説明

地上レーザスキャナ測量装置、測量装置及び測量方法

【課題】装置本体を測量現場に簡単に素早く据え付け可能にする。
【解決手段】地上レーザスキャナ測量装置Aは、レーザを計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標点データを取得する装置であって、装置本体1とPCとを有している。装置本体1には、傾きを測定する傾斜計102と、求心用の可視ポイントレーザ光を発する求心レーザ105と、可視ラインレーザ光を発するラインレーザ103と、ラインレーザ103とは反対向きに設けられ且つ可視ポイントレーザ光を水平に発するポイントレーザ104と、計測対象物の座標点に色を付けるためにスキャンニング範囲の画像を撮影する電子カメラ106等が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ光を計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標データを取得する地上レーザスキャナ測量装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
地上レーザスキャナ測量装置については、地上に設置した光波測距儀の一種であって、発射したレーザ光が物体に反射して戻ってくるまでの時間を距離に換算して地形・地物をあるがままの状態で3次元計測する基本機能を有している。最近ではスキャニング範囲を撮影するカメラが搭載され、計測された3次元座標にカメラの撮影画像を重ね合せて表示出力する機能を有するものが一般的となっている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−294128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例による場合、a)測量の前準備として装置の自位置座標及び方位等を多数の既知点を利用しつつ測量することが必要不可欠であり、その作業が大変である点、b)装置の自位置座標及び方位等に加えて装置の器械高を測定する作業が煩わしい点、c)カメラにプリズム等の光学系可動部が内蔵されており、取り扱いを慎重に行なうことが要求される点等、の理由により装置を測量現場に簡単に素早く据え付けることが困難という問題がある。これは地上レーザスキャナ測量装置だけの特有の問題ではなく、トータルステーション等の一般的に測量装置についても一部同様の問題が指摘されている。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みて創作されたものであり、その目的とするところは、上記した問題を改善することが可能な地上レーザスキャナ測量装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る地上レーザスキャナ測量装置は、レーザ光を計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標点データを取得する装置であって、装置本体の傾きを測定する傾斜計と、装置本体から下方に求心用の可視ポイントレーザ光を発する第1ポイントレーザ発生部と、装置本体からその周りの一方向に向けて垂直方向に延びた可視ラインレーザ光を発するラインレーザ発生部とを備えている。
【0007】
なお、傾斜計については、装置本体の傾きが測定可能であれば足り、測定形式や表示出力の形態が問われない。第1ポイントレーザ発生部については、プリズムやミラー等を介して可視ポイントレーザ光を下方の既知点に向けて発する形態でも良い。ラインレーザ発生部については、可視ラインレーザ光の発せられる角度等が任意であり、可視ラインレーザ光の延びる範囲を可変にしても良い。
【0008】
上記発明によると、傾斜計を通じて装置本体の傾きが測定可能であることから、装置本体を水平に簡単に据え付けることが可能となる。また、ポイントレーザ発生部から発せられた可視ポイントレーザ光を下方に位置する既知点に当てて位置合わせすることにより装置本体の自位置座標を把握することができ、ラインレーザ発生部から発せられた可視ラインレーザ光を周りに位置する既知点に当てて位置合わせすることにより装置本体の方位を把握することができる。このように装置本体の自位置座標及び方位等を簡単に測量することができ、その測量精度も周りの既知点の数や分布等に無関係である。よって、装置本体を測量現場に簡単に素早く据え付けることができ、この点で良好な測量作業を円滑に行なうことが可能となる。
【0009】
上記装置において、装置本体のヘッド部を回転駆動させる回転駆動部と、同装置の周辺に位置する既知点に配置されたターゲットセンサから送信された可視ラインレーザ光の同センサへの受光の有無を示すセンサ信号を受信する受信部と、前記ヘッド部の向きを当該既知点の方向にするために受信部を通じて入力されたセンサ信号に基づいて回動駆動部を動作させる自動追尾制御部とを更に備えるようにすることが好ましい。
【0010】
上記発明によると、可視ラインレーザ光がターゲットセンサに受光されるまで装置本体のヘッド部の向きが自動的に変わり、これに伴って可視ラインレーザ光が上記既知点に位置合わせされる。可視ラインレーザ光を上記既知点に当てて位置合わせする作業が不要となることから、この点で、装置本体を測量現場により一層簡単に素早く据え付けることが可能となる。
【0011】
上記装置において、ラインレーザ発生部とは反対向きに設けられ且つ可視ポイントレーザ光を水平に発する第2ポイントレーザ発生部を更に備えると良い。
【0012】
上記発明によると、下方に既知点がないような測量場所、例えば、トンネル内や建築物内等であっても左右の2箇所の既知点を用いて装置本体の自位置座標を測量することが可能となる。従来とは異なり多数の既知点を用いて装置本体の自位置座標を測量する必要がないことから、この点で装置本体を測量現場に簡単に素早く据え付けることが可能となる。
【0013】
本発明に係る他の地上レーザスキャナ測量装置は、装置本体の姿勢を表わす姿勢情報を測定する姿勢測定部と、装置本体の自位置座標を測定するGPS(Global Positioning System)測定部と、装置本体のヘッド部の方位を測定する電子コンパスとを備え、少なくともGPS測定部及び電子コンパスの各測定結果が計測対象物の座標データとともに出力可能になっている。
【0014】
なお、姿勢測定部については、傾斜計やチルトセンサ等があり、電子コンパス等に内蔵のチルトセンサを利用しても良く、装置本体の姿勢を表わす姿勢情報を単に表示出力する形態でもかまわない。GPS測定部及び電子コンパスについては、これらの測定結果を計測対象物の座標点データと関連付けて出力可能である限り、出力形態等が問われず、単に表示出力する形態でもかまわない。
【0015】
上記発明によると、姿勢測定部を通じて装置本体の姿勢を測定することが可能になる他、GPS測定部、電子コンパスを通じて装置本体の自位置座標、方位等を測定することが可能になる。このように装置本体の自位置座標及び方位等を簡単に測量することができる。よって、装置本体を測量現場に簡単に素早く据え付けることができ、この点で円滑で良好な測量作業を行なうことが可能となる。
【0016】
上記装置において、計測対象物の座標データにはGPS測定部にて得られた座標点データ取得時のGPS時間をスタンプすると良い。
【0017】
なお、計測対象物の座標データに対するGPS時間のスタンプについては、レーザスキャナによる座標点データ取得時の日時を示すGPS時間を計測対象物の座標点データと関連付けて出力すれば足り、その出力形態が問われない。
【0018】
上記発明によると、座標点データにGPS時間がスタンプされているので、他機との間で測定上の同期を取ることができ、これに伴って正確な時間軸で測定することでができ、測量の高精度化を図ることが可能になる。
【0019】
本発明に係る他の地上レーザスキャナ測量装置は、計測対象物の座標点に色を付けるために少なくともスキャンニング範囲の画像を撮影する電子カメラを備え、複数の電子カメラが装置本体のヘッド部に互いに向きを変えて固定されている。
【0020】
なお、電子カメラについては、レーザスキャナによる少なくともスキャンニング範囲を複数台で分担して撮影可能である限り、カメラの種類、数、配置上のピッチ間隔及び配列等が問われない。
【0021】
上記発明によると、電子カメラには従来装置とは異なり可動部がないことから測定の高精度化を図ることができる。また、耐久性に強いことから、装置本体を慎重に取り扱う必要がなくなり、この点で装置本体を測量現場に簡単に素早く据え付けることが可能となる。さらに、装置の構造が単純となり故障も少なくなるという別のメリットもある。
【0022】
上記装置において、複数の電子カメラのうち隣り合う同電子カメラにより画像をオーバーラップして撮影可能にすると良い。
【0023】
上記発明によると、隣り合う2台の電子カメラの撮影画像によりステレオ写真測量を行なうことも可能となり、装置としての高性能化が図られる。
【0024】
本発明に係る測量装置は、装置本体から下方に求心用の可視ポイントレーザ光を発するポイントレーザ発生部を備え、ポイントレーザ発生部としてレーザ距離計が使用され、当該レーザ距離計の測定結果が装置本体の器械高として出力可能になっている。
【0025】
なお、上記発明は地上レーザスキャナ測量装置だけの適用に止まらず、トータルステーションその他の一般的な測量装置にも同様に適用可能である。ポイントレーザ発生部については、プリズムやミラー等を介して可視ポイントレーザ光を下方の既知点に向けて発する形態でも良い。また、装置本体の器械高を単に表示出力する形態でもかまわない。
【0026】
上記発明によると、ポイントレーザ発生部としてレーザ距離計が使用されていることから装置本体の器械高を簡単に測定することができ、この点で装置本体を測量現場に簡単に素早く据え付けることが可能となる。また、ポイントレーザ発生部がレーザ求心と器械高の測定との双方を行なえることから、構成が単純となるという別のメリットもある。
【0027】
本発明に係る他の測量装置は、装置本体の外面上には別の測量装置による位置測定用の目印が設けられている。また、本発明に係る測量方法は、上記他の測量装置が地上レーザスキャナ測量装置である場合の方法であって、ターゲットセンサを別の測量装置に配置し、当該装置により位置測定用の目印を利用して地上レーザスキャナ測量装置の少なくとも自位置座標を測量するようにした。
【0028】
なお、上記他の測量装置は地上レーザスキャナ測量装置だけの適用に止まらず、トータルステーションその他の一般的な測量装置にも同様に適用可能である。位置測定用の目印については、目印が印字されたターゲットシート、プリズムシート等の他、装置本体の外面に形成された凹凸等があり、ターゲット台座や素子プリズムを用いてもかまわない。別の測量装置としては、トータルステーション、光波測距離儀、セオドライド又は地上レーザスキャナ測量装置等がある。使用する測量装置の種類や採用する測量方法については任意であり、これに応じて位置測定用の目印の数や配置等を適宜設定すれば良い。
【0029】
上記発明によると、適当な既知点がないような測定場所、例えば、トンネル内や建築物内等であっても別の測定装置により装置本体の自位置座標や器械高等を測量することが可能となる。従来とは異なり2箇所以上の既知点を用いて装置本体の自位置座標等を測定する必要がないことから、この点で装置本体を測量現場に簡単に素早く据え付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の地上レーザスキャナ測量装置の実施形態を説明するための図であって、同装置の装置本体の外観を示す右斜視図である。
【図2】同装置のハウジングを外した状態の装置本体の内部構造を示す一部省略右斜視図である。
【図3】同装置のハウジングを外した状態の装置本体の内部構造を示す一部省略左斜視図である。
【図4】同装置のハウジングを外した状態の装置本体の内部構造を示す平面図である。
【図5】同装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】同装置の装置本体により取得される測定データの内容を示す説明図である。
【図7】同装置の動作を説明するための装置本体の模式的正面図である。
【図8】同装置の電子カメラの各々の撮影範囲を模式的に示す説明図である。
【図9】同装置の使用方法の一例としてトンネル内を測量する場合を説明するための模式的説明図であって、(a)はトンネル内を示す断面図、(b)はトンネル内の平面図である。
【図10】本発明の測量方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図9を参照して説明する。なお、本発明の構成要件と実施例装置及び方法の構成要素との間で対応関係が不明なものについては、後記する符号の説明の欄において併せて示すものとする。
【0032】
ここに例として挙げられる地上レーザスキャナ測量装置Aは、図1に示すようにレーザ光を計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標点データ等を取得する装置であって、測量現場に実際に据え付けられる座標点データ等を計測する装置本体1と、装置本体1に図外のケーブルを通じて外部接続可能であり且つ装置本体1にて取得された座標点データ等を処理して計測対象物を3次元表示等をするPC(Personal Computer )2( 図5参照)とを有している。なお、PC2を省略して、その機能を装置本体1に移した形態であってもかまわない。
【0033】
装置本体1は、レーザスキャナ101等が備えられたヘッド部100と、ベース部100を回転自在及び傾き自在に支持するベース部200を有している。
【0034】
ベース部200については、測量用三脚であり、測量現場に合わせて簡易型三脚、エレベータ三脚等を選択して使用すれば良い。図1に示されたベース部200は簡易型三脚である。図中210は表面にヘッド部100が着脱自在に装着される整準台、220は整準台210を図中Q方向を回転軸として旋回可能に支持する底板、230は底板220の下側外寄り位置に120度ピッチ間隔に合計3本設けられた脚である。整準台210の外側には旋回ストッパ211が設けられ、整準台210の上面には回転用の歯車212(図2参照)が設けられている。底板220の外側には旋回微動ねじ221が設けられ脚230の各下端部には傾斜調整ねじ231が設けられている。
【0035】
旋回微動ねじ221を回転させると、整準台210が旋回微動ねじ221の回転に応じた方向にその回転量に応じた角度だけ回転する。即ち、旋回微動ねじ221を通じてベース部200の方位が調整可能になっている。一方、傾斜調整ねじ231を回転させると、当該脚230及び傾斜調整ねじ231を含めた全長が傾斜調整ねじ231の回転に応じて変化する。各傾斜調整ねじ231を独立し調整すると、整準台210の傾き及び高さが調整される。即ち、傾斜調整ねじ231を通じてヘッド部200の姿勢及び器械高が調整可能になっている。
【0036】
なお、ベース部200として簡易型三脚ではなく一般的な測量用三脚を用いた場合も同様であって、この場合は同三脚の整準ねじ等や昇降レバー等を通じてヘッド部200の向きや器械高が調整可能となる。
【0037】
ヘッド部100については、ディスプレイ130と本体170とを有する。ディスプレイ130は本体170に対して角度調整可能に設けられ、液晶表示器131及びコントローラ140が設けられている。ディスプレイ130の下方位置にはフラッシュメモリ142を入れるための角穴が形成され、その奥側には同メモリ142の接続端子(図外)が設けられている。液晶表示器131には下記傾斜計102により測定された装置本体1の傾き、下記求心レーザ105により測定されたヘッド部100の器械高等の各種データが表示出力可能となっている。液晶表示器131の画面中にはタッチ入力方式の操作ボタン144が設けられている。
【0038】
本体170には、レーザスキャナ101の他、ラインレーザ103、ポイントレーザ104、求心レーザ105、電子カメラ106、センサ受信器111、回転駆動部120、バッテリー150等が設けられている。図中160はレーザスキャナ101等を一部を除いて保護するハウジング、161はハウジング160に取り付けられた把手である。
【0039】
レーザスキャナ101については、図1中P方向を軸として図外のレーザ送受信ユニットが所定角度範囲(本実施形態では270°)で回転可能であり、同ユニットから発せられるレーザ光をスキャニングする構成となっている。同ユニットの角度やヘッド部100の向きはコントローラ140により制御されて変化する。と同時にレーザスキャナ101からレーザ光が発せられる。その後、計測対象物等に反射して戻ってきたレーザ光をレーザスキャナ101にて受光する。このような過程でレーザスキャナ101から導かれた受信データに基づいてコントローラ140により周知方法により計測対象物の座標データ(X座標値、Y座標値、Z座標値)に変換される。なお、図1中示すPQRの直交座標は装置本体1に割り当てられており、その原点は同ユニットの位置に設定されている。
【0040】
傾斜計102については、ヘッド部100の傾きを測定する傾斜センサであって、装置本体170の電子カメラ106の奥側位置に固定されている(図3参照)。
【0041】
なお、装置本体1を測量現場に据え付ける際のヘッド部100の傾きを機械的に測定するために本体170の上方位置には丸型の気泡管108が設けられている。
【0042】
ラインレーザ103については、装置本体170に設けられ且つ垂直方向に所定角度範囲延びた可視ラインレーザ光R1を発する半導体レーザ素子であり、−R方向に対して100°斜め上向きに配置され、本体170の下方位置に固定されている(図7参照)。
【0043】
ポイントレーザ104については、ヘッド部100にラインレーザ103とは反対向きに設けられ且つ可視ポイントレーザ光R2を水平(R方向に平行)に発する半導体レーザ素子であって、本体170の下方位置に固定されている(図7参照)。
【0044】
求心レーザ105については、装置本体1から下方(−Q方向)に求心用の可視ポイントレーザ光R3を発する半導体レーザ素子てあって、本体170のレーザスキャナ101の真下位置に−Q方向に向けて固定されている(図7参照)。本実施形態では求心レーザ105としてレーザ距離計が使用されている。求心レーザ105によりレーザ求心と器械高H(装置本体1が据え付けられた地点の地球面から上記PQR座標の原点までの距離)の測定との双方を行なっている。
【0045】
なお、求心レーザ105に係るレーザ距離計は、地球面から求心レーザ105までの距離を測定しているが、求心レーザ105から上記PQR座標の原点までの距離をオフセットとして加算し、当該加算結果を器械高Hとして出力するようになっている。
【0046】
電子カメラ106については、レーザスキャナ101により得られた計測対象物の座標点に色を付けるために少なくともスキャンニング範囲の画像を分担して撮影する合計6台のCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)カメラであり、装置本体170にP方向の軸回りに互いに向きを変えて固定されている。本実施形態では電子カメラ106を図8に示すように45°ピッチ間隔で取り付けられている。特に隣り合う電子カメラ106により画像がオーバーラップして撮影可能になっている。図8中の斜線部分はオーバーラップ部分を仮想的に示したものである。
【0047】
センサ受信器111については、ターゲットセンサ301から近赤外線等を用いて送信されたセンサ信号を受信する受信器であり、本体170の上方位置に固定されている。
【0048】
なお、ターゲットセンサ301は、例えば図7に示すように既知点T1上等に配置して使用されるレーザ受光センサであって、装置本体1のラインレーザ103から発せられた可視ラインレーザ光R1を受光したか否かの情報を近赤外線等のセンサ信号として送信する機能と、可視ラインレーザ光R1を受光するとLEDランプを点灯させる機能を併有している。
【0049】
回転駆動部120については、装置本体1のヘッド部100を回転駆動させる装置本体170に設けられたモータ機構であって、モータ121と、モータ121に連結された減速用のギアボックス122と、ギアボックス122の出力側に接続され且つ歯車123に噛み合う歯車123とを有している。回転駆動部120を動作させるのは、主としてレーザスキャナ101によるレーザスキャニング等を行なう場合であるが、後記するターゲットセンサ301を用いた自動追尾機能を発揮させる場合についても同様である。
【0050】
コントローラ140については、マイクロコンピュータを主とした制御回路であって、その入出力ポートには図5に示すようにレーザスキャナ101、傾斜計102、ラインレーザ103、ポイントレーザ104、求心レーザ105、電子カメラ105、モータ121、センサ受信器111、操作ボタン144、液晶表示器131、通信インターフェイス145等が接続されている。
【0051】
メモリ141のうち不揮発性メモリに相当する部分には装置本体1を制御するための制御プログラム4や各種変換処理等を行なうプログラム等が記録されている。また、メモリ141のうち揮発性メモリに相当する部分には、レーザスキャナ101から取り込んだ計測対象物の座標点データ(図6中測量データ2参照)、電子カメラ106により取得された撮影画像データ(図6中測量データ3参照)の他、傾斜計102から取り込んだヘッド部100の傾きを示す傾きデータ、求心レーザ105から取り込んだ器械高を示す器械高データ等が一時記録可能になっている。また、操作ボタン144の操作によりメモリ41に保持された測量データ等がフラッシュメモリ142に転送可能になっている。
【0052】
さらに、コントローラ140は、操作ボタン144を通じてターゲットセンサ301を用いた自動追尾が選択されると受信部111により受信されたターゲットセンサ301のセンサ信号に基づいて回動駆動部120を動作させる。これにより自動追尾機能が発揮されるようになっている。この場合、ヘッド部100のラインレーザ103側の側面がターゲットセンサ301に自動的に向き、ポイントレーザ104とラインレーザ103とを結ぶ光軸がターゲットセンサ301に位置合わせされる。
【0053】
次に、上記のように構成された地上レーザスキャナ測量装置Aの使用方法について説明する。
【0054】
まず、図7に示すように装置本体1を地上に設置された既知点T0上に置く。そして、液晶表示器131に表示された装置本体1の傾きや気泡管108を見ながら、ヘッド部100が水平になるように傾斜調整ねじ231を微調整し、求心レーザ105から発せられた可視ポイントレーザ光R3が既知点T0に位置合わせされるように整準台210等を微調整する。すると、装置本体1の自位置座標が既知点T1の座標に一致することになる。その後、ラインレーザ103から発せられた可視ラインレーザ光R1が既知点T1に位置合わせされるように旋回微動ねじ221を微調整する。
【0055】
特に既知点T1にターゲットセンサ301が取り付けられた場合、上記自動追尾が操作ボタン144を通じて選択されると、旋回微動ねじ221を微調整する手間をかけることなく、ヘッド部100が自動的に回転し、その方位が既知点T1に位置合わされる。これで装置本体1の据え付けが完了となる。
【0056】
もっとも、測量場所がトンネル内のように地面に既知点T0がないような場合、図9に示すようにして装置本体1を据え付けると良い。この場合、トンネルの両壁面に取り付けられた既知点T2、T3を使用し、装置本体1を既知点T2と既知点T3との間に置く。そして、ヘッド部100が水平になるように傾斜調整ねじ231を微調整する。この状態で、ラインレーザ103から発せられた可視ラインレーザ光R1が既知点T3に位置合せされ且つポイントレーザ104から発せられた可視ポイントレーザ光R2が既知点T2に位置合わせされるように、整準台210及び上記昇降レバー等を微調整する。これで装置本体1の据え付けが完了となる。
【0057】
この場合、既知点T2の座標を基準とし、ヘッド部100が向く方向に測量本体1と既知点T2との間の距離の分だけ位置変位させた座標が装置本体1の自位置座標となる。測量本体1と既知点T2との間の距離はメジャー等を用いて測定すれば良い。測定場所が建築物内等である場合についても同様の方法で装置本体1を据え付けると良い。
【0058】
このようにして装置本体1を据え付けた後、操作ボタン144を通じて測量開始が選択されると、レーザスキャナ101及び電子カメラ106が動作し、ヘッド部100の向きが自動的に変わり、レーザスキャニング等が行なわれる。このレーザスキャニング等の過程で得られた測量データがメモリ141等に記録される。メモリ141等に記録された測量データ等を用いて周知の変換処理を行なれると、測定対象物の三次元座標点に色が付けられた3次元表示を行なうことが可能となる。特に隣り合う電子カメラ106により撮影された両画像にはオーバーラップ部分が含まれていることから、両画像を用いてステレオ写真測量を行なうことも可能となる。
【0059】
上記のように構成された地上レーザスキャナ測量装置Aによる場合、ラインレーザ103及びポイントレーザ104を利用することにより装置本体1の自位置座標及び方位等を簡単に測定することができ、その測定精度も周りの既知点の数や分布等に無関係である。よって、装置本体1を測量現場に簡単に素早く据え付けることができ、良好な測量作業を円滑に行なうことが可能となる。
【0060】
ただ、測量場所がトンネル内や建築物内等であるときには適当な既知点がない場合には、装置本体1の自位置座標や器械高さ等を簡単に測量することが困難となる。この場合は、図10に示すように装置本体1の外面上(ラインレーザ103側の側面)に位置測定用の目印170を各々設け、トータルステーションTS等を用いて装置本体1の自位置座標や器械高さ等を測量すると良い。
【0061】
具体的には、トータルタステーションTSの上にターゲットセンサ301を取り付けるようにする。そしてトータルタステーションTSを既知点T4上に据え付け、装置本体1の自動追尾機能を利用してヘッド部100をトータルステーションTSの方向に自動的に向ける。その後、トータルステーションTSにより目印170を視準して既知点T4の座標点を用いて周知の測量方法により装置本体1の自位置座標や器械高さ等を測量する。この測量を行なう前提として装置本体1の上記PQR座標の原点に対する目印170の方向や距離の位置関係が予め求められているものとする。
【0062】
上記測量方法によっては、装置本体1に設ける目印170の数(2〜3が好ましい。)や位置を適宜設計変更すると良い。特に装置本体1の自動追尾機能を活用していることから、図10に示すように装置本体1を高い位置に据え付けることが必要な場合であっても特に問題なく測量を行なうことが可能となる。この測量方法は、次に説明する装置本体1’(但し、ラインレーザ103が備えられているものとする。)にも適用可能であり、地上レーザスキャナ測量装置だけの適用に止まらず、あらゆる測量装置に同様に適用可能である。
【0063】
次に装置本体1の変形例を図1乃至図5を借りて説明する。装置本体1とは機能の一部が異なることから装置本体1’として表すものとする。装置本体1’については、上記したラインレーザ103、ポイントレーザ104及び求心レーザ105の代わりに、GPSアンテナ107及び電子コンパス108が使用されている。装置本体1と異なる部分を中心として説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0064】
GPSアンテナ107については、GPS受信器110に接続されたアンテナであり、本体170の上方位置に固定されている。GPS受信器110及びGPSアンテナ107によりGPS(Global Positioning System)ユニットが構成され、装置本体1のヘッド部100の自位置座標(X座標値、Y座標値、Z座標値)が測定されるようになっている。
【0065】
電子コンパス108については、装置本体1のヘッド部1の向きである方位θを測定する地磁気センサであり、本体170の上方位置に固定されている。電子コンパス108にはチルトセンサが内蔵され、チルトセンサがヘッド部100の傾斜を測定している。即ち、傾斜計102及び同チルトセンサによりヘッド部100の姿勢情報(ヘッド部100の地球面に対する傾きを示すピッチ角p・ロール角r・ヨー角y)が測定されるようになっている。
【0066】
コントローラ140の入出力ポ―トには図5に示されているようにレーザスキャナ101、傾斜計102、電子カメラ105、モータ121等の他、電子コンパス108及びGPS受信機110等が接続されている。メモリ141の揮発性部分には図6に示す測量データ1、2が保持可能になっている。コントローラ140は、測量中においてGPS受信器110等から測定データ等を取り込み、下記の測量データ1、2及び3をメモリ141に保持させるようになっている。また、測量データ1に含まれるデータの一部を液晶表示器131に表示出力可能になっている。
【0067】
測量データ1については、図6中上段に示すような内容になっており、GPS受信器
110から取り込んだ位置データ取得時のGPS時間を示す取得時刻と、電子コンパス108から取り込んだヘッド部100の自位置座標を示す位置データと、電子コンパス108から取り込んだ装置本体1のヘッド部100の方位を示す方位データと、傾斜計102及び上記チルトセンサから取り込んだヘッド部100の姿勢情報を示す姿勢データと、求心レーザ105から取り込んだ器械高を示す器械高データを有している。
【0068】
測量データ2については、図6中段に示すような内容になっており、GPS受信器110から取り込んだGPS時間を示す取得時刻と、レーザスキャナ101から取り込み所定変換して得た計測対象物の座標データとを有している。
【0069】
測量データ3については、図6中下段に示すような内容になっており、GPS受信器110から取り込んだGPS時間を示す取得時刻と、電子カメラ106から各々取り込んだ撮影画像(画像1〜6)とを有している。
【0070】
上記のように構成された装置本体1’を用いた場合、上記GPSユニットが使用可能な測量場所である限り、ヘッド部100の自位置座標、方位、姿勢及び機械高さ等が自動的に測定される。そして、この測定結果を用いて電子コンパス108により取得された位置データ及び電子カメラ106により取得された撮影画像に対して補正を行なうことが可能となる。よって、測量場所や装置本体1’を据え付ける際の姿勢や高さ等を問うことなく、良好な測量作業を行なうことが可能となる。また、測量データ1、2及び3に取得時刻がスタンプされていることから、測量データ同士又は他械との間で測定上の同期を取ることができ、これに伴って正確な時間軸で測定することでき、測量の高精度化を図ることが可能となる。それ故、装置本体1’を測量現場に簡単に素早く据え付ることが可能となる。
【0071】
なお、本発明に係る地上レーザスキャナ測量装置は、レーザ光を計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標データを取得する機能を有する限り、いかなるタイプにも同様に適用可能である。スキャニング範囲を撮影するカメラを有しないものでも適用可能である。また、上記装置本体の全ての機能を実現する必要はなくその一部に止めて良く、三脚としてエレベータ三脚を使用したり、上記PCの機能を装置本体に含める形態にしてもかまわない。
【符号の説明】
【0072】
A 地上レーザスキャナ測量装置
1(1’) 装置本体
100 ヘッド部
101 レーザスキャナ
102 傾斜計(姿勢測定部の一部)
103 ラインレーザ(ラインレーザ発生部)
104 ポイントレーザ(第2ポイントレーザ発生部)
105 求心レーザ(第1ポイントレーザ発生部)
106 電子カメラ
107 GPSアンテナ(GPS測定部の一部)
108 電子コンパス(姿勢測定部の一部)
109 気泡管
110 GPS受信器(GPS測定部の一部)
111 センサ受信器(受信部)
120 回転駆動部
121 モータ
122 ギアボックス
123,124 ギア
140 コントローラ(自動追尾制御部としての機能を含む)
141 メモリ
142 フラッシュメモリ
144 操作ボタン
145 通信インターフェイス
150 バッテリー
160 ハウジング
161 把手
170 本体
200 ベース部
210 整準台
211 旋回ストッパ
220 底板
221 旋回微動ねじ
230 脚
231 傾斜調整ねじ
2 PC
301 ターゲットセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標点データを取得する地上レーザスキャナ測量装置において、装置本体の傾きを測定する傾斜計と、装置本体から下方に求心用の可視ポイントレーザ光を発する第1ポイントレーザ発生部と、装置本体からその周りの一方向に向けて垂直方向に延びた可視ラインレーザ光を発するラインレーザ発生部とを備えたことを特徴とする地上レーザスキャナ測量装置。
【請求項2】
請求項1記載の地上レーザスキャナ測量装置において、装置本体のヘッド部を回転駆動させる回転駆動部と、同装置の周辺に位置する既知点に配置されたターゲットセンサから送信された可視ラインレーザ光の同センサへの受光の有無を示すセンサ信号を受信する受信部と、前記ヘッド部の向きを当該既知点の方向にするために受信部を通じて入力されたセンサ信号に基づいて回動駆動部を動作させる自動追尾制御部とを更に備えたことを特徴とする地上レーザスキャナ測量装置。
【請求項3】
請求項1記載の地上レーザスキャナ測量装置において、前記ラインレーザ発生部とは反対向きに設けられ且つ装置本体から可視ポイントレーザ光を水平に発する第2ポイントレーザ発生部を更に備えたことを特徴とする地上レーザスキャナ測量装置。
【請求項4】
レーザ光を計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標点データを取得する地上レーザスキャナ測量装置において、装置本体の姿勢を表わす姿勢情報を測定する姿勢測定部と、装置本体の自位置座標を測定するGPS測定部と、装置本体のヘッド部の方位を測定する電子コンパスとを備え、少なくとも前記GPS測定部及び電子コンパスの各測定結果が計測対象物の座標点データとともに出力可能になっていることを特徴とする地上レーザスキャナ測量装置。
【請求項5】
請求項4記載の地上レーザスキャナ測量装置において、計測対象物の座標点データには前記GPS測定部にて得られた座標点データ取得時のGPS時間がスタンプされていることを特徴とする地上レーザスキャナ測量装置。
【請求項6】
レーザ光を計測対象物に向けて照射して水平方向及び垂直方向にスキャンニングを行い計測対象物の座標点データを取得する地上レーザスキャナ測量装置において、計測対象物の座標点に色を付けるために少なくともスキャンニング範囲の画像を撮影する電子カメラを備え、複数の電子カメラが装置本体のヘッド部に互いに向きを変えて固定されていることを特徴とする地上レーザスキャナ測量装置。
【請求項7】
請求項6記載の地上レーザスキャナ測量装置において、前記複数の電子カメラのうち隣り合う同電子カメラにより前記画像がオーバーラップして撮影可能になっていることを特徴とする地上レーザスキャナ測量装置。
【請求項8】
地上レーザスキャナ測量装置、トータルステーションその他の測量装置において、装置本体から下方に求心用の可視ポイントレーザ光を発するポイントレーザ発生部を備え、ポイントレーザ発生部としてレーザ距離計が使用され、当該レーザ距離計の測定結果が装置本体の器械高として出力可能になっていることを特徴とする測量装置。
【請求項9】
地上レーザスキャナ測量装置、トータルステーションその他の測量装置において、装置本体の外面上には別の測量装置による位置測定用の目印が設けられていることを特徴とする測量装置。
【請求項10】
請求項9の測量装置が請求項2の地上レーザスキャナ測量装置である場合の測量方法において、前記ターゲットセンサを前記別の測量装置に配置し、当該装置により前記位置測定用の目印を利用して地上レーザスキャナ測量装置の少なくとも自位置座標を測量したことを特徴とする測量方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−203196(P2011−203196A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72846(P2010−72846)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(308017582)ビジュアツール株式会社 (3)