説明

圧電素子駆動回路および流体噴射装置

【課題】少ない記憶容量でも複数種類の駆動信号を出力することが可能で、しかも高い駆
動周波数で圧電素子を駆動可能とする。
【解決手段】第1の電圧と第2の電圧との間で往復する基準電圧波形を、スイッチを介し
て圧電素子に供給する。スイッチを接続状態(ON)とすれば基準電圧波形が圧電素子に
印加され、スイッチを切断状態(OFF)とすれば、OFFにした時の電圧が印加され続
ける。従って、基準電圧波形の増減に合わせてスイッチを切り換えるだけで種々の駆動信
号を印加可能となり、複数種類の駆動信号を記憶しておく必要がない。また、基準電圧波
形の電圧が目的の電圧になったら直ちに駆動信号の印加を開始できる。従来のように、印
加しようとする駆動信号を供給されるまで、圧電素子の駆動開始を待つ必要がない。この
ため、圧電素子の駆動周波数を高くすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動信号を印加して圧電素子を駆動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェットプリンターなどのように、容量性負荷である圧電素子に駆動信
号を印加することによって、インクなどの流体を噴射する流体噴射装置が知られている。
この流体噴射装置には駆動回路が搭載されており、駆動回路で生成した駆動信号を印加す
ることによって圧電素子を駆動している。また、圧電素子は印加される電圧に応じて伸縮
するから、圧電素子に印加する駆動信号を切り換えれば、流体の噴射態様(たとえば噴射
量など)を切り換えることが可能である。
【0003】
そこで、複数種類の駆動信号(たとえば、駆動信号A,B,C)を順番に繰り返して出
力しておき、圧電素子の側で選択する駆動信号を切り換えることによって、流体の噴射量
を切り換えるようにした技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−81014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案の技術では、複数種類の駆動信号を予め記憶しておかなければならないの
で、駆動回路の側に大きな記憶容量が必要になると言う問題がある。また、駆動回路から
は複数種類の駆動信号が順番に出力されているので、ある種類の駆動信号(たとえば駆動
信号A)を選択する場合でも、他の種類の駆動信号(たとえば駆動信号B,C)が出力さ
れている間は、目的とする駆動信号(駆動信号A)を選択することができない。このため
、時間あたりの圧電素子の駆動回数を多くすること(圧電素子の駆動周波数を上げること
)が難しいと言う問題もある。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、
大きな記憶容量がなくても複数種類の駆動信号を出力することが可能で、しかも圧電素子
の駆動周波数を上げることも可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の圧電素子駆動回路は次の
構成を採用した。すなわち、本発明の圧電素子駆動回路は、
圧電素子を用いて流体室を変形させて該流体室の内部の流体を噴射する流体噴射装置に
用いられ、該圧電素子に駆動信号を印加する圧電素子駆動回路であって、
第1の電圧から、該第1の電圧よりも高い第2の電圧まで増加した後、該第2の電圧か
ら該第1の電圧まで減少する基準電圧波形を、所定の繰返周期で発生する基準電圧波形発
生手段と、
前記基準電圧波形発生手段と前記圧電素子との間に設けられて、該基準電圧波形発生手
段と該圧電素子とが電気的に接続された接続状態と、電気的に切断された切断状態とに切
り換えるスイッチと、
前記基準電圧波形の電圧の増減に合わせて前記スイッチを前記接続状態と前記切断状態
とに切り換えることによって、前記圧電素子に前記駆動信号を印加するスイッチ制御手段

を備えることを要旨とする。
【0008】
このような構成を有する本発明の圧電素子駆動回路においては、基準電圧波形発生手段
と圧電素子との間にスイッチが設けられており、このスイッチを接続状態としている間は
、基準電圧波形の電圧が圧電素子に印加される。また、圧電素子はいわゆる容量性の電気
負荷(容量性負荷)であるため、スイッチが切断状態の間は、スイッチを切断状態とした
ときに印加されていた電圧がそのまま印加された状態となる。そして、基準電圧波形発生
手段からは、所定の第1の電圧と所定の第2の電圧との間を何度も往復するような電圧波
形が出力されているから、基準電圧波形の電圧が所望の電圧になったときにスイッチを接
続状態とし、その後、基準電圧波形の電圧が次の所望の電圧になったときにスイッチを切
断状態とすることを繰り返せば、適切な駆動信号を圧電素子に印加することができる。
【0009】
そして、このようにして駆動信号を印加することとすれば、同じ基準電圧波形を繰り返
し出力しておき、単にスイッチを接続状態あるいは切断状態とするタイミングを異ならせ
るだけで、種々の駆動信号を印加することができる。このため、圧電素子に複数種類の駆
動信号を印加する場合でも、それら複数種類の駆動信号を予め記憶しておく必要がない。
その結果、圧電素子駆動回路の記憶容量を増やさなくても、多くの異なる駆動信号を印加
することが可能となる。
【0010】
加えて、基準電圧波形は所定の繰返周期で出力されており、基準電圧波形の電圧が所望
の電圧になれば、直ちに圧電素子に対して駆動信号の印加を開始することができる。換言
すれば、従来の技術のように、圧電素子に印加しようとする目的の駆動信号を供給される
まで、圧電素子の駆動を待つ必要がない。このため、圧電素子の駆動周波数を高くするこ
とも可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の圧電素子駆動回路においては、次のようにしても良い。先ず、
流体噴射装置には、複数の圧電素子が設けられており、その一つ一つの圧電素子に対して
スイッチを設ける。そして、それぞれのスイッチについて、接続状態と切断状態とを個別
に切り換えるようにしてもよい。
【0012】
こうすれば、ある圧電素子に対してある駆動信号を印加している間に、別の圧電素子に
対して別の駆動信号を印加することが可能となる。また、スイッチを、接続状態と切断状
態とに切り換えるタイミングによって、圧電素子に印加される駆動信号を細かく調整する
ことができるから、複数の圧電素子や流体室にバラツキが存在する場合でも、このバラツ
キを補正した状態で、流体を噴射することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明の圧電素子駆動回路においては、流体室の固有振動周期の半分あ
るいは半分よりも短い繰返周期で、基準電圧波形を発生するようにしてもよい。
【0014】
流体室を変形させて流体室内の流体を噴射した後の流体室内には、流体室の固有振動周
期に相当する周期で流体の圧力が変動する圧力変動(およびそれに伴う流体の流れ)が発
生する。このような圧力変動(流体の流れ)が残存している状態で、圧電素子に駆動信号
を印加すると、圧電素子の伸縮による流体室の圧力変化が圧力変動によって乱されて、正
常に流体を噴射することができなくなる。このため、流体の噴射後に流体室内に生じる圧
力変動は、速やかに減衰させることが望ましい。この点で、基準電圧波形の繰返周期を、
流体室の固有振動周期の半分あるいは半分よりも短い周期としておけば、流体を噴射する
ために流体室の容積を減少させた後、流体室内に発生した圧力変動を打ち消すようなタイ
ミングで流体室の容積を元の容積に復元させて、圧力変動を速やかに減衰させることが可
能となるので好ましい。ここで「固有振動周期」とは、物体(本発明では流体室)に固有
な物理的性質によって決まる固有振動の周期を意味する。
【0015】
また、上述した本発明の圧電素子駆動回路は、圧電素子に駆動信号を印加することによ
って噴射ノズルから流体を噴射させる流体噴射装置に対して、圧電素子に駆動信号を印加
するための回路として用いることができる。
【0016】
上述したように本発明の圧電素子駆動回路は、大きな記憶容量が搭載されていなくても
、多くの種類の駆動信号を圧電素子に印加することができる。このため、複数の態様で流
体を噴射可能な流体噴射装置を、容易に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例の圧電素子駆動回路を搭載したインクジェットプリンターを例示した説明図である。
【図2】インクジェットプリンターの噴射ヘッドの内部構造を詳細に示した説明図である。
【図3】圧電素子に印加される駆動信号を例示した説明図である。
【図4】本実施例の圧電素子駆動回路の回路構成を示した説明図である。
【図5】基準電圧波形発生回路から出力される基準電圧波形を例示した説明図である。
【図6】ゲート素子のON/OFFを切り換えることによって圧電素子に駆動信号を印加する様子を例示した説明図である。
【図7】ゲート素子をON/OFFするタイミングを変更することによって駆動信号を変更する様子を例示した説明図である。
【図8】第1の変形例で圧電素子に印加される駆動信号を例示した説明図である。
【図9】第2の変形例でインクを噴射するタイミングをずらす様子を例示した説明図である。
【図10】第3の変形例として種々の基準電圧波形を例示した説明図である。
【図11】インク室が有する固有振動周期と、基準電圧波形の繰返周期Tpとの関係についての説明図である。
【図12】インク室が有する固有振動周期と、基準電圧波形の繰返周期Tpとの関係についての説明図である。
【図13】圧電素子を用いて液体を噴射する流体噴射装置を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
B.圧電素子駆動回路の構成:
C.駆動信号の印加方法:
D.変形例:
D−1.第1の変形例:
D−2.第2の変形例:
D−3.第3の変形例:
D−4.第4の変形例:
D−5.第5の変形例:
【0019】
A.装置構成 :
図1は、本実施例の圧電素子駆動回路100を搭載したインクジェットプリンター10
を例示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、印刷媒体2の上で
キャリッジ20を往復動させながら、印刷媒体2上にインクを噴射することによって画像
を印刷する。従って、本実施例のインクジェットプリンター10は、本発明の流体噴射装
置の一態様となっている。インクジェットプリンター10には、キャリッジ20を往復動
させる駆動機構30や、印刷媒体2の紙送りを行うためのプラテンローラー40なども搭
載されている。キャリッジ20には、インクを収容したインクカートリッジ26や、イン
クカートリッジ26が装着されるキャリッジケース22、キャリッジケース22の底面側
(印刷媒体2に向いた側)に搭載されてインクを噴射する噴射ヘッド24などが設けられ
ている。尚、噴射ヘッド24のアクチュエーターには、圧電素子が用いられている。また
、キャリッジ20が往復動する方向は主走査方向と呼ばれ、印刷媒体2が紙送りされる方
向は副走査方向と呼ばれている。
【0020】
キャリッジ20を主走査方向に往復動させる駆動機構30は、プーリーによって張設さ
れたタイミングベルト32や、プーリーを介してタイミングベルト32を駆動するステッ
プモーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一箇所はキャリッジケ
ース22に固定されており、タイミングベルト32を駆動することでキャリッジケース2
2を往復動させることができる。また、プラテンローラー40は、図示しない駆動モータ
ーやギア機構とともに、印刷媒体2の紙送りを行う紙送り機構を構成しており、印刷媒体
2を副走査方向に所定量ずつ紙送りすることが可能である。
【0021】
インクジェットプリンター10には、全体の動作を制御するプリンター制御回路50や
、噴射ヘッド24内の圧電素子を駆動するための圧電素子駆動回路100も搭載されてい
る。プリンター制御回路50は、圧電素子駆動回路100や、駆動機構30、紙送り機構
などの動作を制御している。
【0022】
図2は、噴射ヘッド24の内部の機構を詳細に示した説明図である。図示されている様
に、噴射ヘッド24の底面(印刷媒体2に向いている面)には、インクを噴射するための
噴射ノズル200が複数設けられている。噴射ノズル200はインク室202に接続され
ており、インク室202には、インクカートリッジ26から供給されたインクが満たされ
る。インク室202の上には圧電素子204が設けられており、圧電素子204に駆動信
号を印加すると、圧電素子204が変形する。その結果、インク室202内のインクが噴
射ノズル200から噴射されることが可能となっている。また、圧電素子204に印加す
る駆動信号を変更すれば、インクを噴射する態様(たとえば噴射量など)を変更すること
も可能である。
【0023】
図3は、圧電素子204に印加される駆動信号を例示した説明図である。図示されるよ
うに駆動信号は、時間の経過とともに電圧が上昇し、その後、低下して元の電圧に戻る台
形形状を組み合わせたような電圧波形をしている。また、図中には、駆動信号に応じて圧
電素子204が伸縮する様子が示されている。圧電素子204は、駆動信号の電圧が上昇
すると収縮し、電圧が低下すると伸張する。従って、駆動信号の電圧を上昇させると、圧
電素子204に引っ張られてインク室202が増加して、インクカートリッジ26からイ
ンク室202内にインクが供給される。その後、駆動信号の電圧を低下させると、圧電素
子204が伸張してインク室202を圧縮し、その結果、噴射ノズル200からインクが
噴射される。また、駆動信号の電圧の上昇量を抑制しておけば、インク室202に十分な
インクが供給されないので、駆動信号を低下させたときに噴射されるインク量を減少させ
ることができる。あるいは、駆動信号の電圧の上昇量を抑制せずに、従ってインク室20
2に十分なインクを供給した場合でも、駆動信号の電圧の低下量を抑制することでインク
の噴射量を減少させることができる。このように、圧電素子204に印加する駆動信号を
変更すればインクの噴射量を変更することができる。
【0024】
もっとも、駆動信号の種類が多くなると、全ての駆動信号を記憶しておくために大きな
記憶容量が必要となる。また、個々の噴射ノズル200がインクを噴射する特性は、噴射
ノズル200毎に異なっているので、この特性のバラツキを駆動信号によって補正しよう
とすると、膨大な種類の駆動信号を記憶しておかなければならなくなる。そこで本実施例
の圧電素子駆動回路100では、次のような方法で圧電素子204に駆動信号を印加して
いる。
【0025】
B.圧電素子駆動回路の構成 :
図4は、本実施例の圧電素子駆動回路100の回路構成を示した説明図である。本実施
例の圧電素子駆動回路100は、基準電圧波形発生回路110と、ゲート素子制御回路1
50と、ゲートユニット300とを備えている。ここで基準電圧波形とは、所定の下限電
圧Vminから、所定の上限電圧Vmaxまで増加した後、再び下限電圧Vminまで低
下するような電圧波形である。尚、本実施例では、下限電圧Vminが本発明の「第1の
電圧」に対応し、上限電圧Vmaxが本発明の「第2の電圧」に対応する。
【0026】
図5には、本実施例の圧電素子駆動回路100で用いられている基準電圧波形が示され
ている。図5には、所定の下限電圧Vminから、所定の上限電圧Vmaxまでを立上が
り期間Trの時間で増加した後、再び下限電圧Vminまでを立下がり期間Tfの時間で
低下している様子が示されている。もっとも、基準電圧波形はこのような波形に限られる
ものではなく、下限電圧Vminから上限電圧Vmaxに単調に増加した後、上限電圧V
maxから下限電圧Vminに単調に減少するような波形であればどのような電圧波形も
用いることができる。たとえば、下限電圧Vminから上限電圧Vmaxに達した後に、
暫くの間、上限電圧Vmaxを保持する台形の波形や、正弦波のように、上限電圧Vma
xや下限電圧Vmin付近では小さな変化速度で電圧が変化する波形なども、基準電圧波
形として好適に用いることができる。基準電圧波形発生回路110は、このような基準電
圧波形を、所定の繰返周期Tp(Tp≧Tr+Tf)で繰り返して出力する。尚、本実施
例においては、基準電圧波形発生回路110が、本発明の「基準電圧波形発生手段」に対
応する。
【0027】
また、ゲートユニット300は、複数のゲート素子302から構成されている。それぞ
れのゲート素子302には、基準電圧波形発生回路110からの基準電圧波形が供給され
ており、ゲート素子302の下流側には圧電素子204が接続されている。ゲート素子3
02は、電気的な接続状態と切断状態とを個別に切り換えることが可能である。また、ゲ
ート素子制御回路150は、それぞれのゲート素子302について、接続状態または切断
状態の何れにするかを制御する。従って、ゲート素子制御回路150によって接続状態に
制御されたゲート素子302の圧電素子204については、基準電圧波形発生回路110
からの基準電圧波形がゲート素子302を通過して印加される。また、切断状態に制御さ
れたゲート素子302の圧電素子204については、基準電圧波形発生回路110からの
基準電圧波形が印加されることはない。尚、本実施例においては、ゲート素子302が本
発明の「スイッチ」に対応し、ゲート素子制御回路150が本発明の「スイッチ制御手段
」に対応する。
【0028】
図4に示すように本実施例の圧電素子駆動回路100では、プリンター制御回路50か
らの出力開始信号を受け取ると、基準電圧波形発生回路110が一定の繰返周期Tpで基
準電圧波形の出力を開始する。また、ゲート素子制御回路150は、プリンター制御回路
50からの制御信号を受け取ると、その制御信号に基づいて、ゲート素子302を接続状
態としたり、切断状態としたりするタイミングを決定する。尚、ゲート素子302は複数
設けられているから、それぞれのゲート素子302について、接続状態または切断状態と
するタイミングを決定する。そして、決定した内容に従って、それぞれのゲート素子30
2を接続状態または切断状態に切り換える。こうすることで、それぞれのゲート素子30
2に接続されている圧電素子204に対して、図3に示した駆動信号を印加することが可
能となる。以下、この点について詳しく説明する。
【0029】
C.駆動信号の印加方法 :
図6は、あるゲート素子302について接続状態(ON)と切断状態(OFF)とを切
り換えることによって、圧電素子204に駆動信号を印加する様子を例示した説明図であ
る。図6では、基準電圧波形発生回路110から出力される基準電圧波形が細い破線で示
されており、圧電素子204に印加されている電圧が太い実線で示されている。先ず始め
に、初期状態として圧電素子204に印加されている電圧(圧電素子204の端子間の電
圧)が、初期電圧Viniであったとする。ゲート素子302を切断状態としておけば圧
電素子204に蓄えられている電荷は増減しないから、圧電素子204に印加される電圧
は初期電圧Viniに保たれている。
【0030】
そして、基準電圧波形発生回路110からの基準電圧波形が、下限電圧Vminから上
昇して初期電圧Viniに達したら、ゲート素子302を接続状態(ON)にする。図6
では、時間t1のタイミングで基準電圧波形が初期電圧Viniに達するので、ゲート素
子302をONにする。すると、基準電圧波形発生回路110と圧電素子204とが電気
的に接続された状態となる。その結果、図6中に太い実線で示されるように、圧電素子2
04に印加される電圧が基準電圧波形と共に上昇する。
【0031】
続いて、時間t2のタイミングでゲート素子302を切断状態(OFF)にする。この
時、基準電圧波形の電圧は上限電圧Vmaxに達している。ゲート素子302をOFFに
すると基準電圧波形発生回路110と圧電素子204とは電気的に切断された状態となる
。このため、図中に細い破線で示すように基準電圧波形の電圧が低下しても、圧電素子2
04に印加される電圧は、図中に太い実線で示されるように上限電圧Vmaxに保たれる

【0032】
その後、基準電圧波形の電圧が下限電圧Vminまで低下し、再び上昇に転じて上限電
圧Vmaxに達するまでゲート素子302をOFFにしておく。そして、時間t3になる
と基準電圧波形が上限電圧Vmaxに達して、圧電素子204の印加電圧と等しくなるの
で、ゲート素子302をONにする。すると、基準電圧波形発生回路110と圧電素子2
04とが電気的に接続された状態となるので、図6に太い実線で示すように、基準電圧波
形の電圧が低下するに従って圧電素子204に印加される電圧も低下する。
【0033】
そして、時間t4のタイミングでゲート素子302をOFFにした後、時間t5のタイ
ミングで再びゲート素子302をONにする。ここで図6に示したように、時間t4では
、基準電圧波形の電圧が下限電圧Vminまで低下しており、基準電圧波形の繰返周期T
pの2周期分(2Tp)に相当する時間だけ経過した後、時間t5では、基準電圧波形の
電圧が再び下限電圧Vminまで低下している。その結果、圧電素子204に印加される
電圧は、時間t4から時間t5までの間は基準電圧波形の下限電圧Vminで保たれてお
り、時間t5以降は、基準電圧波形の電圧上昇と共に圧電素子204の印加電圧も上昇す
る。そして、基準電圧波形の電圧が初期電圧Viniに達したら(時間t6に達したら)
、ゲート素子302をOFFにする。すると、それ以降は、圧電素子204に印加される
電圧が初期電圧Viniで維持された状態となる。
【0034】
以上に説明したように、基準電圧波形発生回路110から出力される基準電圧波形に同
期させて、適切なタイミングでゲート素子302を接続状態(ON)あるいは切断状態(
OFF)に切り換えてやれば、図6中に太い実線で示したように、駆動信号を圧電素子2
04に印加することができる。そして、このような方法で駆動信号を印加することとすれ
ば、以下に説明するように、ゲート素子302のON/OFFを切り換えるタイミングを
変更するだけで、一種類の基準電圧波形から複数種類の駆動信号を生成して圧電素子20
4に印加することが可能である。
【0035】
図7は、ゲート素子302をON/OFFするタイミングを変更することによって複数
種類の駆動信号を生成する様子を例示した説明図である。たとえば図7(a)に例示した
ように、時間t1でゲート素子302をONにした後、基準電圧波形の電圧が上限電圧V
maxよりも低い電圧V2に達したタイミング(時間t7)でOFFにする。その後、基
準電圧波形の電圧が上限電圧Vmaxに達し、続いて下限電圧Vminまで低下した後、
再び上限電圧Vmaxに達してから電圧V2(ゲート素子302をOFFにした時の電圧
)まで低下したタイミング(時間t8)でゲート素子302をONにする。換言すれば、
基準電圧波形の電圧上昇中にゲート素子302をOFFにすると、基準電圧波形の繰返周
期Tpに相当する時間だけ、そのときの電圧(ここでは電圧V2)で保持した後、その次
に基準電圧波形の電圧が低下して電圧V2に達したタイミング(ここでは時間t8)で再
びゲート素子302をONにする。
【0036】
そして、基準電圧波形の電圧低下中にゲート素子302をONにしたら、基準電圧波形
の電圧が下限電圧Vminよりも高い電圧V1に達したタイミング(時間t9)でゲート
素子302をOFFにする。その後、基準電圧波形の電圧が下限電圧Vminまで低下し
、基準電圧波形の繰返周期Tpの2周期分(2Tp)に相当する時間だけ経過してから電
圧V1まで上昇したタイミング(時間t10)でゲート素子302をONにする。換言す
れば、基準電圧波形の電圧低下中にゲート素子302をOFFにすると、基準電圧波形の
繰返周期Tpの二周期分(2Tp)に相当する時間だけ、そのときの電圧(ここでは電圧
V1)で保持した後、その次に基準電圧波形の電圧が上昇して電圧V1に達したタイミン
グ(ここでは時間t10)で再びゲート素子302をONにする。そして、その後は、基
準電圧波形の電圧が初期電圧Viniに達したタイミング(時間t6)で再びゲート素子
302をOFFする。
【0037】
こうすれば、図7(a)中に太い実線で示したように、初期電圧Viniから電圧V2
に上昇してその電圧を暫く保持した後、電圧V2から電圧V1まで低下して電圧V1を暫
く保持したら、再び初期電圧Viniまで上昇するような駆動信号を生成することができ
る。もちろん、基準電圧波形の電圧の上昇中にゲート素子302をOFFにするタイミン
グ(時間t7)を変更すれば、電圧V2の値を変更することができる。尚、時間t7を変
更した場合には、それに合わせて、その後にゲート素子302をONにするタイミング(
時間t8)も変更する。同様に、基準電圧波形の電圧の低下中にゲート素子302をOF
Fにするタイミング(時間t9)を変更すれば、電圧V1の値を変更することができる。
尚、時間t9を変更すれば、その後にゲート素子302をONにするタイミング(時間t
10)も変更する。
【0038】
このようにゲート素子302のON/OFFを切り換えるタイミングを変更すれば、基
準電圧波形発生回路110からは一種類の基準電圧波形を出力しているだけであるにも拘
わらず、最高電圧(V2)や最低電圧(V1)の値が異なる複数種類の駆動信号を、圧電
素子204に印加することが可能となる。従って、たとえば図7(a)に示した例では、
図6に示した駆動信号を圧電素子204に印加した場合に比較して、駆動信号の最高電圧
が低いのでインク室202へのインクの吸い込み量が少なく、また、駆動信号の最低電圧
が高いのでインク室202からのインクの押し出し量も少なくなる。このため、圧電素子
204に印加する駆動信号を、図6の駆動信号から図7(a)の駆動信号に変更すること
で、噴射ノズル200から噴射するインク量を減少させることが可能となる。
【0039】
また、上述した例では、駆動信号の最高電圧(V2)あるいは最低電圧(V1)を異な
らせるだけであり、波形の基本的な形状(すなわち、初期電圧Viniから最高電圧まで
上昇した後、最低電圧まで低下し、その後、初期電圧Viniに復帰するという波形の形
状)はそのままであった。しかし、波形の基本的な形状の異なる駆動信号を印加すること
も可能である。
【0040】
たとえば図7(b)に例示したように、時間t1でゲート素子302をONにした後、
基準電圧波形の電圧が電圧V2に達したタイミング(時間t7)でOFFにする。そして
、基準電圧波形の繰返周期Tp以上、OFFの状態を保った後、基準電圧波形の電圧低下
中に電圧V2まで低下したタイミング(時間t8)でゲート素子302をONにする。し
かし、図7(b)に示すように、基準電圧波形の電圧が初期電圧Viniに達したタイミ
ング(時間t11)でゲート素子302をOFFにし、その後、下限電圧Vminまで低
下した基準電圧波形の電圧が初期電圧Viniまで上昇したタイミング(時間t12)で
、ゲート素子302をONにする。そして、上昇中の基準電圧波形の電圧が電圧V2より
も低い電圧V3に達したタイミング(時間t13)でゲート素子302をOFFにした後
、上限電圧Vmaxまで上昇した基準電圧波形の電圧が電圧V3まで低下したタイミング
(時間t14)で、ゲート素子302をONにする。換言すれば、基準電圧波形の電圧低
下中に、電圧が初期電圧Viniに達したタイミングでゲート素子302をOFFにする
と、下限電圧Vminまで低下した基準電圧波形の電圧が初期電圧Viniまで上昇した
タイミングでゲート素子302をONにする。そして、基準電圧波形の電圧上昇中に、電
圧が電圧V3に達したタイミングでゲート素子302をOFFにすると、今度は上限電圧
Vmaxまで上昇した基準電圧波形の電圧が電圧V3まで低下したタイミングでゲート素
子302をONにする。
【0041】
その後、低下中の基準電圧波形の電圧が下限電圧Vminよりも高い電圧V1に達した
タイミング(時間t15)でゲート素子302をOFFにする。そして、基準電圧波形の
繰返周期Tpに相当する時間だけ、ゲート素子302がOFFの状態を維持した後、下限
電圧Vminまで低下した基準電圧波形の電圧が電圧V1まで上昇したタイミング(時間
t16)でゲート素子302をONにする。そしてその後は、基準電圧波形の電圧が初期
電圧Viniに達したタイミング(時間t17)で再びゲート素子302をOFFする。
【0042】
こうすれば、図7(b)中に太い実線で示したように、初期電圧Viniから電圧V2
に上昇してその電圧V2を暫く保持した後、電圧V2から初期電圧Viniまで低下する
と、直ぐに電圧V3まで上昇し、その後、電圧V1まで低下して、その電圧V1を暫く保
持した後、再び初期電圧Viniまで上昇するような駆動信号を生成することができる。
【0043】
このような駆動信号を圧電素子204に印加すると、図7(a)を用いて前述したよう
に単に駆動信号の最高電圧V2や最低電圧V1を変更する場合に比べて、より少量のイン
クを噴射することが可能となる。この点について、図7(b)の駆動信号を参照しながら
説明する。先ず、駆動信号の電圧が電圧V2に上昇(インク室202の容積が増加)する
ことによってインク室202にインクが吸い込まれる。続いて、駆動信号の電圧が低下(
インク室202の容積が減少)することによってインク室202の噴射ノズル200から
インクが押し出され始めるものの、初期電圧Viniまで低下した時点で駆動信号の電圧
低下が止まり、その後、駆動信号の電圧が少しだけ上昇(インク室202の容積が少しだ
け増加)する。このため、インク室202の容積減少によって噴射ノズル200から押し
出され始めた後、インク室202の容積が増加に転じることによってインクが途中で引き
ちぎられた状態となり、噴射ノズル200からは少量のインクが噴射される。その後、再
び駆動信号の電圧が低下(インク室202の容積が減少)するが、既にインク室202内
のインクの一部が噴射されているので、この駆動信号の電圧低下によってはインクが噴射
されることはない。このため、図7(a)に示したような方法で、単に駆動信号の最高電
圧V2を低くし、あるいは最低電圧V1を高くする場合に比べて、より少量のインクを噴
射することができる。尚、以上の説明から明らかなように、駆動信号の電圧を電圧V2か
ら低下させた後に途中で保持する電圧は、その後に電圧を上昇させることでインクを引き
ちぎることができるような電圧であれば良く、必ずしも初期電圧Viniに限らない。
【0044】
また、このように駆動信号の波形の基本的な形状を異ならせれば、インクの噴射態様(
インク量など)を、より柔軟に変更することができる。そして、本実施例の方法では、一
種類の基準電圧波形を出力したまま、ゲート素子302のON/OFFを切り換えるタイ
ミングを変更するだけで、駆動信号の最高電圧(V2)や最低電圧(V1)を変更し、あ
るいは駆動信号の波形の基本的な形状を変更することができる。このため、従来から行わ
れてきたように、複数種類の駆動信号を予め記憶しておく必要がないので、そのための記
憶容量を圧電素子駆動回路100に搭載する必要がない。
【0045】
加えて、本実施例の方法では、次のような大きな利点を得ることができる。すなわち、
基準電圧波形発生回路110は一種類の基準電圧波形を出力しているだけであり、基準電
圧波形発生回路110と圧電素子204との間に設けられたゲート素子302のON/O
FFを切り換えることによって、圧電素子204に駆動信号が印加される。そして、圧電
素子204に印加される駆動信号は、ゲート素子302のON/OFFを切り換えるタイ
ミングによって変更することができる。従って、図4に示すような複数のゲート素子30
2のうち、あるゲート素子302と、その隣のゲート素子302とを異なるタイミングで
ON/OFFすれば、隣り合う圧電素子204に異なる駆動信号を印加することができる
。たとえば、一方の圧電素子204には、図6に示したような駆動信号を印加し、他方の
圧電素子204には図7(a)に示したような駆動信号を印加することができる。
【0046】
そして、このように同じタイミングで、異なる駆動信号を印加することができるので、
圧電素子204の駆動周波数を上げることが可能となる。すなわち、従来の方法では、複
数種類の駆動信号を順番にゲート素子302(および圧電素子204)に向けて供給し、
ゲート素子302のON/OFFを切り換えて何れかの駆動信号を選択することによって
、選択した駆動信号を圧電素子204に印加していた。しかしこれでは、ある種類の駆動
信号を印加した圧電素子204にもう一度同じ駆動信号を印加しようとしても、他の種類
の駆動信号の出力が終了するまで待たなければならない。これに対して本実施例の方法で
は、複数の圧電素子204に対して、異なる駆動信号を同じタイミングで印加することが
できるので、それぞれの圧電素子204についての駆動周波数を上げることが可能となる
。また、本実施例の方法によれば、駆動信号の種類が増加する場合でも、そのことによっ
て駆動周波数が低下することがない。
【0047】
更に加えて、本実施例の方法では、複数の圧電素子204に対して、同じタイミングで
異なる駆動信号を印加することができるので、噴射ノズル200や圧電素子204の間で
のバラツキを補正することも可能となる。すなわち、噴射ノズル200や圧電素子204
には製造バラツキが存在するので、標準よりもインクが多めに噴射される噴射ノズル20
0や、少なめに噴射される噴射ノズル200が存在する。そこで、標準よりもインクが多
めに噴射される噴射ノズル200については、駆動信号の最高電圧(V2)が低めになる
ように、あるいは駆動信号の最低電圧(V1)が高めになるように、ゲート素子302の
ON/OFFを切り換えるタイミングを修正する。また、標準よりもインクが少なめに噴
射される噴射ノズル200については、駆動信号の最高電圧(V2)が高めになるように
、あるいは駆動信号の最低電圧(V1)が低めになるように、ゲート素子302のON/
OFFを切り換えるタイミングを修正する。こうすれば、複数の噴射ノズル200の間に
、製造バラツキによる噴射量のバラツキが存在する場合でも、これを簡単に補正すること
が可能となる。
【0048】
D.変形例 :
上述した本実施例には、幾つかの変形例が存在している。以下では、これらの変形例に
ついて簡単に説明する。尚、以下に説明する変形例では、上述した本実施例に対する相違
点を中心として説明し、特に言及しない構成については、上述した本実施例と同様である
。そして、上述した本実施例と同様な構成については、変形例においても同じ符番を付け
ることとして、説明は省略する。
【0049】
D−1.第1の変形例 :
上述した本実施例では、圧電素子204に駆動信号を印加することによって、噴射ノズ
ル200からインクを噴射するものとして説明した。しかし本実施例の方法によれば、ゲ
ート素子302のON/OFFを切り換えるタイミングによって、駆動信号を柔軟に変化
させることができるから、噴射ノズル200からインクが噴射されないような駆動信号を
印加することもできる。
【0050】
図8は、第1の変形例で圧電素子204に印加される駆動信号を例示した説明図である
。図示した例では、基準電圧波形の電圧が初期電圧Viniまで上昇したタイミング(時
間t1)でゲート素子302をONにし、その後、少しだけ電圧が上昇して電圧V4に達
したタイミング(時間t18)でゲート素子302をOFFにする。そしてその状態を、
基準電圧波形の繰返周期Tpの二周期分に相当する時間だけ維持した後、基準電圧波形の
電圧が上限電圧Vmaxから低下して電圧V4に達したタイミング(時間t20)でゲー
ト素子302をONにし、その後、基準電圧波形の電圧が初期電圧Viniまで低下した
ら、再びゲート素子302をOFFにする。このようにすれば、図8に太い実線で示した
ように、初期電圧Viniから電圧V4まで上昇して、その電圧V4を暫く保った後、再
び初期電圧Viniまで低下するような駆動信号を圧電素子204に印加することができ
る。そして、このような駆動信号が印加されると、電圧が初期電圧Viniから電圧V4
に上昇することによってインク室202の容積が少しだけ増加する。しかし増加量が少な
いため、インクカートリッジ26からの新たなインクがインク室202に吸い込まれるこ
とはなく、噴射ノズル200付近のインクがインク室202内に引き込まれるに過ぎない
。その後、駆動信号の電圧が電圧V4から初期電圧Viniに低下すると、インク室20
2の容積も元の容積まで減少する。この時の容積の減少量も僅かなので、インク室202
内に引き込まれていたインクが噴射ノズル200付近に戻るだけで、噴射ノズル200か
ら噴射されることはない。
【0051】
そして、図8に示すように、このような駆動信号を繰り返して圧電素子204に印加し
てやれば、噴射ノズル200付近のインクをインク室202内に引き込んだり、インク室
202内から噴射ノズル200付近に戻したりすることを繰り返すことができる。その結
果、噴射ノズル200付近のインクが撹拌されるので、インクの水分が蒸発、あるいは揮
発成分の揮発によって噴射ノズル200のインクが変質することを回避することができる
。このような駆動信号を印加することも、ゲート素子302のON/OFFのタイミング
を制御するだけで実現することが可能となる。
【0052】
D−2.第2の変形例 :
また、上述した実施例では、繰返周期Tpで基準電圧波形が繰り返し出力されており、
複数の周期に亘って基準電圧波形が出力されている間に、適切なタイミングでゲート素子
302のON/OFFを切り換えることによって駆動信号を印加している。従って、ゲー
ト素子302のON/OFFを切り換えるタイミングを、基準電圧波形の一周期分だけず
らしてやれば、噴射ノズル200からインクを噴射するタイミングをずらすこともできる

【0053】
図9は、第2の変形例で噴射ノズル200からインクを噴射するタイミングをずらす様
子を例示した説明図である。図9に示される駆動信号は、図6を用いて前述した駆動信号
と同じであるが、図9に示した例では、図6の場合に比べて、基準電圧波形の一周期分だ
け遅れている。もちろん、複数周期分だけ遅れたタイミングで駆動信号を印加することも
できる。更には、基準電圧波形の一周期分あるいは複数周期分だけ早いタイミングで駆動
信号を印加することも可能である。従って、複数の噴射ノズル200の中の所望の噴射ノ
ズル200については、他の噴射ノズル200とは異なるタイミングでインクを噴射する
ことも可能となる。
【0054】
D−3.第3の変形例 :
また、上述した実施例あるいは変形例では、図5に示した基準電圧波形、すなわち、下
限電圧Vminから上限電圧Vmaxまでは繰返周期Tpのほぼ半分の時間(Tr≒0.
5Tp)で直線的に上昇し、残った繰返周期Tpのほぼ半分の時間(Tf≒0.5Tp)
で、上限電圧Vmaxから下限電圧Vminまで直線的に低下するような波形であるもの
として説明した。しかし、基準電圧波形は、このような波形に限らず種々の波形を用いる
ことができる。
【0055】
図10は、種々の基準電圧波形を例示した説明図である。たとえば、図10(a)に示
した基準電圧波形では、下限電圧Vminから上限電圧Vmaxまでは、繰返周期Tpの
半分よりも長い時間(Tr>0.5Tp)をかけてゆっくりと上昇し、上限電圧Vmax
から下限電圧Vminまでは、繰返周期Tpの半分よりも短い時間(Tf<0.5Tp)
で急激に低下する。このような基準電圧波形を用いれば、インク室202の容積が増加す
る際にはゆっくりと増加する。このため、噴射ノズル200付近のインクを大きく動かす
ことなく、インクカートリッジ26から静かにインク室202にインクを吸い込むことが
できる。インク室202の容積が減少する際には急激に減少する。このため、噴射ノズル
200から速い速度でインクを噴射することが可能となる。
【0056】
また、図10(b)に示すように、正弦波、あるいは上限電圧Vmaxや下限電圧Vm
in付近では電圧がゆっくりと変化するような波形を、基準電圧波形として用いることが
できる。図5や図10(a)に例示したに示した三角波に比べれば、上限電圧Vmaxや
下限電圧Vmin付近では電圧がゆっくりと変化するような波形(特に正弦波)は容易に
生成することができる。このため、第3の変形例では、基準電圧波形発生回路110を簡
単な構造によって実現することが可能となる。
【0057】
D−4.第4の変形例 :
上述した実施例あるいは変形例においては、基準電圧波形の繰返周期Tpは駆動信号に
対して十分に短い周期であればよいものとして説明した。すなわち、複数周期の基準電圧
波形が出力される間に、ゲート素子302を適切なタイミングでON/OFFすることに
よって駆動信号を印加するから、基準電圧波形の繰返周期Tpは、所望の駆動信号が得ら
れる程度に、十分に短ければよいものとして説明した。
【0058】
しかし上述したように、駆動信号が圧電素子204に印加されると、インク室202の
容積が増減し、容積が減少する際にインク室202内のインクが噴射ノズル200から噴
射される。そして、インク室202と、そのインク室202に噴射ノズル200が設けら
れて、内部にインクが満たされている構造は、インク室202の容積や、噴射ノズル20
0の開口面積や、インクの物性(粘度、比重など)によって定まる固有振動周期Tcを有
している。この固有振動周期Tcとの関係では、繰返周期Tpを次のような周期に設定す
ることが望ましい。
【0059】
図11は、噴射ノズル200からインクを噴射した後、噴射直後のインク室202の容
積をそのまま保持した場合に、噴射ノズル200付近のインク界面がどのような動きをす
るかを示した説明図である。図11(a)には、繰返し周期Tp(立上がり時間Tr、立
下がり時間Tf)である基準電圧波形(破線)と、圧電素子204に印加される駆動信号
(太い実線)と、圧電素子204の伸縮に伴うインク室202の容積変化、および噴射ノ
ズル200付近でのインクの動きが模式的に示されている。また、図11(b)には、噴
射ノズル200付近でのインク界面の変位が示されている。
【0060】
図示されるように、駆動信号の電圧が初期電圧Viniの初期状態では、インク室20
2は変形しておらず、噴射ノズル200のほぼ先端までインクが満たされた状態となって
いる。その後、駆動信号の電圧を上昇(図11(a)では上限電圧Vmaxまで上昇)さ
せると、圧電素子204が収縮してインク室202の容積が増加する。その結果、噴射ノ
ズル200の先端付近にあったインク界面が、インク室202に向かって一時的に引き込
まれる。
【0061】
その後、駆動信号の電圧を初期電圧Viniよりも低い電圧まで一気に低下(図11(
a)に示した例では下限電圧Vminまで低下)させると、インク室202内のインクが
一気に押し出されて噴射ノズル200から噴射される。図11(a)には、駆動信号の電
圧が上限電圧Vmaxから下限電圧Vminまで一気に低下した時に、インク室202内
のインクが噴射ノズル200から押し出されて、液滴として噴射される様子が模式的に示
されている。
【0062】
噴射ノズル200からインクが噴射されると、噴射されたインクの分だけインク界面の
位置は後退する。しかし、インク室202内に残ったインクも、慣性によって噴射ノズル
200の方向に向かっているので、インク界面は、後退した位置から噴射ノズル200の
出口側に向かって前進しようとする。ここで、図11(a)に示したように、インクを噴
射した直後の駆動信号の電圧(図11(a)では下限電圧Vmin)をそのまま維持した
とすると、噴射直後は噴射ノズル200の出口側に向かっていたインクの流れはやがて収
まって、その反動で今度はインク室202内に戻る方向に流れようとする。このインク室
202内に戻ろうとするインクの流れは次第に強くなるが、やがて収まった後、再び噴射
ノズル200の出口側に向かってインクが流れるようになる。このように、インクの噴射
完了後、そのままの状態を保つと、インク室202内には噴射ノズル200の出口側に向
かう流れと、インク室202内に戻ろうとする流れとが交互に発生し、この周期はインク
室202の固有振動周期Tcとなる。図11(b)には、このようなインクの動きに伴っ
て、噴射ノズル200付近でインク界面の位置が変化する様子が示されている。
【0063】
このようなインク界面の振動は時間の経過と共に次第に減衰していくが、まだインク界
面の振動が残存している状態で圧電素子204に駆動信号を印加すると、圧電素子204
の伸縮によるインク界面の動きが、残存するインク界面の振動の影響によって乱されてし
まうため、正常にインクを噴射することができなくなる。従って、インクの噴射後に生じ
るインク界面の振動は、できるだけ早めに減衰することが望ましい。そして、インク界面
の振動を減衰させるためには、インク室202内のインクが噴射ノズル200の出口方向
に流れようとしているときに、インク室202の容積を増加(駆動信号の電圧を上昇)さ
せればよい。こうすれば、噴射ノズル200の出口方向に向かうインクの流れが、インク
室202の容積増加に伴ってインクを引き戻そうとする力によって打ち消されるので、イ
ンク界面の振動を速やかに減衰させることができる。
【0064】
図11(b)で言えば、インクの噴射後に噴射ノズル200のインク界面が大きく後退
して、その後退の動きが反転に転じた時点から暫くの期間(図中に「A」と表示、具体的
には、固有振動周期Tcの半分の期間)が、インク室202内のインクに噴射ノズル20
0の出口方向に向かう流れが生じる期間となる。従って、インクを噴射するために最低電
圧(ここでは下限電圧Vmin)まで低下させた駆動信号の電圧を、最高電圧(ここでは
上限電圧Vmax)から低下させるタイミング(ここでは時間t3)から固有振動周期T
cの期間が経過した後、図中「A」の期間内で初期電圧Viniまで戻してやればよい。
そして、このためには、図11(b)に示したように、基準電圧波形の繰返周期Tpおよ
び立下がり期間Tfは、インク室202の固有振動周期Tcに対して、次の(式1)を満
たす範囲に設定しておけばよい。
Tc ≦ n・Tp+Tf ≦ 1.5Tc ・・・・・(式1)
ここで、nは自然数であり、図11に示した例ではn=2となる。このようにしておけば
、インクの噴射後、インク室202のインクが噴射ノズル200の出口方向に流れようと
している期間中に、駆動信号の電圧を初期電圧Viniに戻すことができるので、インク
界面の振動を速やかに減衰させることが可能となる。
【0065】
尚、より効果的にインク界面の振動を減衰させるためには、インク室の202内のイン
クが噴射ノズル200の出口方向に流れようと加速している期間(図中「A」の前半)内
でインク室202の容積を増加(駆動信号の電圧を上昇)させればよい。従って、基準電
圧波形の繰返周期Tpは、インク室202の固有振動周期Tcに対して、次の(式2)で
示される周期に設定しておけばよい。
Tc ≦ n・Tp+Tf ≦ 1.25Tc ・・・・・(式2)
このようにしておけば、インクの噴射後、インク室202のインクが噴射ノズル200の
出口方向に流れようと加速している期間中に、駆動信号の電圧を初期電圧Viniに戻す
ことができるので、インク界面の振動をより速やかに減衰させることが可能となる。
【0066】
また、上述したようなインクの界面の振動を利用して噴射されるインクの速度を向上さ
せるために、繰返周期Tpを次のような周期に設定することが望ましい。図12は、駆動
信号の電圧が初期電圧Viniから駆動信号の電圧を上昇した後、インク室202の容積
をそのまま保持した場合に、噴射ノズル200付近のインク界面がどのような動きをする
かを示した説明図である。図12(a)には、繰返し周期Tp(立上がり時間Tr、立下
がり時間Tf)である基準電圧波形(破線)と、圧電素子204に印加される駆動信号(
太い実線)と、圧電素子204の伸縮に伴うインク室202の容積変化、および噴射ノズ
ル200付近でのインクの動きが模式的に示されている。また、図12(b)には、噴射
ノズル200付近でのインク界面の変位が示されている。
【0067】
上述したように、駆動信号の電圧が初期電圧Viniの初期状態から駆動信号の電圧を
上昇(図12(a)では上限電圧Vmaxまで上昇)させると、圧電素子204が収縮し
てインク室202の容積が増加する。その結果、噴射ノズル200の先端付近にあったイ
ンク界面が、インク室202に向かって一時的に引き込まれるが、やがて収まった後、イ
ンク界面は元の位置(噴射ノズル200の先端付近)に向かって戻っていく。このとき、
インク室202のインクが噴射ノズル200の出口方向に流れようと加速しているので、
この加速に乗じてインク室200の容積を減少(駆動信号の電圧を下降)させると、イン
ク室202内のインクがより加速されて噴射ノズル200から噴射される。
【0068】
図12(b)で言えば、駆動信号の電圧が初期電圧Viniの初期状態から駆動信号の
電圧を上昇させて、噴射ノズル200のインク界面が大きく後退して、その後退の動きが
反転に転じた時点から暫くの期間(図中に「B」と表示、具体的には、固有振動周期Tc
の1/4の期間)が、インク室202内のインクが噴射ノズル200の出口方向に流れよ
うと加速する期間となる。従って、駆動信号の電圧が初期電圧Viniの初期状態から駆
動信号の電圧を上昇から上昇させるタイミング(ここでは時間t1)から固有振動周期T
cの半分の期間(0.5Tc)が経過した後、図中「B」の期間内で駆動信号の電圧を下
降し始めればよい。そして、このためには、図12(b)に示したように、基準電圧波形
の繰返周期Tpおよび立上がり期間Trは、インク室202の固有振動周期Tcに対して
、少なくとも次の(式3)に示される範囲に設定しておけばよい。
0.5Tc ≦ m・Tp+Tr ≦ 0.75Tc ・・・・・(式3)
ここで、mは自然数であり、図12ではm=1となる。このようにしておけば、インク室
202のインクが噴射ノズル200の出口方向に流れようと加速している期間中に、駆動
信号の電圧を下降させることができるので、噴射されるインクの速度をより大きくするこ
とが可能となる。
【0069】
尚、上述した実施例あるいは変形例で説明した条件(Tr≧0.5Tp)を考慮すると
、少なくとも基準電圧波形の繰返周期Tpは、インク室202の固有振動周期Tcの半分
以下であることが望ましい。加えて、「式1」のnを2以上の値に設定することで、噴出
されるインクの速度の向上と、インク界面の振動の減衰を効率的に両立することが可能と
なる。
【0070】
D−5.第5の変形例 :
また、上述した実施例あるいは変形例では、圧電素子駆動回路100が、インクジェッ
トプリンター10の噴射ヘッド24に搭載された圧電素子204を駆動するものとして説
明した。しかし、噴射ヘッド24の圧電素子204に限らず、たとえばインクジェットプ
リンター10以外の流体噴射装置にアクチュエーターとして搭載された圧電素子を駆動す
る場合にも、上述した圧電素子駆動回路100を好適に適用することができる。
【0071】
図13は、圧電素子を用いて液体を噴射する流体噴射装置70を例示した説明図である
。例示した流体噴射装置70は、大きく分けると、流体をパルス状に噴射する噴射ユニッ
ト80と、噴射ユニット80から噴射される流体を噴射ユニット80に向けて供給する流
体供給手段90と、噴射ユニット80および流体供給手段90の動作を制御する制御ユニ
ット75などから構成されている。
【0072】
噴射ユニット80は、金属製の第2ケース83に、同じく金属製の第1ケース84を重
ねた構造となっており、第2ケース83の前面には円管形状の流体噴射管82が立設され
、流体噴射管82の先端にはノズル81が挿着されている。第2ケース83と第1ケース
84との合わせ面には、薄い円板形状の流体室85が設けられており、流体室85は、流
体噴射管82を介してノズル81に接続されている。また、第1ケース84の内部には、
アクチュエーターとしての圧電素子86が設けられており、圧電素子86を駆動すると流
体室85が変形して、流体室85の容積を変化させることが可能となっている。
【0073】
流体供給手段90は、噴射しようとする流体(水、生理食塩水、薬液など)が貯められ
た流体容器93から、第1接続チューブ91を介して流体を吸い上げた後、第2接続チュ
ーブ92を介して噴射ユニット80の流体室85内に供給する。流体供給手段90の動作
は、制御ユニット75によって制御されている。更に、制御ユニット75には圧電素子駆
動回路100が内蔵されており、この圧電素子駆動回路100が生成した駆動信号を供給
して圧電素子86を駆動することによって、噴射ユニット80のノズル81から流体をパ
ルス状に噴射する。
【0074】
このような流体噴射装置70においても、圧電素子86に印加する駆動信号を異ならせ
ることで、流体の噴射態様を異ならせることができる。そして、上述した本実施例あるい
は変形例の方法によって駆動信号を生成してやれば、複数種類の駆動信号を記憶しておか
なくても、圧電素子86に印加する駆動信号を変更することができる。このため、制御ユ
ニット75には、複数の駆動信号を記憶しておくための多くの記憶容量を確保しておく必
要がない。加えて、圧電素子駆動回路100に設けられたゲート素子302をON/OF
Fさせるタイミングを変更することによって、駆動信号の最高電圧、あるいは最低電圧を
細かく変更することができるので、噴射ユニット80の製造バラツキや経時変化による噴
射特性の違いを細かく補正して、安定した噴射特性を維持することが可能となる。
【0075】
以上、各種の圧電素子駆動回路100について説明したが、本発明は上記すべての実施
例や変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実
施することが可能である。例えば、薬剤や栄養剤を内包するマイクロカプセルを形成する
ことに用いる流体噴射装置など、医療機器を含む様々な電子機器を駆動するための圧電素
子を駆動する回路に対しても、本発明の圧電素子駆動回路100を好適に適用することが
できる。
【符号の説明】
【0076】
2…印刷媒体、 10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、
22…キャリッジケース、 24…噴射ヘッド、 26…インクカートリッジ、
30…駆動機構、 32…タイミングベルト、 34…ステップモーター、
40…プラテンローラー、 50…プリンター制御回路、 70…流体噴射装置、
75…制御ユニット、 80…噴射ユニット、 81…ノズル、
82…流体噴射管、 83…第2ケース、 84…第1ケース、
85…流体室、 86…圧電素子、 90…流体供給手段、
91…第1接続チューブ、 92…第2接続チューブ、 93…流体容器、
100…圧電素子駆動回路、 110…基準電圧波形発生回路、
150…ゲート素子制御回路、 200…噴射ノズル、 202…インク室、
204…圧電素子、 300…ゲートユニット、 302…ゲート素子、
Vmin…下限電圧、 Vini…初期電圧、 Vmax…上限電圧、
Tp…繰返周期、 Tc…固有振動周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を用いて流体室を変形させて該流体室の内部の流体を噴射する流体噴射装置に
用いられ、該圧電素子に駆動信号を印加する圧電素子駆動回路であって、
第1の電圧から、該第1の電圧よりも高い第2の電圧まで増加した後、該第2の電圧か
ら該第1の電圧まで減少する基準電圧波形を、所定の繰返周期で発生する基準電圧波形発
生手段と、
前記基準電圧波形発生手段と前記圧電素子との間に設けられて、該基準電圧波形発生手
段と該圧電素子とが電気的に接続された接続状態と、電気的に切断された切断状態とに切
り換えるスイッチと、
前記基準電圧波形の電圧の増減に合わせて前記スイッチを前記接続状態と前記切断状態
とに切り換えることによって、前記圧電素子に前記駆動信号を印加するスイッチ制御手段

を備える圧電素子駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電素子駆動回路であって、
前記流体噴射装置には、前記圧電素子が複数設けられており、
前記スイッチは、前記圧電素子に対して一つずつ設けられており、
前記スイッチ制御手段は、複数の前記スイッチについての前記接続状態と前記切断状態
とを、該スイッチ毎に個別に切り換える手段である
圧電素子駆動回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電素子駆動回路であって、
前記基準電圧波形発生手段は、前記流体室の固有振動周期の半分以下の前記繰返周期で
、前記基準電圧波形を発生する手段である
圧電素子駆動回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の圧電素子駆動回路と、
流体を噴射する噴射ノズルと、
前記圧電素子駆動回路によって前記駆動信号が印加されることで、前記噴射ノズルから
前記流体を噴射させ圧電素子と
を備える流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−223936(P2012−223936A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91798(P2011−91798)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】