説明

地図情報生成装置及び閲覧端末

【課題】 地図情報のセキュリティの確保及び表示処理の迅速化を可能とする地図情報生成装置、及び閲覧端末を提供する。
【解決手段】 地図情報生成装置10では、メインレイヤ44のみを暗号化すると共に、サブレイヤ45の各メッシュデータ42の配列をスクランブル化し、管理データ50によってメインレイヤ44の各メッシュデータ42とサブレイヤ45のメッシュデータ42とを対応付けて地図情報60を生成する。閲覧端末20では、表示領域に対応するメインレイヤ44のメッシュデータ42のみを復号化すれば、地図情報60を初期表示できるので、ユーザに対して快適な動作環境を提供できる。また、地図情報60のうち、暗号化されていないサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列はスクランブル化されており、処理負担の増大を回避しつつ、地図情報60のセキュリティを十分に確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報生成装置及び閲覧端末に関する。
【背景技術】
【0002】
端末のディスプレイに地図情報を表示させ、ユーザのナビゲーション等を行う技術が知られている。このような地図情報の表示に関連する技術として、例えば特許文献1に記載のナビゲーションシステムがある。この従来のナビゲーションシステムでは、予め算出した探索ルートの表示に必要な地図情報を記憶媒体に一旦記憶させた後、この記憶媒体を車載装置(カーナビゲーション装置)で再生させることにより、ユーザに対して経路案内サービスを提供している。
【0003】
また、例えば特許文献2に記載の通信型ナビゲーション装置及びサーバ装置では、道路・背景・建物といった表示項目ごとに地図情報を複数のレイヤに分割している。そして、探索ルートの表示に必要なレイヤを選択的にサーバ装置から受信することにより、地図情報の取得の効率化を図っている。なお、これらのナビゲーション技術においては、ユーザによる不正コピー等を防止する観点から、地図情報の全体に暗号化処理を施すことが行われている。
【特許文献1】特開2000−146619号公報
【特許文献2】特開2003−75177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地図情報の全体に暗号化処理を施すと、地図情報を表示させる閲覧端末側では、地図情報の復号化と、復号化した地図情報の描画とを並行して行う必要があるため、処理負担が増大するという問題が生じていた。このことは、CPUの処理能力やメモリ容量が小さい携帯端末などを閲覧端末として用いる場合には特に顕著なものとなり、快適な動作環境下で地図情報を表示させることが困難であった。
【0005】
本発明は上記課題の解決のためになされたものであり、地図情報のセキュリティの確保及び表示処理の迅速化を可能とする地図情報生成装置、及び閲覧端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る地図情報生成装置は、表示領域ごとに区分されたメッシュデータを配列してなる複数層のレイヤを有する地図情報を生成する地図情報生成装置であって、複数層のレイヤを第1のレイヤと第2のレイヤとに区分してそれぞれ生成するレイヤ生成手段と、第2のレイヤのメッシュデータの配列をスクランブル化するスクランブル化手段と、第1のレイヤのメッシュデータに対し、当該メッシュデータに対応する第2のレイヤのメッシュデータの配列位置を示す管理データを付与する管理データ付与手段と、第1のレイヤのメッシュデータと管理データとを暗号化する暗号化手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
この地図情報生成装置では、地図情報の第1のレイヤのみを暗号化すると共に、第2のレイヤのメッシュデータの配列をスクランブル化し、管理データによって第1のレイヤのメッシュデータと第2のレイヤのメッシュデータとを対応付けている。したがって、この地図情報を表示させる場合、指定された表示領域に対応する第1のレイヤのメッシュデータのみを復号化し、このメッシュデータに対応する第2のレイヤのメッシュデータの配列位置を特定すればよく、地図情報全体の復号化は不要となる。これにより、携帯端末等のCPUの処理能力及びメモリ容量の小さい閲覧端末であっても、地図情報の表示処理を迅速化でき、ユーザに対して快適な動作環境を提供できる。また、暗号化されていない第2のレイヤのメッシュデータの配列はスクランブル化されており、地図情報のセキュリティの確保も十分に確保される。
【0008】
また、第2のレイヤのメッシュデータに含まれる図形の座標値をオフセットさせる座標値調整手段を更に備え、管理データには、第2のレイヤのメッシュデータにおける座標値のオフセット量を示す調整値情報が含まれていることが好ましい。この場合、表示処理の負担を抑えつつ、地図情報のセキュリティを一層確保することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る閲覧端末は、表示領域ごとに区分されたメッシュデータを配列してなる複数層のレイヤを有する地図情報を表示させる表示手段を備えた閲覧端末であって、表示領域を指定する指定情報の入力を受け付ける受付手段と、指定情報によって指定された表示領域に対応する第1のレイヤのメッシュデータ、及び当該メッシュデータに付与された管理データを復号化する復号化手段と、管理データに基づいて、第1のレイヤのメッシュデータに対応する第2のレイヤのメッシュデータの配列位置を特定する配列特定手段と、復号化手段によって復号化された第1のレイヤのメッシュデータを表示手段に表示させた後、配列特定手段によって特定された第2のレイヤのメッシュデータを表示手段に表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
この閲覧端末では、指定された表示領域に対応する第1のレイヤのメッシュデータのみを復号化し、このメッシュデータに対応する第2のレイヤのメッシュデータを特定するだけで、表示に必要な処理が完了する。これにより、当該閲覧端末がCPUの処理能力及びメモリ容量の小さい端末であっても、地図情報の表示処理を迅速化でき、ユーザに対して快適な動作環境を提供できる。また、暗号化されていない第2のレイヤのメッシュデータの配列はスクランブル化されており、地図情報のセキュリティの確保も十分に確保される。
【0011】
また、管理データには、第2のレイヤのメッシュデータにおける座標値のオフセット量を示す調整値情報が含まれており、調整値情報に基づいて、第2のレイヤのメッシュデータに含まれる図形の座標値のオフセットを解除する座標値調整解除手段を更に備えたことが好ましい。この場合、表示処理の負担を抑えつつ、地図情報のセキュリティを一層確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る地図情報生成装置及び閲覧端末によれば、地図情報のセキュリティの確保及び表示処理の迅速化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る地図情報生成装置及び閲覧端末の好適な実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る地図情報生成装置及び閲覧端末の一実施形態を含んで構成されるナビゲーションシステムの構成を示す図である。図1に示すナビゲーションシステム1は、ユーザからの要求に従って、周囲の道路や建築物の位置などを示す地図情報を提供するサービスを実現するためのシステムとして構成されている。このナビゲーションシステム1は、サービスに利用する地図情報を生成する地図情報生成装置10と、当該地図情報を閲覧に用いる閲覧端末20とを備えている。
【0015】
地図情報生成装置10は、例えばサービスを提供する事業者が管理する装置であり、物理的には、CPU、メモリ、通信インタフェイス、ハードディスクといった格納部、ディスプレイといった表示部、等を備えたコンピュータシステムである。また、地図情報生成装置10は、図2に示すように、機能的な構成要素として、元地図情報入力部101と、レイヤ生成部102と、座標値調整部103と、スクランブル化部104と、管理データ付与部105と、暗号化部106と、地図情報出力部107とを備えている。
【0016】
元地図情報入力部101は、この地図情報生成装置10で生成する地図情報の生成元である地図情報(以下、「元地図情報」と称す)を入力する部分である。元地図情報の一例を図3に示す。図3に示す例では、元地図情報40は、6層のレイヤ41(第1レイヤ41a〜第6レイヤ41f)によって構成されている。
【0017】
第1レイヤ41aは、例えば高速道路、国道、県道といった主要道路を表示するためのレイヤであり、第2レイヤ41bは、例えば学校・病院・店舗といった建築物を表示するためのレイヤである。また、第3レイヤ41c以降は、例えば主要道路よりも細い生活道路、建築物のロゴマーク、背景等を表示するためのレイヤである。
【0018】
各レイヤ41a〜41fのそれぞれは、実際の地図上において例えば300m×400mとなる表示領域ごとにメッシュ状に区分されたデータ(以下、「メッシュデータ」と称す)によって構成されている。各メッシュデータ42(421,1、421,2、…42n,m)は、配列位置(1,1)から順番に、配列位置(n,m)までn行×m列に配列され、各メッシュデータ42には、描画する図形のベクトルデータ43が含まれている。
【0019】
このメッシュデータ42の例を図4に示す。図4に示す例では、互いに隣接する配列位置(x,y)のメッシュデータ42x,yと配列位置(x,y+1)のメッシュデータ42x,y+1に跨って、3本の道路のベクトルデータ43A,43B,43C、及び建築物用のベクトルデータ43Dが含まれている。道路の形状は、ベクトルデータ43A,43B,43Cの始点(A1,B1,C1)、終点(A2,B2,C2)、及び中間の屈折点(A3,A4,B3,C3)の座標値によってそれぞれ特定される。また、建築物の形状は、ベクトルデータ43Dの頂点(D1,D2)の座標値によって特定される。元地図情報入力部101は、入力された元地図情報40をレイヤ生成部102に出力する。
【0020】
レイヤ生成部102は、生成する地図情報のメインレイヤ(第1のレイヤ)とサブレイヤ(第2のレイヤ)とをそれぞれ生成する部分である。具体的には、レイヤ生成部102は、元地図情報入力部101から元地図情報40を受け取ると、図5に示すように、元地図情報40の第1レイヤ41aと第2レイヤ41bとを切り出し、これらをメインレイヤ44として定義付ける。また、第3レイヤ41c以降のレイヤをサブレイヤ45として定義付ける。レイヤ生成部102は、生成したメインレイヤ44及びサブレイヤ45を座標値調整部103に出力する。
【0021】
座標値調整部103は、レイヤ生成部102からメインレイヤ44及びサブレイヤ45を受け取り、サブレイヤ45の各メッシュデータ42に含まれるベクトルデータA〜Dの座標値をオフセットさせる部分である。座標値のオフセットの例を図6に示す。図6に示す例では、配列位置(x,y)のメッシュデータ42x,yに属する図形と、当該メッシュデータ42x,yに隣接する配列位置(x,y+1)のメッシュデータ42x,y+1に属する図形とがそれぞれ反対の向きに平行移動するようにオフセットが掛けられている。すなわち、配列位置(x,y)のメッシュデータ42x,yに属するベクトルデータ43A〜43Dの座標値には、所定のオフセット値が減算され、当該メッシュデータ42x,yに隣接する配列位置(x,y+1)のメッシュデータ42x,y+1に属するベクトルデータA〜Dの座標値には、上述したオフセット値と同じ値が加算されている。
【0022】
道路のベクトルデータ43A〜43Cの座標値のうち、メッシュデータ42x,y,42x,y+1間の境界L上で共通する端点を特定するA4,B3,C3の座標値については、これらをメッシュデータ42x,y,42x,y+1に2分割した上で、オフセット値の加減がそれぞれなされている。座標値調整部103は、ベクトルデータ43A〜43Dの座標値のオフセットを行った後、メインレイヤ44及びサブレイヤ45をスクランブル化部104に出力する。また、座標値調整部103は、座標値の加減に用いたオフセット値を示す調整値情報を生成し、管理データ付与部105に出力する。
【0023】
スクランブル化部104は、座標値調整部103から受け取ったサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列をスクランブル化する部分である。すなわち、スクランブル化部104は、所定のランダム関数等を用いることにより、サブレイヤ45の各メッシュデータ42(421,1、421,2、…42n,m)の配列位置をランダムに並び変える(図8参照)。
【0024】
また、スクランブル化部104は、サブレイヤ45のメッシュデータ42をスクランブル化した後、当該メッシュデータ42の配列を示す配列情報を生成する。スクランブル化部104は、メインレイヤ44、スクランブル化したサブレイヤ45、及び配列情報を管理データ付与部105に出力する。
【0025】
管理データ付与部105は、スクランブル化部104から受け取った配列情報及び座標値調整部103から受け取った調整値情報に基づいて管理データ50を生成し、この管理データ50をメインレイヤ44の各メッシュデータ42に付与する部分である。管理データ50の例を図7に示す。図7に示す例では、管理データ50として、第1レイヤ41aにおける配列位置(x,y)のメッシュデータ42の属性情報、第2レイヤ41bにおける配列位置(x,y)のメッシュデータ42の属性情報、配列情報、及びオフセット値が関連付けられている。
【0026】
属性情報には、例えばメッシュデータ42の配列位置、データサイズといった情報が含まれている。配列情報は、メインレイヤ44における配列位置(x,y)の各メッシュデータ42に対応するサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列位置を示すポインタとして表されており、このポインタの表示するアドレスに実際のメッシュデータ42が格納される。そして、管理データ付与部105は、管理データ50を付与した後、メインレイヤ44及びサブレイヤ45を暗号化部106に出力する。
【0027】
暗号化部106は、管理データ付与部105から受け取ったメインレイヤ44及びサブレイヤ45のうち、メインレイヤ44のみを暗号化する部分である。すなわち、暗号化部106は、メインレイヤ44の各メッシュデータ42と、これに付与されている管理データ50とを暗号化する。これにより、図8に示すように、元地図情報40に基づく地図情報60の生成が完了する。暗号化部106は、生成した地図情報60を地図情報出力部107に出力する。
【0028】
地図情報出力部107は、暗号化部106から受け取った地図情報60を外部に出力する部分である。地図情報出力部107は、例えばSD(Secure Digital)カードのような小型の記憶媒体30に地図情報60の書き込みを行う。地図情報60が書き込まれた記憶媒体30は、事業者等が販売・配布することにより、閲覧端末20のユーザに配信される。
【0029】
次に、閲覧端末20の構成について説明する。
【0030】
閲覧端末20は、例えばナビゲーションのサービスに加入しているユーザが所有する携帯電話機である。閲覧端末20は、物理的には、CPU(中央処理装置)、メモリといった記憶装置、プッシュボタンといった入力装置等を備え、予め地図情報60を利用するための専用のアプリケーションがインストールされている。また、閲覧端末20は、図9に示すように、機能的な構成要素として、指定情報入力受付部201と、復号化部202と、記憶媒体収容部203と、配列特定部204と、座標値調整解除部205と、表示制御部206と、表示部207とを備えている。
【0031】
指定情報入力受付部201は、表示部207に表示させる地図情報60の表示領域を指定する指定情報の入力を受け付ける部分である。指定情報は、専用のアプリケーションを起動させたユーザが閲覧端末20の操作ボタン(図示しない)を操作することによって入力され、例えば目的地の緯度・経度や住所といった情報が含まれる。指定情報入力受付部201は、入力された指定情報を復号化部202に出力する。
【0032】
復号化部202は、地図情報60の復号化を行う部分である。より具体的には、復号化部202は、指定情報入力受付部201から指定情報を受け取ると、記憶媒体収容部203に収容されている記憶媒体30内の地図情報60にアクセスし、指定情報によって指定された表示領域に対応する地図情報60のメインレイヤ44のメッシュデータ42、及び管理データ50を復号化する。復号化部202は、復号化したメインレイヤのメッシュデータ42を表示制御部206に出力し、指定情報及び管理データ50を配列特定部204に出力する。
【0033】
配列特定部204は、管理データ50に基づいて、メインレイヤ44のメッシュデータ42に対応するサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列位置を特定する部分である。配列特定部204は、復号化部202から指定情報及び管理データ50を受け取ると、管理データ50に含まれる配列情報(図7参照)を参照し、配列情報のポインタが表示するアドレスに基づいて、復号化部202から受け取ったメインレイヤ44のメッシュデータ42に対応するサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列位置を特定する。そして、配列特定部204は、配列位置を特定したサブレイヤ45のメッシュデータ42を記憶媒体30から取得し、管理データ50と共に座標値調整解除部205に出力する。
【0034】
座標値調整解除部205は、サブレイヤ45のメッシュデータ42に含まれる図形の座標値のオフセットを解除する部分である。すなわち、座標値調整解除部205は、配列特定部204からサブレイヤ45のメッシュデータ42及び管理データ50を受け取ると、管理データ50に含まれる調整値情報(図7参照)を参照し、サブレイヤ45のメッシュデータ42に含まれるベクトルデータ43A〜43D(図6参照)の座標値に加減されている所定のオフセット値を解除する。座標値調整解除部205は、オフセット値を解除したサブレイヤ45のメッシュデータ42を表示制御部206に出力する。
【0035】
表示制御部206は、表示部207の表示を制御する部分である。表示制御部206は、復号化部202から受け取ったメインレイヤ44のメッシュデータ42に基づいて、ユーザが指定した表示領域に存在する主要道路及び建築物の図形を表示部207に表示(初期表示)させる。また、表示制御部206は、座標値調整部103から受け取ったサブレイヤ45のメッシュデータ42に基づいて、上述した表示領域に存在する生活道路、建築物のロゴマーク、背景等を表示部207に順次表示させる。
【0036】
次に、上述した構成を有する地図情報生成装置10及び閲覧端末20の動作について、図10及び図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0037】
地図情報生成装置10では、図10に示すように、まず元地図情報40の入力がなされる(ステップS01)。そうすると、地図情報生成装置10は、入力された元地図情報40の第1レイヤ41a及び第2レイヤ41bを切り出し、メインレイヤ44とサブレイヤ45とを生成する(ステップS02)。次に、地図情報生成装置10は、サブレイヤ45の各メッシュデータ42に含まれるベクトルデータ43の座標値に所定のオフセット値を加減し(ステップS03)、サブレイヤ45の各メッシュデータ42の配列位置をスクランブル化する(ステップS04)。
【0038】
さらに、地図情報生成装置10は、メインレイヤ44に管理データ50を付与した後(ステップS05)、メインレイヤ44の暗号化を行う(ステップS06)。これにより、地図情報60の生成が完了する。最後に、地図情報生成装置10は、生成した地図情報を記憶媒体30に出力し、処理が完了する(ステップS07)。
【0039】
閲覧端末20では、図11に示すように、まずユーザの所定の操作により、地図情報60を利用するための専用のアプリケーションが起動する(ステップS11)。アプリケーションが起動すると、閲覧端末20は、ユーザからの指定情報の入力を受け付ける(ステップS12)。
【0040】
指定情報が入力されると、閲覧端末20は、指定情報によって指定された表示領域に対応する地図情報60のメインレイヤ44のメッシュデータ42、及び管理データ50を復号化する(ステップS13)。そして、閲覧端末20は、復号化したメインレイヤ44のメッシュデータ42に基づいて、主要道路や建築物の図形を表示部207に表示させる(ステップS14)。
【0041】
一方、閲覧端末20は、メインレイヤ44のメッシュデータ42の表示に続き、管理データ50内の配列情報に基づいて、メッシュデータ42に対応するサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列位置を特定する(ステップS15)。そして、閲覧端末20は、特定したメッシュデータ42を記憶媒体30から取得し、管理データ50内の調整値情報に基づいて、メッシュデータ42に含まれるベクトルデータ43の座標値に加減されているオフセット値を解除する(ステップS16)。この後、閲覧端末20は、オフセット値を解除したサブレイヤ45のメッシュデータ42に基づいて、生活道路、建築物のロゴマーク、背景等を表示部207に順次表示させる。
【0042】
以上説明したように、地図情報生成装置10では、元地図情報40から切り出したメインレイヤ44のみを暗号化すると共に、サブレイヤ45の各メッシュデータ42の配列をスクランブル化し、管理データ50によってメインレイヤ44の各メッシュデータ42とサブレイヤ45のメッシュデータ42とを対応付けることにより、地図情報60を生成する。
【0043】
したがって、地図情報60を表示させる閲覧端末20では、指定された表示領域に対応するメインレイヤ44のメッシュデータ42のみを復号化すれば、ユーザが指定した表示領域を初期表示させることができる。復号化するデータ量は、地図情報60のレイヤ44,45全体の復号化を行う場合に比べて1/10程度に縮小できる。これにより、閲覧端末20が、携帯電話機等のCPUの処理能力及びメモリ容量の小さい端末であっても、地図情報60の表示処理を迅速化でき、ユーザに対して快適な動作環境を提供できる。
【0044】
また、地図情報60のうち、暗号化されていないサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列はスクランブル化されている。閲覧端末20においてスクランブル化を解除する際には、管理データ50に基づいてメッシュデータ42に対応するサブレイヤ45のメッシュデータ42の配列位置を特定するだけの単純な処理を行えばよい。したがって、処理負担の増大を回避しつつ、地図情報60のセキュリティを十分に確保できる。
【0045】
さらに、上述した実施形態では、サブレイヤ45のメッシュデータ42に含まれるベクトルデータ43の座標値に所定のオフセット値が加減されている。このため、隣接するメッシュデータ42x,y,42x,y+1に跨って存在する道路や建築物のベクトルデータ43について、メッシュデータ42x,y,42x,y+1間の境界L上で共通する端点の座標値は、2つの異なる座標値に分割される。この結果、ベクトルデータ43の共通座標値の単純な解析では、スクランブル化されたサブレイヤ45の各メッシュデータ42の配列を特定することは困難であり、表示処理の負担を抑えつつ、地図情報60のセキュリティを一層確保することが可能となる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した実施形態では、記憶媒体30を介して地図情報生成装置10で生成した地図情報60を閲覧端末20に配信しているが、ネットワーク(図示しない)を利用した無線通信や、IrDA(Infrared Data Association)といった近距離無線通信等によって地図情報60の配信を行ってもよい。
【0047】
また、閲覧端末20において、表示制御部206がメインレイヤ44を表示部207に表示させた後、サブレイヤ45を表示部207に表示させるか否かの選択を受け付ける受付手段を更に設け、表示させる旨の選択がなされた場合にのみ、ステップS15〜ステップS17の処理を行うようにしてもよい。この場合、閲覧端末20における処理負担を更に軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る地図情報生成装置及び閲覧端末の一実施形態を含んで構成されるナビゲーションシステムの構成を示す図である。
【図2】図1に示した地図情報生成装置の機能的な構成要素を示す図である。
【図3】元地図情報の一例を示す図である。
【図4】メッシュデータに含まれるベクトルデータの一例を示す図である。
【図5】メインレイヤ及びサブレイヤの一例を示す図である。
【図6】図4に示したベクトルデータの座標値にオフセット値を加減した状態を示す図である。
【図7】管理データの一例を示す図である。
【図8】生成された地図情報の一例を示す図である。
【図9】図1に示した閲覧端末の機能的な構成要素を示す図である。
【図10】地図情報生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】閲覧端末の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10…地図情報生成装置、20…閲覧端末、42…メッシュデータ、44…メインレイヤ(第1のレイヤ)、45…サブレイヤ(第2のレイヤ)、50…管理データ、60…地図情報、102…レイヤ生成部、103…座標値調整部、104…スクランブル化部、105…管理データ付与部、106…暗号化部、201…指定情報入力受付部、202…復号化部、204…配列特定部、205…座標値調整部、206…表示制御部、207…表示部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域ごとに区分されたメッシュデータを配列してなる複数層のレイヤを有する地図情報を生成する地図情報生成装置であって、
前記複数層のレイヤを第1のレイヤと第2のレイヤとに区分してそれぞれ生成するレイヤ生成手段と、
前記第2のレイヤのメッシュデータの配列をスクランブル化するスクランブル化手段と、
前記第1のレイヤのメッシュデータに対し、当該メッシュデータに対応する前記第2のレイヤのメッシュデータの配列位置を示す管理データを付与する管理データ付与手段と、
前記第1のレイヤのメッシュデータと前記管理データとを暗号化する暗号化手段とを備えたことを特徴とする地図情報生成装置。
【請求項2】
前記第2のレイヤのメッシュデータに含まれる図形の座標値をオフセットさせる座標値調整手段を更に備え、
前記管理データには、前記第2のレイヤのメッシュデータにおける前記座標値のオフセット量を示す調整値情報が含まれていることを特徴とする請求項1記載の地図情報生成装置。
【請求項3】
表示領域ごとに区分されたメッシュデータを配列してなる複数層のレイヤを有する地図情報を表示させる表示手段を備えた閲覧端末であって、
前記表示領域を指定する指定情報の入力を受け付ける受付手段と、
前記指定情報によって指定された表示領域に対応する第1のレイヤのメッシュデータ、及び当該メッシュデータに付与された管理データを復号化する復号化手段と、
前記管理データに基づいて、前記第1のレイヤのメッシュデータに対応する第2のレイヤのメッシュデータの配列位置を特定する配列特定手段と、
前記復号化手段によって復号化された前記第1のレイヤのメッシュデータを前記表示手段に表示させた後、前記配列特定手段によって特定された前記第2のレイヤのメッシュデータを前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする閲覧端末。
【請求項4】
前記管理データには、前記第2のレイヤのメッシュデータにおける前記座標値のオフセット量を示す調整値情報が含まれており、
前記調整値情報に基づいて、前記第2のレイヤのメッシュデータに含まれる図形の座標値のオフセットを解除する座標値調整解除手段を更に備えたことを特徴とする請求項3記載の閲覧端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−248504(P2007−248504A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67773(P2006−67773)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(591144475)ドコモ・システムズ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】