説明

地熱と地下水熱とを利用した循環型融雪システム

【課題】 融雪用の貯水を地熱と地下水熱とを利用して効率よく昇温する。昇温した貯水で融雪することにより、融雪効果を高める。
【解決手段】
融雪システム1は、貯水槽3と複数の集熱材6,7,8と揚水管9と及び汲み上げポンプ10と散水装置11とを備える。貯水槽3の内部を大容積の内槽4と小容積の外槽5とに仕切り、内槽4と外槽5の一部を連通させて、貯水槽3を内外二槽式とする。集熱材6,7,8の一端側を外槽5に連結し、揚水管9を外槽5内部の貯水に浸漬して配設する。外槽5を熱伝導部材で形成し、外槽5周囲の地熱を吸収できるようにし、集熱材6,7,8を通して伝達される地熱とともに外槽5内部の貯水に伝達する。集熱材6,7,8と外槽5のいずれか一方または双方を地下水脈に浸漬し、外槽5内部の貯水に地下水熱を伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された貯水槽内の貯水を、地上の路面や施設内の敷地,建物等に積もった雪に散水して融かし、さらにこの融雪水を貯水槽に回収する循環型の融雪システムに係り、詳しくは、貯水槽内の貯水を地熱と地下水熱とを利用して昇温することにより、融雪効果をより高めるようにした地熱と地下水熱とを利用した循環型融雪システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冬季に路面や施設内の敷地,駐車場,建物等に降り積もった雪を融かす方法として、複数の側枠を上下多段に積層埋設してなる実質的に密閉断熱構造を有する融雪槽と、該融雪槽内の適所に設置された地下水汲上げポンプと、この地下水汲上げポンプから給水されて前記融雪槽内に投入した雪もしくは雪塊に地下水を散水する散水手段と、前記融雪槽の所定高さ位置で前記雪もしくは雪塊を一旦受け止める雪受け手段と、少なくとも最上段の前記側枠まわりに付設した断熱材とを備えた地下埋設式融雪装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。
また、開口部が地表に臨むように地中に埋設された貯水槽と、地中に埋設され、外気を導入するとともに該導入した外気と地中熱との間で熱交換を行わせることにより外気よりも高温の空気を生成してこれを該貯水槽内に導入する外気導入管と、前記貯水槽の開口部に設けられ、前記外気導入管から導入された高温の空気が前記貯水槽内で加湿されてなる高温多湿の融雪用空気を地表へ排出させる一方、地表からの融雪水の流入を許容する蓋材とを備えた地熱利用融雪システム(例えば、特許文献2参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3096525号公報
【特許文献2】特開2008−101378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の融雪装置は、地下水を汲み上げて地上に降り積もった雪に直接散水するものではなく、地上の雪を地中の融雪槽に投入してその上に地下水を散水して融雪するものである。したがって、除雪車等の搬送手段を利用するにしても、地上に降り積もった雪を融雪槽まで搬送して投入するという労力は避けられない。
また、容積の決められた融雪槽への雪の投入量には限界があり、地下水を用いた融雪槽内での融雪も瞬時に行われるものではないから、その処理能力は決して大きいとは言えない。さらに、融雪に地下水を利用することから、地下水脈のないところや水量が充分でないところでは利用することができない。また、地下水の汲み上げによって地下水脈が枯れたり地盤沈下をおこすことが懸念される。
【0005】
一方、特許文献2の融雪システムは、地熱との熱交換と貯水槽の通過で加湿された高温多湿の空気を、地上に降り積もった雪に吹き付けて融雪するものであり、雪に水を直接吹きかける場合に較べると融雪効果は極めて低い。特に、特許文献2の場合に、高温多湿空気の吹き出し口とその周辺を覆うように積雪がある場合には、時間をかけてこれを融かすことも可能であろうが、吹き出し口から離れた場所を空気で融雪するのは極めて困難であると思われ、さらに風などの煽りを受けた場合に融雪効果は到底期待できない。
【0006】
本発明は、かかる実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、上記した諸問題の解決を図り、加えて融雪に用いる貯水を低ランニングコストで効率よく昇温して融雪効果を高めることのできる地熱と地下水熱とを利用した循環型融雪システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、上部に突出する集水口を地表に臨ませて地中に埋設される貯水槽と、前記貯水槽周囲の地熱を吸収するために、該貯水槽から外側へ突出して地中に埋設される複数の集熱材と、前記地熱によって昇温された前記貯水槽内部の貯水を汲み上げる揚水管及び汲み上げポンプと、該揚水管及び汲み上げポンプによって汲み上げた前記貯水を積雪に散水する散水装置とを備え、前記集熱材より地熱を前記貯水槽内部に取り込んで該貯水槽内部の貯水を昇温せしめ、該昇温した貯水を前記揚水管と汲み上げポンプとにより前記散水装置へ汲み上げ、該散水装置に汲み上げた貯水を積雪に散水し、該散水や融かされた融雪水を前記集水口より前記内槽内部へ回収する循環型融雪システムであって、前記貯水槽の内部を大容積の内槽と小容積の外槽とに仕切り、且つ前記内槽と前記外槽の一部を連通させた内外二槽式に形成し、前記集熱材の一端側を前記外槽に連結するとともに、前記揚水管を前記外槽内部の貯水に浸漬して配設し、前記外槽を、該外槽周囲の地熱を吸収し、且つ前記集熱材を通して伝達される地熱とともに外槽内部の貯水に伝達する熱伝導部材で形成し、該外槽内部の貯水に地下水熱を伝達するために、前記集熱材と前記外槽のいずれか一方または双方を地下水脈に浸漬して配設することを特徴としている。
本発明において、前記集水口の内部に、前記融雪水の落下を受けて回転し、前記汲み上げポンプの動力となる水力発電を行う水車を配設することもできる。
【0008】
本発明の貯水槽は、内槽の周囲を外槽で囲繞した内外二槽式で、大容積の内槽は、集水口を通して流入する融雪水や雨水を貯留し、また小容積の外槽は、融雪用の貯水を地熱と地下水熱とで昇温しながら貯留する。このため、集水口が開口する地表面は集水口に向けて若干の傾斜を設けておくことが好ましい。
熱伝導部材で形成される外槽と、この外槽から突出する複数の集熱材は地中に埋設され、さらに外槽と集熱材のいずれか一方または双方は、地下水脈に浸漬して配設されるため、外槽の熱伝導部材や複数の集熱材によって、地熱と地下水熱とが外槽内部の貯水に取り込まれ、熱交換によって外槽内の貯水が昇温される。
【0009】
外槽を構成する熱伝導部材やこの外槽に付設される集熱材として、耐食処理を施した銅板や鋼板,ステンレス鋼板等の金属板のほか、ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂,アラミド繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂が適当である。そのほか、金属製や合成樹脂製のパイプ材に不凍液や液化ガス,水等の液体を封入して集熱材とすることもできる。例えば、貯水槽側をやや上向きに傾斜させたパイプ材の内部に、沸点が−5度程度のブタンガスを充填して用いることにより、地熱で暖められ気化したブタンガスが外槽側へ移動して外槽内の貯水を暖め、熱交換で冷却されたブタンガスが液化して地中側に戻ってくるという自然な循環作用が期待できる。
外槽から突出する複数の集熱材は、その長さが長いほど熱の吸収が多くなる。このため、集熱材を蛇腹状や屏風畳みに屈曲させることにより、少ない専有面積で吸熱効率が高められる。
【0010】
本発明の循環型融雪システムは、地熱と地下水熱とによって温められた外槽内部の貯水が汲み上げポンプによって散水装置に汲み上げられ、地上の路面や施設内の敷地,駐車場,建物等に降り積もった雪に散水される。これによって融かされた融雪水は、散水や雨水とともに貯水槽上部の集水口より内槽に回収され、融雪用の貯水として循環使用される。
【0011】
また、集水口の内部に水力発電用の水車を配置して、これを融雪水の落下で回転させることにより、水車の発生した電気エネルギーを汲み上げポンプの動力として用いることができる。さらに、この電気エネルギーをバッテリに蓄えておくことにより、停電等の非常時にも融雪システムを作動させることができる。
雨水や融雪水が大量で貯水槽に入りきらない場合には、集水口でオーバフローさせて元通り地表を流すようにしてもよいが、貯水槽の底壁に濾過式の排水口を設け、貯水槽内の貯水の重量に応じて排水口より地中に浸透させるように排出することもできる。
なお、本発明の変形例として、二槽式構造の貯水槽を一槽式に変更する構造が考えられる。しかしこの場合に、貯水槽を熱伝導部材で形成したとしても、貯水槽が大容積だと、大量の貯水を地熱や地下水熱を利用して温めるのに相当な時間がかかるため、融雪効果に期待ができない。また貯水槽が小容積の場合には、少量の貯水を地熱や地下水熱で比較的短時間で温められ、融雪効果を高めるという効果はあるが、少量の貯水量では僅かな融雪しか行えないという問題がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、熱伝導部材で形成した外槽と、この外槽から突出する複数の集熱材が貯水槽周辺の地熱を吸収して外槽内部の貯水を温め、さらに地下水脈に浸漬した外槽と集熱材の一方または双方が地下水熱を吸収して外槽内部の貯水をさらに温める。
しかも、地熱と地下水熱は、貯水槽内のすべての貯水を温めるのではなく、内槽よりも小面積の外槽内部に溜められた融雪に直接用いる小量の貯水のみ温めるので短時間での昇温が可能であり、少量の散水で効率のよい融雪が行える。
さらに、散水温度の上昇によって効果的な融雪を行うも、その熱源は地熱と地下水熱といった自然のエネルギーを利用するので、ランニングコストを低く抑えることができる。
【0013】
また、特許文献1の融雪装置に較べると、積雪地から融雪槽へ搬送するといった労力が不要であり、しかも本発明は、地下水脈の水熱を利用するのみで、特許文献1のように地下水を汲み上げるものではないから、地下水脈を枯らしたり地盤沈下を招くといった虞がない。
さらに、高温多湿空気を用いた特許文献2の融雪システムに較べて、地熱と地下水熱で昇温した貯水を散水する本願発明の方が地上の積雪を効率よく融かすことができる。特に特許文献2では、高温多湿空気の吹き出し口から離れた積雪を融かすのに相当な困難が予想されるが、本願発明は、散水口から離れた積雪にも昇温した水を吹きかけて融雪を確実に行うことができる。
【0014】
また、集水口の内部に水力発電用の水車を配置して、これを融雪水の落下で回転させることにより、水車の発生した電気エネルギーを汲み上げポンプの動力として用いることができ、汲み上げポンプの動力費を節約することができる。さらに、この電気エネルギーをバッテリに蓄えておくことにより、停電等の非常時にも融雪システムを作動させることができる。
さらに本発明の融雪システムは、夏場において貯水を地表に散水することにより、地表面の熱を気化熱として放散する打ち水の効果がある。特に、夏場での外槽の貯水は、地熱と地下水熱によって冷却されているので、打ち水として利用することにより高い冷却効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例を示す地中に埋設した融雪システムの断面正面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す地中に埋設した融雪システムの正面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す地中に埋設した融雪システムの断面平面図である。
【図4】本発明の一実施例を示す貯水槽の分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施例を示す内槽の分解斜視図である。
【図6】本発明の一実施例を応用した例を示す路面地下に埋設した融雪システムの断面側面図である。
【図7】本発明の一実施例を応用した例を示す路面地下に埋設した融雪システムの断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図5に示す融雪システム1は、底部を地下の水脈2に浸漬して地中に埋設される貯水槽3と、該貯水槽3の外槽5から側方及び下方へ突出して地中に埋設される複数の集熱材6,7,8と、貯水槽3内部の貯水Wを汲み上げる揚水管9及び汲み上げポンプ10と、該揚水管9及び汲み上げポンプ10によって汲み上げた貯水Wを地上の積雪に散水する散水装置11とを備えている。
【0017】
図1,図2,図4,図5に示すように、貯水槽3は、内壁となるコンクリート製の内槽4の周囲を外壁となる熱伝導部材製の外槽5で囲繞した内外二槽式となっている。このうち、図4,5に示すように、内槽4は、あらかじめ工場等でコンクリートを材料にプレキャスト成形した3つの矩形枠4aと、同じくコンクリートをプレキャスト成形した平板状の蓋体4bと、現場施工の底壁4cとからなっている。
各矩形枠4aの4つの側面には小径の連通孔20が3つずつ内外に貫通して設けられ、また蓋板4bの一側部寄りに開口21が設けられている。底壁4cは、矩形枠4aと蓋体4bとを地中に設置する際に、その設置場所に基礎コンクリートを現場打ちして形成され、その上面周囲に矩形枠4aと蓋体4bとを配置して、これらをPC鋼棒あるいはボルトとプレート(いずれも図示しない)とを用いて一体に連結し、内槽4を構成する。
【0018】
図4に示すように、前記外槽5は、3層に積まれた内槽4の矩形枠4aよりもやや大きな4枚の板状体5aでなり、これら4枚の板状体5aを3層の矩形枠4aの外側に離間して配置し、その側縁同士を接合するとともに、板状体5aの上縁にやや上向きで内側へ突出する天板を矩形枠4aの最上縁近傍に接合し、さらに板状体5aの下縁から内側へ突出する底板を矩形枠4aの最下縁近傍に接合して外槽5を構成する。
外槽5の板状体には前述のように熱伝導部材が用いられ、この熱伝導部材を通して周囲の土Eの地熱や下部を浸らせた地下水脈2の地下水熱を吸収するもので、具体的には、耐食処理を施した銅板や鋼板,ステンレス鋼板等の金属板のほか、ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂,アラミド繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂板が適当である。
図1,図3に示す通り、このように構成される貯水槽3は、コンクリート製の内槽4内に大きな容積が確保され、また熱伝導部材製の外槽5は、これよりも小容積となっており、内槽4と外槽5内の貯水Wは小径な連通孔20を通して自由に連通できるようにしている。
【0019】
蓋体4bの開口21には、集水口22が上面を地表GLと面一にして接続され、地表GLを流れる融雪水や散水,雨水を散水用の貯水として集水口22より貯水槽3に取り込むようにしている。また、蓋体4bの開口21には水車23が配設され、さらに地表GLに風車24とバッテリ25とが配設されている。水車23と風車24の基部にはそれぞれ発電機が一体に設けられており、水車23が集水口22を流下する融雪水や散水,雨水によって、また風車24が地上の風を受けてそれぞれの発電機で発電し、この発電エネルギーを汲み上げポンプ10の動力源とすべくバッテリ25に充電するようになっている。
【0020】
前記集熱材6,7は、土Eの地熱を外槽5内の貯水Wへ伝達するために、外槽5の外側面から地中または地下水脈2へ向けて水平方向に複数段で交互に突設され、また前記集熱材8は、地下水脈2の地下水熱を内槽4内の貯水Wへ伝達するために、現場打ちの底壁4cから地下水脈2へ向けて鉛直方向に複数突設される。
【0021】
このうち、集熱材6は、一端側を外槽5の内部に突出させて設けられる金属製や合成樹脂製その他の材質で作られた耐水性のパイプ材を、少ない専有面積で必要充分な長さを確保して地熱や地下水熱を吸収するよう、水平方向へ蛇腹状に折曲させるとともに、パイプ材内部に不凍液や液化ガス,水等の液体を封入したものが用いられる。一例として、外槽5側をやや上向きに傾斜させたパイプ材の内部に、沸点が−5度程度のブタンガスを充填して用いることにより、地熱で暖められ気化したブタンガスが外槽5側へ移動して外槽5内の貯水Wを熱交換して暖め、冷却されたブタンガスが液化してパイプ内を地中側に戻ってくるという自然な循環作用が行われる。
【0022】
前記集熱材7には、外槽5の熱伝導部材と同様に、熱伝導性に優れた銅板等の金属板やガラス繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂板が用いられる。また、少ない専有面積で必要充分な長さを確保して地熱を吸収するために、集熱材7を鉛直へ屏風畳みに折り返しながら外槽5から側方の地中または地下水脈2へ水平方向に突出させ、外槽5には、材質が金属板の場合には、その一端を溶接等で直接接合し、また材質が繊維強化樹脂板の場合には、外槽5側に固定した金属製の連結板にその一端をボルト・ナット等で連結する。
前記集熱材8には、外槽5の熱伝導部材と同様に、熱伝導性に優れた銅や鋼等の金属線やガラス繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂線が用いられ、これらをコイル状に懸回することにより、地下水熱を吸収するのに充分な長さを確保できるようにしている。
【0023】
前記揚水管9は、外槽5内の貯水Wに浸漬して配設され、その上部を地表GL付近に設置された汲み上げポンプ10と散水装置11とに連結されている。
このように構成される本実施例の融雪システム1は、土Eと接触する外槽5の上部と複数の集熱材6,7とを通して地熱が集められ、外槽5を通してその内部の貯水Wを熱交換によって昇温する。また、地下水脈2と接触する外槽5の下部と複数の集熱材6,7を通して地下水熱が集められ、外槽5を通してその内部の貯水Wを熱交換によって昇温する。さらに地下水熱は、集熱材8を通しても集められ、内槽4を通してその内部の貯水Wを熱交換によって昇温する。
【0024】
地熱と地下水熱によって昇温された外槽5内の貯水Wは、汲み上げポンプ10によって揚水管9を通して散水装置11へ汲み上げられ、地上の路面や施設内の敷地,建物等に積もった雪に散水してこれを融かす。散水や融かされた融雪水は地表GLを流れて集水口22を流下し、水車23を回転して内槽4に回収される。外槽5の貯水Wが地上へ汲み上げられるのに伴い、内槽4内の貯水Wが連通孔20を通して外槽5へ随時補給されていく。
水車23はその回転により発電機に発電エネルギーを発生させ、汲み上げポンプ10が作動している場合にはこれを動力源として使用し、また汲み上げポンプ10が停止している場合には、これをバッテリ25に蓄積する。
【0025】
地上の積雪に散水される外槽5内の貯水Wは、その温度が高いほど融雪効果も高い。内槽4内の貯水Wは、集熱材8を通して地下水熱が伝達されるが、内槽4は大容積で貯水量も多いため、さほどの温度上昇にはつながらない。これに対して外槽5内の貯水Wは、熱伝導部材を用いた外槽5と多数の集熱材6,7を通して地熱と地下水熱の双方が伝達され、しかも内槽4より小容積で貯水量も少ないため、効率のよい温度上昇が見込まれる。
地中の温度や地下水脈の温度は、地表からの距離が近いほど外気温の影響を受けやすいが、地表からの距離が深いほど外気温に関わりなく安定していることが知られている。例えば、青森の1月の外気温が1.5℃で、図1〜図5に示す貯水槽2の埋設深さを地表から4〜5mとした場合に、地表から4〜5mの地中温度は10〜12℃であり、同じく地表から4〜5mあたりの地下水脈の地下水温度は10〜12℃前後であった。この温度条件と貯水槽2の設計条件をもとに外槽5内の貯水Wの温度上昇を試算すると、およそ3〜4℃上昇できることがわかった。
【0026】
図6及び図7は、図1〜図5に示した融雪システム1を道路の下に埋設して路面の融雪を行うようにした応用例を示している。図6に示すように、道路の長さ方向に対しては複数の貯水槽3が所定の間隔をおいて地中に埋設され、また図7に示すように、側縁へ向けて両勾配がつけられた道路の幅方向に対しては1つの貯水槽3が一側部寄りに変位して地中に埋設される。
【0027】
図6では、複数の貯水槽3が持つ散水装置11を道路の長さ方向に連続させたもので、散水装置11の吹き出し口のピッチが一定に設定されるため、融けきれない雪が道路上にまばらに残ることがない。また、図6に示すように、道路の長手方向に勾配が設定されている場合に、散水装置11をこの勾配と平行に埋設するとともに、道路上の雨水や融雪水の流れと同様に上流側から下流側へ向けて通水するようにしている。
図6に示すように、道路の長手方向に上流側から下流側へ向けて道路上を流れる融雪水や雨水は、その下流に位置する各貯水槽3の集水口22に流れ込んで内槽3に貯留され、また図7に示すように、道路の中央から分岐して側縁へ流れる融雪水や雨水は、一側部寄りに変位して設けた集水口22に流れ込んで内槽3に貯留される。
このように、本発明は融雪システムを一定間隔置きに複数設置することによって、道路や広大な敷地にも広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…融雪システム
2…地下水脈
3…貯水槽
4…内槽
4a…矩形枠
4b…蓋体
4c…底壁
5…外槽
5a…板状体
6,7,8…集熱材
9…揚水管
10…汲み上げポンプ
11…散水装置
20…連通孔
21…開口
22…集水口
23…水車
24…風車
25…バッテリ
E…土
GL…地表
W…貯水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に突出する集水口を地表に臨ませて地中に埋設される貯水槽と、
前記貯水槽周囲の地熱を吸収するために、該貯水槽から外側へ突出して地中に埋設される複数の集熱材と、
前記地熱によって昇温された前記貯水槽内部の貯水を汲み上げる揚水管及び汲み上げポンプと、該揚水管及び汲み上げポンプによって汲み上げた前記貯水を積雪に散水する散水装置とを備え、
前記集熱材より地熱を前記貯水槽内部に取り込んで該貯水槽内部の貯水を昇温せしめ、該昇温した貯水を前記揚水管と汲み上げポンプとにより前記散水装置へ汲み上げ、該散水装置に汲み上げた貯水を積雪に散水し、該散水や融かされた融雪水を前記集水口より前記内槽内部へ回収する循環型融雪システムであって、
前記貯水槽の内部を大容積の内槽と小容積の外槽とに仕切り、且つ前記内槽と前記外槽の一部を連通させた内外二槽式に形成し、
前記集熱材の一端側を前記外槽に連結するとともに、前記揚水管を前記外槽内部の貯水に浸漬して配設し、
前記外槽を、該外槽周囲の地熱を吸収し、且つ前記集熱材を通して伝達される地熱とともに外槽内部の貯水に伝達する熱伝導部材で形成し、
該外槽内部の貯水に地下水熱を伝達するために、前記集熱材と前記外槽のいずれか一方または双方を地下水脈に浸漬して配設する
ことを特徴とする地熱と地下水熱とを利用した循環型融雪システム。
【請求項2】
前記集水口の内部に、前記融雪水の落下を受けて回転し、前記汲み上げポンプの動力となる水力発電を行う水車を配設した
ことを特徴とする請求項1に記載の地熱と地下水熱とを利用した循環型融雪システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−38376(P2011−38376A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189390(P2009−189390)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(592113441)
【Fターム(参考)】