説明

地すべり防止杭、地すべり防止方法及び地すべり防止杭の施工方法

【課題】地盤の剪断抵抗を迅速かつ簡潔に向上させ、地盤を安定化させることが可能な、新規かつ改良された地すべり防止杭、地すべり防止方法及び地すべり防止杭の施工方法を提供する。
【解決手段】鋼管からなる杭本体101と、杭本体の先端又は周面に螺旋状に設けられた螺旋状羽根110と、杭本体の周面に設けられ、杭本体が地盤面に接触して又は地中に配置されて螺旋状羽根との間の地盤に圧縮力を生じさせる支圧部120とを備える。上記杭本体は、周面に複数の貫通孔が設けられ、貫通孔は、地盤からの水を杭本体内部に通過させ、杭本体は、杭本体内部から地盤外部に水を排出してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地すべり防止杭、地すべり防止方法及び地すべり防止杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
盛土斜面又は切土斜面の地盤及び土留めされた地盤等に関して、これらの地盤を安定化させる技術がある。例えば、図11に示すように、地盤10は、地中にすべり面12を有し、すべり面12より法面側が移動層となり、すべり面12より地中の深い側が不動層となっている。複数の杭50がすべり面12よりも深く打設されることによって、地盤の剪断抵抗が補強され、地盤が安定化する。図11は、従来の地すべり防止杭50を示す側面図であり、地中の状態を示している。
【0003】
また、図12に示すように、複数のアースアンカー60が硬化したグラウト62によってすべり面12より深い位置で固定され、法面で支圧板64によって緊張されて固定される。アースアンカー60に引張り力を導入することによって、地盤内に圧縮力が与えられて、地盤の剪断抵抗を増加させる。その結果、地盤が安定化する。図12は、従来のアースアンカー60を示す側面図である。
【0004】
更に、特許文献1では、羽根付き回転杭を利用した斜面の安定化技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−115719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図11に示した例では、杭50を打設するため、杭50の外周より大きく掘削して掘削穴18を設ける必要がある。また、図12に示した例や特許文献1では、液状のグラウト62を地中に加圧注入し、グラウト62を硬化させる必要がある。そのため、いずれの方法でも、コストが高く工期がかかるという問題がある。特に、グラウト62を地中に注入する場合、地盤や地下水を汚染する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、地盤の剪断抵抗を迅速かつ簡潔に向上させ、地盤を安定化させることが可能な、新規かつ改良された地すべり防止杭、地すべり防止方法及び地すべり防止杭の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鋼管からなる杭本体と、杭本体の先端又は周面に螺旋状に設けられた螺旋状羽根と、杭本体の周面に設けられ、地盤面に接触して又は地中に配置されて螺旋状羽根との間の地盤に圧縮力を生じさせる支圧部とを備える地すべり防止杭が提供される。
【0009】
上記杭本体は、周面に複数の貫通孔が設けられ、貫通孔は、地盤からの水を杭本体内部に通過させ、杭本体は、杭本体内部から地盤外部に水を排出してもよい。
【0010】
上記杭本体の先端が開口され、杭本体は、杭本体の先端を閉鎖するように杭本体内部に板部材が設けられるか又は杭本体内部に砂が詰められ、杭本体は、板部材より地盤面側で地盤からの水を杭本体内部から地盤外部に水を排出してもよい。
【0011】
上記杭本体の地盤面側に位置する杭頭に設備機器が固定されてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記地すべり防止杭を用いて、杭本体の軸方向の抵抗力と軸直角方向の抵抗力によって、地盤のすべりに対する抵抗力を向上させる、地すべり防止方法が提供される。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記杭本体が地盤内に回転貫入されたときに杭本体が発揮する引き抜き耐力と、杭本体の貫入と同時に配置される又は杭本体の貫入の後から設置される支圧部を介して、地盤に圧縮力を生じさせる、地すべり防止方法が提供される。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記杭本体が地盤内に回転圧入されたときに螺旋状羽根の貫入によって生じる地盤反力により、地盤に圧縮力を生じさせる、地すべり防止方法が提供される。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、砂が内部に充填された鋼管からなる管本体と、管本体の周面に螺旋状に設けられた第一の螺旋状羽根とを有する管を地盤内に回転貫入するステップと、周面に複数の貫通孔が設けられ、中空の鋼管又は砂が充填された鋼管からなる杭本体と、杭本体の周面に螺旋状に設けられた第二の螺旋状羽根とを有する地すべり防止杭を管内部に回転貫入するステップと、砂を地盤に残して管を地盤から回転しながら撤去するステップと、杭本体の上部に設けられる支圧部を地盤面に接触又は地中に配置させるステップと、第二の螺旋状羽根と支圧部との間の地盤に圧縮力を生じさせるステップとを含む、地すべり防止杭の施工方法が提供される。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、周面に貫通した複数の貫通孔が設けられ、砂が内部に充填された鋼管からなら杭本体と、杭本体の周面に螺旋状に設けられた螺旋状羽根とを有する地すべり防止杭を地盤内に回転貫入するステップと、回転貫入と同時に又は回転貫入の後で、鋼管の内部に充填された砂に圧縮力を掛け、砂を鋼管の貫通孔から鋼管の外部へ排出するステップと、杭本体の上部に設けられる支圧部を地盤面に接触又は地中に配置させるステップと、螺旋状羽根と支圧部との間の地盤に圧縮力を生じさせるステップとを含む、地すべり防止杭の施工方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、地盤の剪断抵抗を迅速かつ簡潔に向上させ、地盤を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る地すべり防止杭を示す側面図である。
【図2】同実施形態に係る地すべり防止杭を示す側面図である。
【図3】同実施形態に係る地すべり防止杭の施工方法を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態に係る施工中の地すべり防止杭を示す側面図である。
【図5】同実施形態に係る施工中の地すべり防止杭を示す側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る地すべり防止杭の施工方法を示すフローチャートである。
【図7】同実施形態に係る砂が充填されたさや管を示す側面図である。
【図8】同実施形態に係る長軸方向に沿って切断した砂が充填されたさや管及び側面から見た地すべり防止杭を示す説明図である。
【図9】同実施形態に係るさや管及び地すべり防止杭を示す側面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るソーラーパネル及び地すべり防止杭を示す側面図である。
【図11】従来の地すべり防止杭を示す側面図である。
【図12】従来のアースアンカーを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る地すべり防止杭100について説明する。
本実施形態に係る地すべり防止杭100は、盛土斜面又は切土斜面の地盤10及び土留めされた地盤10等を安定化させるため、地盤10内に打設される。まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る地すべり防止杭100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る地すべり防止杭100を示す側面図である。
【0021】
地すべり防止杭100は、杭本体101と、螺旋状羽根110と、支圧板120からなる。
【0022】
杭本体101は、螺旋状羽根110が設けられた先端鋼管102と、互いに連結される複数の鋼管104からなる。地すべり防止杭100は、地盤10を開削することなく地表から回転貫入することによって打設できる。
【0023】
先端鋼管102は、所定長さ、所定管径を有する中空の鋼管部と、鋼管部の先端に設けられた螺旋状羽根110とからなる。螺旋状羽根110は、鋼管部の周面に1周又は1周以上にわたって螺旋状に取り付けられる。螺旋状羽根110は例えばドーナツ円板状の鋼板、又はドーナツ円板状の一部からなる鋼板で形成され、螺旋状羽根110の鋼板は、鋼管部から外側に所定の幅で張り出している。鋼管部と螺旋状羽根110とは、例えば溶接によって接続される。なお、鋼管部と螺旋状羽根110との接続は、嵌合やねじ結合によって接続する場合もある。
【0024】
更に、先端鋼管102の先端には、封止板(図示せず。)が設けられる。封止板は、鋼板で形成され、鋼管部と溶接によって接続される。
【0025】
先端鋼管102が地盤10に貫入され、螺旋状羽根110が回転することによって、打設方向前方の土が螺旋状羽根110の後方に移動する。このとき、その土の受動土圧が螺旋状羽根110や杭本体101の推進力になり、杭本体101を地中に貫入させることができる。先端鋼管102の先端に設けられた螺旋状羽根110が杭本体101を牽引するシステムであるため、直進性が高いという特徴を有する。
【0026】
また、杭本体101の回転貫入よって、地盤10は先端鋼管102、鋼管104の外周に圧密されるので、排出土が発生しない。なお、上記では、封止板が、先端鋼管102の先端に設けられる例を示したが、先端鋼管102の先端は、封止板が設けられず、開口されていてもよい。
【0027】
鋼管104は、所定長さ、所定管径を有する鋼管である。鋼管104は、先端鋼管102と接続される場合、螺旋状羽根110が設けられる側と反対側である先端鋼管102の後端側と接続される。また、鋼管104は、別の鋼管104とも接続される。鋼管104が順次接続されることによって、直線状の接続延長した杭本体101が形成される。なお、先端鋼管102と鋼管104との接続や、鋼管104相互の接続は、例えば溶接等によって行われる。
【0028】
支圧板120は、支圧部の一例であり、例えば板状部材であって、杭本体101の主に上部に設けられる。なお、本発明の支圧部は、板状の支圧板120に限定されず、ブロック状の部材でもよい。支圧板120は、杭本体101が地盤10内に回転貫入され設置位置まで到達したとき、板面が地盤面に接触して又は地中に配置される。支圧板120は、螺旋状羽根110との間の地盤10に圧縮力を生じさせる。地盤10に圧縮力が導入されることによって、地盤10の剪断抵抗を向上させることができる。
【0029】
地すべり防止杭100は、図2に示すように、地盤10内へ垂直方向に打設されてもよいし、地盤10の法面に対して鉛直方向等の地盤10内へ斜め方向に打設されてもよい。図2は、本実施形態に係る地すべり防止杭100を示す側面図である。また、図2には示していないが、地すべり防止杭100は、地盤10内へ水平方向に打設されてもよい。
【0030】
また、螺旋状羽根110は、図1に示すように、鋼板が先端鋼管102の鋼管部の周囲に約1周のみ螺旋状に設けられる場合に限定されない。例えば、図2の左側の地すべり防止杭100で示したように、鋼板が先端鋼管102の鋼管部の周囲に複数回螺旋状に設けられてもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る地すべり防止杭100の施工方法について説明する。図3は、本実施形態に係る地すべり防止杭100の施工方法を示すフローチャートである。図4及び図5は、本実施形態に係る施工中の地すべり防止杭100を示す側面図である。
【0032】
まず、杭本体101が回転装置20等によって斜面などの地盤10に回転貫入される(ステップS11)。まず、図4に示すように、螺旋状羽根110が設けられた先端鋼管102が地盤10に貫入される。そして、先端鋼管102が所定の深さに到達したら、先端鋼管102に鋼管104が溶接などによって連結される。次に、図5に示すように、先端鋼管102と鋼管104が一体になった杭本体101が地盤10に貫入される。順次、鋼管104を連結していくことで、杭本体101を地盤10内のすべり面12より深く打設する。
【0033】
ここで、回転装置20は、先端鋼管102又は鋼管104を把持し、先端鋼管102、鋼管104を、管軸を中心として回転させる。回転装置20は、図3に示すように、地盤面に設置される。回転装置20は、先端鋼管102及び鋼管104を回転させることによって、先端鋼管102及び鋼管104を地盤10内に貫入させる。
【0034】
なお、本実施形態では、杭本体101が先端鋼管102と複数の鋼管104からなる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、杭本体101は、複数の鋼管を接続して構成されるのではなく、1本の鋼管から構成されてもよい。このときは、溶接などの連結作業をすることなく、地盤10内に杭本体101を貫入できる。
【0035】
杭本体101が設置深さに到達した場合(ステップS12)、螺旋状羽根110と支圧板120との間の地盤10に圧縮力が導入される(ステップS13)。
【0036】
地盤10内への圧縮力の導入は、次の2通りがある。
一つの方法は、杭本体101を設置深さまで打設し終えた後、ジャッキ装置を杭本体101付近に設置する。そして、ジャッキ装置が杭本体101を反力にとって、支圧板120を地盤面に押圧する。このとき、ジャッキ装置の値によって、螺旋状羽根110と支圧板120との間の地盤10に導入する圧縮力を管理できる。その後、支圧板120を杭本体101に溶接などによって固定して、地盤10内への圧縮力の導入を完了する。
【0037】
別の方法は、杭本体101の回転貫入の最終段階で、支圧板120を杭本体101に溶接などによって固定する。そして、螺旋状羽根110の推進力を利用して、回転装置20が地すべり防止杭100全体を地盤10内に回転貫入する。その結果、支圧板120によって、螺旋状羽根110と支圧板120との間の地盤10に圧縮力を導入できる。このとき、回転装置20の回転トルクの大きさで地盤10に導入する圧縮力を管理できる。所定の圧縮力導入が確認された後、地盤10内への圧縮力の導入を完了する。
【0038】
以上、本実施形態によれば、地すべり防止杭100を回転貫入することによって、地盤10が杭本体101周囲に圧密され、杭本体101周辺の地盤10の密度が上がる。これによって、地すべり防止杭100の水平地盤反力が大きくなり、杭本体101自身の負担剪断耐力を増大させる。その結果、地すべり防止杭100を打設することによって、盛土斜面又は切土斜面の地盤10及び土留めされた地盤10等を安定化させることができる。
【0039】
図11に示すような従来例では、杭50の周囲に掘削穴18を設けて、杭50の打設後に掘削穴18を埋め戻している。そのため、地盤10の荷重バランスが悪くなったり、地下水の影響で地盤10の剪断抵抗が弱くなったりしやすいという問題がある。一方、本実施形態は、地盤10が杭本体101周囲に圧密され、杭本体101周辺の地盤10の密度が上がるため、従来例のような問題が生じにくい。また、本実施形態は掘削穴18がなく、土の埋め戻しが不要であるため、工期を短縮できる。
【0040】
また、地すべり防止杭100は、螺旋状羽根110による軸方向の抵抗力と、杭本体101の鋼管による軸直角方向の抵抗力を有する。更に、螺旋状羽根110による大きな推進力及び杭本体101の引き抜き抵抗を有するため、螺旋状羽根110と支圧板120によって地盤10に圧縮力を導入できる。その結果、地盤の拘束圧が増大し、地盤10の剪断抵抗(すべり抵抗)を増大させる。その結果、地すべり防止杭100を打設することによって、盛土斜面又は切土斜面の地盤10及び土留めされた地盤10等を安定化させることができる。
【0041】
更に、本実施形態は、図12に示すような従来例と異なり乾式工法であり、グラウト62を使用しない。そのため、土壌や地下水の汚染が発生する可能性が少なく、グラウト62の硬化にかかる時間が不要であるため工期を短縮できる。
【0042】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る地すべり防止杭100について説明する。
本実施形態に係る地すべり防止杭100は、図8及び図9に示すように、第1の実施形態で説明した地すべり防止杭100の構成に加えて、周面に貫通した複数の貫通孔130が設けられた孔空き回転杭である。図8は、本実施形態に係る長軸方向に沿って切断した砂32が充填されたさや管200及び側面から見た地すべり防止杭100を示す説明図である。図9は、本実施形態に係るさや管200及び地すべり防止杭100を示す側面図である。
【0043】
本実施形態の地すべり防止杭100が地盤10内に埋設されることによって、地盤10内の水を排水でき、移動層(崩壊部)の自重を減少させて、地盤10の剪断耐力を向上させる。
【0044】
地すべり防止杭100の杭本体101は、中空の鋼管又は砂が充填された鋼管である。貫通孔130は、杭本体101の内部と外部が貫通するように杭本体101の周面に形成された開口部である。貫通孔130は、杭本体101の周面に複数設けられる。
【0045】
杭本体101の内部には、杭本体101の先端の開口を閉鎖する板部材140が設置されるか又は砂(図示せず。)が充填される。板部材140又は内部に充填された砂は、地すべり防止杭100が地盤10内に回転貫入される際に、杭本体101内部に土が充填されることを防止できる。その結果、板部材140の設置位置や砂の充填位置を調整することで、貫通孔130が設けられた部分まで杭本体101の内部に土が充填されることがなくなる。
【0046】
なお、本発明では、板部材140を杭本体101の先端に設置してもよい。但し、杭本体101の先端ではなく、貫通孔130に影響を及ぼさない杭本体101の内部に板部材140を設置することで、回転貫入によって、杭本体101内部にある程度土を入り込ませることができる。その結果、板部材140が杭本体101の先端に設置される場合に比べて、杭本体101の貫入性が良くなる。
【0047】
地すべり防止杭100は、地盤10内に水平方向に設置される。又は、地すべり防止杭100の地盤10内よりも地盤面側が低くなるように斜め方向に設置される。これにより、杭本体101内部の水を重力で外部に排出できる。なお、地すべり防止杭100の地盤10内よりも地盤面側が高くなるように斜め方向に設置されてもよい。この場合、杭本体101内部の水を排水するため、ポンプを設置し、吸引してもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る地すべり防止杭100の施工方法について説明する。図6は、本実施形態に係る地すべり防止杭100の施工方法を示すフローチャートである。図7は、本実施形態に係る砂32が充填されたさや管200を示す側面図である。
【0049】
まず、図7に示すように、内部に砂32が充填されたさや管200が地盤10内に回転貫入される(ステップS21)。さや管200の周面には螺旋状羽根210が設けられ、回転装置がさや管200を地盤10内に回転貫入できる。さや管200の先端部には、さや管200の回転貫入時に地盤10がさや管200内部に入り込まないように、薄鉄板(図示せず。)などによって閉鎖することもある。
【0050】
次に、図8に示すように、砂32が充填されたさや管200内部に、地すべり防止杭100(孔空き回転杭)が回転貫入される(ステップS22)。地すべり防止杭100の螺旋状羽根110の外径は、さや管200の内径よりも小さい。地すべり防止杭100は、さや管200の先端部に設けられた薄鉄板を貫通して、設置深さまで回転貫入される。
【0051】
地すべり防止杭100が設置深さまで設置された後、図9に示すように、回転装置がさや管200を逆回転することによって、さや管200を地盤10内から撤去する(ステップS23)。このとき、さや管200内部に充填されていた砂32は地盤10内に残留するようにする。この結果、図9に示すように、地盤10内に打設された地すべり防止杭100の周囲に、砂32が配置された状態になる。
【0052】
地すべり防止杭100が、粘土質の土が含まれる地盤10に直接貫入される場合に比べて、砂32に貫入されることによって、貫通孔130は目詰まりすることがない。従って、貫通孔130は、地すべり防止杭100が打設されたのち、地盤10内の水を地すべり防止杭100内部に効率良く導くことができる。
【0053】
そして、第1の実施形態と同様に地盤面に接触するように支圧板120が設置され、螺旋状羽根110と支圧板120の間に圧縮力が導入される。
【0054】
盛土斜面又は切土斜面の地盤10及び土留めされた地盤10等は、雨による含水率の増大による崩壊部の自重の増加や、図9に示すような地下水位16A,16Bの上昇による地盤10の有効応力の減少による剪断耐力の低下によって、崩壊が発生する。従って、地盤10内の地下水を排水することによって、地盤10の安定化を図ることができる。
【0055】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、地すべり防止杭100は、螺旋状羽根110による大きな推進力及び杭本体101の引き抜き抵抗を有するため、螺旋状羽根110と支圧板120によって地盤10に圧縮力を導入できる。その結果、内部摩擦角φが増大し、地盤10の剪断抵抗(すべり抵抗)を増大させる。その結果、地すべり防止杭100を打設することによって、盛土斜面又は切土斜面の地盤10及び土留めされた地盤10等を安定化させることができる。
【0056】
更に、本実施形態は、地盤10内の水を排水することによって、崩壊部の自重を減らし、地盤10の剪断耐力を向上させる。
【0057】
また、従来、新設の盛土では孔空き排水管(ドレーン管)を盛土の形成と共に容易に設置することができたが、切土や既設の盛土では孔空き排水管を設置しにくいという問題があった。そのため、水圧に耐えられるような擁壁が斜面に形成されていた。一方、本実施形態によれば、砂32が充填されたさや管200を用いることで、貫通孔130が設けられた地すべり防止杭100を目詰まりさせることなく地盤10内に容易に埋設できるうえ、水圧に耐えなければならない擁壁の形成が不要になる。
【0058】
なお、図7〜9では、擁壁14が斜面に形成されている。この擁壁14は、地すべり防止杭100を打設した後も、設置したままとしてもよいが、地すべり防止杭100が打設された後、地盤10の安定性が確認される場合は、擁壁14を撤去してもよい。擁壁14の設置及び撤去については、貫通孔130がない第1の実施形態に係る地すべり防止杭100の打設の場合も同様である。
【0059】
また、上述した第2の実施形態では、目詰まりを防止するため、地すべり防止杭100が施工される前に、内部に砂21が充填されたさや管200が埋設される。そして、さや管200内に地すべり防止杭100が設置された後、さや管200が地盤10内から撤去される。一方、さや管200の設置を省略する方法によって、第2の実施形態に係る地すべり防止杭100を設置することもできる。
【0060】
まず、周面に貫通孔130を有し、内部に砂が充填された地すべり防止杭100を地盤10内に回転貫入する。そして、回転貫入と同時に又は回転貫入の後で、地すべり防止杭100の内部に充填された砂に圧縮力を掛け、砂を貫通孔130から地すべり防止杭100の外部へ排出する。この施工方法によれば、地すべり防止杭100内部から砂が排出されることによって、地すべり防止杭100の周囲に砂を配置でき、貫通孔130の目詰まりも防止できる。
【0061】
地すべり防止杭100の内部に充填された砂に圧縮力を掛け、貫通孔130から砂を外部に排出するには、地盤面側の杭頭にコンプレッサーを取り付けて空気圧を作用させる方法がある。又は、地すべり防止杭100の内部に、地すべり防止杭100の内径より小さい杭を押しこむ方法がある。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係る地すべり防止杭100について説明する。図10は、本実施形態に係るソーラーパネル40及び地すべり防止杭100を示す側面図である。
【0063】
第1の実施形態で説明したように、地すべり防止杭100を地盤10に打設した後、本実施形態では、杭本体101の地盤面側に位置する杭頭にソーラーパネル40等の設備機器が固定される。即ち、地すべり防止杭100は、杭本体101の引き抜き耐力を利用して、斜面に設置する設備の基礎にすることもできる。
【0064】
また、ソーラーパネル40等の板状の設備機器は、風を受けた際にあおられるが、本実施形態は、地すべり防止杭100に螺旋状羽根110が設けられているため、引き抜きに強い。そして、斜面は、第1の実施形態と同様に安定化されているため、従来の基礎に比べて安定して設備機器を設置できる。
【0065】
なお、ソーラーパネル40を設置する場合、図10に示すように、複数の地すべり防止杭100の杭頭を使用してもよい。このとき、地すべり防止杭100の螺旋状羽根110は、引き抜き強度等を考慮して、図10に示すように、地すべり防止杭100毎に螺旋状羽根110の巻回数や形状が異なるものを打設してもよいし、図10と異なり、すべて同一の地すべり防止杭100を打設してもよい。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
10 地盤
12 すべり面
14 擁壁
16A,16B 地下水位
18 掘削穴
20 回転装置
32 砂
40 ソーラーパネル
50 杭
60 アースアンカー
62 グラウト
64 支圧板
100 地すべり防止杭
101 杭本体
102 先端鋼管
104 鋼管
110,210 螺旋状羽根
120 支圧板
130 貫通孔
140 板部材
200 さや管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管からなる杭本体と、
前記杭本体の先端又は周面に螺旋状に設けられた螺旋状羽根と、
前記杭本体の周面に設けられ、地盤面に接触して又は地中に配置されて前記螺旋状羽根との間の地盤に圧縮力を生じさせる支圧部と
を備える、地すべり防止杭。
【請求項2】
前記杭本体は、周面に複数の貫通孔が設けられ、
前記貫通孔は、地盤からの水を前記杭本体内部に通過させ、
前記杭本体は、前記杭本体内部から地盤外部に前記水を排出する、請求項1に記載の地すべり防止杭。
【請求項3】
前記杭本体の先端が開口され、
前記杭本体は、前記杭本体の先端を閉鎖するように前記杭本体内部に板部材が設けられるか又は杭本体内部に砂が詰められ、
前記杭本体は、前記板部材より地盤面側で地盤からの水を前記杭本体内部から地盤外部に前記水を排出する、請求項2に記載の地すべり防止杭。
【請求項4】
前記杭本体の地盤面側に位置する杭頭に設備機器が固定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の地すべり防止杭。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の地すべり防止杭を用いて、前記杭本体の軸方向の抵抗力と軸直角方向の抵抗力によって、地盤のすべりに対する抵抗力を向上させる、地すべり防止方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の地すべり防止杭を用いて、前記杭本体が地盤内に回転貫入されたときに前記杭本体が発揮する引き抜き耐力と、前記杭本体の貫入と同時に配置される又は前記杭本体の貫入の後から設置される前記支圧部を介して、地盤に前記圧縮力を生じさせる、地すべり防止方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の地すべり防止杭を用いて、前記杭本体が地盤内に回転圧入されたときに前記螺旋状羽根の貫入によって生じる地盤反力により、地盤に前記圧縮力を生じさせる、地すべり防止方法。
【請求項8】
砂が内部に充填された鋼管からなる管本体と、前記管本体の周面に螺旋状に設けられた第一の螺旋状羽根とを有する管を地盤内に回転貫入するステップと、
周面に複数の貫通孔が設けられ、中空の鋼管又は砂が充填された鋼管からなる杭本体と、前記杭本体の周面に螺旋状に設けられた第二の螺旋状羽根とを有する地すべり防止杭を前記管内部に回転貫入するステップと、
前記砂を地盤に残して前記管を地盤から回転しながら撤去するステップと、
前記杭本体の上部に設けられる支圧部を地盤面に接触又は地中に配置させるステップと、
前記第二の螺旋状羽根と前記支圧部との間の地盤に圧縮力を生じさせるステップと
を含む、地すべり防止杭の施工方法。
【請求項9】
周面に貫通した複数の貫通孔が設けられ、砂が内部に充填された鋼管からなら杭本体と、前記杭本体の周面に螺旋状に設けられた螺旋状羽根とを有する地すべり防止杭を地盤内に回転貫入するステップと、
回転貫入と同時に又は回転貫入の後で、前記鋼管の内部に充填された前記砂に圧縮力を掛け、前記砂を前記鋼管の前記貫通孔から前記鋼管の外部へ排出するステップと、
前記杭本体の上部に設けられる支圧部を地盤面に接触又は地中に配置させるステップと、
前記螺旋状羽根と前記支圧部との間の地盤に圧縮力を生じさせるステップと
を含む、地すべり防止杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−2012(P2012−2012A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139643(P2010−139643)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】