3】
前記共振素子は、ほぼ矩形又はビーム状であり、前記基材層の延長領域は、前記共振素子の一方の端部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の力変換器。
【請求項4】
前記結合手段の撓み剛性は、前記延長領域の撓み剛性よりも大きいことを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の力変換器。
【請求項5】
前記基材層と前記結合手段が、共に剛性接続で結合されることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の力変換器。
【請求項6】
前記共振素子は、圧電バイモルフであることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の力変換器。
【請求項7】
前記基材層は金属性であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の力変換器。
【請求項8】
複数の共振素子を備えることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の力変換器。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに記載の力変換器を備えたラウドスピーカ。
【請求項10】
請求項9に記載のラウドスピーカを備える電子デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のラウドスピーカを備える携帯電話又はセル方式携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−504772(P2008−504772A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518674(P2007−518674)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002381
【国際公開番号】WO2006/003367
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(505209670)ニュー トランスデューサーズ リミテッド (7)
【Fターム(参考)】