説明

地盤改良工法

【課題】施工された領域において必要な有効厚さを確保しつつ、施工コストを低減することが出来る地盤改良工法の提供。
【解決手段】施工領域が大きいタイプの施工を行う工程(領域A)と、施工領域が小さいタイプの施工を行う工程(領域ΔA)とを含み、施工領域が小さいタイプの施工を行う工程(領域ΔA)は有効厚さを増加する位置に施工されることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、撹拌工法や液状化防止工法、その他の地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば「機械撹拌」、「噴射撹拌」、「機械撹拌と噴射撹拌との組み合わせ」等の各種撹拌工法は公知である。例示したこれ等の撹拌工法は、撹拌される領域の面積、すなわち施工面積が比較的大きい。
図2において、施工面積が大きいタイプの施工された領域A、Aがオーバーラップした状態が示されている。そして、施工面積が大きいタイプの施工領域A、A間のピッチが符号Pで示されている。
【0003】
図2で示す様に、施工面積が大きいタイプの施工を行う場合には、オーバーラップ部分Bの矢印U方向の長さ(=t)が、施工領域A、Aにおける有効厚さとなる。
ここで、ピッチPを長くすれば、施工本数を減少することが出来るので、施工コストは減少するが、図2におけるオーバーラップ部分Bの矢印U方向の長さ(=t)、すなわち有効厚さが不充分となる可能性がある。
【0004】
有効厚さを確保するために、ピッチPを短くして、有効厚さ、すなわちオーバーラップ部分Bの矢印U方向の長さ(=t)を長くすることが行われる。
しかし、ピッチPが短くなると、その分だけ(施工面積が大きいタイプの)施工本数を増加しなければならなくなり、施工コストが増大してしまう。
それに加えて、オーバーラップ部分Bは同一箇所を2回にわたって固化材を噴射することになるので、無駄な施工が生じてしまう。オーバーラップ部Bの面積が増加することは、その分だけ無駄な施工が増加し、施工コストが増加してしまうことを意味する。
【0005】
ここで、施工領域が小さいタイプの施工を用いることも考えられる。
しかし、施工面積が小さいタイプの施工は、固化材使用量は少ないものの、施工面積当りの施工コストが高い傾向がある。
従って、施工面積が小さいタイプの施工を数多く行うと、撹拌工法を施工した現場全体のコストが増大してしまう。
【0006】
その他の従来技術としては、地盤を掘削しながら粘土鉱物やその懸濁液を吐出し、地盤中の土砂と混合撹拌する技術が存在する(特許文献1)。
しかし、係る技術はセメント系固化材を使用せずに、地盤と同程度の強度を有する地中構造体を造成することを目的としており、上述した様な問題を解消できるものではない。
【特許文献1】特開2005−16295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、施工された領域において必要な有効厚さを確保しつつ、施工コストを低減することが出来る地盤改良工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の地盤改良工法は、施工領域が大きいタイプの施工を行う工程(領域A)と、施工領域が小さいタイプの施工を行う工程(領域ΔA)とを含み、施工領域が小さいタイプの施工を行う工程(領域ΔA)は有効厚さを増加する位置に施工されることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
本明細書において、「施工面積が大きいタイプの施工」なる文言は、機械式撹拌工法や機械噴射式撹拌工法の様に、施工面積が大きな場合に好適な地盤改良工法(例えば撹拌工法)の施工を意味している。
また、「施工面積が小さいタイプの施工」なる文言は、施工面積が小さい場合においても好適に実施することが出来る地盤改良工法(例えば撹拌工法)の施工を意味している。
さらに、「地盤改良工法」は、例えば、撹拌工法や、液状化防止方法等も含んでいる。
【0010】
本発明において、施工領域が大きいタイプの施工を行う領域(A)の間隔(ピッチP)を決定する工程(S2〜S8)を含み、該間隔を決定する工程(S2〜S8)では、施工領域が小さいタイプの施工と組み合わせた場合における有効厚さ(tx)が適正であるか否かを判定する工程(S3、S4)と、施工領域が小さいタイプの施工と組み合わせた場合のコストと施工領域が大きいタイプの施工のみを行う場合のコストとを比較する工程(S7、S8)、とを有しているのが好ましい(請求項2:図5、図6)。
【0011】
ここで、「施工領域が小さいタイプの施工と組み合わせた場合における有効厚さ(tx)が適正であるか否かを判定する工程(S3、S4)」においては、施工領域が小さいタイプの施工と組み合わせた場合における有効厚さ(tx)を(シミュレーションにより)求める工程(ステップS3)と、(シミュレーションにより)求められた有効厚さ(tx)と設計有効厚さ(tc)とを比較する工程(S4)と、求められた有効厚さ(tx)と設計有効厚さ(tc)とが等しいとは言えない程度に異なっている場合(S4がNOの場合)に施工領域が大きいタイプの施工を行う領域(A)の間隔(ピッチP)を変更する工程(S6)とを有しているのが好ましい。
【0012】
ここで、「求められた有効厚さ(tx)と設計有効厚さ(tc)とが等しいとは言えない程度に異なっている場合」という文言は、「求められた有効厚さ(tx)が設計有効厚さ(tc)未満である場合」と、「求められた有効厚さ(tx)が設計有効厚さ(tc)よりも所定値を越えて大きい場合」との双方を包含する。そして「所定値」は、施工現場における各種条件、その他により、ケース・バイ・ケースで決定される数値である。
【0013】
或いは本発明において、施工領域が大きいタイプの施工(領域A)と施工領域が小さいタイプの施工(領域ΔA)との組合せを求める工程(S21)と、当該組合せの中から設計有効厚さ(tc)を確保することが出来る組合せを選択する工程(S23)と、設計有効厚さ(tc)を確保することが出来る組合せの中でコストが安い組合せを選択する工程(S24)、とを有しているのが好ましい(請求項3:図7、図8)。
【発明の効果】
【0014】
上述する構成を具備する本発明によれば、施工領域が小さいタイプの施工(領域ΔA)は、有効厚さを増加する位置、例えば、施工領域が大きいタイプの施工を行った領域(A、A)がオーバーラップしている領域(B)の近傍、に施工されるので(請求項1)、施工箇所における有効厚さを増加することが出来る。
その結果、施工領域が大きいタイプの施工を行った領域(A、A)の間隔(ピッチP)を減少させること無く、設計有効厚さ(tc)を確保することが出来る。
そして、施工領域が大きいタイプの施工を行った領域(A、A)の間隔(ピッチP)を減少させる必要が無いので、施工コストの高騰を防止することが出来る。
【0015】
本発明において、設計有効厚さ(tc)を確保することが出来るか否かを判定し(S4)、且つ、施工領域が大きいタイプの施工のみを行う場合のコストと比較(S7、S8)すれば(請求項2)、必要な有効厚さ(設計有効厚さtc)を確保しつつ、従来における工法(施工領域が大きいタイプの施工のみを行う工法)よりもコストを低減させることが出来る。
【0016】
或いは、本発明において、施工領域が大きいタイプの施工(領域A)と施工領域が小さいタイプの施工(領域ΔA)との組合せの中から、設計有効厚さ(tc)を確保する組合せを選択し(S23)、且つ、その中でコストが安い組合せを選択(S24)すれば(請求項3)、必要な有効厚さ(設計有効厚さtc)を確保しつつ、地盤改良工法の施工コストを低く抑えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。添付図面において、同様な部材については、同様な符号を付して説明している。
最初に、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1、図2は、第1実施形態の原理を概説している。より詳細には、図1は第1実施形態を施工した状態を模式的に示しており、図2は施工面積が大きいタイプの施工のみを実行した状態を模式的に示している。
【0018】
図1において、施工領域が大きいタイプの施工を行った領域A、Aが、オーバーラップしている領域Bの近傍に、施工領域が小さいタイプの施工を行っている。図1において、施工領域が小さいタイプの施工を行った領域が、符号ΔA、ΔAで示されている。
ここで、実際の施工においては、施工面積が大きいタイプの施工(領域A、A)を行った後に、または、施工面積が大きいタイプの施工(領域A、A)と同時に、施工面積が小さいタイプの施工(領域ΔA、ΔA)を行っている。
【0019】
図1と図2とを比較すれば明らかな様に、施工領域が大きいタイプの施工のみを行った場合(図2)の有効厚さt(オーバーラップしている領域Bの矢印U方向の長さ)が、施工面積が小さいタイプの施工(領域ΔA、ΔA)を行った結果、図1で示す様に、「t=t+2Δt」まで増加している。勿論、図1で示す有効厚さの方が、図2における有効厚さよりも大きい。
【0020】
有効厚さ或いは有効断面がどの程度増加するのかについて、構造体の強度を論ずる場合のパラメータとして断面係数Zを用いて、図1及び図2を参照しつつ説明する。
図2で示す施工面積が大きいタイプの施工のみ行う場合の単位長さ当りの断面係数Zは、
=t/6
なる式で示される。
【0021】
図1の場合、断面係数Zは、次式で示される。
=t/6
=(t+2Δt)/6
=(t+4tΔt+4Δt)/6
ここで、双方の断面係数Z、Zを比較すると、
/Z=(t+4tΔt+4Δt)/t
=1+(4Δt/t)(t+Δt)
すなわち、図1の場合は、図2の場合に比較して、(4Δt/t)(t+Δt)だけ断面係数が増加する。
【0022】
図1において、有効厚さtは、施工面積が小さいタイプの施工を行った領域ΔA、ΔAにより、オーバーラップ部分Bの長さtよりも長くなる。
換言すれば、施工面積が小さいタイプの施工は、オーバーラップ部分Bの長さを長くする様に、施工されるのである。
【0023】
ここで、施工面積が小さいタイプの施工は、図1の符号ΔAで示すような形状となる施工に限定されるものではない。
例えば、施工面積が小さいタイプの施工を、図9の符合ΔA1で示す様に半円形状となる様に施工することが可能である。図9では明示されていないが、領域ΔA1の形状は、扇形であっても良い。
或いは、施工面積が小さいタイプの施工を、図10の符号ΔA2で示す様に、施工領域が大きいタイプの施工を行った領域A、Aの輪郭(外周縁部)と、領域A、Aの共通接線ct1、ct2で囲まれた形状に施工することも可能である。
図9、図10におけるその他の構成については、図1で示すのと同様である。
【0024】
図3、図4は、第1実施形態の施工を模式的に示している。
図3は、施工面積が大きいタイプの施工のみを実行した例を示している。そして、図4は、図3で示す施工現場に対して、第1実施形態を適用し、施工面積が小さいタイプの施工を行った状態を示している。
【0025】
図3において、施工面積が大きいタイプの施工のみを実行した例では、有効厚さは、ハッチングを付した領域の厚さ寸法t1、t2、t3で示されている。
施工面積が大きいタイプの施工(領域A)を行った後に、施工面積が小さいタイプの施工(領域ΔA)を行った状態を示す図4においては、その有効厚さは、ハッチングを付した領域の厚さ寸法t1a、t2a、t3aで示される。
図3、図4を比較すれば明らかにように、第1実施形態を実施した場合における有効厚さ寸法t1a、t2a、t3a(図4参照)は、施工面積が大きいタイプの施工のみを行った場合の有効厚さ寸法t1、t2、t3(図3参照)よりも、明らかに大きい。
【0026】
ここで、図4において、施工面積が小さいタイプの施工を行う領域ΔAは、
施工面積に対して、有効断面が小さい領域、
土圧や水圧等の外力が作用し、変形する恐れの領域、
が選択される。換言すれば、有効断面が大きく、変形しない様な領域であれば、施工面積が小さいタイプの施工は行う必要は無い。
【0027】
なお、施工面積が小さいタイプの施工は、出来る限り、小さい面積について、実行することが好ましい。
施工面積が小さいタイプの施工は、施工面積当りの工事コストが高い。従って、係る施工(施工面積が小さいタイプの施工)を行う面積をできる限り小さくして、工事コスト全体を出来る限り安価にすることが望ましい。
【0028】
次に、図5、図6を参照して第2実施形態を説明する。
図5、図6の第2実施形態においても、施工面積が大きいタイプの施工と、施工面積が小さいタイプの施工とを行う。
ここで、施工面積が大きいタイプの施工を行うピッチ(図1、図2におけるピッチP)を設定する必要がある。
【0029】
図5、図6は、係るピッチ(図1、図2におけるピッチP)を決定する実施形態である。
図5は、第2実施形態を施工するための制御システム100の構成を示している。図6は、制御システム100における制御、すなわち施工面積が大きいタイプの施工を行うピッチを決定する制御を示している。
なお、図5〜図7において、図面に記入する文字数を削減するために、「施工面積が大きいタイプの施工」を「大面積工法」と表示し、「施工面積が小さいタイプの施工」を「小面積工法」と表示している。
【0030】
図5において、制御システム100は、例えば、パソコン等の入力装置9と、制御システム本体(コンピュータ)10と、表示装置20とで構成されている。
制御システム本体(コンピュータ)10は、インターフェース11と、第1のシミュレーション部12と、第2のシミュレーション部13と、設計有効厚さ判定部(tc判定部)14と、ピッチ変更部15と、コスト演算部16と比較部17と、第2の判定部18と、加算部19とを備えている。
【0031】
インターフェース11は、図示では明確に示していないが、入力装置9と接続されている。また、インターフェース11は、設計有効厚さ入力部(tc入力部)11Aと、ピッチ入力部(P入力部)11Bとを有している。
入力装置9で入力された設計有効厚さtcは、tc入力部11Aを経由して、第1のシミュレーション部12及びtc判定部14に伝送されるように構成されている。
入力装置9で入力されたピッチPは、P入力部11Bを経由して、第2のシミュレーション部13に伝送されるように構成されている。
【0032】
第1のシミュレーション部12は、入力された設計有効厚さtcに基づいて、従来工法(施工面積が大きいタイプの施工)のシミュレーションを行い、その結果を第2のシミュレーション部13及びコスト演算部16に伝送するように構成されている。
ここで、従来工法は、施工面積が大きいタイプの施工のみを行う工法であり、例えば図3で示す様な工法である。そして、従来工法のシミュレーションとは、従来工法を施工する場合において使用される機械の種類、投入する材料の量、施工に要する各種労力、構造体の強度、工期等を求めるために行われる。
【0033】
第2のシミュレーション部13は、入力されたピッチPに基づいて、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のシミュレーションを行い、シミュレーションの結果をtc判定部14(設計有効厚さ判定部)及びコスト演算部16に伝送するように構成されている。
ここで、第2のシミュレーション部13におけるシミュレーションは、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合における有効厚さ、使用される機械の種類、投入する材料の量、施工に要する各種労力、構造体の強度、工期等を求めるために行われる。
【0034】
tc判定部14は、第2のシミュレーション部13で求められた有効厚さ(施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合における有効厚さ:シミュレーションにより決定される)txと、設計有効厚さtcとの関係を判定するように構成されている。より具体的には、tc判定部14は、第2のシミュレーション部13で求められた有効厚さtxが、設計有効厚さtc以上であるか否かを判定する。
第2のシミュレーション部13で求められた有効厚さtxが設計有効厚さtc未満であれば、地盤改良された箇所の強度が不充分となる。そのため、第2のシミュレーション部13で求められた有効厚さtxは、設計有効厚さtc以上でなければならない。
【0035】
tc判定部14は、「有効厚さtxが、設計有効厚さtc以上である」場合には、第2のシミュレーション部13に対して、当該シミュレーションが適正である旨の信号を伝達するように構成されている。係る信号を伝達された第2のシミュレーション部13は、適正なシミュレーションの結果をコスト演算部16へ伝達する。
また、tc判定部14は、有効厚さtxが設計有効厚さtc未満である場合においては、その旨をピッチ変更部15に伝達するように構成されている。
【0036】
ピッチ変更部15は、第2のシミュレーション部13で求められた有効厚さtxが設計有効厚さtc未満である場合に、ピッチPを所定の幅ΔP1だけ減少するように構成されている。
そしてピッチ変更部15は、減少したピッチPn(=P−ΔP1)を、第2のシミュレーション部13へフィードバックするように構成されている。
【0037】
第2のシミュレーション部13は、減少したピッチPn(=P−ΔP1)を用いて、上述のシミュレーション(施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のシミュレーション)を行う。
ここで、ピッチPは減少しているので、シミュレーションにより求められる有効厚さtxは増加する。
【0038】
コスト演算部16は、第1のシミュレーション部12のシミュレーション結果から、従来工法におけるコストを演算する。そして、第2のシミュレーション部13のシミュレーション結果から、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコストを演算する。
さらに、演算したコスト(従来工法におけるコスト、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコスト)を、比較部17に送るように構成されている。
【0039】
比較部17では、従来工法によるコスト(第1のシミュレーション部12のシミュレーション結果に基くコスト)と、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコスト(第2のシミュレーション部13のシミュレーション結果に基くコスト)とを比較し、その比較結果を判定部18に伝送するように構成されている。
ここで、比較されるコストとしては、単に、材料費や、投入させる労力や人件費のような直接コストの他に、施工が長期化した場合における利益の損失や、その他の間接的なコストをも含むのが望ましい。
【0040】
判定部18では、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコストが、従来工法のコスト以下となるか否かを判定し、判定結果を表示部20に表示するように構成されている。
表示部20で表示される内容は、単に、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコストと、従来工法のコストとの比較結果のみならず、在来工法のシミュレーション結果と、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のシミュレーション結果も、併せて表示されるのが好ましい。
【0041】
判定部18は、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコストが、従来工法のコストを上回ると判定された場合には、その旨の情報を加算部19へ送信する様に構成されている。
「施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコストが、従来工法のコストを上回る」旨の判定結果が送信された加算部19は、上述のシミュレーションで用いたピッチPに対して所定幅ΔP2を加えた新たなピッチPmとし、その新たなピッチPm(=P+ΔP2)を、第2のシミュレーション部13へフィードバックする様に構成されている。第2のシミュレーション部13では、新たなピッチPm(=P+ΔP2)に基いて上述のシミュレーションを繰り返す。
ピッチP(Pm)が大きくなれば、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコストは減少する。
【0042】
次に、図6のフローチャートに基づいて、第2実施形態において、ピッチP(施工面積が大きいタイプの施工におけるピッチ)を決定する制御について、説明する。
図6において、先ず、入力装置9によって設計有効厚さtcを入力する。すると、第1のシミュレーション部12において、入力された設計有効厚さtcを確保するという条件下で従来工法(施工面積が大きいタイプの施工だけを行う工法)を行う場合におけるコストが演算される(ステップS1)。
ステップS2では、施工面積が大きいタイプを施工するに際して、任意のピッチPを設定する(ステップS2)。
【0043】
第2のシミュレーション部13では、設定されたピッチPに基いて、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合について、シミュレーションを行う(ステップS3)。すなわち、第2のシミュレーション部13では、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合における有効厚さtxを演算する。そして、ステップS4に進む。
ステップS4では、tc判定部14において、第2のシミュレーション部13のシミュレーションで求められた有効厚さtxが設計有効厚さtc以上であるか否かを判断する。
【0044】
有効厚さtxが設計有効厚さtc以上であれば(ステップS4がYES)、当該シミュレーションは適正であると判断する。そして、コスト演算部16により、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合における必要なコストを演算する(ステップS5)。そして、ステップS7に進む。
【0045】
一方、有効厚さtxが設計有効厚さtcよりも小さければ(ステップS4がNO)、ステップS6において、ピッチ変更部15でそれまでのピッチPから所定量ΔP1を減算して、新たなピッチPnを設定する(Pn=P−ΔP1)。そしてステップS3に戻り、その新たに設定されたピッチPn(=P−ΔP1)により、ステップS3以降を繰り返す。
【0046】
ステップS7では、比較部17において、ステップS5で演算されたコストと、従来工法によるコスト(ステップS1)とを比較する。そして、ステップS5で演算したコスト(施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合のコスト)が、従来工法のコスト(ステップS1)を下回るか否かを判断する(ステップS8)。
【0047】
ステップS3で演算したコストが従来工法のコストを下回れば(ステップS8がYES)、ステップS9に進み、その時のピッチPを、図示しない記憶手段に記憶する。
一方、ステップS3で演算したコストが、従来工法のコスト以上であれば(ステップS8がNO)、加算部19において、それまでのピッチPに所定の幅ΔP2を加えて、新たなピッチPmを設定する(ステップS10)。そしてステップS3に戻り、新たに設定されたピッチPm(=P+ΔP2)により、ステップS3以降を繰り返す。
【0048】
ステップS11では、その他のピッチPを求める必要があるかを判断する。その他のピッチPを求める必要があれば(ステップS11がYES)、ステップS2以降を繰り返す。その他のピッチPを求める必要がなければ(ステップS11がNO)、ピッチPを決定(確定)して制御を終える。
【0049】
図5、図6における第2実施形態によれば、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた場合に、必要な有効厚さ(設計有効厚さtc)が確保できるか否かの判断を行うので、施工により築造された構造物は、常に必要な強度を確保することが出来る。
それと共に、従来工法による施工に対して、コスト的に有利な施工が可能となる様に、施工面積が大きいタイプの施工におけるピッチPが決定されるので、コストの点でも有利である。
図5、図6の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
【0050】
次に、図7、図8を参照して第3実施形態を説明する。
図5、図6の第2実施形態は、従来工法(施工面積が大きいタイプの施工のみを行う工法:図2参照)に比較してコストが安価となる様に、施工面積が大きいタイプの施工におけるピッチPを決定している。
それに対して、図7、図8の第3実施形態では、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工とを組み合わせた全ての施工方法の中から、未施工領域が発生することなく、必要な有効厚さ(設計有効厚さtc)が確保出来て、しかも、コストが安価な施工を選択している。
【0051】
図7は、第3実施形態を実施するための制御システム101の構成を示している。
図8は、コストが低く抑えられる施工を選択する制御をフローチャートで示している。
【0052】
図7において、制御システム101は、制御装置本体(コンピュータ)110と、表示装置20とを有している。
制御装置本体110は、全配置組合せ列挙ブロック21と、第1のフィルター22と、第2のフィルター23と、第3のフィルター24と、データベース26とを有している。
【0053】
全配置組合せ列挙ブロック21は、施工現場における各種条件(初期条件)から選択可能な全ての組合せ、すなわち「施工面積が大きいタイプの施工」と「施工面積が小さいタイプの施工」との組合せの全てを列挙する様に構成されている。具体的には、データベース26におけるデータから、初期条件に適合する全ての組合せ(施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工との組合せ)を取り込む(抽出する)様に構成されている。
係る取り込み或いは抽出については、従来、公知の情報処理技術を適用すれば良い。
【0054】
第1のフィルター22は、未施工領域が発生しないような条件を与えるように構成されている。すなわち、第1のフィルター22は、全配置組合せ列挙ブロック21で列挙された全ての組合せの中から、施工すべき領域中に、地盤改良工法(図示の実施形態では、例えば、撹拌工法)を施工しない領域(未施工領域)発生してしまう組合せ(例えば、撹拌工法を施工した領域が不連続となってしまう組合せ)を排除するように構成されている。
【0055】
第2のフィルター23は、必要な有効厚さ(設計有効厚さtc)が確保できない組合せを排除するように構成されている。換言すれば、第2のフィルター23は、撹拌工法を施工した領域の有効厚さが、設計有効厚さtcよりも小さい部分が発生してしまう組合せを排除するように構成されている。
【0056】
第3のフィルター24は、残存した組合せ(施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工との組合せ)を、コストが少ない順に優先順位をつけて、優先順位が高い組合せ(コストを低く抑えることが出来る組合せ、或いは、コストが少ない組合せ)を選択するように構成されている。
【0057】
図8に基づいて、第3実施形態における制御を説明する。
図8において、先ず、ステップS21では、全配置組合せ列挙ブロック21において、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工の双方を実施する場合において、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工における組合せ(施工面積が大きいタイプの施工を行う領域と、施工面積が小さいタイプの施工を行う領域との組合せ)の全てを列挙する。
【0058】
次のステップS22では、第1のフィルター22によって、ステップS21で列挙された組合せの中から、撹拌工法を行うべき領域(施工予定領域)の中に、撹拌工法を施工していない部分(不連続部分、未施工部分)が発生してしまう組合せを排除して、未施工部分(不連続部分)ができない組合せ(施工予定領域の全てにおいて、撹拌工法が施工される組合せ)のみを選択する。
【0059】
ステップS23では、第2のフィルター23によって、ステップS22で選択された組合せから、撹拌工法を施工された領域の有効厚さが、必要な有効厚さ(設計有効厚さtc)よりも小さい組合せ(設計有効厚さを確保できない組合せ)を排除し、撹拌工法を施工された領域の有効厚さが、必要な有効厚さ(設計有効厚さtc)以上となる組合せ(設計有効厚さを確保できる組合せ)を選択する。
【0060】
次のステップS24では、第3のフィルター24によって、ステップS23で選択された組合せ(施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工との組合せであって、ステップS21〜S23の全てにおいて選択された組合せ)を、コストが少ない順に優先順位をつける。そして、安価な組合せを選択する。
【0061】
ステップS25では、ステップS24で選択された組合せを表示装置20によって表示する。
そして、ステップS24で選択された組合せ(施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工との組合せ)の通りの施工を行って良いか否かを判断する(ステップS26)。
【0062】
ステップS26は、上述した以外の各種判断基準、例えば、撹拌工法に連続して行われる工事(例えば、建造物の構築工事)の観点で判断することが出来る。或いは、環境に与える影響の多寡を基準にしても良い。
ステップS26における判断は、システム101のオペレータが行う。ただし、制御装置20Aが行うことも不可能ではない。
【0063】
ステップS24で選択された組合せが、その他の判断基準に照らして問題が無ければ(ステップS26がYES)、ステップS24で選択された組合せを実際に施工する旨が決定される(ステップS27)。
ステップS24で選択された組合せが、各種判断基準に照らして不都合であれば(ステップS26がNO)、ステップS25で表示された組合せを「ステップS23で選択した組合せ」から削除し(ステップS28)、ステップS22に戻る。そして、ステップS22以降を繰り返す。
【0064】
上述の図7、図8の第3実施形態によれば、第1のフィルター22〜第3のフィルター24によって、施工面積が大きいタイプの施工と施工面積が小さいタイプの施工との組合せを順々に選択し(いわゆる「篩いにかける」処理を行い)、撹拌工法が施工されていない部分(未施工部分、不連続部分)が発生すること無く、設計有効厚さを確保でき、施工コストが安価な組合せが、極めて短時間の内に選択できる。
図7、図8の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図6の各実施形態と同様である。
【0065】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
例えば、明確には図示されていないが、第1実施形態〜第3実施形態において、既設構造物との干渉を避ける様に構成されているのが好ましい。すなわち、既設構造物の位置、形状、及び寸法は、事前に制御システム100のコンピュータ10、或いは、制御システム101のコンピュータ20に入力する様に構成することが好ましい。そのように構成すれば、既設構造物との干渉を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態を模式的に説明する平面図
【図2】施工面積が大きいタイプの施工のみを行う従来工法を示す平面図。
【図3】第1実施形態の施工例を模式的に示す平面図
【図4】第1実施形態の施工例を模式的に示す平面図
【図5】本発明の第2実施形態のブロック図。
【図6】第2実施形態の制御を示すフローチャート。
【図7】本発明の第3実施形態のブロック図。
【図8】第3実施形態の制御を示すフローチャート。
【図9】第1実施形態の変形例を説明する平面図。
【図10】第1実施形態における図9以外の変形例を説明する平面図。
【符号の説明】
【0067】
A・・・施工面積が大きいタイプの施工された領域
B・・・オーバーラップ部分
J・・・固化材噴流
M・・・噴射装置
ΔA・・・施工面積が小さいタイプの施工領域
P・・・ピッチ
tc・・・設計有効厚さ
to・・・オーバーラップ部分の矢印U方向の長さ
9・・・入力装置
10・・・制御システム本体/コンピュータ
11・・・インターフェース
12・・・第1のシミュレーション部
13・・・第2のシミュレーション部
14・・・tc判定部
15・・・ピッチ変更部
16・・・コスト演算部
17・・・比較部
18・・・判定部
19・・・加算部
20・・・制御装置本体/コンピュータ
21・・・全配置組合せ列挙ブロック
22・・・第1のフィルター
23・・・第2のフィルター
24・・・第3のフィルター
26・・・データベース
20・・・表示装置
100・・・ピッチ決定システム
101・・・制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工領域が大きいタイプの施工を行う工程と、施工領域が小さいタイプの施工を行う工程とを含み、施工領域が小さいタイプの施工を行う工程は有効厚さを増加する位置に施工されることを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
施工領域が大きいタイプの施工を行う領域の間隔を決定する工程を含み、該間隔を決定する工程では、施工領域が小さいタイプの施工と組み合わせた場合における有効厚さが適正であるか否かを判定する工程と、施工領域が小さいタイプの施工と組み合わせた場合のコストと施工領域が大きいタイプの施工のみを行う場合のコストとを比較する工程、とを有している請求項1の地盤改良工法。
【請求項3】
施工領域が大きいタイプの施工と施工領域が小さいタイプの施工との組合せを求める工程と、当該組合せの中から設計有効厚さを確保することが出来る組合せを選択する工程と、設計有効厚さを確保することが出来る組合せの中でコストが安い組合せを選択する工程、とを有している請求項1の地盤改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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