説明

地盤改良機の制御装置

【課題】品質の良い柱状改良杭を安定して設けることを可能とする地盤改良機を提供する。
【解決手段】攪拌ヘッドを有するロッドを回転・昇降させる駆動手段とロッドを通して掘削孔内にセメントミルクを注入・供給する手段とを備え、地盤に複数の掘削孔を順次掘削・施工して地盤を改良する複数回の連続する地盤の改良施工のうち、初回の地盤改良施工を手動操作で行なう際に、深度と回転向きと回転数と注入量をセンシング手段(回転向き及び回転数の検出器9、昇降距離の検出器10、流量計17)により検出して、二回目以降の施工の際に、その深度と回転向きと回転数と注入量に基づき、駆動手段及び供給手段を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に複数の掘削孔を順次掘削して施工する際にセメントミルクを掘削孔内で攪拌混合した柱状改良杭により地盤を改良する地盤改良機において、地盤を掘削する攪拌ヘッドを有するロッドを回転させるとともに昇降させる駆動手段や、このロッドを通して掘削孔内にセメントミルクを注入する供給手段を駆動制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤に建物を設ける場合、建物の沈下を防ぐために柱状改良杭を施工することがある。この柱状改良杭を施工する場合には地盤改良機における上記の駆動手段や供給手段を操作する必要があるため、品質の良い柱状改良杭を何十本も安定して設けるには施工者の施工経験に負うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−158056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、柱状改良杭の施工に伴う施工者の負担を軽減するために、上記の特許文献1などで開示された地盤改良機の制御装置が提供されている。
しかし、いずれも、これから施工する地盤の状況を予測して施工前に予めコンピュータに記憶させた施工パターンに基づいて自動的に施工することができる地盤改良機を提供しているに過ぎず、現実の地盤状況に合った施工パターンか否かは実際に柱状改良杭を施工した後でなければ分からず、常に品質の良い柱状改良杭を何十本も安定して設けることが困難な場合もあり得る。
【0005】
この発明は、品質の良い柱状改良杭を安定して設けることを可能にする地盤改良機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜6)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる地盤改良機の制御装置は、下記のように構成されている。
地盤改良機は、地盤を掘削する攪拌ヘッド(8a)を有するロッド(8)を回転させるとともに昇降させる駆動手段(2)と、このロッド(8)を通して掘削孔内にセメントミルクを注入する供給手段(12)とを備え、地盤に複数の掘削孔を順次掘削して施工する際にこのセメントミルクを掘削孔内で攪拌混合して地盤を改良する。複数回の施工のうち、初回の施工を手動操作で行なう際に所定の手動操作データを検出するセンシング手段(9,10)を前記駆動手段(2)に設け、二回目以降の施工の際に、前記センシング手段(9,10)により検出して記憶した所定の手動操作データに基づき、前記駆動手段(2)を駆動制御する処理手段(20,23)を設けている。
【0007】
請求項1の発明では、初回の施工で駆動手段(2)を手動操作する際に検出した所定の手動操作データを二回目以降の自動施工で利用したので、初回の施工における手動操作で得られた現実の地盤状況に合った駆動手段(2)の施工パターンに基づいて複数回の施工を行なって、品質の良い柱状改良杭を安定して設けることができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記駆動手段(2)のセンシング手段(9,10)は、所定の手動操作データとして、ロッド(8)の攪拌ヘッド(8a)の深度及び回転向きを検出する。請求項2の発明では、ロッド(8)の攪拌ヘッド(8a)の深度及び回転向きの検出により、二回目以降の施工において初回の施工における駆動手段(2)の施工パターンを容易に再現することができる。
【0009】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記駆動手段(2)のセンシング手段(9,10)は、所定の手動操作データとして、ロッド(8)の攪拌ヘッド(8a)の回転数を検出する。請求項3の発明では、ロッド(8)の攪拌ヘッド(8a)の深度及び回転向きの検出に加えて、回転数も検出するので、二回目以降の施工において初回の施工における駆動手段(2)の施工パターンをより一層容易に再現することができる。
【0010】
請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項4の発明においては、初回の施工を手動操作で行なう際に所定の手動操作データを検出するセンシング手段(17)を前記供給手段(12)に設け、二回目以降の施工の際に、前記センシング手段(17)により検出して記憶した所定の手動操作データに基づき、前記供給手段(12)を駆動制御する処理手段(20,23)を設けている。請求項4の発明では、初回の施工で供給手段(12)を手動操作する際に検出した所定の手動操作データを二回目以降の自動施工で利用したので、初回の施工における手動操作で得られた現実の地盤状況に合った駆動手段(2)及び供給手段(12)の施工パターンに基づいて複数回の施工を行なって、品質の良い柱状改良杭を安定して設けることができる。
【0011】
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明において、前記供給手段(12)のセンシング手段(17)は、所定の手動操作データとして、セメントミルクの注入量を検出する。請求項5の発明では、セメントミルクの注入量の検出により、二回目以降の施工において初回の施工における駆動手段(2)及び供給手段(12)の施工パターンを容易に再現することができる。
【0012】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明において、前記処理手段(20,23)は、二回目以降の施工の際に、初回の施工の際に記憶した所定の手動操作データに追従して、前記駆動手段(2)を駆動制御する。請求項6の発明では、二回目以降の施工において初回の施工における駆動手段(2)または駆動手段(2)及び供給手段(12)の施工パターンを容易に再現することができる。
【0013】
請求項6の発明を前提とする請求項7の発明において、前記処理手段(20,23)は、前記駆動手段(2)における深度及び回転向きに関する実際動作軌跡に対し近似する複数のポイントを登録してそれらのポイントを互いに結んだ動作パターンを所定の手動操作データとして、前記駆動手段(2)を駆動制御する。請求項7の発明では、初回の施工における駆動手段(2)の深度及び回転向きに関する実際動作軌跡を単純化した施工パターンにより、二回目以降の施工の際に、初回の施工の際に記憶した所定の手動操作データに追従させ易くなる。
【0014】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項4または請求項5の発明を前提とする第8の発明において、前記供給手段(12)は、セメントミルクミキサー(14)と、このセメントミルクミキサー(14)から前記ロッド(8)にセメントミルクを注入する注入ポンプ(15)と、この注入ポンプ(15)からロッド(8)に注入されるセメントミルクの流量を検出する流量計(17)とを備え、前記処理手段(20,23)は、セメントミルクミキサー(14)内におけるセメントミルク練り上がり量から流量計(17)を通ったセメントミルクの量を減算したセメントミルク残量を画面に表示する。第8の発明では、施工者が画面を見るだけでセメントミルク残量を容易に確認することができる。
【0015】
請求項1から請求項7のうちいずれか一つの請求項の発明、または第8の発明を前提とする第9の発明において、前記処理手段(20,23)は、掘削孔にセメントミルクを注入して設けられる複数の施工杭の施工位置を施工時の配置状態で画面に表示し、それらの施工の有無を区別するための登録を画面に設定し得る。第9の発明では、地盤改良機において施工者が画面を見るだけで施工の有無を容易に確認することができる。
【0016】
請求項1から請求項7のうちいずれか一つの請求項の発明、または第8の発明を前提とする第10の発明において、前記地盤改良機を杭埋設機として利用した場合に、前記処理手段(20,23)は、複数の埋設杭の施工位置を施工時の配置状態で画面に表示し、それらの施工の有無を区別するための登録を画面に設定し得る。第10の発明では、杭埋設機において施工者が画面を見るだけで杭の埋設の有無を容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、品質の良い柱状改良杭を安定して設けることを可能にする地盤改良機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本実施形態にかかる地盤改良機を概略的に示すシステム図であり、(b)はセメントミルク残量表示画面である。
【図2】その地盤改良機の電気ブロック回路図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ地盤改良施工時の施工画面である。
【図4】(a)(b)はそれぞれ地盤改良施工時の施工画面である。
【図5】地盤改良施工時の登録画面である。
【図6】杭埋設施工時の登録画面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態にかかる地盤改良機について図面を参照して説明する。
図1(a)に示す地盤改良機において、車両1の前側に設置された駆動手段2は、傾動シリンダ3により支軸4を中心に傾動し得るリーダ5と、昇降装置6によりリーダ5に沿って昇降し得る駆動モータ7と、駆動モータ7により回転し得るロッド8とを備えている。ロッド8は、駆動モータ7により回転しながら昇降装置6により駆動モータ7とともにリーダ5に沿って昇降し、攪拌ヘッド8aにより地盤を掘削する。その際、アクチュエータとしての駆動モータ7に取り付けられた検出器9は、動作部センシング手段として、圧力スイッチを利用して駆動モータ7の回転向き(正回転向きと逆回転向き)を検出し、近接センサを利用して回転数を検出する。また、アクチュエータとしての昇降装置6に取り付けられた検出器10は、動作部センシング手段として、ロッド8の昇降距離(深度)を検出する。駆動モータ7に取り付けられた圧力センサ11は、動作部センシング手段として、ロッド8に生じる掘削圧を検出する。
【0020】
また、図1(a)に示す地盤改良機において、駆動手段2に接続された供給手段12は、セメントミルクプラント13で、セメントミルクを製造するミキサー14と、ミキサー14に接続された注入ポンプ15と、注入ポンプ15をロッド8に接続する注入パイプ16とを備えている。注入ポンプ15は、ミキサー14からセメントミルクをロッド8に注入パイプ16を通して注入する。注入パイプ16に取り付けられた流量計17は、動作部センシング手段として、注入ポンプ15からロッド8に注入されるセメントミルクの流量(注入量)を検出する。
【0021】
車両1内には、駆動手段2に対する手動操作装置18や、注入ポンプ15に対する手動操作装置19や、モバイルコンピュータ20が設置されている。それらの手動操作装置18,19による駆動手段2及び注入ポンプ15に対する操作量は、図2に示す操作部センシング手段21,22により検出される。
【0022】
図2に示すように、メインコンピュータ23は、入力機器として、前記動作部センシング手段(検出器9と検出器10と圧力センサ11と流量計17)や、前記駆動手段2及び注入ポンプ15における操作部センシング手段21,22に接続されているとともに、ロッド8の傾きを検出する傾斜センサ24(動作部センシング手段)にも接続されている。また、メインコンピュータ23は、出力機器として、前記アクチュエータ(昇降装置6と駆動モータ7)に接続されているとともに、車両1上の無線送信機25と注入ポンプ15上の無線受信機26とを介して注入ポンプ15に対する制御盤27に接続されている。さらに、メインコンピュータ23(処理手段)はモバイルコンピュータ20(処理手段)に接続され、モバイルコンピュータ20は離れた事務所のコンピュータ28に通信設備29や外部メモリ30を介して接続されている。
【0023】
さて、地盤に複数の掘削孔を順次掘削するとともにそれらの掘削孔内でセメントミルクを攪拌混合しながら施工して設けた施工杭(柱状改良杭)により地盤を改良する際には、複数回の施工のうち、初回の施工のみを手動操作で以下のようにして行なう。
【0024】
モバイルコンピュータ20に施工する杭番に関する施工杭設定画面を表示する。次に、その施工杭設定画面で、計画深度と昇降速度と攪拌ヘッド8aの羽根枚数及び羽根切数に関する施工杭設定入力を行なう。次に、図3(a)に示す施工画面をモバイルコンピュータ20に表示する。また、地盤にロッド8の攪拌ヘッド8aを当てがってその位置を深度ゼロとしてモバイルコンピュータ20に設定する。施工杭設定入力などのデータはモバイルコンピュータ20からメインコンピュータ23に送られる。
【0025】
このような施工準備が完了した後、施工者は、図3(a)に示す施工画面を見ながら、駆動手段2の昇降装置6及び駆動モータ7や、駆動手段2に対する手動操作装置18や、注入ポンプ15に対する手動操作装置19を手動操作して初回の施工を開始する。その際、前記動作部センシング手段(検出器9と検出器10と圧力センサ11と流量計17と傾斜センサ24)や、前記駆動手段2及び注入ポンプ15における操作部センシング手段21,22からのデータは、メインコンピュータ23に送られる。メインコンピュータ23は、動作部センシング手段(検出器9と検出器10と圧力センサ11と流量計17と傾斜センサ24)や操作部センシング手段21,22からのデータに基づき、駆動手段2のアクチュエータ(昇降装置6と駆動モータ7)を駆動制御するとともに、供給手段12の注入ポンプ15を無線送信機25及び無線受信機26と制御盤27とを介して駆動制御する。
【0026】
このような手動操作による初回の施工の際、図3(a)に示す施工画面において施工パターン記憶開始ボタンを押すと、メインコンピュータ23は、検出器9により検出された駆動モータ7の回転数及び回転向き(正回転向きまたは逆回転向き)や、検出器10により検出された深度(深度ゼロからの掘削距離)を所定の手動操作データとして記憶するとともに、流量計17により検出されたセメントミルクの注入量を所定の手動操作データとして記憶する。モバイルコンピュータ20は、メインコンピュータ23から送られたこれらの記憶データに基づき、図3(b)に示すように施工画面において正回転向き時の深度軌跡や逆回転向き時の深度軌跡や注入量を表示し、その施工画面で完了ボタンを押すことにより施工パターンデータとして記憶する。なお、メインコンピュータ23は、掘削中の異常時に、圧力センサ11からのデータや傾斜センサ24からのデータに基づき、駆動手段2や供給手段12を停止する。
【0027】
前述したように施工画面で完了ボタンを押した後、深度及び回転向きに関する施工パターンデータ(実際動作軌跡)に対し近似する複数のポイントを施工者が施工画面に登録すると、モバイルコンピュータ20は、図4(a)に示すように、それらのポイントを互いに結んで単純化した動作パターンを所定の手動操作データとして記憶する。例えば、予め設定可能なパラメータ設定により上下動作幅を設定することができ、その上下動作幅を超えた場合にターニングポイントとしてポイント登録するとともに、攪拌ヘッド8aの回転向きが変わった位置でもターニングポイントとしてポイント登録する。また、モバイルコンピュータ20は、図4(a)に示すように、所定深度区分ごとの注入量に関する動作パターンを所定の手動操作データとして記憶する。なお、モバイルコンピュータ20は、前記施工パターンデータ(実際動作軌跡)に基づき、予め記憶したポイントから自動的に選択して登録するようにしてもよい。
【0028】
このようにして手動操作による初回の施工が完了すると、二回目以降の施工を以下のように行なう。
二回目の施工では初回の施工と同様に、地盤にロッド8の攪拌ヘッド8aを当てがってその位置を深度ゼロとして合わせた後、モバイルコンピュータ20に施工する杭番に関する施工杭設定画面を表示させ、その施工杭設定画面で計画深度と昇降速度と攪拌ヘッド8aの羽根枚数及び羽根切数に関する施工杭設定入力確認を行ない、図3(a)に示す施工画面をモバイルコンピュータ20に表示する。次に、図2に示すランスイッチ31を押すと、メインコンピュータ23は、モバイルコンピュータ20から送られた初回の施工に関する動作パターンに追従して、例えば図4(b)に示す施工画面のように、駆動手段2や供給手段12を自動的に駆動制御する。SKIPボタンを押すと、現在点が目標としているポイントを飛ばして目標地点が次のポイントに移る。次に、図2に示すランスイッチ31を押すと、その自動施工が終了する。三回目以降の施工も二回目の施工と同様に行なう。
【0029】
なお、車両1内のモバイルコンピュータ20と事務所のコンピュータ28とは、通信設備29や外部メモリ30を介して接続されているため、施工前に入力する事前情報などを事務所のコンピュータ28から読み出して車両1内で確認したり、施工デ−タなどを車両1内のモバイルコンピュータ20から読み出して事務所で確認したりすることができる。
【0030】
前述した施工時、モバイルコンピュータ20は、予め入力されたセメント投入量と水セメント比とセメント比重とから所定の演算式によりミキサー14内のセメントミルク練り上がり量を演算し、そのセメントミルク練り上がり量から流量計17を通ったセメントミルクの量を減算して、セメントミルク残量を求める。モバイルコンピュータ20は、図1(b)に示すように、メインコンピュータ23からの信号によりセメントミルク残量を段階的に画面に表示する。
【0031】
前述した地盤改良施工時、モバイルコンピュータ20は、図5に示すように、掘削孔にセメントミルクを注入して設けられる複数の施工杭の施工位置を施工時の配置状態で画面に表示することができる。モバイルコンピュータ20の画面には、杭番と施工状況(完了または未施工)と施工順位とを表示した表や、登録ボタン及びクリアボタンなどの各種操作ボタンや、施工杭の配置画面が表示される。その画面で、例えば登録したい施工杭の施工位置の杭番を施工順位に従ってまたは任意に選択し、登録ボタンを押すとともにその杭番に該当する配置画面上の施工杭を押すと、登録したい施工杭の施工位置が確定する。また、その画面で、登録解除したい施工杭の施工位置の杭番を選択すると、その杭番に該当する配置画面上の施工杭が点滅し、その後にクリアボタンを押すと、登録解除したい施工杭の施工位置が確定する。このようにして登録または登録解除したい施工杭の施工位置を選択した後に、その登録を確定すると、配置画面上の施工杭の表示が施工状況とともに「未施工」から「完了」に変化する。完了したものは、未施工のものに設定することはできない。
【0032】
一方、前述した地盤改良機については、メインコンピュータ23やモバイルコンピュータ20を地盤改良モードに設定して施工しているが、杭埋設モードに設定した場合には供給手段12を除く車両1及び駆動手段2を杭埋設機として利用する。図示しないが、杭埋設機では、ロッド8に代えて複数本の埋設杭を順次互いに繋いで地盤に打ち込む。
【0033】
杭埋設時、モバイルコンピュータ20は、図6に示すように、複数本の埋設杭の埋設位置を埋設時の配置状態で画面に表示することができる。モバイルコンピュータ20の画面には、杭番と施工状況(完了または未施工または途中)と施工順位とを表示した表や、登録ボタン及びクリアボタンなどの各種操作ボタンや、埋設杭の配置画面が表示される。その画面で、例えば登録したい埋設杭の埋設位置の杭番を施工順位に従ってまたは任意に選択し、登録ボタンを押すとともにその杭番に該当する配置画面上の埋設杭を押すと、登録したい埋設杭の埋設位置が確定する。また、その画面で、登録解除したい埋設杭の埋設位置の杭番を選択すると、その杭番に該当する配置画面上の埋設杭が点滅し、その後にクリアボタンを押すと、登録解除したい埋設杭の埋設位置が確定する。このようにして登録または登録解除したい埋設杭の埋設位置を選択した後に、その登録を確定すると、配置画面上の埋設杭の表示が埋設状況とともに「未施工」から「完了」に変化する。完了したものは、未施工のものに設定することはできない。埋設途中ものは配置画面上の埋設杭の表示が「途中」と表示される。
【0034】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 初回の施工における手動操作で現実の地盤状況に合った施工パターンを記憶した後に、その施工パターンに基づいて二回目以降の自動施工を行なうので、複数回の施工において品質の良い柱状改良杭を安定して設けることができる。その際、ロッド8の攪拌ヘッド8aの深度と回転向きと回転数、並びに、注入ポンプ15によるセメントミルクの注入量の検出により、二回目以降の施工において初回の施工における駆動手段2及び供給手段12の施工パターンを容易に再現することができる。
【0035】
(2) 初回の施工におけるロッド8の攪拌ヘッド8aの深度及び回転向きに関する実際動作軌跡に対し近似する複数のポイントを登録してそれらのポイントを互いに結んで単純化した動作パターンにより、二回目以降の施工の際に、初回の施工の際に記憶した所定の手動操作データ(深度、回転向き、回転数、注入量)に追従させ易くして、初回の施工時の施工パターンを容易に再現することができる。
【0036】
(3) 施工者が必要に応じて画面を見るだけでミキサー14内のセメントミルク残量を容易に確認することができるので、施工者がミキサー14内をわざわざ覗き込むことなく、必要なセメントミルクの管理を画面だけで的確に行なうことができる。
【0037】
(4) 地盤改良機において複数の施工杭の施工位置を施工時の配置状態で表示した画面を施工者が見るだけで施工状況(完了または未施工)を容易に確認し、杭埋設機において複数の埋設杭の施工位置を施工時の配置状態で表示した画面を施工者が見るだけで施工状況(完了または未施工または途中)を容易に確認して、施工ミスや施工忘れを防止することができる。また、杭埋設機においては、施工状況(完了または未施工または途中)を確認し易いため、複数本の埋設杭を順次互いに繋いで地盤に打ち込む際に、その画面で施工状況を確認しながら杭を繋ぐ作業時に他の杭を埋設する作業を行なうことができる。
【0038】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 前述した実施形態においては、手動操作による初回の施工で、ロッド8の攪拌ヘッド8aの深度と回転向きと回転数、並びに、注入ポンプ15によるセメントミルクの注入量を検出して、それらを二回目以降の自動施工の際に利用しているが、少なくともその深度と回転向きを二回目以降の自動施工の際に利用するだけでもよい。
【0039】
・ 駆動モータ7の回転向き(正回転向きと逆回転向き)を検出したり回転数を検出したりする検出器9としては、ロータリーエンコーダを利用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
2…駆動手段、8…ロッド、8a…攪拌ヘッド、9…センシング手段としての検出器、10…センシング手段としての検出器、12…供給手段、14…ミキサー、15…注入ポンプ、17…センシング手段としての流量計、20…処理手段としてのモバイルコンピュータ、23…処理手段としてのメインコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削する攪拌ヘッドを有するロッドを回転させるとともに昇降させる駆動手段と、このロッドを通して掘削孔内にセメントミルクを注入する供給手段とを備え、地盤に複数の掘削孔を順次掘削して施工する際にこのセメントミルクを掘削孔内で攪拌混合して地盤を改良する地盤改良機において、複数回の施工のうち、初回の施工を手動操作で行なう際に所定の手動操作データを検出するセンシング手段を前記駆動手段に設け、二回目以降の施工の際に、前記センシング手段により検出して記憶した所定の手動操作データに基づき、前記駆動手段を駆動制御する処理手段を設けたことを特徴とする地盤改良機の制御装置。
【請求項2】
前記駆動手段のセンシング手段は、所定の手動操作データとして、ロッドの攪拌ヘッドの深度及び回転向きを検出することを特徴とする請求項1に記載の地盤改良機の制御装置。
【請求項3】
前記駆動手段のセンシング手段は、所定の手動操作データとして、ロッドの攪拌ヘッドの回転数を検出することを特徴とする請求項2に記載の地盤改良機の制御装置。
【請求項4】
初回の施工を手動操作で行なう際に所定の手動操作データを検出するセンシング手段を前記供給手段に設け、二回目以降の施工の際に、前記センシング手段により検出して記憶した所定の手動操作データに基づき、前記供給手段を駆動制御する処理手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項に記載の地盤改良機の制御装置。
【請求項5】
前記供給手段のセンシング手段は、所定の手動操作データとして、セメントミルクの注入量を検出することを特徴とする請求項4に記載の地盤改良機の制御装置。
【請求項6】
前記処理手段は、二回目以降の施工の際に、初回の施工の際に記憶した所定の手動操作データに追従して、前記駆動手段を駆動制御することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載の地盤改良機の制御装置。
【請求項7】
前記処理手段は、前記駆動手段における深度及び回転向きに関する実際動作軌跡に対し近似する複数のポイントを登録してそれらのポイントを互いに結んだ動作パターンを所定の手動操作データとして、前記駆動手段を駆動制御することを特徴とする請求項6に記載の地盤改良機の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate