説明

地中熱利用装置

【課題】 高効率に運転可能で、かつ施工性を良好にしてコスト低減を図ることができる地中熱利用装置を提供すること。
【解決手段】ヒートポンプ3と空調室内機4とを冷媒配管6で接続し、二次凝縮・蒸発器10を空調室内機4に設けて空気調整装置(地中熱利用装置)1を構成したので、空調室内機4まで冷媒が直接循環されることとなり、負荷側の循環ポンプが不要にでき、かつ負荷側の熱媒への熱交換が不要にできる。従って、負荷側の循環ポンプの駆動エネルギーが省略でき、かつ熱交換によるロスを最小限にすることができるので、空気調整装置1全体のエネルギー効率を十分に高効率化することができる。さらに、ヒートポンプ3と空調室内機4とを冷媒配管6で接続したので、負荷側を水配管で接続する場合と比較して、配管の施工性を向上させかつ施工コストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用装置に関し、詳しくは、地中に埋設した地中熱交換器から採熱(または放熱)した地中熱を利用し、ヒートポンプを介して負荷側に熱を供給(または負荷側から熱を吸収)する地中熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された地中熱交換器と、この地中熱交換器に接続されたヒートポンプと、このヒートポンプに接続された空調機器等の熱交換器とを備えた地中熱利用装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような地中熱利用のヒートポンプシステムは、安定した温度を有する大地の地中熱を熱源として利用し、この熱源に対して採放熱するものであり、外気に対して採放熱する空気熱源方式のシステムと比較しても、年間を通して変化が小さく安定した地中温度を利用することで、冷房および暖房の両方について高効率に運転できるシステムである。従って、地中熱利用のヒートポンプシステムでは、省エネルギー化や、低ランニングコスト化、二酸化炭素の排出抑制等の効果に加えて、大気に排熱しないことでヒートアイランド現象の抑制効果も期待されている。
【0003】
そして、特許文献1に記載された地中熱利用装置は、地中熱交換器とヒートポンプとが水配管からなる第一循環路で接続され、ヒートポンプと放熱管とが水配管からなる第二循環路で接続され、ヒートポンプ内部には、冷媒配管からなる第三循環路が設けられている。そして、暖房時においては、第一循環路に循環された第一熱媒で地中熱を採熱し、この熱を第三循環路内の第三熱媒(冷媒)で吸収するとともに、第二循環路内の第二熱媒に供給して第二熱媒を昇温することで、熱交換器から放熱されるように構成されている。冷房時においては、逆に第一熱媒から地中に放熱し、この第一熱媒で第三熱媒から熱を吸収し第三熱媒を冷却し、この第三熱媒と第二熱媒との間で熱交換して第二熱媒を冷却し、熱交換器により空調空間から採熱するように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−302122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の地中熱利用装置では、ヒートポンプに設けられた第三循環路内の第三熱媒を介して負荷側の熱交換器内の第二熱媒を昇温(冷却)するとともに、この昇温(冷却)された第二熱媒を循環ポンプによって負荷側の熱交換器内に循環させる必要がある。このため、負荷側の第二熱媒を昇温(冷却)する際のロスによって熱効率が低下してしまうとともに、循環ポンプを駆動するためのエネルギーが必要になってしまうので、装置全体における運転エネルギーの高効率化が十分に実現できないという問題がある。
さらに、第二循環路が水配管から構成されているため、配管に水勾配を設けたり、エア抜きが必要になったり、配管同士をねじ接続する必要があったりするため、配管工事の施工性が悪化するとともに施工コストが増大してしまうという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、高効率に運転可能で、かつ施工性を良好にしてコスト低減を図ることができる地中熱利用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地中熱利用装置は、地中に埋設された地中熱交換器と、この地中熱交換器に接続されたヒートポンプと、このヒートポンプに接続された負荷機と、前記地中熱交換器と前記ヒートポンプとを接続して熱媒水を循環させる水配管と、前記ヒートポンプと前記負荷機とを接続して冷媒を循環させる冷媒配管とを備え、前記ヒートポンプには、前記冷媒配管中の冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒配管中の冷媒を膨張させる膨張弁と、前記熱媒水を用いて前記冷媒を凝縮または蒸発させる一次凝縮・蒸発器とが設けられ、前記負荷機には、前記ヒートポンプの圧縮機で圧縮された高温の前記冷媒を凝縮させる、または前記ヒートポンプの膨張弁で膨張された低温の前記冷媒を蒸発させる二次凝縮・蒸発器が設けられていることを特徴とする。
【0008】
ここで、負荷機としては、室内の冷房、暖房、または冷暖房を行う空調室内機や、冷蔵(冷凍)温蔵機、給湯器、冷水器など、ヒートポンプから供給される(またはヒートポンプで吸収される)熱を利用した各種の機器が例示できる。
また、一次凝縮・蒸発器および二次凝縮・蒸発器としては、それぞれ冷媒配管中の冷媒を凝縮させるものでもよく、また冷媒を蒸発させるものでもよく、さらに冷媒を凝縮させる機能および冷媒を蒸発させる機能の両方の機能を有したものでもよい。ただし、一次凝縮・蒸発器で冷媒を凝縮させた場合には、二次凝縮・蒸発器は、冷媒を蒸発させるように構成され、一次凝縮・蒸発器で冷媒を蒸発させた場合には、二次凝縮・蒸発器は、冷媒を凝縮させるように構成されている。
【0009】
以上の本発明によれば、ヒートポンプと負荷機とを冷媒配管で接続し、二次凝縮・蒸発器を負荷機に設けたので、一次凝縮・蒸発器で熱媒水から熱を吸収(または熱媒水に熱を放熱)した冷媒が圧縮機または膨張弁を介して負荷機まで運ばれて循環することとなり、従来のような循環ポンプが不要にできる。また、ヒートポンプの一次凝縮・蒸発器から負荷機の二次凝縮・蒸発器まで冷媒が直接循環されるので、負荷側の熱媒への熱交換が不要となり、熱交換によるロスを最小限にすることができる。従って、熱効率を良好にし、かつ循環ポンプの駆動エネルギーを省略することができるので、装置全体のエネルギー効率を十分に高効率化することができる。
さらに、ヒートポンプと負荷機とを冷媒配管で接続したことで、従来のように水配管で接続した場合の制約を受けなくでき、配管の施工性を向上させることができるとともに、施工コストを低減することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の地中熱利用装置は、請求項1に記載の地中熱利用装置において、前記ヒートポンプには、複数の前記負荷機が接続され、これら複数の負荷機を同時に、または複数の負荷機ごとに、運転および停止が切替制御可能に構成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、1台のヒートポンプに接続された複数の負荷機を、同時または個別に切替制御することで、例えば、負荷機が空調室内機である場合には、複数の部屋における冷房や暖房を集中制御したり、各部屋ごとに個別制御したりを任意に選択することにより、個別の遠隔発停やスケジュール運転等、省エネルギー運転が実施できる。
そして、このようなヒートポンプおよび複数の空調室内機で構成された個別分散方式の空調システムとしては、ビル用マルチ方式のシステムが一般的に用いられており、ヒートポンプと複数の空調室内機との接続工事や、制御配線工事等が標準化されているため、このビル用マルチ方式の標準化された施工システムを利用することで、さらなる施工コストの低減を図ることができる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の地中熱利用装置は、請求項1または請求項2に記載の地中熱利用装置において、前記水配管には、前記熱媒水を循環させる循環ポンプが設けられ、この循環ポンプの運転制御により前記熱媒水の流量が可変に構成されるとともに、前記ヒートポンプが変流量に対応したものとされていることを特徴とする。
このような構成によれば、負荷機側で必要とされる負荷に応じて水配管中に循環させる熱媒水の流量を変動させ、負荷が小さい場合には熱媒水の流量を減少させることで、循環ポンプの搬送動力を低減させて省エネルギー運転が実現できる。この際、地中熱交換器における水配管を介した地盤との熱交換効率は、水配管内表面における熱媒水の流速に依存し、所定の最低流速を下回ると熱交換効率が極端に低下してしまうため、この最低流速を下回らないように流量を調節することが望ましい。この調節の方法としては、例えば、複数の地中熱交換器を並列に接続しておき、これら複数の地中熱交換器のうち任意の数の地中熱交換器を選択して熱媒水を循環させる方法などがある。
【0012】
また、請求項4に記載の地中熱利用装置は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の地中熱利用装置において、前記地中熱交換器は、互いに並列および/または直列に複数接続され、これら複数の地中熱交換器を接続した一系統の前記水配管に1台または複数の前記ヒートポンプが接続されていることを特徴とする。
このような構成によれば、負荷側(二次側)で必要とされる負荷に応じて複数のヒートポンプの運転、停止を切り替えることができ、装置全体の運転効率を一層向上させることができる。この際、地中熱交換器を互いに並列に接続した場合には、各地中熱交換器における熱媒水の流速は、ヒートポンプからの出口位置(または入口位置)の流速を地中熱交換器の接続数で除した値となるため、各地中熱交換器における流速が前記最低流速を下回らないように、地中熱交換器の接続数や、熱媒水を循環させる循環ポンプの性能等を適宜設定することが望ましい。また、地中熱交換器を互いに直列に接続した場合には、各地中熱交換器における熱媒水の流速は、ヒートポンプからの出口位置(または入口位置)の流速と等しくなるため、これを考慮した循環ポンプの性能等を適宜設定することが望ましい。さらに、地中熱交換器を並列および直列が混在するように接続した場合には、各地中熱交換器における流速が前記最低流速を下回らないように、地中熱交換器の接続形態および循環ポンプの性能等を設定することが望ましい。
【0013】
さらに、請求項5に記載の地中熱利用装置は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の地中熱利用装置において、前記地中熱交換器に接続された前記水配管が複数系統設けられ、これら複数の水配管の系統ごとに前記熱媒水の循環および停止が切替制御可能に構成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、負荷側(二次側)で必要とされる負荷に応じて複数の水配管の系統の循環、停止を切り替えることで、搬送動力の軽減による適正化が可能となり、装置全体の運転効率を向上させることができるとともに、採放熱する地盤への負担を軽減して地中温度の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る地中熱利用装置としての空気調整装置1を示す概略構成図である。
図1において、空気調整装置1は、地盤G中に埋設された地中熱交換器2と、この地中熱交換器2に接続されたヒートポンプ3と、このヒートポンプ3に接続された負荷機としての空調室内機4と、地中熱交換器2とヒートポンプ3とを接続して水または不凍液等の熱媒水を循環させる水配管5と、ヒートポンプ3と空調室内機4とを接続して冷媒(ガス)を循環させる冷媒配管6とを備えて構成されている。
そして、空気調整装置1は、地中熱交換器2から熱媒水を介して採熱(または放熱)した地中熱を利用し、ヒートポンプ3により冷媒を昇温(冷却)し、この冷媒を介して空調室内機4により空調空間Aに熱を供給(または空調空間Aから熱を吸収)して空調空間Aの室温を調節するものである。
【0016】
ヒートポンプ3には、冷媒配管6中の冷媒を圧縮する圧縮機7と、冷媒配管6中の冷媒を膨張させる膨張弁8と、水配管5の熱媒水を用いて冷媒を凝縮または蒸発させる一次凝縮・蒸発器9とが設けられている。
空調室内機4には、ヒートポンプ3の圧縮機7で圧縮された高温の冷媒を凝縮させる、またはヒートポンプ3の膨張弁8で膨張された低温の冷媒を蒸発させる二次凝縮・蒸発器10が設けられている。
また、水配管5には、熱媒水を循環させる循環ポンプ11が設けられている。
【0017】
以上の空気調整装置1では、夏期における冷房運転時において、水配管5中の熱媒水および冷媒配管6中の冷媒が、それぞれ図1に矢印で示す方向に循環される。
すなわち、循環ポンプ11は、熱媒水をヒートポンプ3の一次凝縮・蒸発器9から地中熱交換器2に送るとともに、地中熱交換器2での熱交換により地中に放熱して温度の下がった熱媒水を一次凝縮・蒸発器9に戻す。
ヒートポンプ3において、一次凝縮・蒸発器9は、圧縮機7で圧縮された冷媒と熱媒水との間で熱交換を行い、冷媒を凝縮させる。凝縮されて冷却された冷媒は膨張弁8で膨張された後、冷媒配管6を通って空調室内機4へ送られる。
空調室内機4において、二次凝縮・蒸発器10は、膨張弁8から送られた冷媒と空調空間Aの内気との間で熱交換を行い、内気を冷却し冷媒を蒸発させる。蒸発して昇温された冷媒は圧縮機7で再度圧縮されて一次凝縮・蒸発器9へ送られ、熱媒水との間で熱交換が行われる。
以上のようなサイクルを繰り返すことで、冷媒および熱媒水を介して空調空間Aの熱を地中に排熱し、空調空間Aの冷房が実施される。
【0018】
一方、冬期における暖房運転時には、上述した冷媒配管6中の冷媒が図1の矢印と逆方向に循環される。なお、水配管5中の熱媒水の循環方向は、図1に矢印で示す通りである。
すなわち、ヒートポンプ3において、一次凝縮・蒸発器9は、膨張弁8で膨張された冷媒と熱媒水との間で熱交換を行い、冷媒を蒸発させる。蒸発されて昇温された冷媒は圧縮機7で圧縮された後、冷媒配管6を通って空調室内機4へ送られる。
空調室内機4において、二次凝縮・蒸発器10は、圧縮機7から送られた冷媒と空調空間Aの内気との間で熱交換を行い、内気を加熱し冷媒を凝縮させる。凝縮されて冷却された冷媒は膨張弁8で再度膨張されて一次凝縮・蒸発器9へ送られ、熱媒水との間で熱交換が行われる。
以上のようなサイクルを繰り返すことで、冷媒および熱媒水を介して地中から採熱した熱を空調空間Aに供給し、空調空間Aの暖房が実施される。
【0019】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、ヒートポンプ3と空調室内機4とが冷媒配管6で接続され、二次凝縮・蒸発器10が空調室内機4に設けられているので、ヒートポンプ3と空調室内機4との間を冷媒が直接循環されることとなり、負荷側の循環ポンプが不要にでき、かつ負荷側の熱媒への熱交換が不要にできる。従って、負荷側の循環ポンプの駆動エネルギーが省略でき、熱交換によるロスを最小限にすることができるので、空気調整装置1全体のエネルギー効率を十分に高効率化することができる。
【0020】
(2)さらに、ヒートポンプ3と空調室内機4とが冷媒配管6で接続されているので、負荷側を水配管で接続する場合と比較して、配管の施工性を向上させることができるとともに、施工コストを低減することができる。
【0021】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る地中熱利用装置としての空気調整装置1Aについて、図2に基づいて説明する。
図2は、本実施形態の空気調整装置1Aを示す概略構成図である。
空気調整装置1Aは、前記第1実施形態の空気調整装置1と同様の地中熱交換器2、ヒートポンプ3、および熱媒水を循環させる水配管5を備えたものであって、ヒートポンプ3に複数の空調室内機4が接続され、これら複数の空調室内機4を同時に、または複数の空調室内機4ごとに、運転および停止が切替制御可能に構成されている点が第1実施形態と相違している。
【0022】
複数の空調室内機4は、建物に設けられる複数の居室等の独立した空調空間Aにそれぞれ設けられ、冷媒配管6を介して1台のヒートポンプ3に各々並列に接続されている。そして、ヒートポンプ3と各空調空間Aの空調室内機4との間には、制御連絡配線12が接続されており、ヒートポンプ3と各空調室内機4とが互いに連動して動作するようになっている。
また、建物の管理室や制御室等には、集中制御装置(制御盤)13が設けられ、この集中制御装置13と各空調室内機4とは、集中制御配線14で接続されている。さらに、各空調空間Aにおいて、空調室内機4には、リモコン等の個別制御装置15が設けられている。
【0023】
以上の空気調整装置1Aでは、第1実施形態の空気調整装置1と同様に、冷媒および熱媒水を介して各空調空間Aの熱を地中に排熱して冷房する、あるいは冷媒および熱媒水を介して地中から採熱した熱を各空調空間Aに供給して暖房するように構成されている。
そして、集中制御装置13からの指令により、各空調空間Aの空調室内機4の運転、停止が遠隔操作で切り替えられるようになっている。この遠隔操作としては、全ての空調空間Aの空調室内機4を一斉に運転または停止させるものでもよく、各空調空間Aの空調室内機4を個別に運転または停止させるものでもよい。また、集中制御装置13において設定された運転スケジュールに従って、各空調空間Aの空調室内機4が動作するように構成されていてもよい。さらに、集中制御装置13による運転制御に加えて、各空調空間Aの個別制御装置15によっても空調室内機4が操作可能に構成されている。
【0024】
このような本実施形態によれば、前述の(1)、(2)の効果に加えて以下のような効果がある。
(3)すなわち、複数の空調空間Aにおける冷房や暖房を集中制御したり、各空調空間Aごとに個別制御したりできるので、集中または個別の遠隔発停や、スケジュール運転等の省エネルギー運転が実施できる。
【0025】
(4)さらに、ヒートポンプ3と各空調空間Aの空調室内機4との接続工事や、制御配線工事等としては、個別分散方式の空調システムとして標準化されたビル用マルチ方式の施工システムが利用可能なので、さらなる施工コストの低減を図ることができる。
【0026】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る地中熱利用装置としての空気調整装置1B,1Cについて、図3および図4に基づいて説明する。
図3および図4は、それぞれ本実施形態の空気調整装置1B,1Cを示す概略構成図である。
本実施形態の空気調整装置1B,1Cは、複数の地中熱交換器2が互いに並列(空気調整装置1B)または直列(空気調整装置1C)に接続され、これら複数の地中熱交換器2を接続した一系統の水配管5に複数のヒートポンプ3が接続されている点が、前記第1および第2実施形態の空気調整装置1,1Aと相違し、その他の構成は、第1および第2実施形態と略同様である。
【0027】
空気調整装置1Bでは、図3に示すように、複数の地中熱交換器2が互いに並列に水配管5で接続され、これらの地中熱交換器2が配管ヘッダー16を介して2台のヒートポンプ3に接続されている。なお、図3では、横引主管を介して並列に接続されているが、配管ヘッダー16からタコ足式に直接枝管まで並列に取り出す場合もある。一方、図4に示すように、空気調整装置1Cでは、複数の地中熱交換器2が互いに直列に水配管5で接続され、これらの地中熱交換器2が配管ヘッダー16を介して2台のヒートポンプ3に接続されている。ここで、複数の地中熱交換器2としては、建物の基礎杭である鋼管杭に内蔵されたものが好適である。また、図3では、接続されたヒートポンプ3は2台であるが、2台以上の複数台が接続されていてもよい。そして、空気調整装置1B,1Cにおいて、配管ヘッダー16は、複数台のヒートポンプ3の全てと地中熱交換器2との間に熱媒水を循環させるか、あるいは複数台のヒートポンプ3のうちの何台かと地中熱交換器2との間に熱媒水を循環させるかが選択可能に構成されている。
【0028】
このような本実施形態によれば、前述の(1)、(2)の効果に加えて以下のような効果がある。
(5)すなわち、空調空間Aで必要とされる空調負荷に応じて複数台のヒートポンプ3の運転、停止を切り替える、つまり全負荷を対象とした運転を実施する場合には、全てのヒートポンプ3を同時に運転し、部分的に運転が必要とされない場合には、複数台のヒートポンプ3のうちの一部を停止させることで、負荷に応じて適切な運転が実施できるので、空気調整装置1B,1C全体の運転効率を向上させるとともに、過剰な採放熱を防止して地盤Gへの負担を軽減することができる。
【0029】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る地中熱利用装置としての空気調整装置1Dについて、図5に基づいて説明する。
図5は、本実施形態の空気調整装置1Dを示す概略構成図である。
本実施形態の空気調整装置1Dは、前記第3実施形態の空気調整装置1Bと略同様に複数の地中熱交換器2が互いに並列に接続され、これら複数の地中熱交換器2を接続した一系統の水配管5に1台のヒートポンプ3が接続され、このヒートポンプ3に前記第2実施形態と同様に複数の空調室内機4が接続されている点が、前記第1〜第3実施形態の空気調整装置1,1A,1B,1Cと相違し、その他の構成は、第1〜第3実施形態と略同様である。
【0030】
空気調整装置1Dでは、互いに並列に接続された複数の地中熱交換器2における水配管5に開閉弁2Aが設けられている。そして、本実施形態における循環ポンプ11は、図示しない制御装置により駆動制御(インバータ制御)され熱媒水の流量を変更することができるようになっている。また、開閉弁2Aは、循環ポンプ11の流量制御に連動して開閉制御され、空調室内機4側の負荷に応じて複数の地中熱交換器2のうち、所定数の地中熱交換器2に熱媒水を循環させることができるようになっている。すなわち、例えば、空調室内機4側の負荷が半分なった場合には、複数の地中熱交換器2のうち半分の開閉弁2Aが閉じられ、かつ循環ポンプ11の流量が半分に調節される。これにより、開閉弁2Aが開かれた地中熱交換器2に循環される熱媒水の流速は、変化しないようになっている。また、開閉弁2Aの開閉は、特定の地中熱交換器2に集中して熱媒水を循環させることがないように、適宜選択した地中熱交換器2において熱媒水が循環されるように設定されている。
【0031】
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(4)の効果に加えて以下のような効果がある。
(6)すなわち、空調負荷に応じて熱媒水を循環させる地中熱交換器2を選択して開閉弁2Aの開閉制御を実行するとともに、これに連動して循環ポンプ11の流量を変更することで、循環ポンプ11の搬送負荷を軽減させることができ、運転を省エネルギーで実行することができる。
【0032】
(7)また、特定の地中熱交換器2に集中して熱媒水が循環されることがないように開閉弁2Aが開閉制御されることで、各地中熱交換器2ごとの地盤への負担を均等化させることができる。
【0033】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態に係る地中熱利用装置としての空気調整装置1Eについて、図6に基づいて説明する。
図6は、本実施形態の空気調整装置1Eを示す概略構成図である。
本実施形態の空気調整装置1Eは、複数の地中熱交換器2を接続する水配管5の系統が複数設けられ、これら複数の水配管5の系統と複数のヒートポンプ3とが一対の配管ヘッダー16を介して接続されている点が、前記第1〜第4実施形態の空気調整装置1,1A,1B,1C,1Dと相違している。
【0034】
複数の地中熱交換器2を接続する水配管5は、図6に示すように、図の右側に示す系統5A、図の左側に示す系統5B、および図示を省略した系統5C,5Dのように複数の系統が設けられている。これら複数の水配管5の系統5A,5B,5C,5Dは、それぞれ配管ヘッダー16に接続されて1系統にまとめられてから、建物のシャフト等を通して屋上等まで配管されている。そして、屋上等において1系統の水配管5は、配管ヘッダー16に接続され、屋上等に設置された複数のヒートポンプ3の台数に応じて分岐され、各ヒートポンプ3に接続されている。配管ヘッダー16は、水配管5の系統5A,5B,5C,5Dごとに、あるいは複数のヒートポンプ3ごとに、熱媒水の循環または停止が切替可能に構成されている。
【0035】
そして、本実施形態の空気調整装置1Eにおいて、ヒートポンプ3が定流量型の場合で図6のように、地中熱交換器2の系統数とヒートポンプ3の台数とが一致している場合、もしくは同数の複数系統数にヒートポンプ3が対応している場合には、ヒートポンプ3の運転台数に見合う系統数を選択運転する。
一方、ヒートポンプ3が定流量型の場合でも、地中熱交換器2の系統数に対しヒートポンプ3の台数が多い場合、またはヒートポンプ3の1台当たりに割り切れない系統数が接続されている場合、もしくは、ヒートポンプ3が変流量型の場合には、ヒートポンプ3側で必要とする流量以上の流量を供給可能な地中熱交換器2の系統数を選択運転し、余剰な流量分は往環の配管ヘッダ16間に設けた差圧調整弁17を介して往管側にバイパスさせる。
例えば、図6において、ヒートポンプ3の能力が全て同じで、どのヒートポンプ3も60%負荷運転している場合、総負荷は240%、すなわち2.4台分となる。この場合、地中熱交換器2の3系統分が運転されるが、ヒートポンプ3側は2.4台分の流量しか受け入れないので、水配管5内の圧力が上昇する。そうすると、差圧調整弁17が開き、往ヘッダー側に0.6台分が逃がされ、ヒートポンプ3側の圧力が所定値に戻り、差圧調整弁17が閉じる。
また、ヒートポンプ3が定流量型であっても、ヒートポンプ3の40台分に対し、地中熱交換器2が4系統の場合で、ヒートポンプ3が24台運転されている場合も同様に制御されるようになっている。
【0036】
このような本実施形態によれば、前述の(1)、(2)および(5)の効果に加えて以下のような効果がある。
(8)すなわち、空調負荷に応じて水配管5の系統5A,5B,5C,5Dごとにあるいは複数のヒートポンプ3ごとに、熱媒水の循環または停止を切り替えることで、空気調整装置1Dの運転をより細かく制御することができ、エネルギー効率を一層向上させることができるとともに、採放熱する地盤Gへの負担を軽減して地中温度の安定化を図ることができる。
【0037】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態においては、空気調整装置1,1A,1B,1C,1D,1Eについて説明したが、本発明の地中熱利用装置としては、冷暖房可能な空気調整装置に限らず、冷房のみ可能な冷房装置や暖房のみ可能な暖房装置でもよく、また冷蔵庫(冷凍庫)や温蔵機、給湯器、冷水器などであってもよい。
【0038】
また、前記各実施形態では、ヒートポンプ3の熱源として地中熱のみを利用する形態について説明したが、熱源として空気熱源等の他の熱源を併用してもよい。また、各実施形態の空気調整装置1,1A,1B,1C,1D,1Eと他の空調機器等を併用してもよく、その場合、他の空調機器としては、空気熱源を利用した空調機器や、化石燃料や電気エネルギーを用いた冷暖房機器等が利用可能である。
【0039】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る地中熱利用装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る地中熱利用装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る地中熱利用装置を示す概略構成図である。
【図4】前記実施形態に係る地中熱利用装置の他の構成を示す概略構成図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る地中熱利用装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る地中熱利用装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0041】
2…地中熱交換器、3…ヒートポンプ、4…負荷機としての空調室内機、5…水配管、6…冷媒配管、7…圧縮機、8…膨張弁、9…一次凝縮・蒸発器、10…二次凝縮・蒸発器、11…循環ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された地中熱交換器と、この地中熱交換器に接続されたヒートポンプと、このヒートポンプに接続された負荷機と、前記地中熱交換器と前記ヒートポンプとを接続して熱媒水を循環させる水配管と、前記ヒートポンプと前記負荷機とを接続して冷媒を循環させる冷媒配管とを備え、
前記ヒートポンプには、前記冷媒配管中の冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒配管中の冷媒を膨張させる膨張弁と、前記熱媒水を用いて前記冷媒を凝縮または蒸発させる一次凝縮・蒸発器とが設けられ、
前記負荷機には、前記ヒートポンプの圧縮機で圧縮された高温の前記冷媒を凝縮させる、または前記ヒートポンプの膨張弁で膨張された低温の前記冷媒を蒸発させる二次凝縮・蒸発器が設けられていることを特徴とする地中熱利用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地中熱利用装置において、
前記ヒートポンプには、複数の前記負荷機が接続され、これら複数の負荷機を同時に、または複数の負荷機ごとに、運転および停止が切替制御可能に構成されていることを特徴とする地中熱利用装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の地中熱利用装置において、
前記水配管には、前記熱媒水を循環させる循環ポンプが設けられ、この循環ポンプの運転制御により前記熱媒水の流量が可変に構成されるとともに、前記ヒートポンプが変流量に対応したものとされていることを特徴とする地中熱利用装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の地中熱利用装置において、
前記地中熱交換器は、互いに並列および/または直列に複数接続され、これら複数の地中熱交換器を接続した一系統の前記水配管に1台または複数の前記ヒートポンプが接続されていることを特徴とする地中熱利用装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の地中熱利用装置において、
前記地中熱交換器に接続された前記水配管が複数系統設けられ、これら複数の水配管の系統ごとに前記熱媒水の循環および停止が切替制御可能に構成されていることを特徴とする地中熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−292313(P2006−292313A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116034(P2005−116034)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)