説明

地盤分割改良方法

【課題】未改良地盤を包合した分割地盤改良方法を提供する。
【解決手段】ロッド先端部の周面に、周方向の所定角度に硬化剤液を高圧で噴射するように、ロッド軸方向地上手元側に第一ノズル2が下向きに、ロッド軸方向地下先端側に第二ノズル3が上向きに、かつ第一ノズル2と第二ノズル3から噴射される硬化材液が同時間に同地点で相互に接触しない距離を保って配置され、ロッド1を所定深度で一方の周方向に所定角度軸回転させながら第一ノズル2と第二ノズル3より硬化材液を地盤に高圧で混入させることにより、それぞれ所定角度傾斜した皿状の第一ノズル板状改良体51と第二ノズル板状改良体52を同時造成すると共に、第一ノズル板状改良体51と第二ノズル板状改良体52がロッド1を中心とした周方向の所定半径円周上で短時間差をもって相互に交叉連結して、未改良地盤71を内部包合したそろばん玉状改良域61を形成することで所定域の地盤を分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドを地中に挿入して、ロッドに設けられた噴射ノズルから硬化材液を噴射して板状改良体を造成することで未改良地盤を包合し、所定地盤を分割改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤の安定、地山支保、トンネル支保工、構築物の基礎、構築物の基礎補強、液状化防止、遮水用地中壁、地下水湧水防止などを目的とした地盤改良工法は従来より知られている。この地盤改良工法には、ロッドを地中に挿入して、ロッドに設けられた噴射ノズルから硬化材液を噴射して改良体を造成する改良体造成方法があり、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示される改良体の造成方法は、注入管(ロッド)の下端に噴射管を揺動自在に接続し、噴射管先端に噴射ノズルを設け、注入管を地盤に挿入し、噴射ノズルが噴射管と注入管の接続箇所より下方に位置する噴射管が下向き状態で噴射管を左右に揺動させて、噴射ノズル位置を移動または停止させながら硬化材を噴射ノズルから高圧で噴射させ、硬化材を地盤に混入させて、注入管を引抜きおよび/または回転を行い、壁状部と壁状部と直交する板状部を有する壁状改良体を造成している。また、この壁状改良体を複数連結造成することにより、平面方向、垂直方向ともに格子状とし、壁状改良体で囲む非硬化部分の地下水、砂などの流動性を遮断もしくは阻害する。
【0004】
つまり、注入管が移動する挿入または引き抜き方向に造成される壁状改良体と、噴射ノズルが噴射する左右方向に造成される壁状改良体とにより、格子状または多角形の筒状体群に改良体が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3219372号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の改良体の造成方法においては、数本から十数本の改良体を隣接または連結配置することで四角状や格子状の改良域を形成することはできたが、注入管の引き抜き方向に向かってロッド周面の地盤を所定の大きさで細分化させることは出来ず、地盤改良工法による改良体によって、細かく所定地盤を分割改良することは困難であった。
【0007】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであって、板状改良体を造成することで未改良地盤を包合し、地盤を細かく分割改良できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地盤分割改良方法は、上記目的を達成するために、ロッド先端部の周面に、周方向の所定角度に硬化剤液を高圧で噴射するように個別に設定された複数の噴射ノズルを有し、かつ複数の噴射ノズルは、ロッド軸方向地上手元側に第一ノズルが下向きに、ロッド軸方向地下先端側に第二ノズルが上向きに、当該第一ノズルと第二ノズルから噴射される硬化材液が同時間に同地点で相互に接触しない距離を保って配置されており、ロッドを地中に挿入し、所定深度で前記ロッドを一方の周方向に所定角度軸回転させながら第一ノズルと第二ノズルより硬化材液を地盤に高圧で混入させることにより、それぞれ所定角度傾斜した皿状の第一ノズル板状改良体と第二ノズル板状改良体を同時造成する造成工程1を有し、造成工程1において、第一ノズル板状改良体と第二ノズル板状改良体が前記ロッドを中心とした周方向の所定半径円周上の連結箇所で短時間差をもって相互に交叉連結して、未改良地盤を内部包合したそろばん玉状改良域を形成することで所定域の地盤を分割することを特徴とする。
【0009】
これによれば、従来では一つの工程で同時に造成することができなかった、板状改良体でそろばん玉状に未改良地盤を内部包合したそろばん玉状改良域を一つの工程で造成できるため、短時間に所定地盤を分割改良することが容易となる。
【0010】
また、造成工程1でそろばん玉状改良域を形成したあと、ロッドを別深度まで軸方向に所定距離引抜いて前記造成工程1と同様の造成工程2を実施することで、前記造成工程1で先に形成されたそろばん玉状改良域に内部包合された未改良地盤を、造成工程2で造成される第二ノズル板状改良体によって再分割することができる。これによれば、そろばん玉状改良域に内部包合された未改良地盤を細かく分割することができるので、地盤の分割間隔が細かくなることにより、止水性の向上やそろばん玉状改良域の強度が向上する。
【0011】
前記造成工程1でそろばん玉状改良域を形成したあと、ロッドを別深度まで軸方向に所定距離引抜いて前記造成工程1と同様の造成工程2を実施することで、前記造成工程1と造成工程2で造成される2つのそろばん玉状改良域の双方に隣接する未改良未包合地盤を、前記第一ノズル板状改良体と第二ノズル板状改良体によって所定形状に包合して分割することができる。これによれば、そろばん玉状改良域に隣接する地盤も包合することができるので、分割の効率がいいだけでなく、そろばん玉状改良域を中心とする改良体全体の止水性と強度が向上する。
【0012】
また本発明によれば、従来では一つの工程で同時に造成することができなかった、そろばん玉状に未改良地盤を包合したそろばん玉状改良域を一つの工程で造成できるため、そろばん玉状改良域をロッド引抜き方向に所定間隔で連続造成することで、ロッドを中心とした円柱域地盤を細かく分割することで、必要とされる設計強度への細かい対応や単位当たりの改良体積の細かい設定が可能となる。
【0013】
また、改良体同士を水平位置において所定方向に接合して造成することで全土量を改良することなく、上下左右方向の止水効果を得ることも容易である。
【0014】
また、未改良地盤を皿状の板状改良体で分割することは、対象地盤への負荷を減らすだけでなく使用材料と排泥量を減量するため環境にもやさしく、材料の減少や施工コスト低減や工期短縮という効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】地盤分割改良方法を実行する装置の概略構成図である。
【図2】実施例1のロッドの概略斜視図である。
【図3】実施例1のロッドの概略断面図である。
【図4】地盤分割改良方法を実行するロッドの概略断面図である。
【図5】地盤分割改良方法を実行するロッドの概略断面図である。
【図6】実施例1のロッドの概略側面図である。
【図7】実施例1において造成される改良体を示す図である。
【図8】実施例1において造成される改良体を示す図である。
【図9】実施例2において造成される改良体を示す図である。
【図10】実施例2において造成される改良体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る改良体造成方法の第1の実施例について説明する。本考案による地盤分割改良方法は、図1に示すように、ロッド1の周面に硬化材液を噴射する第一ノズル2と第二ノズル3が設けられており、地中の所定深度に挿入したロッド1をノズル2施工マシン21により該ロッド1を周方向に軸回転する第一ノズル2と第二ノズル3から硬化材液を高圧で噴射させてそろばん玉形状の改良体を造成する造成工程と、施工マシン21により該ロッド1を軸方向に所定距離引抜く引抜工程を交互に行いながら、所定形状に地盤を分割する改良体を造成する。以下においては、その具体的な内容について説明する。
【0017】
前記ロッド1は、地上側端部にスイベルを備えており、地上のプラントから専用のホースによって送られてくる硬化材液が該スイベルを介してロッド1に供給される。従って、ロッド1は供給された硬化材液などを第一ノズル2と第二ノズル3から噴射させることにより、ロッド1の周囲の地盤に硬化材液を混入させて所定角度を有する皿状の板状改良を造成する。
【0018】
なお、本実施形態のロッド1は、断面形状が円形であるが、特にこれに限られるものではない。また、ロッド1内部においては、硬化材液、圧縮空気および水が供給される通路をそれぞれ必要数備えられており、二重管、三重管または四重管などあるいは多孔管の構造であってもよく、さらにロッド1内部にはその他に排泥用通路や通信用通路を適宜設けられてもよい。
【0019】
図2に、ロッド1の先端部における複数の噴射ノズルの配置の一例を示した。軸方向地上手元側に第一ノズル2がロッド周方向に対して下向き15度で、ロッド軸方向地下先端側に第二ノズル3がロッド周方向に対して上向き15度で配置されている。また図2では第一ノズル2と第二ノズル3の間隔は60cmとしているが、それぞれのノズルの角度を含めて間隔や配置は分割したい地盤の範囲や分割間隔、区分数などに応じて適宜変更できる。
【0020】
図2のロッド1先端部の第一ノズル2と第二ノズル3から硬化材液を噴射している状態を上部から見た様子を図3に示した。これら第一ノズル2と第二ノズル3は、図2で示した通りロッド1の周方向に沿って別の高さであって、ここではさらに各々からロッド1の中心を結んでなされる挟角が30°となるように互いに配置され、同時に硬化材液を噴射するようになっている。このとき、第一ノズル2、第二ノズル3は、広角(30°)配置であるため、各々から噴射される第一ノズルの硬化材液ジェット11と第二ノズルの硬化材液ジェット12は同時に噴射されても衝突することも、相互の飛距離を阻害しあうこともない。よって、図2と図3では、第一ノズル2と第二ノズル3のロッド周面軸方向での配置をずらしているが、同軸方向上に配置することもできる。また、広角配置の角度も第一ノズルの硬化材液ジェット11と第二ノズルの硬化材液ジェット12が同時間に同地点で相互に接触しない範囲において自在に設定できる。
【0021】
図3では第一ノズル2と第二ノズル3が、ロッド1の中心を結んでなされる挟角が30°となるように互いに配置された例を示したが、図4のように一定距離を離した平行に配置されることも可能であるし、図5のように背面に配置されることも可能である。図4および図5でも、第一ノズルの硬化材液ジェット11と第二ノズルの硬化材液ジェット12は同時に噴射されても衝突することも、相互の飛距離を阻害しあうこともない。尚、図1と図2と図3において、第一ノズル2と第二ノズル3はそれぞれ一個のノズル孔により表現したが、飛距離を伸ばすためや硬化材料の配合のために、複数個のノズル群により第一ノズル2および第二ノズル3をそれぞれ構成することもある。また、第三ノズルや第四ノズルを設けてもよいし、ノズルの径は大きければ大きいほど噴射する硬化材液の飛距離を大きくすることができるため、各ノズルの径を必要に応じて適宜変更するようにしてもよい。
【0022】
図6に、図2と図3に示したロッド1先端部の第一ノズル2と第二ノズル3から硬化材液を噴射している状態を側面から見た様子を示した。第一ノズル2、第二ノズル3は、広角(30°)配置であるため、各々から噴射される第一ノズルの硬化材液ジェット11と第二ノズルの硬化材液ジェット12は同時に噴射されても衝突することも、相互の飛距離を阻害しあうこともない。
【0023】
図7に、図6のロッド1を360°回転させた際に、第一ノズル2によって造成される第一ノズル板状改良体51と第二ノズル3によって造成される第二ノズル板状改良体52を示した。15度下向きの皿状形状をした第一ノズル板状改良体51と、15度上向きの皿状形状をした第二ノズル板状改良体52は、ロッド1を中心とした周方向の所定半径円周上の連結箇所53で短時間差をもって相互に交叉連結されており、そろばん玉状改良域61を形成している。そろばん玉状改良域61は未改良包合地盤(分割包合された地盤)71を内部包合している。
【0024】
なお、ここにおける第一ノズル板状改良体51と第二ノズル板状改良体52および以下で説明する改良体などは、一般的に所定の時間が経過することにより硬化して剛性の改良体となるが、説明の便宜上、硬化材液が地盤に混入された直後の硬化前の状態のものも改良体として説明する。
【0025】
図8に、図7で形成されたそろばん玉状改良域61の平面図を示した。ロッド1を中心に第一ノズル板状改良体51と第二ノズル板状改良体52が造成されて、連結箇所53で交叉連結されている。
【0026】
次に、本地盤分割改良方法によって改良体を造成する第2の実施例について、図9を参照しつつ説明する。本実施例では、実施例1で説明したそろばん玉状改良域61の造成を利用して、そろばん玉状改良域61が内部包合した未改良包合地盤(分割包合された地盤)71を再分割する方法と、複数のそろばん玉状改良域61に隣接する未改良未包合地盤を、前記第一ノズル板状改良体51と第二ノズル板状改良体52によって所定形状に包合して分割する場合について説明する。なお、上述において説明した内容については適宜省略して説明する。
【0027】
図7のそろばん玉改良域61を造成した後、図9のようにロッド1を30cm地上方向に引き抜いた後、当該位置で同様に2つ目のそろばん玉改良域61を造成すると、図10のようなそろばん玉状改良域61が2つ複合した改良域が形成される。このとき、1つ目のそろばん玉状改良域に内部包合された未改良包合地盤(分割包合された地盤)71を、2つ目のそろばん玉状改良域61を形成する第二ノズル板状改良体によって再分割し、未改良包合地盤(分割包合された地盤)71内部に再分割された未改良包合地盤(分割包合された地盤)72を形成する。また、1つ目のそろばん玉状改良域61と2つ目のそろばん玉状改良域61の双方に隣接する未改良未包合未分割地盤を、1つ目のそろばん玉状改良域61と2つ目のそろばん玉状改良域61を構成する第一ノズル板状改良体51と第二ノズル板状改良体52によって断面ひし形のドーナツ状に包合して、隣接する未改良包合地盤(分割包合された地盤)73を形成する。
【0028】
実施例2においては、2つのそろばん玉状改良域61を30cmのロッド引抜距離をもって形成したが、同様に数個もしくは数十個のそろばん玉状改良域61を形成してもよく、また、そのロッド引抜距離も30cmに限らず自由に設定できる。
【0029】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…ロッド
2…第一ノズル
3…第二ノズル
11…第一ノズルの硬化材液ジェット
12…第二ノズルの硬化材液ジェット
21…施工マシン
51…第一ノズル板状改良体
52…第二ノズル板状改良体
53…連結箇所
61…そろばん玉状改良域
71…未改良包合地盤(分割包合された地盤)
72…再分割された未改良包合地盤(分割包合された地盤)
73…隣接する未改良包合地盤(分割包合された地盤)


































【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド先端部の周面に、周方向の所定角度に硬化剤液を高圧で噴射するように個別に設定された複数の噴射ノズルを有し、
かつ前記複数の噴射ノズルは、ロッド軸方向地上手元側に第一ノズルが下向きに、ロッド軸方向地下先端側に第二ノズルが上向きに、当該第一ノズルと第二ノズルから噴射される硬化材液が同時間に同地点で相互に接触しない距離を保って配置されており、
ロッドを地中に挿入し、所定深度で前記ロッドを一方の周方向に所定角度軸回転させながら第一ノズルと第二ノズルより硬化材液を地盤に高圧で混入させることにより、それぞれ所定角度傾斜した皿状の第一ノズル板状改良体と第二ノズル板状改良体を同時造成する造成工程1を有し、
前記造成工程1において、第一ノズル板状改良体と第二ノズル板状改良体が前記ロッドを中心とした周方向の所定半径円周上の連結箇所で短時間差をもって相互に交叉連結して、未改良地盤を内部包合したそろばん玉状改良域を形成することで所定域の地盤を分割することを特徴とする地盤分割改良方法。
【請求項2】
前記造成工程1でそろばん玉状改良域を形成したあと、ロッドを別深度まで軸方向に所定距離引抜いて前記造成工程1と同様の造成工程2を実施することで、前記造成工程1で先に形成されたそろばん玉状改良域に内部包合された未改良地盤を、造成工程2で造成される第二ノズル板状改良体によって再分割することを特徴とする請求項1記載の地盤分割改良方法。
【請求項3】
前記造成工程1でそろばん玉状改良域を形成したあと、ロッドを別深度まで軸方向に所定距離引抜いて前記造成工程1と同様の造成工程2を実施することで、前記造成工程1と造成工程2で造成される2つのそろばん玉状改良域の双方に隣接する未改良未包合地盤を、前記第一ノズル板状改良体と第二ノズル板状改良体によって所定形状に包合して分割することを特徴とする請求項1または請求項2記載の地盤分割改良方法。















【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36213(P2013−36213A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172466(P2011−172466)
【出願日】平成23年8月7日(2011.8.7)
【出願人】(594051161)
【出願人】(502275001)
【Fターム(参考)】