説明

地絡継電器試験装置

【課題】高圧開閉器をトリップさせることなく所定の試験電流を設定することができる地絡継電器試験装置を提供する。
【解決手段】地絡継電器101が動作しない程度の予備電流を通電させる予備電圧を、地絡継電器101を含む外部回路100と試験回路200を含む模擬回路に予備電圧出力手段2が各々印加して実負荷電流値及び模擬電流値を電流検出手段4が検出し、この実負荷電流値及び模擬電流値の比率と試験電流とに基づいて試験動作前に地絡継電器101が動作する電流に相当する模擬動作電流を模擬動作電流演算手段5が演算し、この模擬動作電流を模擬回路に手動で操作手段9を介して試験電流調整手段8が調整して通電する際に、表示制御手段6の表示制御により表示手段7に表示される設定電流の値に基づき前記模擬動作電流で地絡継電器101の各動作の予備試験を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡検出機能付き高圧開閉器と組み合わせて使用する地絡継電器の動作試験をおこなう地絡継電器試験装置に関し、特に動作試験の試験電流を手動で設定する際に、継電器を動作させないで試験電流値調整を簡易且つ確実に実行できる地絡継電器試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地絡継電器試験装置は、手動式で試験電圧、試験電流、電圧に対する電流位相の調整を行う場合、パネル面に設けた表示の表示値を見ながら、同パネル面に設けた試験電圧発生回路、及び試験電流発生回路の増幅率調整用ボリュームのつまみを手動で調整して行う。
【0003】
この場合従来の試験装置は、前記試験電流を行う場合、高圧開閉器と地絡電器を接続する配線に試験電流を直接流しながら調整し、設定する方法が一般的であった。
また、直接配線に流さずに試験電流を設定する方法としては特開平11−295369号のように装置内部の定電流回路で設定した電流を外部回路に流す方法があった。
【特許文献1】特開平11−295369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の地絡継電器試験装置は、試験電流の設定を行う場合に、実際に高圧開閉器と地絡継電器を接続する配線に試験電流を直接流しながら調整する必要がある。この場合、各種試験の電流設定条件は地絡継電器の動作電流設定値より上限にあるため、動作電流設定値を上回る電流を流しながら試験電流を設定する必要があり(たとえば、動作電圧試験を行う場合には試験電流は地絡継電器動作電流設定値の150%に設定、また、慣性動作試験では地絡継電器動作電流設定値の400%に設定する必要がある)、試験電流設定時に地絡継電器が動作してしまうという問題点があった。
【0005】
また、直接試験電流を配線に流さずに試験電流を設定する特許文献1の場合、定電流回路で設定した電流を外部回路に流すため、試験電流設定時に地絡継電器が動作することはないが、定電流回路の特性上定電流精度を確保するためには、試験電流発生回路及び試験電流出力回路等の弱電回路の一部が高圧開閉器と地絡継電器を接続する配線に直接接続されることになり、外部ノイズ等の影響を直に受けることとなって回路破損等の懸念があった。即ち、前記定電流回路による試験電流の発生は、負荷のインピーダンスの影響を受けずに定電流を流すためには、出力電流を常に検出監視し、検出値が設定値と同じになるようにフィードバック制御が必要であるが、定電流精度を確保するためには、高速のフィードバック制御が必要なため、信号伝達遅延が発生したり、信号レベルがシフトしたりする絶縁トランス等を設けることは困難という課題を有する。
【0006】
さらに、地絡検出機能付き高圧開閉器と組み合わせて使用する地絡継電器は、年次点検等において動作試験が実施されているが、保護機能の性格上ほとんど動作することはなく、常に監視状態で待機状態にあるため、試験1回目の動作値が重要となる。このような背景があるため、試験電流の設定については、各種試験の電流設定条件に試験電流を設定する場合に地絡継電器が動作しないようにすることが望ましい。また、高圧開閉器と地絡継電器は少なくとも10m、長い場合は300m離れてケーブルにて接続されており、このような環境で使用する試験装置はノイズ等の影響も受けやすいため試験装置出力は外部回路と絶縁することが望ましいが、この絶縁回路が加わることで正確な地絡継電器の試験を行うことができないという課題を有する。
【0007】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、高圧開閉器をトリップさせることなく所定の試験電流を設定することができる地絡継電器試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る地絡継電器試験装置は、高圧開閉器に設置される地絡継電器の動作時間測定、位相特性測定、慣性不動作測定のうち少なくとも一つの動作試験を、予め定められた試験電流の出力値に基づいて手動で実行する試験回路を備える地絡継電器試験装置において、前記地絡継電器が動作しない程度の予備電流を通電させる予備電圧出力手段と、前記試験回路から地絡継電器及び高圧開閉器までの回路のうち、地絡継電器から高圧開閉器までの負荷回路を除く部分で模擬回路を形成する模擬回路形成手段と、前記予備電圧を、負荷回路に印加すると共に、前記模擬回路に印加し、当該各試験電圧の印加により生じる各実負荷電流値と模擬電流値を検出する電流検出手段と、前記検出された実負荷電流値及び模擬電流値の比率と前記試験電流とに基づいて設定電流を出力するため、試験動作前に地絡継電器が動作する電流に相当する模擬動作電流を演算する模擬動作電流演算手段と、 前記模擬回路に通電する模擬動作電流の調整に伴って前記比率に応じた設定電流の値の出力を制御する出力制御手段とを備えるものである。
【0009】
また、本発明に係る地絡継電器試験装置は、高圧開閉器に設置される地絡継電器の動作時間測定、位相特性測定、慣性不動作測定のうち少なくとも一つの動作試験を、予め定められた試験電流の出力値に基づいて手動で実行する地絡継電器試験装置において、前記地絡継電器が動作しない程度の予備電流を通電させる予備電圧出力手段と、予め既知の値の抵抗からなる模擬回路と、前記予備電圧を、負荷回路に印加すると共に、前記模擬回路に印加し、当該各試験電圧の印加により生じる各実負荷電流値と模擬電流値を検出する電流検出手段と、前記検出された実負荷電流値及び模擬電流値の比率と前記試験電流とに基づいて設定電流を前記表示手段に表示するため、試験動作前に地絡継電器が動作する電流に相当する模擬動作電流を演算する模擬動作電流演算手段と、前記模擬回路に模擬動作電流の調整に伴って前記比率に応じた設定電流の値の出力を制御する出力制御手段とを備えるものである。
【0010】
また、本発明に係る地絡継電器試験装置は必要に応じて、予備電圧を負荷回路に印加して生じる実負荷電流と予備電圧との位相差を検出する位相検出手段を備え、当該検出された位相差に基づいて地絡継電器の動作試験を行うものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る地絡継電器試験装置は、地絡継電器が動作しない程度の予備電流を通電させる予備電圧を、地絡継電器を含む負荷回路と試験回路を含む模擬回路に各々印加して実負荷電流値及び模擬電流値を検出し、この実負荷電流値及び模擬電流値の比率と試験電流とに基づいて試験動作前に地絡継電器が動作する電流に相当する模擬動作電流を演算し、この模擬動作電流を模擬回路に手動で調整して通電する際に、出力制御手段の制御により出力される設定電流の値に基づき前記模擬動作電流で地絡継電器の各動作の予備試験を行うようにしたので、予め定められる試験電流の出力値を基準として設定電流を負荷回路に実際に通電する地絡継電器の試験と同じ状態で模擬動作電流による試験回路の予備試験を行えることとなり、極めて低頻度で発生する地絡継電器の事故検出の動作試験を予め1回目の動作値を確認して検出精度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る地絡継電器試験装置は、予備電圧を負荷回路に印加して生じる実負荷電流と予備電圧との位相差を検出する位相検出手段を備え、当該検出された位相差に基づいて地絡継電器の動作試験を行うことから、特定の位相に固定した状態で実際の試験と同じ条件で予備試験を実行できることとなり、地絡継電器の動作時間の測定、位相特性の測定及び慣性不動作の測定をいずれも正確に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る地絡継電器試験装置を、図1ないし図4に基づいて説明する。この図1は本発明の実施形態に係る地絡継電器試験装置の全体ブロック構成図、図2は図1に記載の地絡継電器試験装置の詳細回路図及び操作パネル配置構成図、図3は図1及び図2に記載の地絡継電器試験装置の動作タイミングチャート、図4は図1に記載の地絡継電器試験装置における模擬動作電流演算手段の演算動作説明図である。
【0014】
前記各図において本実施形態に係る地絡継電器試験装置は、高圧開閉器102に接続される地絡継電器101の動作試験を、予め設定された試験電流を手動で調整して実行するものであって、前記地絡継電器101が動作しない程度の予備電流を通電させる予備電圧を出力する予備電圧出力手段2と、本装置の内部回路からなる試験回路200と、前記試験回路200から地絡継電器101及び高圧開閉器102までの回路のうち、地絡継電器101及び高圧開閉器102までの負荷となる外部回路100を除く試験回路200を分離する模擬回路形成手段3と、前記予備電圧を、外部回路100に印加すると共に、前記試験回路200を介して模擬回路形成手段3に印加し、この各試験電圧の印加により生じる各実負荷電流値と模擬電流値を検出する電流検出手段4と、前記検出された実負荷電流値及び模擬電流値の比率と前記試験電流とに基づいて試験電流を表示するため、試験動作前に地絡継電器が動作する電流に相当する模擬動作電流を演算する模擬動作電流演算手段5と、前記試験回路200に模擬動作電流を手動で調整して通電する際に、この調整に伴って前記比率に応じた試験電流の値の表示を制御する表示制御手段6と、この表示制御手段6の制御に基づいて試験電流の値を表示する表示手段7とを備える構成である。さらに、本実施形態に係る地絡継電器試験装置は、この表示手段7に表示された試験電流の値を参照して試験電流の値を手動で操作する操作手段9と、この手動による操作に基づいて試験回路200及び外部回路100へ試験電流を供給する試験電流供給手段1と、前記模擬回路形成手段3と外部回路100との間にヒューズ等からなる保護回路31とを備える構成である。
【0015】
前記試験回路200は、試験電流供給手段1及び予備電圧出力手段2からの出力を増幅する電流アンプ201と、この増幅された出力を絶縁して外部回路100へ出力する絶縁トランス202とを備える構成である。前記模擬回路形成手段3は、絶縁トランスからの出力線に介装され、a側ON状態で絶縁トランスからの出力線を導通状態とすると共に、b側ON状態で絶縁トランスからの出力線の両端を短絡状態とするスイッチで構成される。
また、前記表示手段7及び操作手段9は、操作パネル300に配設される。この操作パネル300は、電源スイッチ301とモード切換スイッチ302とが配設され、内部に試験電流調整手段8が収納される構成である。
【0016】
前記表示手段7は、外部回路100又は試験回路200へ出力するための、電圧の値を表示する出力電圧表示部71と、電流の値を表示する出力電流表示部72と、位相の値を表示する位相表示部73と、地絡継電器101の動作時間を表示する時間表示部74とを備える構成である。また、前記操作手段9は、試験電圧、試験電流及び位相の各値を調整・設定するための各手動ボリューム91、92、93を備える構成である。
【0017】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る地絡継電器試験装置の動作時間測定を試験電流設定モード及び試験モードに分けて説明する。
まず、試験電流設定モードにおいて、操作手段9の開始釦303を操作してテスト出力を開始する。この開始釦303の操作により予備電圧出力手段2より予備電圧が試験回路200を介して外部回路100へ印加される(この時模擬回路形成手段3のスイッチはa側ON状態となる)。
【0018】
この試験回路200を介して外部回路100への通電により電流検出手段4が実負荷電流Axが検出された後に、前記予備電圧出力手段2は、模擬回路形成手段3のスイッチをb側ON状態として絶縁トランスの出力端子間を短絡状態とし、外部回路100と保護回路31を分離して再度試験回路200へ予備電圧を印加し、予備電流が試験回路200へ通電される。
【0019】
この試験回路200への通電により電流検出手段4が模擬電流Aoを検出し、この模擬電流Aoを模擬動作電流演算手段5へ出力する。この模擬動作電流演算手段5は、図4に示すように、入力された模擬電流Ao及び実負荷電流Axの比率を演算すると共に、この比率をJIS規格に基づいて設定される地絡継電器101の試験電流である設定試験電流Ax1((地絡動作電流設定値を0.2Aとしたときの130%試験電流値)=0.26A)とに基づいて模擬動作電流Ao1を演算する。
【0020】
図4において、外部回路100と試験回路200の合成された抵抗成分はRxであり、模擬回路形成手段3により絶縁トランスの出力端子間を短絡状態にした場合の試験回路200の抵抗成分はRoである。この試験回路200の抵抗成分Roに対して予備電圧Voを印加した場合に予備電流Aoが流れる。また、外部回路100と試験回路200の合成された抵抗成分Rxに対して予備電圧Voを印加した場合に予備電流Axが流れる。ここで、抵抗成分Ro、Rxの電圧、電流特性が線形性をもつ関係にある。予備電流Aoと予備電流Axとの比率(Ax/Ao)は、設定試験電流Ax1と模擬動作電流Ao1との比率 0.26A/Ao1)とが比例関係にある。この比例関係から前記模擬動作電流演算手段5は、模擬動作電流Ao1を[ (Ax/Ao)×0.26A]として演算することができる。
【0021】
このように模擬動作電流演算手段5で演算された比率(Ax/Ao)に基づき表示制御手段6の制御により表示手段7に表示される設定試験電流Ax1の値を参照して試験を実行する操作者は、模擬動作電流Ao1の値を操作手段9の手動操作にて調整できることとなり、試験モードで印加し、通電する試験電圧及び試験電流と同じ表示態様で設定試験電流Ax1を調整して試験電流設定を実行できることとなる。
【0022】
(本発明の第2の実施形態)
本発明に係る第2の実施形態に係る地絡継電器試験装置を図5に基づいて説明する。この図5は、本発明の第2の実施形態に係る地絡継電器試験装置の全体回路ブロック図を示す。
同図において本実施形態に係る地絡継電器試験装置は、前記第1の実施形態の地絡継電器試験装置と同様に試験電流供給手段1、予備電圧出力手段2、電流検出手段41、42(図1では4に相当)、模擬動作模擬動作電流演算手段5、表示制御手段6、表示手段7、試験電流調整手段8及び操作手段9を共通して備え、模擬回路形成手段3を備えておらず、地絡継電器101及び高圧開閉器102からなる外部回路100と接続されることなく、個別独立して模擬回路210が接続される構成である。
【0023】
本実施形態においては、試験電流供給手段1及び予備電圧出力手段2に外部回路100とは別個独立して並列接続される模擬回路210に予備電圧Voを印加して予備電流Ao電流検出手段41が検出すると共に、外部回路100に予備電圧Vを印加して各予備電流Ao、Axの比率(Ax/Ao)が模擬動作模擬動作電流演算手段5によって演算される。
【0024】
この演算された比率(Ax/Ao)に基づいて、表示制御手段6は設定試験電流Ax1の値を表示手段7に表示する。この表示手段7に表示される設定試験電流Ax1の値を参照して、試験を実行する操作者は、模擬動作電流Ao1の値を操作手段9の手動操作にて調整できることとなり、試験モードで印加し、通電する試験電圧及び試験電流と同じ表示態様で設定試験電流Ax1を調整して試験電流設定を実行できることとなる。
【0025】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態に係る地絡継電器試験装置を図6に基づいて説明する。この図6は、本発明の他の実施形態に係る地絡継電器試験装置のブロック回路構成図である。
同図において他の実施形態に係る地絡継電器試験装置は、前記図2記載の実施形態に係る地絡継電器試験装置と同様に試験電流供給手段1(図示を省略)、予備電圧出力手段2(図示を省略)模擬回路形成手段3、電流検出手段4、模擬動作模擬動作電流演算手段5、表示制御手段6、表示手段7、試験電流調整手段8、操作手段9及び試験回路200を共通して備え、この構成に加え、外部回路100に印加する試験電圧を測定する電圧変成器を有する電圧測定回路205と、この電圧測定回路205が測定した試験電圧及び電流検出手段4で検出された試験電流に基づいて位相を検知する位相検知回路11と、この検知された位相に基づいて試験電流の位相を制御する位相制御回路12とを備える構成である。
【0026】
この電圧測定回路205は、電流アンプ201、絶縁トランス202と共に、試験回路200を構成する。また、前記位相検知回路11及び位相制御回路12は、位相検出制御手段10を構成する。
【0027】
次に、前記構成に基づく他の実施形態に係る地絡継電器試験装置における地絡継電器の動作時間測定、位相特性測定、慣性不動作測定での試験動作について説明する。まず、模擬回路形成手段3のスイッチ3aを接点a側へ投入して外部回路100に接続状態とすると共に、スイッチ3bも投入して外部回路100に接続状態とする。この接続状態において図示を省略する予備電圧出力手段2から電流アンプ201及び絶縁トランス202を介して予備電流を外部回路100へ供給すると共に、電圧アンプ203及び絶縁トランス204を介して予備電圧を外部回路100へ印加する。この予備電流の供給及び予備電圧の印加により実負荷電流・電圧を検出すると共に、これらの位相を位相検知回路11が検出する。
【0028】
次に、前記模擬回路形成手段3のスイッチ3aを接点b側へ投入して電源線と接地線を短絡状態とし、スイッチ3bを開放状態とする。この状態で予備電流を試験回路200へ供給すると共に予備電圧を試験回路200へ印加する。この予備電流の供給及び予備電圧の印加により模擬電流・電圧を検出すると共に、これらの位相を位相検知回路11が検出する。
【0029】
この検出された位相に基づいて位相制御回路12は電圧アンプ201から出力する電流の位相を調整制御すると共に、前記検出された模擬電流に基づいて模擬動作電流演算手段5が予備電流Aoと予備電流Axとの比率(Ax/Ao)及び模擬動作電流を演算して電流アンプ201から出力する電流値を制御する。また、前記比率(Ax/Ao)より前記各実施形態の場合と同様に表示制御手段6の制御により表示手段7に表示される設定試験電流Ax1の値を参照して試験を実行する操作者は、模擬動作電流Ao1の値を操作手段9を手動で操作して調整できることとなり、試験モードで印加し、通電する試験電圧及び試験電流と同じ表示態様で設定試験電流Ax1を調整して試験電流設定を実行できることとなる。
【0030】
このように、検出された位相差に基づいて地絡継電器の動作試験を行うことから、特定の位相に固定した状態で実際の試験と同じ条件で予備試験を実行できることとなり、地絡継電器の動作時間の測定、位相特性の測定及び慣性不動作の測定をいずれも正確に実行することができる。
【0031】
なお、前記各実施の形態において表示制御手段6及び表示手段7で設定電流の値を表示する構成としたが、この設定電流を数値表示以外に、音声、信号音、グラフィック等、及びこれらの組合せの他の出力形態で出力する出力制御手段及び出力手段で構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
手動設定ボリュームで試験出力電流を設定・調整する方式の地絡継電器試験装置の場合、自動的にテスト電流を流して外部回路のインピーダンスを求める手段を講じても、最終的な出力設定手段が手動式のボリュームのため、人がつまみを回すという動作が介在する。従って、前記インピーダンスを加味した設定を行う手段がなく、直接外部回路に電流を流して試験電流を設定する以外に方法がなかったが、本発明では試験電流を設定する場合は地絡継電器が動作しない程度の電流が流れるテスト電圧を印加して実際の回路に流れる電流を求め、その後電流回路出力を模擬電流回路に切替え、前記印加電圧と同じテスト電圧を印加した時に流れる電流を求め、その電流比率によって表示値を補正するようにし、その表示値を見ながら地絡継電器試験装置内部に設けた模擬電流回路に流して試験電流を設定するようにしたため、模擬電流回路に流して設定を行っても実際に外部回路に流して設定する場合と同等の試験電流を設定することが可能になる。
【0033】
従って、年次点検等において実施される動作試験は試験1回目の動作値を確認することができるようになることから、低頻度で発生する実際の事故検出時に確実に動作するかどうかの確認が可能となって点検精度が向上するという効果がある。
【0034】
また、本発明の場合、定電流回路を使用しない回路構成で試験電流を設定する構成のため、電流出力回路に絶縁トランスを設けることが可能となり、定電流回路構成とした場合の問題点である弱電回路の一部が高圧開閉器と地絡継電器を接続する配線に直接接続されることも防止でき、外部ノイズによる誤動作や破損等を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る地絡継電器試験装置の全体ブロック構成図である。
【図2】図1に記載の地絡継電器試験装置の詳細回路図及び操作パネル配置構成図である。
【図3】図1及び図2に記載の地絡継電器試験装置の動作タイミングチャートである。
【図4】図1に記載の地絡継電器試験装置における模擬動作電流演算手段の演算動作説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る地絡継電器試験装置の全体回路ブロック構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る地絡継電器試験装置の全体回路ブロック構成図である。
【0036】
1 試験電流供給手段
2 予備電圧出力手段
3 模擬回路形成手段
3a スイッチ
3b スイッチ
4 電流検出手段
5 模擬動作電流演算手段
6 表示制御手段
7 表示手段
6 表示制御手段
7 表示手段
8 試験電流調整手段
9 操作手段
10 位相検出制御手段
11 位相検知回路
12 位相制御回路
31 保護回路
41 電流検出手段
42 電流検出手段
71 出力電圧表示部
72 出力電流表示部
73 位相表示部
74 時間表示部
91 手動ボリューム
100 外部回路
101 地絡継電器
102 高圧開閉器
200 試験回路
201、211 電流アンプ
202、212 絶縁トランス
203 電圧アンプ
204 絶縁トランス
205 電圧測定回路
210 模擬回路
300 操作パネル
301 電源スイッチ
302 モード切換スイッチ
303 開始釦
304 停止釦
Ao 模擬電流
Ao1 模擬動作電流
Ax 実負荷電流
Ax1 設定試験電流
Ro 抵抗成分
Rx 抵抗成分
V 予備電圧
Vo 予備電圧
a 接点
b 接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧開閉器に設置される地絡継電器の動作時間測定、位相特性測定、慣性不動作測定のうち少なくとも一つの動作試験を、予め定められた試験電流の出力値に基づいて手動で実行する試験回路を備える地絡継電器試験装置において、
前記地絡継電器が動作しない程度の予備電流を通電させる予備電圧出力手段と、
前記試験回路から地絡継電器及び高圧開閉器までの回路のうち、地絡継電器から高圧開閉器までの負荷回路を除く部分で模擬回路を形成する模擬回路形成手段と、
前記予備電圧を、負荷回路に印加すると共に、前記模擬回路に印加し、当該各試験電圧の印加により生じる各実負荷電流値と模擬電流値を検出する電流検出手段と、
前記検出された実負荷電流値及び模擬電流値の比率と前記試験電流とに基づいて設定電流を出力するため、試験動作前に地絡継電器が動作する電流に相当する模擬動作電流を演算する模擬動作電流演算手段と、
前記模擬回路に通電する模擬動作電流の調整に伴って前記比率に応じた設定電流の値の出力を制御する出力制御手段とを備えることを
特徴とする地絡継電器試験装置。
【請求項2】
高圧開閉器に設置される地絡継電器の動作時間測定、位相特性測定、慣性不動作測定のうち少なくとも一つの動作試験を、予め定められた試験電流の出力値に基づいて手動で実行する地絡継電器試験装置において、
前記地絡継電器が動作しない程度の予備電流を通電させる予備電圧出力手段と、
予め既知の値の抵抗からなる模擬回路と、
前記予備電圧を、負荷回路に印加すると共に、前記模擬回路に印加し、当該各試験電圧の印加により生じる各実負荷電流値と模擬電流値を検出する電流検出手段と、
前記検出された実負荷電流値及び模擬電流値の比率と前記試験電流とに基づいて設定電流を前記表示手段に表示するため、試験動作前に地絡継電器が動作する電流に相当する模擬動作電流を演算する模擬動作電流演算手段と、
前記模擬回路に模擬動作電流の調整に伴って前記比率に応じた設定電流の値の出力を制御する出力制御手段とを備えることを
特徴とする地絡継電器試験装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の地絡継電器試験装置において、
前記予備電圧を負荷回路に印加して生じる実負荷電流と予備電圧との位相差を検出する位相検出手段を備え、
当該検出された位相差に基づいて地絡継電器の動作試験を行うことを
特徴とする地絡継電器試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−43873(P2010−43873A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206280(P2008−206280)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【Fターム(参考)】