説明

地中熱交換器と建物を一体化した空調機構

【課題】1.人間の快適温度域の熱源を得られる深さである200m以上の土中を掘削しなければならない点。2.蓄熱体としての水、及び劣化や消耗する機器を交換しなければならない点。3.建物の断熱工事の仕様が過剰になる点。4.冷暖房設備の運転及び維持管理費用が掛かる点。
【解決手段】地中熱を利用する空調設備において、地中深さ5m未満の地中温度でも25℃の冷暖房が出来るように、地中熱交換部位を拡大伝熱面を設けたコンパクトな熱交換器ユニットとする事で温度差換気に必要な空気温度を効率良く取得し、夏季は屋根面の日射による温度差換気により建物内に気流を発生させる事により体感温度を下げ、取得した地熱温度の空気を建物内に送込み、冬季はユニット内で起きる温度差換気により起きた気流で作動する風力発電システムを原動機としたヒーターによって空気を暖める事で快適温度の空気を建物内に供給する建物とユニットが一体で可動する機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用した熱交換器と建物を一体化した空調機構に係わり、特に商用エネルギーを使用しない空調機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅において地熱を利用した空調機構を設置する際、冬季において屋内温度を人間の快適域である25℃付近に空調するのに必要な土中温度25℃を得るには、200m以上の深さまで掘削し、屋内の容積を熱交換できるだけの暖気を屋内に供給しなければならないが、建物建築工事の費用に対する設備工事費用が高くなりすぎ費用対効果が全く得られない。
【0003】
住宅の屋内を冷暖房する際、商用エネルギーを使用する前提となり、エネルギー使用量を極力減らしながら快適温度を確保するには間欠運転が前提になるため、建物全体の断熱性能を過剰に上げ、保温効果を最大限に発揮させる断熱工事が必要になる。
【0004】
従来の地熱利用空調設備において、夏季に地熱から冷気を取得し冷房にするには、空気温度の特性で重い冷気は下部に安定し、上部にある軽い暖気とは混ざらないため撹拌機器か吸引機器を他の動力によって設置しなければならない。
【特許文献1】特開2005−9737号 公報
【0005】
地熱を利用した空調やその他の空調において、水を蓄熱体として利用する事例が多いが、水は長期間動かない状態だと腐るため、一定期間の経過に伴い交換が必要になる。
しかし、用途上目につきずらい箇所に設置されるため、居住者が交換作業を怠る傾向にある。
また、装置に劣化損傷がおきた時に、水そのものが浸透して躯体を劣化させたり、水蒸気を多く含む空気がカビを発生させる要因になるなど、建物を劣化させる原因になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1.解決しようとする問題点は、人間の快適域の熱源を得られる土中深さ200m以上を掘削しなければならない点。
2.空調設備を可動させるにあたり商用エネルギーを必要とする点。
3.水などの劣化する蓄熱体を必要とする点。
4.冷暖房の間欠運転を前提とする建物において、過剰な断熱工事をしなければならない点。
5.夏季の地熱利用時に屋内底部に停滞する重い冷気を屋内上部に送り込むための撹拌機器及び吸引機器を必要とする点及びその運転のために商用エネルギーを使用する点。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地中熱を利用する空調設備において、地中深さ5m未満の地中温度でも人間にとって快適な屋内温度である25℃の冷暖房が出来るように、地中熱交換部位を無数の拡大伝熱面を設けたコンパクトな熱交換器ユニットとする事でまず温度差換気に必要な空気温度を効率良く取得し、夏季は屋根面の日射による温度差換気により建物内に気流を発生させる事により体感温度を下げつつ取得した地熱温度の空気を建物内に送り込み冷房し、冬季はユニット内で地熱温度を取得した空気の温度差移動により起きた気流で作動する風力発電システムを原動機としたヒーターによって空気を暖める事で快適温度の空気を暖房として建物内に供給する建物とユニットが一体で可動する機構である。
【0008】
これにより夏季は日射を受ける期間、冬季は外気と建物内の温度差が発生した期間は全て空気の温度差移動により機構が作動する事となり、商用エネルギーを使用しないため運転エネルギー消費量の節約を考える必要がなくなる。
【0009】
冷暖房の間欠運転を前提とせず、不快適温度の時間帯は常に機構が稼動する事となるため、建物の保温効果を極端に上げるための過剰な断熱工事や、蓄熱体を設ける必要もなくなり、設置工事の規模も戸建て住宅と同時に手軽に行える規模となるため一個人が購買できる。
【0010】
夏季の機構作動時は建物の最上部である屋根面への日射による空気の温度差移動部分を一連の機構の動力源とする事により、常に冷気を引っ張り上げる事になるため冷気が低部で停滞する事がなくなる。
【0011】
次に夏季可動順序について説明する。
(1)建物屋根面の金属板への日射により屋根通気層内空気の温度上昇を起こし、屋根勾配水上側空気排出口において外気との間で温度差換気を発生させる。
(2)温度上昇した空気が排出される事により屋内空間を負圧にし、地熱交換機ユニットの外気取入口から空気を流入させ、排出口までの気流経路にある建物内間仕切の開口部を排出口の面積より小さくする事により、各々その部位に気流を発生させる。
(3)流入する外気は建物空間手前の気流経路間で地熱交換器ユニットを経由する事により、地熱交換機ユニットで冷やされた空気が建物内へと導かれる。
【0012】
次に冬季可動順序について説明する。
(1)建物外部窓面から建物内壁面及び床面への日射により、外気温度より建物内温度を上げる。
(2)地熱交換器ユニット内の暖められた空気と屋内空気との間に温度差移動を起こし、ユニットのパイプ内に上昇気流を発生させ、パイプ径を小さくする事で気流速度を速くする。
(3)上記パイプ径を小さくした出口に風力発電装置を設置し、早められた気流により作動させる。
(4)上記に伴い風力発電装置を原動機とするヒーターが作動し、上記パイプを暖め始める。
(5)暖められたパイプを経由する空気が暖められる事により一層温度差換気を促し気流速度を速めるため、風力発電の発電量が増していき屋内が快適温度になるまでヒーターで温められた空気が屋内に送られる。
【発明の効果】
【0013】
本来冬季に快適温度域の地熱を得るには、地下200m以上の掘削が必要なところ、システムが作動するために必要な温度域の地中深さである3m以下の掘削で済み、大幅な工事期間の短縮が図れる。
【0014】
地中熱交換部位を無数の拡大伝熱面を設けたコンパクトな熱交換器ユニットとする事で小規模な設置面積で効率的に地熱を取得する事ができる。
【0015】
夏季冷房時は気流を屋内空間の特定部分に発生させる事により、空気温度自体を極端に低くする事なく体感温度で涼しく感じる機構とし、体感の好みに応じて居場所で体感を調整できる。
【0016】
暖房は外気と屋内の温度差が一定幅以上になった時自然に作動し、24時間空調し続けるため蓄熱体が不要となる。
【0017】
暖房において風力発電装置を地下の地熱交換器部分に設置することにより、必ず温度差が発生する事から気象の影響を受けず常に一定の気流を発生させて発電できる。
【0018】
暖房時は24時間可動するので建物が暖房の間欠運転を前提とした保温効果を必要とせず、断熱工事が必要最低限の仕様とする事が出来る。
【0019】
機構の稼動に際し、商用エネルギーが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に使用する地中熱交換器による空調機構の夏季の可動概念図。
【図2】本発明に使用する地中熱交換器による空調機構の冬季の可動概念図。
【図3】本発明に使用する地中熱交換器ユニット内の風力発電機構の図。
【図4】本発明に使用する地中熱交換器ユニット内の気流経路の説明図であり、図(A)は地中熱交換器ユニットの水平断面図。図(B)は図(A)におけるX部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
木造在来工法の標準的な造り方において小屋裏空間に換気口を幾つか設置するが、この機構の建物Hの屋根は日射1による空気の温度上昇時間を早めるために、日射受け面すなわち屋根面2の面積を極力広く取り、且つ空気容積を小さくするために屋根通気層3の空気のみを熱する構造にして、温度差移動の発生効率を高めている。
【0022】
熱せられた屋根通気層3の空気は勾配屋根水上側の全幅に設置された排気口4より排出されるが、その際建物内は負圧となり、排出された空気量と同体積の空気が屋内の気流経路を移動する時に、人間の快適域の気流速度となるよう各室間の間仕切り部分の開口5の面積を絞って計画し、外気取入口7から排気口4までの一連の気流経路を一本道で形成させる。
【0023】
発生させる気流の速度と温度については、建物H全体の計画に伴う各室の容積や、仕切り部開口部間の距離により異なるため、個々に応じて計画する。
原則は間仕切り部分の開口5間の距離を短くすれば、速度の速い気流区間が長くなる。
【0024】
熱交換器ユニット8内において、極力大容量の気流が経路内16にある拡大伝熱面17の抵抗で減速せずに伝熱するように、ユニット内の気流経路の総距離を長く、経路断面積の縦横比と断面積自体を大きくしている。
【0025】
ユニットの設置深さは地域によって地中深さに伴う地中温度が年間を通して異なるため、設置地域ごとに気象庁の地中温度データと過去の外気温度データより、空調が必要な時期のデータを基にして地中3m以下で決定する。
最低4℃の温度差がないと空気の温度差移動が発生しずらい傾向にある。
【0026】
冬季に可動する機構において、地熱交換器ユニット内で風力発電装置10が始動可能な気流を得るために、ユニット出口と建物入口間11の気流経路断面絞り部12で風速を早める。風速は設置する風力発電装置10の発電開始風速により設定する。
【0027】
建物側パイプ11に風力発電装置10で作動するヒーター13を設置することにより、屋内温度が快適域になるまで常に地熱交換器ユニット8内の方が、屋内より高い空気温度を保つ。
屋内が快適温度になったら屋根通気層水上側の排気口4より暖気が外部に排出される事により、常に快適温度の空気が地熱交換器ユニット8より送られ続ける。
【実施例】
【0028】
建物屋根の素材:厚さ0.5mmガルバリウム鋼板
屋根通気層の厚み:100mm
屋根通気層下:厚さ90mmポリスチレンフォーム保温板
各屋内仕切り部開口面積:0.1m
地熱交換器ユニットと建物間のパイプ:外径300φ硬質塩化ビニール管断熱材巻き
地熱交換器ユニットへの空気取入口:外径300φ硬質塩化ビニール管
地熱交換器ユニット本体:厚さ3.2mmの亜鉛めっき鋼板
気流経路断面絞り管:厚さ0.3mmの亜鉛めっき鋼板
風力発電装置:定格出力50W
ヒーター:定格消費電力30W
【産業上の利用可能性】
【0029】
地中熱交換器をコンパクトにユニット化した事により、戸建て住宅の敷地に容易に設置する事が可能となり、工事費用も住宅建築費用の10%程度となる事から住宅建設時の個人購入が可能となる。
【符号の説明】
【0030】
H 建物
1 日射
2 屋根面
3 屋根通気層
4 排気口
5 間仕切り部分開口
6 外壁窓面
7 外気取り入れ口
8 地熱交換器ユニット
9 屋内空気入口
10 パイプ内風力発電装置
11 ユニット出口と建物間のパイプ
12 気流経路断面絞り部
13 ヒーター
14 外気取り入れ側パイプ
15 建物側パイプ
16 地熱交換器気流経路
17 拡大伝熱面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、地中熱を利用する空調設備において、地中深さ5m未満の地中温度でも人間にとって快適な屋内温度である25℃の冷暖房が出来るように、まず地中熱交換部位を無数の拡大伝熱面を設けたコンパクトな熱交換器ユニットとする事で温度差換気に必要な空気温度を効率良く取得し、夏季は屋根面の日射による温度差換気により建物内に気流を発生させる事により体感温度を下げ、取得した地熱温度の空気を建物内に送込み、冬季はユニット内で起きる温度差換気により起きた気流で作動する風力発電システムを原動機としたヒーターによって空気を暖める事で快適温度の空気を建物内に供給する建物とユニットが一体で可動する空調機構。
【請求項2】
地中熱を取得するための地下空洞内において、空洞内の暖気とその他の冷気との温度差により発生する上昇気流を利用して始動する風力発電装置を原動機とするヒーターにより空洞内の空気温度を高くして上昇気流の速度をさらに速める事により発電力を増す請求項1に記載の風力発電機構。
【請求項3】
地下空洞の地熱交換部において、無数の拡大伝熱面を突出させ、気流経路の総距離を長くしながら、経路断面積の縦横比と断面積自体を大きくしたユニット型を特徴とする請求項2に記載の熱交換器機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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