説明

坐薬製剤組成物

【課題】本発明が解決しようとする課題は、挿入時の苦痛を軽減すると共に、排便時における課題(排便痛および排便恐怖感)も解決した坐剤、特に、痔疾患治療用坐剤製剤組成物を提供することである。
【解決手段】坐剤が、直腸上部移動性層と直腸下部滞留性層の2層を有する坐剤であり、該直腸上部移動性層を速溶性に、かつ、該直腸下部滞留性層を遅溶性及び/又は膨潤性にすることにより、かかる課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坐剤挿入時の苦痛が軽減され、かつ、排便時の苦痛も軽減された坐剤に関するもので、特に、痔疾患に好適な坐剤に関する。
【背景技術】
【0002】
坐剤とは、薬剤と基剤を混ぜて魚雷又は紡錘形状に成型して、肛門に挿入し、体温によって溶解するか又は直腸に存在する水分(分泌液)によって溶解する固形外用剤であり、その特徴は、内服薬のように肝臓による薬物の分解が少ないこと、胃腸内での分解がなく薬物による胃腸障害もないこと等であるが、一方で、挿入時に痛みを伴うことや体温で溶けるため冷所保存が必要であるという問題もある。
【0003】
特に、痔疾用坐剤では挿入時の痛みは深刻な問題であり、これまでに、挿入時の苦痛を軽減する技術として以下のものが開示されている。
1)挿入時に流れ落ちない程度の粘度を有する半固形状物質を坐剤の先端部に付着または配合させた製剤(特許文献1参照)。
2)坐剤先端部の融点を低くして挿入時に先端が容易に溶融して潤滑作用をもたせ、基部は通常の坐剤溶融温度にして挿入時の指温度による溶融・変形の生じない多層型にした坐剤(特許文献2)。
【特許文献1】特開昭62−175420号公報
【特許文献2】特開昭62−192320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の坐剤挿入時の苦痛軽減技術とは別に、特に、痔疾患者にとっては、便の大きさや硬さは排便時の苦痛のみならず患部治療に悪影響も与えてしまうこと、加えて、出にくい便も深刻な問題であり排便時のいきみの繰返しは痔疾患の憎悪に繋がるという課題があることに本発明者は着目した。
【0005】
更に、本課題を解決する製剤技術がこれまでに存在しないことにも初めて気付いた。
【0006】
即ち、本発明が解決しようとする課題は、挿入時の苦痛を軽減すると共に、上述のような排便時における課題(排便痛および排便恐怖感)も解決した坐剤、特に、痔疾患治療用坐剤製剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、坐剤が、直腸上部移動性層と直腸下部滞留性層の2層を有する坐剤であり、該直腸上部移動性層を速溶性に、かつ、該直腸下部滞留性層を遅溶性及び/又は膨潤性にすれば解決できることを見出した。
【0008】
より詳しくは、直腸上部移動性層が直腸下部滞留性層を覆うか、又は、坐剤の頭部が直腸上部移動性層で底部が直腸下部滞留性層である、2層坐剤とすることにより、本発明を完成するに至った。更に好ましくは、坐剤頭部先端部又は坐剤頭部表面に潤滑剤層を有する3層坐剤とすることにより課題が解決できることを見出した。
【0009】

すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)直腸上部移動性層と直腸下部滞留性層とを有することを特徴とする坐剤。
(2)直腸上部移動性層が速溶性であり、直腸下部滞留性層が遅溶性及び/又は膨潤性であることを特徴とする(1)に記載の坐剤。
(3)坐剤芯部が直腸下部滞留性層で、その外殻が直腸上部移動性層からなることを特徴とする(1)に記載の坐剤。
(4)坐剤の頭部が直腸上部移動性層からなり、坐剤の底部が直腸下部滞留性層からなることを特徴とする(1)に記載の坐剤。
(5)坐剤頭部先端部又は坐剤頭部表面に潤滑剤層を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1に記載の坐剤。
(6)潤滑剤層が、直腸上部移動性層の融点よりも低い融点の基剤、又は潤滑剤からなる、(5)に記載の坐剤。
(7)直腸上部移動性層が界面活性成分を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1に記載の坐剤。
(8)界面活性成分がジオクチルソジウムスルホサクシネートである(7)に記載の坐剤。
(9)直腸下部滞留性層が痔疾用の薬効成分を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1に記載の坐剤。
(10)痔疾用の薬効成分が、局所麻酔剤、ロートエキス、血管収縮剤、副腎皮質ホルモン、収斂剤、殺菌剤、サルファ剤、抗ヒスタミン剤、クロタミトン、消炎剤、痔疾用生薬、ビタミン類、カンフル、メントール類及びユーカリ油から選ばれる1種又は2種以上からなる(9)に記載の坐剤。
(11)痔疾患者の、痔治療とともに、排便時の苦痛又は排便恐怖感を取り除くための、(1)〜(10)のいずれか1に記載の坐剤。
【0010】
本発明の坐剤において、速溶性とは挿入後すばやく溶解すること、また遅溶性とは徐々に溶解することをさす。かかる坐剤に含まれる基剤は、当該目的を達成する基剤であれば特に限定されるものではないが、具体的には、融点温度が直腸温度より低い基剤を用いれば速溶性となり、逆に、融点温度が直腸温度に近い基剤を用いれば徐々に溶解し、遅溶性となる。また、直腸の水分(分泌液)の吸収速度を調節することによって速溶性と遅溶性を達成することもできる。
【0011】
本発明において、「直腸上部移動性層」とは、坐剤挿入後に溶解することにより、直腸上部さらには大腸まで到達する部分を含有する部分をさす。従って、該直腸上部移動性層は直腸温度によりすばやく溶け出すことが好ましい。また、直腸上部移動性層に含まれる成分は、溶出後、直腸上部さらには大腸まで到達するため、直腸上部移動性層に含まれる成分としては、便の表面張力を低下させて便に水分吸収させて便を軟らかくすると共に、便が腸壁面を滑り易くする界面活性作用を有する成分や、腸内で炭酸ガスを発生し、蠕動運動を亢進することにより排便を促進する発泡性の成分が好ましい。本発明における直腸上部移動性層に含まれる成分としては、界面活性作用を有する成分を含有することが特に好ましい。界面活性作用を有する成分としては、例えば、ジオクチルソジウムスルホサクシネートが挙げられ、発泡性の成分としては、炭酸水素ナトリウム及び無水リン酸二水素ナトリウムの組み合わせが挙げられる。本発明における直腸上部移動性層に含まれる成分としては、ジオクチルソジウムスルホサクシネートが好適である。
【0012】
本発明において、「潤滑剤層」とは、坐剤が肛門部に接触すると潤滑剤の作用をもたらす部分をさす。該潤滑剤層に含まれる成分は、前記作用をもたらすものであれば特に限定されないが、常温で垂れない程度のワセリン、プラスチベース、オリーブ油又はグリセリン等の潤滑剤、又は、該直腸上部移動性層の融点よりも低い融点の基剤、好ましくは直腸上部移動性層の融点よりも1〜4℃低い融点の基剤から構成される。直腸上部移動性層の融点よりも低い融点の基剤としては、直腸上部移動性層の融点よりも低い融点を持つマクロゴールやハードファットを用いることができ、好適には、直腸上部移動性層の融点より1〜4℃低い融点を持つマクロゴールやハードファットを用いることができる。当該潤滑剤層の存在によって、坐剤が容易かつ苦痛なく挿入できる。
【0013】
本発明において、「直腸下部滞留性層」とは、坐剤挿入後に患部に滞留し易くなる部分をさす。従って、該直腸下部滞留性層は、直腸温度により徐々に溶け出す性質及び/又は膨潤する性質を有する。該直腸下部滞留性層は、溶出した成分が患部に滞留するので、痔疾患に対する薬効をもたらす成分を含有する。該直腸下部滞留性層に含まれる痔疾用の薬効成分としては、局所麻酔剤、ロートエキス、血管収縮剤、副腎皮質ホルモン、収斂剤、殺菌剤、サルファ剤、抗ヒスタミン剤、クロタミトン、消炎剤、痔疾用生薬、ビタミン類、カンフル、メントール及びユーカリ油から選ばれる1種又は2種以上からなるものが好ましい。
【0014】
本発明において、「局所麻酔剤」とは、アミノ安息香酸エチル、塩酸ジブカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸プロカイン、塩酸メプリルカイン、塩酸リドカイン、オキシポリエトキシドデカン、ジブカイン、メピバカイン、リドカイン又はロートエキス等が挙げられる。
【0015】
本発明において、「血管収縮剤」とは、エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン又はdl−塩酸メチルエフェドリン等が挙げられる。
【0016】
本発明において、「副腎皮質ホルモン」とは、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン又はプレドニゾロン等が挙げられる。
【0017】
本発明において、「収斂剤」とは、酸化亜鉛又はタンニン酸等が挙げられる。
【0018】
本発明において、「殺菌剤」とは、アクリノール、アルキルポリアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベルベリン、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、セトリムド又はレゾルシン等が挙げられる。
【0019】
本発明において、「サルファ剤」とは、スルファジアジン、スルフイソミジン、スルフイソミジンナトリウム又はホモスルファミン等が挙げられる。
【0020】
本発明において、「抗ヒスタミン剤」とは、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン又はマレイン酸クロルフェニラミン等が挙げられる。
【0021】
本発明において、「消炎剤」とは、アラントイン、アルミニウム・クロルヒドロキシアラントイネート、イクタモール、塩化リゾチーム、乾燥硫酸アルミニウムカリウム、グリチルレチン酸、ジメチルイソプロピルアズレン、精製卵黄レシチン、卵黄油又は硫酸アルミニウムカリウム等が挙げられる。
【0022】
本発明において、「痔疾用生薬」とは、シコン、セイヨウトチノキ種子、ハマメリス又は加工ダイサン等が挙げられる。
【0023】
本発明において、「ビタミン類」とは、肝油、強肝油、パルミチン酸レチノール、ビタミンA油、酢酸トコフェロール又はトコフェロール等が挙げられる。
【0024】
本発明において、「カンフル」とは、d−カンフル又はdl−カンフルが挙げられる。
【0025】
本発明において、「メントール類」とは、ハッカ油、l−メントール又はdl−メントール等が挙げられる。
【0026】
本発明において、「痔疾用」とは、痔疾患に用いることをさし、痔疾患とは大きく分けて痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)及び痔ろう(あな痔)である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の、直腸上部移動性層と直腸下部滞留性層の2層を有する坐剤は、該直腸上部移動性層がすばやく溶けて直腸上部や大腸に移動して、発泡性の成分や界面活性作用を有する成分により便を軟らかくし、かつ、腸管から便の滑りを良くすることにより、便が軟らかくかつ出やすくなり、排便時の苦痛(排便痛および排便恐怖感)を軽減するとともに痔疾患の悪化も防ぐ。また、直腸下部滞留性層が徐々に溶けて膨潤するため、痔疾疾患に対する薬効成分が長時間患部に留まることにより、効果的な痔疾患の治療が可能となる。更に、坐剤頭部先端部又は坐剤頭部表面に潤滑剤層を有する3層坐剤では、坐剤挿入時の苦痛も軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
坐剤が、直腸上部移動性層と直腸下部滞留性層の2層を有する坐剤であり、より詳しくは、直腸下部滞留性層を坐剤芯部とし、その外殻として直腸上部移動性層が直腸下部滞留性層を覆うか、又は、坐剤の頭部が直腸上部移動性層で底部が直腸下部滞留性層である、2層坐剤とする。
【0029】
更に好ましくは、坐剤頭部先端部又は坐剤頭部表面に潤滑剤層として潤滑剤が塗布された3層坐剤とする。
【0030】
該直腸上部移動性層は直腸温や直腸分泌液によりすばやく溶解する公知の基剤と、公知の界面活性成分及び/又は公知の発泡性の成分とからなり、該直腸下部滞留性層は直腸温で徐々に溶解する公知の基剤と膨潤性のある公知の基剤、及び、公知の痔疾用薬効成分からなる。
【0031】
本発明における基剤としては、上記目的に合致するものであれば特に限定されないが、種々の融点を有する坐薬基剤としてハードファット(以下、ウイテプゾールとも称する。)が、また、水分の吸収によって溶解するものとしてポリビニルアルコールやペクチン等が選択される。
【0032】
例えば、本発明における直腸上部移動性層には、基剤としてハードファットが好適に使用され、その中に有効量の界面活性成分や発泡性の成分を含有させる。前記ハードファットは、1種を用いてもよく、融点の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ハードファットを1種又は2種以上を組み合わせることにより、直腸上部移動性層の融点を所望の温度に調整できるが、直腸上部移動性層が速溶性となるために、直腸上部移動性層の融点が直腸温以下になるよう、ハードファットを1種又は2種以上を組み合わせて配合することが好ましい。また、直腸上部移動性層には、さらに所望により、ハードファット以外の基剤と組み合わせて配合することも可能である。
【0033】
また、直腸上部移動性層に界面活性成分を配合する際の界面活性剤の配合比は、界面活性剤がジオクチルソジウムスルホサクシネートの場合、直腸上部移動性層に含まれる成分の総重量の0.2〜1%が好ましく、0.4〜0.8%がより好ましい。
【0034】
本発明における直腸下部滞留性層には、基剤として、ハードファット(ウイテプゾール)が好適に使用され、その中に、さらに膨潤性の基剤や有効量の痔疾用の薬効成分を含有させるのが好ましい。直腸下部滞留性層に含有されるハードファットは、1種を用いてもよく、融点の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ハードファットを1種又は2種以上を組み合わせることにより、直腸下部滞留性層の融点を所望の温度に調整できるが、直腸下部滞留性層が遅溶性の場合は、直腸下部滞留性層の融点が、直腸上部移動性層の融点よりも高くなるよう、ハードファットを1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。この場合、直腸上部移動性層の融点と、直腸下部滞留性層の融点との差が0.1℃以上あることが好ましい。
【0035】
本発明にかかる直腸下部滞留性層には、さらにポリビニルアルコールやペクチン等を基剤として配合してもよい。直腸下部滞留性層にポリビニルアルコールを配合する場合の配合比は、直腸下部滞留性層に含まれる成分の総重量の0.2〜14%が好ましく、1〜7%がより好ましい。直腸下部滞留性層にペクチンを配合する場合の配合比は、直腸下部滞留性層に含まれる成分の総重量の2〜26%が好ましく、4〜13%がより好ましい。
【0036】
また、直腸下部滞留性層に含有される膨潤性の基剤としては、例えば、アクリル酸重合体、ポリガムアルカリ金属塩、層状ケイ酸鉱物及びアクリル酸デンプン等が挙げられるが、アクリル酸重合体が好ましい。アクリル酸重合体とは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸部分中和物又はその塩であり、好適には、カルボキシビニルポリマーである。直腸下部滞留性層における膨潤性の基剤の配合比は、膨潤性の基剤がカルボキシビニルポリマーの場合、直腸下部滞留性層に含まれる成分の総重量の1〜15%が好ましく、5〜8%がより好ましい。
【0037】
また、直腸下部滞留性層には、所望により、さらにその他の基剤を組み合わせて配合することも可能である。
界面活性成分のジオクチルソジウムスルホサクシネートは日本薬局方外医薬品規格2002及び医薬品添加物辞典2005に収載されている。
【0038】
ハードファット等の基剤やカルボキシビニルポリマー等の膨潤性の基剤は医薬品添加物辞典2005に収載されている。
【0039】
その他、公知の痔疾用の薬効成分の多くは第15改正日本薬局方に収載されており、容易に入手できる。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0041】

(実施例1)
●直腸上部移動性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジオクチルソジウムスルホサクシネート 5
ウイテプゾールH12 995

●直腸下部滞留性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸フェニレフリン 5
ジブカイン 10
酢酸ヒドロコルチゾン 5
酸化亜鉛 100
軽質無水ケイ酸 30
カルボキシビニルポリマー 150
ウイテプゾールH15 700

(製法)
加温溶融(50℃〜70℃)した坐剤基剤(ウイテプゾール)に、各上記成分及び分量を撹拌しながら分散せしめ、第15改正日本薬局方製剤総則「坐剤」の項に準じて坐剤を製した。
【0042】

(実施例2)
●直腸上部移動性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジオクチルソジウムスルホサクシネート 10
ウイテプゾールW35 990

●直腸下部滞留性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸テトラヒドロゾリン 1
リドカイン 60
酢酸ヒドロコルチゾン 5
アラントイン 20
酢酸トコフェロール 60
軽質無水ケイ酸 20
カルボキシビニルポリマー 75
ウイテプゾールE75 759

(製法)
実施例1と同様の方法で製造した。
【0043】

(実施例3)
●直腸上部移動性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジオクチルソジウムスルホサクシネート 40
ウイテプゾールH12 960

●直腸下部滞留性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸ジフェンヒドラミン 10
リドカイン 60
酢酸ヒドロコルチゾン 5
アラントイン 10
酢酸トコフェロール 50
l―メントール 9
塩酸クロルヘキシジン 5
軽質無水ケイ酸 20
カルボキシビニルポリマー 75
ウイテプゾールW35 756

(製法)
実施例1と同様の方法で製造した。
【0044】

(実施例4)
●直腸上部移動性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジオクチルソジウムスルホサクシネート 20
ウイテプゾールH12 980
●直腸下部滞留性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸ジフェンヒドラミン 10
リドカイン 60
酢酸ヒドロコルチゾン 5
アラントイン 10
酢酸トコフェロール 50
l―メントール 9
塩酸クロルヘキシジン 5
軽質無水ケイ酸 20
カルボキシビニルポリマー 75
ウイテプゾールW35 756
●潤滑剤層
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
白色グリセリン 適量

(製法)
実施例1と同様の方法で製造した。
【0045】

(試験例1)効果試験
(1)被験物質
実施例1及び2のものを被験物質として使用した。なお、今回試作した被験物質は、直腸上部移動性層が坐剤の上半分(頭部)に位置し、直腸下部滞留性層は坐剤の下半分(底部)に位置するように製造した。
【0046】

(2)試験方法
健常ボランティア2名について日時を変えて2回投与してもらい、排便時に表5〜6の評価スコアに印を付けてもらった。
【0047】

(表5)
本発明の坐剤を使用した時を、坐剤を使用しなかった時と比べて、便の硬さはどうでしたか。
1.硬くなった
2.やや硬くなった
3.変わらない
4.やや軟らかくなった
5.軟らかくなった

(表6)
本発明の坐剤を使用した時を、坐剤を使用しなかった時と比べて、便の出やすさ(いきみの程度)はどうでしたか。
1.出しにくくなった(強いいきみが必要であった)
2.やや出しにくくなった(やや強いいきみが必要であった)
3.変わらない
4.やや出しやすくなった(いきみがやや少なくてすんだ)
5.軟らかくなった(いきみが少なくてすんだ)

(4)試験結果
得られた試験の結果は、いずれの場合も4となり、便の硬さ、及び、便の出しやすさの改善効果が発現した。
【0048】


(実施例5)
●直腸上部移動性層 600mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジオクチルソジウムスルホサクシネート 2.5
ウイテプゾールW35 478.0
ウイテプゾールE85 119.5

●直腸下部滞留性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
カルボキシビニルポリマー 65.0
ウイテプゾールW35 748.0
ウイテプゾールE85 187.0

(製法)
加温溶融(50℃〜70℃)した坐剤基剤(ウイテプゾール)に、各上記成分及び分量を撹拌しながら分散せしめ、第15改正日本薬局方製剤総則「坐剤」の項に準じて坐剤を製した。
【0049】

(実施例6)
●直腸上部移動性層 600mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジオクチルソジウムスルホサクシネート 5.0
ウイテプゾールW35 476.0
ウイテプゾールE85 119.0

●直腸下部滞留性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
カルボキシビニルポリマー 65.0
ウイテプゾールW35 748.0
ウイテプゾールE85 187.0

(製法)
実施例5と同様の方法で製造した。
【0050】

(実施例7)
●直腸上部移動性層 600mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジオクチルソジウムスルホサクシネート 2.5
ウイテプゾールW35 478.0
ウイテプゾールE85 119.5

●直腸下部滞留性層 1000mg中(mg)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
酢酸プレドニゾロン 1.0
リドカイン 8.0
マレイン酸クロルフェニラミン 1.6
酢酸トコフェロール 4.8
西洋トチノキ種子エキス 25.0(原生薬150mg相当)
カルボキシビニルポリマー 65.0
ウイテプゾールW35 715.7
ウイテプゾールE85 178.9

(製法)
実施例5と同様の方法で製造した。
【0051】


(試験例2)効果試験
(1)被験物質
実施例5〜7のものを被験物質として使用した。なお、今回試作した被験物質は、直腸上部移動性層が坐剤の上半分(頭部)に位置し、直腸下部滞留性層は坐剤の下半分(底部)に位置するように製造した。
【0052】

(2)試験方法および試験結果1
健常ボランティア9名について、試験例1と同じ評価スコア(表5〜6)に印を付けてもらった。得られた試験結果を表7に示す(表中の数値は9名の平均値である)。
【0053】
【表7】

表7の結果より、本発明の坐剤(実施例5)は、便の硬さ、及び、便の出しやすさの改善効果が発現することが判った。
【0054】

(3)試験方法および試験結果2
実施例5を投与した健常ボランティア9名のうち、便の硬さのスコアが4以上の人4名(以下、改善群と称す)については、再度、実施例5を投与した結果を表8に示す。
また、便の硬さのスコアが3以下の人5名(以下、非改善群と称す)については実施例6を投与した結果を表9に示す。
【0055】
【表8】

表8の結果より、本発明の坐剤(実施例5)の繰り返し投与においても、便の硬さ、及び、便の出しやすさの改善効果は概ね不変であることが判った。
【0056】
【表9】

表9の結果より、実施例5の投与で便の硬さに改善がみられない場合、直腸上部移動性層中の界面活性成分の増量によって、便の硬さ、及び、便の出しやすさが改善されることが判った。
【0057】

(4)試験方法および試験結果3
実施例5を投与した健常ボランティア9名のうち、ステロイド類に過敏な1名を除く8名について、実施例7を投与した結果を表10に示す。
【0058】
【表10】


表10の結果より、痔疾治療成分を含有した製剤(実施例7)と含有しない製剤(実施例5)とで大きな相違は見られず、いずれの場合も便の硬さ、及び、便の出しやすさが改善していることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の、直腸上部移動性層と直腸下部滞留性層の2層を有する坐剤は、該直腸上部移動性層がすばやく溶けて直腸上部や大腸に移動して、薬効成分により便を軟らかくし、かつ、腸管から便の滑りを良くすることにより、便が軟らかくかつ出やすくなり、排便時の苦痛を軽減するとともに痔疾患の悪化も防ぐことが可能となるため有用である。更に、坐剤頭部先端部又は坐剤頭部表面に潤滑層を有する3層坐剤では、坐剤挿入時の苦痛が軽減されるため有用である。また、直腸下部滞留性層が徐々に溶けて膨潤するため、痔疾用薬効成分が長時間患部に留まることにより、効果的な痔疾患の治療が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直腸上部移動性層と直腸下部滞留性層とを有することを特徴とする坐剤。
【請求項2】
直腸上部移動性層が速溶性であり、直腸下部滞留性層が遅溶性及び/又は膨潤性であることを特徴とする請求項1に記載の坐剤。
【請求項3】
坐剤芯部が直腸下部滞留性層で、その外殻が直腸上部移動性層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の坐剤。
【請求項4】
坐剤の頭部が直腸上部移動性層からなり、坐剤の底部が直腸下部滞留性層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の坐剤。
【請求項5】
坐剤頭部先端部又は坐剤頭部表面に潤滑剤層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の坐剤。
【請求項6】
潤滑剤層が、直腸上部移動性層の融点よりも低い融点の基剤、又は潤滑剤からなる請求項5に記載の坐剤。
【請求項7】
直腸上部移動性層が界面活性成分を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の坐剤。
【請求項8】
界面活性成分がジオクチルソジウムスルホサクシネートである請求項7に記載の坐剤。
【請求項9】
直腸下部滞留性層が痔疾用の薬効成分を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の坐剤。
【請求項10】
痔疾用の薬効成分が、局所麻酔剤、ロートエキス、血管収縮剤、副腎皮質ホルモン、収斂剤、殺菌剤、サルファ剤、抗ヒスタミン剤、クロタミトン、消炎剤、痔疾用生薬、ビタミン類、カンフル、メントール類及びユーカリ油から選ばれる1種又は2種以上からなる請求項9に記載の坐剤。
【請求項11】
痔疾患者の、痔治療とともに、排便時の苦痛又は排便恐怖感を取り除くための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の坐剤。


【公開番号】特開2009−7338(P2009−7338A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135120(P2008−135120)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】