説明

地中埋設構造物接続管体の耐震化工法における簡易芯出し装置

【課題】構造が大幅に簡素化され、マンホール等の地下構造物内への搬入・搬出、そして構造物内での組立・分解が簡便で、しかもチェーンソー形コンクリート切断機を切断工具として使用することができる耐震化改修工法における簡易芯出し装置を安価に提供する。
【解決手段】管体Cが剛構造で接続固定されている既設マンホールBの接続部を、耐震継手構造に改修する際、管体C周りのマンホールBの壁面B-1を、同内部より切断工具4を用いて切除して環状の孔Dを形成する簡易芯出し装置であって、管体Cの内径よりも小さい略円筒形状に形成され、周方向数ヶ所に管体Cの内面に圧着させる圧接固定手段7を備える本体部1、管体Cの管芯X延長線に沿って本体部1の軸芯に取り付けられる支柱2、支柱2に対して取り付けられるアーム部材3で構成され、アーム部材3は切断工具4を切断位置に向けて、進退可能で且つ回転可能に取付け支持するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製の地下埋設構造物の壁部に、通水用管路等を構成する管体が剛構造で接続されている既設の地下埋設構造物と管体との接続部を、地震時における水平移動(引き抜き方向及び突っ込み方向等)、そして曲げに耐え得る耐震接続構造に改修するに際して、切断工具を用いて管体周りの構造物側壁の一部を切除して当該周りに環状の孔を開けるために使用される簡易芯出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば地下に構築埋設された出入り口を有するコンクリート製の地下埋設構造物の一つである既設マンホールとこれに剛構造で接続された管体との接続部の耐震化(可撓化)を図り、地震時における引き抜き方向及び突っ込み方向等の水平移動、そして曲げに耐え得る耐震化改修工事が進められている。
【0003】
そして、既設のマンホールとこれに剛構造で接続された管体との接続部を耐震接続構造に改修するための耐震化工法としては、管体周りのマンホールの壁面を切除することによって、同管体の管芯と略同芯とする環状の孔を管体の周りに穿孔し、この環状の孔(空間部)に弾性変形可能な耐震継手部材を取り付ける施工法が一般的に行われている。
【0004】
ところで、管体周りのマンホールの壁面を切除するために必要なことは、できる限り管体の管芯を中心として開けたい孔径に近い穿孔半径円周軌道線上に沿わせてその円周軌道線上方向に連なるドリル孔やカッター孔(スリット)等の切込みを前記管芯と略同芯に近い状態(孔形)にて形成することが、改修施工上において重要とされている。
【0005】
そこで、従来では管体内を利用して、前記穿孔半径円周軌道の中心を決めて、管体周りのマンホールの壁面に管芯と略同芯の切断線(孔)を入れる穿孔装置が先に提案されている(特許文献1)。
即ち、この特許文献1記載の従来装置は、管体内に挿入させる装着部のリンク機構をエア又は油圧によって動作させることで、該リンク機構に備えられている固定板を管体の内面周方向数ヶ所に圧着させ、管体の管芯延長線に沿って装着部に取り付けられる支柱と、この支柱に取り付けられる旋回部を介して切断工具による穿孔半径円周軌道の中心位置決めを行うように構成されている。
【0006】
また、他の実施例としては前記支柱が取り付けられる本体部の外周から放射状に突設させたエア又は油圧シリンダを作動させることで、該シリンダロッドに備えられている当て板を管体の内面周方向数ヶ所に圧着させ、切断工具による穿孔半径円周軌道の中心位置をかなり正確に決められるように構成されている。
【0007】
しかし乍ら、従来装置は、エア又は油圧を作動媒体として利用するものであることから、そのためのエア又は油圧用装置等が必要となり、装置重量が重くなるためその運搬や設置、そしてエア又は油圧ホールの配管等の準備・段取りに手間が掛かるばかりか、コストアップになる。
加えて、狭いマンホール内に搬入されたエア又は油圧ホースが障害になって、切断工具による穿孔作業に影響を与え、管体の周りに環状の孔を形成するのに多大な労力を必要とし、現実的でなく、実用化は困難なものとなっていた。
【0008】
また、穿孔作業中にホースを誤って切断する恐れがある等から、従来装置ではコアドリル等の切削工具を選択せざる得ない。
従って、管体周りのマンホールの壁面に、穿孔半径円周軌道線上に沿わせてドリル径の孔を無数に開ける作業を繰り返さなければならないために、時間と手間が掛かる等の作業効率が極めて悪く、作業者に与える労力も多大なものとなっていた。
即ち、従来装置では、所定長さの切断線を穿孔半径円周軌道線上に沿わせて施しながら効率的に行うことができるチェーンソー形コンクリート切断機を用いることができないものであった。
【0009】
また、従来装置は、管体内に挿入される装着部を含めて旋回部等の構造が複雑で部品点数が多い等から、重量物になり易く、マンホールの狭い出入り口からの搬入・搬出をも重労働になる。
即ち、わが国におけるマンホールの最も一般的な出入り口の開口径(内径)は600mmであることから、重量物の従来装置をこの様な小径の出入り口を通して搬入・搬出するためには重機等の吊り装置を使用して吊り下げ、吊り上げる等の必要があった。
更に、従来装置では、構造が複雑故に、マンホール内に搬入後の旋回部等の組立・分解等においても面倒で手間が掛かるものとなっていた。
【0010】
【特許文献1】特開2002−227226号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、構造が大幅に簡素化され、地下構造物の出入り口を通して搬入・搬出、そして構造物内での組立・分解が簡便であり、しかもチェーンソー形コンクリート切断機を切断工具として使用することができる耐震化改修工法における簡易芯出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、請求項1では、コンクリート製の地下埋設構造物の壁面に、通水用管路等を構成する管体が剛構造で接続固定されている既設地下埋設構造物接続管体の接続部を、耐震継手構造に改修する耐震化工法において、前記管体周りの地下埋設構造物の壁面を、同構造物の内部より切断工具を用いて切除して当該管体の周りに、該管体の管芯と略同芯の環状の孔を形成する簡易芯出し装置であって、
上記管体の内径よりも小さい外径で所要の長さを有する略円筒形状に形成され、その周方向数ヶ所には管体内に挿入させた後に、管体の内面に突き当て圧着させる出没自在な圧接固定手段を備える本体部と、
該本体部の軸芯に、前記管体の管芯延長線に沿って着脱自在に取り付けられる支柱と、
該支柱に沿ってスライド自在で且つ回動自在に取り付けられるアーム部材とで構成され、
前記アーム部材は、前記支柱を中心とする上記環状の孔の穿孔半径軌道線上における切断位置に向けて上記切断工具を、進退可能で且つ回転可能に取付け支持するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
そして、上記本体部は、周面を完全に閉鎖せしめた円筒形状、或いはリング筒状の前後部材の周方向数ヶ所を連結部材にて連結せしめた円筒形状に形成すると共に、内部軸芯には、支柱用の取付部を放射状の腕杆を介して取り付けた単純且つシンプルな構造とすることが好適であり、この本体部の周方向数ヶ所に備える圧接固定手段としては、作業者が手作業で進退動させる手動構造の例えばアジャストボルト等のボルトが挙げられる。
また、上記切断工具としては、コアドリル等のドリルタイプに比べて少ない切削又は切断量で済む等から作業効率が高いチェーンソー形コンクリート切断機が好適である。
【0014】
また、請求項2では、請求項1記載のアーム部材は、支柱に対して進退動可能且つ回動可能に取り付けられるスライドブロックと、切断工具のカッター取付部を備える腕杆とで構成され、前記腕杆は、切断工具の支柱に対する回転半径を調節できるように、前記スライドブロックに移動可能な状態で取り付けられていることにある。
【0015】
更に、請求項3では、請求項1又は2記載の本体部は、周方向が複数個に組立・分解可能に形成されていることを特徴とする。つまり、本体部は、周方向が複数個に分解された状態でマンホール等の地下埋設構造物内に搬入され、同内部において略円筒形状に連結組み立てられるように形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の簡易芯出し装置は、請求項1〜2に記載の構成により、管体内に挿入させて略同芯上に圧着固定させる本体部が、略円筒形状で、周方向数ヶ所には作業者の手作業により進退させる圧接固定手段を備えてなることで、エア又は油圧によって管体の内面に固定する従来装置に比べて構造が大幅に簡素化されたシンプルな構造となる。それにより、安価に製作することができる
そして、シンプルな構造でありながら、切断工具による穿孔半径円周軌道の中心芯出しを、本体部の軸芯に取り付けられる支柱と、この支柱に進退動可能で且つ回動可能に取り付けられるアーム部材とによって確実に行うことができる。
【0017】
また、エア又は油圧を使わずに切断工具の芯出しを行うようにしてなることで、エア又は油圧用装置等の運搬や設置、そしてその配管等の手間の掛かる準備作業が一切不要となることで、穿孔作業に入る前の段取りが従来装置に比べて頗る簡単で且つ短時間で行うことができると共に、耐震化改修工事費のコストダウンを図ることができる。
【0018】
更に、従来装置のように、穿孔作業の障害となるエア又は油圧ホース等の構造物内部への配管搬入が不要となることで、所定の長さの切断線を、管体周りの穿孔半径軌道線上に沿わせて効率的に施しながら穿孔作業を行うことができるチェーンソー形コンクリート切断機を切断工具として使用することが可能となる。それにより、作業者に与える労力を軽減すると同時に耐震改修工期の大幅な短縮化が期待できる。
【0019】
請求項3に記載の構成により、管体の内径よりも外径が小さい略円筒形状に分解・組立可能に形成される本体部の出入り口からの搬入・搬出をより簡便に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の最良の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図面は、コンクリート製の地下埋設構造物の一つである既設マンホールBの壁面B-1に、通水用管路等を構成する管体Cが剛構造で接続固定されている接続部を、耐震継手構造に改修する場合の耐震化工法を示す。
図1は、本発明簡易芯出し装置Aの実施形態の一例を示し、図中1は本体部、2は支柱、3はアーム部材であり、このアーム部材3に切断工具、図示例ではチェーンソー形コンクリート切断機(以後、切断機と略す)4を取付け、支柱2に沿って前後にスライドさせると共に、支柱2を中心に回動するアーム部材3の所定角度での回転を繰り返しながら管体C周りのマンホールBの壁面B-1に切断機4のチェーンバ―4-1を順次に突き当て押し込むことで、支柱2を中心(管体Cの管芯X)とする穿孔半径円周軌道線X-1上に沿わせてチェーンバー4-1の刃幅に相当する長さの切断線5が順次連なるように切り込まれ、連なる切断線5に取り囲まれた切除部分が管体Cの周りに形成されるようにしている。
【0022】
本体部1は、金属材やその他の剛性を備えた材料によって形成されるもので、管体Cの内径よりも小さい外径で適宜の幅を有するリング筒状の前後部材1-1,1-2と、この前後部材1-1,1-2を周方向数ヵ所、図示例では三ヶ所において連設する連設部材1-3とで所要の長さ有する前後開口の略円筒形状に形成され、前後部材1-1,1-2の周方向数ヶ所には管体C内に挿入させた後に、管体Cの内面に突き当て圧着させる進退自在な圧接固定手段7が備えられている。
【0023】
また、本体部1の軸芯線上における前後部材1-1、1-2の内側には、同部材1-1,1-2の軸芯方向に向けて内向き放射状に取り付けた腕部材1-5を介して筒状の取付部1-4が固着支持されており、この前後の取付部1-4に渡り支柱2を嵌挿取り付けることで、該支柱2が本体部1の軸芯線上における前後2点支持構造にて組み立てられ、管体Cの管芯X延長線上に沿ってマンホールB内に所要の長さにて突出保持されるようにしてある。
尚、後部部材1-2側(管体C奥へ挿入される側)に取り付けられる取付部1-4は、一端開口の袋状として、支柱2の一端部が嵌挿受け止められるようにしたり、また、取付部1-4を前後に分けずに、本体部1と同じ長さの1本ものとする等、任意である。
【0024】
図中5は、前後の取付部1-4に夫々備えられている支柱抜止めボルトであり、支柱2を前後の取付部1-4に渡り取り付けた後に締め付けることで、該支柱2を前後の取付部1-3に締着するようにしている。換言すれば、支柱2を本体部1の軸芯延長線上に抜止不能に締着し得るようにしてある。
【0025】
更に、本体部1の前部部材1-1の開口縁には、管体Cの管口縁に引掛けるフック状の掛け部6が備えられており、本体部1を管体Cに挿入させた際に、該管体C内への本体部1の挿入量を規制するようにしている。
即ち、図示を省略しているが、例えばマンホールBが構築埋設される場所の地形が傾斜している場合においては、その傾斜地形に合わせて管体Cも斜めに配管埋設されてマンホールBに接続されるものであるが、この傾斜管体Cに本体部1を挿入させた際に、本体部1が管体C奥へと入り込まないように本体部1の管体Cへの挿入量を掛け部6によって規制するようにしてある。
【0026】
上記圧接固定手段7は、作業者が手作業にて進退させるアジャストボルト7-1であり、前後部材1-1,1-2の周方向四ヶ所に等間隔をおいて設けられているネジ孔又はナットを取付けたボルト挿通孔に取り付けられ、本体部1が管体C内に挿入された後に、作業者自身が工具等を用いて回すことで、管体Cの内面周方向等間隔をおいて圧着せしめ、これにより、本体部1が管芯Xと略同芯に近い状態で管体C内に固定されるようにしている。
尚、圧接固定手段7としてはアジャストボルト7-1に限らず、作業者が手作業で前進突出させて管体Cの内面に圧着させると共に、後退没入させてその圧着状態を解除し得る手動構造のものであれば良く、任意である。
【0027】
支柱2は、表面が円滑な中空又は中実の円柱形状のステンレス製であり、本体部1に組込み取り付けられた状態において、管体Cの管芯延長線上に沿ってマンホールB内に所要の長さにて突出する長さに形成されている。
【0028】
アーム部材3は、支柱2に外挿されるスライドブロック3-1と、このブロック3-1に取り付けられる一対の腕杆3-2と、この腕杆3-2の先端に取り付けられる切断機4用のカッター取付部3-3とで構成されている。
【0029】
スライドブロック3-1は、支柱2を挿入させるための支柱挿入孔8を有し、支柱2に外挿させることによって、支柱2に沿ってその長手方向に進退摺動、そして、支柱2を支点に回転するようにしてある。
【0030】
また、スライドブロック3-1は、一対の腕杆3-2を所要の平行間隔をおいて挿入させるための腕杆挿入孔9を、前記支柱挿入孔8の開口方向に対して直交する方向に有し、一対の腕杆3-2に外挿させることによって、一対の腕杆3-2が支柱2を支点にその直交方向に、切断機4の支柱2に対する回転半径を調節できるように移動するようにしてある。
即ち、管体Cの管芯X延長線上に本体部1を介して同芯に固定される支柱2を中心に管体Cの周りに形成する環状の孔(環状空隙)Dの大きさに合わせて一対の腕杆3-2を摺動させることで、切断機4のチェーンバー4-1を穿孔半径円周軌道線X-1に調節位置させることができるようにしてある。
【0031】
図中10は、腕杆3-2をスライドブロック3-1に不動な状態に締着固定する止めボルトであり、11は、アーム部材3を支柱2に対して前後に移動(摺動)させたり、適宜の角度にて段階的に回転させる際に用いられる把手である。
【0032】
カッター取付部3-3は、上記一対の腕杆3-2の端部側に取り付けられるブロック状を成し、後述のアタッチメントブロック12が着脱可能に固定されることで、切断機4が取り付けられるようにしている。
図中13は、一対の腕杆3-2の一端側に備えた抜止用のスナップリングであり、カッター取付部3-3から突出させた他端側が後述の取付孔14に挿入内在されるようにしてある。
【0033】
切断機4は、周知のように、原動機であるモータが内蔵されている本体部4-3と、この本体部4-3から適宜の刃幅にて延びるチェーンバー4-1及びチェーン4-2とかなるものであり、上記アーム部材3のカッター取付部3-3に着脱自在に取り付けるアタッチメントブロック12が備えられている。
【0034】
アタッチメントブロック12は、上記カッター取付部3-3から突出する一対の腕杆3-2の端部側が挿入される取付孔14を有し、この取付孔14に向けて進退自在とする腕杆抜止ボルト15が備えられていて、カッター取付部3-3に取り付けられるようにしてある。
【0035】
次に、以上の如く構成された本例芯出し装置Aを用いた切断機4による管体C周りのマンホールBの壁面B-1に環状の孔Dを形成するその作業手順について簡単に説明する。
先ず、既設マンホールBの出入り口(図示せず)から本体部1、支柱2、アーム部材3、切断機4をマンホールB内に搬入する。そうして、本体部1を環状の孔Dを形成する管体C内に挿入する。この際、掛け部6が管体Cの管口縁に突き当たるまで本体部1を挿入させた後に、前後の周方向数ヵ所のアジャストボルト7を回して本体部1を管体C内に固定する。
【0036】
そして、支柱2を本体部1軸芯の前後の取付部1-4に渡り組み込み取り付けると共に、各取付部1-4の支柱抜止ボルト5を締め付けて支柱2を締着固定する。
その後に、支柱2にアーム部材3を組み込むと共に、該アーム部材3のカッター取付部3-3に切断機4を取り付けることで、管体C周りのマンホールBの壁面B-1に切断線5を入れる段取り設置が終わる(図3参照)。
尚、出入り口を通しての搬入・搬出が可能な場合、予め支柱2を本体部1に取り付けて、該本体部1と共にマンホールB内に搬入させることも可能である。
【0037】
次に、形成する環状の孔Dの大きさ、つまり、管芯Xを中心とする穿孔半径円周軌道線X-1上に切断機4のチェーンバー4-1の先端が突き当たる位置に、アーム部材3の一対の腕杆3-2を何れか一方に移動させる位置決めを行い。位置が決まったところで、腕杆抜止ボルト15を締め付けて一対の腕杆3-2をスライドブロック3-1に締着固定する(図4(a)参照)。
【0038】
穿孔半径円周軌道線X-1上に沿わせたチェーンバー4-1の位置調節が完了したところで、切断機4のモータを作動させ、アーム部材3を支柱2に沿って前進移動させてチェーンバー4-1をマンホールBの壁面B-1に突き当てて押し込む。すると、チェーンバー4-1の刃幅に相当する長さの切断線5が壁面B-1に切り込まれる。1本目の切断線5が切り込まれたら、アーム部材3を支柱2に沿って後退移動させてチェーンバー4-1を壁面B-1から引き離し、アーム部材3を所定角度回して壁面B-1に対する切断位置を変えて、再びアーム部材3を前進移動させて、先に切り込まれた切断線5に隣接連なるようにチェーンバー4-1の先端を穿孔半径円周軌道線X-1に沿う壁面B-1に突き当て押し込んで新たな切断線5を切り込む(図4(b)及び(c)参照)。
【0039】
以後、支柱2を沿わせてアーム部材3の進退と所定角度での回転とを繰り返しながら管体C周りのマンホールBの壁面B-1に切断機4によって順次に連なる切断線5を切り込み、穿孔半径円周軌道線X-1に沿って連なる切断線5によって円形に近い多角形に取り囲まれた切除部分が管体Cの周りに形成される(図5参照)。
【0040】
切断線5によって囲まれた切除部分が管体Cの周りの形成された当該切除部分を取り除くことで、環状の孔(環状空隙)Dが管体Cの周りに形成され、これにより、管体CとマンホールBとは縁切りされる(図6(a)参照)。
【0041】
上記の切断作業によって管体Cの周りに形成された環状の孔Dに、耐震継手ユニット16を取り付けることで、既設マンホールBの壁面B-1と管体Cとの耐震化改修工事が完了する。
【0042】
耐震継手ユニット16としては種々形態があることから、特に限定されるものではないが、その一例を挙げるならば、管体Cの外径より大きく、且つ前記環状の孔D内に嵌る大きさの環状を成した金属製スリーブ16-1と、軸方向に押し込むことで同軸方向に折り返すことができる弾性変形可能な可撓性ゴムチューブ16-2とで構成されている。
尚、この耐震継手ユニットを環状の孔Dに取り付ける施工手順は、本願出願人による特開2003−105788号、特開2003−232048号等に開示されているものを用いることができる。
【0043】
即ち、その一例を挙げるならば、図6に示すように、管体Cの管口外側にゴムチューブ16-2の一端側を締付バンド17で嵌着固定し、同チューブ16-2の他端側を、金属製スリーブ16-1の外側に締付バンド18で嵌着固定する。
然る後に、前記スリーブ16-1を前記管体Cの外周面と環状の孔Dの内周面との間に押し込んで前記ゴムチューブ16-2を軸方向に折返し反転させた状態で、環状の孔Dの内周面と金属製スリーブ16-1の外周面との間に、樹脂系シール材、モルタル、樹脂系モルタル等からなる連結材19を注入充填せしめて、スリーブ16-1の外周面を環状の孔Dの内周面に連結固定する。
そして、スリーブ16-1の内周面と管体Cの管口外周面との間に、発泡ウレタン又は発泡スチロール等からなる緩衝材20を注入充填せしめて、スリーブ16-1の内周面を管体Cの管口外周面に連結固定するものである。
【0044】
尚、図7に示したように、ゴムチューブ16-2の他端側を金属製スリーブ16-1の外側に嵌着固定する締付バンド18に、等間隔をおいて複数の受け止め部材21を備え、前述のようにゴムチューブ16-2を軸方向に折返し反転させるように管体Cの外周面と環状の孔Dの内周面との間に金属リング16-1を押し込んだ後に、同リング16-1の外周面と環状の孔Dの内周面との間を塞ぐ大きさでリング状に形成されたスポンジやゴム質部材等からなる閉鎖体22を装填セットせしめた後に、前述したように、環状の孔Dの内周面と金属製スリーブ16-1の外周面との間に連結材19を注入充填するようにすることが好適なものとなる。
即ち、マンホールBの外側に隙間や空洞が生じていた場合、注入される連結剤19がその隙間や空洞部に流れ出して確実な充填作業を行うことができなくなる恐れがある。それを容易且つ確実にならせしめるために、環状の孔Dの内周面と金属製スリーブ16-1の外周面との間に閉鎖体22を装填セットせしめて連結材19の充填作業を行うようにすることが好適なものとなる。
【0045】
また、管体Cの周りに環状の孔Dを形成する上記の切断作業から環状の孔Dに耐震継手ユニット16を取り付けるこれら一連の耐震化改修工事中において、図8及び図9に示したように、本発明芯出し装置Aの本体部1にネジ止め等により蓋体23を取り付けて、該蓋体23によって管体Cの管口を全面又は下半部側のみを閉鎖せしめる。
そして、蓋体23に設けられている接続口24に蛇腹の可撓性を有するホース25等の一端側を接続すると共に、同ホース25の他端側を下流側の管体C-1に挿入させて、マンホールBにおける上流側の管体Cと下流側の管体C-1とを連絡する排水バイバスを備えることで、耐震化改修工事中に下水等の流水を止める必要が無くなる。それにより、下水等の流水を止める等の耐震化改修工事を行う前の段取り手間が軽減されることとなる。
【実施例2】
【0046】
図10は、本発明簡易芯出し装置A-1の他の実施例を示し、斯かる実施例2では、前述実施例1における本体部1が、周方向に組立・分解可能に三分割されており、出入り口B-2を通してマンホールB内への搬入、そしてマンホールBからの搬出をより一層簡便に行ない得るようにしている。
尚、斯かる実施例2においては図示のように、本体部100を組立・分解可能に形成した以外の構成部分においては前述実施例1と基本的に同じであることから同じ構成部分に同じ符号を用いることで重複説明は省略する。
【0047】
本体部100は、周方向に三分割された略扇形を呈する各分割体101〜103をボルトナット26で連結することで、管体Cの内径よりも小さい外径で所要の長さを有する略円筒形状に形成されるようにしている。
【0048】
各分割体101〜103は、周方向に三分割せしめられた円弧状の前後部材1-10,1-20と、この前後部材1-10,1-20を連設する連設部材1-30と、前記前後部材1-10,1-20の円弧両分割縁から夫々本体部100の軸芯に向けて内向きに取り付けられる腕部材1-50と、この腕部材1-50の端部に取り付けられる三分割せしめられた円弧状の取付部材1-40とで略扇形に形成される。
即ち、図10(b)に示すように、各分割体101〜103を周方向に組み合わせながら、互いに隣接衝合し合う各分割体101〜103の腕部材1-40同士をボルトナット23により着脱自在に連結することによって、本体部100が周方向に組立・分解されるように構成している。
【0049】
図中27は、各分割体101〜103を周方向に組み合わせ衝合せしめた際に互いに適合連通し合うように、各分割体101〜103の夫々の腕部材1-40に設けたボルト連結孔である。
【0050】
尚、本体部100は三分割に限らず、本体部100の大きさに応じて四分割〜6分割するも任意である。
【0051】
次に、以上の構成されている分割タイプの本体部100を有する本例簡易芯出し装置A-1の使用法について簡単に説明する。
分割体101〜103を出入り口からマンホールB内に個々に搬入する。そうして、マンホールB内に搬入された各分割体101〜103を周方向に組み合わせながら、互いに隣接衝合せしめた各分割体101〜103の腕部材1-40をボルトナット26によって連結せしめて略円筒形状の本体部100を組み立てる。この際、前後部材1-10,1-20の内側に腕部材1-40を介して取り付けた略円筒状に組み合わせ形成される各取付部材1-50の間に支柱2を挟み込んだ状態でボルトナット23による各分割体101〜103の連結を行うと良い。
【0052】
以後、前述実施例1のように、円筒状に組み合わせた本体部100を、掛け部6が管体Cの管口縁に突き当たるまで同管体C内に挿入させた後に、アジャストボルト7-1を回して本体部100を管体C内に圧着固定し、支柱2にアーム部材3を組み込む等の手順にて芯出し装置A-1を組み立てることで、管体C周りのマンホールBの壁面B-1に切断線5を入れるための段取り設置が終わる。
【0053】
そして、前述実施例1のように、切断線5によって囲まれた切除部分が管体Cの周りの形成され、当該切除部分を取り除くことで、管体Cの周りに形成される環状の孔(環状空隙)Dに、耐震継手ユニット16を取り付けるまでの既設マンホールBの壁面B-1と管体Cとの一連の耐震化改修工事が完了した後においては、切断機4、アーム部材3、支柱2を取り外し分離せしめると共に、管体C内面へのアジャストボルト7-1の圧着状態を解除せしめて、本体部100を管体C内から引き抜いて三分割せしめた後に、各分割体101〜103を個々にマンホールBから搬出する。
【0054】
従って、分割方式の本体部100からなる芯出し装置A-1によれば、マンホールBへの搬入、そして搬出がより一層簡便になると共に、外径がマンホールBの出入り口の開口径(マンホール蓋径)よりも大きい等の耐震改修現場においては特に有効になる。
【0055】
尚、上記実施例1,2においては既設マンホールBと管体Cとの剛構造の接続部における耐震化改修工事について説明したが、コンクリート製の地下埋設構造物として、他にポンプ場、処理場、処理槽等の大型の地下埋設構造物が挙げられる。
【0056】
また、本発明の具体的な実施例にあっては、前述の各実施例1〜2構成に限定されるものではなく、請求項1〜3記載の要旨を免脱しない範囲で種々変更して行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明簡易芯出し装置の実施形態の一例を示す分解斜視図
【図2】アーム部材のカッター取付部に対する切断機の取付関係を示す斜視図
【図3】管体内に取り付け固定した芯出し装置の本体部に、支柱、アーム部材を組み込み取り付け、そして切断工具をアーム部材のカッター取付部に取り付けた段取り完了の状態を示す側面図
【図4】切断機のチェーンバーと形成される切断線の位置関係を説明するための斜視図
【図5】管体周りのマンホール壁面に、穿孔半径円周軌道線に沿って連なる切断線によって円形に近い多角形に取り囲まれた切除部分が形成された状態を示す背面図
【図6】耐震継手ユニットを、環状の孔に取り付ける施工手順を示す説明図
【図7】耐震継手ユニットを、環状の孔に取り付ける他の実施施工例を示し、(a)は要部の拡大縦断面図、(b)はその一部を示した分離斜視図
【図8】一連の耐震改修工事を施すに際して、地中に構築されている管路を流れる下水等の流水を止めずに行うためのバイバス構造を示す側面図で、要部を断面図して示す
【図9】同要部の分解斜視図
【図10】本発明簡易芯出し装置を構成する本体部の他の実施形態を示す分解斜視図
【符号の説明】
【0058】
A,A-1:簡易芯出し装置 1,100:本体部
2:支柱 3:アーム部材
3-1:スライドブロック 3-2:腕杆
3-3:カッター取付部 4:切断機(切断工具)
7:圧接固定手段 101〜103:分割体
B:マンホール B-1:壁面
C:管体 D:環状の孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の地下埋設構造物の壁面に、通水用管路等を構成する管体が剛構造で接続固定されている既設地下埋設構造物接続管体の接続部を、耐震継手構造に改修する耐震化工法において、
前記管体周りの地下埋設構造物の壁面を、同構造物の内部より切断工具を用いて切除して管体の周りに、該管体の管芯と略同芯に近い環状の孔を形成する簡易芯出し装置であって、
上記管体の内径よりも小さい外径で所要の長さを有する略円筒形状に形成され、その周方向数ヶ所には管体内に挿入させた後に、管体の内面に突き当て圧着させる進退自在な圧接固定手段を備える本体部と、
該本体部の軸芯に、前記管体の管芯延長線に沿って取り付けられる支柱と、
該支柱に沿ってスライド自在で且つ回動自在に取り付けられるアーム部材とで構成され、
前記アーム部材は、前記支柱を中心とする上記環状の孔の穿孔半径円周軌道線上における切断位置に向けて上記切断工具を、進退可能で且つ回転可能に取付け支持するように形成されていることを特徴とする地下埋設構造物接続管体の耐震化工法における簡易芯出し装置。
【請求項2】
請求項1記載のアーム部材は、支柱に対して進退動可能且つ回動可能に取り付けられるスライドブロックと、切断工具のカッター取付部を備える腕杆とで構成され、
前記腕杆は、切断工具の支柱に対する回転半径を調節できるように、前記スライドブロックに移動可能な状態で取り付けられていることを特徴とする地下埋設構造物接続管体の耐震化工法における簡易芯出し装置。
【請求項3】
上記本体部は、周方向が複数個に組立・分解可能に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の地下埋設構造物接続管体の耐震化工法における簡易芯出し装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−57390(P2006−57390A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242396(P2004−242396)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(390021197)テイヒュー株式会社 (9)
【Fターム(参考)】