説明

地盤改良工法

【課題】本発明は、地盤改良工法に関し、施工現場での砕石を利用して沈下特性に優れた地盤改良を行うことが課題である。
【解決手段】地盤用の土砂を粉砕機にて粉砕する工程と、その粉砕したものを40mmと10mmとのふるいにかけて40〜10mmの礫材と、10mm以下の砂材とにふるい分ける工程と、前記礫材と前記砂材とを礫材:砂材=3:7〜礫材:砂材5:5に集積して混合する工程と、前記混合して成る一次混合材にセメント系固化剤及び含水比調整用の水を混合し撹拌して二次混合材である地盤改良土を作る工程と、前記地盤改良土を施工場所に運搬して敷き均し転圧・締め固める工程とからなる地盤改良工法1とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密生産工場等の建物に必要である、沈下特性の少ない強固な地盤を形成する地盤改良工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良工法は、粘性土や砂質土が使用されており、岩盤のような支持力や高い剛性を必要とすることがない。仮に、高い剛性を必要とする地盤を得るには、セメント量を多くして対応するものである。例えば、地盤改良体の下部に引張荷重に対して抵抗力を発揮する形鋼からなる補強部材を配置し、これを格子状に設けると共に、その交差部分を構造物の柱の下方位置に配置し、強固に補強するようにした補強構造などが知られている。
【特許文献1】特開2003−278172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の地盤改良工法では、精密生産工場のような、沈下特性が10μm/m以下にするような厳しい条件が加わると、対応することができないものである。本発明に係る地盤改良工法は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る地盤改良工法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、地盤用の土砂を粉砕機にて粉砕する工程と、その粉砕したものを40mmと10mmとのふるいにかけて40〜10mmの礫材と、10mm以下の砂材とにふるい分ける工程と、前記礫材と前記砂材とを礫材:砂材=3:7〜礫材:砂材5:5に集積して混合する工程と、前記混合して成る一次混合材にセメント系固化剤及び含水比調整用の水を混合し撹拌して二次混合材である地盤改良土を作る工程と、前記地盤改良土を施工場所に運搬して敷き均し転圧・締め固める工程と、からなることである。
【0005】
前記セメント系固化剤は、100〜200kg/m の割合で添加されることであり、
前記地盤改良土は、施工場所を掘削して玄武岩層を露出させた状態にして敷き均すことであり、
前記含水比は、最適含水比±3%とすることである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の地盤改良工法によれば、固い地盤で沈下特性が例えば10μm/m以下という厳しい条件下において精密生産工場等を構築する場合に適しており、施工場所の現地盤を使用して、その粒度を調整することで、適切な剛性(E50 t/m)を得ることができて、目的を達成できる。礫:砂を10mmで区分けすることにより、2種類のフルイで礫材の全体を分類できるので、作業が容易になる。その際に、礫材:砂材=3:7〜礫材:砂材5:5と幅を持たせて混合させるので、現場でのバケットを使った混合作業が容易となり能率が向上する。
また、前記セメント系固化剤は、100〜200kg/m の割合で添加されることであり、前記地盤改良土は、施工場所を掘削して玄武岩層を露出させた状態にして敷き均すことであり、前記含水比は、最適含水比に対して±3%とすることで、締め固め硬化とセメントの硬化で大きな強度及び弾性係数の地盤となり、適切な堅い改良地盤を効率的に形成することができる。更に、施工現場の岩石を砕石して使用するので、環境負担の軽減となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る地盤改良工法1は、図1乃至図2に示すように、まず、図1(A)にて示す、地盤改良層2をバックホー3等で掘削し、それを小割にした後に、ダンプ4等に積み込んで、一旦、場外の残土仮置場に運搬する工程がある。なお、精密生産工場等の土間コンクリート厚さが、H=1200mm、H=800mmとする範囲では、火山砂礫層の下の硬い玄武岩層が露出するまで掘削する。
そして、図1(B)に示すように、必要に応じて前記掘削土5をダンプ等で作業場に運び込んで、地盤用の土砂を粉砕機(クラッシャー)6にて粉砕する工程がある。
【0008】
この粉砕工程では、粒径の大きい溶岩石を、粒径40mm以下に粉砕する。そして更に、粉砕した掘削土を、自走式スクリーン7(2台)にて、40mmと10mmとのふるいにかけて40〜10mmの礫材8と、10mm以下の砂材9とにふるい分ける工程がある。このクラッシャー6にて溶岩石を粉砕するには、図3に示すように、粉砕粒度を調節して良好な粒度分布の礫材を得るものである。
【0009】
次に、図1(C)に示すように、前記礫材8と前記砂材9とを、例えば、バックホー3のバケットで掬った回数を目安にして、礫材:砂材=3:7〜礫材:砂材5:5に集積して混合する工程がある。この場合、なるべく、礫材:砂材=4:6となるようにすると、良好な礫材が得られる。なお、礫材8の混合割合を、40%を中心に、±10%の幅を持たせているので、バケットによる作業でも、能率良く行うこができる。
【0010】
前記混合して成る一次混合材にセメント系固化剤及び含水比調整用の水を混合し、図1(C)に示すように、自走式土質改良機10で撹拌して二次混合材である地盤改良土11を作る工程がある。前記セメント系固化剤は、100kg/mの割合で添加され、前記水は、最適含水比(今回は、9%であり、以下同じ)±3%となるように投入される。
【0011】
前記地盤改良土11は、礫:砂の混合比と、セメント系固化剤の添加量による、強度の違いを、図4に示すように、確認したが、混合割合による明確な差が無く、前記のように、礫材:砂材=4:6とするものである。また、前記固化剤の添加量については、事前に室内試験を行った。例えば、添加量を、75kg/m、100kg/m、150kg/mの3種類を設定し、礫材:砂材=3:7と礫材:砂材5:5の混合で、材例が1週の場合の、固化剤添加量とE50(変形係数)の関係を図5(A)に示し、材例4週の場合を同図(B)に示す。
【0012】
上記事前の室内試験では、1週での室内平均E50が400MN/m以上となるようにすると、添加量が75kg/m、礫材:砂材=5:5でE50が400MN/m以下のものがあるので、添加材料は、75kg/mでバラツキが大きく100kg/m以上で安定している。今回の条件では100kg/mで満足しているので、100kg/mとするものである。図6には、実際の施工現場での砕石を使用して固化剤添加量を100kg/mとした場合の結果であり、E50が200MN/mよりも大きくなっており、十分な剛性であることが判る。
【0013】
前記地盤改良土11においては、定常管理が必要であり、図7(A)に示すように、礫材の一次混合では採石の粒度管理を3施工日につき1回行う。これは、10mm〜40mmの礫分重量が、配合比で3〜5なので、50%以下であることであり、図よりいずれも満たしている。また、含水比の管理も1施工日につき1回行う。推奨する含水比は最適含水比(9%)に対し±1%の8〜10%であるが、今回は±3%の6%〜12%と広い幅にして所定の性能が得られている。
【0014】
前記地盤改良土11を、図1(D)に示すように、施工場所に運搬してブルドーザなどで敷き均し、その後、タイヤローラ若しくは振動ローラなどで転圧・締め固める工程がある。この均しと転圧においては、仕上がり厚さが1層当たり50cmを越えないように、レベルなどで確認しながら施工する。更に、細部においては、締め堅めが不足することがあるので、コンバインドローラとランマを使用して行う。
【0015】
前記転圧した地盤改良土11の品質管理として、例えば、1施工日につき3供試体として4週での強度とする。一例として、原位置で作成した供試体による一軸試験から求めた変形係数E50と、一軸強度(圧縮強度qu)とのばらつきを図8(A),(B)に示す。設計時の設定した変動係数0.45よりも小さくなっている。
また、乾燥(締固)密度γは、定常管理として、各層1回または、1施工日につき2回にして試験し、図9に示すように、管理値1.83g/cm(事前配合試験密度の95%以上、1.928×0.95)以上に対して、それ以上に大きくなっている。
このほか、平板載荷試験で長期許容支持力度300kN/m以上、また、弾性係数80MN/m以上であるかを4週経過後に行う。結果を図10に示すが、いずれも設計値(80MN/m)を大きく上回っており、一連の地盤改良工法で高剛性改良地盤を作ることができる。これらの定常管理と品質管理は、いずれも、JIS A 1102,1203,1214,1216,1251の試験方法により行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る地盤改良工法1の各工程毎の作業手順を示す説明図(A)〜(D)である。
【図2】同本発明の地盤改良工法1の作業工程フロー図である。
【図3】採石材の粒径分布の試験結果を示す説明図である。
【図4】礫:砂=3:7と5:5とにおける固化剤添加量による強度のと剛性の比較を示す説明図である。
【図5】固化剤の添加量における変形係数E50の1週と4週との室内配合試験の結果を示す説明図(A),(B)である。
【図6】砕石を用いた室内試験の強度を示す結果の説明図である。
【図7】粒度管理の様子を示す説明図(A)と、含水比の管理の様子を示す説明図(B)である。
【図8】実施工時の供試体での一軸圧縮試験結果の変形係数と圧縮強度との説明図(A),(B)である。
【図9】乾燥密度の試験結果を示す説明図である。
【図10】平板載荷試験結果例(弾性係数)を一覧にして示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 地盤改良工法、
2 地盤改良層、
3 バックホー、
4 ダンプ、
5 掘削土、
6 粉砕機(クラッシャー)、
7 自走式スクリーン、
8 礫材、
9 砂材、
10 自走式土質改良機、
11 地盤改良土。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤用の土砂を粉砕機にて粉砕する工程と、
その粉砕したものを40mmと10mmとのふるいにかけて40〜10mmの礫材と、10mm以下の砂材とにふるい分ける工程と、
前記礫材と前記砂材とを礫材:砂材=3:7〜礫材:砂材5:5に集積して混合する工程と、
前記混合して成る一次混合材にセメント系固化剤及び含水比調整用の水を混合し撹拌して二次混合材である地盤改良土を作る工程と、
前記地盤改良土を施工場所に運搬して敷き均し転圧・締め固める工程と、
からなること、
を特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
セメント系固化剤は、100〜200kg/m の割合で添加されること、
を特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
地盤改良土は、施工場所を掘削して玄武岩層を露出させた状態にして敷き均すこと、
をとする請求項1乃至2のいずれかに記載の地盤改良工法。
【請求項4】
含水比は、最適含水比±3%とすること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地盤改良工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−167651(P2009−167651A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5466(P2008−5466)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】