地震信号検出のための方法及びシステム
【課題】地震信号検出で使用するように構成又は設計された感震センサを利用する方法及びシステムを提供すること。
【解決手段】地震信号検出で使用するためのシステムであって、ハウジングと、前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、を含む少なくとも1つの電気浮上式感震センサと、前記感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、前記感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、前記プロセッサにより実行可能な命令セットと、を備え、前記命令セットは実行時に、前記感震センサに前記電気信号を印加することにより、前記可動コイルを重力に対して浮上させて、前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置にくるようにするシステム。
【解決手段】地震信号検出で使用するためのシステムであって、ハウジングと、前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、を含む少なくとも1つの電気浮上式感震センサと、前記感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、前記感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、前記プロセッサにより実行可能な命令セットと、を備え、前記命令セットは実行時に、前記感震センサに前記電気信号を印加することにより、前記可動コイルを重力に対して浮上させて、前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置にくるようにするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地層内の震動を感知するための装置に関する。より具体的には、本開示は、磁場内の中心位置に置かれた可動コイルを有する、受振器及び地震計などの動電型感知装置を対象とする。他の種類の振動トランスデューサの感知動作又は伝送動作のいずれにも本開示を適用することができる。
【背景技術】
【0002】
石油及びガス産業では、地表上、海中、海底、掘削孔内などの様々な場所に感震センサを配置して、地下構造の変化から反射される地震信号を測定することにより、操業上重要な地下の構造及び物質の情報を提供する。この場合、一般に感震センサは、地下構造内の音響インピーダンス比に関する有用なデータを取得する目的で使用される。
【0003】
感震センサはまた、地震のモニタ、水及びCO2貯留層の長期モニタ、核実験のモニタ、並びに地震データの正確かつ効率的な取得を必要とするこのような同様の活動においてもよく見られる。
【0004】
地震信号の検出では、地震エネルギー源から生じる地中の震動を離れた場所でセンサによって感知し、これらのセンサの出力を使用して地下層の構造を特定する。地震エネルギー源は、地震及びその他の地殻活動、地盤沈下、火山活動などの自然的なもの、或いは地表又は地下作業から生じる音響信号のような人工的なもの、或いは地表又は地下における地震源の意図的な操作によるものであり得る。例えば、感知される地震信号は、破砕或いは貯留層の崩壊又は変化により引き起こされる微小地震活動に由来する直接信号、又は人工エネルギー源に由来する反射信号である場合がある。
【0005】
センサは、地震源から生じる圧力場を感知する水中聴音器、又は地震源から発生する粒子運動を感知する受振器という2つの主なカテゴリに分けられる。
【0006】
図1Aに示すように、典型的な受振器10は、ばね20により、極片16を有する磁石15の周囲に配置されるように懸架された1又はそれ以上の円筒形可動コイル12を有する。受振器10は、ハウジング14及び端蓋18を有する。個々の可動コイル12は、ばね20により中立した静止位置に保持され、磁石15の磁場内で磁場の中心から自由に震動する。通常、ばね20は、コイル12を磁石15の磁場に対して中心の均衡点に保持するように設計された金属薄板で作られる。垂直動作用に設計された受振器では、ばね20にプレストレスを与えて、可動コイル12を磁場内で重力加速度に抗して中心に寄せる。
【0007】
地震エネルギー源から直接、又は地下の反射物を介して伝播する地震エネルギーによって地面が動くと、地表、海中又は海底、或いは地面を貫く掘削孔の壁に位置することができる受振器が、音響波伝播により引き起こされる粒子運動とともに動く。
【0008】
しかしながら、受振器の軸が動きの方向と合致する場合には、受振器内部のばね上に取り付けられた可動コイルが同じ位置に留まり、コイルのハウジングに対する相対運動が引き起こされる。コイルが磁場内で動くとコイル内で電圧が生じ、これを信号として出力することができる。
【0009】
図1Bは受振器の概略図であり、この図ではx0は可動コイルの中立位置であり、xは運動中のコイルの位置であり、ξは、コイルの磁場の中心に対する相対変位である。ばね質量系が固有周波数
を生み出し、この場合kはばね定数であり、mはコイル組立体の移動質量である。可動コイルの磁場に対する動きにより電気出力
が生成され、この場合S0は感度であり、
は、受振器の固有周波数を上回るコイルの速度である。生成された電気信号は分路抵抗器Rs及びコイルを流れる。コイル内の電流iがコイルの動きを減衰させる。10Hzの固有周波数を有する典型的な受振器の例示的な振幅及び位相応答を、図1Cに異なる減衰率Dごとに示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第11/733,214号広報
【特許文献2】米国特許第7,225,662号広報
【特許文献3】米国特許第7,099,235号広報
【特許文献4】米国特許出願US12/180,560号広報
【特許文献5】日本国特許P3098045号広報
【特許文献6】米国特許第3,559,050号広報
【特許文献7】米国特許第4,051,718号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
地震活動のモニタでは、低周波地震データを捕捉することが望ましい。この場合、地震活動を深い掘削孔内で測定すると信号対ノイズ比(SNR)が向上する。しかしながら、深い掘削孔内の環境温度は高いことが多く、また掘削孔の直径は小さい。小型サイズの低周波高温受振器を設計することは困難である。しかも、掘削孔用の受振器は、取り扱いが乱暴になるため頑丈でなければならない。掘削孔は偏向する可能性があるので、掘削孔受振器には傾斜した状態での作業も期待される。さらに、受振器は、深い孔の中に設置された後に地震活動を何年にもわたって継続的にモニタすることを求められる場合がある。受振器は、長期にわたり高温で確実に機能することが期待される。
【0012】
前述したように、重力加速度に起因する力は、ばねの固有変位により相殺される。
mg=kξ0 式1
この場合、mは移動質量であり、kはばね定数であり、ξ0は固有変位である。
であるので、
となる。
式2は、固有変位が固有周波数の二乗に反比例し、低い固有周波数の受振器ではこの量が大きくなることを示している。
【0013】
図2Aは、重力加速度に起因する受振器の可動コイルの固有変位ξ0を固有周波数f0=ω0/2πの関数として示している。この変位は、コイルを中心に置くためにばねにおいて必要なプレストレスの量である。図2Aから明らかなように、10Hzの受振器では約2.5mmのプレストレスが必要となる。この場合、低周波受振器、すなわち低いf0を有する受振器では大きな固有変位が必要となる。以下でより詳細に解説するように、掘削孔の下げ孔内に配置するのに適した小型サイズの低周波感震センサを得ることは困難である。
【0014】
地震信号を音響インピーダンスに逆変換したり、或いは測定した地震信号から地震源の機構を計算したりなどのいくつかの用途では低周波信号が望ましいので、受振器の固有周波数を低減させる必要がある。しかしながら、受振器の固有周波数が低下すると固有変位が増加する。通常、受振器は、外径が1インチであり、高さが1.2インチである。このような小さなサイズでは、ばねにおいて可能な最大プレストレスは数ミリメートルであり、インチの位ではない。例えば、2インチの外径及び4インチの高さを有する大型の地震計であっても、数インチのプレストレスを実現することはなおも困難である。従って、固有周波数が低くかつ小型の受振器を設計することは困難である。
【0015】
通常、受振器のばねは、耐久性を求めてベリリウム銅で作られる。ばねは、可動コイルを磁場の中心に保持するように設計されるが、ばねには時間とともにクリープが生じる。図2Bに示すように、クリープは特に高温において顕著である。図2Bに示すように、インコネルは、ベリリウム銅よりもクリープが発生しにくいことが知られている。しかしながら、インコネルは高価であるとともにばねに作るのが困難である。
【0016】
ばねのクリープは、時間とともにコイルを中心から変位させるので、受振器応答もまた変化する。最終的に、ある使用期間後には、可動コイルが受振器ハウジングの底部まで変位する場合があり、受振器が外部震動に対して応答しなくなる。
【0017】
受振器が傾斜した場合、すなわち設計された姿勢から離れた場合、可動コイルが磁石内の磁場に対して偏心する。図2Cを参照されたい。上述したように、可動コイルを支持するばねには、可動コイルが受振器内の中心にくるようにプレストレスを与えて重力を補償する。しかしながら、このような受振器が傾斜した場合、プレストレスばねが可動コイルを上方向に移動させる。従って、図2Cに示すように、可動コイルが受振器の垂直位置に対する中立位置から変位する。図2Cでは、垂直な受振器の感震センサの可動コイルの中立又は静止位置をx0で表し、傾斜θに起因して変位した位置をxで表している。傾斜量が大きい場合、可動コイルは受振器の端蓋にぶつかって、以後、受振器が地震振動に応答できなくなる可能性がある。
【0018】
図2Cに示すように、受振器が垂直方向から傾斜した場合、プレストレスばねが、弱い重力加速度に起因して可動コイルを上方向にξだけ移動させる。ξの量は、
となる。
この場合、gは重力加速度であり、θは垂直から測った傾斜であり、ω0は2πf0に等しい角固有周波数であり、kはばね定数であり、mは移動質量である。下付き文字vは、受振器が垂直な場合に可動コイルを中心に置くようにプレストレスを与えられたばねを有する垂直受振器を示す。
【0019】
同様に、プレストレスばねを有していない水平受振器では、可動コイルの偏位は、
となる。
図2Dに示すように、固有変位は受振器の固有周波数が低いときに大きく、傾斜に起因する固有変位のシフトが大きくなる。可動コイルのストロークには設計により制限があるので、可動コイルが運動するための最大空間を超える可能性があり、受振器が振動に反応しなくなる。
【0020】
可動コイルが磁束場内の中心にない場合、開回路感度S0及び開回路減衰D0が低減し、全高調波歪みが大きくなる。この場合、垂直受振器がその垂直位置から傾斜すると、受振器応答パラメータSo、Do、及びfoが傾斜量に基づいて変化する。受振器応答パラメータの変化は、記録される地震信号の波形を変化させ、これは記録データの分析にとって望ましくない。
【0021】
要約すると、低周波数の弱い地震信号を測定するためには、受振器の固有周波数が低くなければならない。しかしながら、固有周波数が低下すると受振器の固有変位が大きくなり、この受振器の固有変位に対応するために受振器のサイズが増大する。重力加速度に起因する可動コイルの固有変位が大きい場合、異なる傾斜条件ごとに固有変位の変化に対応することが困難となる。従って、傾斜範囲が大幅に制限され、設置中に受振器の厳密な設定が必要となる。最終的に、特に高温において時間経過とともにクリープが生じ、このような受振器は、長期間にわたる使用後に作動しなくなる。
【0022】
従って、地震測定の精度を向上させるために、従来の受振器を改善する要望が存在することを理解できるであろう。
【0023】
上記で示した従来の感震センサ設計の制限は排他的であることを意図するものではなく、むしろこれまでに知られているセンサ機構の有効性を低下させ得る数ある制限の中の1つである。しかしながら、上述の制限は、これまでのセンサ構造が価値ある改善を認めることを実証するには十分なものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本明細書で開示する実施形態は、受振器及び地震計などの感震センサのための方法及びシステムを提供する。特に、本開示のいくつかの実施形態は、小型受振器パッケージで低周波地震信号を復元する能力を与える感震センサを有する方法及びシステムを提供する。本開示の感震センサは、全方向傾斜可能であるとともに高温環境内における長期配置によって悪影響を受けない。
【0025】
電流を印加して重力を打ち消すことにより、感震センサの可動コイルが、感震センサ内部の磁場に対して中心位置に配置される。重力に起因する可動コイルの固有変位がプレストレスばねではなく電流によって補償されるので、本開示の感震センサは、低周波地震信号の捕捉、及び異なる動作方向及び環境における使用に適する。感震センサは、単一のコイルフィードバックシステム、及び変位信号と速度信号との組み合わせを含む信号を有することにより、幅広い周波数応答を得ることが可能になる。さらに、試験回路をシステムに統合して、フィードバックパラメータ及び信号組み合わせ用のパラメータの応答較正及び調整を行う。また、本明細書で開示するシステム及び方法は、地震データを捕捉する一方で、継続的温度モニタ、並びに浮上電流、フィードバックパラメータ、及び信号組み合わせパラメータの更新を行う。
【0026】
出願人は、可動コイルを重力に抗して上昇させるために従来のプレストレスばねではなく電流を使用することにより、ばねにかかる重力が無くなることを認めた。電気浮上がばねから応力を除去することにより、高温でのクリープが防がれる。
【0027】
出願人は、電気浮上が地震信号に対するDCシフトを引き起こすことをさらに認めた。関心のある超低周波信号では、単純なDC遮断フィルタが、低周波信号に対する位相シフトを引き起こす。出願人は、地震信号内のDCオフセットを消去するための様々な方法を本明細書において提案している。
【0028】
出願人は、正の変位フィードバックを使用することにより受振器の固有周波数を低減できることをさらに認めた。また、出願人は、変位信号と速度信号とを組み合わせることにより、幅広い周波数応答を取得できることを実現した。また、出願人は、較正を使用してフィードバックパラメータを決定できること、及び変位の積分値を加えること、すなわち開ループ制御によって受振器応答を均一にできることも実現した。出願人はまた、受振器の温度をモニタすることにより、地震データの捕捉を中断することなく、フィードバックパラメータ、信号組み合わせ、又はイコライザパラメータを継続的に更新できることも認めた。
【0029】
本開示の1つの実施形態では、地震信号検出で使用するためのシステムが、少なくとも1つの電気浮上式感震センサを備える。この電気浮上式感震センサは、ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配置されたハウジング内の可動コイルとを備える。電気回路が、感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計される。デジタル信号プロセッサが感震センサと通信し、プロセッサにより実行可能な命令セットが、実行時に感震センサに電気信号を印加して可動コイルを重力に抗して浮上させ、感震センサ内の磁場に対する中心位置にくるようにする。
【0030】
ある態様では、電気回路が、感震センサの可動コイルの動きを調整する分路抵抗器を備えることができ、及び/又は電気回路を、速度フィードバックによって可動コイルの動きを調整するように構成又は設計することができる。他の態様では、電気回路を、感震センサに統合フィードバックを提供するように構成又は設計することができる。デジタル信号プロセッサは、感震センサによる地震データの捕捉中に、感震センサからの電気信号出力をモニタして感震センサの温度を求め、センサパラメータを温度依存性に関して補償するように構成又は設計することができる。1つの考えられる実施形態では、電気回路が、感震センサの可動コイルに定電流を供給するようにさらに構成又は設計される。本開示のある態様では、浮上力が一定である。
【0031】
感震センサは、掘削孔の下げ孔内で使用するように、地震信号検出において恒久的又は半恒久的に設置するように、或いは約摂氏125度を超える高温環境内に長期配置するように構成又は設計することができる。本明細書におけるさらに他の態様では、感震センサを、掘削孔の下げ孔内で低周波地震信号を検出するように構成又は設計することができる。1つの考えられる実施形態では、感震センサが、ジンバルで支えなくても全方向傾斜可能である。
【0032】
本開示の態様では、電気回路を、浮上中に可動コイルの位置を測定するように構成又は設計することができる。システムは、測定された可動コイルの位置に基づいて、可動コイルの場所を保持すべく浮上電圧をリアルタイムで調整するように構成又は設計することができる。感震センサは、可動コイルの位置を感知するように構成又は設計された位置センサをハウジング内に備えることができる。電気回路は、浮上電流に起因するDCオフセット及びノイズの1又はそれ以上を補償するように構成又は設計することができる。本明細書におけるさらに他の実施形態では、電気回路を、感震センサの出力に正の変位フィードバック信号を供給して感震センサの固有周波数を低減させるように構成又は設計することができる。さらに他の実施形態では、システムを、感震センサから出力される速度信号と変位信号との組み合わせを含む出力信号を供給するように構成又は設計することができる。
【0033】
本開示のある実施形態では、電気回路を、速度信号を幅広い周波数範囲で出力するように構成又は設計することができる。感震センサを温度変化に関して較正するようにシステムを構成又は設計することができる。
【0034】
ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成されたハウジング内の可動コイルとを含む少なくとも1つの感震センサを備えた、地震信号検出で使用するためのシステムを提供する。システムは、感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、実行時に感震センサに電気信号を印加する、プロセッサにより実行可能な命令セットとを含み、地震信号を検出する一方で、感震センサの可動コイルのコイルDC抵抗(DC抵抗)を継続的にモニタして感震センサ温度を求め、感震センサ温度の変化に基づいてセンサパラメータを補償するように構成又は設計される。本明細書における態様では、システムを、地震信号検出中の温度変化に関してセンサパラメータを補償するように構成又は設計することができる。デジタル信号プロセッサは、信号データをリアルタイムで処理するように構成又は設計することができる。
【0035】
本開示のある実施形態では、少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用した地震信号検出法が、地震信号を検出する場所に少なくとも1つの電気浮上式感震センサを配置するステップと、感震センサに電気浮上信号を供給して可動コイルを重力に抗して浮上させ、可動コイルが感震センサ内の磁場に対して中心位置にくるようにするステップと、少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用して地震信号を検出するステップと、感知した地震信号に基づいて感震センサから速度信号及び変位信号を出力するステップとを含む。
【0036】
ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成されたハウジング内の可動コイルと、可動コイルに電気信号を供給して可動コイルを重力に抗して浮上させ、可動コイルを感震センサ内の磁場に対して中心位置に置くように構成又は設計された電気回路とを含む、掘削孔の下げ孔内での地震信号検出で使用するための感震センサを提供する。ある態様では、感震センサの可動コイルの固有周波数(fo)を約0.5Hz〜約5Hzとすることができ、感震センサハウジングの外径(OD)及び高さ(H)を約1.5インチ未満とすることができる。
【0037】
本明細書における他の実施形態では、地震信号検出で使用するためのシステムが、ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成された、ハウジング内の可動コイルとを有する少なくとも1つの感震センサを備える。ある実施形態では、システムが、感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とをそれぞれ生成するように構成又は設計された少なくとも2つの感知要素を含む。システムは、第1の信号と第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するように構成又は設計される。
【0038】
さらに別の考えられる実施形態では、地震信号を検出するための方法が、少なくとも1つの感震センサを配置するステップと、感震センサを使用して地震信号を感知するステップと、感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とを生成するステップと、第1の信号と第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するステップとを含む。
【0039】
以下の説明ではさらなる利点及び新規の特徴を示すが、当業者であれば、本明細書の内容を読むこと、又は本明細書で説明する原理を実践することによりこれらを学び取ることができるであろう。本明細書で説明する利点のいくつかは、添付の特許請求の範囲に記載する手段を通じて実現することができる。
【0040】
添付図面にはある実施形態を例示しており、これらは本明細書の一部である。これらの図面は、以下の説明と併せて本発明の原理のいくつかを実証及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】従来の受振器の感震センサの概略図である。
【図1B】本明細書で説明する原理を明確にするための受振器の感震センサの概略図である。
【図1C】従来の10Hz受振器の振幅応答及び位相応答を異なる減衰率Dごとに示すグラフである。
【図1D】異なる固有周波数foを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示すグラフである。
【図1E】異なる減衰率Dを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示すグラフである。
【図2A】重力加速度に起因する、受振器の感震センサ内の可動コイルの固有変位を示すグラフである。
【図2B】異なる材料からなる受振器ばねにおける、摂氏260度におけるクリープを示すグラフである。
【図2C】垂直受振器の感震センサの可動コイルの、傾斜θに起因する中立又は静止位置x0から変位位置xへの中心の変位を概略的に示す図である。
【図2D】プレストレスばねを採用しない水平受振器の可動コイルの、傾斜角に関する固有変位を示すグラフである。
【図3A】本開示による、電流を注入して感震センサの可動コイルを浮上させるためのいくつかの考えられる技術の回路図である。
【図3B】本開示による、電流を注入して感震センサの可動コイルを浮上させるためのいくつかの考えられる技術の回路図である。
【図4A】本開示による、高温環境において電気浮上を使用して感震センサのばねのクリープを防ぐ、1つの考えられる下げ孔内地震モニタ用システムの概略図である。
【図4B】銅線の抵抗と温度との関係を示すグラフである。
【図4C】本開示による、定電流を供給することによって受振器のコイル抵抗及びケーブル抵抗の温度依存性を克服するための別の考えられる地震モニタ用システムの概略図である。
【図5】本開示による、電気浮上を使用して可動コイルを中心に置くことに関して感震センサを試験するための、本明細書に開示する1つの技術を示す回路図である。
【図6】浮上電流及び/又は受振器パラメータの決定の不正確さに起因する、電気浮上後の固有変位の誤差を示すグラフである。
【図7A】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図7B】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図7C】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図7D】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図8A】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図8B】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図8C】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図8D】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図9A】本発明による、感震センサシステムにおけるいくつかのフィードバック技術の回路図である。
【図9B】本開示による、フィードバック感震センサの理想的なフィードバックのないシミュレーションデータ、及びフィードバックパラメータを決定する際の誤差の影響を含むシミュレーションデータを示すグラフである。
【図10】本開示による、感震センサの組み合わせ出力データのシミュレーションデータを示すグラフである。
【図11】本開示による、受振器の較正を説明するための受振器センサ及び理想的な受振器センサの概略図である。
【図12】変位信号及び速度信号の両方を出力する1つのばね質量系を示す概略図である。
【図13A】力平衡フィードバックループを有する従来の感震センサ又はサーボ加速度計を示すブロック図である。
【図13B】本開示による、感震センサのフィードバックループシステム、及び組み合わせた変位信号及び速度信号を示すブロック図である。
【図14】受振器応答パラメータS0、D0、及びf0の温度依存性を示すグラフである。
【図15】本開示による、感震センサを較正するための、本明細書で説明する1つの従来の技術を示す図である。
【図16A】本開示による感震センサを有する1つの考えられるシステムを示すブロック図である。
【図16B】本開示の原理による感震センサを有する1つの例示的な掘削孔ツールを示す図である。
【図16C】本開示による感震センサを利用した地震信号検出のための1つの考えられる方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面全体を通じて、同じ参照番号及び説明は類似の要素を示すが、これらは必ずしも同じものであるとは限らない。本明細書で説明する原理は、様々な修正及び代替形態が可能であるが、特定の実施形態を例示目的で図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかしながら、本発明は、開示する特定の形態に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての修正、同等物及び代替手段を含む。
【0043】
以下、本発明の例示的な実施形態及び態様について説明する。当然ながら、あらゆるこのような実際の実施形態の開発においては、開発者の特定の目標を達成するために、実施構成ごとに異なるシステム関連及びビジネス関連の制約の順守などの数々の実施構成固有の判断を行う必要があることが理解されよう。さらに、このような開発努力は複雑かつ時間を要するものとなり得るが、にも関わらず、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な取り組みであろうことが理解されよう。
【0044】
本明細書全体を通じて、「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの態様」、「ある態様」、又は「いくつかの態様」に対する言及は、これらの実施形態又は態様と併せて説明する特定の特徴、構造、方法、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って本明細書全体を通じて様々な箇所に出現する「1つの実施形態では」、「ある実施形態では」、又は「いくつかの実施形態では」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及しているとは限らない。さらに、これらの特定の特徴、構造、方法、又は特性を、いずれかの適当な方法で1又はそれ以上の実施形態に組み合わせることができる。「含む(including)」及び「有する(having)」という用語は、「備える(comprising)」という用語と同じ意味を有することとする。
【0045】
さらに、本発明の態様は、単一の開示した実施形態の全ての特徴よりも少ないものによって成立することができる。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書によりこの詳細な説明に明確に組み入れられ、個々の請求項は、それ自体が本発明の独立した実施形態として成立する。
【0046】
ここで図面を参照すると、同様の番号は同様の部分を示しており、本明細書における開示は、地震信号検出を容易にして向上させるために利用できる様々な技術の概念を対象とするものである。本開示は、地震予測の分野、或いは地下貯留層の能動的又は受動的なモニタの分野で利用される受振器又は地震計などの動電式センサに対する開示技術の適用性を企図するものである。これらのセンサは、垂直方向に対して偏向した調査井及び/又は揚水井の中に配置することができ、3つの直交軸に沿って受信される信号成分を検出するための多成分受振器を備える。本開示による態様では、地震、又は貯留層における微小地震活動をモニタするためのシステムを含む、有線システム、陸上地震探査システム、海底地震探査システム、恒久的又はその他のモニタシステムにおいてこれらの感震センサを利用することができる。本開示のいくつかの原理は、「受振器較正技術」という名称の、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第11/733,214号にも記載されており、該特許出願の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。
【0047】
以下でより詳細に説明するように、本開示は、地震信号検出を容易にして向上させるために使用できる様々な技術を提供する。本開示は、本明細書の原理を、特に有線モニタ、陸上地震モニタ、海底地震モニタ、恒久的な又はその他のモニタ、水圧破砕モニタ、生産検層などの様々な分野に適用することを企図するものである。
【0048】
本出願で説明する様々な技術及び特徴をより良く理解するために、ここで受振器測定技術についての簡単な説明を行う。地震探査では、地中を伝播する地震波を測定して地中の構造的イメージを地図化する。受振器は多くの場合、例えば下げ孔、地表面及び/又は海底などの様々な場所で地震信号を検出するために使用される。従来の受振器の例を図1Aに示す。図1Bは、本明細書で説明する原理を明確にするための受振器の概略図であり、図1Cは、従来の10Hz受振器の振幅及び位相応答を異なる減衰率Dごとにグラフで示している。
【0049】
図1Aの受振器10は、ボビン上に装着された可動コイル12と、磁石15と、懸架ばね20を含む一対の極片16と、ハウジング14とを含む。極片16及びハウジング14は磁気透過性材料で作られて磁場を形成し、この中に可動コイル12が懸架される。図1Aの例では、ボビン上に装着された可動コイル12及び懸架ばね20が、受振器の有効移動質量部分mを共同で形成する。
【0050】
図1Aに示すように、従来の受振器では、可動コイルが一対のばねにより磁場内で懸架される。ばねは、コイルの径方向の動きを制御するとともにばね質量系に望ましい固有周波数を与えるように設計される。
【0051】
出願人は、従来の感震センサが、本開示の電気浮上式感震センサによって対処できる制限を有することを認めた。すなわち、低周波信号の復元にはセンサの固有周波数f0を低下させることが必要であり、これにより可動コイルの固有変位が増加し、従ってセンサのサイズが増加する。従って、低いf0を有する感震センサを小さなパッケージに詰めることは困難である。
【0052】
しかも、特に掘削孔への配置では、全方向傾斜可能感震センサが望ましい。通常は、ジンバルシステム又はモータ駆動プラットフォームが使用されるが、ジンバル機構又は駆動モータ機構は感震センサのサイズを増加させる傾向にある。
【0053】
本明細書で説明する種類の感震センサは、例えば、高温によりばねのクリープが引き起こされる可能性のある高温井内で使用される。この結果、受振器の応答が変化し、最終的にセンサが作動を停止する。
【0054】
可動コイルを重力に抗して中立位置で支持するために、感震センサ内にプレストレスばねを必要とする典型的な感震センサシステムとは対照的に、本開示は、電気浮上によりコイルの位置を磁場内の中心に置くことを教示する。本明細書で使用する「電気浮上」という用語は、電気信号を使用して感震センサの可動コイルを重力に抗して上昇又は浮上させることを意味する。上述したように、本明細書で説明する種類の従来の感震センサはプレストレスばねを有し、これが可動コイルを重力に抗して上昇させることにより、可動コイルが感震センサ内の磁場内で中心にくるようになる。本開示は、電気浮上が従来のプレストレスばねに取って代わることを企図する。この場合、本センサのばね機構は、センサの自由な軸方向移動を可能にする一方で、センサがハウジングに対して径方向に移動しないように可動コイルを保持又は固定するように設計される。上記の説明は、電気浮上が従来の感震センサのプレストレスばねに取って代わることを提案するものではあるが、ばね機構におけるプレストレスを排除する必要はない。ばね機構におけるプレストレスは、ばねが可動コイルの場所で誤差を引き起こさないように、完全に排除されないまでも最小限に抑えられることを企図する。
【0055】
本出願で使用する「受振器」という用語は、図1Aに示すような従来式の受振器、及び地震計タイプの動電センサのような超低周波受振器、並びに、例えば従来式の受振器よりも比較的広い加速度範囲を測定するように構成又は設計することができる、Schlumberger社から提供される受振器加速度計(GAC)装置を含むことを意図されている。図1Aに示すように、典型的な受振器10は、単一のばね又は一対のばねにより磁束内で懸架された可動コイルを含む。可動コイルは、受振器のハウジングが外部振動に応答して動くのに対し、同じ位置に留まろうとする。
【0056】
図1Bは、受振器の感震センサの概略図であり、図1Cは、従来の10Hz受振器の振幅及び位相応答を、分路抵抗器Rsを調整することによって得られる異なる減衰率Dごとに示している。図1Dには、異なる固有周波数foを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示している。可動コイルの変位は低い固有周波数の場合に大きく、可動コイルには適度に大きな移動空間が求められる。図1Eには、異なる減衰率Dを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示している。この場合、減衰率を増加させることにより、可動コイルの移動空間を縮小することができる。
【0057】
受振器は、地動を電気信号に変換する。上述したように、典型的な受振器では、可動コイルが、図1Aに示すように一対のばねにより磁束場内で懸架される。受振器のハウジングが地動とともに動いた場合、可動コイルは同じ位置に留まる。可動コイルの(磁束場を有する)ハウジングに対する動きにより、コイルが可動コイルの速度に比例する電気信号を生成するようになる。
【0058】
再び図1Bを参照すると、受振器の可動コイルは質量mを有し、そのハウジングに対する中立位置はx0である。可動コイルの中立位置に対する位置はξである。コイルのDC抵抗はrであり、可動コイルの出力が外部抵抗Rsに接続されて減衰率Dを調整する。受振器の可動コイルが磁束内で動くと、可動コイルは信号eg、すなわち、
を生成する。
この場合、Bは磁束密度であり、lはコイル長であり、vはコイルの磁場に対する速度である。積Blは、受振器の地動速度から電気信号egへの変換係数であり、通常は感度S0として扱われる。
【0059】
可動コイルから電流が流れ出し、分路抵抗器Rsを通じて戻る。
コイル内の電流は、コイルの運きを阻止するための力f、すなわち減衰力を引き起こす。
可動コイルの運動方程式は、
のように書かれる。
この場合、uは地動の変位であり、μは摩擦係数であり、kはばね定数である。固有周波数ω0及び開回路減衰率D0は、
と定義される。
全体の減衰Dは、
と定義される。
移動質量の運動方程式は、
と書き直される。
地動は、
で与えられると仮定する。
この結果、式12の解は、
のように書かれる。
正弦項及び余弦項を位相遅延と組み合わせて、
とすることができる。
この結果、電気信号は、
となる。
出力信号は分路抵抗及びコイル抵抗により低減され、分路抵抗器Rsを通るセンサ出力はRs/(r+Rs)だけ低減される。
【0060】
図1Cは、従来の10Hz受振器の振幅応答及び位相応答を異なる減衰率Dごとにグラフで示している。受振器が、以下の表1に示すような応答パラメータを有すると仮定すると、
表1
全体の減衰率Dを適当な分路抵抗器Rsによって調整して式11を使用することにより、以下の表2に示すようにD=0.3、D=0.7、及びD=1.0が生じた。
表2
【0061】
D=0.3、0.7、及び1.0に式17を使用して、単位速度入力に対する正規化した振幅応答eg/(aω)を図1Cに示している。式16によって求めた位相応答も図1Cに示している。図1Cから明らかなように、可動コイルの動きは、固有周波数を上回る周波数では地動と逆になる。
【0062】
式15から、一定速度の場合の可動コイルの変位は、
のように書かれる。
式18を使用して、以下の表3に示すパラメータに基づいて異なる固有周波数ごとに合成データを生成し、この結果を図1Dに示す。
表3
【0063】
図1Dには、開回路条件における可動コイルの変位を異なる固有周波数ごとに示している。固有周波数が低下するにつれて可動コイルの変位応答が増加していることに留意されたい。
【0064】
固有周波数における変位量は、
となる。
表3の受振器2のパラメータ及び式19を使用して、分路抵抗器Rsを調整することによる全体の減衰率D=0.7、1.0、及び2.75を使用して、以下の表4に示すように可動コイルの変位を計算した。
表4
結果として生じる可動コイルの変位を図1Eに周波数の関数として示す。全体の減衰率が小さいときに、固有周波数において変位が最大になることに留意されたい。全体の減衰が高い場合には、変位は、一定の速度入力では幅広い周波数範囲にわたって一定である。
【0065】
図2Aは、重力加速度に起因する受振器の固有変位を示すグラフである。10Hz受振器では、可動コイルの固有変位は約2.5mmである。垂直受振器では、可動コイルを懸架するばねにプレストレスを与えて、受振器が垂直に置かれたときに可動コイルが受振器の中心にくるようにする。10Hz受振器の典型的なサイズは、ODが1インチ、高さが1.2インチとなる。2.5mmの固有変位を有するプレストレスばねが、このサイズの受振器に詰め込まれる。低周波信号を検出するために固有周波数を1Hzまで低減した場合、固有変位は約250mmになる可能性がある。250mmの固有変位を有するプレストレスばねは、250mmよりも大きなサイズのハウジングを必要とすることになる。
【0066】
図2Bは、異なる材料からなる受振器ばねにおける、摂氏260度でのクリープを示すグラフである。センサのばねが長期にわたって高温に曝された場合、質量及び重力加速度に起因する応力がばねにクリープを生じさせ、恒久的に変形させる。この場合、可動コイルは最初は感震センサのハウジングの中心にあるが、コイルがばねのクリープの量だけ降下し、最終的にはハウジングの底部に接触して作動しなくなる。
【0067】
上述したように、本開示は、上述した種類の従来の受振器における短所を克服するシステムを提案する。本開示は、可動コイル位置の運動成分ではなくDC成分をフィードバックすることを教示する。通常、サーボ加速度計では、運動成分を含む可動コイルの変位信号がフィードバック目的で使用される。しかしながら、出願人は、運動成分フィードバックを与えた場合、このフィードバックはいわゆる力平衡フィードバックであり、感震センサの出力が可動コイルの速度ではなくむしろ加速度に比例することを認めた。このような状態は本質的にノイズが多い。
【0068】
以下でさらに詳細に説明するように、可動コイル内に電流が注入される。直列に接続された分路抵抗器を介して電流をコイルに印加して減衰率を制御することができる。コイルのDC抵抗は温度とともに変化するので、周囲温度が高ければ、DC抵抗が増加してコイル内の電流が減少することにより浮上バランスが失われるようになる。従って、本開示は、可動コイルを浮上させるための電流を定電流として供給し、温度が変化した場合でも電流が同じ状態を保てるようにすることを提案する。
【0069】
以下でさらに詳細に説明するように、位置センサを設けて磁場に対する可動コイルの位置をモニタすることができる。1つの考えられる技術として、コイルを中心に置くのに必要な電流量は移動質量の量によって最初に決定される。コイル位置は位置センサを使用することによってモニタされるので、コイル位置の誤差をコイルにフィードバックすることが可能である。或いは、コイルが中立位置にあることを位置センサが検出するまで可動コイルを浮上させることも可能である。
【0070】
位置情報のフィードバックをコイルに与えて、固有周波数を修正できるようにすることもできる。正のフィードバックを与えた場合、このフィードバックは固有周波数を低減させる。可動コイルの位置情報は、位置センサから直接得ることができ、或いは可動コイルから得られる速度信号の積分により求めることができる。積分された速度のフィードバックによりDC成分をフィードバックすることはできないが、固有周波数を低下させることは可能である。
【0071】
本開示は、コイルからの出力信号を増幅し、逆の極性を有するフィードバックをコイルに与えることを提案する。コイルからの出力はコイルの速度に比例し、速度フィードバックは減衰率を調整する。減衰率が大きい場合には、コイルからの出力は、固有周波数の前後で加速度に比例する。大きな減衰率に伴って、加速度線形周波数範囲が広くなる。この条件では、変位センサは速度に比例する信号を出力する。過減衰がなければ、コイルの変位応答は固有周波数の前後で大きくなり、全高調波歪みが大きくなり、コイルが感震センサに応答するために大きな空間が必要となる(再度図1Eを参照)。
【0072】
フィードバック後、増幅器がコイルからの信号と変位センサからの信号とを組み合わせて周波数範囲を拡張する(以下で説明する図10を参照)。積分した変位信号を加算して周波数範囲をさらに拡張することができる(再度図10を参照)。
【0073】
可動コイルに電気信号を注入することにより初期較正を行うことができる。いかなるフィードバック信号も含まない受振器要素の応答が測定される。応答を分析することにより、固有周波数f0、開回路減衰D0、開回路感度S0、及びコイル抵抗rなどの受振器パラメータが求められる。測定した応答パラメータに基づいて、フィードバック定数及び信号組み合わせのための重み付けが決定される。
【0074】
本開示の態様では、センサ要素の温度がモニタされる。感震センサのハウジングに、独立した温度センサを取り付けることができる。可動コイルのDC抵抗を測定して感震センサの温度を推定することができる。同一出願人による米国特許第7,225,662号には受振器を較正するための技術が開示されており、該特許の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。コイルの抵抗は温度の関数であり、抵抗をモニタすることにより温度が推定される。電気浮上電圧及び電流を使用してコイルのDC抵抗をモニタすることもできる。センサ応答パラメータは温度とともに変化する。フィードバック定数及び信号組み合わせ定数は、測定された温度に基づいて修正される。
【0075】
デジタル化した変位信号及び速度信号によりフィードバック及び信号組み合わせを行って、較正されたセンサパラメータに基づいてこれらのパラメータを容易に調整できるようにすることもできる。
【0076】
図3A及び図3Bは、本開示による、感震センサの可動コイルを浮上させる電流を注入するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。図3Aの回路図によって示すように、本開示は、感震センサの可動コイルに電流を印加して重力を相殺することを教示する。この場合、電気浮上が、従来技術の感震センサで一般に使用されるプレストレスばねに取って代わり、或いはこれを補償する。本感震センサのばね要素は、移動質量をセンサハウジングに対して径方向に堅固に支持するとともに軸方向に柔軟に支持する機能を果たす。
【0077】
プレストレスばねの代わりに電気浮上を使用することにより、低周波感震センサが提供されるとともにばねのクリープが防がれる。移動質量が電気浮上により懸架又は浮上されるので、図2Aに示すような低周波受振器又は地震計のプレストレスばねの大きな固有変位はもはや必要でない。もはやプレストレスばねが移動質量を重力に抗して支持することはないので、ばねに作用して高温でクリープを引き起こす応力は存在しない。本明細書で開示するいくつかの態様では、電流が分路抵抗器Rsを通って可動コイル内に流れ込む(図3Aを参照)。分路抵抗器Rsは、感震センサの特定の用途にとって望ましい減衰率に基づいて決定される。
【0078】
移動質量に作用する重力は、
となる。
この場合、mは移動質量であり、gは重力加速度であり、θは垂直から測定した傾斜角である。印加電流に起因する力は、
となる。
この場合、S0は開回路感度であり、Bl(Bは磁束密度であり、lはコイル長である)と同じである。重力と電流に起因する力とが互いに相殺されるので、必要な電流量は、
となる。
移動質量mが小さくて感度S0が高い場合には、電流量が小さくなることが分かる。従って小さな移動質量及び高い感度を有する感震センサ要素を設計することが望ましい。本開示において提案する設計基準は、同一出願人による米国特許第7,099,235号により開示される特徴と同様のものであり、該特許の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。
【0079】
図3Aに示す回路では、分路抵抗器Rsが臨界減衰を引き起こすように設計又は選択される。重力を補償するために、分路抵抗器Rsを通じて電圧E0が印加される。以下の表5は、従来の地震計、従来の陸上受振器、従来の下げ孔内受振器、及び本開示に基づいて電気浮上用に構成又は設計されたGACセンサ(Schlumberger社により開発された高感度受振器)にとって電気浮上に必要な電圧、電流、及び消費電力を推定した結果を示している。
表5
【0080】
低周波地震計の移動質量を浮上させるには大量の電力が必要であるが、高感度感震センサの電力消費はわずか4mWであることが分かる。出願人は、移動質量が小さく開回路感度が大きな感震センサが、電力消費において予想外の利益をもたらすことを認めた。
【0081】
図3Aの回路図では、かなりの割合の電力が分路抵抗器Rs内で消費される。Rsの量は、r、すなわち可動コイルのDC抵抗よりも大きい。従って、電流を注入するためのより効率的な技術を図3Bに示しており、この場合、フィードバックを有する感震センサが設けられる。
【0082】
図3Bの回路では、入力抵抗器Riに浮上電圧ELが印加される。出力電圧は、
となる。
演算増幅器の入力は、架空短絡に起因してゼロボルトである。可動コイル内の電流
は、入力抵抗器Riに注入される電流と同じ電流である。従って、この回路は、いかなるコイル抵抗rの場合でも供給電圧EL及び入力抵抗器Riにより決定される定電流を可動コイルに供給し、たとえrが変化しても電流は一定である。図3Bの回路の1つの利点は、Riを小さくなるように設計することにより、抵抗器を横切る電圧降下が低減されるようになる点である。分路抵抗器Rsをコイルと並列に追加して、感震センサ動作の減衰率を制御することができる。
【0083】
例えば、Ri=100オーム及び減衰率70%の場合、図3Bに示すような電気浮上回路に必要な電流及び消費電力を推定し、この結果を以下の表6に示す。以下の表6から明らかなように、図3Bに示す回路を利用することにより、必要な電力が1/10〜1/200減少する。
表6
【0084】
図4Aは、本開示による、高温環境において電気浮上を使用して受振器のばねのクリープを防ぐ1つの考えられる下げ孔内地震モニタ用システムの概略図である。図4Aの例示的なシステムでは、地震活動を長期間モニタするために、例えば高温の掘削孔内に配置される感震センサに電気浮上が適用される。従来の電子機器は高温での信頼性が低い場合があるので、感震センサからの信号を、電子機器を使用せずにアナログ方式で送信することがある。浮上電流をバッテリーにより分路抵抗器Rsを通じて印加することができる。コンデンサCがDC浮上電圧を遮断して、地震信号を記録機器に渡す。
【0085】
本開示はまた、過去に設置済みではあるが、ばねのクリープに起因して動作不能、すなわち「停止状態」になった可能性のある既存の受振器に電流を印加できることも企図する。停止状態の感震センサに適当な電流を注入することによって、可動コイルを底部から持ち上げ、感震センサを動作可能にして再び地震探査動作に使用できるようにすることができる。
【0086】
出願人はさらに、コイル抵抗が温度変化とともに変化することに注目した。例えば銅線では、抵抗は、
として表される。
図4Bは、銅線の抵抗と温度との関係、すなわち温度係数のグラフ表現である。摂氏200度における抵抗は、摂氏20度における抵抗の1.8倍である。環境温度が変化し続ける動作状況では、下げ孔の温度も変化することがある。例えば、油井の掘削時には、泥水循環により下げ孔地層が冷却される。しかしながら、油井温度が安定するには長い時間がかかる。さらに、油井内で石油が流れると温度が変動する。従って、分路抵抗器を介して感震センサの可動コイルに電圧を印加する場合、電流は温度の関数であり、温度変化に伴って電圧を修正する必要がある。
【0087】
下げ孔内に配置された感震センサに配線がなされており、増幅器を使用せずに信号を地表に送信する場合、可動コイル抵抗にはケーブル抵抗が含まれ、このケーブル抵抗の量もまた温度変化とともに変化する。温度効果を排除するために、図4Cの例示的な地震システムに示すように電力を定電流方式で供給することができる。図4Cの場合には、たとえ抵抗が変化しても印加電流は一定であり、浮上力は一定に保持される。
【0088】
可動コイル位置を把握することにより、電気浮上量を求めることができる。1つの考えられる技術は、移動質量の位置を感知するのに適した変位センサを使用することである。例えば、外部傾斜計を利用することができる。しかしながら、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第12/180,560号に開示されているステップ試験法を使用することにより、可動コイルの中心を求めることもできる。
【0089】
浮上電流の検証のために、すなわち注入電流が十分であるか否かをチェックするために、前述の米国特許出願第12/180,560号に開示されている技術を、本開示で開示する電気浮上技術と組み合わせて利用することができる。前述の特許出願の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。
【0090】
本開示による、電気浮上を使用して受振器の可動コイルを中心に置くことに関して感震センサ受振器を試験するための1つの技術を示す回路図である。図5の技術では、ステップ試験を本開示の回路内に統合して可動コイル位置及び電気浮上電流を測定する。図5では、S1はステップ電圧Esを印加するためのスイッチであり、S2はステップ電圧の極性を変更するためのスイッチである。Esは、可動コイルを感震センサのハウジングの頂部最大値及び底部最大値まで完全に変位させるのに十分に大きくなるように選択される。可動コイルがハウジングの中心に位置する場合、頂部最大位置からのステップ応答と底部最大位置からのステップ応答とが逆の極性で同じでなければならない。差異が存在する場合、これは可動コイルの中心からの変位量となる。図5の例示的な試験回路が電気浮上を適用するための分路抵抗器Rsを含むことに留意されたい。試験は、分路抵抗器を含む感震センサの全体応答を含むが、開回路応答は含まない。開回路応答は、分路抵抗器をオフにすることにより測定することができる。
【0091】
本開示は、感震センサの電気浮上のための2つの例示的な技術を提案する。1つの例では、固有周波数f0、開回路感度S0、DC抵抗r、及び移動質量mなどの受振器パラメータを使用した浮上電流の推定に基づいて感震センサにDC電流が印加される。もう1つの考えられる技術では、可動コイル位置を測定して、位置を電気的に調節又は調整する。
【0092】
電気浮上に必要な電流量は、
となる。
重力と電気浮上とを相殺する上での誤差は、ばね要素の変形により吸収される。ばね要素が弱く、移動質量が大きい場合、例えばf0が低い場合には、相殺誤差に起因するばねの変形が大きくなる(図6を参照)。このような場合には、電気浮上電流を十分な精度で決定する必要がある。この場合、浮上電流の誤差をばね要素の変形で相殺する必要があり、すなわち
となる。式2及び式25を使用することにより、ばね変形のパーセンテージ誤差が、
として求められる。
この場合、ξはばね変位であり、ξ0はばね要素の固有変位である。浮上電流のパーセンテージ誤差は、固有変位の誤差のパーセンテージと同じである。
【0093】
図6は、浮上電流、及び/又は受振器パラメータの決定の不正確さに起因する電気浮上後のコイル中心化の誤差を示すグラフである。図6のグラフには、浮上電流の誤差により引き起こされるばね変位を示している。重力加速度の95%が補償される場合、誤差はf0=4Hzに対して1mmである。許容値は通常約5%であるため、上記結果を得るために、感震センサの仕様に基づいて浮上電流を設定することができる。例えば1.5Hz受振器を1mmの誤差範囲内で浮上させるためには、浮上電流は1%の精度範囲内になければならない。この場合、1mmの変位誤差を、外径(OD)が1インチで高さ(H)が1.2インチのサイズを有する従来の受振器における最大許容誤差とすることができる。
【0094】
1%の誤差範囲内の電流推定では、感震センサの高精度較正が必要となる。この場合、本開示は、測定した移動質量を使用して必要な浮上電流量を求めることを提案する。受振器の移動質量を求めるための技術は、前述の同一出願人による米国特許第7,225,662号に記載されている。
【0095】
図7A〜図7Dは、本開示による電気浮上した受振器においてDCを消去するための、本明細書で開示するいくつかの技術を示す回路図である。
【0096】
感震センサの可動コイルを浮上させるために注入される浮上電流は、地震信号測定値に対してDCオフセットを引き起こす。1つの可能性は、図4A、図4C、及び図5に示すようにコンデンサを使用してDC信号を遮断することである。しかしながら、このようなDC信号の遮断は、低周波信号も低減させる可能性がある。
【0097】
図7Aは、感震センサ内に浮上電流を注入することにより引き起こされるDCオフセットを除去するための1つの技術を示している。図7Aの回路図では、浮上のために可動コイルに供給される電圧と同じ電圧を演算増幅器の負の入力にも印加して、可動コイルに印加された電圧を相殺するようにする。正と負の両方の入力に同じ電圧が印加されるので、浮上電流におけるあらゆるノイズを消去することもできる。
【0098】
図7Bは、図3Bに示す浮上回路のDC信号を消去するための別の考えられる技術を示している。
【0099】
図7Cは、フィルタリングした出力のフィードバックを使用してDC成分を遮断するためのさらに別の考えられる技術を示している。図7Cの例では、演算増幅器が、検出した地震信号及び浮上電圧の両方を増幅する。地震信号は、超低周波成分が残るようにフィルタリングされる。演算増幅器に低周波成分のフィードバックを与えてDC信号を除去する。図7Dのさらに別の例示的な装置に示すように、フィルタリングした演算増幅器の出力を極性を逆転させた後に可動コイルに印加して、演算増幅器の入力においてゼロDC電圧を保持することができる。DC成分のみがフィードバックされるので、浮上電流におけるノイズを消去することはできない。
【0100】
図8A〜図8Dは、本開示による、受振器の感震センサ内の可動コイルの位置を感知するための、本明細書で開示するいくつかの技術の概略図である。
【0101】
本開示は、感震センサ装置内に変位感知要素を取り付けて、移動質量の量又はその他の受振器パラメータを決定することなく感震センサの可動コイルを浮上できるようにすることを企図する。この場合、以下でさらに詳細に説明するように、本開示の電気浮上回路図に変位センサ機構を組み込むことができると企図される。可動コイルに変位信号のフィードバックを負の極性で与えて、位置信号が可動コイルを反対方向に引き寄せ、可動コイルが受振器の中心にくるようにする。この場合、サーボ加速度計タイプの構成を使用することができるが、本例では位置信号をフィルタリングして、いかなる地震信号のフィードバックも存在せず、固有周波数が地震周波数範囲内で変化しないようにする。
【0102】
図8Aの例示的な構成では、対向する静電容量要素が、可動コイル上及び感震センサの極片上に互いに対して可動であるように設けられる。これらの電極間の距離は同じままであるが、重複面積の量は可動コイルの位置によって変化する。変位の大きな感震センサに図8Aの構成を利用することができる。
【0103】
図8Bは、ばね要素の上部及び下部の位置及び端蓋に取り付けた静電容量要素の対を示している。可動コイルが重力によって変位すると、コイルが下方に移動することにより下部の静電容量要素間の離隔距離が減少して、下部の静電容量要素から得られる静電容量が上部の静電容量要素から得られる量よりも大きくなる。低周波感震センサでは可動コイルのストロークが大きく、静電容量が小さすぎて距離を特定できない可能性があることに留意されたい。しかしながら、同一出願人による日本国特許P3098045号に開示されているような過減衰条件で作動する受振器でこのような構成を利用することができる。
【0104】
図8Cは、光学式位置センサの1つの実施構成を示している。1つの考えられる実施形態では、図8Dに概略的に示すように、干渉計の原理を使用して光学位置センサを構成又は設計することができる。
【0105】
1つの考えられる実施形態では、光学送信機が、可動コイル上に装着された反射器に光を送り、光学受信機が反射信号を受信する。送信機及び受信機は、マイケルソン干渉計などの光学干渉計を形成するように構成することができる。測定が光学系に基づくので、低周波数での測定には1/fノイズが無い。
【0106】
変位が大きな場合、複雑になり得る干渉縞を考慮する必要がない。光学変位センサを、反射光の強度を測定するようにすることもできる。距離が大きな場合には反射光の強度が低くなる。同じ光学センサを底蓋上に装着して、変位測定がプッシュプル方式で作動するようにすることができる。2つの光学検出器が同じ強度の光を受光する位置が可動コイルの中心となる。
【0107】
図9Aは、本開示によるフィードバック感震センサの例示的なシステムを示す回路図である。出願人は、感震センサの出力にフィードバック電流を供給することが、感震センサの可動コイルからの信号を使用して信号対ノイズ比(SNR)を向上させるための新規の効率的なアプローチになることを認めた。
【0108】
前述の日本国特許P3098045号は、受振器も接続された演算増幅器の負の入力に対してフィードバックを使用することを開示している。この回路は仮想短絡として知られている。フィードバックにより入力電圧がゼロになり、演算増幅器が信号を電流モードで検出して可動コイルに最大減衰を印加するようになる。これとは対照的に、図9Aの回路は、演算増幅器の正の入力にフィードバックを与えて、地震信号を出力している感震センサの可動コイル内にもフィードバック電流が流れ込むようにする。
【0109】
本開示のある実施形態によれば、電気回路を、約0.01Hz〜約1000Hzまでの幅広い周波数範囲の速度信号を出力するようにさらに構成又は設計することができる。この場合、ノイズレベルを考慮して周波数範囲を定めることができる。理論的には、周波数範囲をあらゆる望ましいレベルに設定することができるが、ノイズにより課される制限が存在する。1つの可能性として、本開示は、機械的固有周波数=4Hz、変位フィードバックを使用した固有周波数=1Hz、変位信号ロールオフ=0.1Hz、及び変換=0.01Hzを有する感震センサを企図する。
【0110】
サーボ加速度計では、ばねの剛性を高めるために位置フィードバックが負であり、変位信号は、修正された固有周波数未満で加速度に比例する。これとは対照的に、本開示は、図9Aに示すように、正の位置フィードバックを与えてばねの剛性を和らげる新しい方法を提案する。可動コイルが、感知コイル及びフィードバックコイルに使用される。感知コイルは、地震信号を測定する主な手段である。米国特許第3,559,050号又は米国特許第4,051,718号によって提案されるように、感知コイル及び独立したフィードバックコイルを使用することはできるが、感度が低下して追加の端子ピンが必要となる。
【0111】
入力信号eは、可動コイルの出力とフィードバック信号との和である。図9Aでは、信号eを増幅し、可動コイルにフィードバックも与えて減衰率を修正する。フィードバック信号を伴う可動コイルの運動方程式は、
のように書くことができる。
この場合、fは、可動コイルに作用する電気力の和である。コイルの出力側で、フィードバック電流とコイル出力とが合併する。電流の方向は、コイル内に流れ込む方向である。抵抗器Riを通じてフィードバック電流が供給される。可動コイルは出力egを生成する。「r」は可動コイルの抵抗である。
【0112】
可動コイルからの出力信号とフィードバック信号との和は、
となる。
出力電圧は、
となる。
変位も含んだ速度フィードバックの量は、
となる。
この場合、c1は増幅器の利得及びフィードバックの量を含む。変位フィードバックは、
となる。
この場合、c2は変位感度及び増幅器の利得を含む。式28は、
のように再整理することができる。
可動コイルに作用する電気力は、
となる。
式27を、
のように書き直す。
修正された固有周波数と減衰率とにより、式34を、
のように簡略化することができる。
この場合、修正された減衰率D及び修正された固有周波数ωcは、
となる。
式27の解は、
のように求めることができる。
正弦項と余弦項とを組み合わせることができ、振幅及び位相を使用して式38を、
と表すことができる。
【0113】
図9Bは、本開示による、フィードバック受振器の感震センサの、フィードバックパラメータを決定するための考えられる誤差を含むシミュレーションデータを示すグラフである。受振器要素の応答パラメータは、f0=4Hz、D0=0.3である。フィードバックにより、固有周波数はfc=1Hzに修正され、減衰率はD=0.7に修正されている。変位センサが存在しない場合、可動コイルからの信号出力を積分することにより変位信号を取得できることに留意されたい。
【0114】
地盤変位の微分は、
なので、式12の積分は、
となる。
式40は、可動コイルのハウジングに対する速度、変位及び変位の積分の重み付き総和が地動の速度に等しいことを表す。式40に示すように、変位の重みは2ω0Dであり、積分の重みはω02である。
【0115】
図10は、本開示による、感震センサの組み合わせ出力データを示すグラフである。可動コイルの動きから得られる速度、変位、及び変位の積分の正しい総和により真の地動が復元されることがわかる。実際は、信号対ノイズ比に制限があるので、ゼロ又はゼロに近いヘルツでは変位を積分することができない。固有周波数未満の信号を復元するには、ノイズを増やさずに速度、変位、及び変位の積分を組み合わせる最適な方法が必要である。1つの考えられる方法は、図10に示すように、速度と変位の和をとって低周波速度応答を拡張させることである。
【0116】
別の考えられる技術は、受振器応答を望ましい受振器応答に変換することである。本開示は、受振器の応答を、信号対ノイズ比が許容する範囲で望ましい応答に変換することを企図する。ノイズレベルを考慮して周波数の下端を設定することができる。受振器が、受振器1の応答を含む信号を測定する。受振器1の応答が、受振器2の応答に変換される。周波数領域において処理を、
のように行うことができる。
【0117】
数学的にはこのような信号処理を適用することができるが、これをリアルタイムで行うことが望ましい。リアルタイム処理をデジタルフィードバックシステムに使用することもできる。実験室又は工場内で抵抗器及びコンデンサを取り替え又は修正することによってフィードバックパラメータを調整することが可能であるが、特に地震ツールを掘削孔内に配置した後に現場でこのような修正をできるようにするアナログ回路を設計することは困難である。リアルタイムデジタル信号処理により、フィードバック、修正出力、及び/又は組み合わせ信号のパラメータを調整して、温度及び/又はセンサの向きの変化に適応する最終的応答関数を保持できるようになる。
【0118】
地震のモニタ及び警報には早期情報が重要である。大規模な地震が発生するとすぐに地震信号がリアルタイムで計算センターへ送信され、地震が発生した直後に早期警報が発令される。データを記録して信号を変換する時間はない。受振器が自己較正して変換パラメータを決定し、必要な変換済み信号を出力することが望ましい。本開示のシステム及び技術は、地震の早期検出及び警報のためのこのようなリアルタイム機構を提供する。
【0119】
図11は、本開示による、受振器応答を較正するための1つの方法を示している。図11の技術では、同じ振動に応答する2つの受振器が存在するものとする。一方は理想的な受振器であり、他方はいずれかの実際の受振器である。2つの受振器の応答は、
となる。
この場合、下付文字「α」は、理想的な受振器のパラメータを表す。両受振器が同じ動きに応答するので、両受振器の運動方程式の左辺は同じである。
実際の受振器からの出力信号は
なので、式44における理想的な受振器の可動コイルの動きξαを、実際の受振器の出力により数値的に計算することができる。換言すれば、実際の受振器により検出される信号を望ましい応答信号に変換することができる。
【0120】
図12は、本開示による望ましい受振器応答を得るための別の方法を示している。可動コイルの変位を測定する変位センサが存在する場合、変位センサは、図12に示すように変位信号を可動コイルに並列に出力する。両方の信号は同じ運動機構から発生したものであり、運動方程式は同じである。
【0121】
変位信号は
である。式44の右辺にある変位項は変位の直接測定から求められ、速度はコイルからの速度出力により求められ、加速度項は速度出力の微分によって求められる。この結果、信号がセンサからの変位信号及び速度信号に照らしてデジタル化されると、式44における可動コイルの動きξαをリアルタイムで数値的に計算することができる。このようにして、二重感知要素受振器からの速度信号と変位信号とを組み合わせて理想的な受振器の速度を表す。
【0122】
図13Aは、フィードバックループを有する従来の力平衡加速度計を示すブロック図である。変位信号のフィードバックがトルカコイルに与えられて、重力を含む全ての力が相殺される。出力信号は加速度に比例し、固有周波数は関心のある周波数範囲よりも高くなる。このような加速度計は重力に比例する電圧を生成するので、装置の重力に対する向き、傾き又は傾斜を測定するために使用される。ノイズは高周波数で高くなる。
【0123】
図13Bは、本開示によるセンサのフィードバックループシステムを示すブロック図である。可動コイルに変位信号のフィードバック(DCのない)が与えられて固有周波数が低減する(正のフィードバック)。コイルに速度信号のフィードバックが与えられて変位が(地震信号に起因してコイル運動の最大値を超えるないように)制御される。固有周波数の低い小型の感震センサでは、ハウジングサイズの制限に起因してコイルの大きな動きを許容することができない。例えば、f0=0.5Hzを有する受振器では固有変位は100cmであり、f0=5Hzを有する受振器では固有変位は1cmである。7インチのケーシングでは内径(ID)が約6インチになるため、3インチの管を使用して配置されるセンサパッケージの直径は約2.5インチを超えてはいけない。従って、3成分センサを作製するためには、最大外径(OD)及び高さ(H)が約1.5インチになる。
【0124】
再び図13Bを参照すると、速度信号及び変位信号がデジタル化され組み合わせられて、幅広い周波数範囲の速度に比例する信号が出力される。この設計では変位フィードバック及び速度フィードバックがアナログ電子機器により制御され、パラメータは固定抵抗器及び/又は固定コンデンサにより固定される。工場又は実験室内ではセンサ要素を較正することによりこれらのパラメータが修正され、後から変更することは困難である。修正処理には何らかの誤差が存在する可能性があり、温度変化によりセンサ要素応答とフィードバックパラメータとの間で不一致が生じる可能性がある。このような誤差を補償するために、組み合わせ出力のフィードバックが統合フィードバックとして可動コイルに与えられる。これに応じて、このような誤差を補償するように速度信号と変位信号との組み合わせを修正することもできる。変位信号及び速度信号をデジタル化して、フィードバックをデジタルで与えることもできる。
【0125】
本開示は、従来の感震センサ装置と比較してノイズを最小限に抑えた単純な電子機器を有する、地震信号を検出するための装置を提供する。以下でさらに詳細に説明するように、1つの考えられる実施形態では、本開示の装置は、速度出力信号と変位出力信号とを組み合わせて数値処理を含むように構成又は設計される。
【0126】
図14は、試験受振器の受振器応答パラメータSo、Do、及びfoの温度依存性を示すグラフである。この場合、上述したように、受振器パラメータは、変化する温度に伴って以下のように変化する。
この場合、f0(20)は摂氏20度における固有周波数であり、D0(20)は摂氏20度における減衰率であり、S0(20)は摂氏20度における感度である。
【0127】
図14は、摂氏20度で得られた値と比較してf0、D0、及びS0が温度とともにどれほど変化するかを示すための、これらに対する温度効果の例を示している。結果は、環境温度が変化する場合にはフィードバック定数を室温で初期設定することが望ましくないことを示している。従って、このような較正を定期的に行う必要があり、周囲の温度によってフィードバックパラメータが調整される。上述した米国特許第7,225,662号には、受振器コイルのDC抵抗を測定して作動条件での受振器の温度を表すことが提案されている。
【0128】
図15は、本開示による、受振器を較正するための、本明細書で開示する1つの技術の図である。フィードバックを与え、又は出力信号を足し合わせて低周波数応答を拡張するためには、受振器パラメータに基づいて定数を求める必要がある。誤差は全体的な周波数応答に影響を及ぼす。較正を行って、正確なフィードバック定数を設定することができる。このような較正機能は、既存の広帯域地震計に実装されている。本開示は、ステップパルスを印加することによって単純な較正を実施できることを企図する。DC電圧を印加することにより可動コイルが持ち上がる。図15に示すように、DC電圧を除去することにより、移動質量の固有振動が引き起こされる。この固有振動から受振器パラメータが推定される。これは、受振器を較正するために使用される技術である。
【0129】
図16Aは、電気浮上、DC消去、フィードバック受振器、組み合わせ出力、及び温度モニタの統合又は組み合わせを示している。図16Aに示すように、感震センサは、演算増幅器Q1の負のフィードバック内に配置される。演算増幅器Q1は可動コイル信号を増幅し、Q2は、変位センサ出力からの信号を変位に比例する電気信号に変換する。変位FBは、変位信号のDC成分又は近DC成分を遮断し、正のフィードバックを与えて固有周波数を低減させる。速度FBは、負の速度フィードバックの利得を決定して最大変位を制御する。フィードバック増幅器Q3は、変位フィードバック信号と速度フィードバック信号とを組み合わせて、対応する電流を抵抗器Rを通じて可動コイルに注入する。変位フィードバック及び速度フィードバックのための信号は、センサ要素を較正することにより求められる。工場では、センサ要素を較正することにより、フィードバックの詳細な修正を行うことができる。Q3はまた、デジタル信号プロセッサ(DSP)からのフィードバック及び電気浮上信号も受け入れる。
【0130】
正の変位フィードバックは機械的固有周波数を低下させ、負の速度フィードバックは全体の減衰率を調整する。変位信号及び速度信号がデジタル化され、DSPに入力される。DSPは、変位データ及び速度データをリアルタイムで計算し、両データを組み合わせて望ましい応答でデータを出力する。センサ設置後に、センサの向きを把握することにより、初期電気浮上を
として設定することができる。DSPは、変位データのDC成分をモニタし、電気浮上電圧を計算する。DSPは、電気浮上電圧データをDAC1に出力し、Q3は、フィードバックシステムに電気浮上電圧を加える。DSPは、浮上電圧E0、変位出力のDCレベルEc、及びフィードバック抵抗RからDC抵抗rを計算する。
摂氏20度の温度では可動コイルの抵抗が既知であるので、センサ要素の温度は、
となる。
動作温度を把握することにより、DSPは、実際の現場の温度における応答パラメータに基づいて信号組み合わせのための処理パラメータを再計算する(再度図14を参照)。この処理パラメータの調整を継続的に行って温度変化に適応することができる。有線電子機器では、フィードバックパラメータを調整することが困難であるが、デジタル的には容易に調整を行うことができる。信号組み合わせに加え、電気フィードバックの調整を全体のフィードバックとして適用することもできる。また、ハウジングに取り付けられた、又はセンサ要素内に実装された外部温度センサを使用することにより受振器応答パラメータを調整することも可能である。
【0131】
図16Bは、本開示の原理による内部に配置した複数の感震センサ104(図16Bには3つを示している)を含むハウジング102を有する1つの考えられる掘削孔ツール100を示している。掘削孔内での配置後にツール100を安定化/固定するために、アーム又は固定機構106が設けられる。本開示によって構成又は設計された電気回路108が、ツール100にとって必要な機能を提供する。掘削孔ツール100に関連する電子機器は、フィードバック回路、アナログデジタルコンバータ(ADC)、信号を組み合わせるための回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及びテレメトリ回路を含む。図16Bに示す例示的な掘削孔ツールは、油田の地震探査作業のための、本開示で説明する機能及び動作を提供する。この場合、他の関連する地表及び孔内システムを、望むように又は必要に応じて掘削孔ツール100に接続することができる。油田探査システムのこのような関連する構成要素は当業者に公知であるので、本明細書では詳細には説明しない。
【0132】
典型的な掘削孔地震計の外径(OD)は約180mmである。このような地震計を設置するには、特殊な掘削孔を掘削する必要がある。油田産業では、通常、坑井の上部区間は9と5/8インチのケーシングを使用してケーシングされ、下部区間は7インチのケーシングを使用してケーシングされる。このようなケーシングサイズ内に地震計を設置するには、ツールODは3と3/8インチ未満でなければならない。掘削経費を削減するためには小さな掘削孔が望ましく、2と1/2インチのツールを有することが有益である。このためには、センサの全体的な直径が50mm以内でなければならない。センサは、垂直に1つ、水平に2つの3つの方向に向けられる必要がある(再度図16Bを参照)。このような要件から、感知要素の最大OD及び高さは40mmで、頂部及び底部をテーパ加工する必要がある。このような感知要素サイズでは、実際の可動空間は約±3mm程度となり得る。さらに油田内の坑井は垂直ではなく、かなりの可能性で偏向しており、場合によっては水平である可能性もある。典型的な地震計は、±3度の傾斜範囲内でしか作動しない。このような感知要素をジンバル加工するには特殊な機構が必要となる。例えば、図16Bの例示的な掘削孔ツールで示すような本開示の原理は、油田地震探査におけるこのような必要性及び要件に対処するための新規の効果的な機構を提供する。
【0133】
図16Cは、本開示による感震センサを利用した地震信号検出のための1つの考えられる方法のフロー図である。図16Cのフロー図は、本開示による統合デジタルフィードバック感震センサを示している。可動コイルのDC抵抗及び温度が、工場又は実験室において、例えば製造時に測定され、DC抵抗が、例えば摂氏20度に正規化され、記憶される(ステップ200)。センサ要素がフィードバックを使用せずに較正され、フィードバックパラメータ、例えば抵抗及び/又は静電容量が調整される(ステップ202)。アナログフィードバックを使用してセンサが較正され、出力を組み合わせるためのパラメータが設定される(ステップ204)。
【0134】
掘削孔の下げ孔内などの現場において、又は地震探査地点における配置の後に、センサの向き及び/又は所定のパラメータに基づいて(単複の)感震センサに浮上電流が印加される(ステップ206)。電気浮上を使用して移動質量の位置が較正され、浮上電流が修正される(ステップ208)。フィードバックを使用した全体較正及び出力の組み合わせが行われ、必要に応じてフィードバックがデジタル的に調整され、及び/又は出力の組み合わせパラメータが修正される(ステップ209)。較正済みパラメータを使用して地震捕捉が開始される一方で作動温度を継続的にモニタし、出力信号を組み合わせるためのパラメータが捕捉を進行しながら修正される(ステップ210)。
【0135】
出力データを継続的にモニタして、DC成分をモニタするとともに電気浮上及びDC補償を調整する。DC成分から感震センサの温度が推定される。フィードバックパラメータ及び組み合わせパラメータが更新される(図16Cのステップ210を参照)。
【0136】
一般に、本明細書で開示する技術をソフトウェア及び/又はハードウェア上に実装することができる。例えば、これらの技術を、オペレーティングシステムカーネル内、別個のユーザプロセス内、ネットワークアプリケーション内に拘束されたライブラリパッケージ内、特別に構築されたマシン上、又はネットワークインターフェイスカード上に実装することができる。1つの実施形態では、本明細書で開示する技術を、オペレーティングシステムなどのソフトウェア内、又はオペレーティングシステム上で稼働するアプリケーション内に実装することができる。
【0137】
メモリに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に作動又は再構成される汎用プログラマブルマシン上で本技術のソフトウェア実装又はソフトウェア/ハードウェア混成実装を実現することができる。このようなプログラマブルマシンを、パーソナルコンピュータ又はワークステーションなどの汎用ネットワークホストマシン上に実装することができる。さらに、本明細書で開示する技術を、ネットワーク装置又は汎用計算装置のためのカード(例えばインターフェイスカード)上に少なくとも部分的に実装することができる。
【0138】
本発明の原理及びその実際的な用途を最も良く説明するために、実施形態及び態様を選択し説明した。上記の説明は、当業者が、本明細書で説明する原理を様々な実施形態において、及び想定される特定の用途に適した様々な修正を伴って最も良く利用できるようにすることを意図したものである。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地層内の震動を感知するための装置に関する。より具体的には、本開示は、磁場内の中心位置に置かれた可動コイルを有する、受振器及び地震計などの動電型感知装置を対象とする。他の種類の振動トランスデューサの感知動作又は伝送動作のいずれにも本開示を適用することができる。
【背景技術】
【0002】
石油及びガス産業では、地表上、海中、海底、掘削孔内などの様々な場所に感震センサを配置して、地下構造の変化から反射される地震信号を測定することにより、操業上重要な地下の構造及び物質の情報を提供する。この場合、一般に感震センサは、地下構造内の音響インピーダンス比に関する有用なデータを取得する目的で使用される。
【0003】
感震センサはまた、地震のモニタ、水及びCO2貯留層の長期モニタ、核実験のモニタ、並びに地震データの正確かつ効率的な取得を必要とするこのような同様の活動においてもよく見られる。
【0004】
地震信号の検出では、地震エネルギー源から生じる地中の震動を離れた場所でセンサによって感知し、これらのセンサの出力を使用して地下層の構造を特定する。地震エネルギー源は、地震及びその他の地殻活動、地盤沈下、火山活動などの自然的なもの、或いは地表又は地下作業から生じる音響信号のような人工的なもの、或いは地表又は地下における地震源の意図的な操作によるものであり得る。例えば、感知される地震信号は、破砕或いは貯留層の崩壊又は変化により引き起こされる微小地震活動に由来する直接信号、又は人工エネルギー源に由来する反射信号である場合がある。
【0005】
センサは、地震源から生じる圧力場を感知する水中聴音器、又は地震源から発生する粒子運動を感知する受振器という2つの主なカテゴリに分けられる。
【0006】
図1Aに示すように、典型的な受振器10は、ばね20により、極片16を有する磁石15の周囲に配置されるように懸架された1又はそれ以上の円筒形可動コイル12を有する。受振器10は、ハウジング14及び端蓋18を有する。個々の可動コイル12は、ばね20により中立した静止位置に保持され、磁石15の磁場内で磁場の中心から自由に震動する。通常、ばね20は、コイル12を磁石15の磁場に対して中心の均衡点に保持するように設計された金属薄板で作られる。垂直動作用に設計された受振器では、ばね20にプレストレスを与えて、可動コイル12を磁場内で重力加速度に抗して中心に寄せる。
【0007】
地震エネルギー源から直接、又は地下の反射物を介して伝播する地震エネルギーによって地面が動くと、地表、海中又は海底、或いは地面を貫く掘削孔の壁に位置することができる受振器が、音響波伝播により引き起こされる粒子運動とともに動く。
【0008】
しかしながら、受振器の軸が動きの方向と合致する場合には、受振器内部のばね上に取り付けられた可動コイルが同じ位置に留まり、コイルのハウジングに対する相対運動が引き起こされる。コイルが磁場内で動くとコイル内で電圧が生じ、これを信号として出力することができる。
【0009】
図1Bは受振器の概略図であり、この図ではx0は可動コイルの中立位置であり、xは運動中のコイルの位置であり、ξは、コイルの磁場の中心に対する相対変位である。ばね質量系が固有周波数
を生み出し、この場合kはばね定数であり、mはコイル組立体の移動質量である。可動コイルの磁場に対する動きにより電気出力
が生成され、この場合S0は感度であり、
は、受振器の固有周波数を上回るコイルの速度である。生成された電気信号は分路抵抗器Rs及びコイルを流れる。コイル内の電流iがコイルの動きを減衰させる。10Hzの固有周波数を有する典型的な受振器の例示的な振幅及び位相応答を、図1Cに異なる減衰率Dごとに示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第11/733,214号広報
【特許文献2】米国特許第7,225,662号広報
【特許文献3】米国特許第7,099,235号広報
【特許文献4】米国特許出願US12/180,560号広報
【特許文献5】日本国特許P3098045号広報
【特許文献6】米国特許第3,559,050号広報
【特許文献7】米国特許第4,051,718号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
地震活動のモニタでは、低周波地震データを捕捉することが望ましい。この場合、地震活動を深い掘削孔内で測定すると信号対ノイズ比(SNR)が向上する。しかしながら、深い掘削孔内の環境温度は高いことが多く、また掘削孔の直径は小さい。小型サイズの低周波高温受振器を設計することは困難である。しかも、掘削孔用の受振器は、取り扱いが乱暴になるため頑丈でなければならない。掘削孔は偏向する可能性があるので、掘削孔受振器には傾斜した状態での作業も期待される。さらに、受振器は、深い孔の中に設置された後に地震活動を何年にもわたって継続的にモニタすることを求められる場合がある。受振器は、長期にわたり高温で確実に機能することが期待される。
【0012】
前述したように、重力加速度に起因する力は、ばねの固有変位により相殺される。
mg=kξ0 式1
この場合、mは移動質量であり、kはばね定数であり、ξ0は固有変位である。
であるので、
となる。
式2は、固有変位が固有周波数の二乗に反比例し、低い固有周波数の受振器ではこの量が大きくなることを示している。
【0013】
図2Aは、重力加速度に起因する受振器の可動コイルの固有変位ξ0を固有周波数f0=ω0/2πの関数として示している。この変位は、コイルを中心に置くためにばねにおいて必要なプレストレスの量である。図2Aから明らかなように、10Hzの受振器では約2.5mmのプレストレスが必要となる。この場合、低周波受振器、すなわち低いf0を有する受振器では大きな固有変位が必要となる。以下でより詳細に解説するように、掘削孔の下げ孔内に配置するのに適した小型サイズの低周波感震センサを得ることは困難である。
【0014】
地震信号を音響インピーダンスに逆変換したり、或いは測定した地震信号から地震源の機構を計算したりなどのいくつかの用途では低周波信号が望ましいので、受振器の固有周波数を低減させる必要がある。しかしながら、受振器の固有周波数が低下すると固有変位が増加する。通常、受振器は、外径が1インチであり、高さが1.2インチである。このような小さなサイズでは、ばねにおいて可能な最大プレストレスは数ミリメートルであり、インチの位ではない。例えば、2インチの外径及び4インチの高さを有する大型の地震計であっても、数インチのプレストレスを実現することはなおも困難である。従って、固有周波数が低くかつ小型の受振器を設計することは困難である。
【0015】
通常、受振器のばねは、耐久性を求めてベリリウム銅で作られる。ばねは、可動コイルを磁場の中心に保持するように設計されるが、ばねには時間とともにクリープが生じる。図2Bに示すように、クリープは特に高温において顕著である。図2Bに示すように、インコネルは、ベリリウム銅よりもクリープが発生しにくいことが知られている。しかしながら、インコネルは高価であるとともにばねに作るのが困難である。
【0016】
ばねのクリープは、時間とともにコイルを中心から変位させるので、受振器応答もまた変化する。最終的に、ある使用期間後には、可動コイルが受振器ハウジングの底部まで変位する場合があり、受振器が外部震動に対して応答しなくなる。
【0017】
受振器が傾斜した場合、すなわち設計された姿勢から離れた場合、可動コイルが磁石内の磁場に対して偏心する。図2Cを参照されたい。上述したように、可動コイルを支持するばねには、可動コイルが受振器内の中心にくるようにプレストレスを与えて重力を補償する。しかしながら、このような受振器が傾斜した場合、プレストレスばねが可動コイルを上方向に移動させる。従って、図2Cに示すように、可動コイルが受振器の垂直位置に対する中立位置から変位する。図2Cでは、垂直な受振器の感震センサの可動コイルの中立又は静止位置をx0で表し、傾斜θに起因して変位した位置をxで表している。傾斜量が大きい場合、可動コイルは受振器の端蓋にぶつかって、以後、受振器が地震振動に応答できなくなる可能性がある。
【0018】
図2Cに示すように、受振器が垂直方向から傾斜した場合、プレストレスばねが、弱い重力加速度に起因して可動コイルを上方向にξだけ移動させる。ξの量は、
となる。
この場合、gは重力加速度であり、θは垂直から測った傾斜であり、ω0は2πf0に等しい角固有周波数であり、kはばね定数であり、mは移動質量である。下付き文字vは、受振器が垂直な場合に可動コイルを中心に置くようにプレストレスを与えられたばねを有する垂直受振器を示す。
【0019】
同様に、プレストレスばねを有していない水平受振器では、可動コイルの偏位は、
となる。
図2Dに示すように、固有変位は受振器の固有周波数が低いときに大きく、傾斜に起因する固有変位のシフトが大きくなる。可動コイルのストロークには設計により制限があるので、可動コイルが運動するための最大空間を超える可能性があり、受振器が振動に反応しなくなる。
【0020】
可動コイルが磁束場内の中心にない場合、開回路感度S0及び開回路減衰D0が低減し、全高調波歪みが大きくなる。この場合、垂直受振器がその垂直位置から傾斜すると、受振器応答パラメータSo、Do、及びfoが傾斜量に基づいて変化する。受振器応答パラメータの変化は、記録される地震信号の波形を変化させ、これは記録データの分析にとって望ましくない。
【0021】
要約すると、低周波数の弱い地震信号を測定するためには、受振器の固有周波数が低くなければならない。しかしながら、固有周波数が低下すると受振器の固有変位が大きくなり、この受振器の固有変位に対応するために受振器のサイズが増大する。重力加速度に起因する可動コイルの固有変位が大きい場合、異なる傾斜条件ごとに固有変位の変化に対応することが困難となる。従って、傾斜範囲が大幅に制限され、設置中に受振器の厳密な設定が必要となる。最終的に、特に高温において時間経過とともにクリープが生じ、このような受振器は、長期間にわたる使用後に作動しなくなる。
【0022】
従って、地震測定の精度を向上させるために、従来の受振器を改善する要望が存在することを理解できるであろう。
【0023】
上記で示した従来の感震センサ設計の制限は排他的であることを意図するものではなく、むしろこれまでに知られているセンサ機構の有効性を低下させ得る数ある制限の中の1つである。しかしながら、上述の制限は、これまでのセンサ構造が価値ある改善を認めることを実証するには十分なものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本明細書で開示する実施形態は、受振器及び地震計などの感震センサのための方法及びシステムを提供する。特に、本開示のいくつかの実施形態は、小型受振器パッケージで低周波地震信号を復元する能力を与える感震センサを有する方法及びシステムを提供する。本開示の感震センサは、全方向傾斜可能であるとともに高温環境内における長期配置によって悪影響を受けない。
【0025】
電流を印加して重力を打ち消すことにより、感震センサの可動コイルが、感震センサ内部の磁場に対して中心位置に配置される。重力に起因する可動コイルの固有変位がプレストレスばねではなく電流によって補償されるので、本開示の感震センサは、低周波地震信号の捕捉、及び異なる動作方向及び環境における使用に適する。感震センサは、単一のコイルフィードバックシステム、及び変位信号と速度信号との組み合わせを含む信号を有することにより、幅広い周波数応答を得ることが可能になる。さらに、試験回路をシステムに統合して、フィードバックパラメータ及び信号組み合わせ用のパラメータの応答較正及び調整を行う。また、本明細書で開示するシステム及び方法は、地震データを捕捉する一方で、継続的温度モニタ、並びに浮上電流、フィードバックパラメータ、及び信号組み合わせパラメータの更新を行う。
【0026】
出願人は、可動コイルを重力に抗して上昇させるために従来のプレストレスばねではなく電流を使用することにより、ばねにかかる重力が無くなることを認めた。電気浮上がばねから応力を除去することにより、高温でのクリープが防がれる。
【0027】
出願人は、電気浮上が地震信号に対するDCシフトを引き起こすことをさらに認めた。関心のある超低周波信号では、単純なDC遮断フィルタが、低周波信号に対する位相シフトを引き起こす。出願人は、地震信号内のDCオフセットを消去するための様々な方法を本明細書において提案している。
【0028】
出願人は、正の変位フィードバックを使用することにより受振器の固有周波数を低減できることをさらに認めた。また、出願人は、変位信号と速度信号とを組み合わせることにより、幅広い周波数応答を取得できることを実現した。また、出願人は、較正を使用してフィードバックパラメータを決定できること、及び変位の積分値を加えること、すなわち開ループ制御によって受振器応答を均一にできることも実現した。出願人はまた、受振器の温度をモニタすることにより、地震データの捕捉を中断することなく、フィードバックパラメータ、信号組み合わせ、又はイコライザパラメータを継続的に更新できることも認めた。
【0029】
本開示の1つの実施形態では、地震信号検出で使用するためのシステムが、少なくとも1つの電気浮上式感震センサを備える。この電気浮上式感震センサは、ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配置されたハウジング内の可動コイルとを備える。電気回路が、感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計される。デジタル信号プロセッサが感震センサと通信し、プロセッサにより実行可能な命令セットが、実行時に感震センサに電気信号を印加して可動コイルを重力に抗して浮上させ、感震センサ内の磁場に対する中心位置にくるようにする。
【0030】
ある態様では、電気回路が、感震センサの可動コイルの動きを調整する分路抵抗器を備えることができ、及び/又は電気回路を、速度フィードバックによって可動コイルの動きを調整するように構成又は設計することができる。他の態様では、電気回路を、感震センサに統合フィードバックを提供するように構成又は設計することができる。デジタル信号プロセッサは、感震センサによる地震データの捕捉中に、感震センサからの電気信号出力をモニタして感震センサの温度を求め、センサパラメータを温度依存性に関して補償するように構成又は設計することができる。1つの考えられる実施形態では、電気回路が、感震センサの可動コイルに定電流を供給するようにさらに構成又は設計される。本開示のある態様では、浮上力が一定である。
【0031】
感震センサは、掘削孔の下げ孔内で使用するように、地震信号検出において恒久的又は半恒久的に設置するように、或いは約摂氏125度を超える高温環境内に長期配置するように構成又は設計することができる。本明細書におけるさらに他の態様では、感震センサを、掘削孔の下げ孔内で低周波地震信号を検出するように構成又は設計することができる。1つの考えられる実施形態では、感震センサが、ジンバルで支えなくても全方向傾斜可能である。
【0032】
本開示の態様では、電気回路を、浮上中に可動コイルの位置を測定するように構成又は設計することができる。システムは、測定された可動コイルの位置に基づいて、可動コイルの場所を保持すべく浮上電圧をリアルタイムで調整するように構成又は設計することができる。感震センサは、可動コイルの位置を感知するように構成又は設計された位置センサをハウジング内に備えることができる。電気回路は、浮上電流に起因するDCオフセット及びノイズの1又はそれ以上を補償するように構成又は設計することができる。本明細書におけるさらに他の実施形態では、電気回路を、感震センサの出力に正の変位フィードバック信号を供給して感震センサの固有周波数を低減させるように構成又は設計することができる。さらに他の実施形態では、システムを、感震センサから出力される速度信号と変位信号との組み合わせを含む出力信号を供給するように構成又は設計することができる。
【0033】
本開示のある実施形態では、電気回路を、速度信号を幅広い周波数範囲で出力するように構成又は設計することができる。感震センサを温度変化に関して較正するようにシステムを構成又は設計することができる。
【0034】
ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成されたハウジング内の可動コイルとを含む少なくとも1つの感震センサを備えた、地震信号検出で使用するためのシステムを提供する。システムは、感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、実行時に感震センサに電気信号を印加する、プロセッサにより実行可能な命令セットとを含み、地震信号を検出する一方で、感震センサの可動コイルのコイルDC抵抗(DC抵抗)を継続的にモニタして感震センサ温度を求め、感震センサ温度の変化に基づいてセンサパラメータを補償するように構成又は設計される。本明細書における態様では、システムを、地震信号検出中の温度変化に関してセンサパラメータを補償するように構成又は設計することができる。デジタル信号プロセッサは、信号データをリアルタイムで処理するように構成又は設計することができる。
【0035】
本開示のある実施形態では、少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用した地震信号検出法が、地震信号を検出する場所に少なくとも1つの電気浮上式感震センサを配置するステップと、感震センサに電気浮上信号を供給して可動コイルを重力に抗して浮上させ、可動コイルが感震センサ内の磁場に対して中心位置にくるようにするステップと、少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用して地震信号を検出するステップと、感知した地震信号に基づいて感震センサから速度信号及び変位信号を出力するステップとを含む。
【0036】
ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成されたハウジング内の可動コイルと、可動コイルに電気信号を供給して可動コイルを重力に抗して浮上させ、可動コイルを感震センサ内の磁場に対して中心位置に置くように構成又は設計された電気回路とを含む、掘削孔の下げ孔内での地震信号検出で使用するための感震センサを提供する。ある態様では、感震センサの可動コイルの固有周波数(fo)を約0.5Hz〜約5Hzとすることができ、感震センサハウジングの外径(OD)及び高さ(H)を約1.5インチ未満とすることができる。
【0037】
本明細書における他の実施形態では、地震信号検出で使用するためのシステムが、ハウジングと、ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、ハウジングに対して径方向に固定されるとともにハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成された、ハウジング内の可動コイルとを有する少なくとも1つの感震センサを備える。ある実施形態では、システムが、感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とをそれぞれ生成するように構成又は設計された少なくとも2つの感知要素を含む。システムは、第1の信号と第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するように構成又は設計される。
【0038】
さらに別の考えられる実施形態では、地震信号を検出するための方法が、少なくとも1つの感震センサを配置するステップと、感震センサを使用して地震信号を感知するステップと、感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とを生成するステップと、第1の信号と第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するステップとを含む。
【0039】
以下の説明ではさらなる利点及び新規の特徴を示すが、当業者であれば、本明細書の内容を読むこと、又は本明細書で説明する原理を実践することによりこれらを学び取ることができるであろう。本明細書で説明する利点のいくつかは、添付の特許請求の範囲に記載する手段を通じて実現することができる。
【0040】
添付図面にはある実施形態を例示しており、これらは本明細書の一部である。これらの図面は、以下の説明と併せて本発明の原理のいくつかを実証及び説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】従来の受振器の感震センサの概略図である。
【図1B】本明細書で説明する原理を明確にするための受振器の感震センサの概略図である。
【図1C】従来の10Hz受振器の振幅応答及び位相応答を異なる減衰率Dごとに示すグラフである。
【図1D】異なる固有周波数foを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示すグラフである。
【図1E】異なる減衰率Dを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示すグラフである。
【図2A】重力加速度に起因する、受振器の感震センサ内の可動コイルの固有変位を示すグラフである。
【図2B】異なる材料からなる受振器ばねにおける、摂氏260度におけるクリープを示すグラフである。
【図2C】垂直受振器の感震センサの可動コイルの、傾斜θに起因する中立又は静止位置x0から変位位置xへの中心の変位を概略的に示す図である。
【図2D】プレストレスばねを採用しない水平受振器の可動コイルの、傾斜角に関する固有変位を示すグラフである。
【図3A】本開示による、電流を注入して感震センサの可動コイルを浮上させるためのいくつかの考えられる技術の回路図である。
【図3B】本開示による、電流を注入して感震センサの可動コイルを浮上させるためのいくつかの考えられる技術の回路図である。
【図4A】本開示による、高温環境において電気浮上を使用して感震センサのばねのクリープを防ぐ、1つの考えられる下げ孔内地震モニタ用システムの概略図である。
【図4B】銅線の抵抗と温度との関係を示すグラフである。
【図4C】本開示による、定電流を供給することによって受振器のコイル抵抗及びケーブル抵抗の温度依存性を克服するための別の考えられる地震モニタ用システムの概略図である。
【図5】本開示による、電気浮上を使用して可動コイルを中心に置くことに関して感震センサを試験するための、本明細書に開示する1つの技術を示す回路図である。
【図6】浮上電流及び/又は受振器パラメータの決定の不正確さに起因する、電気浮上後の固有変位の誤差を示すグラフである。
【図7A】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図7B】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図7C】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図7D】本開示による、電気浮上した感震センサにおいてDCを消去するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。
【図8A】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図8B】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図8C】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図8D】本開示による、感震センサ内の可動コイルの位置を感知するためのいくつかの例示的な技術の概略図である。
【図9A】本発明による、感震センサシステムにおけるいくつかのフィードバック技術の回路図である。
【図9B】本開示による、フィードバック感震センサの理想的なフィードバックのないシミュレーションデータ、及びフィードバックパラメータを決定する際の誤差の影響を含むシミュレーションデータを示すグラフである。
【図10】本開示による、感震センサの組み合わせ出力データのシミュレーションデータを示すグラフである。
【図11】本開示による、受振器の較正を説明するための受振器センサ及び理想的な受振器センサの概略図である。
【図12】変位信号及び速度信号の両方を出力する1つのばね質量系を示す概略図である。
【図13A】力平衡フィードバックループを有する従来の感震センサ又はサーボ加速度計を示すブロック図である。
【図13B】本開示による、感震センサのフィードバックループシステム、及び組み合わせた変位信号及び速度信号を示すブロック図である。
【図14】受振器応答パラメータS0、D0、及びf0の温度依存性を示すグラフである。
【図15】本開示による、感震センサを較正するための、本明細書で説明する1つの従来の技術を示す図である。
【図16A】本開示による感震センサを有する1つの考えられるシステムを示すブロック図である。
【図16B】本開示の原理による感震センサを有する1つの例示的な掘削孔ツールを示す図である。
【図16C】本開示による感震センサを利用した地震信号検出のための1つの考えられる方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面全体を通じて、同じ参照番号及び説明は類似の要素を示すが、これらは必ずしも同じものであるとは限らない。本明細書で説明する原理は、様々な修正及び代替形態が可能であるが、特定の実施形態を例示目的で図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかしながら、本発明は、開示する特定の形態に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての修正、同等物及び代替手段を含む。
【0043】
以下、本発明の例示的な実施形態及び態様について説明する。当然ながら、あらゆるこのような実際の実施形態の開発においては、開発者の特定の目標を達成するために、実施構成ごとに異なるシステム関連及びビジネス関連の制約の順守などの数々の実施構成固有の判断を行う必要があることが理解されよう。さらに、このような開発努力は複雑かつ時間を要するものとなり得るが、にも関わらず、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な取り組みであろうことが理解されよう。
【0044】
本明細書全体を通じて、「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「1つの態様」、「ある態様」、又は「いくつかの態様」に対する言及は、これらの実施形態又は態様と併せて説明する特定の特徴、構造、方法、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って本明細書全体を通じて様々な箇所に出現する「1つの実施形態では」、「ある実施形態では」、又は「いくつかの実施形態では」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及しているとは限らない。さらに、これらの特定の特徴、構造、方法、又は特性を、いずれかの適当な方法で1又はそれ以上の実施形態に組み合わせることができる。「含む(including)」及び「有する(having)」という用語は、「備える(comprising)」という用語と同じ意味を有することとする。
【0045】
さらに、本発明の態様は、単一の開示した実施形態の全ての特徴よりも少ないものによって成立することができる。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書によりこの詳細な説明に明確に組み入れられ、個々の請求項は、それ自体が本発明の独立した実施形態として成立する。
【0046】
ここで図面を参照すると、同様の番号は同様の部分を示しており、本明細書における開示は、地震信号検出を容易にして向上させるために利用できる様々な技術の概念を対象とするものである。本開示は、地震予測の分野、或いは地下貯留層の能動的又は受動的なモニタの分野で利用される受振器又は地震計などの動電式センサに対する開示技術の適用性を企図するものである。これらのセンサは、垂直方向に対して偏向した調査井及び/又は揚水井の中に配置することができ、3つの直交軸に沿って受信される信号成分を検出するための多成分受振器を備える。本開示による態様では、地震、又は貯留層における微小地震活動をモニタするためのシステムを含む、有線システム、陸上地震探査システム、海底地震探査システム、恒久的又はその他のモニタシステムにおいてこれらの感震センサを利用することができる。本開示のいくつかの原理は、「受振器較正技術」という名称の、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第11/733,214号にも記載されており、該特許出願の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。
【0047】
以下でより詳細に説明するように、本開示は、地震信号検出を容易にして向上させるために使用できる様々な技術を提供する。本開示は、本明細書の原理を、特に有線モニタ、陸上地震モニタ、海底地震モニタ、恒久的な又はその他のモニタ、水圧破砕モニタ、生産検層などの様々な分野に適用することを企図するものである。
【0048】
本出願で説明する様々な技術及び特徴をより良く理解するために、ここで受振器測定技術についての簡単な説明を行う。地震探査では、地中を伝播する地震波を測定して地中の構造的イメージを地図化する。受振器は多くの場合、例えば下げ孔、地表面及び/又は海底などの様々な場所で地震信号を検出するために使用される。従来の受振器の例を図1Aに示す。図1Bは、本明細書で説明する原理を明確にするための受振器の概略図であり、図1Cは、従来の10Hz受振器の振幅及び位相応答を異なる減衰率Dごとにグラフで示している。
【0049】
図1Aの受振器10は、ボビン上に装着された可動コイル12と、磁石15と、懸架ばね20を含む一対の極片16と、ハウジング14とを含む。極片16及びハウジング14は磁気透過性材料で作られて磁場を形成し、この中に可動コイル12が懸架される。図1Aの例では、ボビン上に装着された可動コイル12及び懸架ばね20が、受振器の有効移動質量部分mを共同で形成する。
【0050】
図1Aに示すように、従来の受振器では、可動コイルが一対のばねにより磁場内で懸架される。ばねは、コイルの径方向の動きを制御するとともにばね質量系に望ましい固有周波数を与えるように設計される。
【0051】
出願人は、従来の感震センサが、本開示の電気浮上式感震センサによって対処できる制限を有することを認めた。すなわち、低周波信号の復元にはセンサの固有周波数f0を低下させることが必要であり、これにより可動コイルの固有変位が増加し、従ってセンサのサイズが増加する。従って、低いf0を有する感震センサを小さなパッケージに詰めることは困難である。
【0052】
しかも、特に掘削孔への配置では、全方向傾斜可能感震センサが望ましい。通常は、ジンバルシステム又はモータ駆動プラットフォームが使用されるが、ジンバル機構又は駆動モータ機構は感震センサのサイズを増加させる傾向にある。
【0053】
本明細書で説明する種類の感震センサは、例えば、高温によりばねのクリープが引き起こされる可能性のある高温井内で使用される。この結果、受振器の応答が変化し、最終的にセンサが作動を停止する。
【0054】
可動コイルを重力に抗して中立位置で支持するために、感震センサ内にプレストレスばねを必要とする典型的な感震センサシステムとは対照的に、本開示は、電気浮上によりコイルの位置を磁場内の中心に置くことを教示する。本明細書で使用する「電気浮上」という用語は、電気信号を使用して感震センサの可動コイルを重力に抗して上昇又は浮上させることを意味する。上述したように、本明細書で説明する種類の従来の感震センサはプレストレスばねを有し、これが可動コイルを重力に抗して上昇させることにより、可動コイルが感震センサ内の磁場内で中心にくるようになる。本開示は、電気浮上が従来のプレストレスばねに取って代わることを企図する。この場合、本センサのばね機構は、センサの自由な軸方向移動を可能にする一方で、センサがハウジングに対して径方向に移動しないように可動コイルを保持又は固定するように設計される。上記の説明は、電気浮上が従来の感震センサのプレストレスばねに取って代わることを提案するものではあるが、ばね機構におけるプレストレスを排除する必要はない。ばね機構におけるプレストレスは、ばねが可動コイルの場所で誤差を引き起こさないように、完全に排除されないまでも最小限に抑えられることを企図する。
【0055】
本出願で使用する「受振器」という用語は、図1Aに示すような従来式の受振器、及び地震計タイプの動電センサのような超低周波受振器、並びに、例えば従来式の受振器よりも比較的広い加速度範囲を測定するように構成又は設計することができる、Schlumberger社から提供される受振器加速度計(GAC)装置を含むことを意図されている。図1Aに示すように、典型的な受振器10は、単一のばね又は一対のばねにより磁束内で懸架された可動コイルを含む。可動コイルは、受振器のハウジングが外部振動に応答して動くのに対し、同じ位置に留まろうとする。
【0056】
図1Bは、受振器の感震センサの概略図であり、図1Cは、従来の10Hz受振器の振幅及び位相応答を、分路抵抗器Rsを調整することによって得られる異なる減衰率Dごとに示している。図1Dには、異なる固有周波数foを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示している。可動コイルの変位は低い固有周波数の場合に大きく、可動コイルには適度に大きな移動空間が求められる。図1Eには、異なる減衰率Dを有する感震センサの可動コイルの変位応答を示している。この場合、減衰率を増加させることにより、可動コイルの移動空間を縮小することができる。
【0057】
受振器は、地動を電気信号に変換する。上述したように、典型的な受振器では、可動コイルが、図1Aに示すように一対のばねにより磁束場内で懸架される。受振器のハウジングが地動とともに動いた場合、可動コイルは同じ位置に留まる。可動コイルの(磁束場を有する)ハウジングに対する動きにより、コイルが可動コイルの速度に比例する電気信号を生成するようになる。
【0058】
再び図1Bを参照すると、受振器の可動コイルは質量mを有し、そのハウジングに対する中立位置はx0である。可動コイルの中立位置に対する位置はξである。コイルのDC抵抗はrであり、可動コイルの出力が外部抵抗Rsに接続されて減衰率Dを調整する。受振器の可動コイルが磁束内で動くと、可動コイルは信号eg、すなわち、
を生成する。
この場合、Bは磁束密度であり、lはコイル長であり、vはコイルの磁場に対する速度である。積Blは、受振器の地動速度から電気信号egへの変換係数であり、通常は感度S0として扱われる。
【0059】
可動コイルから電流が流れ出し、分路抵抗器Rsを通じて戻る。
コイル内の電流は、コイルの運きを阻止するための力f、すなわち減衰力を引き起こす。
可動コイルの運動方程式は、
のように書かれる。
この場合、uは地動の変位であり、μは摩擦係数であり、kはばね定数である。固有周波数ω0及び開回路減衰率D0は、
と定義される。
全体の減衰Dは、
と定義される。
移動質量の運動方程式は、
と書き直される。
地動は、
で与えられると仮定する。
この結果、式12の解は、
のように書かれる。
正弦項及び余弦項を位相遅延と組み合わせて、
とすることができる。
この結果、電気信号は、
となる。
出力信号は分路抵抗及びコイル抵抗により低減され、分路抵抗器Rsを通るセンサ出力はRs/(r+Rs)だけ低減される。
【0060】
図1Cは、従来の10Hz受振器の振幅応答及び位相応答を異なる減衰率Dごとにグラフで示している。受振器が、以下の表1に示すような応答パラメータを有すると仮定すると、
表1
全体の減衰率Dを適当な分路抵抗器Rsによって調整して式11を使用することにより、以下の表2に示すようにD=0.3、D=0.7、及びD=1.0が生じた。
表2
【0061】
D=0.3、0.7、及び1.0に式17を使用して、単位速度入力に対する正規化した振幅応答eg/(aω)を図1Cに示している。式16によって求めた位相応答も図1Cに示している。図1Cから明らかなように、可動コイルの動きは、固有周波数を上回る周波数では地動と逆になる。
【0062】
式15から、一定速度の場合の可動コイルの変位は、
のように書かれる。
式18を使用して、以下の表3に示すパラメータに基づいて異なる固有周波数ごとに合成データを生成し、この結果を図1Dに示す。
表3
【0063】
図1Dには、開回路条件における可動コイルの変位を異なる固有周波数ごとに示している。固有周波数が低下するにつれて可動コイルの変位応答が増加していることに留意されたい。
【0064】
固有周波数における変位量は、
となる。
表3の受振器2のパラメータ及び式19を使用して、分路抵抗器Rsを調整することによる全体の減衰率D=0.7、1.0、及び2.75を使用して、以下の表4に示すように可動コイルの変位を計算した。
表4
結果として生じる可動コイルの変位を図1Eに周波数の関数として示す。全体の減衰率が小さいときに、固有周波数において変位が最大になることに留意されたい。全体の減衰が高い場合には、変位は、一定の速度入力では幅広い周波数範囲にわたって一定である。
【0065】
図2Aは、重力加速度に起因する受振器の固有変位を示すグラフである。10Hz受振器では、可動コイルの固有変位は約2.5mmである。垂直受振器では、可動コイルを懸架するばねにプレストレスを与えて、受振器が垂直に置かれたときに可動コイルが受振器の中心にくるようにする。10Hz受振器の典型的なサイズは、ODが1インチ、高さが1.2インチとなる。2.5mmの固有変位を有するプレストレスばねが、このサイズの受振器に詰め込まれる。低周波信号を検出するために固有周波数を1Hzまで低減した場合、固有変位は約250mmになる可能性がある。250mmの固有変位を有するプレストレスばねは、250mmよりも大きなサイズのハウジングを必要とすることになる。
【0066】
図2Bは、異なる材料からなる受振器ばねにおける、摂氏260度でのクリープを示すグラフである。センサのばねが長期にわたって高温に曝された場合、質量及び重力加速度に起因する応力がばねにクリープを生じさせ、恒久的に変形させる。この場合、可動コイルは最初は感震センサのハウジングの中心にあるが、コイルがばねのクリープの量だけ降下し、最終的にはハウジングの底部に接触して作動しなくなる。
【0067】
上述したように、本開示は、上述した種類の従来の受振器における短所を克服するシステムを提案する。本開示は、可動コイル位置の運動成分ではなくDC成分をフィードバックすることを教示する。通常、サーボ加速度計では、運動成分を含む可動コイルの変位信号がフィードバック目的で使用される。しかしながら、出願人は、運動成分フィードバックを与えた場合、このフィードバックはいわゆる力平衡フィードバックであり、感震センサの出力が可動コイルの速度ではなくむしろ加速度に比例することを認めた。このような状態は本質的にノイズが多い。
【0068】
以下でさらに詳細に説明するように、可動コイル内に電流が注入される。直列に接続された分路抵抗器を介して電流をコイルに印加して減衰率を制御することができる。コイルのDC抵抗は温度とともに変化するので、周囲温度が高ければ、DC抵抗が増加してコイル内の電流が減少することにより浮上バランスが失われるようになる。従って、本開示は、可動コイルを浮上させるための電流を定電流として供給し、温度が変化した場合でも電流が同じ状態を保てるようにすることを提案する。
【0069】
以下でさらに詳細に説明するように、位置センサを設けて磁場に対する可動コイルの位置をモニタすることができる。1つの考えられる技術として、コイルを中心に置くのに必要な電流量は移動質量の量によって最初に決定される。コイル位置は位置センサを使用することによってモニタされるので、コイル位置の誤差をコイルにフィードバックすることが可能である。或いは、コイルが中立位置にあることを位置センサが検出するまで可動コイルを浮上させることも可能である。
【0070】
位置情報のフィードバックをコイルに与えて、固有周波数を修正できるようにすることもできる。正のフィードバックを与えた場合、このフィードバックは固有周波数を低減させる。可動コイルの位置情報は、位置センサから直接得ることができ、或いは可動コイルから得られる速度信号の積分により求めることができる。積分された速度のフィードバックによりDC成分をフィードバックすることはできないが、固有周波数を低下させることは可能である。
【0071】
本開示は、コイルからの出力信号を増幅し、逆の極性を有するフィードバックをコイルに与えることを提案する。コイルからの出力はコイルの速度に比例し、速度フィードバックは減衰率を調整する。減衰率が大きい場合には、コイルからの出力は、固有周波数の前後で加速度に比例する。大きな減衰率に伴って、加速度線形周波数範囲が広くなる。この条件では、変位センサは速度に比例する信号を出力する。過減衰がなければ、コイルの変位応答は固有周波数の前後で大きくなり、全高調波歪みが大きくなり、コイルが感震センサに応答するために大きな空間が必要となる(再度図1Eを参照)。
【0072】
フィードバック後、増幅器がコイルからの信号と変位センサからの信号とを組み合わせて周波数範囲を拡張する(以下で説明する図10を参照)。積分した変位信号を加算して周波数範囲をさらに拡張することができる(再度図10を参照)。
【0073】
可動コイルに電気信号を注入することにより初期較正を行うことができる。いかなるフィードバック信号も含まない受振器要素の応答が測定される。応答を分析することにより、固有周波数f0、開回路減衰D0、開回路感度S0、及びコイル抵抗rなどの受振器パラメータが求められる。測定した応答パラメータに基づいて、フィードバック定数及び信号組み合わせのための重み付けが決定される。
【0074】
本開示の態様では、センサ要素の温度がモニタされる。感震センサのハウジングに、独立した温度センサを取り付けることができる。可動コイルのDC抵抗を測定して感震センサの温度を推定することができる。同一出願人による米国特許第7,225,662号には受振器を較正するための技術が開示されており、該特許の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。コイルの抵抗は温度の関数であり、抵抗をモニタすることにより温度が推定される。電気浮上電圧及び電流を使用してコイルのDC抵抗をモニタすることもできる。センサ応答パラメータは温度とともに変化する。フィードバック定数及び信号組み合わせ定数は、測定された温度に基づいて修正される。
【0075】
デジタル化した変位信号及び速度信号によりフィードバック及び信号組み合わせを行って、較正されたセンサパラメータに基づいてこれらのパラメータを容易に調整できるようにすることもできる。
【0076】
図3A及び図3Bは、本開示による、感震センサの可動コイルを浮上させる電流を注入するためのいくつかの考えられる技術を示す回路図である。図3Aの回路図によって示すように、本開示は、感震センサの可動コイルに電流を印加して重力を相殺することを教示する。この場合、電気浮上が、従来技術の感震センサで一般に使用されるプレストレスばねに取って代わり、或いはこれを補償する。本感震センサのばね要素は、移動質量をセンサハウジングに対して径方向に堅固に支持するとともに軸方向に柔軟に支持する機能を果たす。
【0077】
プレストレスばねの代わりに電気浮上を使用することにより、低周波感震センサが提供されるとともにばねのクリープが防がれる。移動質量が電気浮上により懸架又は浮上されるので、図2Aに示すような低周波受振器又は地震計のプレストレスばねの大きな固有変位はもはや必要でない。もはやプレストレスばねが移動質量を重力に抗して支持することはないので、ばねに作用して高温でクリープを引き起こす応力は存在しない。本明細書で開示するいくつかの態様では、電流が分路抵抗器Rsを通って可動コイル内に流れ込む(図3Aを参照)。分路抵抗器Rsは、感震センサの特定の用途にとって望ましい減衰率に基づいて決定される。
【0078】
移動質量に作用する重力は、
となる。
この場合、mは移動質量であり、gは重力加速度であり、θは垂直から測定した傾斜角である。印加電流に起因する力は、
となる。
この場合、S0は開回路感度であり、Bl(Bは磁束密度であり、lはコイル長である)と同じである。重力と電流に起因する力とが互いに相殺されるので、必要な電流量は、
となる。
移動質量mが小さくて感度S0が高い場合には、電流量が小さくなることが分かる。従って小さな移動質量及び高い感度を有する感震センサ要素を設計することが望ましい。本開示において提案する設計基準は、同一出願人による米国特許第7,099,235号により開示される特徴と同様のものであり、該特許の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。
【0079】
図3Aに示す回路では、分路抵抗器Rsが臨界減衰を引き起こすように設計又は選択される。重力を補償するために、分路抵抗器Rsを通じて電圧E0が印加される。以下の表5は、従来の地震計、従来の陸上受振器、従来の下げ孔内受振器、及び本開示に基づいて電気浮上用に構成又は設計されたGACセンサ(Schlumberger社により開発された高感度受振器)にとって電気浮上に必要な電圧、電流、及び消費電力を推定した結果を示している。
表5
【0080】
低周波地震計の移動質量を浮上させるには大量の電力が必要であるが、高感度感震センサの電力消費はわずか4mWであることが分かる。出願人は、移動質量が小さく開回路感度が大きな感震センサが、電力消費において予想外の利益をもたらすことを認めた。
【0081】
図3Aの回路図では、かなりの割合の電力が分路抵抗器Rs内で消費される。Rsの量は、r、すなわち可動コイルのDC抵抗よりも大きい。従って、電流を注入するためのより効率的な技術を図3Bに示しており、この場合、フィードバックを有する感震センサが設けられる。
【0082】
図3Bの回路では、入力抵抗器Riに浮上電圧ELが印加される。出力電圧は、
となる。
演算増幅器の入力は、架空短絡に起因してゼロボルトである。可動コイル内の電流
は、入力抵抗器Riに注入される電流と同じ電流である。従って、この回路は、いかなるコイル抵抗rの場合でも供給電圧EL及び入力抵抗器Riにより決定される定電流を可動コイルに供給し、たとえrが変化しても電流は一定である。図3Bの回路の1つの利点は、Riを小さくなるように設計することにより、抵抗器を横切る電圧降下が低減されるようになる点である。分路抵抗器Rsをコイルと並列に追加して、感震センサ動作の減衰率を制御することができる。
【0083】
例えば、Ri=100オーム及び減衰率70%の場合、図3Bに示すような電気浮上回路に必要な電流及び消費電力を推定し、この結果を以下の表6に示す。以下の表6から明らかなように、図3Bに示す回路を利用することにより、必要な電力が1/10〜1/200減少する。
表6
【0084】
図4Aは、本開示による、高温環境において電気浮上を使用して受振器のばねのクリープを防ぐ1つの考えられる下げ孔内地震モニタ用システムの概略図である。図4Aの例示的なシステムでは、地震活動を長期間モニタするために、例えば高温の掘削孔内に配置される感震センサに電気浮上が適用される。従来の電子機器は高温での信頼性が低い場合があるので、感震センサからの信号を、電子機器を使用せずにアナログ方式で送信することがある。浮上電流をバッテリーにより分路抵抗器Rsを通じて印加することができる。コンデンサCがDC浮上電圧を遮断して、地震信号を記録機器に渡す。
【0085】
本開示はまた、過去に設置済みではあるが、ばねのクリープに起因して動作不能、すなわち「停止状態」になった可能性のある既存の受振器に電流を印加できることも企図する。停止状態の感震センサに適当な電流を注入することによって、可動コイルを底部から持ち上げ、感震センサを動作可能にして再び地震探査動作に使用できるようにすることができる。
【0086】
出願人はさらに、コイル抵抗が温度変化とともに変化することに注目した。例えば銅線では、抵抗は、
として表される。
図4Bは、銅線の抵抗と温度との関係、すなわち温度係数のグラフ表現である。摂氏200度における抵抗は、摂氏20度における抵抗の1.8倍である。環境温度が変化し続ける動作状況では、下げ孔の温度も変化することがある。例えば、油井の掘削時には、泥水循環により下げ孔地層が冷却される。しかしながら、油井温度が安定するには長い時間がかかる。さらに、油井内で石油が流れると温度が変動する。従って、分路抵抗器を介して感震センサの可動コイルに電圧を印加する場合、電流は温度の関数であり、温度変化に伴って電圧を修正する必要がある。
【0087】
下げ孔内に配置された感震センサに配線がなされており、増幅器を使用せずに信号を地表に送信する場合、可動コイル抵抗にはケーブル抵抗が含まれ、このケーブル抵抗の量もまた温度変化とともに変化する。温度効果を排除するために、図4Cの例示的な地震システムに示すように電力を定電流方式で供給することができる。図4Cの場合には、たとえ抵抗が変化しても印加電流は一定であり、浮上力は一定に保持される。
【0088】
可動コイル位置を把握することにより、電気浮上量を求めることができる。1つの考えられる技術は、移動質量の位置を感知するのに適した変位センサを使用することである。例えば、外部傾斜計を利用することができる。しかしながら、同一出願人による同時係属中の米国特許出願第12/180,560号に開示されているステップ試験法を使用することにより、可動コイルの中心を求めることもできる。
【0089】
浮上電流の検証のために、すなわち注入電流が十分であるか否かをチェックするために、前述の米国特許出願第12/180,560号に開示されている技術を、本開示で開示する電気浮上技術と組み合わせて利用することができる。前述の特許出願の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。
【0090】
本開示による、電気浮上を使用して受振器の可動コイルを中心に置くことに関して感震センサ受振器を試験するための1つの技術を示す回路図である。図5の技術では、ステップ試験を本開示の回路内に統合して可動コイル位置及び電気浮上電流を測定する。図5では、S1はステップ電圧Esを印加するためのスイッチであり、S2はステップ電圧の極性を変更するためのスイッチである。Esは、可動コイルを感震センサのハウジングの頂部最大値及び底部最大値まで完全に変位させるのに十分に大きくなるように選択される。可動コイルがハウジングの中心に位置する場合、頂部最大位置からのステップ応答と底部最大位置からのステップ応答とが逆の極性で同じでなければならない。差異が存在する場合、これは可動コイルの中心からの変位量となる。図5の例示的な試験回路が電気浮上を適用するための分路抵抗器Rsを含むことに留意されたい。試験は、分路抵抗器を含む感震センサの全体応答を含むが、開回路応答は含まない。開回路応答は、分路抵抗器をオフにすることにより測定することができる。
【0091】
本開示は、感震センサの電気浮上のための2つの例示的な技術を提案する。1つの例では、固有周波数f0、開回路感度S0、DC抵抗r、及び移動質量mなどの受振器パラメータを使用した浮上電流の推定に基づいて感震センサにDC電流が印加される。もう1つの考えられる技術では、可動コイル位置を測定して、位置を電気的に調節又は調整する。
【0092】
電気浮上に必要な電流量は、
となる。
重力と電気浮上とを相殺する上での誤差は、ばね要素の変形により吸収される。ばね要素が弱く、移動質量が大きい場合、例えばf0が低い場合には、相殺誤差に起因するばねの変形が大きくなる(図6を参照)。このような場合には、電気浮上電流を十分な精度で決定する必要がある。この場合、浮上電流の誤差をばね要素の変形で相殺する必要があり、すなわち
となる。式2及び式25を使用することにより、ばね変形のパーセンテージ誤差が、
として求められる。
この場合、ξはばね変位であり、ξ0はばね要素の固有変位である。浮上電流のパーセンテージ誤差は、固有変位の誤差のパーセンテージと同じである。
【0093】
図6は、浮上電流、及び/又は受振器パラメータの決定の不正確さに起因する電気浮上後のコイル中心化の誤差を示すグラフである。図6のグラフには、浮上電流の誤差により引き起こされるばね変位を示している。重力加速度の95%が補償される場合、誤差はf0=4Hzに対して1mmである。許容値は通常約5%であるため、上記結果を得るために、感震センサの仕様に基づいて浮上電流を設定することができる。例えば1.5Hz受振器を1mmの誤差範囲内で浮上させるためには、浮上電流は1%の精度範囲内になければならない。この場合、1mmの変位誤差を、外径(OD)が1インチで高さ(H)が1.2インチのサイズを有する従来の受振器における最大許容誤差とすることができる。
【0094】
1%の誤差範囲内の電流推定では、感震センサの高精度較正が必要となる。この場合、本開示は、測定した移動質量を使用して必要な浮上電流量を求めることを提案する。受振器の移動質量を求めるための技術は、前述の同一出願人による米国特許第7,225,662号に記載されている。
【0095】
図7A〜図7Dは、本開示による電気浮上した受振器においてDCを消去するための、本明細書で開示するいくつかの技術を示す回路図である。
【0096】
感震センサの可動コイルを浮上させるために注入される浮上電流は、地震信号測定値に対してDCオフセットを引き起こす。1つの可能性は、図4A、図4C、及び図5に示すようにコンデンサを使用してDC信号を遮断することである。しかしながら、このようなDC信号の遮断は、低周波信号も低減させる可能性がある。
【0097】
図7Aは、感震センサ内に浮上電流を注入することにより引き起こされるDCオフセットを除去するための1つの技術を示している。図7Aの回路図では、浮上のために可動コイルに供給される電圧と同じ電圧を演算増幅器の負の入力にも印加して、可動コイルに印加された電圧を相殺するようにする。正と負の両方の入力に同じ電圧が印加されるので、浮上電流におけるあらゆるノイズを消去することもできる。
【0098】
図7Bは、図3Bに示す浮上回路のDC信号を消去するための別の考えられる技術を示している。
【0099】
図7Cは、フィルタリングした出力のフィードバックを使用してDC成分を遮断するためのさらに別の考えられる技術を示している。図7Cの例では、演算増幅器が、検出した地震信号及び浮上電圧の両方を増幅する。地震信号は、超低周波成分が残るようにフィルタリングされる。演算増幅器に低周波成分のフィードバックを与えてDC信号を除去する。図7Dのさらに別の例示的な装置に示すように、フィルタリングした演算増幅器の出力を極性を逆転させた後に可動コイルに印加して、演算増幅器の入力においてゼロDC電圧を保持することができる。DC成分のみがフィードバックされるので、浮上電流におけるノイズを消去することはできない。
【0100】
図8A〜図8Dは、本開示による、受振器の感震センサ内の可動コイルの位置を感知するための、本明細書で開示するいくつかの技術の概略図である。
【0101】
本開示は、感震センサ装置内に変位感知要素を取り付けて、移動質量の量又はその他の受振器パラメータを決定することなく感震センサの可動コイルを浮上できるようにすることを企図する。この場合、以下でさらに詳細に説明するように、本開示の電気浮上回路図に変位センサ機構を組み込むことができると企図される。可動コイルに変位信号のフィードバックを負の極性で与えて、位置信号が可動コイルを反対方向に引き寄せ、可動コイルが受振器の中心にくるようにする。この場合、サーボ加速度計タイプの構成を使用することができるが、本例では位置信号をフィルタリングして、いかなる地震信号のフィードバックも存在せず、固有周波数が地震周波数範囲内で変化しないようにする。
【0102】
図8Aの例示的な構成では、対向する静電容量要素が、可動コイル上及び感震センサの極片上に互いに対して可動であるように設けられる。これらの電極間の距離は同じままであるが、重複面積の量は可動コイルの位置によって変化する。変位の大きな感震センサに図8Aの構成を利用することができる。
【0103】
図8Bは、ばね要素の上部及び下部の位置及び端蓋に取り付けた静電容量要素の対を示している。可動コイルが重力によって変位すると、コイルが下方に移動することにより下部の静電容量要素間の離隔距離が減少して、下部の静電容量要素から得られる静電容量が上部の静電容量要素から得られる量よりも大きくなる。低周波感震センサでは可動コイルのストロークが大きく、静電容量が小さすぎて距離を特定できない可能性があることに留意されたい。しかしながら、同一出願人による日本国特許P3098045号に開示されているような過減衰条件で作動する受振器でこのような構成を利用することができる。
【0104】
図8Cは、光学式位置センサの1つの実施構成を示している。1つの考えられる実施形態では、図8Dに概略的に示すように、干渉計の原理を使用して光学位置センサを構成又は設計することができる。
【0105】
1つの考えられる実施形態では、光学送信機が、可動コイル上に装着された反射器に光を送り、光学受信機が反射信号を受信する。送信機及び受信機は、マイケルソン干渉計などの光学干渉計を形成するように構成することができる。測定が光学系に基づくので、低周波数での測定には1/fノイズが無い。
【0106】
変位が大きな場合、複雑になり得る干渉縞を考慮する必要がない。光学変位センサを、反射光の強度を測定するようにすることもできる。距離が大きな場合には反射光の強度が低くなる。同じ光学センサを底蓋上に装着して、変位測定がプッシュプル方式で作動するようにすることができる。2つの光学検出器が同じ強度の光を受光する位置が可動コイルの中心となる。
【0107】
図9Aは、本開示によるフィードバック感震センサの例示的なシステムを示す回路図である。出願人は、感震センサの出力にフィードバック電流を供給することが、感震センサの可動コイルからの信号を使用して信号対ノイズ比(SNR)を向上させるための新規の効率的なアプローチになることを認めた。
【0108】
前述の日本国特許P3098045号は、受振器も接続された演算増幅器の負の入力に対してフィードバックを使用することを開示している。この回路は仮想短絡として知られている。フィードバックにより入力電圧がゼロになり、演算増幅器が信号を電流モードで検出して可動コイルに最大減衰を印加するようになる。これとは対照的に、図9Aの回路は、演算増幅器の正の入力にフィードバックを与えて、地震信号を出力している感震センサの可動コイル内にもフィードバック電流が流れ込むようにする。
【0109】
本開示のある実施形態によれば、電気回路を、約0.01Hz〜約1000Hzまでの幅広い周波数範囲の速度信号を出力するようにさらに構成又は設計することができる。この場合、ノイズレベルを考慮して周波数範囲を定めることができる。理論的には、周波数範囲をあらゆる望ましいレベルに設定することができるが、ノイズにより課される制限が存在する。1つの可能性として、本開示は、機械的固有周波数=4Hz、変位フィードバックを使用した固有周波数=1Hz、変位信号ロールオフ=0.1Hz、及び変換=0.01Hzを有する感震センサを企図する。
【0110】
サーボ加速度計では、ばねの剛性を高めるために位置フィードバックが負であり、変位信号は、修正された固有周波数未満で加速度に比例する。これとは対照的に、本開示は、図9Aに示すように、正の位置フィードバックを与えてばねの剛性を和らげる新しい方法を提案する。可動コイルが、感知コイル及びフィードバックコイルに使用される。感知コイルは、地震信号を測定する主な手段である。米国特許第3,559,050号又は米国特許第4,051,718号によって提案されるように、感知コイル及び独立したフィードバックコイルを使用することはできるが、感度が低下して追加の端子ピンが必要となる。
【0111】
入力信号eは、可動コイルの出力とフィードバック信号との和である。図9Aでは、信号eを増幅し、可動コイルにフィードバックも与えて減衰率を修正する。フィードバック信号を伴う可動コイルの運動方程式は、
のように書くことができる。
この場合、fは、可動コイルに作用する電気力の和である。コイルの出力側で、フィードバック電流とコイル出力とが合併する。電流の方向は、コイル内に流れ込む方向である。抵抗器Riを通じてフィードバック電流が供給される。可動コイルは出力egを生成する。「r」は可動コイルの抵抗である。
【0112】
可動コイルからの出力信号とフィードバック信号との和は、
となる。
出力電圧は、
となる。
変位も含んだ速度フィードバックの量は、
となる。
この場合、c1は増幅器の利得及びフィードバックの量を含む。変位フィードバックは、
となる。
この場合、c2は変位感度及び増幅器の利得を含む。式28は、
のように再整理することができる。
可動コイルに作用する電気力は、
となる。
式27を、
のように書き直す。
修正された固有周波数と減衰率とにより、式34を、
のように簡略化することができる。
この場合、修正された減衰率D及び修正された固有周波数ωcは、
となる。
式27の解は、
のように求めることができる。
正弦項と余弦項とを組み合わせることができ、振幅及び位相を使用して式38を、
と表すことができる。
【0113】
図9Bは、本開示による、フィードバック受振器の感震センサの、フィードバックパラメータを決定するための考えられる誤差を含むシミュレーションデータを示すグラフである。受振器要素の応答パラメータは、f0=4Hz、D0=0.3である。フィードバックにより、固有周波数はfc=1Hzに修正され、減衰率はD=0.7に修正されている。変位センサが存在しない場合、可動コイルからの信号出力を積分することにより変位信号を取得できることに留意されたい。
【0114】
地盤変位の微分は、
なので、式12の積分は、
となる。
式40は、可動コイルのハウジングに対する速度、変位及び変位の積分の重み付き総和が地動の速度に等しいことを表す。式40に示すように、変位の重みは2ω0Dであり、積分の重みはω02である。
【0115】
図10は、本開示による、感震センサの組み合わせ出力データを示すグラフである。可動コイルの動きから得られる速度、変位、及び変位の積分の正しい総和により真の地動が復元されることがわかる。実際は、信号対ノイズ比に制限があるので、ゼロ又はゼロに近いヘルツでは変位を積分することができない。固有周波数未満の信号を復元するには、ノイズを増やさずに速度、変位、及び変位の積分を組み合わせる最適な方法が必要である。1つの考えられる方法は、図10に示すように、速度と変位の和をとって低周波速度応答を拡張させることである。
【0116】
別の考えられる技術は、受振器応答を望ましい受振器応答に変換することである。本開示は、受振器の応答を、信号対ノイズ比が許容する範囲で望ましい応答に変換することを企図する。ノイズレベルを考慮して周波数の下端を設定することができる。受振器が、受振器1の応答を含む信号を測定する。受振器1の応答が、受振器2の応答に変換される。周波数領域において処理を、
のように行うことができる。
【0117】
数学的にはこのような信号処理を適用することができるが、これをリアルタイムで行うことが望ましい。リアルタイム処理をデジタルフィードバックシステムに使用することもできる。実験室又は工場内で抵抗器及びコンデンサを取り替え又は修正することによってフィードバックパラメータを調整することが可能であるが、特に地震ツールを掘削孔内に配置した後に現場でこのような修正をできるようにするアナログ回路を設計することは困難である。リアルタイムデジタル信号処理により、フィードバック、修正出力、及び/又は組み合わせ信号のパラメータを調整して、温度及び/又はセンサの向きの変化に適応する最終的応答関数を保持できるようになる。
【0118】
地震のモニタ及び警報には早期情報が重要である。大規模な地震が発生するとすぐに地震信号がリアルタイムで計算センターへ送信され、地震が発生した直後に早期警報が発令される。データを記録して信号を変換する時間はない。受振器が自己較正して変換パラメータを決定し、必要な変換済み信号を出力することが望ましい。本開示のシステム及び技術は、地震の早期検出及び警報のためのこのようなリアルタイム機構を提供する。
【0119】
図11は、本開示による、受振器応答を較正するための1つの方法を示している。図11の技術では、同じ振動に応答する2つの受振器が存在するものとする。一方は理想的な受振器であり、他方はいずれかの実際の受振器である。2つの受振器の応答は、
となる。
この場合、下付文字「α」は、理想的な受振器のパラメータを表す。両受振器が同じ動きに応答するので、両受振器の運動方程式の左辺は同じである。
実際の受振器からの出力信号は
なので、式44における理想的な受振器の可動コイルの動きξαを、実際の受振器の出力により数値的に計算することができる。換言すれば、実際の受振器により検出される信号を望ましい応答信号に変換することができる。
【0120】
図12は、本開示による望ましい受振器応答を得るための別の方法を示している。可動コイルの変位を測定する変位センサが存在する場合、変位センサは、図12に示すように変位信号を可動コイルに並列に出力する。両方の信号は同じ運動機構から発生したものであり、運動方程式は同じである。
【0121】
変位信号は
である。式44の右辺にある変位項は変位の直接測定から求められ、速度はコイルからの速度出力により求められ、加速度項は速度出力の微分によって求められる。この結果、信号がセンサからの変位信号及び速度信号に照らしてデジタル化されると、式44における可動コイルの動きξαをリアルタイムで数値的に計算することができる。このようにして、二重感知要素受振器からの速度信号と変位信号とを組み合わせて理想的な受振器の速度を表す。
【0122】
図13Aは、フィードバックループを有する従来の力平衡加速度計を示すブロック図である。変位信号のフィードバックがトルカコイルに与えられて、重力を含む全ての力が相殺される。出力信号は加速度に比例し、固有周波数は関心のある周波数範囲よりも高くなる。このような加速度計は重力に比例する電圧を生成するので、装置の重力に対する向き、傾き又は傾斜を測定するために使用される。ノイズは高周波数で高くなる。
【0123】
図13Bは、本開示によるセンサのフィードバックループシステムを示すブロック図である。可動コイルに変位信号のフィードバック(DCのない)が与えられて固有周波数が低減する(正のフィードバック)。コイルに速度信号のフィードバックが与えられて変位が(地震信号に起因してコイル運動の最大値を超えるないように)制御される。固有周波数の低い小型の感震センサでは、ハウジングサイズの制限に起因してコイルの大きな動きを許容することができない。例えば、f0=0.5Hzを有する受振器では固有変位は100cmであり、f0=5Hzを有する受振器では固有変位は1cmである。7インチのケーシングでは内径(ID)が約6インチになるため、3インチの管を使用して配置されるセンサパッケージの直径は約2.5インチを超えてはいけない。従って、3成分センサを作製するためには、最大外径(OD)及び高さ(H)が約1.5インチになる。
【0124】
再び図13Bを参照すると、速度信号及び変位信号がデジタル化され組み合わせられて、幅広い周波数範囲の速度に比例する信号が出力される。この設計では変位フィードバック及び速度フィードバックがアナログ電子機器により制御され、パラメータは固定抵抗器及び/又は固定コンデンサにより固定される。工場又は実験室内ではセンサ要素を較正することによりこれらのパラメータが修正され、後から変更することは困難である。修正処理には何らかの誤差が存在する可能性があり、温度変化によりセンサ要素応答とフィードバックパラメータとの間で不一致が生じる可能性がある。このような誤差を補償するために、組み合わせ出力のフィードバックが統合フィードバックとして可動コイルに与えられる。これに応じて、このような誤差を補償するように速度信号と変位信号との組み合わせを修正することもできる。変位信号及び速度信号をデジタル化して、フィードバックをデジタルで与えることもできる。
【0125】
本開示は、従来の感震センサ装置と比較してノイズを最小限に抑えた単純な電子機器を有する、地震信号を検出するための装置を提供する。以下でさらに詳細に説明するように、1つの考えられる実施形態では、本開示の装置は、速度出力信号と変位出力信号とを組み合わせて数値処理を含むように構成又は設計される。
【0126】
図14は、試験受振器の受振器応答パラメータSo、Do、及びfoの温度依存性を示すグラフである。この場合、上述したように、受振器パラメータは、変化する温度に伴って以下のように変化する。
この場合、f0(20)は摂氏20度における固有周波数であり、D0(20)は摂氏20度における減衰率であり、S0(20)は摂氏20度における感度である。
【0127】
図14は、摂氏20度で得られた値と比較してf0、D0、及びS0が温度とともにどれほど変化するかを示すための、これらに対する温度効果の例を示している。結果は、環境温度が変化する場合にはフィードバック定数を室温で初期設定することが望ましくないことを示している。従って、このような較正を定期的に行う必要があり、周囲の温度によってフィードバックパラメータが調整される。上述した米国特許第7,225,662号には、受振器コイルのDC抵抗を測定して作動条件での受振器の温度を表すことが提案されている。
【0128】
図15は、本開示による、受振器を較正するための、本明細書で開示する1つの技術の図である。フィードバックを与え、又は出力信号を足し合わせて低周波数応答を拡張するためには、受振器パラメータに基づいて定数を求める必要がある。誤差は全体的な周波数応答に影響を及ぼす。較正を行って、正確なフィードバック定数を設定することができる。このような較正機能は、既存の広帯域地震計に実装されている。本開示は、ステップパルスを印加することによって単純な較正を実施できることを企図する。DC電圧を印加することにより可動コイルが持ち上がる。図15に示すように、DC電圧を除去することにより、移動質量の固有振動が引き起こされる。この固有振動から受振器パラメータが推定される。これは、受振器を較正するために使用される技術である。
【0129】
図16Aは、電気浮上、DC消去、フィードバック受振器、組み合わせ出力、及び温度モニタの統合又は組み合わせを示している。図16Aに示すように、感震センサは、演算増幅器Q1の負のフィードバック内に配置される。演算増幅器Q1は可動コイル信号を増幅し、Q2は、変位センサ出力からの信号を変位に比例する電気信号に変換する。変位FBは、変位信号のDC成分又は近DC成分を遮断し、正のフィードバックを与えて固有周波数を低減させる。速度FBは、負の速度フィードバックの利得を決定して最大変位を制御する。フィードバック増幅器Q3は、変位フィードバック信号と速度フィードバック信号とを組み合わせて、対応する電流を抵抗器Rを通じて可動コイルに注入する。変位フィードバック及び速度フィードバックのための信号は、センサ要素を較正することにより求められる。工場では、センサ要素を較正することにより、フィードバックの詳細な修正を行うことができる。Q3はまた、デジタル信号プロセッサ(DSP)からのフィードバック及び電気浮上信号も受け入れる。
【0130】
正の変位フィードバックは機械的固有周波数を低下させ、負の速度フィードバックは全体の減衰率を調整する。変位信号及び速度信号がデジタル化され、DSPに入力される。DSPは、変位データ及び速度データをリアルタイムで計算し、両データを組み合わせて望ましい応答でデータを出力する。センサ設置後に、センサの向きを把握することにより、初期電気浮上を
として設定することができる。DSPは、変位データのDC成分をモニタし、電気浮上電圧を計算する。DSPは、電気浮上電圧データをDAC1に出力し、Q3は、フィードバックシステムに電気浮上電圧を加える。DSPは、浮上電圧E0、変位出力のDCレベルEc、及びフィードバック抵抗RからDC抵抗rを計算する。
摂氏20度の温度では可動コイルの抵抗が既知であるので、センサ要素の温度は、
となる。
動作温度を把握することにより、DSPは、実際の現場の温度における応答パラメータに基づいて信号組み合わせのための処理パラメータを再計算する(再度図14を参照)。この処理パラメータの調整を継続的に行って温度変化に適応することができる。有線電子機器では、フィードバックパラメータを調整することが困難であるが、デジタル的には容易に調整を行うことができる。信号組み合わせに加え、電気フィードバックの調整を全体のフィードバックとして適用することもできる。また、ハウジングに取り付けられた、又はセンサ要素内に実装された外部温度センサを使用することにより受振器応答パラメータを調整することも可能である。
【0131】
図16Bは、本開示の原理による内部に配置した複数の感震センサ104(図16Bには3つを示している)を含むハウジング102を有する1つの考えられる掘削孔ツール100を示している。掘削孔内での配置後にツール100を安定化/固定するために、アーム又は固定機構106が設けられる。本開示によって構成又は設計された電気回路108が、ツール100にとって必要な機能を提供する。掘削孔ツール100に関連する電子機器は、フィードバック回路、アナログデジタルコンバータ(ADC)、信号を組み合わせるための回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、及びテレメトリ回路を含む。図16Bに示す例示的な掘削孔ツールは、油田の地震探査作業のための、本開示で説明する機能及び動作を提供する。この場合、他の関連する地表及び孔内システムを、望むように又は必要に応じて掘削孔ツール100に接続することができる。油田探査システムのこのような関連する構成要素は当業者に公知であるので、本明細書では詳細には説明しない。
【0132】
典型的な掘削孔地震計の外径(OD)は約180mmである。このような地震計を設置するには、特殊な掘削孔を掘削する必要がある。油田産業では、通常、坑井の上部区間は9と5/8インチのケーシングを使用してケーシングされ、下部区間は7インチのケーシングを使用してケーシングされる。このようなケーシングサイズ内に地震計を設置するには、ツールODは3と3/8インチ未満でなければならない。掘削経費を削減するためには小さな掘削孔が望ましく、2と1/2インチのツールを有することが有益である。このためには、センサの全体的な直径が50mm以内でなければならない。センサは、垂直に1つ、水平に2つの3つの方向に向けられる必要がある(再度図16Bを参照)。このような要件から、感知要素の最大OD及び高さは40mmで、頂部及び底部をテーパ加工する必要がある。このような感知要素サイズでは、実際の可動空間は約±3mm程度となり得る。さらに油田内の坑井は垂直ではなく、かなりの可能性で偏向しており、場合によっては水平である可能性もある。典型的な地震計は、±3度の傾斜範囲内でしか作動しない。このような感知要素をジンバル加工するには特殊な機構が必要となる。例えば、図16Bの例示的な掘削孔ツールで示すような本開示の原理は、油田地震探査におけるこのような必要性及び要件に対処するための新規の効果的な機構を提供する。
【0133】
図16Cは、本開示による感震センサを利用した地震信号検出のための1つの考えられる方法のフロー図である。図16Cのフロー図は、本開示による統合デジタルフィードバック感震センサを示している。可動コイルのDC抵抗及び温度が、工場又は実験室において、例えば製造時に測定され、DC抵抗が、例えば摂氏20度に正規化され、記憶される(ステップ200)。センサ要素がフィードバックを使用せずに較正され、フィードバックパラメータ、例えば抵抗及び/又は静電容量が調整される(ステップ202)。アナログフィードバックを使用してセンサが較正され、出力を組み合わせるためのパラメータが設定される(ステップ204)。
【0134】
掘削孔の下げ孔内などの現場において、又は地震探査地点における配置の後に、センサの向き及び/又は所定のパラメータに基づいて(単複の)感震センサに浮上電流が印加される(ステップ206)。電気浮上を使用して移動質量の位置が較正され、浮上電流が修正される(ステップ208)。フィードバックを使用した全体較正及び出力の組み合わせが行われ、必要に応じてフィードバックがデジタル的に調整され、及び/又は出力の組み合わせパラメータが修正される(ステップ209)。較正済みパラメータを使用して地震捕捉が開始される一方で作動温度を継続的にモニタし、出力信号を組み合わせるためのパラメータが捕捉を進行しながら修正される(ステップ210)。
【0135】
出力データを継続的にモニタして、DC成分をモニタするとともに電気浮上及びDC補償を調整する。DC成分から感震センサの温度が推定される。フィードバックパラメータ及び組み合わせパラメータが更新される(図16Cのステップ210を参照)。
【0136】
一般に、本明細書で開示する技術をソフトウェア及び/又はハードウェア上に実装することができる。例えば、これらの技術を、オペレーティングシステムカーネル内、別個のユーザプロセス内、ネットワークアプリケーション内に拘束されたライブラリパッケージ内、特別に構築されたマシン上、又はネットワークインターフェイスカード上に実装することができる。1つの実施形態では、本明細書で開示する技術を、オペレーティングシステムなどのソフトウェア内、又はオペレーティングシステム上で稼働するアプリケーション内に実装することができる。
【0137】
メモリに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的に作動又は再構成される汎用プログラマブルマシン上で本技術のソフトウェア実装又はソフトウェア/ハードウェア混成実装を実現することができる。このようなプログラマブルマシンを、パーソナルコンピュータ又はワークステーションなどの汎用ネットワークホストマシン上に実装することができる。さらに、本明細書で開示する技術を、ネットワーク装置又は汎用計算装置のためのカード(例えばインターフェイスカード)上に少なくとも部分的に実装することができる。
【0138】
本発明の原理及びその実際的な用途を最も良く説明するために、実施形態及び態様を選択し説明した。上記の説明は、当業者が、本明細書で説明する原理を様々な実施形態において、及び想定される特定の用途に適した様々な修正を伴って最も良く利用できるようにすることを意図したものである。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震信号検出で使用するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を含む少なくとも1つの電気浮上式感震センサと、
前記感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、
前記感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、
前記プロセッサにより実行可能な命令セットと、
を備え、前記命令セットは実行時に、
前記感震センサに前記電気信号を印加することにより、前記可動コイルを重力に対して浮上させて、前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置にくるようにする、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記電気回路が、前記感震センサの前記可動コイルの動きを調整するための分路抵抗器を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気回路が、前記可動コイルの動きを速度フィードバックによって調整するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気回路が、前記感震センサに統合フィードバックを与えるようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記デジタル信号プロセッサが、前記感震センサによる地震データの捕捉中に、該感震センサからの電気信号出力をモニタして該感震センサの温度を求め、センサパラメータを温度依存性に関して補償するように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気回路が、前記感震センサの前記可動コイルに定電流を供給するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記感震センサが、掘削孔の下げ孔内で使用するように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記感震センサが、地震信号検出において恒久的又は半恒久的に設置されるように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記感震センサが、摂氏約125度を超える高温環境内で長期配置されるように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記浮上力が一定である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記感震センサが、掘削孔の下げ孔内で低周波地震信号を検出するように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記感震センサが、ジンバルで支えなくても全方向傾斜可能である、
ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気回路が、浮上中に前記可動コイルの位置を測定するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記可動コイルの前記測定された位置に基づいて、浮上電圧をリアルタイムで調整して前記可動コイルの場所を保持するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記感震センサが、前記可動コイルの位置を感知するように構成又は設計された位置センサを前記ハウジング内にさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記電気回路が、浮上電流に起因するDCオフセット及びノイズの1又はそれ以上を補償するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気回路が、前記感震センサの出力に正の変位フィードバック信号を与えて前記感震センサの前記固有周波数を低減させるようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記感震センサから出力される速度信号と変位信号との組み合わせを含む出力信号を供給するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記電気回路が、幅広い周波数範囲の速度信号を出力するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記感震センサを温度変化に関して較正するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
地震信号検出で使用するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を含む少なくとも1つの感震センサと、
前記感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、
前記感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、
実行時に前記感震センサに電気信号を印加する、前記プロセッサにより実行可能な命令セットと、
を備え、前記システムは、地震信号を検出する一方で前記感震センサの前記可動コイルのDC抵抗を継続的にモニタして感震センサ温度を求め、感震センサ温度の変化に基づいてセンサパラメータを補償するように構成又は設計された、
ことを特徴とするシステム。
【請求項22】
地震信号検出中の温度変化に関してセンサパラメータを補償するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記デジタル信号プロセッサが、信号データをリアルタイムで処理するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
ハウジングと、該ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成された該ハウジング内の可動コイルとを備えた少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用する地震信号検出法であって、
地震信号を検出するための場所に少なくとも1つの電気浮上式感震センサを配置するステップと、
前記感震センサに電気浮上信号を供給して前記可動コイルを重力に抗して浮上させることにより、前記可動コイルが前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置にくるようにするステップと、
前記少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用して地震信号を検出するステップと、
前記感知した地震信号に基づいて前記感震センサから速度信号及び変位信号を出力するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
掘削孔の下げ孔内における地震信号検出で使用するための感震センサであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
前記可動コイルに該可動コイルを浮上させる電気信号を供給して前記可動コイルを重力に抗して浮上させることにより、前記可動コイルを前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置に置くように構成又は設計された電気回路と、
を備えることを特徴とする感震センサ。
【請求項26】
前記感震センサの前記可動コイルの固有周波数(fo)が約0.5Hz〜約5Hzであり、前記感震センサハウジングの外径(OD)及び高さ(H)が約1.5インチ未満である、
ことを特徴とする請求項25に記載の感震センサ。
【請求項27】
地震信号検出で使用するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を含む少なくとも1つの感震センサと、
前記感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とをそれぞれ生成するように構成又は設計された少なくとも2つの感知要素と、
を備え、前記システムは、前記第1の信号と前記第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するように構成又は設計された、
ことを特徴とするシステム。
【請求項28】
地震信号検出のための方法であって、
であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を備えた少なくとも1つの感震センサを配置するステップと、
前記感震センサを使用して地震信号を感知するステップと、
前記感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とを生成するステップと、
前記第1の信号と前記第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
地震信号検出で使用するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を含む少なくとも1つの電気浮上式感震センサと、
前記感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、
前記感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、
前記プロセッサにより実行可能な命令セットと、
を備え、前記命令セットは実行時に、
前記感震センサに前記電気信号を印加することにより、前記可動コイルを重力に対して浮上させて、前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置にくるようにする、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記電気回路が、前記感震センサの前記可動コイルの動きを調整するための分路抵抗器を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電気回路が、前記可動コイルの動きを速度フィードバックによって調整するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気回路が、前記感震センサに統合フィードバックを与えるようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記デジタル信号プロセッサが、前記感震センサによる地震データの捕捉中に、該感震センサからの電気信号出力をモニタして該感震センサの温度を求め、センサパラメータを温度依存性に関して補償するように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気回路が、前記感震センサの前記可動コイルに定電流を供給するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記感震センサが、掘削孔の下げ孔内で使用するように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記感震センサが、地震信号検出において恒久的又は半恒久的に設置されるように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記感震センサが、摂氏約125度を超える高温環境内で長期配置されるように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記浮上力が一定である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記感震センサが、掘削孔の下げ孔内で低周波地震信号を検出するように構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記感震センサが、ジンバルで支えなくても全方向傾斜可能である、
ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気回路が、浮上中に前記可動コイルの位置を測定するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記可動コイルの前記測定された位置に基づいて、浮上電圧をリアルタイムで調整して前記可動コイルの場所を保持するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記感震センサが、前記可動コイルの位置を感知するように構成又は設計された位置センサを前記ハウジング内にさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記電気回路が、浮上電流に起因するDCオフセット及びノイズの1又はそれ以上を補償するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気回路が、前記感震センサの出力に正の変位フィードバック信号を与えて前記感震センサの前記固有周波数を低減させるようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記感震センサから出力される速度信号と変位信号との組み合わせを含む出力信号を供給するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記電気回路が、幅広い周波数範囲の速度信号を出力するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記感震センサを温度変化に関して較正するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
地震信号検出で使用するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を含む少なくとも1つの感震センサと、
前記感震センサに電気信号を供給するように構成又は設計された電気回路と、
前記感震センサと通信するデジタル信号プロセッサと、
実行時に前記感震センサに電気信号を印加する、前記プロセッサにより実行可能な命令セットと、
を備え、前記システムは、地震信号を検出する一方で前記感震センサの前記可動コイルのDC抵抗を継続的にモニタして感震センサ温度を求め、感震センサ温度の変化に基づいてセンサパラメータを補償するように構成又は設計された、
ことを特徴とするシステム。
【請求項22】
地震信号検出中の温度変化に関してセンサパラメータを補償するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記デジタル信号プロセッサが、信号データをリアルタイムで処理するようにさらに構成又は設計された、
ことを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
ハウジングと、該ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び構成された該ハウジング内の可動コイルとを備えた少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用する地震信号検出法であって、
地震信号を検出するための場所に少なくとも1つの電気浮上式感震センサを配置するステップと、
前記感震センサに電気浮上信号を供給して前記可動コイルを重力に抗して浮上させることにより、前記可動コイルが前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置にくるようにするステップと、
前記少なくとも1つの電気浮上式感震センサを使用して地震信号を検出するステップと、
前記感知した地震信号に基づいて前記感震センサから速度信号及び変位信号を出力するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
掘削孔の下げ孔内における地震信号検出で使用するための感震センサであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
前記可動コイルに該可動コイルを浮上させる電気信号を供給して前記可動コイルを重力に抗して浮上させることにより、前記可動コイルを前記感震センサ内の前記磁場に対して中心位置に置くように構成又は設計された電気回路と、
を備えることを特徴とする感震センサ。
【請求項26】
前記感震センサの前記可動コイルの固有周波数(fo)が約0.5Hz〜約5Hzであり、前記感震センサハウジングの外径(OD)及び高さ(H)が約1.5インチ未満である、
ことを特徴とする請求項25に記載の感震センサ。
【請求項27】
地震信号検出で使用するためのシステムであって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を含む少なくとも1つの感震センサと、
前記感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とをそれぞれ生成するように構成又は設計された少なくとも2つの感知要素と、
を備え、前記システムは、前記第1の信号と前記第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するように構成又は設計された、
ことを特徴とするシステム。
【請求項28】
地震信号検出のための方法であって、
であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に装着された、磁場を発生させるための少なくとも1つの磁石と、
前記ハウジングに対して径方向に固定されるとともに前記ハウジングの軸方向に可動であるように構築及び配列された前記ハウジング内の可動コイルと、
を備えた少なくとも1つの感震センサを配置するステップと、
前記感震センサを使用して地震信号を感知するステップと、
前記感震センサの速度測定に基づく第1の信号と、変位測定に基づく第2の信号とを生成するステップと、
前記第1の信号と前記第2の信号とを組み合わせて組み合わせ出力信号を生成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【公開番号】特開2010−271324(P2010−271324A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−133389(P2010−133389)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133389(P2010−133389)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited
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