説明

地上植物・水中植物による二酸化炭素吸収の促進システム、植物による二酸化炭素吸収の促進方法.

【課題】(1)二酸化炭素ガスを固定化して温室効果ガスを削減、地球温暖化の防止する(2)燃焼等で生じた二酸化炭素ガスを炭酸同化で炭水化物化して食糧に転換、食料問題解決の一助とする。
【解決手段】地上植物に対しては、マイクロバブラーで二酸化炭素バブリングさせ微小泡として含有させた二酸化炭素マイクロバブル水をミスト化して植物に噴霧する。水中植物に対しては、ミスト化は不要。二酸化炭素バブリングさせ微小泡として含有させた二酸化炭素マイクロバブル水を直接的に植物近傍の淡水・海水中に加える。ともに、生育植物をカバーする密閉大型構造物にて、構造物内部ガスを混合して吸収対象二酸化炭素を希薄化して所望の吸収をコントロールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルが生物の物質吸収を促進するという公知の知見から創案されたもので、マイクロバブルの微小泡をなす気体は、二酸化炭素成分濃度が比較的高いもの用いる。
【0002】
植物の二酸化炭素吸収は、非特許文献1の博士論文に記載されているように、周囲気体の二酸化炭素濃度に依存性がある。当然ながら、必ずしも濃度が濃ければ濃いほどよい、というものではなく、適切な濃度範囲があるし、非線形的で複雑な相関である。しかも、植物種やそれらの状態に応じて異なることは容易に想像される。
【0003】
非特許文献1は、こういった非線形的で複雑な相関を研究したものであり、かかる相関を適宜、実験データから回帰的に決定できることを示している。
【0004】
また非特許文献1では、葉の気孔開度を顕微鏡下で観察しながら、周囲気体の二酸化炭素濃度と開度との関係にも相関があることを示している。
【0005】
ここにおいて文献中の明記はないが、気孔での二酸化炭素吸収は、「ガスフェーズ」の二酸化炭素が直接的に気孔に吸収されるものではなく、水分の存在が重要であることが示唆される。
【0006】
すなわち、水分がなければ吸収量が落ちる、または、気孔が開かない、といった知見も別途あることから、二酸化炭素が水分に溶けた溶存ガスの状態、またはそれに類似した状態で気孔近傍に付着・気孔部位に移動し、適宜吸収される、と考えられる。
【0007】
一方、いわゆる「マイクロバブル」というものが公知である(非特許文献2参照)。これを二酸化炭素が水分に溶けた溶存ガスの状態に類似した状態、として利用する、というアイデアをここで提案したい。
【0008】
マイクロバブルには通常の気泡とは異なった性質がある、とされている。この「マイクロバブル」には、低濃度タイプ:直径が30μm 付近に分布のピークがあり、気泡濃度としては数百個/mL 程度で、見た目は水が少し曇った状態のものがある。および、「マイクロバブル」には、高濃度タイプ:10μm 付近に気泡分布のピークがあり、気泡個数は数千個/mL 以上、見た目は牛乳のような状態のものもある。
【0009】
本発明においては、この「マイクロバブル」を前記「二酸化炭素が水分に溶けた溶存ガスの状態に類似した状態」とすると、植物の気孔での二酸化炭素吸収が飛躍的に向上する、という予見から発明された。
【0010】
このアイデアの原点となった他の知見:「マイクロバブルが動物細胞の物質取込みを促進する」ことについて説明する。すなわち、動物細胞の表面近傍にマイクロバブルが含有した液体があると、それが細胞膜に刺激を与え、細胞膜での物質取り込み(エンドサイト−シス)が促進される、という知見である。
【0011】
具体的には、海中マイクロバブリングで牡蠣やホタテ貝が物質取込みを促進されるため、その大きさが肥大化する。すでに牡蠣養殖、ホタテ貝養殖では実用化され商品が市場に出ている。
【0012】
また、人体においてもマイクロバブリングを風呂で行う状態にて、皮膚表面の血流を測定すると血流値が上がるというデータがとられている。このことから人体の細胞レベルでヘモグロビンから酸素を受け二酸化炭素をはき出すという細胞活動の活性化が見られ、前者の酸素取込みという物質取込みの促進現象が起こっている。
【0013】
そういった促進現象の気体効果として、(1)細胞培養に要する時間が短縮される、(2)通常細胞をiPS化するための物質取り込みが促進され、iPS細胞(誘導多能性幹細胞)獲得歩留まりが向上する、その他の、おもにバイオテクノロジー分野での研究が行われている。
【0014】
ここで、前記の「マイクロバブル」2種:低濃度タイプ(30μm)、高濃度タイプ(10μm)による経験的差異は、概して、高濃度タイプ(10μm)の与える種々の効果の方が、低濃度タイプ(30μm)のそれよりもはるかに大きいということである。
【0015】
ゆえに本発明の実施の際も同様に、高濃度タイプ(10μm)にて実施するのがよりよい効果を与える。
【0016】
高濃度タイプ(10μm)マイクロバブルを生成する技術は、たとえば、特許文献1に記載されている。それに対し、低濃度タイプ(30μm)あるいは、さらにバブル径が大きな低級(ミリスケール)タイプの技術が特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0017】
特許文献1および特許文献2には、本発明とほぼ同じコンセプトである、マイクロバブル等の微細気泡による「細胞の外部からの物質吸収の促進」についての記述が散見される。しかし、植物の二酸化炭素吸収についての明確な記載はないので、本発明の特許性を損なうものではない。
【0018】
図1が本発明の概要説明のための模式図である。従来の研究等による知見(従来技術)では、植物を二酸化炭素ガスの高圧環境に置いたり、二酸化炭素富裕なガスを植物に吹きかけたりしていたが、二酸化炭素の顕著な吸収促進効果は得られなかった。
【0019】
本発明では、二酸化炭素をマイクロバブルの微小泡の気体源としたマイクロバブル含有液体組成物、ならびに、その液体組成物をミスト化して植物に与えることで解決した(図1の右側参照)。
【0020】
一方、マイクロバブルの応用として、本発明者のひとりが、特許文献4から特許文献7の発明を出願している。これらは、マイクロバブルによって培養液の液相内部の気相としての環境をコントロールして、従来できなかった細胞個別に特徴的な増殖しやすさのチューニング、あるいは、細胞個別に特徴的な外部物質の取込みやすさ(エンドサイトーシスの促進)、あるいは、気相環境のコントロールで、従来なしえなかった酵母など単細胞の増殖とエタノールなどの産生をコントロールする、という技術である。
【0021】
特許文献4から特許文献7の発明のうち、特許文献4には、二酸化炭素を含む気体成分を替えた微小泡のマイクロバブルとその生成装置が記載されている。また、特許文献5に、本発明に用いることができる二酸化炭素の微小泡を有するマイクロバブルとその生成装置が記載されている(図5参照)。
【0022】
また、特許文献6では、マイクロバブルの微小泡の粒径分布を比較的簡単に変えることができる方法と装置が示唆されている。
【0023】
および特許文献7の発明では、マイクロバブリング中に発熱させる方法が記載されていて、植物を含む生体一般に重要な温度という環境ファクターを調整するのに役立てることが示唆されている。
【特許文献1】特許第3620797号公報「微細気泡発生装置」アイピーエムエス
【特許文献2】特許第2762372号公報「微細気泡発生装置」小松製作所
【特許文献3】特公平5-60353号公報「液中通気による培養方法及び培養装置」日立製作所
【特許文献4】特願2009−234683「細胞変化を促進する微小気泡含有組成物、およびその微小気泡含有組成物を製造する装置、ならびに微小気泡含有組成物を用いた細胞変化促進方法」丸井智敬
【特許文献5】特願2009−243940「微小気泡含有組成物、および、微小気泡発生器」丸井智敬
【特許文献6】特願2009−249900「液体中に微小気泡を発生させる装置」丸井智敬
【特許文献7】特願2009−265832「液体中に微小気泡を生成して液体を発熱させる装置および方法」丸井智敬
【非特許文献1】東京農工大学農学部博士論文、難波和彦「顕微鏡画像計測に基づく植物気孔の開度予測の研究」2005年3月(笹尾研究室)
【非特許文献2】日本混相流学会混相流レクチャーシリーズ第35回「マイクロ・ナノバブルの特性とのその応用」2009年12月5日(関西大学にて配布)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の課題は、(1)二酸化炭素ガスの固定化を促進して温室効果ガスを減らし、地球温暖化の防止の一助となすこと、(2)燃焼等で生じた二酸化炭素ガスを炭酸同化で炭水化物化して食糧に転換し、食料問題の解決の一助となすこと、である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明を要約すれば、地上植物に対しては、マイクロバブラーで二酸化炭素バブリングさせ微小泡として含有させた二酸化炭素マイクロバブル水をミスト化して植物に噴霧する。水中植物に対しては、ミスト化は不要。二酸化炭素バブリングさせ微小泡として含有させた二酸化炭素マイクロバブル水を直接的に植物近傍の淡水・海水中に加える。
【0026】
ともに、生育植物をカバーするガス密閉大型構造物にて、構造物内部ガスを混合して吸収対象二酸化炭素を希薄化して所望の吸収をコントロールする、という装置と方法の発明である。
【0027】
すなわち(請求項1、図3参照)、気体密閉構造物の内部に生育する植物群の二酸化炭素吸収を促進して環境改善と炭酸同化物を増産するシステムであって、気体密閉構造物の内部または近傍に以下E1からE5の手段ないしは装置を有するシステム。
【0028】
E1、前記気体密閉構造物の外部から、濃度「A」の二酸化炭素を供給する手段、E2、E1から供給された濃度「A」の二酸化炭素と前記構造物の内部ガスとを混合して、所望濃度「B」の二酸化炭素とする二酸化炭素の濃度調整手段、(ここで、AはBよりも大きい値である)E3、前記調整された濃度「B」の二酸化炭素の保持手段、E4、前記保持手段E3が保持する濃度「B」の二酸化炭素をマイクロバブルの微小泡の気体源としたマイクロバブル含有液体組成物を生成するマイクロバブリング装置、E5、マイクロバブリング装置E4が生成したマイクロバブル含有液体組成物を気体密閉構造物の内部に生育する植物群に誘導する手段である。
【0029】
このシステムを方法に換言すれば(請求項5)、植物群Pの二酸化炭素吸収を促進して環境改善と炭酸同化物を増産する方法であって、気体密閉構造物の内部または近傍に配備されたE1からE5の手段ないしは装置にて、少なくともF1からF5の工程を行う方法。
【0030】
F1、E1によって、前記気体密閉構造物の外部から、濃度「A」の二酸化炭素を供給する工程、F2、E2によって、E1から供給された濃度「A」の二酸化炭素と前記構造物の内部ガスとを混合して、所望濃度「B」の二酸化炭素とする二酸化炭素の濃度調整工程、(ここで、AはBよりも大きい値である)F3、E3によって、前記調整された濃度「B」の二酸化炭素を保持する工程、さらに、F4、E4のマイクロバブリング装置によって、前記保持手段から濃度「B」の二酸化炭素を吸引しつつ液体吸引手段で液体槽の液体を吸引し、該液体槽の液体中に吐出ノズルから粒径が30μm以下のマイクロバブルを吐出する工程、F5、E5によって、マイクロバブリング装置E4の吐出ノズルから吐出された液体組成物を気体密閉構造物の内部に生育する植物群に誘導する工程である。
【0031】
ここで、E1(F1)、すなわち、気体密閉構造物の外部から、濃度「A」の二酸化炭素を供給する手段(工程)は、現在急速に研究開発されている二酸化炭素の集中処理技術と連係させてシステム(工程)構成すればよい。
【0032】
二酸化炭素集中処理技術とは、地球温暖化防止のための温室効果ガス削減のために開発されているもので、たとえば、発電所や製鉄所で生成される二酸化炭素を急速冷凍しドライアイス化し移動させやすくして異動先で集中処理する技術などである。
【0033】
これらの二酸化炭素処理技術では、ドライアイス化されたものを昇華させたまま、の状態を想起すればわかるように、概して二酸化炭素濃度は高い。こうような高濃度二酸化炭素を、ここでは濃度「A」の二酸化炭素と記載した。
【0034】
濃度「A」では、植物が吸収するのに適した濃度とはいえないので、希薄化する必要がある。
【0035】
希薄化には、気体密閉構造物の内部ガスを用いるのが適切かつ簡便であるので、E2(F2)の、E1から供給された濃度「A」の二酸化炭素と前記構造物の内部ガスとを混合して、所望濃度「B」の二酸化炭素とする二酸化炭素の濃度調整手段(工程)を設けた。
【0036】
当然ながら、濃度「B」の値は、前記の非特許文献1の記述で指摘したように、植物種やそれらの状態に応じて異なるものであるが、これらは適宜、実験的に決定すればよい。
【0037】
気体密閉構造物の植物が多種多様であっても、密林の太陽光利用連鎖のように、カスケードな二酸化炭素利用連鎖があるはずであるので、この連鎖の頂点にある高濃度二酸化炭素の利用植物に焦点をあわせて、適宜、実験的に決定すればよい。
【0038】
また(請求項2、図2参照)、気体密閉構造物が地上で生育する植物群を覆うものであって、マイクロバブリング装置E4が生成するマイクロバブル含有液体組成物をミスト化(霧状化)するミスト化手段E6が、液体組成物の誘導手段E5の下流に、さらに具備されていることが好ましい。
【0039】
これを方法に還元すれば(請求項6)、気体密閉構造物が地上で生育する植物群を覆うものであって、さらに以下のF6の工程を有する方法。F6は、E5の下流に、さらに具備されたミスト化(霧状化)手段E6で、E4の吐出ノズルから吐出された液体組成物をミスト化(霧状化)する工程である。
【0040】
図2が、図1中の「マイクロバブル含有液体のミスト」の説明図であって、M1がマイクロバブルを含有した液体をミスト状にすることでできたミストの粒子。M1Rが、M1の粒径であって、ミリメートルよりも少し小さい、サブミリの大きさである。M2が、ミスト化する前にマイクロバブル含有液体中に含有された二酸化炭素気体の微小泡が、E6でミスト化されてたM1の粒子中に残留しているものを示す。M2Rが、M2の粒径であって、M1内部に残留できるのは粒径が30μm以下のマイクロバブル微小気泡が主体であって、これらは気体分子のクラスター(穏やかな結合の集合体)であると考えている。
【0041】
このミスト化手段には、たとえば、高圧ノズル・超音波などの公知の装置と方法を転用すればよい。
【0042】
ここで、マイクロバブルがミスト化によって崩壊するような悪影響がなきにしもあらず、であるが、ミスト化の手段とそのチューニング方法には多彩なものがあるので、そのなかから適宜選定し、圧力や超音波発生源にあたえるエネルギーの値を変化させ、その結果得られる、M1R・M2Rの相関データを蓄積しつつ実験的に最適値にチューニングしていけばよい。
【0043】
また(請求項3、図4参照)、気体密閉構造物が水中で生育する植物群を覆うものであって、マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深よりも高い高低位置に配する場合には、かかる高低差に応じて、E4が生成するマイクロバブル含有液体組成物を加圧する手段E7をさらに有するシステムであり、あるいは、マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深と概ね同じ高低位置に配する場合には、かかる植物群の水深に応じて、濃度「B」の二酸化炭素を加圧する手段E8をさらに有するのが好ましい。
【0044】
これを方法に還元すれば(請求項7)、さらに以下のF7またはF8の工程を有する方法で、F7が、マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深よりも高い高低位置に配する場合には、かかる水深高低差に応じて、加圧する手段E7でマイクロバブル含有液体組成物を加圧する工程、F8が、マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深と概ね同じ高低位置に配する場合には、かかる植物群の水深に応じて、加圧する手段E8で濃度「B」の二酸化炭素を加圧する工程である。
【0045】
水中で生育する植物群は、一般的に水草、海草、藻類などの水中で光合成を行うすべての種であるが、クロレラや巨大昆布(ジャイアント・ケルプ)が好適である。
【0046】
前記の請求項2・請求項6の地上植物に好適であったミスト化手段とミスト化工程は、水中植物では不要である。そのかわり、請求項3請求項7に記載された圧力を高める手段・工程による液体またはガスの水中・水圧下での吐出が必要になる。
【0047】
これらの水中吐出手段と工程も公知の水中ポンプ等による水中吐出のエンジニアリング技術の転用でよく、技術的に容易である。
【0048】
また、マイクロバブリング装置E4について具体的に(請求項4、図5参照)、E4が、保持手段E3から濃度「B」の二酸化炭素を吸引する手段と液体吸引手段と該液体吐出手段が接続された渦流ポンプと、気体密閉構造物の内部に吐出端をもつ吐出ノズルを具備し、前記渦流ポンプはモータで内蔵インペラを回転するものであって、前記の濃度「B」の二酸化炭素の吸引手段で濃度「B」の二酸化炭素を吸引しつつ、前記液体吸引手段で液体槽の液体を吸引し、該液体槽の液体中に前記吐出ノズルから粒径が30μm以下のマイクロバブルを含む微小気泡を吐出してマイクロバブルを含有した液体組成物を生成する、マイクロバブリング装置であるのが好適である。
【0049】
上記のマイクロバブリング装置は、加圧溶解タイプのものであるが、本発明用途でのマイクロバブルの生成についてコストパフォマンスで優位であって好適である。
【0050】
ここで特に、マイクロバブルの微小泡の粒度分布などの「微小泡の特性」が、植物の二酸化炭素吸収にて敏感である場合もある。適応的に微小泡の粒度分布などの「微小泡の特性」を変化させるには、特許文献6に開示された渦流ポンプのモータを可変速制御する方法と装置が利用できる。「微小泡の特性」の変化は、液体槽の液体の光学的な特性を検知するセンサーで、たとえば濁度を検知すれば把握できる。
【0051】
参考として、特許文献6の請求項6の装置クレームを転記する。
【0052】
(特許文献6 請求項6)液体中に微小気泡を発生させる装置において、液体槽の液体の光学的な特性を検知するセンサーが配設されており、渦流ポンプの内蔵インペラを回転する交流モータの回転数を可変制御する手段をさらに具備し、かかるセンサーの出力である液体の光学特性信号に基づいて、渦流ポンプの内蔵インペラを回転する交流モータの回転数を制御する制御手段をまたさらに具備した液体中に微小気泡を発生させる装置。
【0053】
さらにまた、ここで記載した二酸化炭素含有マイクロバブルにおいて、その近傍液体またはミスト中の液体に、植物活性化の促進物質を付加添加するのも相乗効果が得られるので好ましい。弱まっている植物には「点滴」である。
【0054】
すなわち、二酸化炭素だけでなく、呼吸用の酸素(O2)、植物ホルモンに関与するカリウムやカルシウムイオンなどのミネラルも、微小気泡や気泡を内在させる水またはミストの液相中に「点滴」のように効果促進剤として付加して加えることもできる。
【0055】
これら、呼吸用の酸素(O2)、植物ホルモンに関与するカリウムやカルシウムイオンなどのミネラルの量も、前記の二酸化炭素濃度「B」の値と同様に、植物種やそれらの状態に応じて適宜、実験的に決定すればよい。
【0056】
さらにまた(上記の呼吸用の酸素(O2)については重複するが)、本案の二酸化炭素含有マイクロバブルにおいて、二酸化炭素以外の気体成分、具体的には、窒素(N2)成分、酸素(O2)成分が大気と異なった特異的な成分比であると植物に刺激を与え、二酸化炭素吸収が促進される場合がある。
【0057】
この特異的な成分比も、植物種やそれらの状態に応じて千差万別であるので一概にはいえないが、二酸化炭素吸収促進に有効な場合が多々ある。
【0058】
たとえば、窒素が80−90%と高濃度である場合に、植物が枯渇の脅威を感じて子孫(種子・果実)を残そうとするがために、生命活動を活発化し、旺盛に二酸化炭素を吸収することが報告されている。
【0059】
図6に、これらの、二酸化炭素以外の窒素(N2)成分、酸素(O2)成分調整、および、植物ホルモンに関与するカリウムやカルシウムイオンなどのミネラルの量調整、さらにまた、E4が吸引する液体(水)の液体槽の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量といった環境指標の調整を行って二酸化炭素吸収を補佐的に促進する、という、本案に付加するのが好適なシステムの模式図を示す。
【0060】
この図6の補佐的促進システムにおいて、温度のコントロールにつき、特許文献7に記載されたバブリング中に発熱する方法と装置を温度を上げる場合には利用できる。
【0061】
すなわち、液体槽の液体中に吐出ノズルから微小泡を吐出するときに、液体吸引手段の吸引端に吸引負荷を変化させる手段を兼備させておけばよい。
【0062】
参考として、特許文献7の請求項1の装置クレームを転記する。
【0063】
(特許文献7 請求項1)気体吸引手段と液体吸引手段と液体吐出手段が接続された渦流ポンプを具備し、前記気体吸引手段で気体を吸引しつつ、前記液体吸引手段で液体槽の液体を吸引して該液体槽の液体中に微小気泡を発生させる装置であって、前記渦流ポンプはモータで内蔵インペラを回転するもので、該微小気泡は、少なくともその粒径が30μm以下のマイクロバブルを含み、前記の液体吸引手段の吸引端に吸引負荷を変化させる手段が配備されてことを特徴とする液体中に微小気泡を生成して液体を発熱させる装置。
【0064】
図6中のブロック要素については、「図面の簡単な説明」の項を参照ねがいたい。こういった補佐的な二酸化炭素吸収の促進の態様の一部をサブクレームとするなら、たとえば以下のようである。
【0065】
E4が、吸引する液体にて植物ホルモンに関与するカリウムやカルシウムイオンなどのミネラルの量を調整する手段を兼備していて二酸化炭素吸収を補佐的に促進する手段を兼備している態様であること。
【0066】
E4が、二酸化炭素以外の気体成分の気体源と微小泡の気体成分を調整する手段を兼備していて、微小泡の気体成分にて、二酸化炭素成分を濃度「B」としつつ、その他の気体成分を変えて補佐的に促進する手段を兼備している態様であること。
【0067】
E4が、吸引する液体にて温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量等の環境指標量を調整する手段を兼備していて二酸化炭素吸収を補佐的に促進する手段を兼備している態様であること。
【発明の効果】
【0068】
本発明によって、(1)二酸化炭素ガスの固定化が促進されて温室効果ガスが減るので、地球温暖化の防止の一助となしうる、(2)燃焼等で生じた二酸化炭素ガスを炭酸同化で炭水化物化して食糧に転換し、食料問題の解決の一助となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の概要説明のための模式図。従来の研究等による知見(従来技術)は、植物を二酸化炭素ガスの高圧環境に置いたり、二酸化炭素富裕なガスを植物に吹きかけたりしていたが、大きな二酸化炭素の吸収促進効果が得られなかった。本案は二酸化炭素をマイクロバブルの微小泡の気体源としたマイクロバブル含有液体組成物、ならびに、その液体組成物をミスト化して植物に与えることで解決した。
【図2】図1中の「マイクロバブル含有液体のミスト」の説明図。
【図3】本発明の請求項1のシステムで、請求項2の地上植物用のアレンジ(ミスト化手段の兼備)がなされたシステムの態様の模式図。
【図4】本発明の請求項1のシステムで、請求項3の水中植物用のアレンジがなされたシステムの態様の模式図。
【図5】本発明のマイクロバブリング装置E4の一実施態様の模式図。
【図6】二酸化炭素以外の窒素(N2)成分、酸素(O2)成分調整、および、植物ホルモンに関与するカリウムやカルシウムイオンなどのミネラルの量調整、および、液体槽の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量といった環境指標の調整を行って二酸化炭素吸収を補佐的に促進する、本案に付加するのが好適なシステムの模式図。
【符号の説明】
【0070】


1 固化ガス容器または液化ガス容器(SL)
2 気相のガス容器(G)であって、図示しないが、圧力緩衝タンクを具備している。圧力緩衝タンクには適切な容量調節手段が兼備されており、これらによって気化ガス圧を概ね大気圧に維持する。
3 (SL)を昇温して固化ガスまたは液化ガスを気化させる手段、および、該気化の制御手段。たとえば、電熱ヒータ、ピアジェ素子温度制御デバイス、ドライアイスの場合には水シャワーや水スプレーでもよい。
4 気体吸引手段
10 微小気泡発生器
11 複数の気体供給手段(のひとつ)
12 吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段
12A 吸引気体の成分とその濃度を調整制御する手段12に、気体成分とその濃度の調整制御目標指令を出す気体成分・濃度調整制御目標指令の出力手段。
13 成分・濃度を調整制御された吸引気体の供給手段
14 10の液体吸引手段(の先端部分)
15 10の液体吐出手段(の先端部分)
16 気体吸引手段と液体吸引手段と液体吐出手段が接続された渦流ポンプを内蔵した筐体
17 濁度を透過光または散乱光測定方式で測定する濁度センサー
18 液体槽(細胞培養液容器)
18A 液体槽の温度・圧力・水素イオン濃度・生物学的/化学的酸素要求量といった環境指標の調整制御手段、その他の添加成分の注入の制御手段
30 制御手段18Aに、促進環境の調整制御目標指令、その他の添加成分の注入目標指令を出す制御目標指令を出力する手段
31 二酸化炭素吸収を促進するのに要する個別の気体成分とその濃度をあらかじめ実験的に決定する工程によって得られたデータを与えるデータベース。
CA 濃度「A」の二酸化炭素。
CB 濃度「B」の二酸化炭素。
E1 気体密閉構造物1の外部から、濃度「A」の二酸化炭素を供給する手段。
E2 E1から供給された濃度「A」の二酸化炭素と前記構造物の内部ガスとを混合して、所望濃度「B」の二酸化炭素とする二酸化炭素の濃度調整手段。
E3 前記調整された濃度「B」の二酸化炭素を保持する手段。二酸化炭素ガス容器・タンク。
E4 マイクロバブリング装置。たとえば保持手段E3から濃度「B」の二酸化炭素を吸引する手段と、液体吸引手段と、液体吐出手段が接続された渦流ポンプと、気体密閉構造物の内部に吐出端をもつ吐出ノズルを具備し、前記の濃度「B」の二酸化炭素の吸引手段で濃度「B」の二酸化炭素を吸引しつつ、前記液体吸引手段で液体槽の液体を吸引し、該液体槽の液体中に前記吐出ノズルから粒径が30μm以下のマイクロバブルを含む微小気泡を吐出してマイクロバブルを含有した液体組成物を生成する、マイクロバブリング装置。
E5 マイクロバブリング装置E4の吐出ノズルから吐出された液体組成物を気体密閉構造物の内部に生育する植物に誘導する手段。
E6 マイクロバブリング装置E4の吐出ノズルから吐出された液体組成物をミスト化(霧状化)するミスト化手段。
E7 E4を水中で生育する植物群Pの水深よりも高い高低位置に配する場合に好適な要素であって、かかる水深高低差に応じて吐出すべきマイクロバブル含有液体組成物を加圧する手段。
E8 E4を水中で生育する植物群Pの水深と概ね同じ高低位置に配する場合に好適な要素であって、かかる植物群Pの水深に応じて濃度「B」の二酸化炭素を加圧する手段。
M1 マイクロバブルを含有した液体をミスト状にすることでできたミストの粒子。
M1R M1の粒径であって、ミリメートルよりも少し小さい、サブミリの大きさである。
M2 ミスト化する前にマイクロバブル含有液体中に含有された二酸化炭素気体の微小泡が、E6でミスト化されてたM1の粒子中に残留しているものを示す。
M2R M2の粒径であって、M1内部に残留できるのは粒径が30μm以下のマイクロバブル微小気泡が主体であって、これらは気体分子のクラスター(穏やかな結合の集合体)であると考えている。
P 気相のガス容器(G)のガス圧を検知する手段
P1 Pの検知圧力に基づいて(3)に昇温指令を出す気化制御手段
Q 気体密閉構造物
Q2 地上の気体密閉構造物1の内部に生育する植物群であって、請求項2に示すような地上で生育する植物群。
Q3 水中または水上の気体密閉構造物1の内部に生育する植物群であって、請求項3に示すような水中で生育する植物群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体密閉構造物の内部に生育する植物群の二酸化炭素吸収を促進して環境改善と炭酸同化物を増産するシステムであって、
気体密閉構造物の内部または近傍に以下E1からE5の手段ないしは装置を有するシステム。
E1、前記気体密閉構造物の外部から、濃度「A」の二酸化炭素を供給する手段、
E2、E1から供給された濃度「A」の二酸化炭素と前記構造物の内部ガスとを混合して、所望濃度「B」の二酸化炭素とする二酸化炭素の濃度調整手段、(ここで、AはBよりも大きい値である)
E3、前記調整された濃度「B」の二酸化炭素の保持手段、
E4、前記保持手段E3が保持する濃度「B」の二酸化炭素をマイクロバブルの微小泡の気体源としたマイクロバブル含有液体組成物を生成するマイクロバブリング装置、
E5、マイクロバブリング装置E4が生成したマイクロバブル含有液体組成物を気体密閉構造物の内部に生育する植物群に誘導する手段。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、気体密閉構造物が地上で生育する植物群を覆うものであって、
マイクロバブリング装置E4が生成するマイクロバブル含有液体組成物をミスト化(霧状化)するミスト化手段E6が、液体組成物の誘導手段E5の下流に、さらに具備されたシステム。
【請求項3】
請求項1のシステムにおいて、気体密閉構造物が水中で生育する植物群を覆うものであって、
マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深よりも高い高低位置に配する場合には、かかる高低差に応じて、E4が生成するマイクロバブル含有液体組成物を加圧する手段E7をさらに有するシステムであり、あるいは、
マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深と概ね同じ高低位置に配する場合には、かかる植物群の水深に応じて、濃度「B」の二酸化炭素を加圧する手段E8をさらに有するシステム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかのシステムにおいて、
E4が、保持手段E3から濃度「B」の二酸化炭素を吸引する手段と液体吸引手段と該液体吐出手段が接続された渦流ポンプと、気体密閉構造物の内部に吐出端をもつ吐出ノズルを具備し、前記渦流ポンプはモータで内蔵インペラを回転するものであって、
前記の濃度「B」の二酸化炭素の吸引手段で濃度「B」の二酸化炭素を吸引しつつ、前記液体吸引手段で液体槽の液体を吸引し、該液体槽の液体中に前記吐出ノズルから粒径が30μm以下のマイクロバブルを含む微小気泡を吐出してマイクロバブルを含有した液体組成物を生成する、マイクロバブリング装置である、システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかの装置によって植物群Pの二酸化炭素吸収を促進して環境改善と炭酸同化物を増産する方法であって、
気体密閉構造物の内部または近傍に配備されたE1からE5の手段ないしは装置にて、少なくともF1からF5の工程を行う方法。
F1、E1によって、前記気体密閉構造物の外部から、濃度「A」の二酸化炭素を供給する工程、
F2、E2によって、E1から供給された濃度「A」の二酸化炭素と前記構造物の内部ガスとを混合して、所望濃度「B」の二酸化炭素とする二酸化炭素の濃度調整工程、(ここで、AはBよりも大きい値である)
F3、E3によって、前記調整された濃度「B」の二酸化炭素を保持する工程、さらに、
F4、E4のマイクロバブリング装置によって、前記保持手段から濃度「B」の二酸化炭素を吸引しつつ液体吸引手段で液体槽の液体を吸引し、該液体槽の液体中に吐出ノズルから粒径が30μm以下のマイクロバブルを吐出する工程、
F5、E5によって、マイクロバブリング装置E4の吐出ノズルから吐出された液体組成物を気体密閉構造物の内部に生育する植物群に誘導する工程。
【請求項6】
請求項5の方法において、気体密閉構造物が地上で生育する植物群を覆うものであって、
さらに以下のF6の工程を有する方法。
F6、E5の下流に、さらに具備されたミスト化(霧状化)手段E6で、E4の吐出ノズルから吐出された液体組成物をミスト化(霧状化)する工程。
【請求項7】
請求項5の方法において、
さらに以下のF7またはF8の工程を有する方法。
F7、マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深よりも高い高低位置に配する場合には、かかる水深高低差に応じて、加圧する手段E7でマイクロバブル含有液体組成物を加圧する工程、
F8、マイクロバブリング装置E4を、水中で生育する植物群の水深と概ね同じ高低位置に配する場合には、かかる植物群の水深に応じて、加圧する手段E8で濃度「B」の二酸化炭素を加圧する工程。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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