説明

地質状態立体表示物

【課題】
地質状態の全体像を容易に把握することができ、多数枚の図面を必要とせず、携帯性に優れ、地質調査結果を施工時に容易に視認し得る地質状態の表示物を提供する。
【解決手段】
地質状態の表示物であって、透明または半透明な板状物により構成されてなるケーシングと、地質の程度に応じて予め個々に色分けされた透明または半透明な複数のサイコロ状地質表示物とを有し、ケーシングを構成する天板の一部または全部は、地質調査点に応じて区分けされてなり、上記天板の区分けした箇所において、個々に色分けされたサイコロ状地質表示物が、ケーシングの天板から底板方向に、地質調査点の深さ方向に対してなされた地質調査結果に対応して配置されてなる地質状態立体表示物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定物質の土壌中または地下水中への混入量や地盤の強度といった地質状態を示す表示物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、土地有効利用の観点から、都市部に近接する工場や油槽所、あるいは市街地に位置するガソリンスタンド等の跡地を、宅地等に転用することが行われるようになっている。
【0003】
しかしながら、これ等の土地は、工場跡地等である性質上、その工場等の事業内容に応じ、土壌中または地下水中に有機化合物や重金属等が混入していたり、地盤が軟弱であったりする場合がある。近年においては、土壌汚染対策法等により、土壌や地下水に含まれる特定の有機化合物や重金属を所定濃度以下にすることが求められるようになっており、このような法規制に対応するためにも、上記工場跡地等を宅地等に転用するには、対象となる土地の地質を事前調査し、必要に応じて適切な地質改良工事(土壌の浄化工事や地下水浄化工事または地盤改良工事等)を施工する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、特定の有機化合物を使用していた工場等の跡地である、図9の上図に示すような土地の有機化合物混入量の事前調査を行うにあたっては、対象となる土地の地質調査点(図9においては、調査点a〜d)を特定したのち、各調査点において、所定の深さ毎(図9においては、深さ2.5mまで0.5m毎)に試料となる土壌を採取し、採取した試料中における特定の有機化合物の量をクロマトグラフィー等により分析する方法が採られている。この分析結果は、測定対象物質毎に、図9(1)〜(5)に示すような図により示され、分析値が基準値を上回っている場合は、土壌の浄化工事が必要となる場合がある。
【0005】
しかしながら、一般に、地権者の多くは、法規制の内容に精通していない上に、土木、建築関係者でないことから、上記多数枚からなる図面にて土壌状態の全体像や工事の必要性を把握することが容易でない。
【0006】
また、土木、建築関係者であっても、上記多数枚からなる図面を現場で確認し施工する場合に、施工時における天候等によって、あるいは経験の不足により、記載内容を十分に確認できなかったり、記載内容を誤認する場合が考えられる。
【0007】
そして、このような事態は、土壌中における特定物質の量を測定して、土壌浄化工事の要否を検討したり施工する場合のみならず、地下水中における特定物質の量を測定して、地下水浄化工事の要否を検討したり施工する場合や、地盤の強度を測定して、地盤改良工事の要否を検討したり施工する場合等においても、同様に生じ得る。
【特許文献1】特開2002−355664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況下、本発明は、地質状態の全体像を容易に把握することができ、多数枚の図面を必要とせず、携帯性に優れ、地質調査結果を施工時に容易に視認し得る地質状態の表示物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術課題を解決すべく、本発明者が鋭意検討を行ったところ、地質状態の表示物として、透明または半透明な板状物により構成されてなるケーシングと、地質の程度に応じて予め個々に色分けされた透明または半透明な複数のサイコロ状地質表示物とを有し、前記ケーシングを構成する天板の一部または全部は、地質調査点に応じて区分けされてなり、前記天板の区分けした箇所において、前記個々に色分けされたサイコロ状地質表示物が、ケーシングの天板から底板方向に、前記地質調査点の深さ方向に対してなされた地質調査結果に対応して配置されてなる地質状態立体表示物により、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)透明または半透明な板状物により構成されてなるケーシングと、
地質の程度に応じて予め個々に色分けされた透明または半透明な複数のサイコロ状地質表示物とを有し、
前記ケーシングを構成する天板の一部または全部は、地質調査点に応じて区分けされてなり、
前記天板の区分けした箇所において、前記個々に色分けされたサイコロ状地質表示物が、ケーシングの天板から底板方向に、前記地質調査点の深さ方向に対してなされた地質調査結果に対応して配置されてなる
ことを特徴とする地質状態立体表示物、
(2)前記ケーシングを構成する板状物の一部が、ケーシングを構成する他の板状物と異なるものである上記(1)に記載の地質状態立体表示物。
(3)前記ケーシングの天板または底板に、方位を示す記号が刻印されてなる上記(2)に記載の地質状態立体表示物、
(4)前記複数のサイコロ状地質表示物が、土壌中または地下水中に含まれる有機化合物の量に応じて個々に色分けされてなるものである上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の地質状態立体表示物、
(5)前記複数のサイコロ状地質表示物が、土壌中または地下水中に含まれる重金属の量に応じて個々に色分けされてなるものである上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の地質状態立体表示物、および
(6)地質改良工事に用いられる上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の地質状態立体表示物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地質状態の表示物として、ケーシングとサイコロ状地質表示物とを有する地質状態立体表示物を提供することにより、多数枚の図面を必要とせず、その携帯性を向上させることができるとともに、上記ケーシングおよびサイコロ状地質表示物を透明または半透明なものにより構成し、上記サイコロ状地質表示物を地質の程度に応じて予め個々に色分けした上で、地質調査結果に対応するようにケーシング内に配置することにより、地質状態の全体像を容易に把握することができ、地質調査結果を施工時等に容易に視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の地質状態立体表示物は、透明または半透明な板状物により構成されてなるケーシングと、地質の程度に応じて予め個々に色分けされた透明または半透明な複数のサイコロ状地質表示物とを有し、前記ケーシングを構成する天板の一部または全部は、地質調査点に応じて区分けされてなり、前記天板の区分けした箇所において、前記個々に色分けされたサイコロ状地質表示物が、ケーシングの天板から底板方向に、前記地質調査点の深さ方向に対してなされた地質調査結果に対応して配置されてなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明において、地質状態立体表示物を構成するケーシングは、透明または半透明な板状物により構成されてなるものである。
【0014】
ケーシングの形状は、内部に後述するサイコロ状地質表示物を配置し得るものであれば特に制限されないが、図1(a)に示すような直方体状のものか立方体状のものであることが好ましい。ケーシング1の形状が直方体状または立方体状である場合、その内部寸法は、縦・横・高さ(ケーシングの深さ・d方向)ともに2〜100cm程度であることが好ましく、直方体状である場合は、縦:横:高さ=5:1〜50:1〜20であることがより好ましく、上記寸法を有することにより、得られる表示物の携帯性を向上することができる。なお、上記範囲を満たす限り、ケーシングを構成するいずれの辺の長さを縦方向・横方向・高さ方向の長さであると定めてもよい。
【0015】
また、後述するように、上記ケーシングを構成する天板2上に、地質調査点に対応する点が規定され、上記ケーシングの高さ(ケーシングの深さ)d方向に、各地質調査点において深さ方向になされた地質調査結果を表示することから、表示する土地の広さと地質等の調査がなされた土地の深さとを考慮し、表示縮尺を決定した上で、ケーシングの寸法を決定することが好ましい。
【0016】
ケーシングを構成する透明または半透明な板状物(図1(a)に示す天板2や底板4等)は、その厚みが0.1〜10mm程度であることが好ましく、上記厚みが0.1mm未満であると、ケーシング1に実用上必要となる強度を付与することができず、上記厚みが10mmを超えると、ケーシング1内部に配置されるサイコロ状地質表示物の視認性が低下する。ケーシング1を構成する板状物は、その入手の容易性や、得られるケーシングの透明性および強度を考慮した場合、アクリル樹脂等からなるものであることが好ましい。
【0017】
本発明の地質状態立体表示物は、上記ケーシングとともに、複数のサイコロ状地質表示物を有している。
【0018】
本発明において、「地質」とは、土壌質または地下水質を意味し、土壌質および地下水質としては、土壌中の特定物質含有量や、土壌中の特定物質溶出量(土壌中に含まれる特定物質の溶媒溶出量)や、地下水中の特定物質の量や、地盤の強度等を挙げることができる。前記特定物質としては、例えば、土壌汚染対策法に規定されている有機化合物や重金属等を挙げることができ、具体的には、四塩化炭素、ベンゼン、有機リン化合物等を挙げることができ、上記重金属としては、例えば、カドミウム、六価クロム、鉛、砒素等を挙げることができる。
【0019】
そして、本発明において、地質状態立体表示物を構成する複数のサイコロ状地質表示物は、立方体形状を有し、地質の程度に応じて予め個々に色分けされた透明または半透明状のものである。
【0020】
図1(b)に、着色されたサイコロ状地質表示物3と、無着色のサイコロ状地質表示物3’を例示する。
サイコロ状地質表示物の色分け数は、表示対象となる土壌中または地下水中における特定物質の量の範囲や地盤強度範囲等の区分数に応じて適宜決定すればよい。例えば、サイコロ状地質表示物の表示対象が、土壌中に含まれる特定物質を水等の溶媒で抽出した際の溶出量(以下、適宜、土壌溶出量という)である場合、上記特定物質をベンゼンとし、その土壌溶出量Xmg/L未満を、土壌浄化工事等が不要な量であるとして「無色(無着色)」で表示し、ベンゼンの土壌溶出量Xmg/L以上Ymg/L未満を、土壌浄化工事等は不要であるが、管理を要する量であるとして「黄色」で表示し、ベンゼンの土壌溶出量Ymg/L以上を、土壌浄化工事等が必要な量であるとして「赤色」で表示する。サイコロ状地質表示物の構成材料としては、アクリル樹脂等の透明性の高い材料であることが好ましい。
【0021】
また、サイコロ状地質表示物3、3’の1辺の長さは、5〜100mmであり、ケーシング1の縦・横・高さのうちの最短の寸法と比較して、1/20〜1/1であることが好ましく、サイコロ状地質表示物3、3’の1辺の長さが上記の範囲にあることにより、得られる地質状態立体表示物の視認性を向上することができる。
【0022】
上述したように、ケーシング1の寸法は、地質調査した土地の広さと深さに対応して決定されるものであり、また、後述するように、サイコロ状地質表示物3、3’は、地質調査した地点における深さ方向の地質を色分けして表示するものであることから、サイコロ状地質表示物3、3’の1辺の長さは、地質調査対象となる土地の広さと地質調査した土地の深さに対応して、一定の広さと深さを表示し得るように、表示縮尺を考慮して決定することが好ましい。この場合、サイコロ状地質表示物の1片が表す長さは、必ずしも同じ長さである必要はなく、例えば、1辺が1cmのサイコロ状地質表示物において、縦横方向の長さ1cmが土地の縦横の長さ1mを表示するものであり、高さ方向の長さ1cmが土地の深さ方向の長さ0.5mを表示するものであってもよい。
【0023】
図2(a)に、地質測定対象となる、概略縦50m×横60mの土地と、この土地における地質調査点(図2(a)にa〜dで示す点)を例示するとともに、図2(b)に、この土地の地質状態を表示するために用いるケーシング1を例示する。なお、図2(b)に示すケーシング1は、その内部寸法が、縦5cm×横6cm×高さ(深さ)5cmとなるように作製したものである。
【0024】
図2(b)に示すように、本発明においては、ケーシング1を構成する天板2の一部(または場合により全部)は、図2(a)に示す地質調査点(調査点a〜d)に対応して、複数の区画に区分けされてなる。
【0025】
図2(b)の例においては、天板2上の縦横1cmの長さが、それぞれ、図2(a)に示す土地の縦横10mの長さに相当し、天板2上において、縦横それぞれ1cm間隔で区分けした場合に、地質調査点aに対応する点を含む区画を区画I、地質調査点bおよび地質調査点cに対応する点を含む区画を区画II、地質調査点dに対応する点を含む区画を区画IIIとした。
【0026】
上記各区画は、地質調査点に対応する点を少なくとも1点含んでいればよく、図2(b)に示す区画IIのように、地質調査点を2点以上含んでいてもよい。また、後述するように、上記各区画にサイコロ状地質表示物が配置されることから、相対するサイコロ状地質表示物の面形状を考慮して、各区画の形状も、正方形状とすることが好ましい。
【0027】
本発明においては、上記天板2上の各区画(図2の例では、区画I〜III)において、上記個々に色分けされたサイコロ状地質表示物が、ケーシングの天板から底板方向に、地質調査点の深さ方向になされた地質調査結果に対応して配置される。
【0028】
図3左側の(1)〜(5)図は、地質調査点aにおいて、ベンゼンの土壌溶出量を深さ0.5m間隔で2.5mまで測定し、得られた結果を従来の例により表示したものである。
【0029】
一方、図3の右側に例示する、サイコロ状地質表示物3、3’は、縦、横、高さがいずれも1cmのものであり、ケーシング内に配置したときに、サイコロ状地質表示物3、3’の縦および横方向の長さ1cmが、対応する土地の10mの長さに相当し、高さ(深さ)方向の長さ1cmが、0.5mの深さに相当するものである。
【0030】
図3の例においては、土壌浄化工事が必要となるベンゼンの土壌溶出量を0.10mg/L以上であると規定し、ベンゼンの土壌溶出量が0.10mg/L以上である場合に、図3では斜線を付した赤色のサイコロ状地質表示物3を用いるとともに、地質改良工事が不要なベンゼン土壌溶出量を0.01mg/L未満であると規定し、ベンゼンの土壌溶出量が0.01mg/L未満である場合に、図3で斜線を付していない無色(無着色)のサイコロ状地質表示物3’を用いている。
【0031】
図4に示すように、上記サイコロ状地質表示物3、3’は、区画I〜区画IIIに対応するように、ケーシング1の天板2から底板4方向に配置される。
【0032】
図4において、区画IIには、2つの地質調査点(調査点b、c)に対応する点が含まれ、上記地質調査点においては、同一の深さであっても異なる地質調査結果が得られる場合があるが、このような場合、より厳しい結果(よりベンゼン土壌溶出量の多い分析結果)を採用して、ケーシング内に対応するサイコロ状地質表示物の色を決定すればよい。例えば、同一の深さであっても、調査点bではベンゼンの土壌溶出量として、土壌浄化工事が必要な基準値として規定した0.1mg/Lを下回る0.09mg/Lが検出され、調査点cでは同基準値として規定した0.10mg/Lを上回る0.11mg/Lが検出された場合、地質調査点cの結果を採用し、ケーシング内に赤色のサイコロ状地質表示物3を配置すればよい。
【0033】
サイコロ状地質表示物3、3’は、ケーシング1内に隙間無く配置してもよいし、図4において図示しない間仕切り板を適宜設けつつ、所望の箇所(地質調査結果を表示したい箇所)のみに配置してもよい。上記間仕切り板も、アクリル樹脂等の透明性の高い材料からなることが好ましい。
【0034】
なお、各分析値及び調査対象の土地におけるベンゼンの使用状況等を勘案して、地質調査した区画以外の区画の地質状態をサイコロ状地質表示物にて表示してもよい。
【0035】
上述の例においては、土壌質の調査結果に基づいて、ケーシング内にサイコロ状地質状態表示物を配置したが、同様の方法により、地下水質の調査結果に基づいて、ケーシング内にサイコロ状水質表示物を配置してもよく、両調査が同種の対象を測定したものである場合(例えば、ベンゼンの量を測定したものである場合)等は、適宜、両調査結果を反映してケーシング内にサイコロ状地質表示物を配置してもよい。
【0036】
本発明の地質状態立体表示物においては、上記ケーシングを構成する板状物の一部が、ケーシングを構成する他の板状物と異なるものであることが好ましく、このように構成することにより、ケーシングの天地を容易に認識することが可能になる。
【0037】
ケーシングを構成する板状物の一部が他の板状物と異なる例としては、ケーシング1の天板2または底板4を構成する板状物が、ケーシング1を構成する他の板状物とは異なる色で着色されてなる態様を挙げることができる。この場合、天板2または底板4を構成する板状物の色としては、ケーシング内部の視認性を妨げないように、水色等の薄い色を有するものを用いるとともに、他の側面を構成する板状物が無着色のものであることが好ましい。
【0038】
また、ケーシングを構成する板状物の一部に、天板2あるいは底板4に相当する板状物がいずれであるかを特定する矢印等を付した態様であってもよい。
【0039】
さらに、図5に示すように、ケーシング1を構成する天板2または底板4に、方位を示す記号5を刻印する態様を挙げることができ、この記号5を刻印することによって、ケーシング1の天板2または底板4の位置を容易に特定することが可能となるとともに、対応する土地の方角を容易に知ることができる。
【0040】
図6(a)〜(d)に、上記記号5の例を示す。この記号は、ケーシング内部に配置されたサイコロ状地質表示物の視認性を妨げないように、図5に示すように、天板2または底板4の角部等に付すことが好ましい。
【0041】
図7に、本発明に係る地質状態立体表示物6の例を示すが、本発明の地質状態立体表示物6において、サイコロ状地質表示物3、3’が表示する地質としては、特に限定されず、土壌中または地下水中に含まれる有機化合物の量(例えば、四塩化炭素、ベンゼン、有機リン化合物等の量や総炭化水素量)、重金属の量(例えば、鉛やカドミウム等の量)、あるいは地盤の強度等を挙げることができる。
【0042】
本発明によれば、地質状態の表示物として、ケーシングとサイコロ状地質表示物とを有する地質状態立体表示物を提供することにより、多数枚の図面を必要とせず、その携帯性を向上させることができる。また、上記ケーシングおよびサイコロ状地質表示物を透明または半透明なものにより構成し、上記サイコロ状地質表示物を地質の程度に応じて予め個々に色分けした上で、地質調査結果に対応するようにケーシング内に配置することにより、地質状態の全体像を容易に把握することができ、地質調査結果を施工時等に容易に視認することができる。
【0043】
このため、本発明に係る地質状態立体表示物は、法規制内容や土木、建築技術に精通していない者(地権者等)に対して地質状態を説明したり、地質改良工事時において、工事担当者が地質調査結果を確認する際に好適に用いることができる。
【0044】
本発明において、地質状態立体表示物は、例えば、以下のようにして作製することができる。
【0045】
先ず、ケーシング予備成形物として、底板および側板に相当する複数の透明なアクリル板を接着剤等で接合して内部に直方体状または立方体状の空間を有する枡状物を形成した後、この枡状物内の空間を必要に応じて透明な間仕切り板で間仕切りしたものを作製する。
【0046】
次いで、天板に相当するアクリル板の一部または全部において、地質調査点に対応する点を少なくとも1点含むように、複数の区画に区分けする。そして、上記各区画に対応する底板上の仮想位置おいて、予め個々に色分けした複数のアクリル樹脂製サイコロ状地質表示物を、順次積み重ね、最後に枡状物の開口部を天板(アクリル板)で覆ってケーシングを形成することにより、所望の地質状態立体表示物を得ることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に更に詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
油槽所跡地の一角における縦90m、横80mの土地において、9箇所の地質調査点a〜iを決定した上で、各調査点において0.5m間隔で5.0mまで、測定試料となる土壌を採取し、各土壌試料におけるベンゼンの土壌溶出量を、土壌汚染対策法に規定されている方法に準じて、クロマトグラフィーにより測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
次に、ケーシング予備成形物として、厚さ5mmのアクリル板を接着剤により貼り合わせ、内部寸法が縦9cm、横8cm、高さ10cmであり、主表面の一方が開口している枡形の容器を作成し、別途、天板に相当する、縦9cm、横8cm、厚さ5mmの天板を用意した。
【0050】
上記天板の角部には、方角を表示する記号として、図6(a)に示す形状を有する縦横の長さがともに1cm程度の記号を刻印した。
【0051】
図8(a)に、上記天板2の概略図を示す。天板2上には、地質調査点a〜iに対応する点が付されており、天板2の縦方向の長さ(9cm)は、上記土地の縦方向の長さ(90m)に相当し、天板2の横方向の長さ(8cm)は、上記土地の横方向の長さ(80m)に対応する。そして、図8(b)に示すように、上記天板2において、縦横をともに1cm間隔で区分けすることにより、上記9箇所の地質調査点に対応する点の何れか1箇所以上を有する区画I〜区画VIIIを規定した。すなわち、地質調査点aに対応する点を有する区画I、地質調査点bおよび調査点cに対応する点を有する区画II、地質調査点dに対応する点を有する区画III、地質調査点eに対応する点を有する区画IV、地質調査点fに対応する点を有する区画V、地質調査点gに対応する点を有する区画VI、地質調査点hに対応する点を有する区画VII、地質調査点iに対応する点を有する区画VIIIを規定した。区画I〜区画VIIIにおける縦方向および横方向の長さ1cmが、上記土地における10mの長さに相当する。
【0052】
また、サイコロ状地質表示物として、縦、横、高さがいずれも1cmであるアクリル樹脂製サイコロ状成形物を用意した。このアクリル樹脂製サイコロ状成形物は、上記ケーシング予備成形物内部に配置されたときに、縦方向および横方向の長さ1cmが、上記土地における10mの長さに相当し、高さ方向の長さ1cmが、上記土地における0.5mの深さに相当する。
【0053】
上記サイコロ状地質表示物としては、ベンゼン土壌溶出量が0.10mg/L以上であり、土壌浄化工事が必要な区画を表示するものとして、「赤色」に着色された半透明状のものを用意し、ベンゼン土壌溶出量が0.01mg/L以上0.10mg/L未満であり、土壌浄化工事は必要ないが管理を要する区画を表示するものとして、「黄色」に着色された半透明状のものを用意し、ベンゼン土壌溶出量が0.01mg/L未満であり、土壌浄化工事の必要ない区画を表示するものとして、「無色(無着色)」である半透明状のものを用意した。表2に、表1で得られた結果を基に、サイコロ状地質表示物の色を分類した結果を示す。
【0054】
なお、地質調査点cの深さ0〜0.5m測定結果は、ベンゼン土壌溶出量が0.005mg/Lであって、この結果のみから判断すると、区画IIの地下0〜0.5mの欄は「無色」になるはずであるが、地質調査点bの深さ0〜0.5mにおけるベンゼン土壌溶出量が0.01mg/Lであることから、より厳しい結果(よりベンゼン土壌溶出量の多い分析結果)を採用して、区画IIの地下0〜0.5mの欄は「黄色」とした。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示す結果に基づいて、図8(c)に示すような、区画I〜区画VIIIに対応する底板4上の仮想位置において、順次各サイコロ状地質表示物を配置して、積み重ねた。
【0057】
また、ケーシングの予備成形物内部において、上記各サイコロ地質表示物が移動しないように、アクリル板を用いて、適宜間仕切りを設けた。
【0058】
上記サイコロ状予備成形物の配置終了後、ケーシング予備成形物の開口部に上記天板2を接着剤により固定することにより、ケーシングをなし、目的とする地質状態立体表示物を得た。
【0059】
得られた地質状態立体表示物は、ケーシングとサイコロ状地質表示物からなることにより、多数枚の図面を必要とせず、その携帯性が向上したものであった。また、上記ケーシングおよびサイコロ状地質表示物を透明または半透明なものにより構成し、上記サイコロ状地質表示物を地質の程度に応じて予め個々に色分けした上で、地質調査結果に対応するようにケーシング内に配置することにより、地質状態の全体像を容易に把握することができるものであった。
【0060】
得られた地質状態立体表示物には、土壌浄化工事が必要となる赤色のサイコロ状地質表示物が含まれていなかったことから、土壌浄化等の地質改良工事は必要ないと判断したが、仮に土壌浄化工事が必要である場合には、得られた地質状態立体表示物を用いて、施工時に地質調査結果を容易に視認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、地質状態の全体像を容易に把握することができ、多数枚の図面を必要とせず、携帯性に優れ、地質調査結果を施工時に容易に視認し得る地質状態の表示物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の地質状態立体表示物を構成するケーシングおよびサイコロ状地質表示物の例である。
【図2】本発明の地質状態立体表示物において、天板2上に規定される区画を説明するための図である。
【図3】本発明の地質状態立体表示物において、サイコロ状地質表示物の使用例を説明するための図である。
【図4】本発明の地質状態立体表示物において、ケーシング内へのサイコロ状地質表示物の配置例を示す図である。
【図5】本発明の地質状態立体表示物において、天板上に記号が付された例を示す図である。
【図6】本発明の地質状態立体表示物において、天板上に付される記号例を示す図である
【図7】本発明の地質状態立体表示物の例を示す図である。
【図8】本発明の地質状態立体表示物の作製例を説明するための図である。
【図9】地質状態を示す従来の図面例である。
【符号の説明】
【0063】
1 ケーシング
2 天板
3、3’ サイコロ状地質表示物
4 底板
5 記号
6 地質状態立体表示物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地質状態の表示物であって、
透明または半透明な板状物により構成されてなるケーシングと、
地質の程度に応じて予め個々に色分けされた透明または半透明な複数のサイコロ状地質表示物とを有し、
前記ケーシングを構成する天板の一部または全部は、地質調査点に応じて区分けされてなり、
前記天板の区分けした箇所において、前記個々に色分けされたサイコロ状地質表示物が、ケーシングの天板から底板方向に、前記地質調査点の深さ方向に対してなされた地質調査結果に対応して配置されてなる
ことを特徴とする地質状態立体表示物。
【請求項2】
前記ケーシングを構成する板状物の一部が、ケーシングを構成する他の板状物と異なるものである請求項1に記載の地質状態立体表示物。
【請求項3】
前記ケーシングの天板または底板に、方位を示す記号が刻印されてなる請求項2に記載の地質状態立体表示物。
【請求項4】
前記複数のサイコロ状地質表示物が、土壌中または地下水中に含まれる有機化合物の量に応じて個々に色分けされてなるものである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の地質状態立体表示物。
【請求項5】
前記複数のサイコロ状地質表示物が、土壌中または地下水中に含まれる重金属の量に応じて個々に色分けされてなるものである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の地質状態立体表示物。
【請求項6】
地質改良工事に用いられる請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の地質状態立体表示物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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