説明

圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイ

【課題】圧電振動子の周波数調整を行うと共に、封止面およびパッケージ内部を洗浄することを可能とする圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイを提供する。
【解決手段】イオンビームを圧電振動子の圧電振動片に照射して、前記圧電振動子の周波数を調整する圧電振動子用周波数調整装置に備えられ、前記圧電振動子が載置される加工トレイ10であって、加工トレイ10に前記圧電振動子パッケージの外形形状より大きな矩形状に形成された収納穴11と、加工トレイ10の一方の面に、前記圧電振動子パッケージが係止するように収納穴11の四隅から突出するように形成された突起部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンエッチング技術を利用した圧電振動子の周波数調整装置に用いられ、イオンエッチングの際に圧電振動子を載置する圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧電振動子の圧電振動片に形成された励振電極にイオンビームを照射して、イオンエッチングにより励振電極を削り、圧電振動子の周波数を調整する方法が知られている。例えば、イオンエッチングによる圧電振動子用周波数調整装置(以下、f調装置とも言う)が、特許文献1に開示されている。このf調装置は図5(a)に示すように、イオンビームの発生源であるイオンガン100と、その上方に配置された圧電振動子120を保持してトレイ可動手段103によって規定の方向に移動可能な加工トレイ110と、イオンガン100と加工トレイ110との間に配置され、イオンビームの絞りを行うマスク102およびイオンビームの照射を制御するシャッター101を備えている。
このようなf調装置では、イオンガン100から照射されたイオンビームが、シャッター101を開くことによりマスク102のスリットを通過して圧電振動子120の圧電振動片126に照射される。そして、圧電振動片126に形成された励振電極がエッチングされて周波数が高くなる方向に調整されていく。その間、周波数を周波数測定器104で測定し、所望の値になったところでシャッター101を閉じ、圧電振動子120の周波数を規定値に調整している。
なお、図5(b)は加工トレイ110を底面側から見た平面図である。加工トレイ110には複数の圧電振動子パッケージ121が収納できる収納穴112が設けられ、一方の面には、それぞれの圧電振動片126の励振電極に対応する部分に開口穴111が設けられており、この開口穴111を通して圧電振動片126の励振電極にイオンビームを照射している。このように、加工トレイ110は、圧電振動子を下向き(圧電振動片126がイオンガン100と対向するように)に保持して、イオンエッチングによる周波数調整を可能としている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−223893号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電振動子の製造工程では、上記のf調装置による周波数調整工程が終わった後に、圧電振動子パッケージに蓋体をシーム溶接などにより接合して、圧電振動片を気密封止する工程に進む。
この気密封止する工程において、封止面が汚れている場合には、良好な接合が行われず、気密が保てない問題がある。また、気密封止する圧電振動子パッケージの内部に汚れなどがある場合には、気密封止後の圧電振動子の周波数エージング特性を悪化させることがある。
これらの汚れを除去するために、気密封止工程の前にウェットまたはドライ洗浄工程を設けることも考えられるが、工数の増加となってしまう。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、圧電振動子の周波数調整を行うと共に、封止面およびパッケージ内部を洗浄することを可能とする圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、イオンビームを圧電振動子の圧電振動片に照射して、前記圧電振動子の周波数を調整する圧電振動子用周波数調整装置に備えられ、前記圧電振動子が載置される圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイであって、前記加工トレイに前記圧電振動子の外形形状より大きな矩形状に形成された収納穴と、前記加工トレイの一方の面に、前記圧電振動子が係止するように前記収納穴の四隅から突出するように形成された突起部と、を有することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、本発明の加工トレイは、収納穴の四隅から突出する突起部により、圧電振動子が係止されるように構成されている。圧電振動子を加工トレイに載置したときに、突起部に掛かる部分を除き、圧電振動片、圧電振動子パッケージ、封止面などが露出した状態となる。この状態でイオンビームを圧電振動子に照射すると、圧電振動片に形成された励振電極をイオンエッチングすると共に、圧電振動子パッケージの内部、封止面が洗浄される。
このように、本発明は圧電振動子の周波数調整を行うと共に、圧電振動子パッケージの内部および封止面を洗浄することを可能とする圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(実施形態)
【0008】
図1は本実施形態の加工トレイにおける圧電振動子の収納部を示す説明図であり、図1(a)は概略部分平面図、図1(b)は同図(a)のA−A断線に沿う部分断面図である。
ステンレスなどの金属の材料からなる板状の加工トレイ10には、圧電振動子パッケージの外形より大きく形成され、圧電振動子を収納する収納穴11が形成されている。
そして、加工トレイ10の一方の面には、収納穴11の四隅から収納穴11の中央部に向かって突出する矩形状の突起部12が形成されている。この突起部12は、加工トレイ10に圧電振動子を載置したとき、この突起部12により、圧電振動子が係止されるように構成されている。
なお、図1では収納穴11の一つの部分を示して説明したが、加工トレイ10には複数の収納穴11が連設され、一つの加工トレイ10を構成している。また、加工トレイ10における収納穴11の配置は、一方向に連続して設けても、マトリックス状に設けても良い。
【0009】
次に、この加工トレイ10に圧電振動子を載置した状態について説明する。
まず、圧電振動子について図3を用いて説明する。図3(a)は圧電振動子の構成を示す概略平面図であり、図3(b)は同図(a)のB−B断線に沿う断面図である。
圧電振動子20は、圧電振動片25と、この圧電振動片25を収容する圧電振動子パッケージ21とを備えている。
圧電振動片25は、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料から形成され、その表裏の主面には励振電極26が形成されている。
圧電振動子パッケージ21は、セラミックスなどが積層された絶縁基板22にコバールなどで形成された金属リング23が固着され、圧電振動片25を収容する凹部が形成されている。そして、この凹部の底面には接続パッド24が設けられ、導電性接着剤27を介して、接続パッド24と、圧電振動片25とが接続されている。また、金属リング23の上面は、蓋体などを接合して気密封止するために平坦に形成されている。
なお、ここで言う圧電振動子20は、周波数調整を行う工程における状態であり、蓋体により気密封止をする工程前のため、圧電振動片25が露出した状態である。
【0010】
図2は上記圧電振動子を加工トレイに載置した状態を示し、図2(a)は概略部分断面図であり、図2(b)は加工トレイを底面側から見た部分平面図である。
加工トレイ10には、圧電振動子20における圧電振動片25の露出面が下に向くように載置される。収納穴11は圧電振動子パッケージ21の外形より大きく形成されており、圧電振動子20が収納されるように構成されている。また、加工トレイ10の一方の面(底面)には収納穴11の四隅から収納穴11の中央部に向かって突出する突起部12が形成されているため、突起部12と圧電振動子パッケージ21における金属リング23の上面の四隅とが当接し、圧電振動子20が係止されるように構成されている。
【0011】
本実施形態の加工トレイ10は、収納穴11の四隅から突出する突起部12により、圧電振動子パッケージ21が係止されるように構成されている。圧電振動子パッケージ21を加工トレイ10に載置したときに、突起部12に掛かる部分を除き、圧電振動片25、圧電振動子パッケージ21、金属リング23の封止面などが露出した状態となる。この状態でイオンビームを加工トレイ10に向けて照射すると、圧電振動片25に形成された励振電極26をイオンエッチングすると共に、圧電振動子パッケージ21の内部、金属リング23の封止面にイオンビームがあたり、洗浄される。
このように、本実施形態は圧電振動子20の周波数調整を行うと共に、圧電振動子パッケージ21の内部および封止面を洗浄することを可能とする圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイ10を得ることができる。
【0012】
そして、この加工トレイ10を用いて圧電振動子20の周波数調整を行うことで、周波数調整と共に金属リング23の封止面が洗浄されることになる。このとき、金属リング23の四隅は突起部12に遮られて洗浄できないが、金属ローラを縦方向・横方向に走査して封止を行うシーム溶接などの方法では、この封止面の四隅にはローラが2回通ることになり、微小な汚れにおいては封止の接合性に影響を及ぼすことがない。このように、本実施形態の加工トレイ10を用いることで封止の接合性を向上させることが可能である。
さらに、圧電振動子パッケージ21の内部も同時に洗浄されることから、封止後における圧電振動子20の周波数エージング特性を良好にすることができる。
(変形例)
【0013】
次に、圧電振動子を係止させる加工トレイにおける突起部の形状の変形例について説明する。本変形例では、収納穴の形状は上記実施形態と同様であり、突起部の形状のみ異なる。
図4(a)〜(c)は、本実施形態の加工トレイにおける圧電振動子を係止させる突起部の形状の変形例を示す概略平面図である。
図4(a)において、加工トレイ30は、収納穴31の四隅から突出する三角形状の突起部32により、圧電振動子パッケージが係止されるように構成されている。
図4(b)において、加工トレイ40は、収納穴41の四隅から突出する円弧状の突起部42により、圧電振動子パッケージが係止されるように構成されている。
図4(c)において、加工トレイ50は、収納穴51の四隅から突出するテーパー状の突起部52により、圧電振動子パッケージが係止されるように構成されている。
【0014】
このように、加工トレイにおける突起部の形状は圧電振動子パッケージを係止できるように様々な形状を考慮でき、適宜変更が可能である。
以上のように、本変形例においても上記実施形態と同様に圧電振動子の周波数調整を行うと共に、圧電振動子パッケージの内部および封止面を洗浄することを可能とする圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイ30,40,50を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の加工トレイにおける圧電振動子の収納部を示す説明図であり、(a)は概略部分平面図、(b)は(a)のA−A断線に沿う部分断面図。
【図2】本実施形態の加工トレイに圧電振動子を載置した状態を示し、(a)は概略部分断面図、(b)は底面側から見た部分平面図。
【図3】圧電振動子の構成を示す構成図であり、(a)は概略平面図、(b)は(a)のB−B断線に沿う断面図。
【図4】本実施形態の変形例を示す加工トレイの平面図。
【図5】従来技術を説明する説明図であり、(a)は圧電振動子用周波数調整装置の概略説明図、(b)は圧電振動子が載置された加工トレイを底面から見た平面図。
【符号の説明】
【0016】
10…加工トレイ、11…収納穴、12…突起部、20…圧電振動子、21…圧電振動子パッケージ、22…絶縁基板、23…金属リング、25…圧電振動片、26…励振電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを圧電振動子の圧電振動片に照射して、前記圧電振動子の周波数を調整する圧電振動子用周波数調整装置に備えられ、前記圧電振動子が載置される圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイであって、
前記加工トレイに前記圧電振動子の外形形状より大きな矩形状に形成された収納穴と、
前記加工トレイの一方の面に、前記圧電振動子が係止するように前記収納穴の四隅から突出するように形成された突起部と、を有することを特徴とする圧電振動子用周波数調整装置の加工トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−11138(P2008−11138A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179103(P2006−179103)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】