説明

地中熱ヒートポンプ装置

【課題】負荷運転中、蒸発器として機能する熱源側熱交換器の不凍液流路の不凍液中の水分の凍結を防止する地中熱ヒートポンプ装置を提供する。
【解決手段】熱源側熱交換器7を蒸発器、負荷側熱交換器5を凝縮器として機能させて負荷側を加熱する負荷運転を行う地中熱ヒートポンプ装置において、負荷運転時に、圧縮機4の吐出温度が予め設定された目標吐出温度になるように減圧手段6の開度を制御する制御手段19を設け、制御手段19は、負荷運転時に、熱源側熱交換器7側の冷媒の温度を検出する蒸発温度検出手段10の検出冷媒温度が、熱源側熱交換器7の不凍液流路7bで不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定された凍結温度に達したと判断すると、圧縮機4から吐出される冷媒の目標吐出温度をそれまでよりも所定温度低く設定し、新たに設定された前記目標吐出温度になるよう減圧手段6の開度を開く方向に制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸発器として機能する熱源側熱交換器の不凍液流路での不凍液の凍結を防止する地中熱ヒートポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の地中熱ヒートポンプ装置においては、図4に示すように、圧縮機101、負荷側熱交換器102の冷媒流路102a、膨張弁103、熱源側熱交換器104の冷媒流路104aを冷媒配管で環状に接続したヒートポンプ回路105と、熱源側熱交換器104の不凍液流路104b、地中に設置された地中熱交換器106を不凍液配管で環状に接続した地中熱循環回路107と、地中熱循環回路107に不凍液を循環させる地中熱循環ポンプ108と、床暖房パネル等の負荷端末109、負荷側熱交換器102の暖房循環液流路102bを暖房循環液配管で環状に接続した負荷側循環回路110と、負荷側循環回路110に暖房循環液を循環させる負荷側循環ポンプ111とを備え、熱源側熱交換器104を蒸発器、負荷側熱交換器102を凝縮器として機能させて、負荷端末109で被空調空間を加熱する暖房運転等の負荷運転を行うものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−30705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来の地中熱ヒートポンプ装置において、負荷端末109による暖房運転の際に、暖房出力が急激に増加した場合、それに伴って蒸発器としての熱源側熱交換器104側の冷媒の温度が急激に低下し、例えば、熱源側熱交換器104側の冷媒の温度が−10℃を下回ると、熱交換器の種類によっては、熱源側熱交換器104の不凍液流路104bを流通する不凍液中の水分が凍結し始め、不凍液流路104b内壁に徐々に氷が張っていく。
【0005】
そして、不凍液流路104b内壁に氷が張るにつれて、不凍液流路104bが閉塞されていき、地中熱循環回路107を循環する不凍液の循環流量が低下すると共に、熱源側熱交換器104での熱交換量が不足していくため、熱源側熱交換器104側の冷媒の温度低下が収束しない。その結果、不凍液流路104b内で氷が成長していき、熱源側熱交換器104が破損するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記課題を解決するために、特に請求項1ではその構成を、圧縮機、負荷側熱交換器の冷媒流路、減圧手段、熱源側熱交換器の冷媒流路を冷媒配管で環状に接続したヒートポンプ回路と、前記熱源側熱交換器の不凍液流路と地中に設置された地中熱交換器とを不凍液配管で環状に接続した地中熱循環回路と、該地中熱循環回路に不凍液を循環させる地中熱循環ポンプと、前記熱源側熱交換器側の冷媒の温度を検出する蒸発温度検出手段とを備え、前記地中熱交換器により地中熱を採熱し、前記熱源側熱交換器を蒸発器として機能させると共に、前記負荷側熱交換器を凝縮器として機能させて負荷側を加熱する負荷運転を行う地中熱ヒートポンプ装置において、前記負荷運転時に、前記圧縮機の吐出温度が予め設定された目標吐出温度になるように前記減圧手段の開度を制御する制御手段を設け、前記制御手段は、前記負荷運転時に、前記蒸発温度検出手段の検出する冷媒温度が、前記不凍液流路で不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定された凍結温度に達したと判断すると、前記目標吐出温度をそれまでよりも所定温度低く設定し、新たに設定された前記目標吐出温度になるよう減圧手段の開度を開く方向に制御するものとした。
【0007】
また、請求項2では、前記制御手段は、前記負荷運転時に、前記蒸発温度検出手段の検出する冷媒温度が、前記不凍液流路で不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定された凍結温度に達したと判断すると、前記目標吐出温度を所定温度低く設定し、新たに設定された前記目標吐出温度になるよう減圧手段の開度を開く方向に制御すると共に、前記圧縮機の周波数を増加させるよう制御するものとした。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、制御手段は、負荷運転時に、蒸発温度検出手段の検出する冷媒温度が、不凍液流路で不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定された凍結温度に達したと判断すると、目標吐出温度をそれまでよりも所定温度低く設定し、新たに設定された目標吐出温度になるよう減圧手段の開度を開く方向に制御することで、熱源側熱交換器側の冷媒の温度が上昇し、負荷運転中の熱源側熱交換器の不凍液流路の凍結を防止でき、熱源側熱交換器の破損を未然に防止することができるものである。
【0009】
また、請求項2によれば、制御手段は、負荷運転時に、蒸発温度検出手段の検出する冷媒温度が、不凍液流路で不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定された凍結温度に達したと判断すると、目標吐出温度を所定温度低く設定し、新たに設定された目標吐出温度になるよう減圧手段の開度を開く方向に制御すると共に、圧縮機の周波数を増加させるよう制御することで、熱源側熱交換器側の冷媒の温度が上昇するので、熱源側熱交換器の不凍液流路の凍結を防止できると共に、暖房出力を低下させることがなく、安定した暖房出力を得ることができ、使用感を損なうことがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同一実施形態の熱源側熱交換器の不凍液流路の凍結防止動作を示すフローチャート。
【図3】同一実施形態の暖房運転時の各パラメータの動きを表すタイムチャート。
【図4】従来の地中熱ヒートポンプ装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明の第1の実施形態の地中熱ヒートポンプ装置を図1に基づき説明する。
図1のように、本実施形態の地中熱ヒートポンプ装置は、大きく分けてヒートポンプユニット1と、地中熱交換部2と、負荷熱交換部3とから構成されるものである。
【0012】
前記ヒートポンプユニット1は、冷媒を圧縮する能力可変の圧縮機4と、圧縮機4から吐出された高温冷媒を流通させ、この高温冷媒と負荷熱交換部3の負荷側の熱媒との熱交換を行う凝縮器としての負荷側熱交換器5の冷媒流路5aと、負荷側熱交換器5の冷媒流路5aから流出する冷媒を減圧する減圧手段としての膨張弁6と、膨張弁6からの減圧した低温冷媒を流通させこの低温冷媒と地中熱交換部2の熱源側の熱媒との熱交換を行う蒸発器としての熱源側熱交換器7の冷媒流路7aとを備え、これらを冷媒配管で環状に接続しヒートポンプ回路8を形成しているものである。なお、ヒートポンプユニット1の冷媒としては、二酸化炭素冷媒やHFC冷媒等の任意の冷媒を用いることができるものである。また、9は圧縮機4から吐出された冷媒の温度を検出する吐出温度検出手段としての吐出温度センサ、10は膨張弁6から圧縮機4に至るまでの熱源側熱交換器7側の冷媒配管、つまり低圧側の冷媒配管に設けられ、低圧側の冷媒の温度を検出する蒸発温度検出手段としての蒸発温度センサである。
【0013】
前記負荷側熱交換器5および前記熱源側熱交換器7はプレート式熱交換器で構成され、プレート式熱交換器は複数の伝熱プレートが積層され、冷媒を流通させる冷媒流路と流体を流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
【0014】
また、前記地中熱交換部2は、熱源側熱交換器7の不凍液流路7bと、熱源側熱交換器7の冷媒流路7aを流通する冷媒を加熱する熱源として地中に設置され互いに並列に接続された複数の地中熱交換器11とを不凍液配管で環状に接続する地中熱循環回路12と、地中熱循環回路12に熱媒としてエチレングリコールやプロピレングリコール等を添加した不凍液を循環させる回転数可変の地中熱循環ポンプ13とを備えているものである。
【0015】
ここで、前記地中熱交換部2では、後述する負荷運転を行う際に、地中熱交換器11によって地中から地中熱を採熱し、その熱を帯びた不凍液が地中熱循環ポンプ13により熱源側熱交換器7の不凍液流路7bに供給される。そして、熱源側熱交換器7にて冷媒流路7aを流通する冷媒と不凍液流路7bを流通する不凍液とが対向して流れて熱交換が行われ、地中熱交換器11にて採熱された地中熱がヒートポンプユニット1の冷媒側に汲み上げられて冷媒が加熱され、熱源側熱交換器7は蒸発器として機能するものとなる。
【0016】
また、前記負荷熱交換部3は、負荷側熱交換器5の暖房循環液流路5bと、被空調空間を加熱する床暖房パネル等の負荷端末14とを暖房循環液配管で環状に接続した負荷側循環回路15と、負荷側循環回路15に暖房循環液を循環させる負荷側循環ポンプ16と、負荷端末14毎に分岐した負荷側循環回路15に各々設けられ、その開閉により負荷端末14への暖房循環液の供給を制御する熱動弁17(17a、17b)とを備えているものである。なお、18は負荷側循環回路15に設けられ負荷端末14から負荷側熱交換器5の暖房循環液流路5bに流入する暖房循環液の温度を検出する負荷温度検出手段としての負荷温度センサである。
【0017】
前記負荷端末14によって加熱される被空調空間には、リモコン(図示せず)が各々設置されており、このリモコンにより被空調空間の加熱の指示がなされると、圧縮機4および地中熱循環ポンプ13および負荷側循環ポンプ16の駆動が開始され、熱源側熱交換器7を蒸発器として機能させると共に、負荷側熱交換器5を凝縮器として機能させて負荷側を加熱する負荷運転としての暖房運転が行われる。この暖房運転の際、負荷側熱交換器5では、負荷側熱交換器5の冷媒流路5aを流通する冷媒と負荷側熱交換器5の暖房循環液流路5bを流通する暖房循環液とが対向して流れて熱交換が行われて暖房循環液が加熱され、加熱された暖房循環液が熱動弁17を介して負荷端末14に送られ、リモコンにより指示された被空調空間を加熱するものである。
【0018】
19は吐出温度センサ9、蒸発温度センサ10、負荷温度センサ18の入力や前記リモコンからの信号を受けて、圧縮機4、膨張弁6、地中熱循環ポンプ13、負荷側循環ポンプ16の各アクチュエータの駆動を制御するマイコンを有する制御手段である。
【0019】
前記制御手段19は、暖房運転中、負荷温度センサ18の検出する暖房循環液の温度が設定された目標暖房温度になるように圧縮機4の周波数を制御し、例えば、負荷温度センサ18の検出する暖房循環液の温度が設定された目標暖房温度よりも低下すると、圧縮機4の周波数を増加するよう制御するものである。
【0020】
また、前記制御手段19は、暖房運転時、リモコンで設定される負荷端末14の設定温度に基づき圧縮機4から吐出される冷媒の目標吐出温度を設定し、暖房運転中、吐出温度センサ9の検出する圧縮機4から吐出された冷媒の温度が設定された目標吐出温度になるように膨張弁6の開度を開閉制御し、例えば、吐出温度センサ9の検出する冷媒の吐出温度が設定された目標吐出温度よりも低下すると開度を閉じる方向に制御するものである。
【0021】
また、前記制御手段19は、暖房運転中、蒸発温度センサ10の検出する低圧側の冷媒温度が設定された目標蒸発温度になるように地中熱循環ポンプ13の回転数を制御し、例えば、蒸発温度センサ10の検出する低圧側の冷媒温度が設定された目標蒸発温度よりも低下すると、地中熱循環ポンプ13の回転数を増加させるよう制御するものである。
【0022】
次に、図1に示す一実施形態の暖房運転中の不凍液流路7bの凍結防止動作について図2に示すフローチャートおよび図3に示すタイムチャートに基づき説明する。
前記リモコンにより負荷端末14による被空調空間の暖房の指示がなされると、前記制御手段19は圧縮機4、地中熱循環ポンプ13、負荷側循環ポンプ16の駆動を開始させ、暖房運転が開始される。暖房運転が開始されると、負荷側熱交換器5では負荷側循環ポンプ16により循環される暖房循環液と圧縮機4から吐出された高温高圧の冷媒とが熱交換され、加熱された暖房循環液が負荷端末14に供給され被空調空間を加熱すると共に、熱源側熱交換器7では、地中熱循環ポンプ13により循環され地中熱交換器11を介して地中熱を採熱した不凍液と膨張弁6から吐出された低温低圧の冷媒とが熱交換され、地中熱により冷媒を加熱し蒸発させるものである。
【0023】
この暖房運転時、制御手段19は、圧縮機4から吐出される冷媒の目標吐出温度および熱源熱交換器7側(低圧側)の冷媒の目標蒸発温度および負荷側の目標暖房温度を設定し、暖房運転中、吐出温度センサ9の検出する圧縮機4から吐出された冷媒の温度が設定された目標吐出温度になるように膨張弁6の開度を開閉制御し、蒸発温度センサ10の検出する低圧側の冷媒温度が設定された目標蒸発温度になるように地中熱循環ポンプ13の回転数を制御し、負荷温度センサ18の検出する暖房循環液の温度が設定された目標暖房温度になるように圧縮機4の周波数を制御するものである。
【0024】
前記暖房運転中は、暖房運転開始直後の立ち上がり時や負荷端末14の運転台数の増加等によって暖房出力が急激に増加する場合があり、この場合、図3の時間t1〜t2に示されているように、暖房出力の急激な増加に伴って熱源側熱交換器7側の冷媒の温度が急激に低下する。熱源側熱交換器7としてプレート式熱交換器を使用した場合、不凍液流路7bを流通する不凍液は、不凍液流路7bの両側から伝熱プレートを隔てて冷媒によって冷却されるので、不凍液と冷媒との熱交換面積が大きく、不凍液は急速に温度低下し、不凍液中の水分の凍結が短時間のうちに発生して、不凍液流路7b内が徐々に閉塞されてしまう。
【0025】
そこで、前記制御手段19は、暖房運転中に、蒸発温度センサ10の検出する冷媒温度が、目標蒸発温度よりも低く、不凍液流路7bで不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定した所定の凍結温度、例えば−10℃に達したか否かを判断し(ステップS1)、図3の時間t2までの期間のように、蒸発温度センサ10の検出する冷媒温度が−10℃に達していないと判断した場合は、前記ステップS1の処理を繰り返してこれまでの暖房運転を継続し、図3の時間t2のように、蒸発温度センサ10の検出する冷媒温度が−10℃に達したと判断した場合は、地中熱循環ポンプ13の回転数が上限回転数か否か判断するものである(ステップS2)。
【0026】
前記ステップ2において、制御手段19は、地中熱循環ポンプ13の回転数が上限回転数ではないと判断すると、地中熱循環ポンプ13の回転数を上限回転数に設定し(ステップS3)、所定時間経過後に前記ステップS1の処理に戻る。一方、前記ステップS2で、地中熱循環ポンプ13の回転数が上限回転数であると判断すると、図3の時間t2において、圧縮機4から吐出される冷媒の目標吐出温度を現在の目標吐出温度(例えば、80℃)から所定温度、例えば15℃低い温度(60℃)に設定し(ステップS4)、吐出温度センサ9で検出される吐出温度が、新たに設定された目標吐出温度(=現在の目標吐出温度85℃−所定温度15℃=60℃)になるように、膨張弁6の開度を開く方向に制御すると共に、制御手段19は、負荷温度センサ18の検出する暖房循環液の温度が設定された目標暖房温度になるように、圧縮機4の周波数を増加させるよう制御するものである。
【0027】
そして、制御手段19は、蒸発温度センサ10の検出する冷媒温度が、前記所定の凍結温度より高く且つ前記目標蒸発温度より低く、不凍液流路7bで不凍液の凍結が解消されると予想される予め設定された所定の凍結解消温度、例えば−5℃に達したか否かを判断し(ステップS5)、図3の時間t2〜t3までの期間のように、蒸発温度センサ10の検出する冷媒温度が−5℃に達していないと判断した場合は、前記ステップS5の処理を繰り返し、図3の時間t3のように、蒸発温度センサ10の検出する冷媒温度が−5℃に達したと判断した場合は、圧縮機4から吐出される冷媒の目標吐出温度を、現在の目標吐出温度、つまり前記ステップS4で設定した目標吐出温度65℃から所定温度、例えば15℃高い温度に設定し(ステップS6)、吐出温度センサ9で検出される吐出温度が、新たに設定された目標吐出温度になるように、膨張弁6の開度を閉じる方向に制御し、暖房出力が増加した状態で暖房運転を継続するものである。
【0028】
以上説明した暖房運転中の不凍液流路7bの凍結防止動作において、制御手段19は、暖房運転中に、蒸発温度センサ10の検出する冷媒温度が、不凍液流路7bで不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定した所定の凍結温度に達したと判断すると、圧縮機4から吐出される冷媒の目標吐出温度をそれまでよりも所定温度低く設定し、吐出温度センサ9で検出される吐出温度が、新たに設定された目標吐出温度になるよう膨張弁6の開度を開く方向に制御することで、低圧側の冷媒温度が上昇し、暖房運転中、熱源側熱交換器7の不凍液流路7b内で不凍液中の水分の凍結を防止でき、熱源側熱交換器7の破損を未然に防止することができるものである。
【0029】
また、圧縮機4から吐出される冷媒の目標吐出温度をそれまでよりも所定温度低い温度に設定し、吐出温度センサ9で検出される吐出温度が、新たに設定された目標吐出温度になるよう膨張弁6の開度を開く方向に制御すると共に、負荷温度センサ18の検出する暖房循環液の温度が設定された目標暖房温度になるように、圧縮機4の周波数を増加させるよう制御することで、低圧側の冷媒温度が上昇するので、熱源側熱交換器7の不凍液流路7b内で不凍液中の水分の凍結を防止できると共に、不凍液流路7bの凍結防止動作を行っている時、圧縮機4の周波数を増加させることによって、暖房出力を低下させることがなく、安定した暖房出力を得ることができ、使用感を損なうことがないものである。
【0030】
また、制御手段19は、前記ステップS5および前記ステップS6の処理において、蒸発温度センサ10で検出する冷媒温度が、前記目標蒸発温度まで上昇するのを待たずに、前記目標吐出温度を所定温度高く設定し膨張弁6の開度を閉じる方向に制御しているが、これは不凍液流路7bの凍結が解消されれば、熱源側熱交換器7での熱交換効率が上がり、徐々に低圧側の冷媒温度が上昇するからであり、目標蒸発温度に達するまで上述のような目標吐出温度の変更および膨張弁6の開度制御を行うのを待たずとも目標蒸発温度に達するからである。
【0031】
なお、本発明は先に説明した一実施形態に限定されるものでなく、本実施形態では、地中熱交換器11は地中に複数設置され互いに並列に接続されているが、複数の地中熱交換器11を互いに直列に接続してもよく、また、地中熱交換器11を複数設置せず、地中から所望の採熱ができるのであれば、地中熱交換器11を1本だけ設置したものであってもよい。
【0032】
また、本実施形態では、地中熱交換器11を地中に設置するものとし、地中熱交換器11は地中に直接埋設され地中熱を採熱しているが、地中熱交換器11を井戸の中に設置し、地中熱によって温められた井戸水から採熱するものも地中熱交換器11を地中に設置するものに含まれるものである。
【0033】
また、本実施形態では、床暖房パネル等の負荷端末14により被空調空間である室内を加熱する熱媒循環式の暖房運転を負荷運転としたが、被空調空間である室内に負荷側熱交換器5を有する室内機(図示せず)を設け、この室内機内で圧縮機4から吐出された高温冷媒を室内空気と直接熱交換し、送風により室内を加熱する暖房運転を負荷運転としてもよいものであり、また、負荷端末14を給湯等に使用する湯水を貯湯する貯湯タンク(図示せず)とし、貯湯タンク内の湯水を沸き上げる沸き上げ運転を負荷運転としてもよいものであり、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な変形が可能であり、これを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0034】
4 圧縮機
5 負荷側熱交換器
5a 負荷側熱交換器の冷媒流路
6 膨張弁
7 熱源側熱交換器
7a 熱源側熱交換器の冷媒流路
7b 熱源側熱交換器の不凍液流路
8 ヒートポンプ回路
10 蒸発温度センサ
11 地中熱交換器
12 地中熱循環回路
13 地中熱循環ポンプ
19 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、負荷側熱交換器の冷媒流路、減圧手段、熱源側熱交換器の冷媒流路を冷媒配管で環状に接続したヒートポンプ回路と、前記熱源側熱交換器の不凍液流路と地中に設置された地中熱交換器とを不凍液配管で環状に接続した地中熱循環回路と、該地中熱循環回路に不凍液を循環させる地中熱循環ポンプと、前記熱源側熱交換器側の冷媒の温度を検出する蒸発温度検出手段とを備え、前記地中熱交換器により地中熱を採熱し、前記熱源側熱交換器を蒸発器として機能させると共に、前記負荷側熱交換器を凝縮器として機能させて負荷側を加熱する負荷運転を行う地中熱ヒートポンプ装置において、前記負荷運転時に、前記圧縮機の吐出温度が予め設定された目標吐出温度になるように前記減圧手段の開度を制御する制御手段を設け、前記制御手段は、前記負荷運転時に、前記蒸発温度検出手段の検出する冷媒温度が、前記不凍液流路で不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定された凍結温度に達したと判断すると、前記目標吐出温度をそれまでよりも所定温度低く設定し、新たに設定された前記目標吐出温度になるよう減圧手段の開度を開く方向に制御するようにしたことを特徴とする地中熱ヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記負荷運転時に、前記蒸発温度検出手段の検出する冷媒温度が、前記不凍液流路で不凍液中の水分の凍結が開始されると予想される予め設定された凍結温度に達したと判断すると、前記目標吐出温度を所定温度低く設定し、新たに設定された前記目標吐出温度になるよう減圧手段の開度を開く方向に制御すると共に、前記圧縮機の周波数を増加させるよう制御するようにしたことを特徴とする請求項1記載の地中熱ヒートポンプ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−167902(P2012−167902A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31163(P2011−31163)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)