説明

地盤改良工法における排泥リサイクルシステムおよびその装置

【課題】 高圧の切削水等を利用して形成される切削空間を固練りの固化材で置き換える地盤改良工法において、固化材成分の排泥への混入を最小限に抑え、資源の有効利用、産業廃棄物の削減、工費および処理費の大幅削減を図る。
【解決手段】 削孔1に注入ロッド11を挿入し、先端部側方のノズル12から切削水13としてのエアーを伴った超高圧の交差ジェット水等を噴射して所定径の切削部2を形成する。切削部2に下方からソイルモルタル等の固練りの固化材15を充填し、地上のピット3に排出されてくる排泥4をリサイクル処理する。固化材15には、あらかじめ流動性および不分離性を保持するための添加剤を混合しておく。注入ロッド11の先端部に装着される先端ピース14に、側面に開口する固化材吐出口17および逆止弁と遮蔽壁を兼ねた遮断プレート18を設け、固化材15の充填方向を制御し、排泥に固化材成分が混入するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差する高圧切削水等により大口径の掘削を行い、切削空間を固化材に置き換える地盤改良工法において、発生する排泥を効率良く処理するとともに、その再利用を図り、硬化材の無駄を最小限に抑え、産業廃棄物を大幅に低減し、環境負荷をなくし、経済性を高めることができる排泥リサイクルシステムおよびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良のための固結体の造成方法として、例えば特許文献1には、エアーを伴った超高圧の交差ジェット水、または水の代わりに泥水、地山安定液等の高圧噴射切削により一定の造成径を切削し、排泥として地上に排出し、それによって生じた限定された空間に、固練り状の再生固化材を、その空間に見合う量充填し、ジェットにより切削されたスライムとの置換により、一定品質の固結体を造成することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、ジェットグラウトの余剰スライムの処理方法として、余剰スライムとして排出されてくる排泥をスラリー分とスラッジ分に一次分離し、スラリー分について凝集剤を添加してスラッジ分と水分に二次分離し、水分は削孔水、切削水、配合水として再利用し、スラッジ分はジェットグラウト骨材として再利用するか廃棄処理するなどして、排泥の有効再利用を図ったものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−115441号公報
【特許文献2】特許第3540838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切削空間をソイルモルタル等の固化材で置き換えて行く地盤改良工法において、エアーを伴った超高圧水等による地山の掘削工程による撹乱、およびエアーリフトによる固化材の地上への排出、キャビテーション現象による混合等に対しても、固化材がその品質を維持したまま切削空間に完全に置き換わることが理想である。
【0006】
また、これらの影響により固化材成分が排泥に混入すると、固化材の品質が損なわれるだけでなく、セメント等が混入した排泥が産業廃棄物となりその処理に多大な費用が必要となる。
【0007】
従来から排泥の処理については種々の発明がなされているが、固化材の混入が最小限に抑えられれば、少ない量の固化材により品質の優れた改良体の造成が可能であり、排泥の処理や再利用も簡単な設備で行うことができ、資源の有効利用、産業廃棄物の削減、工費および処理費の大幅削減等、その経済効果は大きく、環境負荷を大幅に削減できる。
【0008】
本発明は、上述のような背景のもとに発明され、高圧の切削水等を利用して形成される切削空間を固化材で置き換えて行く地盤改良工法において、固化材成分の排泥への混入を最小限に抑え、資源の有効利用、産業廃棄物の削減、工費および処理費の大幅削減を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る排泥リサイクルシステムは、地盤中の削孔に挿入した注入ロッドの先端部側方のノズルから高圧の切削水を噴射させて地盤を所定の造成径で切削し、前記ロッドのさらに先端側に位置する固化材吐出口より切削部に固化材を充填する固化材充填工法で排出される排泥を再利用する排泥リサイクルシステムであって、前記固化材に流動性および不分離性を保持するための添加剤を混合することで固化材の排泥への混入を抑え、削孔から排出されてくる前記排泥について脱水処理を含む再利用のための処理を行なうことを特徴とするものである。
【0010】
ここでいう切削水は、従来から知られているジェットグラウト工法等における超高圧の交差ジェット水(通常、エアーを伴った形で噴射される)、あるいは泥水、地山安定液等の高圧噴射等を広く含む意味での切削水であり、注入ロッドを回転させながら地盤を所定径で切削する。
【0011】
このノズルよりさらに先端側に所定間隔おいた固化材吐出口から、例えば前述した特許文献1記載の発明のように比較的低スランプの固練りの固化材を充填し、切削空間をこの固練りの固化材で置き換えて行けば、排出される排泥への固化材成分の混入をある程度低減することができるが、本発明では高圧で噴射される切削水やエアーの影響に対し、さらに固化材に流動性および不分離性を保持するための添加剤を混合することにより、固化材の排泥への混入を抑えることができる。
【0012】
本発明における固化材の流動性に関しては、種々の条件により異なるが、鉛直施工の場合で大まかにはテーブルフロー試験によるフロー値(15回突き)で、120mm〜240mm、好ましくは150mm〜210mmである。240mm以下というのは、比較的固練りの固化材であり、それ以上の流動性のある範囲では、十分な不分離性の確保が難しい。また、テーブルフロー試験によるフロー値が120mmより小さくなると流動性が小さ過ぎ、現場での充填性、作業性が悪くなる恐れがある。好ましい範囲とした150mm〜210mmでは作業性の面で支障がなく、かつ良好な固結体が得られ、固化材成分の排泥への混入も最小限に抑えることができる。
【0013】
なお、水平施工の場合、鉛直施工に比べると、よりフロー値の小さい固練りの範囲で考えることできる。
【0014】
このような構成からなる本発明によれば、セメント等の硬化材の無駄が減り、排泥の再利用のための処理も容易となる。なお、この類の不分離剤等の添加剤は、従来、水中コンクリートの施工において、セメント成分が水中に分散され、コンクリートの品質が低下するのを防止するために配合することが知られているが、本発明はそのような添加剤を切削水等の高圧噴射を利用した地盤改良に適用するものである。
【0015】
請求項2は、請求項1に係る排泥リサイクルシステムにおいて、前記添加剤が、架橋吸着の凝集性と粘性を兼ね備えた1種または2種以上の水溶性高分子物質からなる粉状または液状の添加剤であることを特徴とするものである。
【0016】
上述のように超高圧水等による地山の掘削工程による撹乱および、エアーリフトによる固化材の地上への排出、キャビテーション現象による混合等に対し、固化剤が切削空間に完全に置き換わるためには、固化材の機能として切削水と混合しても固化剤成分が分離しないような不分離性を備え、さらに充填に関し流動性を備えていなければならない。
【0017】
また、ポンプ圧送時の配管内での詰まり防止に関しては、粘性も必要要素となる。従来の増粘性不分離剤に粘性土が混入すると効果は激減し、吸水等により流動性が低下し、固化材としてそのまま利用することができないという問題がある。
【0018】
これに対し、添加剤として、従来から不分離剤等として用いられている天然水溶性高分子物質、半合成水溶性高分子物質、合成水溶性高分子物質等の架橋吸着の凝集性と粘性を兼ね備えた水溶性高分子物質から選ばれた1種または2種以上の水溶性高分子物質を粉状または液体として、ソイルモルタル等の固化材に添加混合することによって、充填時における流動性および不分離性を保持させることができる。
【0019】
天然水溶性高分子物質としては、キサンタンガム、ゼラチン、ザンサンガム、ウェランガム、アラビヤガム、ビーガム、デンプン、グアガム、ローカストビーンガム等がある。
【0020】
半合成水溶性高分子物質としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース、微小繊維状セルロース等がある。
【0021】
合成水溶性高分子物質としては、ポリビニアルコール、カルボキシビニールポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアシド、ポリビニルピロリドン等がある。
【0022】
また、このような水溶性高分子物質に、金属または塩基性基と置換し得る水素原子を有する化合物である塩を添加混合することで、水溶性高分子物質の連鎖を切断せしめて低分子化するか、または低分子の添加剤を使用することで架橋吸着の凝集性で不分離性を確保した上で、粘性だけを低減し流動性を保持させることも可能である。さらに、流動性を保持する添加剤として、気泡または分散剤等を使用することもできる。
【0023】
このような添加剤を使用して、ソイルモルタル等の固化材をポンプで高圧圧送する際、不分離性と流動性を備えることで、材料分離による配管の閉塞が防止でき、均質な固化剤の圧送が可能となる。
【0024】
なお、固化材として、セメント量の増量により、高強度の固結体(σ28=10N/mm2以上)の造成も可能である。さらに、補強用繊維を配合することにより、引っ張り強度を高めることも可能である。
【0025】
請求項3は、請求項1または2に係る排泥リサイクルシステムにおいて、前記切削水のノズル位置と前記固化材吐出口の間隔を所定の間隔に設定するとともに、固化材の充填方向を制御することを特徴とするものである。
【0026】
請求項3に係る発明は、高圧で噴出される切削水やエアーの影響を直接的に遮断する手段として切削水のノズル位置と固化材吐出口の間隔を十分離すような所定の間隔に設定するとともに、造成径(通常、φ1.0〜3.0m程度)に応じて固化材の充填方向を制御することで同時に固化材の充填方向を排泥への影響を抑える所定の範囲に制御でき、固化材の排泥への混入を最小限に抑えようとするものである。
【0027】
切削水のノズル位置と固化材吐出口の間隔を設定する手段としては、注入ロッドの先端部に取り付けるための長さあるいは固化材吐出口の位置を変えた複数の先端ピースを用意しておくことで、施工条件等に応じてそれらを選択的に使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
また、固化材の充填方向を設定する手段としては、固化材吐出口角度を変えた複数の先端ピースを用意しておくことで可能となる。
【0029】
請求項4は、請求項1、2または3に係る排泥リサイクルシステムにおいて、前記注入ロッドは、ロッド内に少なくとも切削水用の配管と固化材用の配管を備え、ロッド先端部には固化材用の配管と切削水用の配管およびノズルを備えたピースが接続され、前記ピースには前記固化材用の配管に連続し側面に開口する固化材吐出口を備えた先端ピースが接続され、前記先端ピースの固化材吐出口には、逆止弁の機能を兼ねた、切削水と固化材の混合を防止する開閉可能な遮断プレートが設けられており、長さまたは固化材吐出口位置の異なる先端ピースの選択により切削水のノズル位置と固化材吐出口の間隔を所定の間隔に設定し、または造成径(通常、φ1.0〜3.0m程度)に応じて固化材吐出口角度の異なる先端ピースの選択により固化材の充填方向を制御することを特徴とするである。
【0030】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明に対し、より具体的な態様を限定したものであり、固化材吐出口において逆止弁の機能を兼ねた遮断プレートが高圧の切削水や泥水等の影響に対する遮蔽壁の機能を有するため、固化材が乱されることなく排泥への混入を最小限に抑えることができる。
【0031】
この遮断プレートの角度は、固化材の充填方向に応じて決めることができ、また開閉はエアシリンダーまたは油圧シリンダーにより、あるいはメカニカルな機構により行なうことができる。
【0032】
また、先端ピースの選択により、地山の性状等に応じて切削水のノズル位置あるいは交差噴流の場合の交点位置と固化材吐出口の間隔を設定することで、地山の崩落を防止し、また固化材による置換をスムーズに行なうことができるが、これらの間隔の調整によっても切削水等の影響を最小限に抑えることができる。
【0033】
本願の請求項5に係る固化材充填工法用注入ロッドは、上記請求項1〜4に係る排泥リサイクルシステムでの使用に適した装置として、ロッド内に少なくとも切削水用の配管と固化材用の配管を備え、ロッド先端部には固化材用の配管と切削水用の配管およびノズルを備えたピースが接続され、前記ピースには前記固化材用の配管に連続し側面に開口する固化材吐出口を備えた先端ピースが接続され、前記先端ピースの固化材吐出口には、逆止弁の機能を兼ねた、切削水と固化材の混合を防止する開閉可能な遮断プレートが設けられており、長さまたは固化材吐出口位置の異なる先端ピースの選択により切削水のノズル位置と固化材吐出口の間隔を所定の間隔に設定し、または造成径(通常、φ1.0〜3.0m程度)に応じて固化材吐出口角度の異なる先端ピースの選択により固化材の充填方向を制御することを特徴とするである。
【0034】
基本な考え方は、請求項4について説明した通りである。
【0035】
請求項6は、請求項5に係る固化材充填工法用注入ロッドにおいて、大容量、高圧力の固練りの固化材を圧送しやすく、また閉塞しないように、スィーベル等から固化材吐出口までの圧送ラインを、大口径のまま急曲部を持たない構造としたことを特徴とするものである。
【0036】
なお、請求項1〜6に係る発明において、注入ロッドが地盤中に挿入される方向は鉛直方向が一般的であるが、これに限定されるものではなく、水平方向や斜め方向の施工にも適用可能である。
【発明の効果】
【0037】
切削空間を固化材で置き換えて行く地盤改良工法において、本発明によれば高圧で噴射される切削水やエアーの影響に対し、固化材に流動性および不分離性を保持するための添加剤を混合することにより固化材の排泥への混入が抑制され、改良固結体の均一な品質を維持しそれによりセメント等の固化剤の無駄が減り、排泥の再利用のための処理も容易となる。
【0038】
また、請求項2に係る発明では、添加剤として、天然水溶性高分子物質、半合成水溶性高分子物質、合成水溶性高分子物質等の架橋吸着の凝集性と粘性を兼ね備えた水溶性高分子物質から選ばれた1種または2種以上の水溶性高分子物質を粉状または液体として、ソイルモルタル等の固化材に添加混合することによって、充填時における流動性および不分離性を保持させることができ、また流動性を保持する添加剤等の使用により、固練りの固化材の高圧圧送の際の材料分離による配管の閉塞が防止でき、均質な固化剤の圧送が可能となる。
【0039】
さらに、請求項3〜6に係る発明では、高圧で噴出される切削水やエアーの影響を直接的に遮断する手段として切削水のノズル位置と固化材吐出口の間隔を十分離すような所定の間隔に設定するとともに、固化材の充填方向を排泥への影響を抑える所定の範囲に制御し、さらに固化材吐出口に遮断プレートを設置することで、固化材の排泥への混入をより確実に防止し、最小限に抑えることができる。
【0040】
その結果、産業廃棄物を大幅に減量もしくはなくし、環境負荷を少なくすることができる。さらに、従来のセメントの混入したスライムを排泥として廃棄していたセメントのロスを、切削泥土と充填された固化材の完全置換等によりなくすことができ、同じ品質維持のためのセメント等の硬化材の使用量が大幅に低減でき、資源の有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1は、本発明の排泥リサイクルシステムにおける地盤改良から排泥が地上へ排出される過程を概略的に示したもので、図2は造成ツールとしての注入ロッドの先端ピース部分の具体例を示したものである。
【0042】
本実施形態において、所定径の削孔1に注入ロッド11を挿入し、先端部側方の2箇所のノズル12から切削水13としてのエアーを伴った超高圧の交差ジェット水等を噴射して所定径の切削部2を形成し、この切削部2に下方からソイルモルタル等の固練りの固化材15を充填し、固化材15で切削部2の切削スライムを置き換え、地上のピット3に排出されてくる排泥4(スライム)を処理するという考え方は、背景技術の項で述べた特許文献1記載の発明の場合と同様である。
【0043】
本発明では、切削部2に充填される固化材15にあらかじめ流動性および不分離性を保持するための添加剤を混合しておくことで、固化材15が切削スライムに溶解しないようにする。
【0044】
また、注入ロッド11の先端部に、固化材15と切削スライムとの混合や高圧の切削水13の悪影響を受けないように工夫した先端ピース14を取り付け、結果として排泥4にセメント等の固化材成分ができるだけ含まれない状態でリサイクルできるようにしている。
【0045】
先端ピース14を図2で説明すると、先端ピース14には注入ロッド11内に切削水用の配管とともに配設されている固化材用の配管16に連続し側面に開口する固化材吐出口17が設けられている。
【0046】
この固化材吐出口17には、逆止弁を兼ねた遮断プレート18が設けられており、固化材吐出口17を閉塞する位置と固化材15の充填方向の角度との間で開閉可能となっている。図の例ではエアシリンダー19の制御により開閉する構造としているが、これに限定されるものではなく、油圧シリンダーやメカニカルな機構によるものでも良い。
【0047】
また、この先端ピース14は長さあるいは固化材吐出口17の位置の異なる複数のピースを用意しておくことで、施工条件に応じて選択することができる。
【0048】
この長さ、位置、すなわち切削水13の噴出方向、位置と固化材15の吐出位置、吐出方向等を設定あるいは制御することで固結材15が切削水13の影響を受けたり、切削スライムに固化材成分が混入するのを防止することができる。また、その際、遮断プレート18が遮蔽壁としても機能する。
【0049】
なお、固練りの固化材の分離や閉塞を防止するため、固化材用の配管16については図2に示すように大径のまま急曲部を持たない構造とすることが望ましい。
【0050】
流動性および不分離性を保持するための添加剤については、課題を解決するための手段の項で説明した不分離剤としての各種水溶性高分子物質に、必要に応じ流動性を与えるための添加剤等を添加したものが用いられる。
【0051】
下の表1は不分離剤について行った室内配合試験の試験結果の例を示したものである。
【0052】
【表1】

【0053】
この配合試験は、骨材に細粒分(粒径75μm以下)を12〜64%含む土にセメントおよび水を加えて混合したソイルモルタルについてテーブルフロー値の測定、水中に沈めた時の目視による水中分離性の観察、硬化後の一軸圧縮強度の測定等を行ったもののうち、代表的な例をまとめたものである。
【0054】
不分離剤の欄のGはD−ガラクトースとD−マンノースを主体とした天然水溶性高分子物質、Cはカルボキシメチルセルロースを主体とした半合成水溶性高分子物質を示しており、添加量は配合水に対する重量%である。
【0055】
表1の配合例No.1は、不分離剤を混合しなかった場合であり、テーブルフロー値が測定不能というのは、流動性が高すぎて試料が散逸してしまったことを意味する。十分な水中不分離性を有していないため、一軸圧縮強度試験は行わなかった。
【0056】
配合例No.2、No.3、No.4はD−ガラクトースとD−マンノースを主体とした天然水溶性高分子物質を配合水に対し、それぞれ1.0、0.75、0.50重量%混合したものであり、水中での分離がほとんどなく、一軸圧縮強度試験に関しても良好な結果が得られた。
【0057】
配合例No.4の28日強度は9.1N/mm2と高く、セメント量の増量により、高強度の固結体(σ28=10N/mm2以上)の造成が可能であることが判る。
【0058】
No.2の一軸圧縮強度試験の28日強度は測定しなかった。
【0059】
配合例No.5は、特殊な骨材を使用し、セメントに対する骨材としての砂分が少なく、配合水量を調整したものについて、不分離剤としてカルボキシメチルセルロースを主体とした半合成水溶性高分子物質を添加した場合である。強度面で必ずしも十分ではないが、不分離剤の効果があらわれている。
【0060】
次に、ピットに排出されてくる排泥の処理について、ここでは再生固化材造成リサイクルシステムとして改良品質とリサイクル率の要求性能に応じ、高品質、高リサイクル率を目標としたケースAと、材料を置換から半置換とし、中リサイクル率とすることによりプラントを小型化したケースBの2つのケースを説明する。
【0061】
〔ケースA〕
ケースAでは、排泥を完全脱水し、骨材として一定割合で土粒子(礫、砂、シルト、粘土)を配合し、一定の含水率、比重を維持して改良体の強度を一定に保つようにする。一次処理として篩機、二次処理としてフィルタープレス等を用いる。
【0062】
図3は、このケースAの方式を実施する場合のリサイクル固化材の製造フローの一例を示したものである。
【0063】
〔ケースB〕
上述したケースAの方式は、地盤に左右されずに均一で高品質な改良と高い排泥リサイクル率を可能にするが、プラント設備が極めて大規模であることから、その適用は制限される。
【0064】
そこで、ケースBでは、改良品質とリサイクル率の要求性能に応じて、排出された排泥土を強制的に加圧脱水処理し、一定の含水率状態に調整し、攪拌ミキサー等により、セメントおよび水、添加材を添加攪拌してそのまま再生固化材として使用する。
【0065】
図4は、このケースBの方式を実施する場合のリサイクル固化材の製造フローの一例を示したものである。
【0066】
図に示すように、施工によって発生する排泥(スライム)に凝集剤を添加して、加圧脱水装置に投入し、強制的に加圧脱水処理し、一定の含水率状態に調整し、得られた処理土を攪拌ミキサー等に供給し、セメント、水及び添加材を添加攪拌してそのまま再生固化材として使用することができる。処理水も削孔、造成に再使用することができる。
【0067】
表2に、加圧脱水装置により排泥脱水した試験結果の一例を示す。加圧脱水の程度を変えることで、材料の品質グレードを変えることができる。つまり、より加圧脱水処理を行うことで、材料は半置換材料から完全置換材料への使用が可能となる。
【0068】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の排泥リサイクルシステムにおける地盤改良から排泥の地上への排出過程の概要を説明するための鉛直断面図である。
【図2】本発明における注入ロッドの先端ピース部分の具体例を示したもので、(a)は鉛直断面図、(b)はそのA−A断面図、(c) はB−B断面図である。
【図3】本発明が適用される再生固化材造成リサイクルシステムとして、高品質、高リサイクル率を目標としたケースAにおけるリサイクル固化材の製造の一例を示すフロー図である。
【図4】本発明が適用される再生固化材造成リサイクルシステムとして、材料を置換から半置換とし、中リサイクル率とすることによりプラントを小型化したケースBにおけるリサイクル固化材の製造の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0070】
1…削孔、2…切削部、3…ピット、4…排泥、11…注入ロッド、12…ノズル、13…切削水、14…先端ピース、15…固化材、16…固化材用配管、17…固化材吐出口、18…遮断プレート、19…エアシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の削孔に挿入した注入ロッドの先端部側方のノズルから高圧の切削水を噴射させて地盤を所定の造成径で切削し、前記ロッドのさらに先端側に位置する固化材吐出口より切削部に固化材を充填する固化材充填工法で排出される排泥を再利用する排泥リサイクルシステムであって、前記固化材に流動性および不分離性を保持するための添加剤を混合することで固化材の排泥への混入を抑え、削孔から排出されてくる前記排泥について脱水処理を含む再利用のための処理を行なうことを特徴とする排泥リサイクルシステム。
【請求項2】
前記添加剤が、架橋吸着の凝集性と粘性を兼ね備えた1種または2種以上の水溶性高分子物質からなる粉状または液状の添加剤であることを特徴とする請求項1記載の排泥リサイクルシステム。
【請求項3】
前記切削水用のノズル位置と前記固化材吐出口の間隔を所定の間隔に設定するとともに、固化材の充填方向を制御することを特徴とする請求項1または2記載の排泥リサイクルシステム。
【請求項4】
前記注入ロッドは、ロッド内に少なくとも切削水用の配管と固化材用の配管を備え、ロッド先端部には固化材用の配管と切削水用の配管およびノズルを備えたピースが接続され、前記ピースには前記固化材用の配管に連続し側面に開口する固化材吐出口を備えた先端ピースが接続され、前記先端ピースの固化材吐出口には、逆止弁の機能を兼ねた、切削水と固化材の混合を防止する開閉可能な遮断プレートが設けられており、長さまたは固化材吐出口位置の異なる先端ピースの選択により切削水のノズル位置と固化材吐出口の間隔を所定の間隔に設定し、または、造成径に応じて固化材吐出口角度の異なる先端ピースの選択により固化材の充填方向を制御すること特徴とする請求項1、2または3記載の排泥リサイクルシステム。
【請求項5】
ロッド内に少なくとも切削水用の配管と固化材用の配管を備え、ロッド先端部には固化材用の配管と切削水用の配管およびノズルを備えたピースが接続され、前記ピースには前記固化材用の配管に連続し側面に開口する固化材吐出口を備えた先端ピースが接続され、前記先端ピースの固化材吐出口には、逆止弁の機能を兼ねた、切削水と固化材の混合を防止する開閉可能な遮断プレートが設けられていることを特徴とする固化材充填工法用注入ロッド。
【請求項6】
大容量、高圧力の固練りの固化材を圧送しやすく、また閉塞しないように、スィーベル等から固化材吐出口までの圧送ラインを、大口径のまま急曲部を持たない構造としたことを特徴とする請求項5記載の固化材充填工法用注入ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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