説明

地盤改良用の掘削攪拌ヘッド

【課題】 軟弱地盤を強化する為に地盤を掘削しながら地盤改良材を投入して土壌と攪拌することが出来る掘削攪拌ヘッドの提供。
【解決手段】 主軸1の下端から掘削ツメ6を下方へ延ばし、そして主軸下端には掘削翼2a,2bを外方向へ延ばし、その上方には下側攪拌翼3a,3bを主軸に対して傾斜して取付け、そして主軸上端部には上側攪拌翼4a,4b,4cを主軸1に対して傾斜して取付け、さらに下側攪拌翼と上側攪拌翼の間には主軸と平行な共回り防止翼5a,5bを該主軸1に回転可能に軸支し、該共回り防止翼5a,5bの長さを掘削翼2a,2b及び攪拌翼3,4より長くしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟弱地盤を固めて良質で丈夫な地盤に改良する為に、地盤とセメント系固化材(地盤改良材)を攪拌混合する為の掘削攪拌装置に装着される掘削攪拌ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一見、同じように見える平らな宅地でも、場所によってその地盤構造が大きく違っている。仮に軟弱な地盤の場合、何の対策も立てないで家を建てると不均等に沈下する不同沈下が発生する。その結果、外壁、内壁に亀裂が走ったり、ドアや窓の開閉が困難に成ったり、時には家屋自体が傾いてしまう。そこで、土地に家やその他の構造物を構築する場合、先ずその土地の地盤調査が行なわれる。この地盤調査にも色々な方法が知られているが、手軽な手法としてはスウェーデン式サウンディング試験が一般的に用いられている。
【0003】
ところで、このスウェーデン式サウンディング試験とは、
(1)ロッド(鉄製の棒)の先端に円錐形をねじった矢尻のようなスクリューポイントを取り付け、それを地面に垂直に突き立てる。
(2)ロッドには、自由に上下させたり途中で固定も出来る受け皿(クランプ、重さ5kg)を通し、さらに上端には水平に取っ手(ハンドル)を取り付けてある。
(3)クランプに円筒形のおもり(10kg重り2枚と25kgの重り3枚)を1枚ずつ静かに載せていき、1枚載せるたびに、ロッドが沈み込むかどうかを観察し、記録する。
(4)全ての重りを載せるとクランプの重さと合計して100kgになるが、その際、ロッドの沈み込みがなく静止している場合には、ハンドルを回転させ、先端のスクリューポイントで土を掘進しながら強制的にロッドを貫入させ、25cm貫入させるのにハンドルを何回転させたかを記録する。
(注)ロッドの長さは1mなので、貫入させるに従い、重りの受け皿となるクランプが地面に着いてしまい、それ以上貫入させることができなくなる。そこで、重りとハンドルを一旦外し、新たにロッドを継ぎ足した後、ハンドルを装着し直した上でクランプを所定の高さまで引き上げて、再度、(3)と(4)の作業を繰り返す。
(注)ハンドルの回転数は、180度(半回転)を1回とカウントする。すなわち、360度回せば2回となるので、記録は半回転数という表記になる。
(5)規定の深度までの貫入が記録できた時点で測定を終了し、ロッドを引き抜く。
(6)ロッドを引き抜いた後の、直径が3cmほどの測定孔を利用し、コンベックスで孔内の水位を計測・記録する。孔が土で目詰まりしている時には「測定孔崩壊の為水位不明」となる。
【0004】
ところで、上記スウェーデン式サウンディング試験の結果、軟弱な地盤であると判断されたならば、この軟弱地盤を固めて建物を構築するに適した地盤に改良しなくてはならない。本発明はこの軟弱地盤を固める場合に用いる地盤改良用の掘削攪拌装置に装着する掘削攪拌ヘッドであるが、従来にも掘削攪拌ヘッドに関する技術は存在している。
【0005】
特開平7−197443号に係る「地盤改良用の掘削攪拌方法およびその掘削攪拌装置」は、攪拌翼を回転させる掘削軸に設けた第二攪拌翼が攪拌翼と伴に回転する時に、この第二攪拌翼へ回動自在に設けた複数の鉛直羽根を、共回り防止翼および疑似歯によって強制的に回動させて、攪拌翼と第二攪拌翼の各鉛直羽根とで混合攪拌を三次元に行い、きわめて均一な攪拌混合を可能とする。また、共回り防止翼と鉛直羽根付きの第二攪拌翼の組合せで、きわめて均一な攪拌混合を可能とする。
【0006】
しかし、この掘削攪拌装置は攪拌翼が数多く取付けられている割には攪拌能力が低く、地盤改良を行なう場合の作業性が良くない。
【特許文献1】特開平7−197443号に係る「地盤改良用の掘削攪拌方法およびその掘削攪拌装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の掘削攪拌装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、効率よく掘削攪拌を行なって軟弱地盤の改良を可能とする掘削攪拌ヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は軟弱地盤を固めて良質で強固な地盤に改良する為に、地盤とセメント系固化材(地盤改良材)を攪拌混合する為の掘削攪拌ヘッドであり、この掘削攪拌ヘッドは掘削攪拌装置に装着される。ところで、主軸の先端(下端)には外方向へ延びる掘削翼が設けられ、掘削翼は上記主軸に対して傾斜し、そして掘削翼には複数の平ツメが取着されている。掘削翼の上方には複数枚の下側攪拌翼が主軸に対して傾斜して取付けられ、外方向へ延びている。
【0009】
そして、下側攪拌翼の上方には複数枚の共回り防止翼が主軸と平行を成して外方向へ延びている。さらにその上方には複数枚の上側攪拌翼が取付けられて外方向へ延びている。さらに主軸先端には下方へ延びる掘削ツメが取着されている。このように、該主軸にはその下端から掘削翼、下側攪拌翼、共回り防止翼、そして上側攪拌翼が取付けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る攪拌ヘッドは主軸の下端に掘削翼が取付けられていることで、該掘削翼の回転によって掘削攪拌ヘッドは地盤を掘削して降下することが出来る。そして、主軸から外方向へ延びる攪拌翼によって土壌と掘削された穴に投入された地盤改良材は攪拌される。そして、攪拌翼は共回り防止翼を間にして上下位置に取付けられることで、攪拌能力が向上して短時間で均一な攪拌を効率よく行うことが出来る。
【0011】
主軸には上下攪拌翼の間に共回り防止翼が取付けられることで、攪拌が効率よく行うことが出来ると共に、均一な攪拌が可能と成る。すなわち、共回り防止翼は主軸が回転しても回転することなく降下し、下側攪拌翼と上側攪拌翼によって投入された地盤改良材が掘削した地盤の土壌と共に混合されるが、主軸に平行を成して配置される共回り防止翼が上下攪拌翼の間に存在することで攪拌効率は大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る掘削攪拌ヘッドの正面図。
【図2】本発明に係る掘削攪拌ヘッドの側面図。
【図3】本発明に係る掘削攪拌ヘッドを使用して掘削攪拌する工程。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1、図2は本発明に係る掘削攪拌ヘッドを示す実施例であり、正面図と側面図をそれぞれ表している。同図の1は主軸、2は掘削翼、3は下側攪拌翼、4は上側攪拌翼、5は共回り防止翼、6は掘削ツメをそれぞれ示している。主軸1の先端(下端)に取着している上記掘削ツメ6は概略台形状をした一定厚さの板材であり、主軸1の中心から下方へ延びている。
【0014】
上記掘削翼2a,2bは主軸1の下端に取着されて両外方向へ延び、そして主軸1に対して45°に傾斜している。しかも、掘削翼2aの傾斜方向と掘削翼2bの傾斜方向は互いに反対と成っている。そして、一定厚さの掘削翼2a,2bには平ツメ7a,7a・・・、7b,7b・・・が固定され、これら平ツメ7a,7a・・・、7b,7b・・・は掘削翼2a,2bより下方へ大きく延びている。
【0015】
従って、主軸1が回転するならば、上記掘削ツメ6及び掘削翼2a,2bが回転し、主軸1に上方から負荷をかけるならば、該主軸1の回転と共に地盤を掘削して掘り下げられる。そして、該掘削翼2a,2bの上方には2枚の下側攪拌翼3a,3bが取付けられ、両攪拌翼3a,3bは掘削翼2a,2bに対して垂直を成して外方向へ延びている。しかも、下側攪拌翼3a,3bは主軸1に対して傾斜している。
【0016】
攪拌翼3a,3bの傾斜角度は特に限定はしないが、一般的は30°前後と成っており、各攪拌翼3a,3bの傾斜方向は反対向きと成っている。さらに、主軸1の上端部には3枚の上側攪拌翼4a,4b,4cが等間隔(120°)をおいて外方向へ延びている。そして、上側攪拌翼4a,4b,4cの傾斜方向は、主軸1が回転することで土壌と掘削して降下するように傾斜している。
【0017】
さらに、下側攪拌翼3a,3bと上側攪拌翼4a,4b,4cの間には2枚の共回り防止翼5a,5bが外方向へ延びている。細長い長方形をした共回り防止翼5a,5bは主軸1に嵌って回転可能な軸受け8に固定され、該軸受け8の外周に固定されて外方向へ延び、しかも共回り防止翼5a,5bは主軸1と平行を成している。
【0018】
ここで、共回り防止翼5a,5bは上記掘削翼2a,2b、下側攪拌翼3a,3b、上側攪拌翼4a,4b,4cより長く成っている。そして、主軸1には下受け9と上受け10が設けられ、軸受け8はこれら上下受け9,10に挟まれて軸支されている。
【0019】
ところで、本発明に係る上記掘削攪拌ヘッドは掘削装置の回転駆動軸に連結され、上方から荷重を加えて回転する。従って、掘削攪拌ヘッドの掘削ツメ6及び掘削翼2a,2bが回転して地盤は掘削される。そして、主軸1の先端部からセメント系の地盤改良材(例えば、フライアッシュにセメントミルクを混合したもの)を削孔内に注入しつつ掘進し、所定の深度に達したならば下側攪拌翼3a,3b、及び上側攪拌翼4a,4b,4cを逆回転させながら主軸1を引き抜き、土壌と地盤改良材とからなる改良土を攪拌混合することが出来る。
【0020】
図3は本発明に係る掘削攪拌ヘッドを使用して軟弱な地盤を改良する作業工程を示す具体例である。
(a)掘削攪拌ヘッドを所定の位置に配置した場合であり、主軸1は掘削攪拌装置に取付けられて回転駆動することが出来る。
(b)主軸1の下端には図1に示すように掘削ツメ6と掘削翼2a,2bが取付けられ、上方から負荷を加えて主軸1が回転するならば、地盤を掘削することが出来る。そして、掘削攪拌ヘッドを回転すると共に地盤改良材を投入するならば、該地盤改良材は土壌と攪拌混合される。
(c)本発明の掘削攪拌ヘッドが地盤を掘削して所定の深さまで掘進した場合を示している。地盤改良材を投入しながら掘削攪拌ヘッドが回転・掘進することで土壌と地盤改良材が互いに混合した円柱体9が形成される。
本発明の掘削攪拌ヘッドには主軸1の最下端に掘削ツメ6と掘削翼2a,2bを有し、そして下側攪拌翼3a,3bと上側攪拌翼4a,4b,4cを備えて、土壌と地盤改良材を均一に攪拌することが出来る。しかも、本発明の掘削攪拌ヘッドでは、上記下側攪拌翼3a,3bと上側攪拌翼4a,4b,4cとの間に回転しない共回り防止翼5a,5bが存在することで、土壌と地盤改良材はより均一に効率よく攪拌される。ここで、共回り防止翼5a,5bは下側攪拌翼3a,3b及び上側攪拌翼4a,4b,4cより長い為に、これら攪拌翼と共に回転することはない。
(d)所定の深さまで掘削し、土壌と地盤改良材が混合したところで、掘削攪拌ヘッドを引上げた場合である。このように、土壌と地盤改良材が混合し、硬化することで頑丈な円柱体9が出来上がる。
【0021】
ところで、前記図1、図2に示す掘削攪拌ヘッドでは、2枚の下側攪拌翼3a,3bと3枚の上側攪拌翼4a,4b,4cを備えているが、この攪拌翼の枚数を限定するものではない。しかし、多くの掘削攪拌テストの結果、下側攪拌翼の枚数を上側攪拌翼の枚数より少なくする方がより均一に攪拌することが可能と成る。そして、下側攪拌翼と上側攪拌翼の間に長さを長くした共回り防止翼を配置することで攪拌効率が大きく向上する。
【符号の説明】
【0022】
1 主軸
2 掘削翼
3 下側攪拌翼
4 上側攪拌翼
5 共回り防止翼
6 掘削ツメ
7 平ツメ
8 軸受け
9 下受け
10 上受け
11 円柱体




【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤を強化する為に地盤を掘削しながら地盤改良材を投入して土壌と攪拌することが出来る掘削攪拌ヘッドにおいて、主軸の下端から掘削ツメを下方へ延ばし、そして主軸下端には掘削翼を外方向へ延ばし、その上方には複数枚の下側攪拌翼を主軸に対して傾斜して取付け、そして主軸上端部には上側攪拌翼を主軸に対して傾斜して取付け、さらに下側攪拌翼と上側攪拌翼の間には主軸と平行な共回り防止翼を該主軸に回転可能に軸支し、該共回り防止翼の長さを掘削翼及び攪拌翼より長くしたことを特徴とする地盤改良用の掘削攪拌ヘッド。
【請求項2】
上記下側攪拌翼を2枚とし、上側攪拌翼を3枚とした請求項1記載の地盤改良用の掘削攪拌ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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