説明

坑井予備調査用独立形計測兼信号処理プローブ

【課題】 本発明の目的は、計測機器の恒久的な設置の有用性を短期間に亘って特性評価するため、特に流体の圧入による破砕帯形成の特性評価を可能とするために或る地層における予備調査の遂行を可能にすることにある。
【解決手段】 本発明は、抗井チューブ内に降下されて抗底に一時的に設置される独立形計測兼信号処理プローブに関する。このプローブは、坑底で抗井ケーシングにプローブを据え付ける機能を有する解除可能な定着固定手段(3, 4)、少なくとも一つの地震センサーを含む一組のセンサーと、記録手段、センサーで得た計測データを処理するデータ処理手段、及び据付状態でプローブを通して自由な通過を可能とするように全長に亘る開口通路(2)が形成された中央本体(1)を備えている。このプローブは、より完全な観測システムを設置する前に坑井について信頼性の高い予備調査を行うのに使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑井、特に油層又はガス層における坑井の抗底に降下すべく構成されたプローブに関するものである。
【0002】
より詳しくは、本発明は抗井チューブ内に降下して坑底に一時的に設置するように構成された独立形計測プローブに関するものである。
【背景技術】
【0003】
炭化水素埋蔵資源の採掘は、事業者にとってかなりのリスク、特に資金面でのリスクをもたらすことが認識されている。
【0004】
実際上、全埋蔵量に対して地表に取り出すことのできる炭化水素の量は坑井の地質と生産技術によって左右される。
【0005】
従って、一般的には埋蔵層の地質と形態、及び産出中の埋蔵層中に含まれる種々の流体(水、ガス及び原油)の動きについてより深い知識を持つことが必要とされる。
【0006】
例えば、そのような知識が埋蔵原油資源からの抽出収量の向上をもたらすのである。
【0007】
これに関して、通常は埋蔵層についてより深い知識を得る目的で試掘井の内部で比抵抗や孔隙率及び浸透率などのパラメータを計測し、それによって特に埋蔵層がガスや原油を含んでいるか否か、そして含んでいる場合は埋蔵量はどれほどかを確認することが行われている。
【0008】
更に、誰もが一般に答を知りたがる一つの問題は、埋蔵層に存在するガスや原油が容易に採掘できるか否かである。
【0009】
先に述べたように、生産の最適化は埋蔵原油資源の採掘における極めて重要な要素の一つである。
【0010】
一例として、ほんの数パーセント余分に炭化水素資源を採掘することができれば採掘の収益性が増加するだけでなく、有用炭化水素資源の量も増加する。
【0011】
埋蔵炭化水素資源の回収率を改善するために使用可能な技術の筆頭と言えるものは、埋蔵層に流体を圧入して油岩層に人工破砕帯を生じさせ、それにより埋蔵炭化水素類がより効果的に採掘井へ向かって排油できるようにすることである。
【0012】
更に、埋蔵炭化水素類の採掘中には流体の移動の様子を知ることが重要であり、それによって埋蔵層に孤立領域が残っておらず、埋蔵層から採掘井への排油が均一且つ最適な状態にあることを確認することが大切である。
【0013】
これを果たすため、公知技術の一つでは、抗井チューブの外側に(採掘を妨害しないように)装着した計測機器を抗井内に降下して排油系形成のための意図的な流体の圧入による破砕帯の質を監視し、それにより埋蔵層中に存在する種々の流体の移動によって生じる音響放出AEを利用してこれら流体の移動を確認している。
【0014】
別の公知技術では、採掘を妨げることなく同様の計測を可能とするために観測井を使用している。
【0015】
しかしながら、これらの公知技術は非常に有効ではあるが実施するには依然として複雑且つ高コストである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、計測機器の恒久的な設置の有用性を短期間に亘って特性評価するため、特に流体の圧入による破砕帯形成の特性評価を可能とするために或る地層における予備調査の遂行を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、この課題を解決するため、坑底の例えばチューブの下方に配置され、その後回収される独立形の計測兼信号処理プローブを提供するものである。
【0018】
本発明によるプローブの設置には大掛かりな支援業務は不要であり、地表への有線伝送路を維持する必要もない。
【0019】
より詳しくは、本発明は抗井チューブ内に降下されて坑井の抗底に一時的に設置される独立形計測兼信号処理プローブを提供するものであり、このプローブは、
坑底で抗井ケーシングにプローブを据え付ける機能を有する解除可能な定着固定手段と、
少なくとも一つの地震センサーを含む一組のセンサーと、
記録手段と、
一組のセンサーによって入手した計測データを処理するデータ処理手段と、
据付状態にある時にプローブを通して自由な通過を可能とするように全長に亘る開口通路が形成された中央本体とを備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明のプローブの限定を意図しない好適な形態を列挙すれば以下の通りである。
【0021】
中央本体の長手部分の一部が、プローブが据付状態にある時には開口通路の一部に空所を画定すると共にプローブが非据付状態で閉鎖されている時には各センサーと記録手段及びデータ処理手段を収容空間を提供するU字状溝形部の形態であること。
【0022】
プローブがそれぞれ二つの湾曲した弾性ブレードを有する二つの定着固定手段を備え、それぞれの二つのブレードの一方はプローブの一端側に位置するスライド部材に連結されると共に他方はプローブの他端側で該プローブの中央本体に連結されていること。
【0023】
定着固定手段にスライド部材の移動方向に応じて中央本体に対して接近又は離反する方向の移動力が作用するようにスライド部材がプローブの中央本体に対して長手軸Xに沿ってスライド可能であること。
【0024】
定着固定手段のうちの一方によってセンサーと記録手段及びデータ処理手段が支持されていること。
【0025】
中央本体が、プローブを据付工具又はコイル管で一時的に掴むための中空部を有すること。
【0026】
プローブが通信手段を更に備えていること。
【0027】
この通信手段が特に据付工具又はコイル管を介した交信に適合していること。
【0028】
一組のセンサーが少なくとも一つの圧力センサーと少なくとも一つの温度センサーを含むこと。
【0029】
地震探鉱を実行可能なセンサーが受振器及び/又は加速度計及び/又はハイドロフォンで構成されていること。
【0030】
中央本体の上端が、特にプローブがケーシングに据え付けられた時に抗井チューブの下端に配置可能な形状に形成されていること。
【0031】
記録手段が少なくとも一つのデータメモリを含んでいること。
【0032】
データ処理手段が特にデジタルデータプロセッサを含んでいること。
【0033】
データメモリが、特に
・複数のセンサーから得られた計測結果、
・データ処理装置と共にこれらの計測結果をデータ処理可能なアルゴリズム、及び
・データ処理装置による少なくとも一つの処理プロセスの実行後に得られた結果
に関するデータを記憶していること。
【0034】
通信手段が据付工具からプローブのメモリの少なくとも一つにアルゴリズムをダウンロードする機能を有すること。
【0035】
本発明のもう一つの成果は、特に炭化水素埋蔵資源採掘用の坑井内における流体圧入による破砕層形成を監視するための係るプローブの使用にある。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明の一つの利点は、プローブの設置が比較的簡単に実行できることである。
【0037】
またこのことから、本発明のプローブは独立形であることもあって、プローブを坑底に或る選ばれた期間に亘って設置状態に放置しても後で回収でき、必要な回数だけそれを繰り返すこともできる。
【0038】
更に、プローブを設置状態に放置できるという事実に関連する利点の一つは、抗井がプローブと地表との接続ケーブルによる不都合に遭遇しないことである。
【0039】
従って、他の機器を坑井内に通すことが極めて容易になる。
【0040】
さらなる利点は、本発明のプローブはその存在にかかわらず坑井における典形的な各種作業を実行できるように設置されることである。
【0041】
これに関連して、本発明のプローブは特に坑井内で流体圧入による破砕層形成を実行できるように構成されている。
【0042】
更に、係る破砕層形成の過程を監視するためのプローブの使用を考慮することさえ可能である。
【0043】
この目的で、プローブに付属する各種センサーから得られる計測データにより、特に進行しつつある破砕層形成の諸状態を分析し、必要に応じて適応を図ることもできる。
【0044】
本発明はまた資金面での利点も奏することができる。
【0045】
例えば、本発明を限定するものではないが、このプローブを使用して、計測機器の存在しない既設の坑井における地震探鉱による初期解析を果たすことが可能である。
【0046】
これにより、例えば既設抗井チューブを一旦除去してチューブ内に各種計測機器を設置してから坑井内にチューブを再設置することによる膨大なコストの発生を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明のその他の特徴と目的及び利点を明らかにするため、限定を意図しない本発明の好適な一実施形態について添付図面と共に説明すれば以下の通りである。
【0048】
本発明によるプローブを側方から見た概略斜視図が図1に示され、これに対して図2は該プローブをほぼその長手軸X方向から見た外観の斜視図である。
【0049】
ここで長手軸Xは、プローブがその定常使用状態、即ち坑井中に配置されている状態では垂直軸であることは述べるまでもない。
【0050】
これらの図から判るようにプローブは中央本体1を備えており、この中央本体にはその長手軸X方向の全長に亘って一体的な開口通路2が形成されている。
【0051】
更に詳細には、中央本体は長手軸X方向の中心線に沿った開口通路2を形成する筒形の二つの同一形態の部分1’及び1”を備えている。
【0052】
本発明の変形実施形態として、プローブ中央本体の上端部の形状は、たとえプローブが坑井ケーシングに据え付けられている状態であっても該上端部の先端が坑井チューブの下端開口よりも僅かに内側に位置することができるように構成することができる。
【0053】
二つの同一形態の部分の間の部分は、断面形状が略U字状の溝形部1'''の形態を有している。
【0054】
プローブの頂部では、中央本体1の内壁に環状凹部が設けられており、この凹部に据付工具の保持ラグが係合できるようになっている。
【0055】
ここで、本発明によれば、一つの変形例としてプローブをコイル管で掴んで該コイル管によりプローブを坑底から引き上げることができるように構成することが想定できる。
【0056】
この目的で、コイル管にも据付工具と同様の付属部材(これについては後述する)として例えばプローブ中央本体の環状凹部に係合可能な保持ラグが設けられていても良い。
【0057】
プローブは更に本体1の両側面に長手軸Xに沿って配置された定着固定手段3〜6を有している。
【0058】
図1と図2が或る特定の形状のプローブを示すものであることは明らかである。
【0059】
ここに示したプローブの定着固定手段20、21は、事実上、展開した状態になっており、それによりプローブを例えば坑井ケーシングに据え付けできる点に留意されたい。
【0060】
他の図面を参照して後述するが、定着固定手段20、21をこれとは別の異なる形状とすることも可能であることは述べるまでもない。
【0061】
本発明の実施に際して、例えば図1と図2に示した実際の据付形態では、プローブは長手軸Xの両側面に配置された二つの定着固定手段20、21を有している。
【0062】
各定着固定手段は、それぞれ本体1へ向かって幾分湾曲した一対の弾性ブレードを有することが好ましい。
【0063】
更に詳しく言えば、第1の定着固定手段の弾性ブレード3と5の対はU字状溝形部のU字状溝の開口部に対面しており、これに対して第2の定着固定手段の弾性ブレード4と6の対はU字状溝形部の反対側、即ちU字状溝の背面側に対面している。
【0064】
また、各ブレード対では、一方のブレードが中央本体と整列してプローブ下端側に位置するスライド部材に枢着され、他方のブレードがプローブ上端側の位置において中央本体に枢着され、いずれにせよ二対のブレードはほぼ長手軸Xに沿って整列されている。
【0065】
第2の定着固定手段の二つの弾性ブレード4、6は、その各自由端で中央本体1の長手軸Xと平行な半裁管8に連結されて中央本体側へ向けて湾曲されており、しかもプローブのために坑井ケーシング壁のような壁面に対する横方向の頑丈な接触点を構成するに充分な程度の剛性を有している。
【0066】
一方、第1の定着固定手段の二つの弾性ブレード3、5の各自由端はそれぞれ収納容器9に連結されており、この収納容器の内部には、例えば音響事象の記録による地震探鉱の解析を実行可能な計測機器が配置される。
【0067】
各ブレード対の一方のブレード端部が枢着されるスライド部材は全体的に中央本体1に組み込まれており、しかも中央本体に対して長手軸Xに沿ってスライド可能である。
【0068】
このスライド部材も、開口通路2によるプローブの上下端間の連続通路を確保するために長手軸Xに沿った貫通路を含んでいる。
【0069】
一方、収納容器9は二つの弾性ブレード3と5の間で長手軸Xと平行に延在し、この容器に装備された機器類はこの長手軸に沿って空間的に分布配置されている。
【0070】
本発明の好適な一実施方法において、収納容器に搭載する機器類には、一組のセンサー類と、例えばデータメモリなどの記録手段と、計測手段とが含まれる。
【0071】
更に具体的に説明すれば、収納容器には、搭載機器類として、地震探鉱センサー、例えば受振器10(好ましくは三つ)と、圧力/温度センサ11と、計測データからアルゴリズムを実行して結果を求めることができるデータ処理装置として例えばDSP(デジタル信号プロセッサ)などの計算ユニットを備えたデータ処理モジュールを含む電子カード12と、機器類全体に電力を供給する付属電池12’と、ハイドロホン13とが収納されている(これについては図3及び図4を参照)。
【0072】
また、収納容器には、プローブと例えば据付工具との交信を可能にする通信手段(図示せず)も搭載され、この場合の据付工具は、妥当であれば適切なケーブルを通じて地表の制御ユニットに転送通信を行う。
【0073】
尚、この通信手段は、係る目的で通信ケーブルなどの通信系統を備えたコイル管により通信を行うように構成することもできる。
【0074】
このような通信機能付き据付工具を使用すれば、水平坑井内におけるプローブの設置が可能となるので特に有利である。
【0075】
通信手段としては、この分野で知られているあらゆる技術を用いることが可能である。
【0076】
本発明では、例えば接続コネクタを用いた通信システムや、無線通信システム(低周波又は無線信号、誘導効果などを使用した)を用いた通信システムの利用を想定することができる。
【0077】
図5は、移動できる状態、従って据え付けられていない状態におけるプローブを示している。
【0078】
この状態においては、定着固定手段20、21は可能な限り中央本体1内に引き込まれており、プローブが両側に占めるスペースは据付時よりも小さい。
【0079】
これに関連して、図5からは、この状態でプローブが中央本体1の外径とほぼ等しい直径となる有利な配置状態にあることが判る。
【0080】
これは、中央本体の特別な形状、特にU字状溝形部によって可能となっている。
【0081】
このような溝形部により、実際に開口通路2の一部、即ちそれによって画定される自由空間の一部が特に弾性ブレード3、5で支持された収納容器のためのハウジングとして利用できるようになっている。
【0082】
図6を参照すると、この据付工具は筒体29を有し、この筒体の内部には長手軸Xに沿ってギヤ減速ユニット付きの電動機(好ましくは直流電動機)30が配置され、減速ユニットの回転出力でボールねじ31を介して案内ヘッド32の移動を長手軸X方向に案内するようになっている。
【0083】
この案内ヘッド32の先端部は筒体29から外に突き出ており、該ヘッドの残りの部分は筒体の内部に位置してボールねじ31に連結されている。
【0084】
案内ヘッド32は基本的に筒状であるがその外面に傾斜した不連続部分を含んでおり、この不連続部分の傾斜により案内ヘッドが長手軸Xで接続斜面35をもつようになっている。
【0085】
この不連続部分は、プローブのスライド部材の上端部との接触点を構成するように成形されている。
【0086】
筒体29の下端部には、筒壁を貫くように長手軸Xと直交する軸周りに枢動する一対の保持ラグ33、34が設けられている。
【0087】
これらのラグ33、34は、案内ヘッド32の上に丁度載るように配置されている。
【0088】
例えば、案内ヘッド32を長手軸Xに沿って下方、即ちプローブへ向けて推進駆動する場合、或る時点で筒体内のヘッドは、今まで完全に筒体壁内に納まっていた各ラグを旋回させて各ラグの先端を筒体29の壁外に移動させる位置に達する。
【0089】
従って、各保持ラグの先端を筒体の外側に突出させ、据付工具との結合という目的に沿って構成されている中央本体1の内部に入り込ませるようにして、各保持ラグをプローブとの連結手段を構成するように利用可能である。
【0090】
この据付工具は、例えばプローブを回収するために坑井内に降下する際に該工具がプローブの近くに達する時点を効果的に探知可能な手段も備えている。
【0091】
この探知手段の一例としては、本発明を限定するものではないが、プローブ中央本体の上端部に取り付けた永久磁石に感応するホール効果セルなどを挙げることができる。
【0092】
この据付工具は、プローブとの交信に適した通信手段も備えている。
【0093】
勿論、この通信手段は、例えばいずれにせよ据付工具がプローブと連結されているとき(例えばプローブを坑底に降下する際、又は地表へ引上げる際、或いは較正作業中など)に交信を確立できるように、プローブ側の通信手段と適合化されている。
【0094】
この通信手段は、限定を意図するものではないが、前述のように例えばプローブ側の付属コネクタに適合するコネクタ、或いは無線送受信機などで良い。
【0095】
本発明の応用と使用について以下に説明する。
【0096】
本発明を限定するものではないが、プローブが坑井の頂部にあり、このプローブを坑底へ降下させる必要があるものと仮定する。
【0097】
先ず、プローブは据付工具と連結され、据付工具の下部に垂下した状態に置かれる。
【0098】
据付工具は、例えば単線ケーブル又は同軸ケーブルのような少なくとも1本の導線を含むケーブルで地表から垂直に吊持される。
【0099】
前述のように、このケーブルは、上述の吊持機能に加えて地表に設置された制御ユニットとの交信にも使用することができ、この場合、据付工具がプローブと地表との間の中継器として機能する。
【0100】
プローブに設けられた定着固定手段は、プローブが坑井内を障害なく降下できるように中央本体の内側へ引き込まれている。
【0101】
この場合、据付工具側の案内ヘッド32は、各保持ラグ33、34の先端を外側へ突出させて各ラグがプローブ中央本体の内壁に設けられた環状凹所に入り込める状態とし得る位置にある。
【0102】
従って、これらの保持ラグによってプローブの中央本体が垂直に保持される。
【0103】
同時に、案内ヘッド32がスライド部材の上に載った状態となるので、電動機とボールねじによって案内ヘッドを筒体内で下方へ向けて推進させると案内ヘッドがプローブのスライド部材を押し下げ、この間、中央本体は各ラグによって固定位置に保持される。
【0104】
その結果、スライド部材に枢着されている弾性ブレード3、4には下向きの押圧力が働き、中央本体に枢着されているブレード5、6には上向きの引張力が働く。
【0105】
これらの力の作用と弾性ブレードの弾性のため、各対における弾性ブレード同士が上下に引き離されて図示の状態よりも直線的な形状となるが、それでもなお各ブレードは中央本体の近傍に留まっている。
【0106】
従ってプローブは、ほぼこの形状のままで坑底へ降下される。
【0107】
ここで思い起こすのは、一般に在来の坑井50は、縦断面において坑井の深さよりも短い第1の距離をカバーする第1のケーシング40と、坑井の深さ全体をカバーする第2のケーシング41と、第2のケーシングの大部分をカバーするチューブ42とを備えていることである(図7参照)。
【0108】
この坑井の底端は、例えば液体やガスの通過を阻止するセメントプラグ43で塞がれている。
【0109】
そこで、本発明の好適な一使用形態によればプローブは完全に坑井チューブ42の下端よりも下方に設置され、従って第2のケーシング41の内壁面にアクセスできるので、この第2のケーシングの内壁面にプローブを据え付けることができる(図7参照)。
【0110】
先に述べたように、プローブ中央本体上端部の形状は、一つの変形実施形態として、該上端部の先端が坑井チューブの下部開口45の丁度面内に位置され得るように整えることができる。
【0111】
その結果、係る変形実施形態によればプローブは基本的に坑井チューブ42の下端より下方に設置されるが、プローブの一部、例えば中央本体の頂端は、ケーシングの内壁間でチューブ下部開口上に残っている。
【0112】
このようにして、設置状態のプローブは坑壁と整列した状態に維持されるため、後で据付工具を用いて回収することが容易になる。
【0113】
実際に、案内ヘッドは、開口通路2の入口を容易に見つけ出し、開口通路内に速やかに進入可能することになる。
【0114】
プローブが位置決めされると、据付工具の案内ヘッドを上向きに、即ち地表へ向かって移動させることによりプローブの据付が行われる。
【0115】
このとき、スライド部材に作用していた案内ヘッドの押圧力と保持ラグによって中央本体に作用していた引張力が消失し、或いは少なくとも減少する。
【0116】
特に、筒体の外方へ突出していた各保持ラグは案内ヘッドの後退で枢動することにより筒体の内側へ引き込まれ、中央本体の環状凹部との係合状態から解放される。
【0117】
結果として、案内ヘッドを上向きに移動させることにより定着固定手段が次第に元の湾曲状態に復帰し、それにより第2ケーシングの内壁に充分な力を及ぼしてプローブが据付状態となる。
【0118】
以上のように、据付工具がプローブを解放してもプローブとの交信は断絶されない。
【0119】
この段階で既に機能試験を実行し、較正を行うことが可能である。
【0120】
次いで、例えば坑井について初期診断を行うために地震探鉱と温度及び圧力測定の分析を行い、適切な場合には例えばプローブのメモリに記憶されているアルゴリズムを用いて記録パラメータを調整することが可能である。
【0121】
これに関して、本発明のプローブでは少なくとも地表との交信が例えば据付工具を介して可能な状態に保たれている限り上記アルゴリズムを修正できるという利点がある。
【0122】
この目的で、アルゴリズムの入れ替え又は追加を行うために新らたなアルゴリズムを地表からダウンロードすることが可能である。
【0123】
ダウンロードは、プローブと据付工具との間で交信を確立する通信手段を介して行うことができる(この例ではフィッティング・プローブ)。
【0124】
この後に据付工具はプローブから完全に切り離して地表に引き上げることができる。
【0125】
その後、種々の分析を開始することができる。
【0126】
例えば地震探鉱分析法を利用して流体圧入による破砕層形成過程の監視を支援することができ、これは良く知られたことである。
【0127】
これに関して思い起こすべきことは、従来の流体圧入による破砕層形成法においては坑井内に無機装入材を含有する流体が高圧で注入されることである。
【0128】
その場合、装入材の余剰が必ず発生し、余剰装入材は一般にコイル管を使用して除去する必要がある。
【0129】
本発明のプローブは開口通路2を有しているので、この余剰装入材の除去操作を妨げることがないという利点を有する。
【0130】
即ち、第1にはプローブ内にコイル管を自由に挿入でき、第2には余剰装入材は開口通路2内を自由に流れることができる。
【0131】
従って余剰装入材除去手段としてコイル管を開口通路内に挿入して水などの流体を坑底に注入することができ、それにより坑底の余剰装入材を開口通路2内を介して坑井頂部へ押し上げて流出させることが可能である。
【0132】
このような理由で、据付状態のプローブはその周囲の余剰装入材や据付工具でプローブを回収したい場合に困難を招くような何物にも妨害されないだけでなく、坑底内におけるプローブの存在が例えば流体圧入による破砕層形成作業の遂行の妨げになることもない。
【0133】
それどころか、本発明のプローブは先にも述べたように係る作業の監視と制御における重要な資産を有利に構成することができる。
【0134】
第1に、プローブによって流体圧入による破砕層形成のサイクルを記録することができる。
【0135】
即ち、プローブが坑底に存在することによって破砕層形成の進行状況をモニタリングすることが可能である。
【0136】
特に、一つ以上の圧力センサで得られる測定データにより、記録の開始時期の適否を判断することができる。
【0137】
例えば、或る流体注入サイクルの時点で坑底圧力の変化が単調になったことを検知することにより記録を開始することができる。
【0138】
ここで、先に述べたアルゴリズムによって記録のチェックが可能であることを思い起こされたい。
【0139】
これに関連して、これらのアルゴリズムは修正可能であることから、プローブが据付工具に繋がっている限りは何時でも、即ち、少なくともプローブの坑井内への降下開始から据付完了時点まではアルゴリズムを適合させることが可能である。
【0140】
このためには、作業者は据付工具を経由してプローブにアルゴリズムの適合を可能とするコマンド信号を送信するだけで充分である。
【0141】
このコマンドに応じて、プローブからは適合化処理が実行されたこと及びその成否の確認信号がオペレータの操作する地表側制御ユニットに送信される。
【0142】
勿論、プローブを坑底に据え付けて置き去りにした後でも、プローブに据付工具を再結合することによってアルゴリズムの修正を行うことができる。
【0143】
このようにして、例えば埋蔵層に関する分析結果を得てからプローブのデータ処理モジュール、特にメモリを初期化し、別の計測及びデータ処理サイクルをプログラムし直すことも可能である。
【0144】
最後に、坑井チューブ内のプローブを引き上げる必要が生じた場合には、本発明に従って前述の据付工具を好適に使用することができる。
【0145】
この場合、先ず据付工具がプローブを掴むまで坑井内に該据付工具を降下させる。
【0146】
この降下操作は、案内ヘッド及びプローブへの接近を検知する手段によって効率よく行うことができる。
【0147】
据付工具がプローブに対して適正に位置付けされると、電動機30が起動されて案内ヘッドが中央本体1内に挿入され、それにより定着固定手段が再び中央本体内に係合して据付工具によりプローブを坑井頂部へ向けて引き上げることができるようになる。
【0148】
本発明は以上に述べた例に限定されるものではなく、当業者には種々の変形が可能であることは述べるまでもない。
【0149】
特に、本発明は標準的な回収ツールの使用を排除するものではない。
【0150】
勿論、この標準的ツールでは坑底に据え付けられたプローブを回収しようとする際にプローブの定着固定具をプローブ中央本体内に引き込ませることはできない。
【0151】
従って定着固定具は展開された状態のまま坑壁に押し付けられており、そのため坑井チューブ内でプローブを引き上げるには、本発明による据付工具を使用する場合よりも大きな引張力を標準的な回収ツールに印加する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明によるプローブをほぼ側面から見た斜視図である。
【図2】本発明によるプローブをその長手軸X方向に或る角度をつけて見た斜視図である。
【図3】プローブの計測機器類を収容した収納容器の構成の一例を示す斜視図である。
【図4】収納容器内の受振器及び圧力センサーの配置例を示す部分切欠分解斜視図である。
【図5】プローブが移動可能な状態、即ち、定着固定手段が本体内に引き込まれている状態におけるプローブの横断面図である。
【図6A】本発明による据付工具を略側面から見て一部断面で示す斜視図である。
【図6B】図6Aに示す据付工具の一部、特に案内ヘッドに載置される保持ラグ部分を拡大して示す模式断面図である。
【図7】坑井の縦断面と本発明による好適なプローブの据付位置を縮尺を度外視して示す概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗井チューブ(42)内に降下されて坑井(50)の抗底に一時的に設置される独立形計測兼信号処理プローブであって、
坑底で抗井ケーシング(41)にプローブを据え付ける機能を有する解除可能な定着固定手段(3〜6))、
少なくとも一つの地震センサーを含む一組のセンサー(10、11)、
記録手段、
一組のセンサーによって入手した計測データを処理するデータ処理手段(12)、及び
据付状態にある時にプローブを通して自由な通過を可能とするように全長に亘る開口通路(2)が形成された中央本体(1)、
を備えたことを特徴とする独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項2】
中央本体(1)の長手部分の一部(1''')が、プローブが据付状態にある時には開口通路(2)の一部に空所を画定すると共にプローブが非据付状態で閉鎖されている時には各センサーと記録手段及びデータ処理手段を収容空間を提供するU字状溝形部の形態であることを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項3】
それぞれ二つの湾曲した弾性ブレードを有する二つの定着固定手段(20、21)を備え、それぞれの二つのブレードの一方はプローブの一端側に位置するスライド部材に連結されると共に他方はプローブの他端側で該プローブの中央本体に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項4】
定着固定手段(20、21)にスライド部材の移動方向に応じて中央本体に対して接近又は離反する方向の移動力が作用するようにスライド部材がプローブの中央本体(1)に対して長手軸Xに沿ってスライド可能であることを特徴とする請求項3に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項5】
定着固定手段のうちの一方(20)によってセンサーと記録手段及びデータ処理手段が支持されていることを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項6】
中央本体(1)が、プローブを据付工具又はコイル管で一時的に掴むための中空部を有することを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項7】
通信手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項8】
通信手段が、特に据付工具又はコイル管を介した交信に適合していることを特徴とする請求項7に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項9】
一組のセンサーが少なくとも一つの圧力センサーと少なくとも一つの温度センサーを含むことを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項10】
少なくとも地震探鉱を実行可能なセンサーが受振器及び/又は加速度計及び/又はハイドロフォンで構成されていることを特徴とする請求項9に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項11】
中央本体の上端が、特にプローブがケーシング(41)に据え付けられた時に抗井チューブ(42)の下端に配置可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項12】
記録手段が少なくとも一つのデータメモリを含むことを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項13】
データ処理手段が特にデジタルデータプロセッサを含むことを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項14】
データメモリが、特に
・複数のセンサーから得られた計測結果、
・データ処理装置と共にこれらの計測結果をデータ処理可能なアルゴリズム、及び
・データ処理装置による少なくとも一つの処理プロセスの実行後に得られた結果
に関するデータを記憶していることを特徴とする請求項1に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項15】
通信手段が据付工具からプローブのメモリの少なくとも一つにアルゴリズムをダウンロードする機能を有することを特徴とする請求項14に記載の独立形計測兼信号処理プローブ。
【請求項16】
特に炭化水素埋蔵資源採掘用の坑井(50)内における流体圧入による破砕層形成を監視するための請求項1〜15のいずれか1項に記載の独立形計測兼信号処理プローブの使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−214266(P2006−214266A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−27875(P2006−27875)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(500160789)