説明

地中熱利用装置

【課題】地中熱をより有効に利用できる地中熱利用装置を提供する。
【解決手段】建物1の中に設置されて建物1の屋内9の空気と熱交換をおこなう室内機13と、外気取込口21から取り込まれた空気と熱交換をおこなう室外機17と、室内機13と室外機17とを循環する熱搬送流体の経路18とを有する空調装置12を備えるとともに、給気口と排気口が設けられた前記建物の地中熱利用装置であって、吸込口2aが外気に連通した通気経路2の一部を地中に埋設し、該通気経路2を分岐させるとともに該分岐点より下流の一の吹出口2Aを室外機17の外気取込口21に接続し、他の一の吹出口2Bを建物1の給気口11Aに接続し、通気管2の分岐点に空気流路の切換手段3を設けて地中熱で温調された空気の給気先を室外機13又は建物1内に切換できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中熱を利用することで住宅の空調装置の効率を向上させ、電気やガスなどのエネルギー消費量を削減させる空調システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、地中埋設チューブに外気を通過させることで、外気の温度を地中の温度に近づけさせ、その地中埋設チューブを経由させた外気を住宅の屋内に供給する地中熱利用空調システムが開示されている。
【0004】
すなわち、地中の温度は、外気に比べて夏季は低く、冬季は高いため、地中の温度に近づけた外気を屋内に取り込むことで、夏季は屋内を冷やすことができ、冬季は屋内を暖めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−35433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、外気温は季節や天候によって変化し、室温はさらに人為的な要因によっても変化する。そのため、外気温と室温との差が大きく、外気を地中で加温又は冷却しても室温との差が依然として大きい場合等、この空気を屋内に直接取り込むことが不適切となる場合もある。この場合、特許文献1に開示された地中熱利用空調システムでは、地中熱を有効に利用することができないこととなる。
【0007】
そこで、本発明は、地中熱をより有効に利用できる地中熱利用装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る地中熱利用装置は、建物の中に設置されて建物内の空気と熱交換をおこなう室内機と、外気取込口から取り込まれた建物外の空気と熱交換をおこなう室外機と、前記室内機と前記室外機とを循環する熱搬送流体の経路とを有する空調装置を備えるとともに、給気口と排気口が設けられた前記建物の地中熱利用装置であって、吸込口が外気に連通した通気経路の少なくとも一部を地中に形成し、該通気経路に分岐点を設けるとともに、該分岐点より下流の一の吹出口を前記室外機の外気取込口に向けて設け、他の一の吹出口を前記建物の給気口に接続し、前記通気経路の分岐点に空気流路の切換手段を設けて地中熱で温調された空気の給気先を前記外気取込口又は前記建物の給気口に切換できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、前記通気経路の分岐点より上流の部分に外気の吸込みを促進するための吸込手段を設けてもよい。
【0010】
さらに、前記空調装置を操作するためのリモコンに前記切換手段を接続し、該リモコンの操作により前記切換手段を制御して前記地中熱で温調された空気の給気先を選択できるようにしてもよい。
【0011】
本発明に係る別の地中熱利用装置は、建物の中に設置されて建物内の空気と熱交換をおこなう室内機と、外気取込口から取り込まれた建物外の空気と熱交換をおこなう室外機と、前記室内機と前記室外機とを循環する熱搬送流体の経路とを有する空調装置を備えるとともに、給気口と排気口が設けられた前記建物の地中熱利用装置であって、吸込口が外気に連通した通気経路の少なくとも一部を地中に形成し、該通気経路に分岐点を設けるとともに、該分岐点より下流の一の吹出口を前記室外機の外気取込口に向けて設け、他の一の吹出口を前記建物の給気口に接続し、前記通気経路の分岐点より下流の位置のそれぞれに前記温調空気の流量を調節する流量調節手段を設けてこれらを同時に制御することにより、地中熱で温調された空気の給気先を前記外気取込口又は前記建物の給気口に切換できるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る地中熱利用装置によれば、前記切換手段により給気先を前記建物内又は前記空調装置の室外機とすることが可能である。そのため、例えば冬季暖房時に建物内に温調空気を直接取り込むには温調空気が冷たすぎる場合であっても、給気先を室外機とすることで外気よりは室外機において冷媒と熱交換させることができる等、状況に応じて地中熱の供給先を選択できるので、地中熱を無駄なく有効に利用することができる。
【0013】
また、前記通気経路の分岐点より上流の部分に外気の吸込みを促進するための吸込手段を設ければ、一の吸込手段により上述した各給気を行うことができる。
【0014】
さらに、前記空調装置を操作するためのリモコンに前記切換手段に接続し、該リモコンの操作により前記切換手段を制御して前記温調空気の給気先を選択できるようにしたので、ユーザによる制御が簡単となる。
【0015】
本発明に係る別の地中熱利用装置によれば、前記流量調節手段により給気先を前記建物内又は前記空調装置の室外機とすることが可能である。そのため、上記同様に状況に応じて地中熱の供給先を選択できるので、地中熱を無駄なく有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の地中熱利用装置の構成を模式的に示した説明図である。
【図2】空調装置の室外機周辺の構成を説明する斜視図である。
【図3】室外機のカバー部の部分断面図である。
【図4】(a)と(b)は、本発明に係る実施例の地中熱利用装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本発明に係る地中熱利用装置は、図1に示すように、一般にエアコンとして知られるようなヒートポンプシステムを有する建物1に対して、建物1の換気又はヒートポンプシステムの熱交換に地中熱を利用するためのものである。この地中熱利用装置は、一部が地中に埋設され分岐した通気経路としての通気管2と、通気管2の分岐点に設けられた空気流路の切換手段としての二方電磁弁3等とを有している。
<建物>
建物1は、基礎断熱として構築された底盤コンクリート4と、その側縁に立設された側壁コンクリート5と、さらにその上に立設された外壁部6および天井部7とから主に構成され、建物1内の気密性は高いものとなっている。
【0019】
側壁コンクリート5、外壁部6および天井部7により囲まれる空間は、床部8により居室などの屋内9と床下空間10とに区切られている。外壁部6には、その内側に屋内9の温度を計測する第1の温度センサが設けられている。また外壁部6には、建物1の内外の換気を行う給気口11A,・・・と、排気口11B,・・・とが形成されている。建物1の気密性の高さから、主として給気口11Aと排気口11Bとにより屋内9の換気が行われる。
<床下空間>
建物1の床下空間10には、後述する空調装置12の室内機13が設置されており、この室内機13が床下空間10の暖房又は冷房を行うことで、床下空間10の温熱又は冷熱が床部8を介して屋内9に伝達され、これにより屋内9の暖房又は冷房が行われることとなる。
<基礎断熱部>
側壁コンクリート5の内側には、断熱材によって基礎断熱部14が形成される。このように床下空間10の側方が基礎断熱部14によって囲まれると、空調装置12の室内機13から放出された温熱又は冷熱は、室内機13からみて床部8の方向又は底盤コンクリート4の方向に主に伝達され、側方から漏出しにくいものとなる。
<地表断熱部>
一方、建物1の外周には、図1に示すように、地盤Gの地表面に沿って地表断熱部15が設けられている。地表断熱部15の一端は建物1の底盤コンクリート4の外壁面に当接されており、ここから建物1の横方向に延びるように地表断熱部15が土中に埋設されている。この地表断熱部15は、断熱材を地表の浅い部分に埋設させたり、地表面を断熱材で覆うことによって形成される。地表断熱部15の建物1とは反対側の端部から、地盤Gの深部に向けて地中断熱部16が埋設されている。
【0020】
基礎断熱部14、地表断熱部15、地中断熱部16としては、発泡ウレタン、発泡スチロール等の断熱材を使用することができる。
<空調装置>
本実施の形態で説明する空調装置12は、床下空間10の冷房や暖房をおこなう室内機13と、屋外25の空気と熱交換をおこなう室外機17と、これらを繋いだ冷媒経路18(図2参照)とを有するヒートポンプ式の空調装置である。
<ヒートポンプ>
空調装置12について、図2を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0021】
この熱搬送流体としての冷媒の経路となる冷媒経路18には、2本の冷媒管が配管されており、その内部を冷媒が搬送される。この冷媒は、室内機13と室外機17との間で循環される冷媒であり、冷房時と暖房時では搬送方向が逆になる。
(冷房)
冷房時は、冷媒管を通って室外機17の圧縮機19へ流れ込んだ気体状の冷媒は、圧縮機19内で圧縮されて高圧・高温状態になる。そして、その状態で室外機17の熱交換部20に流れ込み、室外機17の外気取込口21から取り込まれた外気と熱交換される。このとき、冷媒は温度が下がって液状になり、熱交換部20を通過した外気の温度は上昇して室外機17のファンの回転により排気口22から排出される。
【0022】
続いて、液状になった冷媒は膨張弁23に搬送され、圧力を一気に下げられて低圧・低温状態の液状となり、そのまま冷媒管を通って室内機13に搬送される。
【0023】
図1に示すように、床下空間10の室内機13の熱交換機(図示省略)に流れ込んだ冷媒により床下空間10の空調を行う。
【0024】
この室内機13の熱交換機において、床下空間10の空気に間接的に触れた冷媒が空気中の熱を奪って蒸発して気体に変化する。そして、熱を奪われた空気は、冷風として室内機13の送風口から床下空間10に吹き出される。
(暖房)
これに対して暖房時は、冷房時とは逆向きに冷媒が循環することになる。すなわち、室内機13の熱交換機には高圧・高温の気体状の冷媒が搬送され、室内機13の吸気口から取り込まれた床下空間10の空気を温風に変えて送風口から吹き出させる。
【0025】
そして、熱交換機において熱を奪われて液状になった冷媒は、冷媒管を通って室外機17の膨張弁23に搬送される。この膨張弁23で圧力を一気に下げられて低圧・低温状態になった冷媒は、液状のまま熱交換部20に搬送される。
【0026】
続いて、熱交換部20に搬送された冷媒は、室外機17の外気取込口21から取り込まれた建物1周辺の外気又は後述する通気管2からの外気と熱交換をおこなう。この結果、冷媒は気体になって温度が上昇し、熱交換部20を通過した外気の温度は下降してから排出される。
【0027】
さらに、熱交換部20から圧縮機19に流れ込んだ気体状の冷媒は、圧縮機19内で圧縮されて高圧・高温状態になって冷媒管を通って室内機13に向けて搬送される。
<地中熱利用装置>
このような空調装置12を備える建物1に対して、本実施の形態の地中熱利用装置は、図1に示すように、地盤Gに埋設され分岐した通気管2と、通気管2の分岐点に設けられた二方向電磁弁3とを主として備えている。
<通気管>
通気管2は、その一部が地中に埋設され外気を取り込んで地中熱と熱交換をさせるためのものであり、例えば、連続した一本の貫通路が形成され鋼管、塩化ビニル管などの管材によって構築される。
【0028】
図1の例では、地表断熱部15、地中断熱部16で囲まれた箇所に埋設されている。これにより、床下空間10から底盤コンクリート4を通じて地中に漏出した温熱も効率よく再利用される。
【0029】
また、通気管2の分岐点は、外気を取り込む側を上流側とした場合に、温調空気を吹き出す下流側であって、地表面に近い箇所で二つに分岐されている。
【0030】
通気管2の一端には吸込口2aが形成され、この吸込口2aには外気を取り込んで通気管2内の空気を移送させるための吸込手段としての吸込ファン24、除塵フィルター、第2の温度センサ(図示省略)等が設けられている。
【0031】
この吸込ファン24や第2の温度センサは、後述の屋内9に設置された空調装置12のリモコン27に接続されている。この吸込ファン24を設ける位置は、通気管2の分岐点より上流側であればよい。
【0032】
通気管2の分岐点より下流の2つの他端にはそれぞれ吹出口2A,2Bが形成されている。このうち一方の吹出口2Aは、カバー部26等により空調装置12の室外機17の外気取込口21(図2参照)に接続されている。他方の吹出口2Bは、建物1の給気口11A,・・・のいずれかに接続されている。
【0033】
吸込ファン24の回転又は自然風等により通気管2内に流入した外気の温度が地中の温度より高ければ、外気の熱が地中に移動して外気(空気)の温度が低下し、二方向電磁弁3が通電・開成状態で、建物1周辺の外気より低い温度の空気が吹出口2A又は吹出口2Bから吐き出される。
【0034】
逆に、吸い込まれた外気の温度が地中の温度より低ければ、外気の熱が地中に移動して外気(空気)の温度が上昇し、二方向電磁弁3が通電・開成状態で、建物1周辺の外気より高い温度の空気が吹出口2A又は吹出口2Bから吐き出される。
<接続部分>
図2に示すように、吹出口2Aと室外機17の外気取込口21との間は、カバー部26によって覆われている。このカバー部26は、一方の端部が吹出口2Aと略同じ大きさの断面形に形成されており、そこから徐々に奥行き方向(図2において)へ拡開していき他方の端部は外気取込口21と略同じ大きさの断面形に形成されている。
【0035】
なお、カバー部26の一部にはカバー部26の周辺の外気を直接取り込むための複数の孔26a,・・・が形成されており、この複数の孔26a,・・・はいわゆる一方向弁の如く開閉部材26bによりカバー部26の外側から内側へ一方向にのみ外気が流れるように構成されている(図3参照)。図3に示す2点鎖線は開成時を示し、矢印はカバー部26の内部に外気が取り込まれている状態を示す。
【0036】
これにより、通気管2から温調空気を外気取込口21に取り込まない又は低流量で取り込む場合でも、カバー部26の内部が室外機17のファン(図示省略)の回転により負圧とならずに確実に外気取込口21に外気が供給される。逆に通気管2の吹出口2Aから温調空気がカバー部26内に吹き出してカバー部26内が正圧となる場合には逆に外気の取り込みが抑制される。
【0037】
そして、通気管2の吹出口2Aから吹き出た空気は、カバー部26の内空を通って室外機17の外気取込口21(図2参照)に供給される。
<二方向電磁弁>
通気管2の分岐点に設けられた切換手段としての二方向電磁弁3は、通気管2内で温調空気の給気先を建物1の屋内9又は空調装置12の室外機17に選択するためのものである。
【0038】
この二方向電磁弁3は、通気管2内の分岐点付近を流れる温調空気の温度を計測する第3の温度センサを有し、吸込ファン24と同様に屋内9に設けられた空調装置12を操作するためのリモコン27にそれぞれが接続されている。
<リモコン>
リモコン27は、地中熱利用装置を制御するリモコンとしても機能し、温度や設定内容を表す表示部、制御手段、記憶手段、給気先や風量の設定ボタン、自動運転モードの設定ボタン等を有している。
【0039】
この記憶手段には空調装置12の制御命令に関するプログラムの他に、二方向電磁弁3の制御命令に関するプログラム、吸込ファン24の制御命令に関するプログラム等が記憶されている。これらのプログラムに基づいた制御命令により二方向電磁弁3、吸込ファン24が制御される。
【0040】
さらに、この記憶手段には二方向電磁弁3を第1〜3の温度センサの計測結果に基づいて地中熱利用装置を自動制御するための自動運転モードのプログラムが記憶されている。
【0041】
すなわち、リモコン27を操作することにより、吸込ファン24と二方向電磁弁3の電源のON、OFFや、建物1の屋内9又は室外機17へ給気する空気の風量の設定、温調空気の給気先の設定を手動で行うことができるようになっている。
【0042】
また、この手動設定の代わりに、第1〜3の温度センサの計測結果に基づいて、給気先の設定や風量等の設定を自動で行う自動運転モードのON・OFF設定が可能となっている。
<動作>
(通常運転モード)
屋内9に設置されたリモコン27を操作して、空調装置12の電源をONに設定し、空調装置12の冷房運転又は暖房運転を行うと、空調装置12の室内機13により床下空間10、ひいては屋内9の冷房又は暖房が行われる。
【0043】
ここで、リモコン27を操作して地中熱利用装置をONに設定すると、初期設定の給気先、風量で地中熱利用装置の吸込ファン24と二方向電磁弁3が稼動する。この給気先、風量の設定はリモコン27を操作することで変更することができるようになっている。
(自動運転モード)
自動運転モードをONに設定すると、通常運転モードから切り替わり、二方向電磁弁3が第1〜3の温度センサの検出結果に基づいて温調空気の給気先が自動設定される。
【0044】
すなわち、夏季に空調装置12を冷房運転中、温調空気の温度が、屋内9の温度より低い場合には温調空気を建物1の屋内9へ給気し、屋内9の温度より高く且つ外気温未満の場合には室外機17内へ給気し、外気温以上の場合にはこの給気を行わず、代わりに室外機周辺の外気がカバー部26の孔26aを通じて室外機17内へ自然給気される。
【0045】
冬季に空調装置12を暖房運転中、温調空気の温度が、屋内9の温度より高い場合には温調空気を建物1の屋内9へ給気し、屋内9の温度より低く且つ外気温より高い場合には室外機17内へ給気し、外気温以下の場合にはこの給気を行わず、代わりに室外機周辺の外気がカバー部26の孔26aを通じて室外機17内へ自然給気される。
【0046】
次に、本実施の形態の地中熱利用装置の作用について説明する。
(1)本実施の形態の地中熱利用装置によれば、必要に応じて温調空気の給気先を建物1の屋内9又は室外機17に切り換えることができる。
【0047】
冬季暖房運転や夏季冷房運転時に、暖房や冷房開始直後で外気温と屋内9との温度差が小さく、冷房や暖房が実質的に稼動していない初期段階では、温調空気を屋内9に給気することで冷房や暖房の代わりとなる。
【0048】
さらに、空調装置12による冷房や暖房が進んで、屋内9に直接取り込むには温調空気が冷たすぎたり熱すぎたりする場合となっても、給気先を室外機とすることで外気よりは室外機において高効率に冷媒と熱交換させることができる。
【0049】
さらに建物1の換気目的で給気先を建物1の屋内9とすれば、温調空気により屋内9を換気することとなるので、外気による換気よりは屋内9の熱の損失を低く抑えた換気をすることができる。
【0050】
このように、状況に応じて温調空気の供給先を選択できるので、空調装置12の冷房・暖房運転に地中熱が無駄なく有効に利用され、ほぼ年間を通じて省電力・省エネルギーを達成できる。
(2)通気管2の吸込口2aに外気を吸い込むための吸込ファン24を設けたので、温調空気を建物1の屋内9に取り込む場合と、空調装置12の室外機17に取り込む場合との双方の場合において、一の吸込ファン24によりそれぞれの給気を行うことができる。
(3)空調装置12を操作するためのリモコンに二方向電磁弁3を接続し、リモコン27の操作により二方向電磁弁3を制御して温調空気の給気先を選択できるようにしたので、温調空気の給気先の選択と設定が簡単となる。
(4)空調装置12の自動運転モードによれば、上述のように第1〜3の各温度センサが検出する温度に基づいて温調空気の給気先を建物1の屋内9又は室外機17に自動的に設定するので、例えば料理等の人為的な要因等により建物1の屋内9の温度が変化しても、それに応じて二方向電磁弁3が自動的に切り換わり適正な給気先が自動で選択される。このため、ユーザが定期的に外気温度等をチェックして改めて給気先を設定し直す必要がなく、地中熱の利用機会を逸することなく地中熱の利用効率が向上する。
【実施例】
【0051】
図4は、本発明の実施例に係る地中熱利用装置を示す図である。
【0052】
図4に示すように、二方向電磁弁3の代わりに通気管2の分岐点より下流の位置に流量調節手段をそれぞれ設けて、以下に説明するようにこれらを同時に制御するようにしてもよい。
【0053】
すなわち、実施例の地中熱利用装置は、二方向電磁弁3の代わりに、流量調節手段としての開閉ダンパー3A,3Bおよびファン3C,3Dを有している。
【0054】
この場合、図4に示すように、建物1の給気口11Aに接続された通気管2の吹出口2Bと分岐点との間、室外機17に接続された通気管2の吹出口2Aと通気管2の分岐点との間のそれぞれに、流量調節手段としての開閉ダンパー3A,3Bおよびファン3C,3Dを設ける。
【0055】
これらのファン3C,3Dやダンパー3A,3Bは、屋内9のリモコン27に接続されており、上述した通常運転モードや自動運転モードの制御が可能となっている。すなわち、屋内9に設置されたリモコン27を操作して、上記同様に床下空間10と屋内9の冷房又は暖房が行われる。また、ここで、リモコン27を操作して流量調節手段の制御(開閉ダンパー3A,3Bの開閉制御およびファン3C,3Dの回転制御)をすることができる。
【0056】
(通常運転モード)
実施例の地中熱利用装置によれば、温調空気を建物1の屋内9に給気する場合には、図4(a)に示すように、ダンパー3Aを開成しファン3Cを回転させて温調空気を屋内9に流入させるとともに、ファン3Dを停止しダンパー3Bを閉成する。
【0057】
一方、空調装置12の室外機17に温調空気を給気する場合には、図4(b)に示すように、ダンパー3Bを開成しファン3Dを回転させて温調空気を室外機17に流入させるとともに、ファン3Cを停止しダンパー3Aを閉成する。
【0058】
これにより、温調空気の給気先を建物1の屋内9又は室外機17に設定することができる。
【0059】
自動運転モードについては、既に説明したように給気先が自動に切り替わるので、ユーザが定期的に外気温度等をチェックして改めて給気先を設定し直す必要がなく、地中熱の利用機会を逸することなく地中熱の利用効率が向上する。
【0060】
以上、図面を参照して、本発明に係る実施の形態および実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0061】
例えば、前記実施の形態では、建物1の床下空間に設置された空調装置12に対して適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、建物1の室内に設置される空調装置や、さらには住宅以外の建物に設置される空調装置に対しても適用することができる。
【0062】
また、前記実施の形態では、通気管2の吹出口2Aと室外機17の外気取込口21との間をカバー部26で覆ったが、これに限定されるものではなく、吹出口2Aが外気取込口21に近接して配置されている場合はカバー部26を設けなくてもよい。
【0063】
通気管2は、二分岐としたが、建物1の大きさ等に合わせて三分岐以上としてもよい。
【0064】
通気管2の地中埋設部分については通気経路があればよいので、単に通気用の穴を掘削して内壁を固めた地下トンネルとし、この部分の通気管の一部又は全部を省略してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1・・・建物
11A・・・給気口
11B・・・排気口
13・・・室内機
17・・・室外機
18・・・冷媒経路(熱搬送流体の経路)
12・・・空調装置
2・・・通気管(通気経路)
21・・・外気取込口
2a・・・吸込口
3・・・二方電磁弁(切換手段)
3A,3B・・・開閉ダンパー(流量調節手段)
3C,3D・・・ファン(流量調節手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の中に設置されて建物内の空気と熱交換をおこなう室内機と、外気取込口から取り込まれた建物外の空気と熱交換をおこなう室外機と、前記室内機と前記室外機とを循環する熱搬送流体の経路とを有する空調装置を備えるとともに、給気口と排気口が設けられた前記建物の地中熱利用装置であって、
吸込口が外気に連通した通気経路の少なくとも一部を地中に形成し、
該通気経路に分岐点を設けるとともに、該分岐点より下流の一の吹出口を前記室外機の外気取込口に向けて設け、
他の一の吹出口を前記建物の給気口に接続し、
前記通気経路の分岐点に空気流路の切換手段を設けて地中熱で温調された空気の給気先を前記外気取込口又は前記建物の給気口に切換できるようにしたことを特徴とする地中熱利用装置。
【請求項2】
前記通気経路の分岐点より上流の部分に外気の吸込みを促進するための吸込手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の地中熱利用装置。
【請求項3】
前記空調装置を操作するためのリモコンに前記切換手段を接続し、該リモコンの操作により前記切換手段を制御して前記地中熱で温調された空気の給気先を選択できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の地中熱利用装置。
【請求項4】
建物の中に設置されて建物内の空気と熱交換をおこなう室内機と、外気取込口から取り込まれた建物外の空気と熱交換をおこなう室外機と、前記室内機と前記室外機とを循環する熱搬送流体の経路とを有する空調装置を備えるとともに、給気口と排気口が設けられた前記建物の地中熱利用装置であって、
吸込口が外気に連通した通気経路の少なくとも一部を地中に形成し、
該通気経路に分岐点を設けるとともに、該分岐点より下流の一の吹出口を前記室外機の外気取込口に向けて設け、
他の一の吹出口を前記建物の給気口に接続し、
前記通気経路の分岐点より下流の位置のそれぞれに前記温調空気の流量を調節する流量調節手段を設けてこれらを同時に制御することにより、地中熱で温調された空気の給気先を前記外気取込口又は前記建物の給気口に切換できるようにしたことを特徴とする地中熱利用装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−163239(P2012−163239A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22611(P2011−22611)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】