説明

地雷処理装置

【課題】メンテナンスが容易で、重量、容量が小さく、起伏が激しい地形でも、地雷処理が十分に行える地雷処理装置を提供する。
【解決手段】円筒形状をした一対の枠体1と、枠体1の回転中心に、枠体1に対して回転可能に支持されるシャフト2と、各枠体1の内部で、シャフトに支持される駆動部3と、駆動部3の駆動軸35の回転で枠体1を回転させるための回転機構5と、二つの枠体1に設けるシャフト2を連結する連結部4とを備える。連結部4は、2本のシャフトを上下方向に屈曲可能に連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中などに埋設されている地雷を無人で処理する地雷処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地雷は、世界71カ国に1億数千万個以上埋設されていると言われている。従来、多くの地雷の探査は、作業員が金属探知機などを用いて行っており、この探査で検出された地雷をリモートコントロールでその場で爆破させるか、人の手で除去している。
【0003】
このような作業は、非常に危険であり、特に、地雷が非金属製の場合には金属探知機では地雷を探知できないので危険性が高い。作業者は、あらゆる種類の地雷に対応できるように、防爆服を着用して作業を行っているが、このように防爆服を着用した状態での作業は非常に過酷である。そして、作業者による地雷探査の作業性は、一日に数個が限度であるため、作業効率も悪い。
【0004】
そこで、地雷処理装置として、防爆対策を施した大型の重機を使用し、この地雷処理装置により一定区画の地雷処理を行うもの(例えば特許文献1参照)がある。
【0005】
しかし、大型重機の地雷処理装置の場合、地雷埋設区域によっては、大き過ぎて持ち込めない場合がある。さらに、重機は人が乗って作業するため、地雷が爆破したときに作業者が損傷してしまうおそれがある。
【0006】
また、重量、容量が小さい地雷処理装置(例えば特許文献2参照)も提案されている。特許文献2に示す地雷処理装置は、図5に示すように、二つの筒状の枠体Aを、それぞれの枠体Aが個別に回転できるようにジョイントBで接続するとともに、これらの枠体Aの内部に駆動装置Cを配置させている。
【0007】
駆動装置Cは、ケースD内に二つのモータおよび受信部が内蔵され、ケースD外部にモータで回転駆動するゴム製の駆動用車輪Eが複数と、駆動装置Cを枠体A内で所定の位置に保持させるための保持用車輪Fとが設けられている。枠体Aの内面には、前記駆動用車輪Eと保持用車輪Fがはめられるガイド溝Gが形成されている。
【0008】
図5に示す地雷処理装置では、二つのモータをリモコン操作でそれぞれ駆動させるようになっている。そして、モータ駆動により、駆動用車輪Eを回転させ、ゴム製車輪の摩擦抵抗によってこの駆動用車輪Eをガイド溝G内で走らせることにより、駆動装置Cの重心が移動して枠体Aが回転するようになっている。
【0009】
なお、図5に示す地雷処理装置では、一方のモータにより一方の枠体を回転させ、他方のモータにより他方の枠体を回転させるようになっているため、二つの枠体をジョイントBを介して互いに反対方向に回転させることもできる。
【0010】
このように、図5に示す地雷処理装置は、駆動装置Cにより枠体Aを回転させることにより、枠体Aを前進させたり、後退させて、地雷が埋設されている場所を走行するようになっており、枠体Aの地面への接触により地雷を爆破するようになっている。
【0011】
【特許文献1】特開2001-296100号公報
【特許文献2】特許第2516534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記した特許文献2に示す小型の筒状地雷処理装置は、メンテナンスが容易で、重量、容量が小さいため、重機など大型の地雷処理装置を持ち込めない地域でも使用することができる。
【0013】
しかしながら、図5に示す特許文献2の地雷処理装置は、二つの枠体Aの回転中心が同一となるように、二つの枠体Aは、ジョイントBを介して連結されているため、装置全体が軸方向に長くなる。
【0014】
さらに、ジョイントBは、これら枠体Aを個別に回転できるようにしているだけであり、軸方向以外の方向に変形できる自由度が無く、二つの枠体Aは、常に回転軸が同一直線となるように維持されている。
【0015】
その結果、起伏が激しい地形では、枠体Aの外周面を起伏に沿わすことができず、枠体Aの地面への接触面積が小さくなってしまい、地雷の踏み残しが多くなる。また、図5に示す特許文献2の地雷処理装置は、駆動装置Cの重心の移動により枠体Aを回転させるようにしているため、連続したスムーズな動きができない。
【0016】
また、近年、センサーを搭載した歩行ロボットによって処理することが検討されているが、非常に高価な装置であり、高度なメンテナンスと信頼性の高い電源の確保が必要となることから、インフラ整備の不十分な地雷埋設地域での使用には問題が多く、未だ実用化には至っていない。
【0017】
従って、本発明の目的は、メンテナンスが容易で、重量、容量が小さく、起伏が激しい地形でも、地雷処理が十分に行える地雷処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の地雷処理装置は、円筒形状をした一対の枠体と、枠体の回転中心に、枠体に対して回転可能に支持されるシャフトと、各枠体の内部で、シャフトに支持される駆動部と、駆動部の駆動軸の回転で枠体を回転させるための回転機構と、二つの枠体に設けるシャフトを連結する連結部とを備え、連結部は、2本のシャフトを上下方向に屈曲可能に連結する。
【0019】
枠体は、地雷処理装置の運搬の利便性の向上や、地雷踏破時の爆圧を逃がすために軽量化する必要があり、その構造は、籠状に構成することが好ましい。枠体は、シャフトを軸受を介して支持する一対の支持枠と、それぞれの支持枠から放射状に外方に延びる複数のスポーク部と、スポーク部の径方向外側端部に固定される外枠と、二つの外枠を連結する複数本の棒状の爪部材とを備える構成が挙げられる。
【0020】
この場合、爪部材は、外枠に対して取り外し可能とすることが好ましい。地雷の爆破で爪部材を積極的に破損させることにより、爆破の衝撃をこれら爪部材で吸収し、駆動部の損傷をできるだけ少なくする。爪部材を外枠に対して取り外し可能にすることにより、破損した爪部材をすぐに交換できるので装置全体の持久力を向上できる。さらに、走行させる土地の状態に合わせて爪部材の形状、例えば爪の長さなどを容易に変更することができる。
【0021】
また、枠体に複数のスポーク部を設ける場合、スポーク部は単なる棒状体としてもよいし、スポーク部に例えばバネを組み込んだり、空気圧を利用したりしたダンパー構造としてもよい。スポーク部をダンパー構造とする場合には、地面の起伏が激しい地域での走行時に爪部材などにかかる衝撃をダンパーで吸収でき、枠体におけるシャフト支持部にかかる衝撃力を緩和することができる。
【0022】
シャフトは、回転を円滑に行えるようにするために、軸受を介して枠体(例えば支持枠)に支持する構成とすることが好ましい。シャフトを枠体に対し回転可能に支持するので、枠体が回転しても、シャフトは回転させないようにすることができ、シャフトに駆動部を支持させたときに、駆動部を所定の位置に維持できる。
【0023】
また、地雷処理装置は、遠隔操作をする場合、例えば、枠体の内部に配置される駆動部に、制御装置に接続されているケーブルを接続することができる。この場合、シャフトを筒状に形成し、シャフトの内部にケーブルを内蔵させる。このようにシャフト内にケーブルを内蔵することにより、ケーブルを保護することができる。
【0024】
駆動部と制御装置とをケーブルで接続する場合には、地雷処理装置を遠隔操作することができるので、作業者の危険性も少なくなる。また、地雷処理装置が爆破により故障してしまったときには、ケーブルを手繰り寄せて地雷処理装置を回収できるので、作業者の危険を少なくできる。なお、地雷処理装置を遠隔操作する場合は、無線機を使用して遠隔操作を行うようにしてもよく、その場合、ロープを地雷処理装置に接続しておき、地雷処理装置が故障したときには、ロープを手繰り寄せるようにする。
【0025】
さらに、シャフトは、直進走行中はゆがみや曲がりが生じてはならないので、シャフトを保護することが好ましい。特に、シャフト内部に、ケーブルを内蔵する場合はシャフトを保護することが必要となる。そこで、筒状のシャフトカバーでシャフトを覆うようにすることが好ましい。
【0026】
駆動部を電気駆動させる場合は、モータと、モータの回転速度を変更可能なインバータと、減速機と、モータを駆動するためのバッテリーとを備えるようにすることが好ましい。駆動部は、枠体ごとに設けられており、それぞれの枠体を個別に回転できるようにする。なお、駆動部がバッテリーを備えていない場合には、ケーブルを用いて外部の発電機から電源をとるようにしてもよい。または、駆動部は、エンジンを用いてもよい。駆動部にエンジンを用いる場合には、例えば、価格が比較的安価な農機に用いる小型エンジンを用いるとともに、この小型エンジンには、電子制御スロットルと可変バルブを設け、さらに、変速機を備えるようにすることが好ましい。
【0027】
駆動部は、シャフトに直接取り付けてもよいが、シャフトに筒状のシャフトカバーを装着する場合には、このシャフトカバーに駆動部を固定することが好ましい。駆動部をシャフトカバーに取り付けることにより、駆動部の取り付けが容易に行える。
【0028】
また、駆動部をシャフトの近く、即ち、枠体の回転中心付近に配置させることができるので、モータなどの機器を地面から離れた位置に取り付けることができる。その結果、爆破時におけるモータ等の機器の破壊を軽減できるし、水溜り走行中にモータ等の機器が水に浸かってしまうのをできるだけ防いで、モータの故障も少なくなる。
【0029】
駆動部は、鉄板で覆って保護することが好ましい。このように鉄板で保護することにより、地雷が爆破したときの駆動部の損傷を防止できる。回転機構は、駆動部の駆動軸にスプロケットを固定し、枠体の回転中心にもスプロケットを設け、駆動軸側のスプロケットと枠体側スプロケットをチェーンで連結することにより構成することができる。
【0030】
連結部は、シャフト端部に固定されるユニバーサルジョイント部と、シャフトに固定され、ユニバーサルジョイント部を挟むようにシャフトの軸方向に対して直交する方向に延びる一対のフランジ部と、フランジ部間に取り付けられ、2本のシャフトを直線状態に保持する方向に付勢する弾性機構とを備える構成とすることが好ましい。
【0031】
ユニバーサルジョイント部は、ヨークを用いた十字タイプのものを用いることが好ましい。
【0032】
弾性機構は、フランジ部にシャフトの周方向に等間隔で複数の孔を形成しておき、外周にコイルバネがはめられた棒状部材を、これら孔に遊嵌状に挿通させることにより構成できる。このとき、棒状部材およびコイルバネがフランジ部から抜けないように棒状部材の端部にボルトを取り付ける。
【0033】
負荷がない状態、即ち平坦な地面では、2本のシャフトが同一直線になるようにコイルバネでユニバーサルジョイント部の状態を保持する。そして、起伏の激しい地面では、枠体の外周面が地面の傾斜に沿うように、ユニバーサルジョイント部が曲がり、このとき、コイルバネはフランジ部の傾斜角度に応じて伸縮する。
【0034】
このように、弾性機構により、起伏の激しい地形ではコイルバネが伸縮しながら地面の形状に枠体の外周面が沿うように連結部は可動し、平坦な地形においては、コイルバネの弾性回復力により2本のシャフトを直線状態に保持する。
【0035】
なお、連結部にユニバーサルジョイントを用いる場合、2本のシャフトを連結部において、水平方向に対して30°、好ましくは20°までの可変角度で屈曲させるように、棒状部材の径、フランジ部の孔の大きさ、コイルバネの強さを設定することが好ましい。これは、30°以上になると、枠体の地面への加圧状態が均一にならず、良好な地雷処理作業が行えなくなるからである。ただし、枠体の形状、大きさなどの他の設計条件に応じて、シャフトの可変角度は任意の角度に設定することができる。
【0036】
さらに、本発明の地雷処理装置は、枠体の走行方向前後に延びるガイドバーを備えることが好ましい。このとき、ガイドバーの先端部を枠体よりも前後方向外方位置で地面に接触可能とする。
【0037】
ところで、急斜面で地雷処理装置の走行を行うと、枠体の回転速度が、駆動部の駆動軸の回転速度より遅くなったり、または、速くなってしまう。このような状態のとき、前記したチェーンとスプロケットを用いた回転機構を有する場合には、駆動部がシャフトの回りを周回してしまうおそれがある。駆動部がこのような周回運動をしてしまうと、駆動部の自重によりシャフトまたはシャフトカバーにおける駆動部支持部において負荷がかかり、応力集中により駆動部支持部が損傷するおそれがある。
【0038】
このようなときに、地雷処理装置にガイドバーを設けておくと、ガイドバーの先端部が傾斜した地面に接触して支えとなり、枠体の回転速度が、駆動部による回転速度より速くなったり遅くなったりするのが阻止されるので、駆動部の周回動作を阻止できる。
【0039】
ガイドバーは連結部に固定することが好ましい。さらに、ガイドバーの先端部は上方に反らすよう形成することが好ましい。この反りにより、ガイドバーの先端部が地面に突き刺さったり、引っかかることを阻止できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の地雷処理装置は、地面の起伏に応じて枠体の外周面を地面に沿わしながら走行できるので、荒地での操作性、踏破力を向上できる。その結果、枠体の地雷踏み残しを減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明地雷処理装置の実施の形態を説明する。本実施形態は、図1および図2に示すように、円筒形状をした一対の枠体1と、枠体1に支持されるシャフト2と、各枠体1の内部に配置される駆動部3と、二つの枠体1に設けるシャフト2を連結する連結部4とを備える。
【0042】
枠体1は、円筒形状をしており、軽量化のために籠状に形成したものを一対設けている。枠体1は鉄などの金属で形成されており、シャフト2を軸受11を介して支持する一対の支持枠12と、各支持枠12の外側に配置される外枠13と、支持枠12と外枠13を連結するスポーク部14と、外枠13に取り付けられる複数本の棒状の爪部材15とを備える。
【0043】
支持枠12は円板状をしており、中心に孔が形成され、この孔に軸受11が取り付けられている。二つの軸受11にシャフト2を挿通させて、シャフト2の両端側を軸受11を介して支持枠12で支持する。一対の支持枠12のうち、一方の支持枠12には、回転機構5を構成する枠体側スプロケット52が一体に形成されている。この枠体側スプロケット52は、シャフト2よりかなり大径の円筒部53とこの円筒部53の軸方向一端部に径方向外方に延設される歯部54を備え、円筒部53の他端が支持枠12の平面部に溶接により固定されている。
【0044】
外枠13は、断面L字のリング部材からなり、円筒面に爪部材15がボルトにより取り付けられ、他の面にスポーク部14が溶接により固定される。
【0045】
スポーク部14は、支持枠12から放射状に延びるように等間隔で設けられている。スポーク部14は、地雷爆破時の爪部材などにかかる衝撃を吸収して、枠体1の支持枠12にかかる衝撃力を緩和するために、ダンパー構造としている。本実施形態では、スポーク部14は、1つの外枠13に対して6本のダンパーを用いて構成されている。スポーク部14は、一端部が支持枠12に溶接により固定され、他端が外枠13に固定されている。
【0046】
爪部材15は、二つの外枠13を連結するように外枠13の外面に両端部が固定される。爪部材15は、枠体1の外周面に等間隔で配置される。爪部材15は、棒状をしており、断面]形状(コ字状)をしている。爪部材15は、]形状の開放側端部が爪となり、開放側端部が地面に接触するように爪部材15が外枠13に取り付けられる。
【0047】
爪部材15は、外枠13に対して取り外し可能とするために、外枠13にボルトにより取り付けられている。爪部材15を枠体1に対して取り外し可能な構成とすることにより、地雷が爆破したときに、爪部材15を積極的に破損させて、爆破の衝撃を爪部材15で吸収し、駆動部の損傷をできるだけ少なくできる。爪部材15は、外枠13から取り外すことができるので、破損してもすぐに交換できることから、装置全体の持久力が向上する。なお、爪部材15は、走行させる土地の状態に合わせて爪の形状、爪の長さなどを変更することができる。
【0048】
シャフト2は、軸受11を介して枠体1に対して回転可能に支持される。シャフト2は、枠体1に対し回転可能に支持されるので、枠体1が回転しても、シャフト2は枠体の回転に同期しない。そのため、シャフト2に後記するシャフトカバー61を介して駆動部3を支持させたときに、駆動部3を自重により所定の位置に配置できる。
【0049】
また、本実施形態では、地雷処理装置は、遠隔操作をするようになっており、枠体1の内部に配置される駆動部3と外部の制御装置(図示せず)とをケーブルで接続するようになっている。具体的には、図示していないが、シャフト2を筒状に形成し、それぞれのシャフト2内に駆動部3に接続されるケーブルを配設しておく。
【0050】
そして、図1に示すように一方のシャフト2の一端にケーブル71の一端を接続して、シャフト内部のケーブルと接続する。一方のシャフト内部のケーブルは他端側まで延びており、図1に示すように、このシャフト他端と他方のシャフトの一端とにケーブル72を接続して、双方のシャフト内のケーブルをこのケーブル72で接続する。
【0051】
ケーブル71の他端は制御装置に接続し、制御装置を操作することにより地雷処理装置を遠隔操作する。本実施形態では、ケーブルを用いて電源もとるようにしている。
【0052】
本実施形態では、シャフト2を保護するために、筒状のシャフトカバー61でシャフト2を覆っている。このシャフトカバー61に駆動部3を固定するための固定部材62が取り付けられる。
【0053】
駆動部3は、モータ31と、減速機32と、モータ31の回転速度を変更可能なインバータ33とを備える。駆動部3のモータ、インバータ、減速機は、枠体ごとに設けられている。
【0054】
モータ31は、インバータ33で駆動軸の回転数、回転方向を変更できるようにしている。インバータ33で、モータの回転方向および回転数を制御することにより、それぞれの枠体1を反対方向に回転させて地雷処理装置を回転させたり、各モータ31の回転数を変えて地雷処理装置をカーブ走行させたりして、進行方向を変更する。なお、下降時の制動は、減速機での摩擦力とインバータ制御でモータに負荷を発生させることにより得られる。
【0055】
駆動部3は、シャフト2に装着される筒状のシャフトカバー61に固定部材62を介して固定されている。そして、モータ31、減速機32、インバータ33の外周を鉄板34で覆って保護しており、この鉄板34を固定部材62に固定している。
【0056】
このように、駆動部3を枠体1の回転中心付近に配置させているので、モータなどの機器を地面から離れた位置に配置できる。その結果、爆破時のモータ等の機器の破壊を軽減できるし、水溜り走行中にモータ等の機器が水に浸かってしまうのをできるだけ防いで、モータの故障も少なくできる。
【0057】
本実施形態では、駆動部3の駆動軸35にスプロケット51を固定し、枠体1の支持枠12に形成する枠体側スプロケット52と、駆動軸側のスプロケット51とをチェーン55で連結することにより回転機構5を構成している。駆動軸35が回転すると、駆動軸側スプロケット51、チェーン55を介して枠体側スプロケット52が回転し、シャフト2は回転せずに、枠体1が回転するようになっている。
【0058】
本実施形態では、各枠体1に設けるシャフト2を連結部4で連結しており、連結部4は、2本のシャフト2を上下方向に屈曲可能に連結する。
【0059】
連結部4は、シャフト端部に固定されるユニバーサルジョイント部41を備えている。ユニバーサルジョイント部41は、二つのヨークを用いた十字タイプのものを用いている。
【0060】
さらに、連結部4は、ユニバーサルジョイント部41の各ヨーク部分の軸方向一端に一体に形成されるフランジ部42を備える。フランジ部42は、ユニバーサルジョイント部41を挟むようにシャフトの軸方向に対して直交する方向に延びるように形成され、中心部にシャフト2を挿入するようになっている。フランジ部42にシャフト2を挿入することにより、シャフト2がフランジ部42とユニバーサルジョイント部41とに接続される。シャフト2は、これらフランジ部42とユニバーサルジョイント部41とに接続した状態で螺子等によって固定される。
【0061】
本実施形態では、フランジ部42の間に取り付けられ、2本のシャフト2を直線状態に保持する方向に付勢する弾性機構43を備えている。弾性機構43の構成について説明する。
【0062】
まず、フランジ部42におけるシャフト挿入部の周囲に等間隔で複数(本実施形態では、6つ)の孔を形成しておく。そして、フランジ部42の各孔に棒状部材44を挿通させるのであるが、このとき、1本の棒状部材44に対して3つのコイルバネ45をはめ合わせる。中央のコイルバネ45をフランジ部42で挟んだ状態にして、棒状部材44をフランジ部42の孔に挿通させ、棒状部材44の両端部に残りのコイルバネ45を装着し、棒状部材44の両端部にコイルバネの抜け止め用のボルト46を取り付ける。棒状部材44は、フランジ部42の孔に対して遊嵌状に挿通される。
【0063】
負荷がない状態、即ち平坦な地面では、2本のシャフト2が一直線状になるようにコイルバネ45の付勢力でユニバーサルジョイント部41の状態を保持する。そして、起伏の激しい地面では、図3の(a)及び(b)に示すように、枠体1の外周面である爪部材15が地面の傾斜に沿うように、ユニバーサルジョイント部41が上下方向に曲がる。
【0064】
このとき、シャフト間の角度が広い側に配置されている軸方向中央のコイルバネは伸び、両端側のコイルバネは縮む。また、シャフト間の角度が狭い側に配置されている軸方向中央のコイルバネは縮み、両端側のコイルバネは伸びる。コイルバネ45は、棒状部材44により、棒状部材44の軸方向(走行方向に対して左右の方向)にのみ伸縮し、走行方向や上下方向には殆ど変形しないようになっている。
【0065】
さらに、棒状部材44の外面とフランジ部42に形成する孔との間に形成される隙間の大きさにより、棒状部材44の中心軸に対するフランジ部42の傾きの範囲が決定される。
【0066】
本実施形態では、ユニバーサルジョイント部41において、シャフト2が、水平方向に対して30°(好ましくは20°)までの傾斜角度の範囲で屈曲できるように、フランジ部42の孔と棒状部材44の径の大きさを設定している。
【0067】
これは、30°以上、即ち、シャフト2が連結部4において上下に曲がり過ぎると、枠体1の地面への加圧状態が均一にならず、地雷処理を効率よく行えなくなるからである。また、シャフトが曲がり過ぎてしまうと、シャフト内にケーブルを内蔵する場合に、ケーブルが損傷してしまうおそれもある。ただし、枠体の形状、大きさなどの他の設計条件に応じて、シャフトの可変角度を任意の角度に設定することができる。
【0068】
また、連結部4は、棒状部材44により、ユニバーサルジョイント部41の走行方向への曲がりは、5°以内に収まるように設定している。これは、シャフト2が連結部4において前方または後方に曲がってしまうと枠体1の走行に支障をきたすからである。
【0069】
本実施形態では、連結部4をユニバーサルジョイント部41と、フランジ部42と、弾性機構43とを備える構成としているので、起伏の激しい地形ではコイルバネ45が伸縮しながら地面の形状に枠体1が沿うようにユニバーサルジョイント部41が可動し、平坦な地形においては、コイルバネ45の弾性回復力により2本のシャフト2を一直線の状態に保持できる。シャフトの直線状態を保持するためには、コイルバネは周方向に6ヶ所用いることが好ましい。
【0070】
さらに、地雷処理装置は、連結部4に枠体1の走行方向に延びるガイドバー8を設けている。ガイドバー8は、その先端部を枠体1よりも前後方向外方位置で地面に接触可能な長さに形成している。
【0071】
駆動部3の回転動力をチェーン55を介して枠体1に伝達する構成とする場合、駆動部3がシャフト2の軸心回りを周回をしてしまう場合がある。この周回移動量は、シャフト2の軸心と駆動部3の重心とを結ぶ線(シャフトの軸心から径方向外方に延びる線)が、シャフト2の軸心側端部を支点として回転する角度で表すことができる。
【0072】
駆動部がこのような周回運動をしてしまうと、駆動部の自重によりシャフトにおける駆動部支持部において負荷がかかり、応力集中により駆動部支持部が損傷するおそれがある。
【0073】
本実施形態では、ガイドバー8を設けているので、このガイドバー8の先端部が傾斜した地面に接触すると、ガイドバー8が枠体1の支えとなって、枠体1の回転速度が、駆動部3による回転速度より速くなったり遅くなったりするのを阻止できる。その結果、枠体内部で駆動部が回転するのを防ぐことができる。
【0074】
駆動部の周回移動量、即ち、前記線の回転角度は、垂直方向から前後回転方向に30°を超えない範囲とすることが好ましい。本実施形態では、ガイドバー8の長さを、前記線の回転角度が前記30°の範囲を超えないように設定している。
【0075】
例えば、枠体が急な上り坂を登る場合、ガイドバーが無い場合には、枠体が走行方向(登り)とは反対方向に回転(後退)しようとするため、駆動部は枠体内でシャフトの回りを周回する動きをする。地雷処理装置にガイドバーを設ける場合には、図4の(a)に示すように、ガイドバーの先端部が傾斜した地面に接触して支えとなり、枠体の逆回転(後退)が阻止されるので、駆動部の動きを阻止できる。しかも、ガイドバーを介して地面から受ける反力により枠体の接地力が増大し、登坂力が大きくなる。従って、起伏の激しい地形でも自在な走行が可能になる。
【0076】
また、下降時には、枠体が走行方向(下降)への回転が加速しようとするため、駆動部は枠体内でシャフトの回りを周回する動きをしようとするが、図4の(b)に示すように、ガイドバーの先端部が傾斜した地面に接触して支えとなり、枠体の回転の加速が阻止されるので、駆動部の動きを阻止できる。
【0077】
さらに、ガイドバー8の先端部は、図4に示すように、上方に反らすよう形成している。この反りにより、ガイドバーの先端部が地面に突き刺さったり、引っかかることを阻止できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の地雷処理装置は、起伏の激しい地形や、重量が重たく大型の地雷処理装置を搬送できない地域での使用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態にかかる地雷処理装置の正面から見た一部断面の全体図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる地雷処理装置の全体側面図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態にかかる地雷処理装置の山部での状態説明図であり、(b)は地雷処理装置の谷部での状態説明図である。
【図4】(a)は本発明の実施形態にかかる地雷処理装置の登板時の安全棒の状態を示す状態説明図であり、(b)は地雷処理装置の下降時の安全棒の状態を示す状態説明図である。
【図5】従来の地雷処理装置の正面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 枠体
11 軸受 12 支持枠 13 外枠 14 スポーク部
15 爪部材
2 シャフト
3 駆動部
31 モータ 32 減速機 33 インバータ 34 鉄板
35 駆動軸
4 連結部
41 ユニバーサルジョイント部 42 フランジ部
43 弾性機構 44 棒状部材 45 コイルバネ 46 ボルト
5 回転機構
51 スプロケット 52 スプロケット 53 円筒部 54 歯部
55 チェーン
61 シャフトカバー 62 固定部材
71 ケーブル 72 ケーブル 8 ガイドバー
A 枠体 B ジョイント C 駆動装置 D ケース
E 駆動用車輪 F 保持用車輪 G ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状をした一対の枠体と、
枠体の回転中心に、枠体に対して回転可能に支持されるシャフトと、
各枠体の内部で、シャフトに支持される駆動部と、
駆動部の駆動軸の回転で枠体を回転させるための回転機構と、
二つの枠体に設けるシャフトを連結する連結部とを備え、
連結部は、2本のシャフトを上下方向に屈曲可能に連結していることを特徴とする地雷処理装置。
【請求項2】
連結部は、
シャフト端部に固定されるユニバーサルジョイント部と、
シャフトに固定され、ユニバーサルジョイント部を挟むようにシャフトの軸方向に対して直交する方向に延びる一対のフランジ部と、
フランジ部間に取り付けられ、2本のシャフトを直線状態に保持する方向に付勢する弾性機構とを備えることを特徴とする請求項1に記載の地雷処理装置。
【請求項3】
枠体の走行方向前後に延びるガイドバーを備え、ガイドバーの先端部を枠体よりも前後方向外方位置で地面に接触可能としていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地雷処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−64205(P2006−64205A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244252(P2004−244252)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(591039425)高知県 (51)