説明

地下構造物用筐体

【課題】固定設置される外筒体と、上下に開口し上方の開口は蓋体によって塞がれる内筒体とを備え、内筒体を周方向に回動することでその内筒体が上記外筒体の内周面に沿って昇降する地下構造物用筐体に関し、内筒体のガタつきを抑える。
【解決手段】内筒体20が、外周面201に螺旋状に続く雄ネジ23を有するものであり、外筒体10が、内周面102に、雄ネジ23と平行な螺旋状の軌跡に沿って周方向に間隔をあけて設けられた複数のネジ山部131によって形成された雌ネジ部13と、その間隔に設けられ内筒体20側に突出し、下面142が上記螺旋状の軌跡とは異なる軌跡に沿った突条片14とを有するものであり、この地下構造物用筐体1がさらに、ネジ山部131の上面1311に雄ネジ23が接している状態で突条片14の下面142に当接し内筒体20の回動を阻止する固定爪26を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定設置される外筒体と、上下に開口し上方の開口は蓋体によって塞がれる内筒体とを備え、上記内筒体を周方向に回動することでその内筒体が上記外筒体の内周面に沿って昇降する地下構造物用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された水道管等の仕切弁を地上から操作することができるよう、その仕切弁の上には筐体が設置される。この筐体の上端は地面と同じ高さ位置で開口しており、開口は蓋体によって塞がれる。作業時にはこの蓋体を開けて地上から仕切弁を操作する。
【0003】
従来より、筐体の上端位置を地面と同じ高さ位置に合わせることを容易にするため、外筒体と内筒体を備えたネジ式筐体が用いられている。外筒体は地中に設けられた躯体に固定設置され、内筒体は上下に開口し上方の開口が蓋体によって塞がれる。このネジ式筐体では、内筒体の上方の開口を地面と同じ高さ位置に合わせる必要があり、内筒体の外周面と外筒体の内周面に螺合構造が設けられている。この螺合構造によって、内筒体を周方向に回動することで内筒体が、固定設置された外筒体の内周面に沿って昇降する。内筒体を回動させその上方の開口の位置が地面と同じ高さ位置に一致すると、内筒体が回動しないように内筒体を固定する必要が生じる。そこで、内筒体の内側に固定爪を設けるとともに内筒体には貫通孔を設け、内筒体の内側からその貫通孔を通して外筒体に固定爪の先端部分を突出させ、内筒体を外筒体に固定する提案がなされている(特許文献1参照)。この提案では、外筒体の内周面に雌ネジを設けるとともに内筒体の外周面に雄ネジを設けている。雌ネジは螺旋状につながった一本のネジ山によって形成され、その一本のネジ山の上下方向の間に、内筒体に設けられた雄ネジが入り込み、雌ネジと雄ネジが噛合する。また、この提案では、図1に示すようにして、内筒体を外筒体に固定している。
【0004】
図1は、特許文献1に記載されたネジ式筐体における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【0005】
特許文献1に記載されたネジ式筐体では、内筒体の雄ネジ81と固定爪82の先端部分とで外筒体90の雌ネジ部を形成するネジ山91を挟み込んで内筒体を外筒体に固定する。図1では、内筒体の内側から外筒体90側を見たときの様子を誇張して表しており、内筒体の雄ネジ81と固定爪82が紙面奥側に向かって突出しており、外筒体90のネジ山91が紙面手前側に向かって突出している。
【特許文献1】特許第3515090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固定設置された外筒体90に設けられた螺旋状につながった一本のネジ山91は、図1に示すように傾斜したものである。このため、そのネジ山91を内筒体の雄ネジ81と固定爪82とで挟み込んでいたとしても、内筒体の雄ネジ81や固定爪82は、その一本につながったネジ山91に沿って滑りやすく(図1の左上に示す右斜め下を向く矢印参照)、内筒体の固定がゆるみやすい。内筒体の固定がゆるむと、蓋体によって塞がれた筐体の上を通過する車両等の振動により内筒体は回転しやすくなる。この結果、筐体の上を車両等が通過するたびに、内筒体が周方向に往復動するように回動し(図1の中央に示す左斜め上を向く矢印及び右斜め下を向く矢印参照)、ネジ山が摩耗してしまう。ネジ山91が摩耗してくると、内筒体全体が下がり(図1の右上に示す下向きの矢印参照)、ネジ山91の下面911と固定爪82との距離が開き、内筒体の固定がさらにゆるんで内筒体の上下方向のガタつきが大きくなるといった問題が生じる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、内筒体のガタつきを抑えた地下構造物用筐体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明の第1の地下構造物用筐体は、固定設置される外筒体と、上下に開口し上方の開口は蓋体によって塞がれる内筒体とを備え、その内筒体を周方向に回動することでその内筒体がその外筒体の内周面に沿って昇降する地下構造物用筐体において、
上記内筒体が、外周面に螺旋状に続く雄ネジを有するものであり、
上記外筒体が、内周面に、上記雄ネジと平行な螺旋状の軌跡に沿って周方向に間隔をあけて設けられた複数のネジ山部によって形成された雌ネジ部と、その間隔に設けられ上記内筒体側に突出し、下面が上記螺旋状の軌跡とは異なる軌跡に沿った突条片とを有するものであり、
この地下構造物用筐体がさらに、上記ネジ山部の上面に上記雄ネジが接している状態で上記突条片の下面に当接し上記内筒体の回動を阻止する固定爪を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の地下構造物用筐体によれば、上記外筒体が、上記ネジ山部とは異なる突条片を有するものであり、その突条片の下面が、上記ネジ山部と非平行であるため、詳しくは後述するように、上記内筒体の回動が阻止されるか、あるいは上記突条片が滑って上記内筒体が回動しそうになっても、上記固定爪が上記ネジ山部に当接し上記内筒体の回動が阻止される。したがって、この第1の地下構造物用筐体では、内筒体のガタつきが抑えられる。
【0010】
上記目的を解決する本発明の第2の地下構造物用筐体は、固定設置される外筒体と、上下に開口し上方の開口は蓋体によって塞がれる内筒体とを備え、その内筒体を周方向に回動することでその内筒体がその外筒体の内周面に沿って昇降する地下構造物用筐体において、
上記内筒体が、外周面に螺旋状に続く雄ネジを有するものであり、
上記外筒体が、内周面に、上記雄ネジと平行な螺旋状の軌跡に沿って周方向に間隔をあけて設けられた複数のネジ山部によって形成された雌ネジ部と、その間隔に設けられ上記内筒体側に突出し、下面が周方向両側に設けられたネジ山部の下面よりも上方に位置する突条片とを有するものであり、
この地下構造物用筐体がさらに、上記ネジ山部の上面に上記雄ネジが接している状態で上記突条片の下面に当接し上記内筒体の回動を阻止する固定爪を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の地下構造物用筐体によれば、上記外筒体が、上記ネジ山部とは異なる突条片を有するものであり、その突条片の下面が、上記ネジ山部の下面よりも上方に位置するため、上記突条片が滑って上記内筒体が回動しそうになっても、上記固定爪が上記ネジ山部に当接し上記内筒体の回動が阻止される。したがって、この第2の地下構造物用筐体でも、内筒体のガタつきが抑えられる。
【0012】
ここで、上記第1の地下構造物用筐体であっても上記第2の地下構造物用筐体であっても、上記固定爪は、上記内筒体とともに回動するものであってもよし、上記内筒体とは別個独立して回動するものであってもよい。また、上記突条片の下面は水平なものであってもよいが、これに限られるものではない。
【0013】
また、上記第1の地下構造物用筐体または上記第2の地下構造物用筐体において、上記突条片は、上面が周方向両側に設けられたネジ山部の上面よりも下方に位置するものであることが好ましい。
【0014】
こうすることで、上記雄ネジと上記突条片の接触面積が0になり、摩擦抵抗が軽減する。また、上記雄ネジが上記突条片に接し続けることによってその雄ネジ又はその突条片に生じる錆付きが防止される。一旦高さ調整を行った地下構造物用筐体を、道路の再舗装等によって再び高さ調整する場合が生じても、これらのことにより、固定配置された外筒体に対して内筒体を容易に回動することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地下構造物用筐体によれば、内筒体のガタつきが抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図2は、本発明の地下構造物用筐体の一実施形態である、ネジ式仕切弁筐の斜視図である。
【0018】
図2に示すネジ式仕切弁筐1は、外筒体10と内筒体20を有する二重筒構造体であり、地中に設置される。外筒体10も内筒体20もいずれも鋳鉄製のものである。外筒体10は、不図示の躯体にボルトによって固定設置される。この外筒体10は、下部フランジ11を有し、その下部フランジ11には、躯体にボルト止めする際にボルトを通す固定用孔111が周方向に沿って等間隔に設けられている。また、外筒体10の外周面101には、周方向に60°間隔で6つの張出部12が設けられている。図2には、蓋体9も示されている。
【0019】
図3は、外筒体と内筒体を上下方向に沿って切断した状態を表す図(断面斜視図)である。
【0020】
図3に示すように、内筒体20は上下に開口20a,20bを有し、上方の開口20aは図2に示す蓋体9によって塞がれる。図2に示すネジ式仕切弁筐1は、地中に埋設された水道管等の仕切弁(不図示)の上に設置され、仕切弁を操作する場合には、この蓋体9を開けて仕切弁を操作する。また、ネジ式仕切弁筐1では、蓋体9の上面91を地面と同じ高さ位置に合わせるため、内筒体20の上方の開口20aが地面と同じ高さ位置になるように内筒体20の高さ位置調整が行われる。ネジ式仕切弁筐1には、この高さ位置調整を容易にするため、外筒体10の内周面102と内筒体20の外周面201とに螺合構造が設けられている。
【0021】
本実施形態のネジ式仕切弁筐1では、螺合構造として、外筒体10の内周面102には雌ネジ部13が設けられており、内筒体20の外周面201には雄ネジ23が設けられている。したがって、不図示の躯体に固定設置された外筒体10に対して、内筒体20を周方向に回動させることで、その内筒体20は昇降し、内筒体20の上方の開口20aを地面と同じ高さ位置に容易に合わせることができる。この螺合構造については、詳しくは後述する。また、内筒体20には受け座25が設けられている。この受け座25には、固定爪26が回動自在にボルト27によって取り付けられている。
【0022】
図4は、図2に示す内筒体を斜め下から見たときの図(斜視図)である。
【0023】
図4には、内筒体20の下方の開口20bが示されている。この図4に示すように、内筒体20の下端部には、周方向3箇所に受け座25が設けられている。図4に示す3つの受け座25それぞれには、固定爪26がボルト27によって取り付けられる。これら3つの受け座25はそれぞれ高さ位置が異なる。すなわち、図4の左奧に示された受け座25は、3つの受け座25のうちで最も高い位置に設けられたものであり、図4の中央手前に示された受け座25は、3つの受け座25のうちで最も低い位置に設けられたものである。これら3つの受け座25の高さ位置関係は、外周面201に設けられた雄ネジ23のリード角に応じた関係である。また、左奧に示す、最も高い位置に設けられた受け座25の上面251には、内筒体20の半径方向(内外方向)に延びた長孔252が設けられており、残り2つの受け座25それぞれの上面251には、丸孔254が設けられている。これらの長孔252や丸孔254それぞれには、図3に示すボルト27が上方から差し込まれる。図3に示すように、ボルト27には、固定爪26が螺合しており、このボルト27を締め込むことによって、固定爪26は上昇する。また、内筒体20の下縁205は、上方へ切り欠いた3つの切欠2051を有する。受け座25とこの切欠2051は通じており、この切欠2051を通して、図3に示す固定爪26が外筒体10側に突出する。なお、受け座25は、内筒体20の下縁205を上方へ切り欠いた切欠2051に通じるものであり、その切欠2051は下方が開口したものであるから、この受け座25は、内周壁20の周壁を貫通するものではない。
【0024】
さらに、図4には、内筒体20の外周を周回する、螺旋状に1本につながった雄ネジ23が示されている。この図4に示すように、雄ネジ23は、内筒体20の下半分側に設けられたものである。
【0025】
続いて、図2に示す外筒体10について詳述する。
【0026】
図5は、図2に示す外筒体を上下方向に沿って切断した状態を斜め上から見たときの図(断面斜視図)である。
【0027】
図5に示す外筒体10の内周面102には、図4に示す雄ネジ23と平行な螺旋状の軌跡に沿って周方向(図中の矢印参照)に間隔をあけて設けられた複数のネジ山部131が設けられている。ネジ山部131は、上下方向に複数段にわたっても設けられており、外筒体10の内周面102の上から下までネジ山部131が設けられている。
【0028】
また、その内周面102の、周方向に隣合うネジ山部131とネジ山部131の間には、内側に向けて突出した突条片14が設けられている。この突条片14は、ネジ山部131とは別体のものである。また、突条片14は、外筒体10の外周面101に設けられた張出部12の位置に設けられている。したがって、突条片14は、外筒体10の内周面102に、周方向に60°間隔で設けられている。外筒体10における内周面102の、張出部12が設けられた部分は外側に窪んでおり、突条片14は、ネジ山部131よりも外側から内側に向かって突出したものである。以下、外筒体10における内周面102側で、ネジ山部131よりも外側に窪んだ部分を凹部103と称する。突条片14は、この凹部103から内側に突出している。
【0029】
さらに、外筒体10の下端部には、内側に向けて延在した下限ストッパ15が設けられている。この下限ストッパ15は、周方向に回動されて下降してきた内筒体20に当接し、図4に示す内筒体20の下端205が、外筒体10の下縁105を越えてまで下降することを防止するものである。
【0030】
図6は、図2に示す外筒体を上下方向に沿って切断した状態を正面から見たときの図(断面正面図)である。
【0031】
この図6に示す複数のネジ山部131のうち、紙面手前に向かって突出したネジ山部131は、図4に示す雄ネジ23と平行な螺旋状の軌跡に沿って右斜め下に傾斜している。一方、図6に示す複数の突条片14のうち、紙面手前に向かって突出した突条片14は、一見すると水平方向に延在している。この紙面手前に向かって突出した突条片14が設けられた丸で囲まれた部分は、図6の下方に拡大して示されている。図6に拡大して示された突条片14を参照すると、突条片14は、突出方向先端に向かって厚みが薄くなるものである。すなわち、突条片14の上面141は、突出方向先端に向かうにつれて漸次下方へ傾斜した面であり、その下面142は、突出方向先端に向かうにつれて漸次上方へ傾斜した面である。なお、ネジ山部131も、突条片141と同様に突出方向先端に向かって厚みが薄くなるものであるが、ネジ山部131の上面1311の傾斜角度やその下面1312の傾斜角度は、突条片141のそれらとは異なる。また、突条片14の突出先端下縁1421は水平に延びる縁である。したがって、突条片14の下面142は、図4に示す雄ネジ23の螺旋状の軌跡とは異なる軌跡に沿った面である。一方、図6の下方の拡大図に示すように、突条片14の上面141は、わずかに右斜め下にも傾斜している。すなわち、突出先端下縁1421が水平である突出先端面140の左端の厚み(高さ)HLは8mmであり、右端の厚み(高さ)HRは6mmである。また、突条片14の下面142は、周方向両側に設けられたネジ山部131の下面1312よりも上方に位置する。さらに、本実施形態のネジ式仕切弁筐1では、突条片14の上面141は、周方向両側に設けられたネジ山部131の上面1311よりも下方に位置する。このため、雄ネジ23と突条片14の接触面積が0になり、摩擦抵抗が軽減する。また、雄ネジ23が突条片14に接し続けることによってその雄ネジ23又はその突条片14に生じる錆付きが防止される。一旦高さ調整を行ったネジ式仕切弁筐1を、道路の再舗装等によって再び高さ調整する場合が生じても、これらのことにより、固定配置された外筒体10に対して内筒体20を容易に回動することができる。
【0032】
外筒体10の雌ネジ部13は、上下方向に間隔をあけて設けられたネジ山部131によって形成される。すなわち、上下方向に隣り合うネジ山部131とネジ山部131の間に、図3や図4に示す内筒体20の雄ネジ23が入り込み、雌ネジ部13と雄ネジ23が噛合する。なお、複数の突条片14はいずれも、ネジ山部131とは別体であるとともに雄ネジ23の螺旋状の軌跡とは異なる軌跡に沿ったものであり、その雄ネジ23と接しておらず、雌ネジ部13を形成するものではない。
【0033】
図7は、図2に示す外筒体を上方から見たときの図(平面図)である。
【0034】
図7にも、複数のネジ山部131が示されているとともに、周方向に隣り合うネジ山部131の間には突条片14も示されている。凹部103から内側に突出している突条片14の突出先端面140は、ネジ山部131の突出先端面1310よりもわずかに外側に位置している。また、図7にも、下限ストッパ15が示されている。
【0035】
次に、図8とともにこれまで用いた図面をもう一度参照しながら固定爪26について詳述する。
【0036】
図8は、本実施形態のネジ式仕切弁筐を下方から見たときの半分を示す図(部分背面図)である。
【0037】
図8に示す3時の方向を向いた右側の固定爪26は、7時の方向を向いた左側の固定爪26、および図示されていないもう一つの固定爪よりも、外筒体10側に突出する長さが長いものである。以下、この突出長が長い固定爪を長固定爪261と称し、残り2つの固定爪を短固定爪262と称することにする。長固定爪261は、図4に示す長孔252が設けられた受け座25に取り付けられたものであり、短固定爪262は、図4に示す丸孔254が設けられた受け座25に取り付けられたものである。図3に示すように、内外方向に延びた長孔252に差し込まれたボルト27をその長孔252の外側いっぱいの位置にすると、長固定爪261の先端部分が、外筒体10の凹部103(図5参照)に入り込んだ状態になる。この状態で、ボルト27を締め込むと、長固定爪261の先端部分は、凹部103内で突条片14の下面142(図6参照)に当接する。なお、長孔252に差し込まれたボルト27をその長孔252の内側いっぱいの位置にすると、長固定爪261の先端部分は突条片14よりも内側に引っ込む。一方、短固定爪262の先端部分は、外筒体10の凹部103までは入り込んでおらず、ボルト27を締め込むと、短固定爪262の先端部分は、凹部103よりも内側で突条片14の下面142に当接する。
【0038】
続いて、本実施形態のネジ式仕切弁筐1における、内筒体20の高さ位置調整から内筒体20の固定までについて説明する。本実施形態のネジ式仕切弁筐1では、内筒体20を周方向に回動させ、内筒体20の上方の開口20aを地面と同じ高さ位置に合わせた後、内筒体20が回動しないように、躯体に固定設置された外筒体10に内筒体20を固定する。内筒体20の高さ位置調整の段階では、図8に示す長固定爪261は受け座25に取り付けられていないが、残り2つの短固定爪262は、ボルト27を緩めた状態で受け座25に取り付けられている。
【0039】
内筒体20の高さ位置調整が終了すると、長固定爪261を長孔252が設けられた受け座25に取り付ける。上述のごとく、長固定爪261が取り付けられる受け座25は、図4に示す3つの受け座25のうち最も高い位置に設けられた受け座であり、内筒体20の上方の開口20aに最も近い受け座25であることから長固定爪261を取り付けやすい。図4に示すように、受け座25は下方に開口しており、長固定爪261は受け座25の下側から受け座25に宛がわれる。次いで、ボルト27を、その受け座25に設けられた長孔252の内側いっぱいの位置から挿入し、長固定爪261を受け座25に取り付ける。ここでは、ボルト27を完全には締め込まず、緩めた状態にしておく。
【0040】
続いて、そのボルト27を長孔252の外側いっぱいの位置まで移動させ、受け座25に取り付けた長固定爪261の先端部分を外筒体10の凹部103に入れ込む。この際、長固定爪261の先端部分の位置と凹部103の位置がズレている場合がある。この場合には内筒体20を少し回動させる。凹部103は60°間隔で設けられたものであるから、内筒体20を多くても30°程度回動させれば、両者の位置は一致する。長固定爪261の先端部分が凹部103に入り込むと、3本のボルト27総てを締め込む。こうすることで、長固定爪261と2つの短固定爪262は上昇し、いずれの固定爪26の先端部分も、外筒体10に設けられた突条片14の下面142に下方から接する。このように、長固定爪261と2つの短固定爪262が周方向に120°間隔で突条片14に接することにより、内筒体20の水平方向のガタつきが防止される。しかも、外筒体10における雌ネジ部13を形成するネジ山部131は、内筒体20における雄ネジ13によって上方から押さえ込まれる。すなわち、外筒体10のネジ山部131の上面1311(図6参照)に雄ネジ13が接している状態で固定爪26が突条片14の下面142に当接し、内筒体20の回動が阻止される。
【0041】
さらに、短固定爪262の先端部分は、外筒体10の凹部103に入り込んでいないが、長固定爪261の先端部分は、その凹部103に入り込んでいる。長固定爪261の先端部分が、凹部103のちょうど真ん中(周方向中央部分)から少しずれてその凹部103に入り込むと、長固定爪261の先端部分は凹部103を画定する周方向両側の側壁1031(図5参照)に接する。その側壁1031に接した長固定爪261によって、内筒体20の回動が阻止される。
【0042】
図9は、本実施形態のネジ式仕切弁筐における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【0043】
この図9では、内筒体20の内側から外筒体10側を見たときの様子を誇張して表しており、内筒体20の雄ネジ23と固定爪26が紙面奥側に向かって突出しており、外筒体10に設けられた、ネジ山部131および突条片14が紙面手前側に向かって突出している。また、図9の中央上には、外筒体10のネジ山部131の上面1311に雄ネジ23が接している状態で固定爪26が突条片14の下面142に当接している状態が示されている。本来であれば、内筒体20の回動は阻止されているはずであるが、蓋体9によって塞がれたネジ式仕切弁筐1の上を通過する車両等の振動が長年続くことにより、ボルト27の締め付けが緩んだとする。内筒体20が上昇する方向に回動する場合には、内筒体20に設けられた受け座25(図4等参照)に取り付けられた固定爪26は、雄ネジ23の螺旋状の軌跡に沿って図の左斜め上に移動する。一方、内筒体20が下降する方向に回動する場合には、固定爪26は、雄ネジ23の螺旋状の軌跡に沿って図の右斜め下に移動する。
【0044】
しかし、図9の左下に示すごとく、固定爪26が図の左斜め上に移動しようとしても、突条片14の突出先端縁1421(図6参照)が水平であることから、固定爪26は移動することができず、内筒体20の上昇する方向への回動が阻止される。また、図9の右下に示すごとく、固定爪26が図の右斜め下に移動し始めると、その固定爪26がネジ山部131に当接し、固定爪26はそれ以上移動することができず、内筒体20の下降する方向への回動も阻止される。したがって、本実施形態のネジ式仕切弁筐1によれば、内筒体20のガタつきが抑えられる。
【0045】
続いて、本実施形態のネジ式仕切弁筐1の変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、これまで説明した構成要素と同じ名前の構成要素には、これまで使用した符号と同じ符号を用いる。また、これまでの説明と重複する説明については省略する。
【0046】
図10は、本実施形態のネジ式仕切弁筐の第1変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【0047】
図10に示す第1変形例は、突条片14の下面142が、ネジ山部131の下面1312よりも下方に位置すること以外は、図2に示すネジ式仕切弁筐1と同じ構成である。
【0048】
この第1変形例でも、図10の左下に示すごとく、固定爪26が図の左斜め上に移動しようとしても、突条片14の突出先端縁1421(図6参照)が水平であることから、固定爪26は移動することができず、内筒体20の上昇する方向への回動が阻止される。また、図10の右下に示すごとく、固定爪26の図の右斜め下への移動は許容され、内筒体20の下降する方向への回動も許容される。ただし、内筒体20が回動すると、長固定爪261の先端部分が、凹部103を画定する周方向両側の側壁1031(図5参照)に接っし、内筒体20の回動が阻止される。また、内筒体20が上昇する方向へ回動すると、内筒体20の上方の開口20aが地面よりも高くなり、通過する車両の障害になって問題が大きくなるが、内筒体20が下降する方向へ回動しても、車両がネジ式仕切弁筐1に載りにくくなるだけであり、内筒体20が上昇する方向へ回動する場合に比べて問題になりにくい。
【0049】
図11は、本実施形態のネジ式仕切弁筐の第2変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【0050】
図11に示す第2変形例は、突条片14の突出先端縁1421(図6参照)が、雄ネジ23の螺旋状の軌跡とは逆方向に傾斜しており、突条片14の下面142が、ネジ山部131の下面1312よりも下方に位置する以外は、図2に示すネジ式仕切弁筐1と同じ構成である。
【0051】
この第2変形例でも、図11の左下に示すごとく、固定爪26が図の左斜め上に移動しようとしても、突条片14の突出先端縁1421(図6参照)の傾斜によって、固定爪26は移動することができず、内筒体20の上昇する方向への回動が強固に阻止される。また、図11の右下に示すごとく、固定爪26の図の右斜め下への移動は許容され、内筒体20の下降する方向への回動も許容されるが、第1変形例と同じく、凹部103を画定する周方向両側の側壁1031(図5参照)によって、内筒体20の回動が阻止される。また、内筒体20が下降する方向への回動は、内筒体20の上昇する方向への回動に比べ問題になりにくい。
【0052】
図12は、本実施形態のネジ式仕切弁筐の第3変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【0053】
図12に示す第3変形例は、突条片14が、雄ネジ23の螺旋状の軌跡と同じ軌跡に沿ったものである以外は、図2に示すネジ式仕切弁筐1と同じ構成である。すなわち、第3変形例における突条片14の下面142も、ネジ山部131の下面1312よりも上方に位置している。
【0054】
この第3変形例では、図12の左下に示すごとく、固定爪26が図の左斜め上に移動し始めると、その固定爪26がネジ山部131に当接し、固定爪26はそれ以上移動することができず、内筒体20の上昇する方向への回動が阻止される。また、図12の右下に示すごとく、固定爪26が図の右斜め下に移動し始めても、その固定爪26がネジ山部131に当接し、固定爪26はそれ以上移動することができず、内筒体20の上昇する方向への回動も阻止される。
【0055】
図13は、本実施形態のネジ式仕切弁筐の第4変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【0056】
図13に示す第4変形例は、突条片14の突出先端縁1421(図6参照)が、雄ネジ23の螺旋状の軌跡の傾斜角度(θ)よりも大きな傾斜角度(θ)で傾斜しており、突条片14の下面142が、ネジ山部131の下面1312よりも下方に位置する以外は、図2に示すネジ式仕切弁筐1と同じ構成である。
【0057】
この第4変形例では、図13の左下に示すごとく、固定爪26が図の左斜め上に移動し始めると、その固定爪26がネジ山部131に当接し、固定爪26はそれ以上移動することができず、内筒体20の上昇する方向への回動が阻止される。また、図13の右下に示すごとく、固定爪26の図の右斜め下への移動は許容され、内筒体20の下降する方向への回動も許容されるが、第1変形例と同じく、凹部103を画定する周方向両側の側壁1031(図5参照)によって、内筒体20の回動が阻止される。また、内筒体20が下降する方向への回動は、内筒体20の上昇する方向への回動に比べ問題になりにくい。
【0058】
なお、ここで、突条片14の突出先端縁1421の傾斜角度(θ)は、雄ネジ23の螺旋状の軌跡の傾斜角度(θ)より小さなことが好ましい。こうすることで、図9に示す本実施形態や図11に示す第2変形例のように、突条片14の突出先端縁1421の傾斜によって、固定爪26の移動を阻止することができる。また、突条片14の周方向両側それぞれに設けられたネジ山部131のうち上方に位置するネジ山部139(図13では左側のネジ山部)の、その突条片14側の端面1391の下端位置1391hと同じ高さ位置か、あるいはその下端位置1391hよりも高い高さ位置に、その突条片14の、その上方に位置するネジ山部139側の端面149の下端位置149hが位置していることも好ましい。こうすることで、固定爪26が図の左斜め上に移動し始めると、その固定爪26がその上方に位置するネジ山部139にすぐに当接する。
【0059】
図14は、本実施形態のネジ式仕切弁筐の第5変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【0060】
図14に示す第5変形例における突条片14の突出先端縁1421はへの字状である。すなわち、突出先端縁1421は、雄ネジ23の螺旋状の軌跡と同じ軌跡に沿った辺とそれとは逆方向に傾斜した辺とを周方向中央部分が凹むように突き合わせたものであり、突条片14の下面142の中央部分が上方に凹んでいる。
【0061】
この第4変形例でも、図14の左下に示すごとく、固定爪26が図の左斜め上に移動しようとしても、突条片14の突出先端縁左側の傾斜1421Lによって、固定爪26は移動することができず、内筒体20の上昇する方向への回動が強固に阻止される。また、図14の右下に示すごとく、固定爪26が図の右斜め下に移動しようとしても、突条片14の突出先端縁右側の傾斜1421Rによって、固定爪26は移動することができず、内筒体20の下降する方向への回動も強固に阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】特許文献1に記載されたネジ式筐体における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【図2】本発明の地下構造物用筐体の一実施形態である、ネジ式仕切弁筐の斜視図である。
【図3】外筒体と内筒体を上下方向に沿って切断した状態を表す図(断面斜視図)である。
【図4】図2に示す内筒体を斜め下から見たときの図(斜視図)である。
【図5】図2に示す外筒体を上下方向に沿って切断した状態を斜め上から見たときの図(断面斜視図)である。
【図6】図2に示す外筒体を上下方向に沿って切断した状態を正面から見たときの図(断面正面図)である。
【図7】図2に示す外筒体を上方から見たときの図(平面図)である。
【図8】本実施形態のネジ式仕切弁筐を下方から見たときの半分を示す図(部分背面図)である。
【図9】本実施形態のネジ式仕切弁筐における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【図10】本実施形態のネジ式仕切弁筐の第1変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【図11】本実施形態のネジ式仕切弁筐の第2変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【図12】本実施形態のネジ式仕切弁筐の第3変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【図13】本実施形態のネジ式仕切弁筐の第4変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【図14】本実施形態のネジ式仕切弁筐の第5変形例における内筒体の固定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ネジ式仕切弁筐
10 外筒体
102 内周面
13 雌ネジ部
131 ネジ山部
1311 上面
14 突条片
142 下面
20 内筒体
201 外周面
20a,20b 開口
23 雄ネジ
25 受け座
26 固定爪
27 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定設置される外筒体と、上下に開口し上方の開口は蓋体によって塞がれる内筒体とを備え、該内筒体を周方向に回動することで該内筒体が該外筒体の内周面に沿って昇降する地下構造物用筐体において、
前記内筒体が、外周面に螺旋状に続く雄ネジを有するものであり、
前記外筒体が、内周面に、前記雄ネジと平行な螺旋状の軌跡に沿って周方向に間隔をあけて設けられた複数のネジ山部によって形成された雌ネジ部と、該間隔に設けられ前記内筒体側に突出し、下面が前記螺旋状の軌跡とは異なる軌跡に沿った突条片とを有するものであり、
この地下構造物用筐体がさらに、前記ネジ山部の上面に前記雄ネジが接している状態で前記突条片の下面に当接し前記内筒体の回動を阻止する固定爪を備えたことを特徴とする地下構造物用筐体。
【請求項2】
固定設置される外筒体と、上下に開口し上方の開口は蓋体によって塞がれる内筒体とを備え、該内筒体を周方向に回動することで該内筒体が該外筒体の内周面に沿って昇降する地下構造物用筐体において、
前記内筒体が、外周面に螺旋状に続く雄ネジを有するものであり、
前記外筒体が、内周面に、前記雄ネジと平行な螺旋状の軌跡に沿って周方向に間隔をあけて設けられた複数のネジ山部によって形成された雌ネジ部と、該間隔に設けられ前記内筒体側に突出し、下面が周方向両側に設けられたネジ山部の下面よりも上方に位置する突条片とを有するものであり、
この地下構造物用筐体がさらに、前記ネジ山部の上面に前記雄ネジが接している状態で前記突条片の下面に当接し前記内筒体の回動を阻止する固定爪を備えたことを特徴とする地下構造物用筐体。
【請求項3】
前記突条片は、上面が周方向両側に設けられたネジ山部の上面よりも下方に位置するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の地下構造物用筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−43469(P2010−43469A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208288(P2008−208288)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(508165490)旭テック環境ソリューション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】