説明

坑道内換気装置

【課題】坑道断面方向に切羽側作業空間と坑口側とを遮断する独立したエアーカーテンを形成し続けて、排気ファン装置や送気ファン装置の出力が一時的に低下、又は停止しても汚染空気の坑道内への拡散を防ぐ坑道内換気装置を提供する。
【解決手段】坑道50内の移動設備架台11における設置棚14上に送気ファン装置15、排気ファン装置16、給気ファン装置18が設置され、給気ファン装置18は、坑道50の壁面50aに沿って設置された給気パイプ20に空気を送気し、給気パイプ20に形成された多数の空気噴出穴20aから空気を噴出してエアーカーテンを形成し、坑口側と遮断された切羽側作業空間55を形成する。送気ファン装置15は、新鮮な空気を吹出口15aから切羽側作業空間55に送気し、排気ファン装置16は、切羽側作業空間内の汚染空気を吸引口16aから吸い込んで排気ダクト54に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑道内換気装置に関し、更に詳細には、切羽が位置する坑道内の部分的な空間(切羽側作業空間)をエアーカーテンによって坑口側と遮断し、切羽で発生する粉塵を坑道内に拡散させることなく坑外に確実に排気すると共に新鮮な空気を切羽側作業空間に送気する坑道内換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
坑道内では切羽掘削やずり出し作業などで多くの粉塵などが発生する。近年、環境問題が大きな問題となっていることから、トンネル工事において切羽側作業空間の換気には種々のシステムが開発されている。かかる換気システムの代表例として、特許文献1に開示された施工中トンネル内の換気装置や特許文献2に開示されたトンネル内の換気装置などが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された施工中トンネル内の換気装置では、施工中のトンネル内における切羽近傍に集塵機を積載した運搬車両を配置し、この集塵機から切羽に向かって汚染空気吸引用の吸引ダクトを延ばし、この吸引ダクトを介して切羽付近の汚染空気を集塵機に吸い込むと同時に別の風管から切羽に向かって新鮮な空気を送り込むようにしたものである。この換気装置では、風管から切羽に送り込む新鮮な空気量よりも集塵機が吸引ダクトを介して吸引する吸引量を多くすることにより集塵機の排気口と吸引ダクトの先端部吸引口との間にエアーカーテン帯域を形成するものである。
【0004】
また、特許文献2に開示されたトンネル内の換気装置では、切羽面から30〜50mの範囲である切羽作業領域に向けて開口した吸気口を備える排気風管をトンネル内に設置し、他方、排気風管の吸気口より坑口側に主吹出口が位置するように送気風管の本体を設置し、この送気風管本体の主吹出口近傍に接続した分岐風管の全周に形成した分岐吹出口からトンネルの断面方向に清浄空気を吹き出してエアーカーテンを形成するようにしたものである。これにより、特許文献2に開示されたトンネル内の換気装置によると、排気風管の吸気口から吸い込む吸気量を送気風管の主吹出口から吹き出される給気量より多くすることと相まって切羽作業領域より坑口側には坑道の長手方向において切羽作業領域と坑口側とを遮断するエアーカーテンが形成されるので、切羽作業領域内の汚染空気が坑道内に拡散されることなく排気風管により集塵機に吸引される。
【特許文献1】特開2003−262100号公報
【特許文献2】特開2006−183403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された施工中トンネル内の換気装置では、集塵機への吸引量と風管からの送気量との差により切羽側を負圧にすることでエアーカーテン帯域を形成しているため、風管を介しての送気量と吸引ダクトを介しての吸引量を高精度で維持しなければならず、そのコントロールが非常に困難であると共に送気出力又は吸引出力のバランスが一時的にでも崩れ、又は低下した場合にはエアーカーテンが形成されなくなり、一気に汚染空気が坑道内に拡散する危険がある。言い換えれば、切羽で発生する粉塵が坑道内に拡散するのを防ぐためには、切羽作業中は、常時、正確な送風と吸引を継続する必要がある、という問題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示されたトンネル内の換気装置では、送風管本体を介して送風機から切羽作業領域に送気される清浄空気を主吹出口近傍の分岐吹出口から坑道の断面方向に吹き出してエアーカーテンを形成すると共に、特許文献1と同様に排気風管を介して集塵機へ吸引する量と送気風管本体の主吹出口から吹き出す清浄空気量との差により切羽作業領域を負圧にすることでエアーカーテンの形成を補助していることから、切羽掘削やずり出し等の作業中には送風機や集塵機の運転維持が絶対的に必要となり、一時的にせよこれら送風機や集塵機の出力が低下したり、停止したりした場合にはエアーカーテンが消滅し、切羽で発生する粉塵が坑道内に拡散する、という問題があった。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、切羽での掘削等の作業中に、排気ファン装置の吸引口と送気ファン装置の空気吸込口との間で坑道断面方向に切羽側作業空間と坑口側とを遮断する独立したエアーカーテンを形成し続けて、排気ファン装置や送気ファン装置の出力が一時的に低下、又は停止しても粉塵の坑道内への拡散を防ぐ坑道内換気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、坑道の切羽で発生する粉塵を含む汚染空気を坑道の外に排気し、新鮮な空気を前記切羽に向かって送気することで切羽側作業空間内を換気する換気装置であり、その特徴とするところは、前記坑道内で移動可能に設置された移動設備架台の設置棚上に取り付けられ、一端の吹出口が前記切羽側作業空間に向かい、かつ他端の空気吸込口が前記坑道の坑口側に位置し、前記空気吸込口から新鮮な空気を吸い込んで前記吹出口から前記切羽側作業空間に向かって送気する送気ファン装置と、一端の吸引口が前記切羽側作業空間に向かい、かつ他端の排気口が前記坑道の前記坑口方向へ延びる排気ダクトに接続され、前記吸引口が、前記送気ファン装置の前記空気吸込口に対し前記坑道の長手方向に間隔を開けると共に前記切羽側作業空間に位置するように前記設置棚上に設置されている排気ファン装置と、前記設置棚上に据え付けられ、前記排気ファン装置の前記吸引口と前記送気ファン装置の前記空気吸込口との間で前記坑道の長手方向に直交する坑道断面方向にエアーカーテンを形成し、前記坑道の前記坑口側とエアーで遮断された前記切羽側作業空間を形成するエアーカーテン形成手段とを備え、前記エアーカーテン形成手段が、給気ファン装置と、前記送気ファン装置の前記空気吸込口と前記排気ファン装置の前記吸引口との位置間において前記坑道の壁面に沿って設置され、前記給気ファン装置から空気が送気される給気パイプと、この給気パイプの前記坑道壁面に対面する部分及びそれとは反対側の前記坑道の前記断面方向中心部へ面する部分に形成された多数の空気噴出穴とから構成されていることにある。
【0009】
本発明の坑道内換気装置に係る実施形態の一例では、前記給気パイプが、前記坑道の前記壁面の天井部から両側壁に沿い、前記設置棚の側部を通過してそれより下方へ延びている。
【0010】
本発明の坑道内換気装置に係る実施形態の他の例では、前記エアーカーテン形成手段は、前記給気ファン装置の前記給気口に一端が接続され、かつ他端が前記給気パイプに接続された接続パイプを備え、該接続パイプの前記他端が、前記坑道の前記壁面に沿って配置された前記給気パイプの長さ方向ほぼ中間部である前記坑道の天井部付近で接続されている。
【0011】
本発明の坑道内換気装置に係る実施形態の他の例では、前記給気パイプが、蛇腹により伸縮自在な管材で形成され、前記坑道の前記壁面と所定の間隔をあけて設置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の坑道内換気装置によると、坑道内を移動可能な設備架台の設置棚上に送気ファン装置と、排気ファン装置と、給気ファン装置とを設置し、送気ファン装置の空気吸込口に対して坑道長手方向に間隔をあけて位置する排気ファン装置の吸引口との間に、坑道の壁面に沿って給気パイプを配置し、この給気パイプに給気ファン装置から清浄空気を送気して給気パイプの空気噴出穴から清浄空気を噴出させてエアーカーテンを形成するようにしたので、送気ファン装置や排気ファン装置の運転に影響されることなくエアーカーテンを形成かつ維持できるので、万が一、送気ファン装置や排気ファン装置の運転出力が一時的にでも低下し、又は停止しても切羽で発生した粉塵などを含む汚染空気が坑道内に拡散するのをエアーカーテンにより防止することができる。
【0013】
また、本発明の坑道内換気装置によると、送気ファン装置や排気ファン装置は、通常、坑道内の上部に移動設備架台などを利用して設置されるが、その場合でも、給気パイプが、坑道の壁面の天井部から両側壁に沿って設置棚の側部を通過してそれより下方に延びているため、給気パイプの空気噴出穴から吹き出すエアーが設置棚下の坑道中心部方向へ向かい、坑道断面のほぼ全域にエアーカーテンを形成することができ、切羽で発生した粉塵が、移動設備架台より坑口側方向へ広がるのを確実に防ぐことができる。
【0014】
さらに、本発明の坑道内換気装置によると、給気パイプが、蛇腹により伸縮自在な管材で形成されているため、屈曲が自由であり、その結果、ほぼ半円形断面の坑道の壁面に容易に所定の間隔をあけて設置することができる。このような設置の容易性と共に、給気パイプが坑道壁面に対して所定の間隔をあけて設置されることで各空気噴出穴から吹き出すエアーカーテン用の空気噴出力のバランスを平均化でき、これにより安定したエアーカーテンの形成を図ることができる。さらに、かかる安定したエアーカーテンの形成は、移動設備架台の設置棚に設置した空気ファン装置の給気口に接続した接続パイプの他端を坑道の天井部に位置する給気パイプの管部分に接続することにより、坑道の天井部から両側部に沿って延びる給気パイプの両サイド管部分内の圧力バランスを均衡させていることによっても確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の坑道内換気装置を図に示される好適な実施の形態について更に詳細に説明する。図1ないし図3には、本発明の一実施形態に係る坑道内換気装置10が示されている。図1は、坑道を長手方向に直交する面で切断し、坑道内に設置された坑道内換気装置10を切羽53側から見た正面図、図2は図1に示される坑道内換気装置10の側面図、及び図4は図1に示される坑道内換気装置10の平面(上面)図である。図1〜3に示される坑道内換気装置10は、坑道50内で移動可能に設置された移動設備架台11の設置棚14上に設置されている。移動設備架台11は、移動方向である端面側から見て門型をしており、それぞれ車輪12を有する複数の台車13が下端部に取り付けられている。坑道内換気装置10が設置されている設置棚14は、門型をした移動設備架台11の最上部の棚であり、坑道50の天井に近い位置にある。台車13の車輪12は、坑道50のインバート51に敷設されたレール52上に乗せられ、これにより移動設備架台11は、レール52上を移動可能とされている。
【0016】
坑道内換気装置10は、この移動設備架台11の最上部に形成された設置棚14に据え付けられた各1台の送気ファン装置15と排気ファン装置16とを備えている。送気ファン装置15は、一端に吹出口15aを、かつ他端に空気吸込口15bを備え、これら両端15a,15bの間にはファン本体(図示せず)があり、該ファン本体は適当な駆動装置により回転される。送気ファン装置15は、図2,3から明らかなように吹出口15aを切羽53の方向に向け、かつ空気吹出口15bを坑口側に向けて配置され、空気吸込口15bから新鮮な空気を吸い込んで吹出口15aから切羽53に向かって送気する。
【0017】
また、排気ファン装置16は、一端に吸引口16aを、かつ他端に排気口16bを備え、これら両端16a,16bの間にはファン本体(図示せず)があり、該ファン本体は適当な駆動装置により回転される。排気ファン装置16は、図2,3から明らかなように吸引口16aを切羽53の方向に向け、かつ排気口16bを坑口側に向け、送気ファン装置15とほぼ並んで移動設備架台11の設置棚14上に取り付けられている。送気ファン装置15と排気ファン装置16とは、送気ファン装置15の空気吸込口15bが排気ファン装置16の吸引口16aに対して坑道50の長手方向に間隔をあけるような位置関係で移動設備架台11の設置棚14上に設置されている。送気ファン装置16における排気口16bには、坑口(図示せず)に向かって延びる排気ダクト54が接続されている。坑口から坑道50の外に出た排気ダクト54は、集塵装置を備える汚染空気浄化設備(図示せず)などに接続されている。なお、排気ダクト54には、排気ファン装置16から汚染空気浄化設備までの間に、必要に応じて、中継ファン装置(図示せず)が設置されている。これにより、排気ファン装置16は、その吸引口16aから吸い込んだ切羽側の汚染空気を排気口16bから排気ダクト54に排気し、排気ダクト54に排気された汚染空気は、排気ダクト54を介して汚染空気浄化設備に送られて浄化処理された後に大気に放出される。
【0018】
坑道内換気装置10は、さらに、エアーカーテン形成手段17を備えている。エアーカーテン形成手段17は、給気ファン装置18と、この給気ファン装置18の給気口18aに接続された接続パイプ19と、この接続パイプ19に接続する給気パイプ20とから構成されている。給気ファン装置18は、図1〜3に示されるように送気ファン装置15と排気ファン装置16との間のスペースにおいて移動設備架台11の設置棚14に取り付けられている。給気パイプ20は、送気ファン装置15の空気吸込口15bと該空気吸込み口15bに対して坑道50の長手方向に間隔をあけて位置する排気ファン装置16の吸引口16aとの間において坑道50の壁面50aに沿って設置されている。更に具体的には、エアーカーテン形成手段17を構成している給気パイプ20は、坑道50の壁面50aと所定の間隔をあけながら坑道50の天井部から両側壁に沿い、移動設備架台11の設置棚14における各側部を通過してそれより下方へ延び、その各下端部は閉塞されている。給気パイプ20を坑道50の壁面50aに沿い、かつ所定の間隔をあけながら設置する際には、移動設備架台11の設置棚14やその他の固定部分に取り付けた支え棒などの支持部材(図示せず)が用いられる。なお、接続パイプ19や給気パイプ20は、蛇腹により伸縮自在な管材で形成され、自由に屈曲可能である。
【0019】
この給気パイプ20において、坑道50の壁面50aに対面する部分及びそれとは反対側の坑道50の断面方向中心部へ面する部分には、多数の空気噴出穴20aが給気パイプ20の長さ方向に向かって一列に所定間隔で形成されている。また、給気ファン装置18の給気口18aに一端が接続された接続パイプ19の他端は、坑道50の天井部付近に位置する給気パイプ20の管部分で接続されている。すなわち、給気パイプ20は、その全体長のほぼ半分である中間部が坑道50の天井部に位置し、接続パイプ19の他端は、従って、給気パイプ20のほぼ中間部に接続されていることになる。これにより、給気ファン装置18から送気された空気は、接続パイプ19を介して給気パイプ20の中間部から両サイドの管部分に送られるので、坑道壁面50の天井部を境に両側壁に沿って延びる給気パイプ20の両サイドの管部分内はほぼ同じ圧力の空気圧となり、両サイドの管部分の各空気噴出穴20aから吹き出す噴出空気圧をバランスさせることができる。このようにして給気パイプ20の各空気噴出穴20aからエアーが噴出することで、排気ファン装置16の吸引口16aと送気ファン装置15の空気吸込口15bとの間で坑道50の長手方向に直交する坑道断面方向にエアーカーテンが形成され、坑道50の坑口側とエアーで遮断された切羽側作業空間55が形成される。給気ファン装置18から給気パイプ20に送気する空気は新鮮な空気であるので、給気ファン装置18は、エアーカーテンを形成する給気パイプ20の設置位置よりも坑口側の設置棚14上に据え付けられている。
【0020】
次に、この坑道内換気装置10の動作について説明する。移動設備架台11は、坑道50のインバート51に敷設されたレール52上を切羽53からほぼ30m〜80mの手前で静止状態に固定され、排気ファン装置16の排気口16bに排気ダクト54が接続される。移動設備架台11が切羽53の手前所定位置に静止されたとき、給気パイプ20より切羽側の坑道50内が切羽側作業空間55となる。すなわち、給気パイプ20の位置で坑道50の断面方向にエアーカーテンが形成されるので、このエアーカーテンを境に切羽側と坑口側とが空気の流れの上で遮断されることになり、この遮断された切羽側の空間が切羽側作業空間55である。
【0021】
その後、給気ファン装置18が運転され、接続パイプ19を介して給気パイプ20に新鮮な空気が圧送される。これにより、給気パイプ20の多数の空気噴出穴20aから新鮮な空気が、図1に矢印21で示されるように坑道50の断面方向へ噴出される。具体的には、給気パイプ20の坑道壁面50aに対面する部分に形成された多数の空気噴出穴20aから噴出した空気は、壁面50aに向かって流れ、給気パイプ20と壁面との間にエアーカーテンを形成する。また、給気パイプ20の坑道壁面50aに対面する部分とは反対側の部分に形成された多数の空気噴出穴20aから噴出した空気は、図1に矢印22で示されるように坑道50の断面内方向へ向かって流れ、給気パイプ20が取り囲む坑道50の内側全域にエアーカーテンを形成する。その際、給気パイプ20の坑道50の天井部から壁面50aの両側壁に沿って下方へ延びる給気パイプ20の下端部20b,20cが、送気ファン装置15や排気ファン装置16を設置している設置棚14の側部を通過して下方へ延びているので、移動設備架台11の支え柱の間を空気が通り抜け、門型をしている移動設備架台11の内側にもエアーカーテンを確実に形成することができる。
【0022】
このようにしてエアーカーテンを形成して切羽側作業空間55を確保した上で、送気ファン装置15及び排気ファン装置16が運転される。送気ファン装置15は、切羽側作業空間55とエアーカーテンを挟んで反対側の坑口側坑道内の新鮮な空気を空気吸込み口15bから吸い込んで切羽側作業空間55に位置する吹出口15aから吹き出し、他方、排気ファン装置16では、切羽側作業空間55に位置する吸引口16aから切羽側作業空間55における空気を吸い込んで排気口16bから排気ダクト54に排気する。その際、送気ファン装置15が切羽側作業空間55に送気する空気量と、排気ファン装置16により切羽側作業空間55から吸引する排気量とはほぼ同量に制御される。
【0023】
このような坑道内換気装置10を動作させている状態で、切羽53の掘削やずり出しなどの作業が行われ、この作業に伴って切羽側作業空間55内の空気は、掘削やずり出しなどで発生する粉塵により汚染される。かかる汚染空気は、図3に黒塗り矢印23で示されるように排気ファン装置16の吸引口16aから吸い込まれ、排気口16bを介して排気ダクト54に送り続けられる。他方、送気ファン装置15は、前述したように、切羽側作業空間55とエアーカーテンを挟んで反対側の坑口側坑道内の新鮮な空気を空気吸込み口15bから吸い込み、図3に白抜き矢印24で示されるように新鮮な空気を吹出口15aから切羽側作業空間55へ向かって吹き出す。
【0024】
切羽作業空間55に漂う汚染空気は、給気パイプ20における多数の空気噴出穴20aから噴出されるエアーにより形成されているエアーカーテンにより、切羽作業空間55から坑口側へ流れ出ることができず、坑口側で作業している作業者達を粉塵汚染から保護することができる。特に、この坑道内換気装置10では、仮に、送気ファン装置15や排気ファン装置16の運転出力が何らかの原因で一時的に低下、又は停止しても、給気ファン装置18が運転されている限りはエアーカーテンが形成され続けるので、切羽側作業空間55に漂う汚染空気が直ちに坑道内に拡散する恐れがない。ただし、そのためには給気ファン装置18の運転制御装置や電源系統を送気ファン装置15や排気ファン装置16とまったく切り離して別系統とし、或いはバックアップ系統を確保しておくことが必要であることはいうまでもない。
【0025】
このようにして切羽側作業空間55の換気は、切羽53での掘削やずり出し作業中に発生する粉塵を含む汚染空気の坑道内への拡散を防止しながらなされ、切羽53の掘削の進行に伴って移動設備架台11を移動させてエアーカーテン形成位置を前進させる。移動設備架台11の前進は連続的であっても、或いは断続的に行ってもよい。この坑道内換気装置10では、前述したように送気ファン装置15、排気ファン装置16、及びエアーカーテン形成手段17のすべてが移動設備架台11に設置されているので、切羽53の掘削の進行に伴ってエアーカーテン形成位置の前進は、単に、移動設備架台11を前進させるだけである。その場合、移動設備架台11の前進は、非常に容易である。すなわち、移動設備架台11の前進は、排気ダクト54を延伸させるだけでよく、かかる排気ダクト54の延伸は、蛇腹付き伸縮自在な管材を部分的に接続しておくことにより容易に行うことができる。このような移動設備架台11の容易な前進は、前述した構造によるエアーカーテンの確実な形成によって切羽側作業空間55より坑口側の坑道内における空気が新鮮であることによる。すなわち、送気ファン装置15が、空気吸込口15bから切羽側作業空間55より坑口側坑道内の新鮮空気をそのまま取り込むことができるからである。
【0026】
このように、坑道内換気装置10では、坑道50内を移動可能な移動設備架台11の設置棚14上に送気ファン装置15と、排気ファン装置16と、給気ファン装置18とを設置し、送気ファン装置15の空気吸込口15bに対して坑道長手方向に間隔をあけて位置する排気ファン装置16の吸引口16aとの間に、坑道50の壁面50aに沿って給気パイプ20を配置し、この給気パイプ20に給気ファン装置18から清浄空気を送気して給気パイプ20の空気噴出穴20aから清浄空気を噴出させてエアーカーテンを形成するようにしたので、送気ファン装置15や排気ファン装置16の運転に影響されることなくエアーカーテンを形成かつ維持でき、仮に、送気ファン装置15や排気ファン装置16の運転出力が一時的にでも低下し、又は停止しても切羽53で発生した粉塵などを含む汚染空気が坑道50内に拡散するのを防止することができる。
【0027】
また、坑道内換気装置10では、送気ファン装置15や排気ファン装置16が、通常、坑道50内の上部に移動設備架台11などを利用して設置されるが、その場合でも、給気パイプ20が、坑道50の壁面50aの天井部から両側壁に沿って移動設備架台11における設置棚14の両側部を通過してそれより下方に延びているため、給気パイプ20の空気噴出穴20aから吹き出すエアーが設置棚14下の坑道50中心部方向へ向かい、坑道50断面のほぼ全域にエアーカーテンを形成することができ、切羽53で発生した粉塵が、移動設備架台11に邪魔されてそれより坑口側方向へ広がるのを確実に防ぐことができる。
【0028】
さらに、この坑道内換気装置10によると、給気パイプ10が、蛇腹により伸縮自在な管材で形成されているため、屈曲が自由であり、その結果、ほぼ半円形断面の坑道50の壁面に容易に所定の間隔をあけて設置することができる。このような設置の容易性と共に、給気パイプ50が坑道50の壁面50aに対して所定の間隔をあけて設置することで各空気噴出穴20aから吹き出すエアーカーテン用の空気噴出力のバランスを平均化でき、これにより安定したエアーカーテンの形成を図ることができる。しかも、かかる安定したエアーカーテンの形成は、移動設備架台11に設置した給気ファン装置18の給気口18aに一端を接続した接続パイプ19の他端を坑道50の天井部に位置する給気パイプ20の部位に接続しているので、坑道50の天井部から両側部に沿って延びる給気パイプ20の両サイド内の圧力バランスを均衡させていることによっても更に確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る坑道内換気装置を、坑道をその長手方向に直交する方向で断面をして示す正面図である。
【図2】図1に示される坑道内換気装置の側面図である。
【図3】図1に示される坑道内換気装置の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 坑道内換気装置
11 移動設備架台
12 車輪
13 台車
14 設置棚
15 送気ファン装置
15a 吹出口
15b 空気吸込口
16 排気ファン装置
16a 吸引口
16b 排気口
17 エアーカーテン形成手段
18 給気ファン装置
18a 給気口
19 接続パイプ
20 給気パイプ
50 坑道
50a 壁面
51 インバート
52 レール
53 切羽
54 排気ダクト
55 切羽側作業空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑道の切羽で発生する粉塵を含む汚染空気を坑道の外に排気し、新鮮な空気を前記切羽に向かって送気することで切羽側作業空間内を換気する換気装置において、
前記坑道内で移動可能に設置された移動設備架台の設置棚上に取り付けられ、一端の吹出口が前記切羽側作業空間に向かい、かつ他端の空気吸込口が前記坑道の坑口側に位置し、前記空気吸込口から新鮮な空気を吸い込んで前記吹出口から前記切羽側作業空間に向かって送気する送気ファン装置と、
一端の吸引口が前記切羽側作業空間に向かい、かつ他端の排気口が前記坑道の前記坑口方向へ延びる排気ダクトに接続され、前記吸引口が、前記送気ファン装置の前記空気吸込口に対し前記坑道の長手方向に間隔を開けると共に前記切羽側作業空間に位置するように前記設置棚上に設置されている排気ファン装置と、
前記設置棚上に据え付けられ、前記排気ファン装置の前記吸引口と前記送気ファン装置の前記空気吸込口との間で前記坑道の長手方向に直交する坑道断面方向にエアーカーテンを形成し、前記坑道の前記坑口側とエアーで遮断された前記切羽側作業空間を形成するエアーカーテン形成手段とを備え、
前記エアーカーテン形成手段が、給気ファン装置と、前記送気ファン装置の前記空気吸込口と前記排気ファン装置の前記吸引口との位置間において前記坑道の壁面に沿って設置され、前記給気ファン装置から空気が送気される給気パイプと、この給気パイプの前記坑道壁面に対面する部分及びそれとは反対側の前記坑道の前記断面方向中心部へ面する部分に形成された多数の空気噴出穴とから構成されていることを特徴とする坑道内換気装置。
【請求項2】
前記給気パイプは、前記坑道の前記壁面の天井部から両側壁に沿い、前記設置棚の側部を通過してそれより下方へ延びている請求項1に記載の坑道内換気装置。
【請求項3】
前記エアーカーテン形成手段は、前記給気ファン装置の前記給気口に一端が接続され、かつ他端が前記給気パイプに接続された接続パイプを備え、該接続パイプの前記他端が、前記坑道の前記壁面に沿って配置された前記給気パイプの長さ方向ほぼ中間部である前記坑道の天井部付近で接続されている請求項1又は2に記載の坑道内換気装置。
【請求項4】
前記給気パイプが、蛇腹により伸縮自在な管材で形成され、前記坑道の前記壁面と所定の間隔をあけて設置されている請求項1〜3のいずれかに記載の坑道内換気装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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