説明

地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置

【課題】開蓋治具挿入孔の開閉を円滑且つ容易に行え、その小型化且つ軽量化と同時に蓋本体への組付けを簡単に行える地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置を提供する。
【解決手段】地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置は、開蓋治具が挿入される蓋本体(2)の挿入孔(12)を開閉可能に閉塞する閉塞栓(44)を備え、この閉塞栓(44)は栓担持体(24)を介して蓋本体(2)の垂直壁(18)に回動可能に取付けられているともに、栓担持体(24)の先端に対してスライド可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物用蓋に設けられている開蓋治具挿入孔を通常は閉塞しているが、開蓋時には開蓋治具により開くようにした地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置に関する。
なお、本願明細書でいう「地下構造物用蓋」とは、下水道設備における地下埋設物,地下構造施設等と地上とを通じさせる開口部を閉塞するための大型鉄蓋,マンホール蓋,汚水桝蓋、或いは電力・通信設備における地下敷設機器や配線等を保護する開閉可能な共同溝用鉄蓋,送電用鉄蓋,配電用鉄蓋、上水道設備やガス供給設備における路面下の埋設導管及びその付属機器と地上とを結ぶ開閉扉としての機能を有する消火栓蓋,制水弁蓋,仕切弁蓋,空気弁蓋,ガス配管用蓋,量水器蓋などを総称するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の地下構造物用蓋は、蓋本体と、この蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えており、蓋本体の外周縁部には、蓋本体を開蓋するために使用される開蓋治具挿入孔が開設されている。より詳しくは、開蓋治具挿入孔は蓋本体の表面から裏面に亘って貫通し、バールや手鈎等の開蓋治具が挿入可能となっている。
ところで、上述の開蓋治具挿入孔が開放されたままの状態にあると、開蓋治具挿入孔を通じて例えば雨水が地下構造物内に浸入する。それ故、地下構造物が下水道設備の場合には、浸入した雨水が処理場の下水処理能力に余分な負荷を掛けることになる。また、開蓋治具挿入孔を通じて土砂等が浸入し、この土砂等が地下構造物内に堆積してしまうと、地下構造物内の仕切弁等の開閉に支障が生じるばかりでなく、開蓋治具挿入孔自体が土砂等により閉塞され、開蓋治具を挿入し難くなる等、多くの問題が引き起こされる。
【0003】
上述の問題を解決するために従来から種々の提案がなされており、その1つに蓋本体に開蓋治具挿入孔を開閉する開蓋治具挿入孔開閉装置を備えた地下構造物用蓋が知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1の開蓋治具挿入孔開閉装置は、蓋本体の裏面に設けられた弁機構と、この弁機構の復帰機構とからなる。具体的には、弁機構は回転軸と、この回転軸から延びるアームの先端部に設けられ、バール挿入孔(開蓋治具挿入孔)を開閉するための弁板とからなり、一方、復帰機構は蓋本体の径方向への回転軸の摺動を許容し、蓋本体の外周縁に向けて下り勾配に形成された回転軸摺動溝と、アームの他端部に設けられ、弁板に復帰力を付与するバランス錘とからなっている。
【特許文献1】実公昭58-3888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の開蓋治具挿入孔開閉装置にあっては、開蓋時に蓋本体を受枠内に収め、バールをバール挿入孔から引き抜いたとき、回転軸を中心としたアームの回動を伴い、弁板はバール挿入孔を閉塞する閉塞位置に向けて自動的に復帰する。
この際、弁板はその先端が受枠の内周面に当接しながら閉塞位置に向けて移動することから、この移動過程にて、弁板の先端が受枠の内周面に引っ掛かり、閉塞位置への弁板の復帰が不能になる虞がある。
【0005】
また、特許文献1の場合、弁板の開放作動及び閉塞作動の際、回転軸摺動溝に沿って回転軸を蓋本体の径方向に摺動させる構造であるから、回転軸摺動溝及びバランス錘の存在により、開蓋治具挿入孔開閉装置は必然的に、そのサイズ及び重量がともに大となっている。
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、開蓋治具挿入孔の開閉を円滑且つ容易に行うことができるともに、小型化且つ軽量化を図れ、しかも、蓋本体への組付けもまた簡単に行うことができる地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、開蓋治具が挿入される開蓋治具挿入孔を外周縁部に開設した蓋本体と、この蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置において、本発明の開蓋治具挿入孔開閉装置は、蓋本体の裏面に開蓋治具挿入孔の近傍に位置して設けられた垂直壁と、この垂直壁に回動自在に軸支された閉塞栓ユニットとを備え、この閉塞栓ユニットは、アーム状の栓担持体と、栓担持体の先端に設けられた閉塞栓と、この閉塞栓により開蓋治具挿入孔を閉塞する方向に栓担持体を回動付勢する回動付勢手段とを備え、閉塞栓は、栓担持体の先端に対し、栓担持体の長手方向に一定量だけスライド可能に取付けられている(請求項1)。
【0007】
具体的には、栓担持体の長手方向は蓋本体の径方向に一致しているのが望ましい(請求項2)。
請求項1,2の開蓋治具挿入孔開閉装置によれば、受枠に蓋本体が嵌合されているとき、通常、閉塞栓は開蓋治具挿入孔を閉塞する閉塞位置にあって、この際、閉塞位置に回動付勢手段による栓担持体の回動付勢を受けて保持されている。それ故、閉塞栓が閉塞位置にあるとき、閉塞栓は、開蓋治具挿入孔を通じて雨水や土砂等が地下構造物内に浸入するのを防止する。
【0008】
この状態から、開蓋治具が開蓋治具挿入孔に挿入され、この開蓋治具により回動付勢手段の回動付勢に抗して閉塞栓が栓担持体とともに押し下げられるとき、閉塞栓は栓担持体に対してスライドする。それ故、ここでの押し下げ時、閉塞栓は開蓋治具挿入孔の内壁又は受枠の内周面に引っ掛かることはなく押し下げられ、開蓋治具の挿入、つまり、開蓋治具挿入孔の開放が円滑になる。
【0009】
一方、開蓋治具挿入孔から開蓋治具が引き抜かれたとき、閉塞栓は回動付勢手段の回動付勢力を受け、栓担持体とともに閉塞位置に向けて円滑に復帰する。
ここで、栓担持体の長手方向は蓋本体の径方向に一致している場合(請求項2の場合)、蓋本体の径方向外側を向いた開蓋治具挿入孔の内壁は、蓋本体の中心に向けて下り傾斜となる傾斜面を有していることが好ましい(請求項3)。
【0010】
この場合、閉塞栓が押し下げられて一旦スライドした後、その閉塞位置に向けて復帰する際、閉塞栓は、蓋本体の径方向でみて内側に位置する内端部の上面にて前記傾斜面に当接する。ここでの当接により、前記傾斜面は閉塞栓のスライドを元に戻すように閉塞栓を案内し、これにより、閉塞栓は自身の復帰手段を備えておらずとも閉塞位置に確実に戻り、開蓋治具挿入孔を閉塞する。
【0011】
更に具体的には、開蓋治具挿入孔開閉装置は、栓担持体の先端に設けられ、栓担持体の長手方向に延びる凸条部と、閉塞栓内に設けられ、凸条部を相対的にスライド自在に受け入れる凹条部とを備えており(請求項4)、これら凸条部及び凹条部は閉塞栓の円滑且つ確実なスライドをもたらす。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜4の閉蓋治具挿入孔開閉装置は、閉塞栓がスライド可能であるから、閉蓋治具により開蓋治具挿入孔の開放及び閉塞を円滑且つ確実に行え、また、その全体のサイズをコンパクトにできるとともにその軽量化を図ることができる。更に、開蓋治具挿入孔開閉装置は、蓋本体に対して回動軸及び回動付勢手段を介して取付けられるだけであるから、ここでの取付けもまた簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1及び図2は地下構造物用蓋の一部、即ち、蓋本体2を示す。この蓋本体2は、図1中、2点鎖線で示す地下構造物の上部に設置された受枠4に嵌合されて受枠4の開口を閉じることができ、この場合、受枠4の内周面及び蓋本体2の外周面は雌及び雄のテーパ面としてそれぞれ形成されている。
図2から明らかなように蓋本体2は、蓋本体2の上面のほぼ全域に亘って凹所6を設けた鋳鉄製の蓋基部3と、この凹所6に嵌め込まれる合成樹脂製の外装盤8とからなり、外装盤8は、図1中、2点鎖線で示すとおり、蓋本体2の上面と面一の上面を有している。このような合成樹脂製の外装盤8は地下構造物用蓋の軽量化に大きく寄与する。なお、図1,2中、参照符号10は外装盤8を取り付けるための取付け孔を示す。
【0014】
蓋本体2の外周縁部には矩形の開蓋治具挿入孔(以下、単に挿入孔という)12が形成され、この挿入孔12は蓋本体2を上下方向に貫通している。また、蓋本体2の外周縁裏面には、蓋本体2と受枠4とを開閉可能に連結するヒンジ機構(図示しない)のための結合部14が形成されており、図1,2から明らかなように、結合部14は挿入孔12に対して蓋本体2の直径方向に離間している。
【0015】
更に、蓋本体2の裏面には、挿入孔12の近傍に位置して設けられた垂直壁18と、この垂直壁18に回動自在に軸支された閉塞ユニット22とを備えた挿入孔12を開閉するための開蓋治具挿入孔開閉装置(以下、単に開閉装置という)16が設けられている。図1,2中、閉塞ユニット22は省略されているが、その詳細を図3〜図8に示す。
図3は、蓋本体2の裏面に設けられた開閉装置16を示す。
【0016】
挿入孔12の近傍には一対の垂直壁18が蓋本体2の裏面から下向きに突出して形成されている。より詳しくは、一対の垂直壁18は蓋本体2の周方向に互いに離間する一方、蓋本体2の径方向でみて、挿入孔12の下側から挿入孔12を越えて蓋本体2の径方向内側まで延びている。
なお、本実施例の場合、図4から明らかなように、垂直壁18は挿入孔12に対応する部位を除いて蓋本体2の裏面外周に形成された縁巻リブ20に連設して形成され、また、一対の垂直壁18間の間隔は挿入孔12の開口幅に一致している。
【0017】
上述した一対の垂直壁18間には閉塞栓ユニット22が一対の垂直壁18に対して回動可能に取付けられている。図5は垂直壁18から分離された閉塞栓ユニット22をその斜視図で示す。
閉塞栓ユニット22はステンレス製の栓担持体24を備えており、この栓担持体24は全体として屈曲したアーム状をなしている。栓担持体24の基端部は一対の垂直壁18の離間方向に分離した二股状をなす一対の基端26を形成している。これら基端26の外側面からは回動軸28がそれぞれ一体にして外側に突設され、これら回動軸28は同一の軸線上に配置されている。
【0018】
この回動軸28の両端は、図2に示す一対の垂直壁18にそれぞれ形成された軸受穴32に回動自在に支持される。具体的には、軸受穴32は、溝30の終端にて規定されており、この溝30は垂直壁18の下端縁から上方に向けて延び、この後、蓋本体2の径方向内側に一旦水平に延びてから更に下向きに延びて終端、即ち、軸受穴32となる形状を有している。
【0019】
また、図2から明らかなように軸受穴32は蓋本体2の径方向でみて垂直壁18の内方で且つ上部に位置付けられている。
栓担持体24の回動軸28は対応する側の垂直壁18の溝30に下方から挿入でき、そして、溝30に沿い終端まで移動されることで、軸受穴32に落ち込んだ状態で、軸受穴32に回動自在に支持されている。
【0020】
上述したように栓担持体24の基端26が回動軸28を介して一対の垂直壁18に回動自在に支持されたとき、栓担持体24は一対の垂直壁18間をこれら垂直壁18に沿って、つまり、蓋本体2の径方向に沿って延び、挿入孔12側に位置した先端を有することになる。そして、回動軸28を中心として栓担持体24が上下に回動されたとき、その先端は挿入孔12に対して接離する。
【0021】
更に、栓担持体24には捻りコイルばね(回動付勢手段)34が装着されている。図5から明らかなように、この捻りコイルばね34は栓担持体24の二股状をなす基端26間に挟持され、この捻りコイルばね34は栓担持体24の基端26に下方から掛止された一端36と、蓋本体2に掛止される他端38とを有し、栓担持体24を上方に向けて回動付勢している。
【0022】
具体的には、図3及び図5を参照すれば明らかなように、捻りコイルばね34の他端38はフックとして形成され、蓋本体2の裏面に一体形成した突起40に掛止されている。また、捻りコイルばね34はその両端部内にばね装着ピン42がそれぞれ配置されており、これらばね装着ピン42は一対の基端26の内側面から一体に突設されている。
図3及び図5に示されているように、栓担持体24の先端には合成樹脂製の閉塞栓44が取付けられており、この閉塞栓44はその上部にて、蓋本体2の裏面側から挿入孔12を閉塞可能となる大きさを有している。図3に示す閉塞位置にあるとき、閉塞栓44の上面は蓋本体2の上面、即ち、挿入孔12の上面開口から所定の距離だけ下方に位置付けられている。
【0023】
また、蓋本体2が受枠4に嵌合された状態にあると、閉塞位置にある閉塞栓44は図3中、2点鎖線で示す受枠4の内周面と、受枠4の内周面に対向する挿入孔12の内壁12aとの間に挟持されている。より詳しくは、挿入孔12の内壁12aは蓋本体2の径方向外側を向き、そして、内壁12aの下部が受枠4の内周面と協働して閉塞栓44を挟持する傾斜面46として形成されている。この傾斜面46は蓋本体2の中心に向けて下り傾斜となっている。
【0024】
更に、閉塞栓44の上面において、受枠4の内周面側及び挿入孔12の傾斜面46側の角部はそれぞれ上向きに凸の円弧面48,50に形成されており、これら円弧面48,50は所定の曲率半径を有する。
一方、閉塞栓44は栓担持体24の先端に対し、栓担持体24の長手方向、即ち、蓋本体2の径方向にスライド可能にして取付けられている。具体的には、図6及び図7から明らかなように、栓担持体24の先端上面には複数、例えば3個の凸条部52が形成されており、これら凸条部52は栓担持体24の長手方向に互いに平行に延びている。
【0025】
一方、閉塞栓44の円弧面50側の後端面には差込み穴54が形成されており、この差込み穴54に凸条部52を備えた栓担持体24の先端側が差込み可能となっている。即ち、図6に示されるように、差込み穴54の底は閉塞栓44内の中間壁56により形成されており、そして、差込み穴54の上面には各凸条部52を摺動自在に受け入れる凹条部58がそれぞれ形成されている。これら凸条部52及び凹条部58の組合せは、栓担持体24に対する閉塞栓44の円滑なスライドを可能にする。
【0026】
そして、中間壁56にはその中央にストッパ孔60が形成され、このストッパ孔60は中間壁56を上下に貫通し、栓担持体24の長手方向に所定の長さだけ延びている。一方、栓担持体24の先端側にはその下面にストッパ突起62が一体に形成されており、このストッパ突起62はストッパ孔60内に位置付けられている。従って、閉塞栓44はそのストッパ孔60の前端又は後端がストッパ突起62に当接するまで、栓担持体24に対して前後にスライドすることができる。このようなストッパ孔60はその長さにより閉塞栓44のスライド量を決定するばかりでなく、栓担持体24からの閉塞栓44の脱落を確実に防止する。
【0027】
ストッパ孔60へのストッパ突起62の位置付けを可能にするため、中間壁56は閉塞栓44の前端側の端部のみにて閉塞栓44に一体に結合され、その周囲は図8から明らかなように閉塞栓44から分離された状態にある。つまり、中間壁56は閉塞栓44内にて片持ち支持され、その端部を中心として弾性変形可能となっている。
それ故、閉塞栓44の差込み穴54内に栓担持体24の先端が差し込まれたとき、ストッパ突起62は中間壁56を押し下げるようにて弾性変形させ、これにより、ストッパ孔60内に位置付けられる。
【0028】
次に、図9〜図12を参照しながら、地下構造物用蓋の開閉について以下に説明する。なお、図9〜図12中、捻りコイルばね34は省略されている。
図9は、受枠4に地下構造物用蓋が嵌合された状態を示し、このとき、閉塞栓44は閉塞位置にあって、蓋本体2の挿入孔12を下方から閉塞している。また、閉塞位置にあるとき、閉塞栓44は図9中に矢印で示すように捻りコイルばね34の回動付勢力により挿入孔12を閉塞する方向、つまり、上向きに付勢され、前述したように受枠4の内周面と挿入孔12の傾斜面46との間にて挟持された状態にあり、この状態は図3に示した状態と同様である。
【0029】
閉塞位置にあるとき、閉塞栓44は蓋本体2の上面よりも下方に位置付けられているので、蓋本体2の上面を車両のタイヤが通過しても、このタイヤが閉塞栓44に接触することはなく、ここでの接触による閉塞栓44の破損等を確実に防止することができる。
図9に示す状態からバールや手鈎等の開蓋治具Aが挿入孔12に斜めに挿入され、図10に示すように閉塞栓44が前述の回動付勢力に抗し、開蓋治具Aにより栓担持体24を介して押し下げられると、閉塞栓44は挿入孔12の傾斜面46から離れる一方、栓担持体24に対し、その基端側に向けてスライドする。それ故、閉塞栓44は受枠4の内周面から離間するから、受枠4の内周面に摺接することなく押し下げられることになり、閉塞栓44の押し下げ、つまり、挿入孔12の開放を円滑に行うことができる。
【0030】
この後、図11に示されるように閉蓋治具Aが更に挿入されると、閉塞栓44は栓担持体24の回動を伴って更に押し下げられる。この時点で、受枠4を支点として開蓋治具Aの先端を上方に持ち上げるべくテコの要領で閉蓋治具Aを操作すれば、蓋本体2と受枠4との嵌合がはずれ、蓋本体2は、そのヒンジ機構のヒンジ軸線回りに回動し、受枠4を開放することができる。
【0031】
この後、開蓋治具Aが挿入孔12から引き抜かれると、閉塞栓44は捻りコイルばね34の回動付勢力を受け、栓担持体24を介して閉塞位置に向けて復動する。
この際、閉塞栓44が前述したように栓担持体24の基端側にスライドしたままの状態にあっても、図12に示されるように閉塞栓44はその後端面の上部が挿入孔12の傾斜面46に当接することで、この傾斜面46に案内されながら栓担持体24の先端側に向けて押し出される。つまり、閉塞栓44は栓担持体24に対して逆向きにスライドし、その閉塞位置に確実に復帰する。
【0032】
しかも、閉塞栓44の後端面上部は円弧面50に形成されていることから、傾斜面46による閉塞栓44の逆向きのスライド、つまり、閉塞位置への閉塞栓44の復帰が円滑になされ、また、閉塞位置にて、円弧面50が傾斜面46に良好に密着することで、閉塞栓44は挿入孔12を確実に密閉することができる。
一方、閉塞治具Aの引き抜きをなす前に蓋本体2が受枠4に再び嵌合されてから、閉塞治具Aの引き抜きがなされる際や、閉塞治具Aの引き抜き後に蓋本体2が受枠4に再び嵌合される際に、閉塞栓44が閉塞位置よりも栓担持体24の先端側にスライドしていても、図12を参照すれば明らかなように、閉塞栓44はその前端面が受枠4の内周面に当接し、この内周面に案内されることで、閉塞位置に向けてスライドし、閉塞位置に確実且つ円滑に復帰する。
【0033】
更に、閉塞栓44は前端面を有し、そして、この前端面の上部が円弧面48に形成されているので、閉塞栓44の押し下げを伴い、挿入孔12内に子供等が悪戯により指を差し入れても、指が閉塞栓44と受枠4の内周面との間にて挟み込まれ、抜け無くなってしまうこともない。
更にまた、前述した閉塞栓ユニット22の閉塞栓44は合成樹脂から形成されているので、閉塞栓ユニット22の大幅な軽量化が達成されるとともに、閉塞栓ユニット22はその一対の回動軸28を蓋本体2の軸受穴32に装着し、そして、その捻りコイルばね34の他端38を蓋本体2の突起40に掛止させるだけで、蓋本体2に対する閉塞栓ユニット22の取付けが完了し、この結果、蓋本体2への開閉装置の組付けを簡単に行うことができる。
【0034】
本発明は、上述した実施例の開閉装置に限定されるものではなく、閉塞栓ユニット22や蓋本体2側の軸受穴32等の具体的な形状や配置等は種々に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一実施例の地下構造物用蓋の蓋本体を示した平面図である。
【図2】図1中、II-II線に沿う蓋本体の断面図である。
【図3】蓋本体の挿入孔の開閉装置を示した図である。
【図4】図1の蓋本体の裏面の一部を示した図である。
【図5】図3の開閉装置の閉塞栓ユニットを示した斜視図である。
【図6】図5の閉塞栓ユニットを一部破断して示した図である。
【図7】図5、6の閉塞栓ユニットの栓担持体を示した斜視図である。
【図8】図5、6の閉塞栓ユニットの閉塞栓をその後端面からみた図である。
【図9】受枠に蓋本体が嵌合され、そして、閉塞栓が閉塞位置にある状態を示した図である。
【図10】図9の状態から開蓋治具により閉塞栓が押し下げられてスライドした状態を示す図である。
【図11】図10の状態から閉塞栓が更に押し下げられた状態を示す図である。
【図12】閉塞栓が閉塞位置に復帰する際、閉塞栓のスライドの状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
2 蓋本体
3 蓋基部
4 受枠
6 凹所
8 外装盤
12 挿入孔(開蓋治具挿入孔)
12a 内壁(挿入孔)
16 開閉装置
18 垂直壁
22 閉塞栓ユニット
24 栓担持体
28 回動軸
32 軸受穴
34 捻りコイルばね(回動付勢手段)
40 突起
42 ばね装着ピン
44 閉塞栓
46 傾斜面
52 凸条部
54 差込み穴
48,50 円弧面
56 中間壁
58 凹条部
60 ストッパ孔
62 ストッパ突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開蓋治具が挿入される開蓋治具挿入孔を外周縁部に開設した蓋本体と、この蓋本体を開閉可能に支持する受枠とを備えた地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置において、
前記開蓋治具挿入孔開閉装置は、前記蓋本体の裏面に前記開蓋治具挿入孔の近傍に位置して設けられた垂直壁と、前記垂直壁に回動自在に軸支された閉塞栓ユニットとを備え、
前記閉塞栓ユニットは、アーム状の栓担持体と、前記栓担持体の先端に設けられた閉塞栓と、前記閉塞栓により前記開蓋治具挿入孔を閉塞する方向に前記栓担持体を回動付勢する回動付勢手段とを備え、
前記閉塞栓は、前記栓担持体の先端に対し、前記栓担持体の長手方向に一定量だけスライド可能に取付けられていることを特徴とする地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置。
【請求項2】
前記栓担持体の長手方向は前記蓋本体の径方向に一致している請求項1に記載の地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置。
【請求項3】
前記蓋本体の径方向外側を向いた前記開蓋治具挿入孔の内壁は、前記蓋本体の中心に向けて下り傾斜となる傾斜面を有する請求項2に記載の地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置。
【請求項4】
前記栓担持体の先端側に設けられ、前記栓担持体の長手方向に延びる凸条部と、
前記閉塞栓内に設けられ、前記凸条部を相対的にスライド自在に受け入れる凹条部とを備える請求項2又は3に記載の地下構造物用蓋の開蓋治具挿入孔開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−84410(P2010−84410A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254021(P2008−254021)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(505093769)株式会社ライセンス&プロパティコントロール (16)
【Fターム(参考)】