説明

地理情報統合システム

【課題】既設の地理情報システムを改造しないで、ネットワークにより接続された複数の地理情報システムにおいて既に存在しているシステム固有のフォーマットを有する空間データを共有することができるようにする。
【解決手段】複数の地理情報システム1,2がネットワークにより接続されており、地理情報システム2が管理している空間データ21のフォーットを、地理情報システム1が解読することのできるフォーマットに変換するためのフィルタ機能6を地理情報システム1に設け、このフィルタ機能6には、空間データ21を個々のデータに分解するためのデータ分解手段25と、分解されたデータを変換IDに従って変換する変換処理手段26と、変換処理後のデータを紐付け情報に基づいて合成するデータ合成手段27が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の地理情報システムGIS(Geographical Information System)が接続された地理情報統合システムに関するものであり、特に複数の既設の地理情報システムで保有する空間データ(例えば、河川の”ある地点”における流量データ・雨量データなどのように、位置情報と関連付けられた各種業務上の取り扱いデータ・蓄積データ)を、ネットワークを介して取り込み、地図上にこれらのデータを統合的に表示するための地理情報統合システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地理情報提供システムとしては、ネットワーク上に分散している空間データを管理可能なサーバに集中させ、サーバが保持している管理情報を常時最新の状態にするものがあった(特許文献1参照)。
又クライアントサーバシステムを用いて、サーバで共通データを管理することができ、データの一括管理及びデータの共有化を図ることの出来るシステムもあった(特許文献2参照)。
【0003】
地理情報システムにおいては、ネットワークに接続されている複数のシステムに散在している空間データを統合し、更には表示するためには、それら空間データが、統合及び表示する地理情報システムのGISエンジンによって解読できるようなデータフォーマットになっている必要がある。
【0004】
地理情報システムの世界では、昨今、GMLやGXMLのように、空間データの共通フォーマットが確立されており、散在している空間データがそのような共通フォーマットにより取り出せる仕組みとなっていれば問題は生じないが、システム固有のデータフォーマットになっている場合には、統合及び表示する地理情報システムにおけるGISエンジンで解読できるようなデータフォーマットにデータを変換する必要が生じる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−109650号公報
【特許文献2】特開2000−113054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の地理情報システムは以上のように構成されているので、複数の地理情報システムがネットワークを介して接続されている場合、1つのシステムで既に存在しているそのシステム固有のフォーマットを有する空間データを別のシステムにおいても共有しようとすれば、別のシステムにおけるデータフォーマットに対応して空間データを解読する必要があり、あるいは既設の地理情報システムに改造を加えることにより、任意のサーバが共有データベースになるようにして、この共有データベースにおいて、統一されたフォーマットを有する空間データが蓄積されるような装置を準備する必要があった。
【0007】
しかし別のシステムにおいてそのシステム固有のデータフォーマットに対応した解読機能をそれぞれのGISエンジンに作成すると、既設の地理情報システムが多い場合には、生産上非常に非効率的である。即ち全てのフォーマットに対応した解読機能を作成することが必要になってしまう。又共有データベースにおいて空間データを蓄積するために、個々の既設の地理情報システムに改造を加えた場合においても、既設の地理情報システムが多い場合には、生産上非常に非効率的である。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、GISエンジンや既設の地理情報システムを改造することなく、統合及び表示を行う地理情報システムにおいて解読することのできるフォーマットを有する空間データに容易に変換することのできる地理情報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1に係る地理情報統合システムは、複数の地理情報システムがネットワークにより接続されたものであって、1つの地理情報システムにおいて、別の地理情報システムが管理している空間データのフォーマットを定義ファイルを使用して解読可能なフォーマットに変換するためのフィルタ機能を設け、フィルタ機能は空間データを個々のデータに分解するためのデータ分解手段と、分解されたデータを解読可能なデータに変換するための変換処理手段と、変換処理後のデータを合成するためのデータ合成手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の請求項1に係る地理情報統合システムは、複数の地理情報システムがネットワークにより接続されたものであって、1つの地理情報システムにおいて、別の地理情報システムが管理している空間データのフォーマットを定義ファイルを使用して解読可能なフォーマットに変換するためのフィルタ機能を設け、フィルタ機能は空間データを個々のデータに分解するためのデータ分解手段と、分解されたデータを解読可能なデータに変換するための変換処理手段と、変換処理後のデータを合成するためのデータ合成手段とを備えたので、ネットワークにより接続された複数の地理情報システムにおいて既に存在しているシステム固有のフォーマットを有する空間データを共有することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の一実施形態を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の実施の形態1による地理情報統合システムを示すブロック構成図である。図において、地理情報システム1と地理情報システム2A、2Bはネットワークを介して接続されており、地理情報システム1は複数の地理情報システム2A、2Bにおいて管理されている位置情報を有する個別データを統合し、更には表示するものであり、地理情報システム2A、2Bは各システムにおいて管理されているデータの表示のみを行うものである。
【0012】
尚図1においては、地理情報システム2A、2Bの2個を設けた場合について示したが、3個以上の地理情報システム2を設けるようにしてもよい。地理情報システム1はGISサーバ3及びユーザが操作する端末4を備えており、GISサーバ3は空間データベース5、フィルタ機能6及びGISエンジンとして機能する地図表示手段7を備え、更に端末4は地図ウィンドウ8を備えている。
【0013】
空間データベース5はイメージ形式やベクトル形式による地図データを管理するものであり、フィルタ機能6はネットワークにより接続された別の地理情報システム2A、2Bから、各システムにおいて保有されている位置情報を含む個別データを取得し、更には解読することのできるフォーマットに変換するものである。
【0014】
地図表示手段7は必要な地図データを空間データベース5から読み出し、個別データをフィルタ機能6から受け取り、端末4に地図および各種データを表示させるものであり、更に地図ウィンドウ8は地図および各種データを表示するとともに、ユーザによって操作される。
【0015】
地理情報システム2A,2BはGISサーバ9a、9b及び端末10a、10bを備えており、更にGISサーバ9a、9bは空間データベース11a、11b及びGISエンジンとして機能する地図表示手段12a、12bを備えている。空間データベース11a、11bはGISサーバ9a、9bにおいて登録されたベースとなる地図データおよび流量、位置などの個別データを管理するものであり、GISエンジン12a、12bは必要なデータを空間データベース11a、11bから読み出し、端末10a、10bに表示させるものである。端末10a、10bはユーザによって操作される地図ウィンドウ13a、13bを備えており、地図ウィンドウ13a、13bは空間データを表示するものである。
【0016】
図2はフィルタ機能6を示す概略図である。図において、空間データベース11aにおいて管理されているフォーマットを有する空間データ21は、GISエンジン7が解読することのできるフォーマットの空間データ22に定義ファイル23を使って変換され、定義ファイル23は変換する際に必要となる空間データ21のデータ構造情報や空間データ22との紐付け情報、更には変換方式を定めている変換IDを定義している。
【0017】
又フィルタ機能6は空間データ21のフォーマットを空間データ22のフォーマットに変換するための変換機能24を備えており、更に変換機能24はデータ分解手段25、変換処理手段26及びデータ合成手段27を備えている。データ分解手段25は定義ファイル23のデータ構造情報に従って空間データ21から個々のデータに分解するものである。
【0018】
変換処理手段26は定義ファイル23で定義された変換IDに対応して処理するものであり、データ合成手段27は定義ファイル23で定義された紐付け情報に従って、変換処理後のデータを空間データ22のフォーマットに形成するものである。
【0019】
次に動作について説明する。
GISサーバ9a、9bにおいては、各システムの地図表示手段12a、12bが解読することのできるデータフォーマットの空間データが空間データベース11a、11bで管理されており、端末10a、10bにおいてはGISサーバ9a、9b内の空間データのみが地図ウィンドウ13a、13bにおいて表示される。
【0020】
端末10a、10bは、地図ウィンドウ13a、13bで表示するために必要な範囲のデータをGISサーバ9a、9bに対して要求する。GISサーバ9a、9bにおいては、地図表示手段12a、12bが該当する範囲のデータを空間データベース11a、11bから読み取り、端末10a、10bに提供する。データを受け取った端末10a、10bは、地図ウィンドウ13a、13b上にデータを表示させる。
【0021】
地理情報システム1の端末4においては、空間データベース5によって管理されているベースとなる地図データのみならず、他の地理情報システム2A,2Bの空間データベース11a,11bが管理している空間データをも表示するものである。
【0022】
即ち端末4は、地図ウィンドウ8において表示するのに必要な範囲のデータをGISサーバ3に対して要求する。GISサーバ3においては、地図表示手段7が該当する範囲のデータを空間データベース5から読み取り、さらに地図表示手段7はフィルタ機能6に対してデータを送信することを要求する。
【0023】
フィルタ機能6は、データ要求を受けると、定義ファイル23によって定義されたGISサーバ9a、9bのサーバID、IPアドレス、データベース名称及びテーブル名称からなるサーバ情報に従って、ネットワークにより接続されたGISサーバ9a、9bの空間データベース11a、11bにアクセスし、該当するデータを読み取る。データの読み取り手段としては、例えば、ファイル転送のように、GISサーバ9a、9bのソフトウェアを改造する必要がない手段が使用されるものである。
【0024】
データ分解手段25は、読み取られた空間データ21を定義ファイル23に定義されたデータ構造情報から個別データ(シンボルID、経度、緯度、流量、地点名)に分解する。即ちデータ構造情報においては、上記個別データそれぞれのデータ型やデータサイズが規定されている。そして空間データ21は上記シンボルID、経度、緯度、流量、地点名からなる個別データが一列に出力されてくるので、どこまでがそれぞれのデータの範囲であるのか判らない。
【0025】
そこでデータ分解手段25は上記データ構造情報を参照しながらそれぞれの個々のデータの範囲を見極め、それぞれの個別データに分解するのである。
フィルタ機能6は複数の変換処理手段26を有している。データ分解手段25によって個別に分解されたデータは、定義ファイル23に定義された変換IDに従って、対応する変換処理手段26により変換される。
【0026】
即ち空間データ21におけるシンボルIDは、空間データ22における形状コード、色コード、サイズに変換される。ここで形状とは丸、三角等の地図上に表示される形状であり、色は表示物の色、サイズは表示物の大きさを指している。緯度、経度、流量の値に関しては、空間データ21の値がそのまま空間データ22の値となる。
【0027】
空間データ21における地点名の変換処理手段としては、例えば、変換ID=1(パラメータ=”地点”)の処理がAdd(“地点”)という変換処理であった場合、Add(“地点”)では、データの最後に”地点”を付加する処理とする。空間データ21のデータ項目「地点名」に対する変換IDが1であるとすると、地点名(AA,XX,GG)の文字列の後ろに“地点”を付加する処理を実行することになる。
【0028】
データ合成手段27は、上記のように変換された個々のデータを集め、地図表示手段7で解読することのできるフォーマットを有する空間データ22を、定義ファイル23で定義された紐付け情報に基づいて合成し、地図表示手段7に渡す。
【0029】
即ち図2に示した例で説明すると、シンボルIDから変換された形状コード、色コード、サイズは空間データ22においては1番目、2番目、3番目に配列されるという紐付け情報に基づいて、それぞれ1番目、2番目、3番目に配列されるのである。その他の情報もそれぞれの紐付け情報に基づいて、所定位置に配列される。尚空間データ22における単位情報に関しては、空間データ22独自の情報であるので、付け加えるだけの作業となる。
【0030】
端末4における地図ウィンドウ8に表示されるデータが増えるような場合、即ち新たにネットワークが繋がったGISサーバ9に読み取りにいく空間データが発生したような場合には、定義ファイル23に新たな情報を追加するとともに、必要に応じて変換処理手段26の数を増やすようにすればよい。
【0031】
以上のように構成することにより、定義ファイル23を編集するだけで地理情報システム2A、2Bで管理されている空間データを地理情報システム1において表示することができるようになる。そしてGISエンジンに個々のデータフォーマットに対応したデータ解読機能を追加するためにGISエンジンを改造する必要がなく、また既設の地理情報システムを改造する必要もない。更にネットワークにより接続された複数の地理情報システムにおいて既に存在しているシステム固有のフォーマットを有する空間データを共有することができるようになる。
【0032】
図3は別の形態による地理情報統合システムを示すブロック構成図である。図1の構成では、ベースとなる地図データはGISサーバ3の空間データベース5によって管理されるようにしたが、図3に示すように、地図データ自身も他のGISサーバ9bから取得するようにしてもよい。
【0033】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2によるフィルタ機能6を示す概略図である。
図において、空間データベース11aにおいて管理されているフォーマットの空間データ31は、GISエンジン7が解読することのできるフォーマットの空間データ32に定義ファイル33を使って変換され、定義ファイル33は変換する際に必要となる空間データ31のデータ構造情報や空間データ32との紐付け情報、及び変換方式を定めている変換IDの情報を定義している。
【0034】
又フィルタ機能6は空間データ31のフォーマットを空間データ32のフォーマットに変換するための変換機能34を備えており、データ分解手段35は定義ファイル33のデータ構造情報に従って空間データ31から個々のデータに分解するものである。
【0035】
変換処理手段36は定義ファイル33で定義された変換IDに対応して処理するものであり、データ合成手段37は定義ファイル33で定義された紐付け情報に従って、変換処理後のデータを空間データ32のフォーマットに形成するものである。位置情報変換手段38は、X座標、Y座標からなる地理情報システム2における固有のレイアウト情報を緯度、経度からなる全ての地理情報システムにおける共通の位置情報に変換するものである。尚位置情報変換手段38の動作以外は実施の形態1で示した動作と同様である。
【0036】
図4に示すように、空間データ31の位置情報がシステム固有のレイアウト情報(X座標、Y座標)であった場合には、データ合成手段37によって形成されたデータの位置情報を、位置情報変換手段38が地理情報システムにおける共通の位置情報(緯度・経度)に変換し、当該情報を地図表示手段7に渡すものである。
【0037】
上記のように構成することにより、空間データの位置情報がシステム固有のレイアウト情報により管理されている場合においても、GISエンジンに新たにデータ解読機能を追加する必要がなく、また既設の地理情報システムを改造しないで、データを共有することができるようになる。
【0038】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3によるフィルタ機能6を示す概略図である。
図において、空間データ41は空間データベース11aにおいて管理されているフォーマットを有している。空間データ42は、GISエンジン7によって解読され得るフォーマットを有しており、端末4の地図ウィンドウ8において表示するのに必要な範囲のみのデータを有している。
【0039】
定義ファイル43は変換する際に必要となる空間データ41のデータ構造情報や空間データ42との紐付け情報、変換方式を定めている変換IDの情報を定義している。又フィルタ機能6は空間データ41のフォーマットを空間データ42のフォーマットに変換するための変換機能44を備えており、データ分解手段45は定義ファイル43のデータ構造情報に従って空間データ41から個々のデータに分解するものである。
【0040】
変換処理手段46は定義ファイル43で定義された変換IDに対応して処理するものであり、データ合成手段47は定義ファイル43で定義された紐付け情報に従って変換処理後のデータを空間データ42のフォーマットに形成するものである。
位置範囲抽出手段48は端末4の地図ウィンドウ8において表示するのに必要な範囲のデータのみを抽出するものである。
【0041】
端末4が地図ウィンドウ8において表示される個別データの位置範囲を指定する場合には、位置範囲抽出手段48がデータ合成手段47によって形成された空間データ49の位置情報(緯度・経度)を調査し、端末4によって指定された範囲のデータかどうかを判断し、指定された範囲内のデータのみを抽出して、当該データを地図表示手段7に送る。
【0042】
端末4は必要な範囲の空間データのみを受け取るため、端末4における処理負担を軽減することができる。また、GISサーバ3と端末4の間のネットワークにかかる負担も必要最小限にすることができる。
【0043】
以上のように構成することにより、端末4が空間データの位置範囲を指定したときにおいても、GISエンジンに新たにデータ解読機能を追加する必要がなく、また既設の地理情報システムを改造しないで、データを共有することができるようになる。
【0044】
実施の形態4.
図6はこの発明の実施の形態4によるフィルタ機能6を示す概略図である。
図において、空間データ51は空間データ11aにおいて管理されているフォーマットを有している。空間データ52はGISエンジン7によって解読され得るフォーマットを有しており、端末4の地図ウィンドウ8において表示するのに必要な空間データである。
【0045】
定義ファイル53は変換する際に必要となる空間データ51のデータ構造情報や空間データ52との紐付け情報、変換方式を定めている変換IDの情報を定義している。フィルタ機能6は空間データ51のフォーマットを空間データ52のフォーマットに変換するための変換機能54を備えており、データ分解手段55は定義ファイル53のデータ構造情報に従って空間データ51から個々のデータに分解するものである。
【0046】
変換処理手段56は定義ファイル53で定義された変換IDに対応して処理するものであり、データ合成手段57は定義ファイル53で定義された紐付け情報に従って変換処理後のデータを空間データ52のフォーマットに形成するものである。差分抽出手段58は端末4における地図ウィンドウ8で表示するのに必要なデータを抽出するものである。
【0047】
空間データ59はデータ合成手段57により直接に形成されたものであり、空間データ60は前回の処理段階において、データ合成手段57によって形成され、端末4に受け渡されていた空間データである。
【0048】
GISサーバ3はデータ合成手段57によって形成された空間データを数回分保持する。前回の空間データと比較して、変更された空間データのみが端末4の地図ウィンドウ8において表示されるようにするものであり、GISサーバ3に対して変更のあったデータのみを端末4が要求する場合には、差分抽出手段58はデータ合成手段57によってその時点で形成された空間データ59と前回形成された空間データ60との比較を行い、一定以上の差が認められた空間データ及び新規に増えた空間データなど差が認められた空間データのみを抽出し、地図表示手段7に渡す。
【0049】
図6においては、空間データ59と空間データ60を比較すると、XX地点におけるデータが変更されており、更にHH地点のデータが新たに加えられているので、空間データ52として、XX地点とHH地点のデータが抽出されることとなる。
【0050】
端末4は、必要な空間データのみを受け取るため、端末4における処理負担を軽減することができる。また、GISサーバ3と端末4の間のネットワークにかかる負担も必要最小限にすることができる。
【0051】
以上のように構成することにより、端末4が前回の空間データと比較して変更のあった空間データのみを指定し、要求した場合においても、GISエンジンに新たにデータ解読機能を追加する必要がなく、また既設の地理情報システムを改造しないで、データを共有することができるようになる。
【0052】
実施の形態5.
上記実施の形態1〜4においては、地理情報システム1とネットワークによって繋がった別の地理情報システム2で管理されている空間データを端末4において閲覧することを目的としていたが、本実施形態においては、閲覧するのみでなくデータを更新することができるようにするものである。
【0053】
図7はこの発明の実施の形態5による地理情報統合システムを示すブロック図である。
図において、ユーザが操作する端末61には、空間データの各種項目を更新し、あるいは変更するためのデータ更新ウィンドウ62が設けられている。GISサーバ63は端末61から更新情報を受け取るとともに、ネットワークにより接続された別のGISシステム2の空間データ11のフォーマットに変換する機能を有する。
【0054】
フィルタ機能64は端末61からの更新情報に基づき空間データを更新し、別のGISシステム2が管理している空間データ11のフォーマットに変換して、渡すものである。空間データベース65はイメージ形式やベクトル形式による地図データを管理するものである。
【0055】
GISサーバ9a、9bは空間データを管理するとともに、地図の表示機能を有するものである。空間データベース11a、11bはGISサーバ9a、9bにおいて登録されたベースとなる地図データ、および流量、位置等の個別データを管理するものであり、GISエンジン12a、12bは必要なデータを空間データベース11a、11bから読み出し、端末10a、10bに表示させるものである。端末10a、10bはユーザによって操作される地図ウィンドウ13a、13bを備えており、地図ウィンドウ13a、13bは、空間データを表示するものである。
【0056】
図8はフィルタ機能64を示す概略図である。
図において、空間データの更新情報71は端末61から取得されるものである。空間データ72は実施の形態1〜4におけるデータ合成手段27,37,47,57によって形成され、端末61に渡されていたものである。そしてデータ更新手段73は更新情報71に従って、空間データ72を更新するものである。
【0057】
データ更新手段73が更新処理することにより空間データ74が得られる。空間データ75は別の地理情報システム2のフォーマットに対応したものである。定義ファイル76は更新対象データを管理しているGISサーバ9のサーバ情報、空間データ74を空間データ75に変換する際に必要となる空間データ75のデータ構造情報、空間データ75と空間データ74との紐付け情報及び変換方式を定めるための変換IDの情報を定義している。
【0058】
又フィルタ機能64は空間データ74のフォーマットを空間データ75のフォーマットに変換するための変換機能77を備えており、データ分解手段78は空間データ74を個々のデータに分解するものである。変換処理手段79は定義ファイル76で定義された変換IDに対応して処理するものである。データ合成手段80は定義ファイル76で定義された空間データ75のデータ構造情報や紐付け情報に従って変換処理後のデータを空間データ75のフォーマットに形成するものである。
【0059】
次に動作について説明する。
端末61において表示するための空間データは、上記実施の形態1〜4において示されたデータ合成手段17,37,47,57によって形成されており、GISサーバ63は直前に形成し、端末61に渡した空間データ72を保持している。
【0060】
データ更新ウィンドウ62においてユーザにより更新された情報は、対象データを識別するためのID、更新項目及び更新内容を伴ってGISサーバ63に通知される。
GISサーバ63が更新情報71を取得すると、フィルタ機能64は、更新されたデータを元来管理しているGISサーバ9に対応したフォーマットの空間データに合成して、該当するGISサーバ9にネットワークを通じて当該空間データを渡す。
【0061】
フィルタ機能64は、データを更新するためのデータ更新手段73と変換機能77を有している。データ更新手段73は、GISサーバ63により保持されていた空間データ72に対し、端末61から送信された更新情報71のIDと更新項目をキーとして、該当する空間データを書き換え、空間データ74を作成する。
【0062】
図8の例では、ID=2及び更新項目が地点名称であることをキーにして、XX地点をZZ地点に更新するものである。変換機能77においては、まずデータ分解手段78が更新後の空間データ74を各項目別に分解する。
【0063】
そして定義ファイル76に記載されたサーバ情報から、更新情報71のデータIDをキーにして、更新後の空間データ75を元々管理しているGISサーバ9と、そのGISサーバ9における空間データのデータ構造情報を特定する。
そして以下に示すように、実施の形態1で示した変換とは逆の変換作業を行うことにより、空間データ75を作成する。
【0064】
即ち変換処理手段79は、定義ファイル76に定義された空間データ75と空間データ74とのデータ紐付け情報と変換IDをもとに、変換作業を実施する。
例えば、紐付け情報として、空間データ75のシンボルIDはデータ74の色コードと紐付いているという情報があったとする。この場合、空間データ74における色コード欄の「1,3,1」というデータは、変換ID=10を持つ変換処理により、空間データ75におけるシンボルIDの欄の「3,5,3」というデータに変換される。
【0065】
このようにして空間データ74の形状コード、色コード、サイズは空間データ75のシンボルIDに変換される。緯度、経度、データに関しては、数値がそのまま変換されないことは実施の形態1の場合と同様である。又地点名称に関しては、実施の形態1の場合とは逆に、「地点」なる文字が削除されることとなる。
【0066】
データ合成手段80は、変換処理手段79によって変換されたデータを合成するものである。即ち定義ファイル76に定義されたデータ型やバイト数等からなるデータ構造情報、及び紐付け情報を基に、元々管理しているGISサーバ9に対応したフォーマットを有する空間データ75を合成する。
【0067】
そして更新された空間データ75は元来管理しているGISサーバ9にネットワークを介して送信され、空間データベース11の内容が更新される。尚図8の説明においては、更新されないID=1,3のデータも空間データ75として合成される場合について説明したが、更新されるID=2のデータのみを空間データとして合成し、元来管理しているGISサーバ9に送信するようにしてもよい。
【0068】
以上の処理により、別の地理情報システムで管理する空間データを閲覧するだけではなく、更新することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明の実施の形態1による地理情報統合システムを示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるフィルタ機能を示す概略図である。
【図3】この発明の実施の形態1の別の地理情報統合システムを示すブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるフィルタ機能を示す概略図である。
【図5】この発明の実施の形態3によるフィルタ機能を示す概略図である。
【図6】この発明の実施の形態4によるフィルタ機能を示す概略図である。
【図7】この発明の実施の形態5による地理情報統合システムを示すブロック構成図である。
【図8】この発明の実施の形態5によるフィルタ機能を示す概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1,2 地理情報システム、6 フィルタ機能、21 空間データ、
25 データ分解手段、26 変換処理手段、27 データ合成手段、
38 位置情報変換手段、48 位置範囲抽出手段、58 差分抽出手段、
73 データ更新手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地理情報システムがネットワークにより接続された地理情報統合システムであって、1つの地理情報システムにおいて、別の地理情報システムが管理している空間データのフォーマットを定義ファイルを使用して解読可能なフォーマットに変換するためのフィルタ機能を設け、上記フィルタ機能は上記空間データを個々のデータに分解するためのデータ分解手段と、分解されたデータを解読可能なデータに変換するための変換処理手段と、変換処理後のデータを合成するためのデータ合成手段とを備えたことを特徴とする地理情報統合システム。
【請求項2】
特定の地理情報システムにおいて固有の位置情報を、全ての地理情報システムにおいて共通の位置情報に変換するための位置情報変換手段を上記フィルタ機能に設けたことを特徴とする請求項1記載の地理情報統合システム。
【請求項3】
上記データ合成手段が合成した空間データのうち、特定の位置範囲の空間データのみを抽出するための位置範囲抽出手段を上記フィルタ機能に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の地理情報統合システム。
【請求項4】
上記データ合成手段によって形成された空間データと、上記データ合成手段によって前回形成された空間データとを比較し、差が認められた空間データのみを抽出するための差分抽出手段を上記フィルタ機能に設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の地理情報統合システム。
【請求項5】
更新情報に基づき空間データを更新する更新手段と、上記別の地理情報システムが管理している空間データのフォーマットに上記更新された空間データを変換するための手段と、上記変換された空間データを上記別の地理情報システムに送信する手段とを上記フィルタ機能に設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の地理情報統合システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−193066(P2007−193066A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10653(P2006−10653)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】