説明

地盤補強方法、地盤補強構造

【課題】地盤に形成された孔内に挿入された袋体内にグラウトを充填することにより、地盤を補強する方法において、地盤が不安定な状態になることがないようにする。
【解決手段】地盤100に孔120を形成するとともに、形成した孔120内にセメント・ベントナイト溶液60を充填しておき、孔120内に延びるように袋体20を配置し、袋体20内にグラウト30を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を削孔して孔を形成し、この孔内に袋体を挿入し、袋体内にグラウトを充填することにより地盤を補強する方法及びこの方法により構築された補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤を補強する方法として、地盤を削孔して孔を形成し、この孔内に袋体を配置し、袋体内にグラウトを充填する方法が用いられている。このような方法では、地盤を削孔してから袋体内グラウトが充填されるまでの間、孔内に空隙が生じてしまうため、地盤が不安定な状態となってしまう。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、地盤を削孔して孔を形成するとともに形成された孔内に保護管を配置し、この保護管内に袋体を挿入し、この袋体内にグラウトを充填した後、保護管を除去する方法が記載されている。かかる方法によれば、保護管が孔内に配置されている間は、保護管により地盤が支持され、安定な状態が保たれる。
【特許文献1】特開平11―181752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載の方法では、保護管が孔内に残った状態で袋体に完全にグラウトを充填してしまうと、地盤と袋体に挟まれて保護管を取り除くことが困難になってしまう。そこで、保護管内面と袋体とが密着しない程度にグラウトを充填し、保護管を取り除いた後、再度、袋体内にグラウトを充填している。このため、保護管を除去してから再度袋体内にグラウトを充填するまでの間、袋体と孔の内周面の間に空隙が形成されることとなり、この間、地盤が不安定になってしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、地盤に形成された孔内に挿入された袋体内に硬化性の充填材を充填することにより、地盤を補強する方法において、地盤が不安定な状態になることがないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の地盤補強方法は、地盤を補強する方法であって、前記地盤に孔を形成するとともに、前記形成した孔内に安定液を充填する削孔ステップと、前記孔内にその軸方向に延びるように袋体を配置する袋体配置ステップと、前記袋体内に硬化性の充填材を充填する充填ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の地盤補強方法において、前記削孔ステップと、前記袋体配置ステップとを、並行して行ってもよい。また、前記削孔ステップは、小径の孔を削孔する第1ステップと、前記孔を拡径手段により拡径して孔を形成する第2ステップと、からなり、前記第2ステップと前記袋体配置ステップとを並行して行い、前記袋体配置ステップでは、前記第2ステップにおける前記拡径手段に前記袋体の端部を取り付けておくことで、前記孔内に袋体を配置してもよい。
【0008】
また、前記充填ステップは、前記袋体内に所定の圧力に加圧しながら充填材を充填する第1の充填ステップと、前記所定の圧力より高い圧力に加圧しながら充填材を充填する第2の充填ステップとからなるものであってもよい。この際、第1の充填ステップでは、端部が前記袋体の先端部まで到達し、前記袋体内に複数箇所において開口する注入パイプを用いて前記充填材を充填してもよく、第2の充填ステップでも、端部が前記袋体の先端部まで到達し、前記袋体内に複数箇所において開口する注入パイプを用いて前記充填材を充填してもよい。
また、前記安定液は、ベントナイト溶液又はセメント・ベントナイト溶液であってもよい。
また、本発明の地盤補強構造は、上記の地盤補強方法により構築されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地盤に孔を形成した後、袋体に充填材が充填されて膨張し、袋体が孔の内周面に密着するまで、孔内に安定液が充填されており、この安定液が孔の内壁を支持するため、地盤が不安定になることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の地盤の補強方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の地盤補強方法により構築された補強構造10の一例を示す鉛直断面図である。同図の例では、地盤100には盛土50が施されており、盛土50の上部に紙面に対して垂直方向に延びるように線路51が敷設されている。地盤100は例えば、軟弱地盤などの支持力が比較的に低い土砂からなる。また、地盤100には線路51の延びる方向に並んで複数の孔120が掘削されている。これら孔120の一端は地表面に開口しており、他端は線路51に沿って設けられた溝110内に開口している。そして、地盤補強構造10は、これら孔120内に袋体20を挿入し、この袋体20内にその表面が孔120の内面と密着するまでグラウト30を充填し、充填したグラウト30が硬化することによってなるものである。かかる地盤補強構造10によれば、硬化したグラウト30が地盤100を支持することとなり、地盤100の支持力を向上することができる。なお、グラウト30内に適宜芯材などの補強部材を埋設する構成としてもよい。
【0011】
袋体10は、一端が閉塞されるとともに他端が開口する筒状に形成された可撓性を有する部材であって、例えば、柔軟性及び耐磨耗性を有する麻や合成繊維等からなる織布又は不織布に、アラミド糸や炭素繊維等の引張強度の高い補強繊維を混入したものなどを用いることができる。また、袋体20は、水分が染み出しにくいように水密加工が施されており、グラウト30を低い注入圧(例えば、0.1〜0.3MPa)で充填する際には、外部に水分が染み出すことがなく、グラウト30を高い注入圧(例えば、0.5MPa)で充填する際には、外部にグラウトに含まれる水分が染み出すような性質を有する。
【0012】
以下、上記の地盤補強構造10の構築方法を説明する。
図2〜図8は、本実施形態の地盤補強構造10の構築方法を説明するための鉛直方向断面図である。
まず、図2に示すように、盛土50の脇に、盛土50に沿って溝110を掘削する。
【0013】
次に、図3に示すように、ドリルパイプ210の先端に取り付けられた削孔ビット200により地盤100を削孔して小径の孔120を形成する。削孔作業は、盛土50を挟んで溝110の反対側の地表から、削孔方向を盛土50の下方に向けて地盤100を掘り進み、盛土50の下方まで到達した後、削孔方向を水平方向に変更し、孔120が溝110内に到達するまで掘り進むことにより行う。
【0014】
次に、孔120が溝110まで貫通したら、図4に示すように、ドリルパイプ210の先端に取り付けられた削孔ビット200を取り外し、ドリルパイプ210の先端に拡径手段としてのリーマー220を取り付ける。そして、リーマー220の後部に袋体20の先端部(閉塞側の端部)を接続する。なお、リーマー220にはドリルパイプ210を通して、セメント・ベントナイト溶液(以下、CB溶液という)が供給されており、この供給されたCB溶液を孔内に排出することができる。
【0015】
次に、図5に示すように、リーマー220により孔120を拡径しながら、拡径した孔120内にリーマー220からCB溶液60を充填する。この際、孔120の溝110側の端部には、孔120を塞ぐような閉塞部材61を取り付け、孔120内に充填したCB溶液60が溝110内に流出しないようにする。これにより、孔120内にCB溶液60が充填された状態が維持されるため、地盤100が不安定になることを防止できる。
【0016】
そして、リーマー220が溝110と反対側の地表面まで到達し、孔120の拡径作業が完了したら、袋体20をリーマー220から取り外し、リーマー220及びドリルパイプ210を撤去し、図6に示すように、袋体20の突出部20Aにグラウト注入パイプ230を接続する。
【0017】
次に、図7に示すように、グラウト注入パイプ230により突出部20Aに注入圧を袋体20から水分が浸み出さない程度(例えば、0.1〜0.3MPa)として袋体20内にグラウト30を充填する(以下、一次充填という)。袋体20にグラウト30を充填することにより、袋体20は膨張し、孔120の内周面と密着することとなる。また、袋体20内にグラウト30を充填することにより、CB溶液60は、孔120の外部へと押し出される。CB溶液60が孔120の外部へ排出されても、上記のように膨張した袋体20が孔120の内周面と密着し、孔120の内周面を支持するため、地盤100が安定な状態に保たれる。
【0018】
次に、図8に示すように、グラウト注入パイプ230により袋体20内に注入圧を袋体20から水分が浸み出す程度(例えば、0.5MPa程度)として袋体20内にグラウト30を充填する(以下、二次充填という)。これにより、グラウト30に含まれる水分が、袋体20から外部に染み出すため、グラウト30の強度が向上する。
そして、袋体20内に充填したグラウト30が硬化することで、地盤補強構造10の構築が完了する。
【0019】
本実施形態によれば、孔120を拡径した後、袋体20にグラウト30が充填されて膨張し、袋体20が孔120の内周面に密着するまで、孔120内にCB溶液60が充填されており、このCB溶液60が孔120の内壁を支持するため、孔120が崩壊するのを防止することができる。
【0020】
また、孔120内にCB溶液60を充填することにより、袋体20の表面に付着したCB溶液60が地盤100と一体となって硬化するため、袋体20と地盤100との付着強度が向上される。
【0021】
また、袋体20として、グラウト30を注入圧を低い圧力(例えば、0.1〜0.3MPa)として充填する際には、外部に水が染み出すことがなく、注入圧を高い圧力(例えば、0.5MPa)として充填する際には、外部に水が染み出すようなものを用いることで、二次充填の際にグラウト30に含まれる水分が排出され、グラウト30の硬度を向上することができる。なお、上記の実施形態では、袋体20に水密加工を施すことに代えて、グラウト材に水分の分離を防ぐ混和剤を混入することにより、一次充填の際に外部に水が染み出すことがなく、二次充填の際に水分が排出されるようにしてもよい。
【0022】
なお、本実施形態では、孔120内にCB溶液60を充填するものとしたが、これに限らず、孔120内にベントナイトなどの安定液を充填してもよい。
【0023】
また、上記の実施形態では、一の注入パイプ230により一次充填及び二次充填を行うものとしたが、これに限らず、例えば、図9に示すように、保護管60を孔120内に引き込む際に、袋体20内に開口するように第1の注入パイプ230を設けるとともに、端部が袋体20の先端部まで到達し、袋体20内の複数箇所において開口するように第2の注入パイプ240を設けておき、二次充填を第2の注入パイプ240により行ってもよい。この場合、第2の注入パイプ240は袋体20内の複数箇所において開口しているため、この第2の注入パイプ240を通してグラウト60を充填することにより、袋体20内に均等な圧力でグラウト60を充填することができる。
【0024】
さらに、図9を参照して説明した実施形態では、一次充填は第1の注入パイプ230により行い、保護管60を撤去した後、第2の注入パイプ240により二次充填を行うこととしたが、これに限らず、図10に示めすように、第2の注入パイプ240により一次充填及び二次充填を行うこととしてもよい。すなわち、リーマー220により孔120を拡径しながら、孔120内に袋体20を引き込む際に、この袋体20内に先端まで延びるように第2の注入パイプ240を配置しておく。そして、この第2の注入パイプ240を通して袋体20内にグラウト30を充填する。第2の注入パイプ240内を通過する際に、グラウト30は摩擦抵抗を受けるため、グラウト30の充填圧は第2の注入パイプ240を挿入している側が大きく、先端に向かって徐々に小さくなる。このため、第2の注入パイプ240を挿入している側から袋体20が膨張することとなり、CB溶液60が孔120の外部へ排出されることとなる。
【0025】
また、上記の実施形態では、削孔ロッド200により小径の孔120を削孔した後、リーマー220により孔120を拡径し、大径の孔120を形成するものとしたが、必ずしも、小径の孔120を拡径する必要はなく、大径の孔120を削孔してもよい。なお、この場合には、削工ロッド200により孔120を削孔しながら、孔120内に安定液を充填し、さらに、袋体20を引き込む必要がある。
【0026】
また、上記の実施形態では、リーマー220に袋体20の端部を接続しておくことで、リーマー220により孔120を拡径しながら、袋体20を孔120内に引き込むものとしたが、これに限らず、リーマー220により孔120を拡径した後、別途袋体20を孔120内に引き込むものとしてもよい。
【0027】
また、上記の実施形態では、一端が地表面に他端が溝110内に開口する孔120を形成し、この孔120内に補強構造100を構築するものとしたが、これに限らず、両端が地表面に開口する孔や、両端が溝内に開口する孔内に補強構造を構築してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の地盤補強方法により構築された補強構造を示す鉛直断面図である。
【図2】本実施形態の地盤補強構造の構築方法を説明するための鉛直方向断面図(その1)である。
【図3】本実施形態の地盤補強構造の構築方法を説明するための鉛直方向断面図(その2)である。
【図4】本実施形態の地盤補強構造の構築方法を説明するための鉛直方向断面図(その3)である。
【図5】本実施形態の地盤補強構造の構築方法を説明するための鉛直方向断面図(その4)である。
【図6】本実施形態の地盤補強構造の構築方法を説明するための鉛直方向断面図(その5)である。
【図7】本実施形態の地盤補強構造の構築方法を説明するための鉛直方向断面図(その6)である。
【図8】本実施形態の地盤補強構造の構築方法を説明するための鉛直方向断面図(その7)である。
【図9】2本の注入パイプを用いてグラウトの充填を行う方法を説明するための鉛直断面図である。
【図10】第2の注入パイプを用いてグラウトの充填を行う方法を説明するための鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 補強構造
20 袋体
30 グラウト
50 盛土
51 線路
60 セメント・ベントナイト溶液
100 地盤
110 溝
120 孔
200 削孔ビッド
210 ドリルパイプ
220 リーマー
230 (第1の)注入パイプ
240 (第2の)注入パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を補強する方法であって、
前記地盤に孔を形成するとともに、前記形成した孔内に安定液を充填する削孔ステップと、
前記孔内にその軸方向に延びるように袋体を配置する袋体配置ステップと、
前記袋体内に硬化性の充填材を充填する充填ステップと、
を備えることを特徴とする地盤補強方法。
【請求項2】
前記削孔ステップと、前記袋体配置ステップとを、並行して行うことを特徴とする請求項1記載の地盤補強方法。
【請求項3】
前記削孔ステップは、
小径の孔を削孔する第1ステップと、
前記孔を拡径手段により拡径して孔を形成する第2ステップと、からなり、
前記第2ステップと前記袋体配置ステップとを並行して行い、
前記袋体配置ステップでは、前記第2ステップにおける前記拡径手段に前記袋体の端部を取り付けておくことで、前記孔内に袋体を配置することを特徴とする請求項2記載の地盤の補強方法。
【請求項4】
前記充填ステップは、前記袋体内に所定の圧力に加圧しながら充填材を充填する第1の充填ステップと、前記所定の圧力より高い圧力に加圧しながら充填材を充填する第2の充填ステップとからなることを特徴とする請求項1から3のうち何れか1項に記載の地盤補強方法。
【請求項5】
第1の充填ステップでは、端部が前記袋体の先端部まで到達し、前記袋体内に複数箇所において開口する注入パイプを用いて前記充填材を充填することを特徴とする請求項4記載の地盤補強方法。
【請求項6】
第2の充填ステップでは、端部が前記袋体の先端部まで到達し、前記袋体内に複数箇所において開口する注入パイプを用いて前記充填材を充填することを特徴とする請求項4又は5記載の地盤補強方法。
【請求項7】
前記安定液は、ベントナイト溶液又はセメント・ベントナイト溶液であることを特徴とする請求項1から6のうち何れか1項に記載の地盤補強方法。
【請求項8】
請求項1から7のうち何れか1項に記載の地盤補強方法により構築されたことを特徴とする地盤補強構造。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−249826(P2009−249826A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95352(P2008−95352)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(508100055)日本ノーディッグテクノロジー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】