説明

地雷に対する危険防止方法

【課題】本発明の目的は、地雷を積極的に爆破して排除するような危険性がなく、迅速且つ確実に地雷埋設地帯を安全な地帯にすることができる地雷に対する危険防止方法を提供すること。
【解決手段】 未爆発の地雷が爆発した際の危険防止方法であって、未爆発の地雷が埋設された地盤に地雷の爆破の圧力を緩和するための通気性または伸縮性を有する防爆繊維シート2を敷設した地雷に対する危険防止方法。
防爆繊維シート2を敷設して覆土することも採用できる。
また、防爆繊維シート2にICチップ7やセンサ6を備えることも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地雷が爆発処理を必要とせず、地雷埋設地帯を安全な土地に変えることができる地雷に対する危険防止方法に関する。
より詳しくは、繊維シートを地雷埋設地帯に敷設することによって、仮に地雷が爆発しても地雷の爆風や破片の飛散を防止することができる地雷に対する危険防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、地雷の埋設領域は極めて危険であり、その防止対策が急がれている。
通常、地雷を除去処理する場合、探索した地雷を積極的に爆破する方法がある。
例えば、地雷の周囲の土を静かに取り除き、爆薬が入ったケースを地雷に添わせて配置し、爆薬を点火し爆発させ、同時に、この爆発力を利用して地雷を誘爆させる方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この方法は、地雷探知器を用いて地中に埋められた地雷を個々に発見しては、爆破処理を行う必要があり、多数の地雷が埋設された地雷原から地雷を完全に撤去するには、多大な労力と時間とを要するものであり、撤去費用としても多額のものとなる。
また、地雷撤去作業者にとって地雷に触れる可能性もあり、極めて危険の高い作業であった。
【0003】
そこで、このような手作業ではなく、一挙に地雷を破壊すべく、バックホー等の重機車両を用いる方法が開発された(例えば、特許文献2参照)。
この方法は、重機車両のアームの先端に回転駆動軸を介してハンマー体を設け、このハンマー体を回転駆動させて地面を打つことにより、地雷を粉砕する方法である。
そのため地雷はハンマー体で叩かれて爆発し砕け散るので、地雷処理作業としては効率的である。
【0004】
更に、このような重機車両のアームに地雷探知器を取り付けたものも開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−160400号公報
【特許文献2】特開平8−320199号公報
【特許文献3】特開2000−130996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、重機車両を用いて地雷を除去する場合においても、地雷の位置を探知しながら順次一つ一つ地雷を破壊する作業を必要とし、やはり相当の手間がかかる上、重機車両自体にも少なからず損傷を与え、危険性は排除できない。
【0007】
本発明は、かかる背景技術をもとになされたもので、上記の背景技術の問題点を克服するためになされたものである。
すなわち、本発明は、地雷を積極的に爆破して排除するような危険性がなく、迅速且つ確実に地雷埋設地帯を安全な地帯にすることができる地雷に対する危険防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、埋設された未爆発の地雷を積極的に爆破して除去するのではなく、地雷はそのままの状態としておき、地雷が埋設された地盤に地雷の暴爆から守るための防爆繊維シートを敷設することにより、上記の問題点を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)、未爆発の地雷が爆発した際の危険防止方法であって、未爆発の地雷が埋設された地盤に地雷の爆破の圧力を緩和するための防爆繊維シートを敷設する地雷に対する危険防止方法に存する。
【0010】
また、本発明は、(2)、未爆発の地雷が爆発した際の危険防止方法であって、未爆発の地雷が埋設された地盤に地雷の爆破の圧力を緩和するための通気性を有する防爆繊維シートを敷設する地雷に対する危険防止方法に存する。
【0011】
また、本発明は、(3)、未爆発の地雷が爆発した際の危険防止方法であって、未爆発の地雷が埋設された地盤に地雷の爆破の圧力を緩和するための伸縮性を有する防爆繊維シートを敷設する地雷に対する危険防止方法に存する。
【0012】
また、本発明は、(4)、防爆繊維シートを敷設して覆土する上記(1)に記載の地雷に対する危険防止方法に存する。
【0013】
また、本発明は、(5)、防爆繊維シートは、織布、編布、不織布又は網布である上記(1)に記載の地雷に対する危険防止方法に存する。
【0014】
また、本発明は、(6)、防爆繊維シートは、アラミド繊維シートである上記(1)に記載の地雷に対する危険防止方法に存する。
【0015】
また、本発明は、(7)、防爆繊維シートにICチップを備えた上記(1)に記載の地雷に対する危険防止方法に存する。
【0016】
また、本発明は、(8)、防爆繊維シートにセンサを備えた上記(1)に記載の地雷に対する危険防止方法に存する。
【0017】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(7)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、爆破の圧力を緩和するための通気性を有する防爆繊維シートを未爆発の地雷が埋設された地盤に敷設したので、人や車両が地雷を踏んでも爆風は通気性のある防爆繊維シートによって緩和される。
また、爆破の圧力を緩和するための伸縮性を有する防爆繊維シートを未爆発の地雷が埋設された地盤に敷設したので、人や車両が地雷を踏んでも爆風は伸縮性のある防爆繊維シートによって緩和される。
また、地雷の爆発により飛散した破片は防爆繊維シートが邪魔をして地面から飛び出すことがなく安全である。
【0019】
また、防爆繊維シートの通気性や伸縮性により爆発力を緩和できるために、防爆繊維シート自体が破損することが防止される。
防爆繊維シートを単に地盤上に敷設するだけで目的が達成できるので、地雷埋設地帯が広範囲であっても迅速且つ確実に施工が達成できる。
更に、防爆繊維シートにICチップやセンサを取り付ければ、施工履歴や地雷の爆発履歴等を管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の危険防止方法は、未爆発の地雷が埋設された地盤に対して、地雷の爆破の圧力を緩和するための通気性又は伸縮性を有する防爆繊維シートを敷設したことに特徴があるものである。
敷設する手順としては、地帯データの収集、敷設領域の決定、及び敷設作業を順に行うこととなる。
【0021】
図1は、本発明における地雷埋設地帯に対する敷設手順を示したブロック図である。
先ず、ステップS1においては、地雷の埋設状態を示す地帯データを収集する(地帯データの収集工程)。
【0022】
すなわち、未爆発の地雷が埋設された地盤であると予想される地帯において、地雷探知装置等を用いて地雷の埋設状態を探知して正確な地帯データとして収集するのである。
例えば、地雷捜索作業者が地雷探知器等を用いて地雷の埋設状態を探知して地帯データとして収集する方法がある。
これによって、対象となる地域における地雷の分布状態が、地帯データとして把握される。
【0023】
次いで、ステップS2において、防爆繊維シートの敷設領域を設定する(敷設領域の設定工程)。
すなわち、ステップS1で収集した地帯データに基づいて、地雷対策を講ずる領域、すなわち防爆繊維シートを敷設する正確な敷設領域を決定する。
この防爆繊維シートの敷設領域が決定されることにより、その敷設領域に対する必要な防爆繊維シートの手当て(大きさ、量等)が可能となる。
【0024】
次いで、ステップS3において、敷設領域に防爆繊維シートを敷設する(防爆防爆繊維シート敷設工程)。
すなわち、ステップS2で決定した防爆繊維シートを敷設する対象となる敷設領域(この領域には地雷が埋設されている)に対して、その地盤上に防爆繊維シートを実際に敷設する作業を行う。
ここで防爆繊維シートとしては、通気性又は伸縮性のあるもので高強度を有するものが採用される。
そして、特に下方からの爆発力に強いように防爆繊維シートは厚み方向に関して方向性のある強度等を有することが好ましい。
そのためには、平面方向への強度等も考慮することが必要である。
【0025】
防爆繊維シートに通気性があると、爆風の一部を通過させ爆発エネルギーを緩和させることができるため、防爆繊維シートに破壊的な応力負荷が加わるのを極力回避でき、その破損が防止されるのである。
また、防爆繊維シートに伸縮性がある場合は、爆風を弾圧的に受け止めることができ爆発エネルギーを緩和させることができるので、防爆繊維シートに破壊的な応力負荷が加わるのを極力回避でき、その破損が防止されるのである。
また、爆発力が緩和されるために、地雷から飛散された地雷片等を防爆繊維シートで阻止し、人体に到達するのを防止できる。
【0026】
防爆繊維シートの形態としては、織布、編布、不織布又は網布のいずれの形態であってもよく、現場に最適なものを選択する。
また、防爆繊維シートの材質としては、地雷の爆風にも十分耐えることが必要であり、この点から高強度の繊維シート、例えばアラミド繊維シートが採用可能である。
【0027】
防爆繊維シートを敷設するには、前もって敷設領域を整地して敷設し易い状態にしておくことが場合によって必要である。
例えば、大きく突出した灌木等がある場合には、それを除去することとなる。
防爆繊維シートを、必要とする敷設領域に敷設するには、具体的に種々の方法があるが、少なくとも敷設領域に埋設されている地雷に触れて爆発しないように注意しなければならない。
【0028】
そのために、好ましくは防爆繊維シートを吊り上げて敷設する方法が採用される。
例えば、図2に模式的に示すように、複数のヘリコプタA1,ヘリコプタA2によって、防爆繊維シートを吊り上げて、上方から垂らしながら敷設していく方法、地雷埋設地帯の両側からクレーンB1, B2等を使って吊り上げて上方から垂らしながら同様に敷設していく方法等があり、これらの方法に限らず、その場に応じて最適なものを選択する。
【0029】
ところで、上記ステップS3によって、防爆繊維シートが敷設された後は、地面上に防爆繊維シートが露出している状態にある。
そのために、ステップS4において、防爆繊維シートを敷設した領域を、例えば広場等に使用する場合には、その防爆繊維シートの上を覆土することが好ましい(覆土工程)。
【0030】
すなわち、その場合は、防爆繊維シートの上を土砂等で覆って防爆繊維シートを一定の深さに埋め込まれた状態にする。
この場合、防爆繊維シート上に土砂等が存在するために、それが緩衝力となって、下方からの爆発力がより緩和される現象が生じる。
【0031】
以上のようにして防爆繊維シート2を地雷埋設地帯に敷設した場合、敷設領域の安全性が確保される。
図3は、それぞれ、その安全性を説明する図である。
通気性を有する防爆繊維シートを使った場合について述べる。
地雷が埋設されている領域において(A)、地雷1が暴爆したとすると、地雷1の破片Pや地雷の上方に覆土されている土砂3Aが同時にその爆発力によって飛散(エアーや飛散物)する(B)。
防爆繊維シート2には下方から上方にかけて飛散物(地雷破片や土砂等の固体)を含む爆風(エアー)による瞬時的な圧力を受ける。
防爆繊維シート2には通気性があるために、爆風の一部は通過するが、飛散物はその殆どが防爆繊維シートによって阻止されて通過しない(C)。
【0032】
また防爆繊維シート2を通過した爆風も確実にエネルギーが緩和された状態となる。
なお、防爆繊維シート自体も通気性があるために爆風の全部をまともに受けることなく、爆発力を逃がすことができ防爆繊維シート自体の破損が防止される。
防爆繊維シート2の上にも土砂3B等が覆土されているが防爆繊維シート2を通過した爆風はエネルギーが低下しているため、人体に殆ど影響はない。
【0033】
一方、伸縮性を有する防爆繊維シートを使った場合については、防爆繊維シート2には伸縮性があるために、爆風は弾圧的に受け止められ飛散物は防爆繊維シートによって阻止されて通過しない。
また防爆繊維シート2が伸長することで弾圧的に爆風を受け止めるために確実にエネルギーが緩和された状態となる。
〔実施の形態2〕
【0034】
本発明の危険防止方法は、防爆繊維シート2を敷設するものであるが、その防爆繊維シート2には、図4に模式的に示すようにICチップ4を設けることができる。
このICチップ4には、種々の記録データを蓄積することが可能であり、無線送信機としての機能を組み込むことも可能である。
このことにより、地雷の施工履歴を得ることができる。
【0035】
また防爆繊維シート2には、ICチップ4と同じように、各種センサを設けることができる。
例えば、圧力センサや温度センサを設けると、地雷が爆発したときに発生する圧力や熱を感知することができ、これで地雷の爆発履歴を得ることが可能となる。
更に、これらの他に無線送信機の機能を組み込むと、防爆繊維シート2の施工履歴、地雷の爆発履歴を遠隔地のコンピュータで受信することができる。
【0036】
参考までにセンサ6とICチップ7とを使った送受信機の構造例について図5を用いて説明する。
図に示されるように、送受信機5は防爆繊維シートに組み込まれたトランスポンダ4へ電波を送信し、それに電力を発生させる。
トランスポンダ4では、圧力センサ、温度センサ等が設けられたセンサ部6にて所定の測定が常時行われる。
センサ部6からの出力信号は、ICチップ7に入力され、センサ部6からのアナログ信号がデジタル信号に変換されてアンテナ8に送信される。
【0037】
アンテナ8からはデータが送信され、圧力データや温度データ等の情報を含むデジタル信号が、別所にある送受信機5により受信される。
この送受信機5を施工現場から離れた場所に配置し、コンピュータを介してトランスポンダ4からのデータを整理すれば、遠隔地からシート敷設現場における防爆繊維シート2の各種履歴(熱履歴、爆発履歴等)を監視することが可能である。
【0038】
また防爆繊維シート2にセンサを設ける例としては、例えば図6に模式的に示すように防爆繊維シート2に光フアイバ9を往復経路で取り付けておき、光の発信及び受信を行う測定部(BOTDR)10に接続しておく。
防爆繊維シート2に地雷の爆破力が作用して伸びるとそれによる周波数の変化を測定部で読み取ることができ爆発履歴を知ることができる。
【0039】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形が可能であることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、防爆繊維シートとして、特にアラミ繊維シートが有効であることを説明したが、その他の材質よりなる防爆繊維シートを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明における地雷埋設地帯に対する敷設手順を示したブロック図である。
【図2】図2は、それぞれ防爆繊維シートを敷設する方法の例を説明する図である。
【図3】図3はその安全性を説明する図である。
【図4】図4は、防爆繊維シートにICチップを設けた例を説明する図である。
【図5】図5は防爆繊維シートにICチップ及びセンサを設けた例を説明する図である。
【図6】図6は防爆繊維シートに光ファイバを設けた例を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1 地雷探知器
2 防爆繊維シート
3A 土砂
3B 土砂
4 トランスポンダ
5 送受信機
6 センサ部(センサ)
7 ICチップ
8 アンテナ
9 光ファイバ
10 測定部
A1,A2 ヘリコプタ
B1,B2 クレーン
F フック
L1 長さ
L2 幅
P 破片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未爆発の地雷が爆発した際の危険防止方法であって、未爆発の地雷が埋設された地盤に地雷の爆破の圧力を緩和するための防爆繊維シートを敷設することを特徴とする地雷に対する危険防止方法。
【請求項2】
未爆発の地雷が爆発した際の危険防止方法であって、未爆発の地雷が埋設された地盤に地雷の爆破の圧力を緩和するための通気性を有する防爆繊維シートを敷設することを特徴とする地雷に対する危険防止方法。
【請求項3】
未爆発の地雷が爆発した際の危険防止方法であって、未爆発の地雷が埋設された地盤に地雷の爆破の圧力を緩和するための伸縮性を有する防爆繊維シートを敷設することを特徴とする地雷に対する危険防止方法。
【請求項4】
防爆繊維シートを敷設して覆土することを特徴とする請求項1に記載の地雷に対する危険防止方法。
【請求項5】
防爆繊維シートは、織布、編布、不織布又は網布であることを特徴とする請求項1に記載の地雷に対する危険防止方法。
【請求項6】
防爆繊維シートは、アラミド繊維シートであることを特徴とする請求項1に記載の地雷に対する危険防止方法。
【請求項7】
防爆繊維シートにICチップを備えたことを特徴とする請求項1に記載の地雷に対する危険防止方法。
【請求項8】
防爆繊維シートにセンサを備えたことを特徴とする請求項1に記載の地雷に対する危険防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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